本澤二郎の「日本の風景」(5047)

<政界フィクサー渡辺恒雄の時代が終わった!>

中曽根康弘内閣を実現するために、火の中水の中を遊泳して目的を果たしたフィクサー渡辺恒雄も、昨今は車いす生活に入り、その声は聞こえなくなって久しい。一番敏感に察知して行動を起こしたのが東京地検特捜部。安倍・清和会退治。安倍内閣では散々煮え湯を飲まされてきただけあって、岸田文雄を手玉に取る清和会の裏金事件にメスを入れた。その過程で真っ先に、岐阜の大野伴睦の孫の家宅捜索をさせ、伴睦の世襲にくぎを打ち付けた。

 

「ナベツネは大野伴睦の懐に入り、札束までつかみ取って派閥の中枢に入り込んだ。大野なくしてツネのフィクサーはありえなかった」「ツネのすごいところは、ジャーナリストであれば絶対に手を出さない右翼暴力団の児玉誉士夫の参謀になって、読売の階段を昇って行った。ロッキード事件でつまずいても、それを逆手にとって中曽根を男にした」という逸話は今も語られている。

筆者は当時、国会記者会館に飛び込むと、真っ先に新聞の切り抜きをして、その後に官邸の永田クラブと自民党本部の平河クラブを覗いたものだ。日本を代表する最大の記者クラブは、いつも「ジャラジャラ」という掛けマージャンの音が響いていた。

誰も注意しなかった。現に新聞社の幹部がこぞってこの悪しき慣習に染まっていた。読売が中曽根新聞に変質するなり、切り抜きをやめた。

ついで右翼に狙われた朝日新聞が凋落すると、日本記者クラブや日本新聞協会がナベツネ化・右傾化してゆく。誰も食い止められなかった。改憲軍拡原発推進の読売グループの暴走が始まった。

 

<大野伴睦の孫の家宅捜索を止められなかったツネ>

だが、ナベツネも時間と体力に勝つことは出来ない。体力が衰えると、発言と行動も小さくなる。日本一発行部数の新聞とテレビ、スポーツ新聞で永田町の動向を主導してきたフィクサーも沈む。

 

今回の検察の大掛かりな捜査について、彼が理解しているのか、理解できないのか、と一部で混乱している。いえることは、ナベツネの時代は終わった!検察の捜査はそうして動いたものだろう。大野家の番頭の驚きは、青天の霹靂で尋常なものではなかったはずだ。

 

「極右のめんどりも静か、日本会議も沈黙してる」との声>

中国や朝鮮の歴史を紐解くと、言葉は悪いが「めんどりが鳴くと国が亡びる」という。

「読売グループの日本テレビキャスターをした中国華僑の娘や、松下政経塾の女代議士など、安倍側近として改憲をぶって羽振りがよかったが、ここにきて静かだ。今回の検察の清和会壊滅作戦に驚いているに違いない。むろん、安倍の別動隊の統一教会国際勝共連合や神道政治連盟も」。

 

新聞だけ見ているとわからないだろうが、確かに極右のグループは塹壕に潜って、大砲の弾が当たらないようにしている。

 

<日本テレビ元幹部「ナベツネをいまさら」と蹴飛ばす>

念のため、友人の元日本テレビの幹部にツネの様子を聞いてみることにした。ピント外れなのかどうか。

彼は「何をいまさら。ナベツネはもういないよ」と即答した。間違いなくナベツネの時代は終わっている。

 

一部に、目下のキングメーカーは麻生太?郎だ、と風向きが変わったことを叫ぶ向きもある。彼はこっそりと訪米してバイデン大統領の対抗馬であるトランプ接近を図っているという。ワシントンの日本大使館も気が気ではない。3月にはバイデンが岸田を国賓として招待するのだから。

トランプが復権すると、ウクライナやイスラエル外交に微妙な変化が出る。国内のインフレ対策にも。株価の変動が東京にも押し寄せてくるだろう。むろん、台湾政策にも変化が起きる。

外交が素人の上川に乗り切れるだろうか。

 

<岸田の精神状況は改善=極右片肺内閣を軌道修正?>

ともあれ安倍の傀儡政権を強いられてきた岸田にとって、精神状態は晴れから快晴となった。清和会の森喜朗や配下の萩生田、世耕、西村、松野といった「神の国」の極右の面々とは、立場が完全に逆転してしまったのだから内心、笑いが止まらないだろう。

麻生を使い走りさせて、悦に入っているようにも見える。反岸田派の二階からも声が出ない。菅は安倍そのものだから、もう怖くはない。所詮、検察は内閣の番犬でしかない。岸田と検察の今は蜜月状態にある。

最近の共同通信の世論調査の数字は、少し改善してきている。岸田の参謀は、悪役の木原誠二だ。自身が背負っている負の遺産は変わっていない。悪魔とも平気で手を握る要注意人物。目下の野党が八王子市長選のようになれば別だが、それが見えない今では、予算成立後の解散も、反骨・正義派にとって悔しいが、否定できない。

 

国民の悲願は、金権のごろつきばかり輩出する小選挙区制を廃止することに尽きるのだが。正論が出ない政治刷新本部に期待できるものは何もない。ナベツネ後の政局も明るくない。せめて日本記者クラブや新聞協会の覚醒を期待したい。

2024年1月17日記(反骨ジャーナリスト)