本澤二郎の「日本の風景」(5039)

<日本の政財官+やくざの構造的腐敗を暴いた青木泰著「引き裂かれた絆」「森友」を日本研究者は読め!> 

日刊ゲンダイの取り持つ縁で、初めて目にする環境ジャーナリストの書いた2冊の本が届いた。言論界も腐敗まみれの中でのまじめな出版物である。日本研究者の必読本であろう。筆者も本ブログの一部を1セット10巻にまとめて、50年100年後の日本の民主主義研究の一助にしてもらおうと、それこそ清水の舞台から飛び降りるような大金(1セット原価20万円)をはたいて製本にした。うちの4セットを首都圏の公共図書館に寄贈するよう友人に賀状で依頼したところである。

 

政財官の腐敗構造は昔からだが、311の東日本大震災復興資金の核汚染がれき処理にも及んでいた、環境省が小出裕章のいう「原子力マフィア」の先頭に立っていた、ともなると、これは由々しい一大事である。そのことを著者の青木泰は、見事に暴いた。

 

<ゼネコン+やくざ暴力団が仕切った東北復興資金の闇>

2011年の311の史上最大のフクシマ東電原発爆破の悲劇は、日本国民のすべてが記憶している。忘れようとしても忘れられない歴史的悲劇だ。人間の知恵や科学では到底手の届かない核汚染が、4日後の315には茨城・埼玉・千葉をかすめて都内、山梨・神奈川・静岡にも飛散拡大した。当時品川区のマンション13階に住んでいた妻は、2013年11月23日に肺がんで亡くなった。2年ほど前に同マンションの住人が、あっという間に同じ肺がんで、世田谷の友人も突然、共に亡くなっている。315被ばく死を印象付けている。フクシマもそうだが、厚労省も日本医師会も沈黙している。原子力マフィアの威力と闇を感じさせている。

 

首都圏のシイタケ栽培農家は、現在も汚染した樹木を排除する対応を、現在も実施している。袖ヶ浦市の森林組合幹部の指摘だから、偽りのない事実である。

311で被爆死した原発近くの住民およそ1000人の死骸について、共同通信が報じたが、間もなくおそらく原子力マフィアによって消されてしまった。フクシマの真実は依然として隠されたままである。

 

昨日の昼過ぎのNHKラジオが、危険すぎる原発について解説委員を交えた討論番組を流した。「原発は危険すぎるエネルギー。日本もドイツのようにすべて廃炉することがいい」という言葉を聞こうとしたが無駄なことだった。情報操作と嘘を垂れ流すNHK解体論が消えることはないだろう。権力を監視する言論界が、政府の意向に従順であるのは危険である。

 

ゼネコンの裏事情に通じている友人の一言は、いまも記憶に残っている。「東北復興資金は、ゼネコンとやくざがすべてを仕切っている」というのである。東北復興資金は政府の公表だと約32兆円というとてつもない金額である。能登半島地震の復興資金も危うい。

「やくざと政府」については「霞が関の犯罪」(リベルタ出版)の取材で体験した。厚労省追及取材に右翼暴力団が壁を作ってきた。初めての経験だから驚いてしまった。

 

目下の袖ヶ浦市林地区陣場台の核汚染ごみ不法投棄事件は、やくざの介在なくして起きなかったものである。悲しいかな第三者は理解できない。千葉県警も木更津署も逃げ回って手を出さない。現場知らずの者には理解不能である。林地区の住民闘争には、心から敬意を表したい。

 

<元警視総監・秦野章の現場100遍の成果か>

「引き裂かれた絆」が出版されたのは、311から4年後である。チェルノブイリ原発事故さえも理解していなかった元自民党派閥記者は、東芝製3号機の核爆発さえも気付かなかった。

放射能・核汚染したがれきやごみも混ざった危険すぎる処理についてほとんど気付かなかったのだが、著者はいち早くがれきの放射能汚染に気付いていた。環境省はこれを全国にばらまいて、必死で証拠の隠滅と列島のフクシマ化で問題を処理しようと画策していた。

そんな環境省の官僚を「モンスター」と決めつけた青木。恐ろしい、実に恐ろしい政府の決断とそれを実行した「モンスター」の姿を事細かにまとめている。

 

以前元警視総監・法務大臣の秦野章の「日本警察改革論」(エール出版)を書いた際、彼はしきりに現場100遍を口にした。事件捜査には現場を繰り返し踏めば、謎が解けるというのである。

環境省の東日本大震災復興資金の流用が、各地の清掃工場に対してなされていた。核汚染がれきが焼却されたという。放射能の拡散を公然と主権者に伏せて強行したものだ。

 

日本官僚・モンスターには、復興資金を血税だという認識は全くなく、まるでつかみ金のようにして全国の清掃工場の焼却炉建設費用にばらまかれていた。

それだけではない。全国の税務署の耐震構造化や原発推進の本陣である経産省の原子力発電にかかわる研究にも化けた。農水省の林道建設にも。

 

青木は「絆キャンペーンの裏で、被災地への復興資金を流用する。この腐敗を放置して官僚に政策実行の権限を委ねることは出来ない」と激しい活字で官僚腐敗に鉄槌を浴びせている。

 

他方で、官は廃炉でなければならないという国民の叫びは、言論界を懐柔して消し去っている。これは奴隷社会ではないか。こうしてみると、ごみはないのにあると称して「8億円を値引きした森友事件」の官の手口が理解できる。森友学園の許されざる戦前の日本国家主義のシンボルである国家神道を背景とした教育勅語教育に対して、安倍夫妻と日本会議ののめりこみから、彼らの危険すぎる野望の大きさに驚愕する。

ゼネコンとやくざ暴力団が深く介在しての、袖ヶ浦市林地区の「フクシマの核汚染ごみ不法投棄事件」もまた筆者は、くっきりと目の前に見えるのだが。無恥・無関心は犯罪である。

2024年1月9日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)