本澤二郎の「日本の風景」(5036)

<清和会崩壊という好機を利用しない岸田首相は政治家失格>

自民党最大派閥・極右の清和会を批判する活字を並べると、一瞬にして文字が消える。今日も体験させられている。しかし、あきらめることはない。安倍・清和会こそが日本政治における諸悪の根源である。東京地検特捜部の裏金捜査は正しい。手抜きは許されない。

問題は岸田首相の対応である。目の上のたんこぶが取れるという信じがたい好機を利用しないことが判った。永田町で不思議千万な事態が起きている。野党が痛々しいほどに落ち込んで姿を見せない中では、岸田に護憲リベラルを支持する多数国民、特に戦争に反対する無数の国民は「本領発揮」を期待していたのだが。

 

過去において三木武夫首相はロッキード事件を最大限に利用して、最大派閥の田中派を抑え込んだ。中曽根康弘はクーデターを策す竹下登に塩を送り続けて田中派を押しつぶした。岸田はいま同じような政治環境にあるのだが、昨日2024年1月4日の年頭記者会見で安倍路線を継承する発言を繰り返した。

岸田は政治家失格、国民生活に目を向けない悪しきリーダーである。日本の不幸は今後も続くことになると断じたい。

 

<憲法を尊重擁護義務に反する毒薬政策強行>

学校教育に根本的な欠陥があるのだが、日本国民の多くは老いも若きも日本国憲法を学んでいない。護憲リベラルの宏池会の指導者は「世界に冠たる平和憲法」と公言していたが、岸田はそのことをすっかり忘れてしまっている。「人間の屑だ」と最大級の批判をする国民もいる。

憲法は二度と政府による戦争を起こさせないための基本法である。したがって「政府や公務員は憲法を尊重し擁護する義務」を負っている。だが、岸田の政策は相変わらず安倍の極右路線を踏襲していて恥じない。年頭記者会見で明らかにした。

東日本大震災級の揺れだった能登半島地震の現地に、5日も経っているのに行っていない。年頭会見の準備で頭がいっぱいだったのだろう。悲しい官邸の現実である。

会見結果は、危険すぎる安倍政治の継続そのものだった。憲法と国民の期待を裏切ってしまった。

 

<泣き叫びたい!43兆円戦争準備を強行>

岸田は43兆円の超軍事大国予算案を、さも当たり前のように繰り返した。日本国民の反発と不安・不信は、この一点にあるというのに、彼は全く耳を傾けなかった。池田勇人・前尾繁三郎・大平正芳・鈴木善幸・宮澤喜一・加藤紘一ら宏池会の先輩が、怒り狂うような憲法違反の戦争準備をそそくさと閣議決定し、それを公然と口走ってみせた。

 

戦争屋の米軍に従属して、戦争しない自衛隊が「戦争しなければならなくなった」日本。安倍・自民党と公明党創価学会の共闘の成れの果てである。中国もロシアも、さらに北朝鮮も身構えている。

東アジアに大軍拡と戦争の足跡が鳴り響いている。

ロシア・ウクライナ戦争では、前者に肩入れしたことから、ロシアの対日外交も破綻してしまった。世界最大の消費大国の中国とも、72年の国交正常化以前に戻ってしまい、台湾独立派政権に対してもアメリカの右派以上にテコ入れしており、細い緊張の糸が内外に不安と恐怖を招き寄せている。

「一発のミサイルが北陸の原発銀座に打ち込まれたら、それだけで日本列島は太平洋の藻屑となるだろう」と誰もが予想している。このことからも非戦の憲法は文句なしに正しい。

筆者は中央大学の橋本公亘教授の憲法原論で、9条の解説を受けた時の興奮を今も記憶にある。政治記者となって出会った改憲論者の稲葉修元法相とは、何度も論争したものである。宏池会の宮澤も9条に対して万感の思いを抱いていた。彼はツネの誘惑を蹴飛ばした信念のある勇者である。

 

<円激安の異次元金融緩和継続による物価高騰で市民殺し>

国民は円安による物価の高騰に泣いている。犯人は「物価の番人」という責務を忘れた日銀の悪政にある。円を刷りまくって財閥の暴利・株高を強行している。日米の金利差も大きく話にならない。

結果として国民は、超格差社会の物価高に悲鳴を上げている。1ドル120円、110円前後が正常である。

円刷りまくりを止めれば正常になる。あるいは「米国債を売れば直ちに円は正常値に戻る」のだが、既にこの10年で、財閥は500兆円、600兆円をため込んでいる。日銀の株買い占めも悪辣すぎる。財閥経営陣の自社株買いもひどい。もうこれだけで数億円の報酬を懐に入れることができる。おかしいとは思わないか。国民が怒り狂う場面ではないのか。

野党が日銀の植田和夫を追及しない。これもおかしなことである。植田を1日も早くやめさせるべきだろう。繰り返し叫びたい。日本国民は、アベノミクスなる財閥暴利の策略にはまって息も絶え絶えである。

 

<任期中改憲に最大限努力と平和憲法敵視>

岸田は「9条は守る」と公言していた。しかし、首相に就任すると、一転して安倍の改憲論をぶち始めた。

こんな立派な憲法は世界広しといえども存在しない。命を懸けて守る価値がある。9条の値打ちはすごい。

改憲を煽り続ける維新を立ち上げた松井一郎の父親は「笹川ギャンブル財団の祖・笹川良一の運転手」「笹川はA級戦犯の岸信介の仲間で、カルトの統一教会の強力な支援者」「維新の馬場は自民党改憲論者・中山太郎の運転手」、もうこれだけで正体がわかろう。判らない読者には特別に講義をしてもいい。

維新の改憲煽りに岸田も応じた発言をした。平和憲法を敵視する政治屋に成り下がった岸田には「満州で岸の配下だった祖父の遺伝子が詰まっている」との評価が理解できるかもしれない。

案の定、岸田の政治刷新会議の布陣は、戦前がまとわりついていて、あきれて論評する気になれない。

2024年1月6日記(政治評論家)

 

追記・昨日は久しぶりに息子が来訪。近くの施設で食事と風呂を堪能。YouTubeに添加物など「危険な餅」が出回っていると報じられていた。安い切り餅は点検しなければならないという。無知は危険きわまりない。詐欺が横行していることも気になる。社会が壊れている証拠であろう。「声を挙げよ」「無恥は犯罪」「無関心は共犯者」「弱者に耳を傾けよ」凡人ジャーナリストも大分成長したかもしれない。