本澤二郎の「日本の風景」(5027)

<金庫番・会計責任者(秘書)と議員は一体=火の中水の中>

永田町では「世紀の大捕物」が始まっている。この10年の間、血税を自由自在に操って大きな腹を膨らませてきた安倍・清和会の4人の幹部(松野博一・高木毅・塩谷立・世耕弘成)が真っ先に東京地検特捜部の事情聴取を受けた。

安倍の懐をよく知る最側近の女性記者や財務相経験者にも、捜査の手が伸びるか注目されている。「事情を知って安倍が激怒」といった捏造報道も浮上し、捜査を混乱させる動きも。

 

かつて「国会議員秘書残酷物語」をエール出版の依頼で取材したことがある。ほぼ100%秘書である金庫番と議員は一体である。ことが起きれば「秘書が」という合唱が議員の側から起きてくる。

秘書に犯罪事実を請け負わせて議員は「生き残る」ことになっている永田町方程式。秘書生活は楽ではない。A級戦犯の岸信介の金庫番は「塀の上を歩いて金集めをするものだ」と清和会議員秘書に覚悟を求めていた。本当のことである。

 

政治家・政治屋の秘書は、覚悟を求められる残酷な仕事をこなしている。したがって「いくら国会議員が秘書と口裏を合わせていても、秘書は逮捕される運命にある」よって「捜査はそのことを百も承知しているのだが、官邸の主からの天の声を検事総長は逆らえない」という関係にもある。

古来より「大山鳴動して鼠一匹」が付きまとうことになる。とはいえ今回の清和会捜査は、国際社会も注目しているし、主権者の国民の大半が、政府自民党や公明党維新にまで不信感を募らせている。不支持拡大は事実である。それでも、野党よりのはずの連合の女性会長が、とうの昔に「革新を放棄」したような共産党を嫌って、野党共闘に反対しているため、自民党と岸田内閣を安堵させている。

自民党内の棒倒しも起きないことが、岸田政権を存続させている。清和会捜査にブレーキをかけない理由ともなって、検察陣の追い風になっている。

 

<不記載・虚偽記載を独断では不可能>

はっきりと国民は、現状を理解する必要がある。政治を動かしている原動力は、カネと票である。民主政治がカネで動いている以上、政界にはやくざごろつきがはびこることになる。

 

「木更津レイプ殺人事件」や袖ヶ浦市の「核汚染ごみ」の不法投棄も、ごろつきやくざと無関係ではない。

やくざに狙われた国会議員も逃げまどう。昔の話だが、中曽根派の若手議員が話してくれた。男前のいい彼は、多分銀座の女性と関係していた。するとやくざが脅しまくってきた。下手すれば、選挙で落選するかもしれない。あわてて親分の中曽根の下に駆け込んだ。

 

さすが児玉誉士夫の靴を磨いたとの噂もある中曽根親分は、児玉に直訴した。途端に脅しまくってきていたやくざは、その後姿を消した。例のロッキード事件で沈没した児玉、対して中曽根は首相の座を射止めた。人間の運命は神仏に左右されることはない。余談だが、ロ事件で危ない時、中曽根の金庫番はなんと中曽根地蔵を作って捜査を免れるように祈っていた。女性金庫番はすごいと思ったものだ。今回はどうだろうか。

 

<問われる検察・検事総長のやる気>

「不記載、虚偽記載は、会計責任者との共謀が認められれば政治家も立件対象となる。ただし、共謀の成立には、政治家からの積極的な指示があったか、会計責任者からの報告を具体的に了承していたかを立証する必要がある」と報じられているが、真実は一つ。金庫番秘書と議員は一体である。

火の中も水の中も一緒。政治屋の夫婦仲は、安倍家もそうだったが、壊れてしまうのが普通。政治屋と金庫番は何事も一緒に行動する。会計責任者の独断は、まずありえない。不思議にも女性を信用する議員ばかりである。

 

検察のやる気が問われる永田町捜査なのだ。

2023年12月27日記(政治評論家)