前篇 第５ 選択本願（せんちゃくほんがん） #jodoshu #開宗850

前篇　第５　選択本願（せんちゃくほんがん）　勅伝第２５巻

本願（ほんがん）と云（い）うは、阿弥陀佛（あみだぶつ）の、いまだ佛（ほとけ）にならせ給（たま）わざりし昔（むかし）、法蔵（ほうぞう）菩薩（ぼさつ）と申（もう）ししいにしえ、佛（ほとけ）の国土（こくど）をきよめ、衆生（しゅじょう）を成就（じょうじゅ）せんがために、世自在王如来（せじざいおうにょらい）と申（もう）す佛（ほとけ）の御前（みまえ）にして、四十八願（しじゅうはちがん）をおこし給（たま）いし其（そ）の中（うち）に、一切（いっさい）衆生（しゅじょう）の往生（おうじょう）のために、一つの願（がん）をおこし給（たま）えり。これを念佛（ねんぶつ）往生（おうじょう）の本願（ほんがん）と申（もう）す也（なり）。即（すなわ）ち無量寿経（むりょうじゅきょう）の上巻（じょうかん）にいわく、設（も）し我（わ）れ佛（ほとけ）を得（え）たらんに、十方（じっぽう）の衆生（しゅじょう）、至心（ししん）に信楽（しんぎょう）して、我（わ）が国（くに）に生（しょう）ぜんと欲（ほっ）して、乃至（ないし）十念（じゅうねん）せんに、若（も）し生（しょう）ぜずば正覚（しょうがく）を取（と）らじと。善導（ぜんどう）和尚（かしょう）、此（こ）の願（がん）を釈（しゃく）して宣（のたま）わく、若（も）し我（わ）れ成佛（じょうぶつ）せんに、十方（じっぽう）の衆生（しゅじょう）、我（わ）が名号（みょうごう）を称（しょう）すること、下（しも）十声（じっしょう）に至（いた）るまで、若（も）し生（しょう）ぜずば正覚（しょうがく）を取（と）らじ。彼（か）の佛（ほとけ）、今（いま）現（げん）に世（よ）に在（ましま）して成佛（じょうぶつ）し給（たま）えり。当（まさ）に知（し）るべし、本誓（ほんぜい）の重願（じゅうがん）虚（むな）しからざることを。衆生（しゅじょう）称念（しょうねん）すれば、必（かなら）ず往生（おうじょう）を得（う）と。念佛（ねんぶつ）というは、佛（ほとけ）の法身（ほっしん）を憶念（おくねん）するにもあらず、佛（ほとけ）の相好（そうごう）を観念（かんねん）するにもあらず。ただ心（こころ）をいたして、もはら阿弥陀佛（あみだぶつ）の名号（みょうごう）を称念（しょうねん）する、これを念佛（ねんぶつ）とは申（もう）すなり。故（ゆえ）に称我（しょうが）名号（みょうごう）というなり。念佛（ねんぶつ）の外（ほか）の一切（いっさい）の行（ぎょう）は、これ弥陀（みだ）の本願（ほんがん）にあらざるがゆえに、たとい目出（めで）たき行（ぎょう）なりといえども、念佛（ねんぶつ）にはおよばざるなり。大方（おおかた）、其（そ）の国（くに）にうまれんとおもわんものは、その佛（ほとけ）のちかいに随（したが）うべきなり。されば、弥陀（みだ）の浄土（じょうど）にうまれんとおもわんものは、弥陀（みだ）の誓願（せいがん）にしたがうべきなり。