第二十話 終戦工作その1
いよいよ終戦工作です。
終戦工作は、日本史上のハイライトではないかと思います。
なぜなら、歴史の中で日本民族が滅亡に瀕したのは、後にも
先にもこの時だけだからです。もしも終戦工作が失敗してい
たら、日本という国家は世界から消滅していたかもしれない
のです。 その割には、終戦工作について分かり易く書かれ
た本は少ないようです。そのため、詳しく知っている人も少
ないようです。学校では、縄文人が何を食っていたか教える
前に、子供たちにこういう事を教えるべきだと思うのですが。
本論に入る前に、当時の国際情勢を俯瞰してみたいと思います。
まず、日本の唯一の同盟国だったドイツは、1945年5月
に降伏してしまいました。どうしてかというと、ヒトラーが
4月末に自殺しちゃったからです。ヒトラーの死は、ナチスと
いう国家体制を崩壊させたのみならず、ドイツ全軍の士気を
ゼロにしたのです。彼が、いかに物凄いカリスマ指導者だった
か良く分かります。
陸軍は、「本土決戦」を豪語しました。民間人に竹やりを
配り、刺殺の訓練をさせました。スローガンは「1億玉砕」です。
しかし、この愚劣な計画は、実現不可能だったことでしょう。
なぜなら、上陸してきたアメリカ軍を迎えるのは、竹やりを抱
えた市民の群れではなくて、大量の餓死死体だったはずだからです。
厚生省の戦後の調査によれば、1945年の年末まで戦争が長引
いていた場合、全国民の1/3から半数が餓死していた
可能性があるそうです。 ほとんどの日本人は(お偉方を除く)、
1945年に入ると、最低摂取カロリーの半分も摂ることが出来
ませんでした。配給のお粥は、箸を立てると倒れるほどに貧弱な
ものとなり、食卓の主食は、家族当たり1本のサツマイモでした。
子供たちは、野山でトンボを追いまわしました。何のため?
もちろん食うためです。 しかし、軍部のお偉いさんは、
このような情勢を全く問題にしていませんでした。厚生省の
お偉いさんは、「ドングリの粉を食う方法を開発中ですから、
民生は問題ありません」と、アホウなことを閣議で述べてい
ました。軍部のみならず、厚生省もバカだったんですねえ。
この情勢を最も憂慮したのは、実は昭和天皇でした。
2.日本の病んだ政治構造
実は、終戦工作については、正確な記述が難しいのです。
なぜかと言えば、証拠資料が乏しいから、多くの部分を
推測で補わなければならないからです。
どうして資料が乏しいのか? 終戦は、
「天皇&政治家グループ」が、陸軍を中心とした「軍部」
と対決し、これを圧伏する事で実現したのです。
しかし、後者は正常な理性を喪失して暴走していましたから
、もしも前者が終戦工作を進めていることを知ったら、
ただちにクーデターを起こすことが明白な情勢でした。
ですから、終戦工作は、最後のギリギリの段階になるまで
「密談」と「腹芸」で進められたのです。そのため、
日本史上のハイライトであるにもかかわらず、正確な経過
が良くわからないのです。
ルーズヴェルトこそ「戦争犯罪人」といって差し支えないと
思うのです。そして、この非道な政策によって日独が弱体化
したため、ソ連の勢力が急浮上して、アメリカの国益を脅か
しかねない状況になってしまったのです。トルーマン政権は、
この事態を大きく憂慮して、なんとかして第二次大戦を早期
終結させたいと考えたのでした。
これが、「ポツダム宣言」として結実します。