ウェンロックリバーに到着
川には橋が架かっていない。


浅瀬を選んで自転車を担いで歩くしかない。
荷物を積んだままの自転車は重すぎて、そのまま担ぐと横転する危険がある。
面倒だが荷物を全て外して、何度かに分けて運ぶ必要がある。
とは言えできるだけ少ない回数にしたい。
川に住むワニに襲われるリスクを減らしたいからだ。
ココを4WD車で超える人達は多い。
川を果敢に越えていく4WD車の姿はカッコイイ。
渋谷でシャコタンの4WD車に乗ってるアンポンタンに、4WDとは本来こう言うモノだと見せてやりたい。
生産国の日本では邪道な使われ方をしているが、海を越えた国では本来の使われ方をしてるなんて、なんとも皮肉なもんだ。
さて、川を渡ろうとした時だ。
4WD車に乗った人が、俺の車の上に自転車を載せろと言っている。
ありがたいが、それじゃー自転車旅の意味が無くなるからやんわり断った。


しかし、無理矢理自転車を運び、屋根に載せちゃった。
マイトシップと言って、困っている人に手を差し伸べるのが当り前だと言う文化がオーストラリアにはある。
過酷な地を生き抜いた彼らならではの文化なんだろう。
ありがたい時もあるが、ありがた迷惑な時もあるのが本音なんだよね。
でも断るとややこしくなるので、好意を受け入れることにした。
今夜は、ウェンロックリバーの脇でキャンプ。
4WD車で旅する人達が同様にキャンプしている。
中にはビールサーバーを車に積んで旅するオッサンがいた。


こいつバカだなぁ~と思いながらも、
「すげーな、すげーアイディアだ!ビールサーバーを積む車なんて見たことが無い!アンタはオーストラリア1のクレバーな奴だ!」と褒めちぎり、生ビールをご馳走になった。うひひ。
ここで明日のチャリダー(自転車乗り)を目指すキミに、テントを張る時の、取って置きの作法を伝授しよう!
キャンプ場に着いたら、どこにテントを張っても構わないが敢えてつらそうな顔をしながらも笑顔を振り撒きウロウロする。
すると誰かしら声をかけてくる。
「ここ空いてるよ!テント張れよ!!」
間違い無く彼等はフレンドリーな奴等だ。
「May I?」と一応しおらしく聞く。
「もちろんさ!疲れているだろう。ビール呑むかい?」
「うおぉぉぉー、さんきゅぅぅぅ!!」
「食料は持ってるの?」
「もちろんあるけど、乾燥野菜とかドライフルーツとかインスタントラーメン。あんまりおいしくないけど、自転車で運ぶから軽いコトを重視してるんだ。」
「そうか、だったらディナーは一緒に食べよう。ステーキだけど君はベジタリアンか?」
「そんな訳ないじゃーん、食べたーい。お肉チョー好き オーストラリア産のビーフは世界一だしさー。これでスタミナ満点、明日はバリバリ走れるぞー!」
そう俺は甘えん坊将軍!人の好意はしっかり受け止めるのが礼儀だ!
さぁ、キミも甘えん坊将軍になって、チャリダーを目指そう!
そして、彼らとの話も楽しい。
「どうして自転車なんだ?」
「夢、そしてチャレンジだ」
「カッコイイー」
良く聞かれる質問だが、日本語でも上手に説明できないのに、ましてや英語でなんか答えられっこない。
だからDreamとかChallengeと言う。そー言っておくと受けは良い。
夜、川の水を汲みに行こうとすると、オージー達が止めた。
昨夜ここでワニを見たと言う。
ちょびっと恐くなったので、テントを川から少し遠ざけた。