ようやくナラボー平原を抜けた。
着いた町Cedunaは小さい町であったが、ナラボーを超えた俺にとっては、すんげぇデカイ街に思えた。
ここのC.P.のオヤジがカニをつかまえる仕掛けを貸してくれた。

桟橋で捕まえて、味噌汁の素と一緒に煮込んだ。
あぁ、何て美味いんだろう。久しぶりの贅沢だ。
でもコレに日本酒があればなぁ~カニミソを肴にきゅぅ~っと...あぁ...
それと、2週間ほど生野菜を食べていなかった。手に入らなかったからだ。
(途中のロードハウスに売ってはいたが、むちゃくちゃ高くて買えなかった)
生野菜に飢えていたため、キャベツ丸ごと一個にひたすらかじりついた。

~ナラボー平原を越えて~

 本当に何も無い所だった。
100~200kmおきにロードハウスが点在し、ひたすら続く地平線と広い空。
行けども行けども1200km、2週間の間、同じような景色と向い風。
轢かれたカンガルーがあちこちに無残な姿で横たわり、その異臭は凄まじい。
風にのって1km先から臭う。
気温は40℃を超え、運んでいるコーラーと水は湯と化す。
強い日差しを逃れ木陰を探すが木が全く無い所もあった。
自転車から降りて休むと風を感じなくなるので余計に暑い。
又、何十匹ものハエが水を求めて目、鼻、口へとタカってくる。
結局乗り続けるしかない。その横をエアコンの効いたバスが追い越していく。
中を見ると冷たいコーラを片手にしてる奴もいれば寝てる奴もいる。
こんな時は正直、自分のやってるコトが虚しくなる。
それでも、ここを越えようとするサイクリストは多いらしい。
ナラボーですれ違うことは無かったが、ドライバー達がこの後を走ってくるサイクリストの存在を教えてくれた。
過去に、徒歩で挑戦した奴もいるし、日本人の女の子でリアカーを押して走破している。
彼等の存在は自分にとって心強かったし、比べると自分のやってるコトなんてたいしたことはない。
そしてオージーはとても親切だ。
車から声を掛けてきて、水持ったか?食料あるか?と聞いてくる。
勿論、十分な水と食料は持ってるが「少しある。多分大丈夫だ」としおらしく言うと、冷たい水やドライフルーツ等を恵んでくれる。
C.P.に着いた時も、すぐにテントサイトへは行かずバーベキューしているオージーの前を通り、わざと思いっきり疲れた顔で挨拶する。
かったるい動作でテントを組み立てると声を掛けてきてくれる。
「How are you?」
「すっげー疲れてる(ちょっとウソ)。休憩したいけど早くしないとスーパーマーケット閉まっちゃうから(行くつもりはない)。」
「Don't worry.こっちへ来なさい」こうして俺はタダでステーキをゲットする。
ついでに「のど乾いたなぁ」と言いビールも貰う。
普段は暴れん坊将軍の俺だが、こ~ゆ~時は一転、甘えん坊将軍になってしまう。
遠慮は日本の悪しき習慣だ!親切には甘えてしまうのが礼儀だ!!
こ~して人々に助けられ、無事ナラボー平原を越えられた。
ありがたいことですな。