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『新しい労働社会』濱口圭一郎
1)
a 正規労働者であることが要件の、現在の日本型雇用システムについての問題提起を主とした本である。正規、非正規の別をこえ、合意形成の礎をいかに築き直すか、問われているのは民主主義の本分である。どう解決していくべきであるか、雇用制度の国際比較と歴史的考察を駆使し、法律、政治、経済、経営、社会、教育など、さまざまな側面から、今後の労働社会のあるべき姿を提示したのが本書である。

b 本書は日本の雇用システムと労働政策について国際比較と歴史的考察によりさまざまな問題点が整理されており、非正規雇用やワークライフバランス等について考える際にもとても参考になる本である。私もアルバイトをしているが本書に載っているような詳しいシステムなどは理解せずに今まで働いてきてしまっていた。これからどんどん就職のことについてなども考えて行かなかければならないのにこんなに労働について無知であるのはいかがなものだろうかと思い本書を選んだ。
また、労働政策審議会の三者協議による政策形成過程と経済財政諮問会議による政治との関係等、考えさせられる内容も豊富である。

2)必要なのは労働組合の再構築だと筆者は主張している。非正規労働者の賃金に関しても参考にすべき先例がEUには存在する。欧州の賃金制度は日本とは違い、職種と技能水準に基づくが、日本型の年功賃金が適用される。これを「期間比例原則」という。たとえ非正規雇用であっても、こうした勤続期間を勘案した待遇を義務付けている欧州のやり方を、日本にも導入すべきだ、と著者は主張しているのである。
 こうやって、正社員と非正規労働者の格差を縮小していくと、正社員の特権=年功賃金が担ってきた生活保障機能が破壊されることになるから、子供の養育費や教育費を社会的に負担する公的給付システムが必要となる。こうした改革をどう進めていくべきか。著者は、賃金や労働条件のあり方は誰かが上から現場に押し付けるのではなく、労使がきちんと話し合って決めるのが筋だとしている。その舞台は労働組合であるべきだが、日本の企業別組合は正社員のみに加入資格がある。これを改め、正社員と非正規労働者を包括する公正な労働者代表組織としての組合を再構築すべきだと著者は主張しているのである。さらに言えば現行の労働組合法には規定がない、企業経営への組合の関与を法的に保証することも必要である。

日本では会社が住宅費や教育費を補助するという生活給が基本であったが、それによって長期勤務のインセンティヴは高まり、転職の容易でない不自由な社会になった。社員はどこまでも会社に拘束される存在になり、長時間労働が模範とされてしまった。途中でやめてしまえば、会社の保障から放り出されてしまい、いまの非正規やシングル・マザーのような存在になるからいやでも会社にしがみつかざるをえないのである。

フランスでは19世紀後半に家族手当がひろまりだしたが、それができたことにより沢山の扶養者を抱えている労働者を雇いたがらなくなる。日本でも核家族が戦後ふえたのは生活給のしくみがあったからだろう。年齢と関係ない職務給であったら同一労働同一賃金は容易に拡まり生活給にメリットを感じる正社員と保障をしないですむのだ。だが企業は固定コストである人件費を削りたがっており、それを表すように非正規はどんどん増えており、それで結婚したり子どもをもてない若者が大量にふえているのだから、政府が企業に変わって住宅費や教育費を補助しなければならない時代が確実にきたということになるだろう。政府はその保障をするようになったら、労働者は企業のくびきから逃れられて自由な生き方ができるようになるだろうし、非正規の貧困や非婚、少子化は改善されてゆくことになるだろう

3)

c 労働者へのケアあとして様々な改革として手当てなどが出されているわけであるが私は本書を読むまではそれらは労働者への適切なケアを行き渡らせる素晴らしいものであるとどこか勘違いしてしまっていた。これらのケアはすべての人に行き渡るわけではない。正規雇用者にしか届かないのだと知った。そしてその正規雇用者の人数を手当てにかける財源のカットのために削っているというのも衝撃的なものだった。

d 本書では労働者がいま現在の労働の有様から抜け出し自由な生き方ないしは働きかたをすることができれば少子化、晩婚化などが解消されていくだろうと主張しているが、まだ解決の糸口すら見つかっていないのが現実である。

4)ブラックバイト、最低賃金の引き上げ、扶養の壁、私が今アルバイトしているだけでもこれだけ気になるワードがある。これらも本書と全く切り離せるものでない。もっと自分自身で雇用、そして労働について考えを深めていくことが重要である。

5)濱口桂一郎 2009『新しい労働社会』岩波新書