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『学力の経済学』中室牧子

1)
a 子育てでよく話題になる『ご褒美で釣ってはいけない』『ほめ育てはしたほうがよい』『ゲームをすると暴力的になる』という教育専門家たちの意見を、データをもとにバッサバッサと切り捨てていっている。そして、効果のある具体的なご褒美の与え方、褒め方などももちろん書かれている。アウトプットでなく、短期的な行動(インプット)に対してインセンティブで、能力でなく努力したという事実を褒めるというスタイルがいいとしている。

b もちろん子供のいない私にはまだまだ分からない点もあるがいつかは子どもを持ちたいという考えがあるのでこういう本を読み子育てについての教養を深められたらいいと考え選んだ。専門家の意見が必ずしもあっているとは思えないし、そういった外部からの意見を鵜呑みにしてしまうのではなく、現場での検証からの議論でとてもわかりやすい本だった。

2)
教育にエビデンスを、をテーマに話が進む。子どもへの投資は0〜3歳までがいいと本書ではしている。人生で初めの段階で得た知識はその後の教育で役立つ。家庭教育が特に学力に影響しているのに、全国の診断テスト等では学校や都道府県の順位しか出ない状況についても言及している。教育においてはバックグラウンドが非常に重要になっている。ゆとり教育で土日休みになってから、学歴の差がより出てきた。
インプットとアウトプットを数値化するのに難しい「教育」について、経済学というか統計学の手法を用いてその効果を明らかにする。海外ではすでに実践されている手法だが、日本ではまだ未発達な分野だ。 アウトプットよりインプットに対して褒美をあげる。 能力より努力を褒める。 勉強を通してやり抜く力、自制心を身につけ。それが生涯役に立つ。 少人数クラスの費用対効果は少ない。 教育にかけた費用と将来の見込める収入から「収益率」を計算してグラフにすると、幼少にかけた教育が最も高くなる。限られた資金や労力を有効な事柄や場面に費やすー経済学的視点を教育の面においても用いて見直すべきなのではないかと著者は主張している。 言動や物事を省みて見定めるためには、因果関係か相関関係かはっきり区別することは大切である。幼児教育による学力やIQへの効果は、実はごく短期間のものであることがわかっている。だが、学力やIQとは違って、自制心ややり抜く力などの非認知スキルを身につける。実験データをもとに費用対効果で考えるのが教育経済学の視点。これが日本の教育制度に欠けている視点でもある。たとえば少人数学級が学力向上によいとされているが、実は他の政策と比較すると費用対効果は低い。
アメリカでは教育経済学の知見が教育政策に活かされ、その貢献がさらなる期待やニーズを生み、教育経済学が発展するという好循環を生んでいる。これに対し日本の教育政策は、少人数学級や学力テスト、子ども手当など、根拠のない期待や思い込みで財政支出を行ってばかりである巨額の財政赤字を抱える日本にそんな余裕はないはずだ。限りのあるお金をどのように使うのかが重要であり、そのとき教育経済学の知見がもっと活かされるべきだろう。教育を投資としてとらえるとかなり効率のいい投資である、という点はかなり興味深い。教育投資への収益率は、株や債券などの金融資産への投資などと比べても高いことが、多くの研究で示されている。金持ちになりたければ、勉強をしましょう。そして、子供に裕福な生活をさせたいなら、教育はしっかりほどこしましょうね。ということである。教育を受けることの経済的な価値というと、難しい言葉のように聞こえる。しかし現実は高卒と、大卒業では、生涯で稼げるお金に、実に1億円の差があります。この差を一気に埋めるといったって宝くじで一億円当てるくらいしか思い浮かばない。しかし、宝くじで1億円が当たることを夢見なくても、大学へ行けば生涯で稼げるお金は1億円高くなるのですよという意である。

3)
c 何かできたら褒めてあげるというのは人間だけでなく動物にも言えることであり、それは人に対しての重要なものであると私は感じていたが、その結果を褒めるものであると思っていた。しかし重要であるのはその結果ではなく、プロセスであり、そのプロセスを褒めてあげることであると主張していてなるほど...と思わず唸ってしまった。評論家の子育て論を全て鵜呑みにしてしまうのではきっとうまくいかない、彼らは現場での経験を書いているわけではないからだ。これを科学的根拠を用いて主張している本書は本当に子育てをしている親たちの支柱となるだろう。
d 今の現状としては一体子どもをどういう風に育てていけばいいのか悩んでいる親は多いだろう、これはいつの時代でも言えることであるが。私の考えと同じように結果を褒めるだけの教育が多いように思える。大切なのは過程であり、学ぶことである。

4
子を持つ親でもない私でもとても参考になる本であった。大切なのはプロセスであり、常に勉強することであるということをまた学んだ。親だけでなく教育者などにも読んでもらいたい。

5 中室牧子 2015 『学力の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン