トルーマン・カポーティーの清明な文章で語られる、
アメリカ中西部カンザス州の農村。
そこで起きた凄惨な事件のありさまと加害者の生い立ちや言葉。
美しさと残酷さの入り混じったその作品は、
読む者の心に一生消えない痛烈なインパクトを残す名作です。

そんな『冷血』の日本現代版ともいうべき小説を高村薫が描きました。
愛読している合田シリーズの新刊っ♪
といった軽い気持ちで手にとったのですが、
その言いようのない重さに、胸をズシーンとやられた気分です。

国道16号線沿いのやるせない雰囲気が小説世界に見事にマッチしていて、
裏街道をひた走る2人の男の人生が目に見えるようでした。
どうしてこんなことが?
そういう事件や事故が多い世の中。
すべてを飲みこんでしまう殺人事件のダイナミズムが圧巻です。

冷血(上)/高村 薫
¥1,680
Amazon.co.jp

冷血(下)/高村 薫
¥1,680
Amazon.co.jp

新作がでたら、とりあえずとるものもとりあえず読む!作家のひとり宮部みゆき氏。
ということで、『ソロモンの偽証』も読了しました。
かなり物量感のある3冊組ではありましたが、
読み始めたら止まらない宮部マジックのおかげで、
あっという間に終わりの時が。
さすがにあれだけの長さだと、読み応えは充分でした。

いじめや若者の自殺の問題、
それに巻き込まれる人々の姿、
遺された人々の思いなど、
さまざまなことを考えさせられる小説でした。

中学生の裁判というのは、
フィクションならではといった舞台装置だなと感じましたが、
だからこその迫力を感じました。

宮部みゆきの描く裁判ものをいつか読みたいと思っていましたが、
まさかこのように実現するとは!?
その意外性に驚いています。
何度か読みこんでこそ、作者の意図を読み取れるのでは?
とも思い、今後、この本が自分のなかで熟成していくのを待つつもりです。

ソロモンの偽証 第I部 事件/宮部 みゆき
¥1,890
Amazon.co.jp

ソロモンの偽証 第II部 決意/宮部 みゆき
¥1,890
Amazon.co.jp

ソロモンの偽証 第III部 法廷/宮部 みゆき
¥1,890
Amazon.co.jp




ジョン・グリシャムの『謀略法廷』を読みました。
もちろん、グリシャムの小説はいつも面白いのですが、
本作はことさら面白かったです。

長い長い裁判の陪審評決を待つ人々。
それは長い歳月と多額の費用のかかる難物だったことがやがてわかってくるのですが、
夫婦ものの法廷弁護士の活躍によって・・・。
というのが物語のはじまり。
はじまりからギューッとひきこまれてしまいます。

この作品で目玉となるのは、
なんといっても州最高裁裁判官の選挙がらみのお話。
私はこの作品を読んでいて、
さすがにここまでの話は現実離れしているのでは、と感じていました。
でも先日、『ホットコーヒー裁判の真相』というドキュメンタリー番組を見て唖然。
驚くことに、こうした企業側の裁判官就任に関する問題は、
いまアメリカで現実に起きている話なのだとか。
ほかにも裁判に関してアメリカでは、
仲裁条項に関する問題などが起きているなど、
さまざまな論議が行われているようです。

裁判員制度を導入したばかりの日本でもやがて、
こうした問題が起きてくるのでしょうか。
アメリカの諸問題は10年ほど遅れて日本にやってくるようですが、果たして?

ところで、『ホットコーヒー裁判の真相』にはグリシャムのインタビューもありました。
本に掲載されている写真よりも、するどい目つきをした二枚目でした。

謀略法廷〈上〉 (新潮文庫)/ジョン グリシャム
¥660
Amazon.co.jp

謀略法廷〈下〉 (新潮文庫)/ジョン グリシャム
¥740
Amazon.co.jp


最近話題のステマについて詳しく知っておきたいと思っていたので、「爆発的に広がるステマの実態 人の心を操作するブラックマーケティング」というタイトルはかなり魅力的で、買ってすぐに読むことにしました。
本のなかには、ステマの事例や規制、ステマを見破る技術などについて詳しく書かれています。
ステマという言葉の定義すら定かでなかった私には、目からウロコのようなお話ばかりでした。

この本を読んでステマというマーケティング手法について知るほど、こうした形態の販売戦略は今後とも容易に排除されるものではないということがわかってきます。
そしてネットビジネスにおけるステマに悩まされる現代と、かつての「ガマの油売り」を容認していた世の中とでは、大きく違う点もあると感じました。
かつての「ガマの油売り」の口上は芸の域にまで達し、客を喜ばせようというホスピタリティもあったようです。
また消費者もそれに騙されていたばかりではなく、そうした販売上の演出を楽しみ、かつ芸への対価を支払うような気持ちをもっていたのではないかと思います。
それに比べ、現代で問題を起こすステマの実態というのは、より直接的、かつ稚拙で、消費者を騙すこと以外の目的を持たないものであるようです。
時代が進み、IT技術が進化しても、こうしたネット上のビジネス展開をみるに、運用する人間の進化が遅れていると言わざるを得ません。

本の最後に書かれているように、ネットでビジネスをと考える人は安易に売上を上げようという考えを捨て、消費者との長きにわたるお付き合いを求めるようシフトしていかなければならないと思います。
ステマの現状を紹介したこの本を読めば、その実態がわかり、むやみに怖がる必要がないということが分かります。
同時に成熟した消費者へと成長するためには、安物買いをやめて、自分の価値観にあった品を認めるよう成長しなければならないのだなと反省しました。



人の心を操作するブラックマーケティング/芳川 充
¥1,365
Amazon.co.jp


怪優サミュエル・L・ジャクソンとロバート・カーライル主演の『ケミカル51』を観ました。
いま日本では、脱法ハーブなるものが流行しているようですが、
この映画を観れば、
そんな中途半端な薬物でハイになっている自分を恥ずかしく思い、
脱法ハーブからも、他のあらゆるイケナイ薬物とは、
キッパリと縁を切ろうと思う人が増えるに違いないと思います。

サミュエル・L・ジャクソンの演じるエセ科学者が、
究極のドラッグを自ら開発することから物語は始まります。
サミュエル・L・ジャクソンの、あの独特の話し方と歩き方、
あれにハマると、もう映画の世界から抜け出せなくなります。
オシャレで、カッコよくて、笑える映画で、
前にDVDを借りたときにもらった映画の宣伝用ステッカーは、
いまも大事に持っています。


ケミカル51 DTS版 ― スペシャル・エディション [DVD]/サミュエル・L・ジャクソン,エミリー・モーティマー,ショーン・パートウィー
¥3,990
Amazon.co.jp


『羊たちの沈黙』、『レッドドラゴン』、『ハンニバル』、『ハンニバル・ライジング』といえば、
4作品がすべて映画化もされた、ミステリー(ホラー)小説界の記念碑的シリーズです。
寡作で知られる著者トマス・ハリスは、
この他には『ブラック・サンデー』という、これまた名作あるのみ。
もっと、もっとォ、というファンの悶えを知ってか知らずか、
著者は沈黙を守っています。

ミステリー小説好きな私。
そもそもはこの『羊たちの沈黙』にハマったのが始まりでした。
まだ映画化される幾年も前、
人物のあつみ、物語の展開、スキャンダラスな猟奇殺人。
すべてが衝撃的で、この小説を初めて読んだときの喜びは、
いまも忘れられません。
『ブラック・サンデー』以外のそれぞれの映画も、
とても出来が良く、
とくにアンソニー・ホプキンスのハンニバル・レクター博士役は、
ハマリすぎではないでしょうか。

ただの猟奇趣味的な小説に終わることなく、
世紀の悪漢として、またダークヒーローとして、
ハンニバル・レクター博士の右にでる者はいません。

素晴らしい作品を生み出すトナス・ハリスには、
是非ともまた度肝抜かれる作品を描いていただきたいです。
それまでは、
フェルメールの絵画を所蔵している美術館を巡り、世界中を旅するバーニーのように、
いつかどこかで彼らをみかけることがあっても、
けっして気付いたそぶりをみせないように注意しましょう。

ハンニバル〈上〉 (新潮文庫)/トマス ハリス
¥746
Amazon.co.jp

ハンニバル〈下〉 (新潮文庫)/トマス ハリス
¥830
Amazon.co.jp



『犯罪』は、ドイツの著名な弁護士である著者が、実際に扱った事件をベースとして書かれた物語集だそうです。
犯罪をテーマにした小説を読むと、舞台となる土地のありようがヒシヒシと迫ってくるのが常ですが、とくにこの作品にはヨーロッパとドイツ、のみならず地上のあらゆる場所の現状が色濃く表れているような気がしました。

連作短編というスタイルも良くて、
さまざまな事件の物語のなかで、垣間見えるような感じで主軸である弁護士が登場します。
あくまでも主人公は事件や犯罪なのだと言いたげな、
その登場の仕方が控えめで、作者の意図をしっかりと伝えてくれます。

事件の当事者として、被害者や加害者、警察関係者や検事、判事など、
さまざまな人物が入れ替わり立ち替わり表れ、
含蓄ある言葉や意味不明の言葉を語って去っていくのが面白いと思いました。

言葉ではなく、物語として語られてはじめて伝わる、人間にとってなにかとても大切なこと。
そうした大事なものがちりばめられている作品だと感じたので、
ひとつひとつを拾いあげ、噛みしめながら、
何度でも読みかえそうと思っています。

続編の『罪悪』もとても楽しみです。

犯罪/フェルディナント・フォン・シーラッハ
¥1,890
Amazon.co.jp

罪悪/フェルディナント・フォン・シーラッハ
¥1,890
Amazon.co.jp



映画『レナードの朝』で有名なオリバー・サックスの著書『音楽嗜好症』を読みました。

サブタイトルがすごくて、「脳神経科医と音楽に憑かれた人々」となっています。
憑かれたって、一体どんなだ?
と思い読んでみると、なるほどこれは「憑かれた」としか言いようのない、
音楽にまつわるさまざまな症状の数々。
人々にとって喜びや感動、癒しをもたらす音楽が、
憑いて離れなくなってしまったとき、
その生活はどのようになってしまうのか、
想像するとちょっと怖いような気もします。

けれども読んでいて1番に感じたのは、
音楽に憑かれた人々の心の強さや音楽に対する愛情の深さです。
なによりも不便な生活を強いられながらも、
それを受け入れ、前向きに生きようとする人々の姿勢に、
心を動かされました。

オリバー・サックスの著書は、
一般の人にもわかりやすくて、読みやすくて、面白いです。
これまで『妻を帽子とまちがえた男』や『火星の人類学者』などを読んできましたが、
ただ読みやすいというだけでなく、
登場する人々の生活の細部や人生について、丁寧に書かれているところが好きです。
これまで聞いたことのない職業についている人や、
行ったこともない外国で暮らす人々について、
まるで知り合いのことのように感じることができます。
脳神経に関する本なのに、
これほどまでに共感したり、感動したりできるのは、
著書の姿勢のあらわれではないでしょうか。

ところで最近、『小澤征爾さんと、音楽について話をする』という本も読みました。
これはとくに小澤さんのあとがきで、
村上さんについて書かれた箇所が面白かったです。

音楽嗜好症(ミュージコフィリア)―脳神経科医と音楽に憑かれた人々/早川書房
¥2,625
Amazon.co.jp


山口雅也さんの『狩場(カリヴァ)最悪の航海記』を読んでいたら、
以前読んだ『前日島』が無性に読みたくなってしまいました。
そこで本棚をあさること小一時間。
ようやく見つけて読み始めたら、止まらなくなってしまいました。

これは『薔薇の名前』でお馴染みのウンベルト・エーコ作品。
船が難破して、絶海の孤島にたどり着いた主人公。
その独白を洒落っ気たっぷりに冷やかしてみせて、物語は進んでいきます。
ニヤニヤと笑いをかみ殺して読みすすむ快感は、
ウンベルト・エーコの著作ならではの喜びではないでしょうか。

主人公の目前に立ち現れる南洋の世界と、
その心のうちにある幻想の世界とが入り混じり、
読者にはなにがなんだか・・・という感がなきしにもあらず。
それがまた、リアル!
ときに私たちの心や現実って、そんな風に入り混じったりすることがありますよね。

進めば進むほどに、難解な表現の迷宮にはまり込んで苦労します。
そこが、また、イイ!
現実を忘れて、束の間のブラックホール感覚を体験するには最適の1冊です。

前日島/文藝春秋
¥2,400
Amazon.co.jp



ヘニング・マンケルの作品、お初でした。
何故いままで素通りできたのだろう?
と不思議になるくらい有名なシリーズ。
とうとう1歩踏み出すことができました。
シリーズ7作目からのスタートという不本意な出だしではありますが、
とても面白くて、アッという間に読み終えてしまいました。

主人公ヴァランダーの疲弊具合がとてもイイ!
疲れがページの間から沁み出てくるようで、
こちらも心地よい疲労感を味わいました。
老いと疲れを引きずって歩きながら、それでも前を向く主人公の姿は、
共に老いゆく私たちに勇気を与えてくれます。

スウェーデン作家の作品って、
何故か私にしっくりとハマるような気がします。
それから「疲弊」というものを表現させたら、
スウェーデン人が1番なのではないかと思いました。

背後の足音 上 (創元推理文庫)/ヘニング・マンケル
¥1,260
Amazon.co.jp

背後の足音 下 (創元推理文庫)/ヘニング・マンケル
¥1,260
Amazon.co.jp