5月23日更新分・何記理髮店-大火【石頭FB ノート】 | 手上のコイン Blog

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五月天の石頭がFBのノートに書いてる日記を、ちょこちょこ翻訳しております。おかしいところがあれば、ご指摘下されば幸いですm(_ _)m


石頭FBノート 何記理髮店-大火'170523


何記理髪店ー大火 5月23日更新


次の週の金曜日が劉鳳の六歳の誕生日だった。毎年一月一日の前に、母親は自らの手で彼女の新しい服を縫うのだ。
今日、日が暮れる前の時点で襟刳りだけがまだ仕上がっていなかった。
袖の部分はどうやら父親の破れたズボンをリメイクしたものだ。前後の身ごろは隣のおばさんが戸口に捨てた古い服のもの。
劉鳳の母親の器用な手は、この誕生日プレゼントを、隣近所の人が彼女がへそくりで新しい服を劉鳳に買ったのかと疑うほどのものに仕上げていた。
けれどこの新しい服はみんなにお披露目される前に、家族の絆に嫉妬したかのような大火に呑みこまれ、もともと逃げ延びてきたため、微かで稀薄だった思い出や愛着と共に灰となった。

酒に酔った父親は、寝床に入っていて、周囲の人の叫び声も聞こえていなかった。母親は大火が彼らの集落に迫って来たのを見て、ようやく父親から殴られる恐ろしさを思い切り、彼を揺り起こした。
あるいは父親は既に酔いから醒めていたのかもしれない、それとも、母親がこのように狼狽えているのを見たことがなかったせいなのだろうか、彼は意外にも冷静に劉鳳を抱きかかえ、母親の手を引き、外へと逃げ出した。
声も発さず、彼女たちが落ち着くのを待ち、実家から持ってきたお婆さんにもらった大事な綿の上着を救い出しに火事場に取って返そうとした頃には、大火は既に彼の家の屋根にまで達していて、炎は部屋の全ての開口部から吹き出し、あらゆる者に近づくなと警告していた。

誕生日から何日か過ぎていた劉鳳は、同い年の子供よりも物事がわかっていてとても聡明だった。
大人しく母親に寄り添う彼女の眼差しは十歳の子供のように超然としていて、まるでこの火事とは無関係のようだった。
事実その通りで、劉鳳の身の回りにあるものはまだ何も彼女の持ち物では無かったし、もし彼女が手放したくないものがあったとするなら、それは彼女がいま手の中に 握りしめている三個の変わった小石だけで、かりに本当に火事場に落としてしまったとしても、劉鳳は母親がいつも星を見に連れていく行く山の入り口に、まだたくさん彼女が“地上の星”と呼んでいる石があることを知っていた。

大火は一昼夜燃え続け、泣き叫ぶ声は止まなかった。そんな人の心を引き裂くような声の合間に入り交じっていたのは、火事場泥棒を働いた者が見つかった後の、男共が揃ってその前で怒り罵る声、それに殴打と命乞いだ。
俺が救い出した財産が大火で消えてしまう、と泥棒が残念がって言うのを聞いた父親達は、なおのこと力を込めて、殴ったり蹴ったりした。
その言い方が、まるで彼らが火の海に飛び込む勇気がないと嘲笑しているようだったからだ。
それゆえ彼らは、全てのエネルギーと怒りを、一個の灯油ランプと一枚の掛け布団しか盗めなかったコソ泥の身体で発散した。

劉鳳は周囲の大人のする事には全く頓着していなかった。彼女はただ炎の輝きが夜の空を染めるのを静かに見ていた。
時に赤く、時に黄色く、彼女はこんな特別な情景を見たことがなかった。炎はある時は地面から上に向かって牙をむき、ある時は雷の閃光のように燐光を空中に舞いあげていた。
彼女は身を寄せている大樹の下で、昼になるまでずっと炎の光を眺めていた。
疲れて母親の膝の上で目を閉じた時、かすかに、誰かがここで一緒に避難しても構わないかと尋ねるのが聞こえた。
母親は彼らにどこから来たの?なんていうの?と尋ねた。別の女性が涙を帯びた声で言った。
「姓は何といいます、広州から来ました。」



さて、香港の分の日記(?)は次で最後です……が、いつもの倍ある……汗
まぁ、続きなんで頑張ります。あはは。←