- 七月のクリスマスカード/伊岡 瞬
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『七月のクリスマスカード』
伊岡瞬・著/角川書店
以前読んだ『いつか、虹の向こうへ』が、かなり面白かったので、手にとってみました。
これは非常によく練られた小説だと思う。それだけに、話の勢いのようなものは薄いので、じっくり腰を据えて読む時に薦めたい一冊。
アルコール依存症の母を持つ主人公の少女と。
少女とその弟の世話をやいてくれる女性。
彼女の知り合いの元検事。
物語は始め、少女の視点から見える事実を描きながら、元検事の過去にある謎を、少しずつ少しずつ浮かび上がらせてくる。
読めば読むほど、主人公の直面している現実の重たさに、何とも言い難い息苦しさを覚える。
それでもページをめくらせるのは、あまりにも不可解な謎が、目の前に無数に散らばっていて。
それをかき集めて事実を知らないことには、落ち着かない気分にさせられるからだ。
けれど、本当のことを知ったところで。
真実は、人間を救うのだろうか?
救われることなど、ないかもしれない。
ないかもしれないが。
それが一つの区切りにはなるのかもしれない。