【本棚】星に願いを さつき断景 | 手上のコイン Blog

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星に願いを―さつき断景 (新潮文庫)/重松 清
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『星に願いをーさつき断景』

重松清さんの
さつき断景再文庫化。


1995年から、2000年の、
タカユキという青年と、
ヤマグチさんという、小学生の娘をもつ父親と。
もう定年を迎える世代のアサダ氏。

三人のそれぞれの5月1日を切り取って綴られる、何気ない。しかし、たくさんのものを織り込んだ物語。



読み終えてみて、不思議な小説だなと。
彼らは、
私たちであり、私たちではない。
彼らの日常の記述の合間にさりげなく、しかしはっきりと挿入され、物語のエッセンスともなる災害や、事件、スポーツニュース。
淡々と書かれたそれらを読んでいると、細かいものでも「ああ、そんな事件もあったなぁ」などと、案外覚えているもので。
記憶を呼び起こしてその時代を思い出してみたりしながら。
登場人物たちの人生を垣間見ながら。

決して、希望に満ち溢れているわけではない日常を、
それでも、生きている日常を。
なんだか愛おしく思う。


そんなに特別なことを描いている訳ではないようでいて、
じんわりと心に沁みる物語。



重松さんはぼちぼちと、思い出したように手に取っては読んでますが。やっぱりいいなぁ…。