返還映画コレクションの成吉思汗 | 楽しい倫敦 おいしい倫敦 

返還映画コレクションの成吉思汗

日曜は朝から鼻炎が少しきつかったが、まあ何かの花粉だろうと思った。ところがどうも喉がイガイガし始め、夜にはそれが悪化、何せ風邪を引いても喉が痛くなることは滅多に無いだけに嫌な予感。それでもほぼ普通に生活できていたけど、微熱(36.1℃だけどね)が治まらないからお出かけの予定を泣く泣くのキャンセルに。高齢者と会うのは慎重にせざるを得ない。今日は特段の予定が無いけどさてどうだろう。

2023.12.19(火)

国立映画アーカイブ で今やっているのが 返還映画コレクション(1)-第一次・劇映画編。戦前・戦中期の映画、約1400本が米国議会図書館に保管されていたことが1964年に判明、欠落があったりもするそれが返還されてアーカイブが修復・整理を進めて紹介する運びになったもの。何でそんな数が、かと言うと、戦前・戦中期には心理・情報戦の資料として米政府が収集、戦後には「非民主的映画の排除」のために上映を禁止したりしたからのようだ。

だから上の写真の 鴛鴦歌合戦(1939)なんて時代劇ミュージカルだの下の 冬木博士の家族(1940)なんてホームドラマまであるのだが、タイトルに「合戦」が入ったり、「軍医」として招集された一家の話で好戦的な台詞があったかも、その程度でもアウトだったかもしれない。紅白歌合戦だってその前段のラジオ番組を1945年にやろうとした際にはGHQからクレームが付き、タイトルを紅白音楽試合に変更したことが知られている。

もちろん露骨に戦意高揚の戦記ものも 五人の斥候兵(1938)やら上海陸戦隊(1939)など混じるが、

こちらの空き時間にミートしたのは 成吉思汗(1943)、当時のモンゴルがどんなだったか見たかったこともある。これは歴史ドラマとは言え、勇壮な大戦闘場面がいけなかったかもしれない。

日蒙合作映画で86名の現地ロケっていうのが何と言ってもすごい珍品。但し、フィルムが傷んだせいもあってか画面が概して暗くて不鮮明だから出演者がこんがらかるし、音声も悪くて台詞がかなり聞き取りにくい、フィルムが切れて飛んでいるところもありそうで、日本語映画なのにストーリーが十分呑み込めないのが情けない。何せモンゴルロケだから大物俳優も出ていないようで、知っている名前は 浦辺粂子 だけでもあった。彼女は一癖あるばーさん役でしか知らなかったが、四十代のこの頃は貫禄があり、テムジンの母役だった。 下田の寺に生まれた彼女の芸能界の始まりは少女歌劇団で、娘役を務めた時代だってあったようだ。

実は一番印象として残ったのが蒙古馬の小ささだったりする。ポニーとは言わないが、サラブレッドより桁違いに小さい。それは日本の在来種でも似たようなもののはずで、鵯越で畠山重忠が馬を背負ったというのもひょっとしたら事実かも、武田の騎馬隊なんかも近年の映画の画像はウソで本当はこんな感じだったんだろうなと思った。