雑誌の中にいる、チャンミンと同じ顔をしたモデル
そのモデルの名前を知っているか、
そうチャンミンに尋ねた時に感じた違和感
俺に見せてくれる笑顔は、言葉は…
何が本当のあなたで、何が偽りのあなたなんだろう
少しずつ築き上げてきた関係が、
砂の城のように一瞬で壊れてしまうような錯覚に陥った
毎日のように会えて、話せて
初めは頑なだった心を少しずつ開いてくれている、
そう思っていたんだ
けれど、初めから距離が近付いただなんて思っていたのは、そんなのは俺の独りよがりだったのかもしれない
俺が、大人だったら、こんな風に狼狽える事も無かったのだろうか
チャンミンに直接聞くべき
そんな事分かってる
だけど…
聞きたい、でも聞くのが怖い
尋ねて拒絶されたら?
関係無いと言われたら?
かと言って、何も言わずに今まで通りを装うなんて、
嘘が苦手な俺に出来るはずも無いんだ
俺がこんなに悩んでいても他の奴らはそんなの知る訳も無くて、女子達は相変わらず雑誌の中のマックスに夢中だし、男達もそれぞれ仲の良い相手と盛り上がっている
人の気も知らないで、なんて…
…俺ってこんなに女々しいやつだったっけ?
「おはよう!遅れてごめんな、みんな」
教室のドアが勢い良く開く音、そして担任の快活とした声でクラスの視線は一気にドアに集まり静寂が訪れる
「チェ先生、おはようございます」
真面目な生徒は自習する手を休めて挨拶をしている
チャンミンにしか見えないモデルが気になって仕方無くて、正直授業どころじゃない
太ももに置いた、何も写っていないスマートフォンの真っ暗な画面を見つめていたら、チェ先生が大きなストライドでこちらに歩いてきたのが足音で分かった
思わず顔を上げたら、
先生は隣の女子の机の前に立ち止まって…
「雑誌は、授業中は見ちゃ駄目だろ?
可哀想だけど没収だな」
女子の隠し持っていた雑誌をひょい、と持ち上げて
ぱらぱらと捲っている
「先生、MAXが載ってるんです…
後で返してもらえますか?」
女子の切実な声に
「後でこっそりな」と優しく微笑んでこちらを振り向く
少しかかんだ先生は、俺の太ももに置いてあるスマートフォンを指差して『鞄に仕舞いなさい』そう指でジェスチャーをした
心の中で溜息を吐いて、スマートフォンを仕舞った
それなのに、何か言いたげに俺の顔を見てにやりと笑うんだ
「MAXは美人だろ?
…知りたい事があれば教えてやるよ」
俺にしか聞こえない声で、確かにそう囁いた
あの日あなたを知って、毎日が輝き出した
力が湧いて、何だって出来るような気持ちが生まれんだ
そして今…
恋は俺を強くしたけれど、それは諸刃の刃で
幻のようにとても脆いものなんだと思い知らされた気がした
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side C
チョンが、ぱったりと保健室に来なくなった
と言っても、ほんの数日…いや、3日間だ
きっちりと覚えている自分自身が憎たらしい
3日前の朝メールを交わして、出勤した時に会ったきり…
メールを返してよ、そう言われてそのまま返さなかったから?
だって、いつもこちらの返事なんてお構い無しにメールを送ってくるじゃないか
あの時、僕が当たり前のように
『こうやって会えるんだから』
そう言ったら、
嬉しそうに笑って
『また後でね』
そう言ったじゃないか…
あの日、あれ以来チョンは保健室に来なくなったし
彼からだとすぐに分かるように設定した、
メールの着信ランプが赤く光る事も無くなった
僕からメールするなんて、好意があるみたいで…
ちっぽけなプライドが邪魔をして出来ない
体育の授業があれば、保健室の窓から見ることが出来る
それなのに、梅雨入りをしてから止むことの無い雨が
一目彼の姿を見たいと、そう望む僕の希望さえ打ち砕いてしまう
こんなにも人に対してもどかしい気持ちになった事が無いから、どうすれば良いのかなんて分からない
一体、この気持ちが何なのかさえ…
「声が、聞きたいよ……」
誰も保健室で休んでいないのを良い事に、
机に突っ伏して目を瞑った
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雑務も全て終えて、1日の報告書を提出する為に職員室へと向かった
そうっと、なるだけ音を立てないように扉を開いて、下を向きながら歩く
先生方ともなるべく関わりたく無い
それなのに…
「シム先生、お疲れ様です
もうお帰りですか?」
「チェ先生…はい、お疲れ様です」
「奇遇ですね、俺ももう終わりで…
たまには親睦を深めに飯でも行きませんか?」
僕とは正反対に、今日も明るく人を惹き付けるようなシウォニヒョンの声
その声が頼もしい、そう思う事もあるけれど、今は少しだけ苛々としてしまう
視線を合わせずに、下を向いたまま挨拶をしたのに
シウォニヒョンは大して気にも止めていないようだ
珍しく僕をご飯に誘うヒョン
こういう時は何か言いたい事が有る時だって知っている
どうしてこんなにへこんでいるのか、
自分で自分が分からない
けれど、チョンから連絡が途絶えただけでこんなにも心はダメージを受けていて、今は何もしたくない気分なんだ
億劫に思いながら声のする方に顔を上げたら…
「…っ」
長身に黒くて真っ直ぐなさらさらの短髪、
人一倍小さな頭、ぴんと伸びた背筋…
後ろ姿だって見間違う筈がない、
こちらに背中を向けて立つチョンがいた
その背中は力強くて、まるで僕を拒絶しているみたい
シウォニヒョンが僕に声を掛けているのに、
僕がいるって分かっているのに、
振り向くどころか微動だにしない
「チョ…」
咄嗟に名前を呼びそうになったけれど、
喉がカラカラで言葉にならない
だけど、それで良かった
だって、こんな所でチョンを呼び止めて、
他の先生方に注目されてしまったら…
もし、何か特別な関係にでもあるのかと勘繰られてしまったら…
「じゃあ先生、帰ります」
「おい、話はまだ途中だろ?」
「また明日聞きます」
逡巡する僕の気持ちなんて、
1ミリも届いていないのだろう
チョンはこちらを一瞥する事も無く、
足早に職員室を出ていった
僕は、どこで、何を間違えてしまったの?
分からないよ…
鼻の奥がツンとするから、拳を握り締めて
零れ落ちそうになる涙を必死で抑えたんだ
人と関わりたく無い
好かれたくなんて無い
それなのに、チョンからの気持ちは嫌じゃ無くて、
避けられたと思ったらこんなにも胸が痛いんだ
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