hominism
「もみ」といいます。

東方神起のおふたりが何より大好きで大切です。
ふたりのお名前を借りて頭のなかのお話やライブレポを書き綴っています。
お話はホミンのみです。

あくまでも私の頭のなかのお話なので、そのような内容に興味の無い、お好きでない方はそっと閉じて頂けましたら、と思います。
また、お話は全て幸せな結末にしかなりません。

Twitter → @hominismmomi
@hominism0212 こちらは鍵でブログの事も呟いています

ご訪問ありがとうございます、ご縁があれば幸いですニコニコ







  • 08May
    • Switching! 7

      ユノ先輩との初めての休日デート僕にとっては、高校の昼休みにふたりだけで弁当を食べる事もれっきとしたデートだったし、休日に会うだなんてぼろが出てしまいそうで避けたかっただけど、会いたいと言われたら可愛い服が無くたって、どんな僕でも好きなのだと言われたら…僕だってユノ先輩の事が大好きだし会いたいのが本心だから、断る事なんて出来なかった今の僕にとって何よりも重要なのは、男である事が先輩にばれないようにする事その点、休日だけれどいつものブレザーの制服を着たのは良かったと思う手持ちのどんな服を着ても、胸が無い事が目立ったり、女の子では無い事が分かってしまうと自分の姿を鏡で見て思ったからかと言って、女の子の下着を胸に着けるだなんて有り得ないし、僕は女の子になりたい訳でも無い「チャンミン、どうしたの?もう直ぐ来ると思うから、後少し待って」「…パスタが待ち切れない訳じゃ……っあ…」「あれ、良いタイミングで腹が答えてくれたみたいだ」「…先ぱ……オッパ!」良いタイミング…では無くて、物凄く恥ずかしいタイミングで腹の虫が鳴ってしまった恥ずかしくてお腹を押さえて抗議しようとしたのだけど、つい『先輩』と言い掛けて慌てて訂正した「残念後少しで、パスタを食べる前にチャンミンからキスしてもらえたのに」「ユノオッパ、ちょっと意地悪ですお腹の事だって…聞かなかった事にしてくれたら良いのに」隣り合って座るカウンターお腹を両手で押さえて背中を丸めながら、左に座る『僕の彼氏』をじっと見たら、彼は切れ長の目を丸くしてから左手でこめかみを掻いて「ごめん」と眉を下げた「チャンミンなら腹の虫も可愛くてつい…」「…そんな訳…」「本当だよ、嘘は言わないそれに、デートが嬉しくて何だかいつもより浮かれている気がする」しゅん、と眉を下げたと思ったら、今度は目が無くなるくらい、シャープな頬が丸く盛り上がるくらい嬉しそうに笑う「意地悪だとか揶揄っていないなら良いですでも、恥ずかしいから次からは聞かなかった事にしてください」「次?次もまた聞けるかも、と思うと嬉しい」「……」何だか、僕のやる事なす事全て先輩にとっては『可愛い』ようだこれだって、僕が本当に女の子ならばただただ嬉しいという気持ちしか無いと思うでも、僕は男だから、まるでユノ先輩を騙しているようで少し胸が痛いけれども『本当は男なんです』なんて言える訳も無いし、これは絶対に隠し通さなければならない最重要事項だから、微笑むユノ先輩に、僕も笑って見つめ返して「次からは、オッパの前でお腹が鳴らないように気を付けます」と言って、後少し、食事が来るまで空腹に耐える事にしたデートで先ず向かったのはレストラン何故なら、寝坊した僕も、初デートの緊張で何も食べていない、という先輩も共に空腹だったから先輩が、此処のパスタが美味しいから、とこの店に連れて来てくれた注文をしてから約十分、隣同士に座るのは、普段だってある事なのに、これが学校では無いというだけで何だか恥ずかしいいや、恥ずかしくて当たり前だ僕にとっては、初めてのきちんとしたデートなのだから「あ!来たみたいだありがとうございます」「え…わっ、美味しそう…」クリームパスタが有名で美味しいと聞いたから、僕は先輩お勧めのクリームパスタを注文した「うん、やっぱりめちゃくちゃ美味そうだ」「ユノオッパもクリームパスタが良かったんじゃあ…」「折角なら違うメニューの方がお互いのパスタを食べられるから良いと思って後でひと口貰っても良い?」「勿論ですその代わり、私にも先輩のトマトのパスタを分けてくださいね」友達は多い方では無いし、今の僕は新しい高校に転校したてで仲の良い友達はまだ居ないと言うか、ユノ先輩と一緒に過ごしてばかりだし…今の僕は女子として生活しているから、以前のように男友達と遊んで、だとかファストフード店でお互いのハンバーガーやチキンを味見したりだとか、そんな事は出来ないかと言って、女子と一緒に遊ぶだなんて…それも出来ない「前はたまに、友達と学校帰りにご飯を食べて分け合ったりしていたんです…懐かしいな」「新しい環境じゃあ不安だよな」ふと、食べている途中で漏らしたら、優しい先輩の声「俺が居るよ…それだけじゃ物足りないかもしれないけど」「…オッパが居てくれて嬉しいですでも、仲の良い友達よりも先に、その…恋人が出来て自分に驚いています」「俺も…こんなに良い出会いがあるとは思わなかったチャンミンに初めて出会った日、本当に天使だと思ったんだよ」「…大袈裟です」恥ずかしくて、クリームパスタを思い切りフォークに巻き付けて口に運んだ前だけを向いて食べていたら、口元に何か、が触れた「…え…」「ソースが付いていたから」「わっ、先輩!」まるで自然な事のように、彼は僕の口元に付いていたソースを拭った人差し指をぺろりと舐めた慌ててフォークを置いて先輩のデニムジャケットに手を伸ばしたら、彼は目を丸くして、それから何故か嬉しそうに微笑んだ「汚く無いよ…それよりチャンミン、約束は覚えてる?」「え……っあ…」「今此処で…と言いたいところだけど、食べている途中だから後で」思わず、先輩から手を離して両手で口元を押さえた不意打ちで恥ずかしい事をするから、今さっきまでしっかり覚えていた事をつい忘れてしまったのだ『ユノ先輩』と呼ぶ度に僕から先輩にキスする、という約束を「チャンミン、ひと口貰っても良い?」「え…っあ、はい」もう、頭のなかはキスでいっぱいになってしまった何度か、付き合ってからキスをしているでも、全部ユノ先輩から僕からだなんて、どうしたら良いか分からない焦って頭のなかがパンクしそうになっている時にパスタが欲しいと言われたから、丁度フォークに巻き付けていたクリームパスタを、フォークごと先輩の方へと向けたそうしたら…「まさか食べさせてくれるとは思わなかったから凄く嬉しい」「えっ、あ、違っ、間違えて…!」「…間違え?これが一番嬉しいから正解だよ」ぱくり、と僕のフォークを口に入れてパスタを食べて「やっぱり美味い」と頷く先輩「違います、その、キスをどうやってしようって考えていたらぼうっとしていてそれで間違えてフォークを…パスタ、お皿ごと交換しませんか?」そう、こんなつもりでは無かった皿ごと交換してお互いのパスタを食べればそれで良いのにまるで僕が先輩に食べさせる、という形になってしまった何だか物凄く大胆な事をしたようで恥ずかしくて、もう後少しになったお皿を持って左側に移動させようとしたけれども、先輩は首を振る「え…先輩のパスタを味見したいのに…」「うん、だから今度は俺の番」その言葉に、笑顔に、もしかしてって思ったそして、僕の予想は当たっていて…「はい、ちょっと多いかな…大丈夫?」笑顔で、パスタを巻き付けたフォークを差し出してくる嫌じゃ無いただ、恥ずかしいのだそれに、こんな事をするつもりでは無かったでも、やっぱりデートだし、結局は嬉しいし…「……っん……」「可愛い、美味しい?」恥ずかしいけれど、僕もユノ先輩のフォークを口に含んだまるで関節キスみたいだ友達とだったら、これくらい何も意識しないのに友達も先輩も同じ男で、僕も男なのに恋は不思議だ「……美味しい、ですトマトの酸味も効いているし、クリームパスタとはまた違って…」「うん、どっちも美味いこの店はいつも美味しいんだけど、チャンミンと一緒だし…食べさせてもらったから今日が一番美味しい気がする」何だか、ユノ先輩と居たら僕の心臓はその内に持たなくなりそうな気がする本気でそう思ってしまうくらい、先輩の事が好きで、先輩のひと言ひと言にどきどきしてしまうお会計は、僕が店を出る前にトイレに行っている間にユノ先輩が済ませてくれていた当たり前に自分の分を出すつもりでいたから困ってしまっただけど、先輩に『初めてのデートだし、俺に出させて』と言われてしまったから、後で何か代わりに払います、と伝えた「この後はどうしますか?」「そうだなあ…あ、そうだ!服を見に行こう」「先輩の?」「違うよ、チャンミンの良いのがあれば、着替えても良いし…私服があまり無いって言っていたから」そう、僕は今高校の制服を着ている勿論、休日だからユノ先輩は私服デニムジャケットにシンプルな黒のトップスと濃紺のスキニーパンツで、身長があるからまるで雑誌からそのまま出て来たモデルのように格好良い「でも、服とか高いかもしれないし…」「そんな事無いよこの先に、安くて良い店が有るんだメンズもレディースも両方置いてあるし、見るだけでも楽しいし…行ってみない?」「…じゃあ…」勿論、ユノ先輩が言っているのは、僕の為の女の子の服を探すという事女装をしたい訳でも女の子になりたい訳でも無いから、正直複雑かと言って、これから先も学校以外でユノ先輩と会う時に、ずっと制服で居る訳にはいかないそして、僕の私服は当たり前に全て男の物毎日、制服のプリーツミニスカートを履いているのだから女装だって今更だし…私服用のスカートが一着でもあれば、少しは女の子らしく見えるかもしれない「決まり、行こう!」「はい」当たり前のように手を繋いで歩き出す街に、制服を着ている中高生なんてまず居ないそうすると、制服で居る事が少し恥ずかしいそれに、何だか擦れ違うひと達の視線を…勘違いでは無いと分かるくらいにはっきりと感じた「あの、ユノオッパ…」「どうしたの?」繋いだ左手をぎゅっと握ったでも、それだけだと何だか不安で、歩きながら先輩の方に身体を寄せた高校でも、行き帰りの道でも何処でも、今の所男だと思われたり怪しまれたりしていると感じた事は無いだけど、休日の昼の繁華街を歩いていると、何だか何時もよりも視線を感じて怖いもしかしたら、怪しいって思われたのだろうかそれとも、格好良いユノ先輩…いや、ユノオッパの隣には釣り合わないと思われているのだろうか「…何だか、見られているような気がして」「え…ああ、やっぱり分かる?さっきから、擦れ違う男が殆ど皆チャンミンを見ているんだ」「やっぱり…私、今日変ですか?それか、まだ口に何か付いているとか…でも、トイレの鏡でちゃんと確認したし…」そう、もうクリームソースも付いていないし、色付きのリップも塗り直したついさっき、いつも通りだし大丈夫だって思っただけど、沢山の視線を感じて怖くなってしまった繋いだ手を離して、そのまま筋肉質な腕に両手で抱き着くようにしてくっ付いたそんな情けない僕にユノ先輩は「もっとくっ付いて」と囁いたその言葉に顔を上げたら、ユノ先輩の顔が近付いて来て…「皆、チャンミンが可愛くて見蕩れているんだよだから、チャンミンは俺だけを見ていて他の男なんて見たら駄目だよ」「え…見蕩れる?」「そう、だってチャンミンはまるでモデルみたいにスタイルが良いし可愛いし…物凄く目立っているから」「それは、ユノオッパの方じゃ…」まさかの驚いてしまった瞬きを繰り返しながら首を傾げたら「チャンミンは自分を分かっていないんだな」なんて言ういや、僕は男だし…僕が何よりも自分を分かっているなんて、勿論言えないけれど「擦れ違うだけの皆は、チャンミンの見た目しか見ていないけど…俺は、中身も含めて全部好きだよ」「…恥ずかしいです」「俺も、自分で言ってちょっと恥ずかしいでも、本当だから」「……っ…」本当に、ユノ先輩と居ると心臓が持たなくなる右手を彼の腕から離して胸を押さえた「チャンミンは?俺の事をどう思ってる?」「…好きです、知っている癖に」「うん、でも聞きたい…あ!忘れてた!」「えっ、何ですか?」甘い雰囲気が、先輩の慌てたような声で変わった何か大事な事を忘れていたのだろうか、と心配で隣を見た腕をぎゅっと掴んでいた左手も離した…のだけど、その手は直ぐに掴まれて握られた「さっきの約束店を出たらキスしてもらおうと思っていたのに」「あ……でも、今はひとが沢山居るので…」「本当は今直ぐって言いたいけど…仕方無いなでも、ちゃんと約束は守ってもらうよ」そう言うと、優しく僕に笑い掛けるその笑顔を見るだけで好きだって思うこんな気持ちは生まれて初めてユノ先輩は紳士で優しい男の僕には勿体無いくらいにだから…もっとちゃんと、女の子で居なきゃいけない女の子になりたい訳じゃ無いでも、この恋を、この関係を続ける為にはそうするしか無い「チャンミン、この店だよ、入ろう」「はい」「きっとチャンミンに似合う服が沢山有るよ」「沢山?そんなに有るんですか?」「だって、何でも似合いそうだから」いっそ、本当に女の子なら、ただただ幸せな気持ちだけで彼の言葉を、想いを受け取る事が出来たのに女の子になりたい訳じゃ無い女の子として愛されたい訳じゃあ無い高校二年生の僕にはこの恋はとても複雑で難しいけれども、それ以上に想い想われる事が幸せ繋いだ手はユノ先輩の方が、僕よりもひと回りは大きい男なのに手が小さい事がコンプレックスだったでも、今はそれで良かったと思う「どうしたの?手を見て」「あ、いえ、手を繋ぐのって恥ずかしいけど幸せだなあって」「俺はその言葉にもっと幸せになる」ユノ先輩が、ユノオッパが…この笑顔をずっと僕に向けていて欲しい他の女の子や他の誰かじゃあ無くて、僕だけにランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村

    • 未必の恋 28

      ホテルの総支配人であるチェ先輩には許可を取ったから問題無い、とユノさんは笑っていた勿論、ホテル内に取材が入る事はこれまでも何度もあったし、今回のように宿泊しているVIP客や有名人が部屋で取材を受ける事もあったからそれに対して異論など無い雑誌の取材でカメラ撮影も有るらしいから、ホテルの部屋の内装やそこから望める景色も写るそれは、ホテルの宣伝にもなるし、小さくではあるけれどホテルの名前も雑誌には記載されるから有難い事なのだけど、ついさっきまでユノさんとふたりでチゲを食べていたから部屋のなかは匂いが残っているそれに、取材が入るならば部屋のなかを完璧にしておきたいのに、もう間も無く取材スタッフがやって来る時間だと言われて慌てて掃除をした「…はあ、…大丈夫かな」「チャンミン、問題無いよベッドで取材を受けるなら、もしかしたら色々ばれてしまうかもしれないけど」「ベッドとか絶対駄目ですいえ、その、普段ならばこのホテルのベッドはブランドに別注している自慢のものなので良いのですが…」「うん、分かっているよ昨夜のまま汚れが残っているから見られたら大変だもんな」「…っ、言わないでください」アンティーク調の机と椅子が並ぶ、明るいオープンスペースを掃除して汚れや乱れているところが無いかチェックをして一息吐いていたら、後ろからユノさんに抱き締められたお互いに着替えたから、もうチゲの匂いはあまりしない「本当は恋人と一緒に過ごしているんだって自慢したいんだけど…仕事だから、ちゃんとするよ」「…ユノさんって、やっぱり独占欲が強いんですか?」少し前なら、こんな事聞けなかったでも、今僕達は両想いだし、恋人だって言ってくれたそれでも、否定されたら悲しいから前を向いてユノさんに背を向けたまま尋ねたなのだけど、答えは無い「あの…ええと、変な事を言ってごめんなさい入口の方もごみが落ちていないか、見て来ます」「駄目」「…っあ……」腕のなかから逃れようとしたら、僕を抱き締める力が強まったそれなのに、反射的に振り返ったら直ぐ目の前にある黒い瞳と視線が合わなくて…何だか目を逸らされてしまっているようだ「離れたら駄目なのに、見てもくれないんですか?」触れているのに見てはくれない小さな事なのかもしれないけれど、それが切なくて抗議したそうして、顔だけで振り返ったままユノさんをじっと見ていたら、漸く目が合った「ユノさん…」「…図星で恥ずかしかっただけ」「え、何の事…」「独占欲そんなのあまり無い方だと思っていたのに…チャンミンにはそうじゃ無いみたいだ」僕の目を見てそう話すユノさん彼が少し恥ずかしがっているのが分かって頬が緩んでしまいそうになる「僕も…今まで恋愛にはあまり興味が無くて仕事ばかりでしたあ、でも…」「でも?」「ユノさんの服には夢中でしたが」頬が緩んでしまりの無い顔になってしまうのを抑える為、少し話を逸らしてみたこれも恥ずかしい告白でもあるけれど、事実だし、ユノさんがデザインして作られた服は初めて映画のなかで見たあの日から僕にとって特別だからなのだけど…ユノさんはじっと僕を見ているだけ何を今更と思われてしまったのだろうか「兎に角、もう準備をしないと…そろそろ取材スタッフの方達が来られるのですよね?」「うん、でもまだ駄目」「どうしてですか?」身を捩って、身体ごとユノさんの方へと振り向いた手の持って行き場が無くて…いや、本当は触れたいからユノさんの胸に手を置いたすると、彼は僕の手を見下ろしてからふっと優しく微笑んだ「俺は嫉妬深いって言っただろ?チャンミンが今まで恋愛にはあまり興味が無かったって聞いて嬉しいんだ、俺が特別だって言われたようで」「…まあ、そうですけど」「でも、俺の服に夢中だって言われたら…俺が作り出した物に俺自身が負けたみたいで少し悔しくて嫉妬した」「え、それって…ユノさんがユノさんの服に嫉妬したって事ですか?…っん……ふ…」あまりにも嬉しい…いや、可愛い事を言われて今度はもう、頬が緩むのを抑え切れなくなった向かい合うと恥ずかしいから少し俯いていたのだけど、それも忘れてじっとユノさんを…僕の恋人の事を見つめていたら、視界はあっという間にユノさんでいっぱいになって、唇がキスで塞がれた「するよ、だってチャンミンに夢中だから」「……はい」幸せで仕方無いだけど、もしかしたら…僕がもっと早くに気持ちを告白していれば、この幸せを長く味わう事が出来たのだろうか、とも思うでも、僕にはそれが出来なかっただって、ユノさんとこうして関われているのは仕事だから仕事をしていたら本気の恋をしてしまって、でも仕事だから想いを秘めて過ごしていた僕にとって仕事は何よりも大切なもので…ユノさんの服をたまに買うのも、仕事をしているから出来る事たまに、チェ先輩には『チャンミンは真面目過ぎる』と言われる事もあるのだけど、そうして生きてきて今があるもっと早く告白していれば、と後悔する事もあるでも、これからは後悔を少しでも小さく出来るようにしていけば良い「僕も…ずっと、これは仕事だからと思って言えませんでしたが…ユノさんに夢中です」「…会う前から憧れていてくれたって事?」髪の毛をもう一度セットし直したからだろうユノさんは一瞬、頭に触れようとした手を止めて、僕の背中をスーツの上からなぞるように触れたおかしな声が漏れてしまいそうになるのを必死で堪える為に俯いてから、もう一度顔を上げた「会う前から憧れですでも、此処でユノさんと仕事で出会って色々な顔を見て…気が付いたら恋になっていました気持ちを伝える事はしてはいけないと葛藤していました傍に居られる事が嬉しいし幸せですが、恋心が報われない事が辛くて…」そもそも男同士だし、報われる筈も無い事は分かっているでも、真剣に恋をしてそれくらい好きになってしまった「気持ちを伝える事も出来なくて情けなくてだけどこれは仕事だから、と何度も何度も自分に言い聞かせていましただから…ユノさんに好きだと言って頂けて本当に嬉しかったです」「チャンミン…」「…少しすっきりしました」本当は、まだ言えていない事があるそれは、別れが怖くて仕方無いという事今を刻み付けて、残り一週間ユノさんから目を逸らさずに…そうは思っても、その後ユノさんが居ない日々を過ごす事を思うと不安ばかりでも、言えなかった事を言葉にしたら気持ちは少し落ち着く「チャンミンは真面目だし、仕事熱心で…俺が無茶な事を言っても真剣に取り組んでくれるそんな姿に感銘を受けたし、気が付いたら目が離せなくなった」「…ありがとうございます」「でも…」「でも?」また、キスされるくらい顔が近付いてきてどきどきしていたら、鼻をむにっと摘まれた「んっ…」「敬語は駄目少なくとも今はふたりきりなんだから」「…はい、少し恥ずかしくて…ごめんなさい」触れられたらそれだけで自分の鼻さえ愛おしくなるこんな気持ちは流石に言葉に出来ないけれど、ユノさんも、僕が感じている内の十分の一でも良いから僕に抱いてくれていたら嬉しい見つめ合っているともっと触れて欲しくなるチゲを食べて熱を持った身体も、着替えて時間も経ったから落ち着いたのに、ユノさんに抱き締められたからまた熱くなってしまった「もう一度だけキスしよう」「…あ……ん……っ…」恋人になってからのキスは甘くて溶けてしまいそうユノさんの柔らかな唇に夢中になっていたら…「…っ!」「…ああ、残念取材スタッフが来たみたいだ」部屋のインターフォンが鳴って、思わずユノさんのシャツをぎゅっと握ってしまった「ごめんなさい、皺に…」「そんな一瞬で皺にならないから大丈夫それに、着替えた後に俺からチャンミンに仕掛けたんだから」ちゅっ、と音を立ててもう一度僕の唇にキスをしてから「続きはまた後で」と、爽やかに笑って扉の方へと向かって行った例えば、此処がユノさんの本当の家で、僕がそこで働く…そう、例えばハウスキーパーだったりすれば、僕が出迎えて、だとかユノさんの隣に並んで挨拶をする、なんて事も出来ただろうけれども、此処はユノさんが一ヶ月間滞在しているだけのホテルそして、僕は通常部屋に常駐する事の無いホテル従業員副支配人ではあるけれど…どう考えても怪しいと思うだから、ユノさんが入口の扉に向かうのと同時に部屋の奥へと向かって隠れたなのだけど…「チャンミン、ちょっと良いかな」「…っへ、あ、はい!」向こう側からユノさんの声がして、驚いておかしな声を出してしまった幸い、スーツは先程着替えているそれも、ユノさんに選んで貰っただけで無く買って貰ったチョークストライプの紺のスーツサイズも僕に合わせて直してもらったから、何処へ出るにも恥ずかしくない物勿論、僕は取材されないのだから気合いを入れる必要は無いでも、取材スタッフの方達の前に出るなら、副支配人として隙の無い姿を見せなければならない「…はい、何でしょうか?」どのように出て行って良いのか分からないと言うか、急に奥からひとが出て来たら驚かれるだろうでも、動じる様子は見せずに、数人のスタッフ達とユノさんの前に出た「ああ、こちらが先程お話した、俺が今とてもお世話になっているホテルの副支配人のシムさんです彼のお陰で、ソウルでの滞在がとても良いものになっているし、お陰で仕事も順調です」「そうなのですねお若いのに副支配人とは素晴らしいです」「…いえ…」もう、ユノさんは窓辺に置いた椅子に座っていて、彼の前にはインタビュアーらしき男性と、カメラマンも居る他にも数人の男女のスタッフもどうやら、ユノさんは僕の事を話していたようで…しかも、何だか褒めてもらっていた様子嬉しいけれど、顔には出さずに仕事の顔で立った「何か僕に御用でしたか?」「ああ、カフェオレが飲みたくていつものを淹れてもらっても良いかな」「はい、承知しましたもしも良ければスタッフの皆様の分も順にご用意しましょうか?」尋ねたら、「お願いします」とインタビュアーの男性から返って来た頭を下げて背を向けて、キッチンスペースへと向かう時に、背中から「彼のカフェオレは絶品なんです」なんて聞こえてしまった「…嬉しい、けどプレッシャーだよそれに…殆ど豆とマシン頼りなのに」思わず呟いただけど、ユノさんと恋人になったオフの日告白される前にこの部屋で彼の為に淹れたカフェオレを飲んで、ユノさんは僕の気持ちが伝わって来るようで美味しい、と言ってくれた物を作り出すユノさんにそう感じてもらえた事が嬉しかったそれに何より、あのカフェオレはユノさんの事を考えて淹れたから「頑張ろう」インタビューが始まったようで、遠くで声が聞こえる内容は勿論とても気になるけれど、僕は僕の仕事があるまずはカップをお湯で温める事から始めたスタッフは全部で六人以前もホテル内での雑誌の撮影風景を見た事があるテレビでは無いから、機材だって少ないし、少ない時はもう二人居れば取材は成り立つそんな事情も少しは知っているから、人数を見てもユノさん自身への注目度の高さや、取材に熱が篭っているのだという事が分かるスイートルームだから、離れていても見ようと思えばユノさんの姿が見えるでも、なるべく見ないように…横目でたまに、取材されている、仕事をしているユノさんを見た「…格好良いな」脚を組んで座るユノさん格好付けたり目立とうとする様子も無く、真面目な顔でインタビュアーの言葉に耳を傾けている様子「…っあ、出来た」二杯ずつ抽出出来るマシンでコーヒーを淹れたユノさんのカフェオレ用のコーヒーは一番最初に作って、更に冷たいままの牛乳とほんの少しの生クリームを注いで温めに勿論、砂糖は少し多めスタッフの方達の分は、軽く温めた牛乳と生クリームをユノさんよりも少なめに注いで、砂糖は別に用意をした「良し、大丈夫だよね」汚れひとつ無い、金属のトレーにカップを並べてゆっくりとユノさん達の元へと歩いた取材の骨を折るのは気が引けるどうしようかと思っていたら、ユノさんまで後少し、という所で彼は気が付いたようで僕に向けて微笑んだすると…「ああ、今の笑顔、とても良いですね思わずシャッターを切ってしまいました」「あはは、本当ですか?ミステリアスで居たくて、あまり仕事中は笑わないようにしているのですが…たまにはこんな顔をお見せするのも良いのかもしれません」なんて、インタビュアーの男性と話すユノさん僕に向けてくれた笑顔が『良い』だなんて言われると嬉しいそれに…きっと、とても沢山写真を撮っているだろうから、今の笑顔が実際の誌面に使われるだなんて限らない事は分かっているでも、もしも今の笑顔が雑誌に乗れば、その雑誌は僕の宝物になるのだろう、なんて思ってしまった「取材中に申し訳ございませんカフェオレを…良ければお召し上がりください」トレーを、スタッフの方達が居るテーブルの上に置いたユノさんの分はどうしたら良いのだろうと思っていたら、彼は自ら立ち上がって僕の元へとやって来た「ありがとう…熱くは無い?」「勿論です、ユノさんのカフェオレだけ…」耳打ちするように聞いてきたから、僕も小声で答えたら、彼はこどものように微笑んで「ありがとう」と言ってくれたすると、何だか視線を感じて顔を上げた視線の主は、インタビュアーの男性で…「チョンさんにお会いするのは僕は二度目です以前は、ミラノで取材をさせて頂きました」「そうでしたね、懐かしいです」何故、それを僕の方を向いて語り出すのだろうか、と思った今僕の隣にはユノさんが立っているから、なのだろうけどでも、やっぱり目が合うし僕の事を見ているような気もするどうしたら良いか分からないでも、カフェオレが有るから、カップを持ってその男性の元へと運び、ユノさんと彼の間にある丸テーブルの上に置いた「良ければどうぞ」「ありがとうございます」ユノさんも僕の後ろを歩いて、そして椅子に座り直したまた、邪魔にならないように別の場所に居ようと思ったのだけど、やはり男性がこちらを見ている様子ちらり、と彼を見たら…「此処がソウルで、チョンさんの故郷だから、以前と今日では何だか雰囲気が違うのだろうか、と思っていたのです勿論それも有るのかと思いますが…僕自身、デザイナーチョンユンホのファンで、追い掛けて来たので分かります」「何か分かりましたか?」尋ねるユノさんの声が、何だか嬉しそう僕の背後に座っているから、顔は見えないけれどそして、インタビュアーの男性も、ユノさんと僕を交互に見て微笑んでいる「専属の客室係だと仰ったシムさんと一緒にこうしていらっしゃる時のチョンさんの顔が、とても生き生きしているように見えますきっと、仕事とは言えとても相性が良いのでしょうね」「あはは、そう、その通りです流石、俺の事を分かっていらっしゃいますねソウルに戻って来て、デザインに対する気持ちもまた少し変わりましたこれからは、新しい俺の姿を…新しい『JYH』を魅せていきたいと思っています」何だか、もう取材が再開した様子男性の語る言葉が嬉しくて、もっと聞いていたいけれど…その話はもう無いだろうし、僕はこの取材の部外者また頬は緩みそうになったけれど、奥歯を噛み締めてぐっと堪えて、平静を装って頭を下げた「僕は下がるので…もしもまた何かございましたらお呼びください」「ありがとう、チャンミン」「…っ、シムです」さっきは『シム』と呼んでいたのに、いつも通りに呼ばれたから慌てて訂正したでも、それも邪魔になると思い、ゆっくりと背を向けて奥へと向かったなのだけど、勿論話の内容は気になるし、耳をそばだてるようにして背後に意識を集中していたそうしたら…「先程のお話の続きですが、ソウルの旗艦店が完成したら、今後は活動拠点がソウルになると言うのは本当でしょうか?」「ずっと考えていたのですが…これからは、故郷に少しでも貢献出来る活動を行いたいと思っています勿論、世界に向けても発信しますが…それは、ソウルに居ても出来ると思いました」思わず、振り向いてしまいそうになったもしかしたら僕の聞き間違いかもしれないし、最後の方はもう、ユノさんから遠ざかってしまってあまり聞き取れなかったし…でも、邪魔は出来ないし、僕は今このホテルの副支配人だから、何も聞かなかった振りで、ユノさん達からは見えないベッドルームへと向かっただけど…「…本当に?ソウルが、此処が拠点になるって…」シーツの皺を伸ばして、ベッドメイクしようと思ったでも、ベッドに手を置いたらもう、身体から力が抜けてしまった旗艦店が完成、オープンするのは夏だと聞いているまだ、外は寒くて夏には遠いだけど…「ユノさん…」もう会えないと思った例え、恋人のままで居られたとしたって、ミラノとソウルだなんてあまりにも遠いし簡単に会いになんて行けない僕の気持ちは冷めない自信があるだって、もう何年もユノさんに憧れて、ユノさんの創り出す服に惚れているのだからでも、ユノさんの周りにはこれから先幾らでも魅力的なひとは現れるだろうそうして、僕の事は直ぐに過去になるだろうと思っていた「…希望を持っても良いのかな」ユノさんの気持ちは分からない僕達の…一週間後よりも先の事をどう考えているのか、もでも、ただただ怖かったこの先の未来の事に、少し光が見えたような気がして胸が熱くなったランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村

  • 07May
    • assortment 3

      この記事は、お話未満(かもしれない)お話の詰め合わせ、つまりassortmentです話数はついていますが、同じ詰め合わせシリーズ、というだけで続いてはおりません「1.2」は同じカテゴリー(SSパラレル)にございます最近、益々新しく書きたいホミンちゃんが増えてしまっていますただでさえそうなのに、更に漸くチャンミンのソロアルバムのビジュアルで膨らんでしまって…とは言え、連載中のお話が沢山有る為全て形にする時間が無くて、だけど書きたくて…という訳で(も何も無いのですが…)お話として書きたいホミンちゃん、のさわりを幾つか勝手に書いていこうと思います①生まれながらにして何もかも、に満ち足りている何かを渇望する事なんてこれまで一度も無かっただって、望めば何だって目の前に現れる食でも、物でも、ヒトだとしても金は、と言えば有る事が当たり前だから考えた事も無い何処かに行きたいと思えば飛行機を飛ばせば良い俺の宮殿…なんて言うと流石に古めかしいから屋敷とでも言おうその庭からは飛べないけれど、車に乗れば直ぐに飛行場があって、所有している飛行機で世界中何処にだって飛べる満ち足りているのだと言えば品が有るのかもしれないけれども、足りない物が無いと感じるのはとても空虚で孤独全てが足りている筈なのに「ユンホ様、こんな所に赴いて…しかも参加するだなんて」「もう決めたんだ」「ですが、ユンホ様の美貌と地位が有れば、国中の美女が幾らでも…いえ、そうで無くとも幼いこどもや例え男であっても」「男にもこどもにも興味は無いただ、暇潰しになりそうだし知らない世界を見たい、それだけだ」普段は最低でも三人は着いて来る従者けれども今日は気心の知れたひとりだけで良いと言って出て来た…のは良いけれど、結局五月蝿い心配故なのだとは分かっているだけど、今のままでは退屈でどうにかなってしまいそうなのだ「ユンホ様、逆らいたい訳では無いのですですが、今あなたが入ろうとしているのは闇オークションの会場です競りにかけられるのは物では無く人間です参加する者達も表社会には顔を見せない者も多いと聞きます」「知っている全て調べているし参加する事も先に主催者に伝えている金さえ有れば入るのには問題無いと言われたから、お礼の気持ちも込めて多めに渡しておいた金が有れば解決出来るし問題無い」「ですが…」心配されている事は分かっているし、この従者を信頼しているから着いて来させているけれどももう俺だって成人しているし、溜息が漏れてしまう「…父上にも報告済みだこれなら良いだろう?」「左様でございますか…でしたら私は何も言う事は…」父の名前を出して信用される、だなんて情けないけれども背に腹はかえられないだって、この先には俺のまだ知らない世界が待っているのだから「チョンだ、もう金は払ってある」「…チョン様…本日はありがとうございますどうぞ、なかへお入りくださいただし…このなかで見た事は他言無用、がお約束です」「分かっている、それに吹聴する趣味も無い」そもそもこれは退屈凌ぎ闇オークションにかけられているのは人間で、主に幼いこども達競り落とした者が何に使うのか、は自由だけれど…主に、性的な欲求を満たす為、だったり自らの立場を誇示する為の奴隷として利用する事が多いそうだそして、金持ちに気に入られる為の『商品』は兎に角見た目が良いそうだ「どうぞ、こちらへ…」なかは薄暗かったそして、入口から少し進めばもう、直ぐにその光景は繰り広げられていた「もう始まっているのか?」「初めて見る顔だな…」「ああ、今日が初めてだこれは、どうやって競り落とせば良いんだ?」本当に誰かを競り落とすつもりなんて無い従者は余るくらい屋敷には居るし、女にも困っていないからだけど、話し掛けてきた男が居たから聞いてみた人差し指に大きな宝石のついた指輪を嵌めた中年の男は、太い指を前へと向けたその先には、ライトが当たっていて、そして…十人程の『商品』が立っていた「順番に商品が紹介される気に入ったものが有れば、手を挙げれば良い他に希望者が居れば、より多く金を出せば良い、それだけだ」「ふうん…そうか、ありがとうございます」初心者らしく、笑って礼を告げたのだけど、どうやら生意気だと思われたようだどう思われても関係なんて無いから、男の左側に立って腕組みをしてライトに照らされた商品達を見ていたのだけど…「何だ?毛色が違うけど…売れ残りか?」一番隅に、俯いて立つ商品がひとり青いコートに黒い細身のパンツを穿いて、カールのかかった明るい髪色で…「…っ、吃驚した…」じっと見ていたら、まるで俺の視線を察知したかのように顔を上げた俺が怯むだなんて有り得ないから、動じていない振りで腕組みをしたまま見つめたすると、商品の癖に…いや、商品だから、なのだろうか他の者より頭ひとつ、どころかふたつ分身長の高い男は人形のように綺麗な、そして感情なんて無いような瞳で俺をじっと見返してくる「何だ?あいつ…」歳の頃は、きっと…俺よりも少し若いくらいだろうか多分、二十前後立って並んでいる他の商品はもっと若いから、違和感がある「ああ、あいつか?あれは、以前に此処で買われたが持ち主に捨てられたらしい舞い戻るなんて珍しいし、成長した男なんて労働力としてしか望まれないから、まあただの見世物だ誰も欲しがる奴は居ないだろうからな」世話焼きなのか、此処の流儀でも教えようとしているのか右の男はまた俺に話し掛けてきたつまりは、労働力になるような男はわざわざ闇オークションで探す必要は無いし、あの年頃だと望まれる事も無いだけど…「俺をあんなに真っ直ぐに…何の感情も無く見返すだなんて面白い」他の商品達と同じく、首輪を着けられている男居心地悪そうにするでも無く、ただ人形のように立っている感情なんて無さそうで…だけど、俺を確かに見ている「では、次…舞い戻りの商品、シムチャンミン、十六歳だ」「十六?思っていたよりも若いな」「此処ではもう若くないよ、何も知らないんだな」人形のような商品はシムチャンミンと言うらしい司会者の男が、彼の横に立って入札者は居ないか、とこちらを見渡す「別に知る気も無い此処は退屈凌ぎで来ただけだからな」「…っ、何だと?俺に何て口を…!」世話焼きの中年男は、従わなければ気分を害するようだ面倒だからもう右を見る事無く手を挙げた「ユンホ様?何を…」「オークションだろ?あれが気になるから持ち帰る」「おい、手を挙げているのが見えないのか?シムチャンミン、とやらをお願いしたい金はここに…」前に立つ司会者に向けて声を掛けて、戸惑う従者にアタッシュケースのなかを見せるように促して「全部出せば良い」と囁いた従者はそれに小さく溜息を吐いて、そしてゆっくりとケースを開けて司会者に見せた「…他に希望者は……居ないようなので、チョン様に」司会者の言葉に、わっと歓声が上がったそれは多分、嘲笑のようなものと、それから理解出来ない事への戸惑いのようなものが殆どだっただろうだけど…「へえ、まだ表情が動かないのか、面白い」俺の物になった男、シムチャンミンは相変わらず硝子玉のような瞳で俺を見るだけ良い玩具が出来た、と思ったなのだけど…「此処はチャンミンが自由に使って良い食べたい物が有れば誰かを掴まえて望めば良いその代わり、逃げようとだけは思うな逃げても捕まるだけだからな」チャンミンを連れて屋敷、いや、宮殿に戻って来た使っていない離れを彼専用の住処にしようと連れて来たどうせ逃げたところで従者達が逃がす訳も無いし、逃げたチャンミンを捕まえるのも楽しそうだふたりきりになった寝室で、鎖で繋がれている邪魔な首輪は取ってしまおうと手を伸ばしたそうしたら…「…っや…!」「何だ、話せるのか何も言わないから話せないのかと…首輪を取るんだ、だから暴れないでくれ」初めて、感情のようなものが見えたそれは恐怖のようなもので…感情なんて無いと思った大きな瞳は、一気に潤んで俺を見つめる上背はあるけれど細い身体を震わせて、首輪をぎゅっと小さな手で掴んでいる「外したいんだろ?だから大人しく…」「やだ!取らないで…」「は?何故…」「怖い、繋がれていないと…僕は今日から此処で暮らすんでしょ?お願いだから、ずっと繋いで…」整い過ぎて人形のようだと思った暇潰しにはなるだろうと思ったけれど、直ぐに飽きると思ったどうせ逃げ出すだろうからそれを捕まえて…感情の無い顔が歪んで『逃がしてください』と懇願すれば満足だし…勿論、痛めつけるつもりなんて無いから、そんな顔を一度見る事が出来たらこの男には飽きるだろうから、逃がしてやろうと思ったそれなのに、この男は繋いで欲しいのだと言う「もう、捨てられたく無い、何でもするから…」俺の競り落とした俺だけの商品そう、俺だけの物なのに、俺に腕を伸ばして縋り付くチャンミンは、俺に縋り付きながらもその向こうに彼を捨てた持ち主を見ている「お願いします、ご主人様…」「…違う、ユンホだ」「…ユンホ、様…」誰かが捨てた物になんて興味は無いただの退屈凌ぎだし、この男を競り落としたのだって…他の奴らが金なんて掛けない物に金を掛けて楽しみたかっただけ奴隷も従者も、抱く相手も間に合っているそれなのに、俺を見上げて瞳を揺らしながら俺では無い誰か、を見るチャンミンを見て、抱いた事の無い気持ちを知ってしまった「今日から僕は、ユンホ様のもの、なんだよね?」「…ああ…」俺の事なんて見ていない癖にそれなのに、感情を見せた彼の綺麗な瞳に俺が確かに映っている事に安堵してしまった誰かに執着するだなんて、絶対に有り得ないと思っていたのにただの退屈凌ぎだったのに…「良かった…ずっと繋いでいてください」初めて見せるチャンミンの笑顔に、心臓がドッ、と音を立てた アラブの世界の富豪ユノ×闇オークションで競り落とされた訳ありチャンミン②オタク、なんて言われる人々も何時の間にか市民権を得て、そうである事さえも一種の話のネタになるくらいには世間に認知されて来た一途に何かに打ち込める、だとか、他には無い豊富な知識を持っている、だとか…イケメンの男性や可愛い女性がそうであれば、ギャップがあって良い、だとかまあ、色々言われているけれど、僕からすれば世間に認知されたりオタクである事で持て囃されるような人達の事は認められないいや、僕が認める必要も無いしその人達からすれば僕の事なんて知りもしない、という事は分かっているそれに、結局のところは僻みだだって…「…はあ、やっぱりこの作品は最高だな」貴重な、夜中の原稿を進める為の時間なのだけど、集中力が続かなくなって手を伸ばしたのは、目の前の棚に並べられた僕のバイブル…の一冊バイブルと言うのはつまり、そのターゲットの多くが現在女性である本で、内容は…所謂BL、と言われているものボーイズラブを略してそう呼ばれるジャンルで、男性同士の恋愛が描かれているものだ「身体だけでは無くて、ちゃんと心で繋がっていく場面が丁寧に描かれているそれだけじゃあ無くて、細部までしっかりと作者自身が背景を描き込んでいるデジタルなのにアナログの温かみもあるし…素晴らしいよ」最後のコマまで味わって読んでから、漫画本を閉じて瞼を閉じて物語を噛み締めたゲイである事に悩んでいた主人公に、ずっと友人で…それなのに主人公の悩みを知らずに接していた友人が、何時の頃からか抱いていた恋心を告白してからお互いの気持ちをぶつけ合う場面を思い出したらもう、感動で涙が滲んでしまって…「はあ……って、駄目じゃん、自分の原稿が進んで無いし…」はっ、と気が付いて無意識のうちに抱き締めていたBL漫画本を慌てて棚に戻した勿論、どれだけ急いでいたって大切な本だから傷付けたり曲げたりしないように丁寧に、だなんて、素晴らしい作品に触れた事で話はずれてしまったけれど、僕が世間の『自ら公言するオタク達』に僻みのような気持ちを抱いているのはつまり、僕自身もオタクだからそして…まだまだ世間には認知されていない腐男子だから「ゲイじゃ無いし普通に女の子が好きだしでも…作品のなかで芽生える、男同士だからこそのもどかしい恋に心が震えるんだよな」僕のバイブルが並ぶ棚を見つめて頷いた切っ掛けはもう、十年以上前の中学生の頃偶然書店で手に取った本がBL漫画だった衝撃だったけれど、今でも神作品だと崇めるその漫画が僕を腐男子…つまり、男同士の恋愛作品を好むオタクへと成長させてくれたそして、好きが高じて自分自身も自主制作ではあるけれど…BL漫画を描く腐男子同人作家に僕、シムチャンミンはなったのだ「のだ、も何も…ただのサラリーマンの趣味だし、仕事も有るからもう寝ないとだし…」スランプでここ数日進まない、新作漫画の原稿パソコンをじっと見て、もう今日は無理だと判断して電源を落とした「…最悪、BLを読み過ぎて夜更かしして寝坊とか…」ここ数日、原稿…いや、原稿だなんて言うとそれっぽく聞こえるけれど、趣味で自費出版する為の新刊同人誌の原稿に夜中かかりっきりだったそうして寝不足が続いてしまい、遂に寝坊してしまった不幸中の幸い、と言うか、大慌てで家を飛び出したら何とか始業には間に合う時間なのだけどとは言え、寝癖で髪の毛は跳ねたままだし、誰よりも食欲旺盛で朝からめいっぱい食べないと直ぐに腹が減ってしまうのに何も食べる時間は無かったし…「しかも、慌てて『あれ』を鞄に入れっぱなしにするとかもう…誰にも見付からないようにしなきゃ」会社の最寄り駅で電車を降りて、会社に向かって急ぎ足で歩きながら呟いたそれはついさっき、駅のトイレでくるりと跳ねた髪の毛にワックスを付けようと鞄を開けて気が付いたのだけど…昨日、会社帰りに書店で購入した、推し作家の新刊BL本が入れっぱなしになっていたのだ帰宅したら直ぐに読もう、と袋に入れてもらう事無く、ブックカバーも勿体無いからと断って、サラリーマンの男が高校生男子にお姫様抱っこをされている表紙の漫画が書類と共に入っているなのだけど、昨夜読まないまま、鞄に入れっぱなしのまま朝が来てしまったのだ「まあ、中身を誰かに見せる機会なんて無いし……うわっ!」頭のなかは、BLの事でいっぱいだったそうして前方不注意だったのは僕だから、僕が悪い事は分かっている「すみません、ぶつかって…大丈夫ですか?」曲がり角を曲がったところでひととぶつかってしまったその拍子に鞄を落としてしまったのだけれど、それよりも相手に謝罪しなければならない慌てて顔を上げて目の前のひとを見たら…「いえ、こちらこそ…大丈夫でしたか?」「あ…はい…」物凄く驚いて、情けない声しか出なかっただって、丁度昨夜眠る前に読んで涙した漫画のなかの、主人公の相手役のキャラクターにそっくりの美形だったから「本当に?痛くは無いですか?あ…鞄…!」「痛くは…え…っあ…」肩に手を伸ばされて、覗きこまれた漫画のなかからそのまま出て来たようなイケメンに、僕はゲイでも何でも無いのに見蕩れてしまっていただけど、次の瞬間に、彼が僕の左下を見て肩から手を離したから鞄を落としていた事を思い出した「すみません、中身も出てしまって…拾います」僕と同じようにスーツを着ているのに、まるでBL漫画…いや、少女漫画のヒーローのような男彼はスラックスが汚れる事も厭わない様子で膝をつけて散らばってしまった僕の書類やファイルを拾ってくれた「すみません、ありがとうございます…」僕も慌てて拾っていたのだけど…「…これ…もあなたの物ですか?」「え………っ…!」何だか、不審がるような声音に顔を上げたら、BL漫画に出て来そうなイケメンは、僕のBL漫画を手に持ってこちらに掲げていて…「うわぁっ!」「えっ…」慌てて、奪い取るようにしてその本を取って、震える手で鞄のなかへと押し込んだその所為で、まだ読んでいない大切な本が曲がってしまったけれど…腐男子だなんて理解されないし隠しているし、もう此処は会社の直ぐ傍だからそれどころでは無い「あの、ありがとうございましたではこれで…!」こんな事さえ無ければ、イケメンとお近付きになれかもしれないいや、勿論僕はゲイでは無いから邪な何か、では無くて…あまりにイケメンだったから、作品作りに役立たないかと思ったのだだけど、もう最悪だしっかりと、男が男をお姫様抱っこする絵の表紙を見られてしまった「もう二度と会う事なんてありませんように…」恥ずかしさと恐ろしさ、混乱する頭で始業ぎりぎりに会社の入るビルへと足を踏み入れたそうして、時間が経つ事に冷静さを取り戻しただって、数多のひとが存在するこの世界で、二度の偶然、だなんてまず有り得ない今まであんなイケメンを見た事は無いし、きっと出張だとか…そんな何かで、今朝偶然あの場所を通っただけに違い無いそう思ったのだけど、神様は時に信じられない偶然を仕掛けてくるらしい僕は、直ぐにその男…まるでBL漫画のなかから飛び出したような理想のイケメン、チョンユンホと再会する事になるのだイケメンサラリーマンユノ×腐男子で同人作家のサラリーマンチャンミン最近また、色々書きたいものが増えてしまったので…久しぶりの「assortment」でしたもしも反応が良い何か、があればこの先もいつか形に出来たら良いなあと(勿論私が勝手に)思っております読んでくださってありがとうございますランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村

    • Fated 110

      Side C何だかもう、この数ヶ月はずっと、これまで以上に慌ただしく濃厚で、まだ25年しか生きていない僕だけれど、これを乗り越えたらこの先の人生何があっても乗り越えられるんじゃあないか、と思えるくらいに…ひと言じゃあ語り尽くせないくらいの事があった「…いや、何があっても、なんて事は無いかユノヒョンが居なくなったら…そんな事考えたくも無いし」考えたくも無い事が思い浮かんでしまうくらい、考えたくも無い事を考えるまでになれたのは、オメガに突然変異した事を…多分、それなりに世間に名前の知れたひとだったり、芸能界では初めて公表して、それでも変わらずに活動をすると表明したからベータの振りをして生きていく事はそれなりに大変な部分もあるけれど、ひとから特別な目で見られずに済むそれに、仕事をする上でもその方が何の軋轢も無くいられるでも、隠し続けるだなんて、今思えば遅かれ早かれ限界が来ただろうだって、幾ら『二次性はひととなりに関係しない』と言っても、身体の作りが違うのだから毎日欠かしてはならない事があるオメガの突発的で激しい発情期である『ヒート』を抑える為の抑制剤そして、妊娠を防ぐ為のピルを飲む事男、だけれど直腸の奥は女性器が形成されている妊娠出産が可能な身体になったから、同じ男でもアルファとベータと比べて女性ホルモンが増えるホルモンバランスは今は落ち着いたけれど、オメガになって直ぐの頃は何とも言えない気持ち悪さのようなものが常にあったし、それは無くなったけれど身体付きが以前と比べ中性的になった体毛は減ったし、性別は変わっていないけれど…やはり、これがオメガなのだと鏡を見る度に、自分の身体を見る度に思うけれども、変わらないのは僕自身オメガになって気が付いた事、初めて見えた事それらは幾つもあるし、それらが僕を少しは成長させてくれたと思う卑下してしまった事もあるし、今だって…少し油断すれば、『何故僕が』と思ってしまいそうになるでも、やっぱり僕は僕だし…嘘を吐かない、嘘が苦手なユノヒョンはオメガになって直ぐの頃からずっと『チャンミナは変わっていないよ』と言ってくれる何も知らない癖に、と苛立ってその言葉が重荷になった事もあったけれど、今は彼が僕の内面を見てそう言ってくれたのだと分かっている「…気持ち良い」浴槽のなか、口元まで身体を沈めて呟いたオメガに突然変異した頃はまだ暑くて、薄着になる事で身体付きが変わりゆく事を気付かれてしまうのでは無いか、と怖かった濃厚で慌ただしくて、今思えばゆっくり息を吐く暇も無い程に時間は過ぎていって、気が付いたらもう、外は木枯らしの吹く季節今となればもう、オメガに突然変異した事を公表したから、例えば『以前と顔付きや身体付きが変わった』『脱毛したように見える』なんて思われたとしても、それは全てオメガになった所為だから慌てる必要も無いし弁解する必要も無い「そうだ、僕…前は『脱毛したんです』なんて言って誤魔化していたよね」当時はそれで、周りのスタッフ達も納得してくれたけど…近しい友人のようなキュヒョンには、その後やはりおかしいと気付かれて、結局オメガであると打ち明けた今思えばきっと、僕が誤魔化した言葉を聞いても疑問符が浮かんでいたひとも居たのかもしれない「髭は、男らしいし長い休暇が取れたら生やしてみようって思ってたから…その夢は途切れたけど、今度は美肌でも目指してみようかな」なんて、冗談も思い浮かぶ程には気持ちは落ち着いた「…ん…?ユノヒョン?」ふう、と浴槽のなかで腕を伸ばして、そろそろ気になっていた時間が近付いているだろうから上がらないと、と思ったそうしたら、気配がして扉の方に呼び掛けてみた磨り硝子の扉の向こうに、人影は見えないでも、呼び掛けたままじっと見ていたら、僕の恋人の姿が見えたそして、扉ががちゃりと開いて…「チャンミナ、もう時間だよ」「え、もう?まだもう少し余裕があるかと…」「いや、もう四十分分以上入っているし…流石に逆上せる程長くは無いから我慢して待っていたんだけど…もう発売開始時間だ」「え!嘘、本当に?」浴室に脚を一歩踏み入れたユノヒョンは部屋着のスウェットを身に付けている今日も仕事を終えて一緒に帰って来た此処はヒョンのマンションだけれど、以前よりも体力の落ちた僕はレッスンで疲れてしまって…それも、以前はなるべく隠したり疲れた事は知られたく無かったのだけど、今は素直に言えるようになった優しいこの部屋の主は帰宅して直ぐ、『時間まで一時間近くあるから、先に風呂に入っておいで』と僕を促してくれたユノヒョンの髪の毛はレッスンの前にあった撮影でセットしてそのままだけど、服装は地味なスウェットで…それなのに、何時だって変わらずに格好良いなんて事は今は置いておいて、ユノヒョンが左手に持って僕に向けて差し出しているスマホの時刻を見たら、僕が思っていたよりも時間は過ぎていたようで、慌てて浴槽のなかから立ち上がったそうしたら…「…っ!」「チャンミナ!危ない!」右足を浴槽の外に出してもう片方も、と思った時にくらりとなって身体が前に傾いた転ける、と思ってそのまま何も出来ずに目を瞑った時、ユノヒョンに抱き留められた「…ありがとうございます」「良かった…やっぱり逆上せた?それとも、早く俺に触れたかった?なんて」「…わざと転んでユノヒョンに抱き締めてもらおう、なんて考えません」濡れているのに、そんな事何も構わない、と言った様子で僕を簡単に引っ張るユノヒョン左足も無事に浴槽の外に出たから、少しくらりとする頭でスウェットの胸元をぐいっと押して唇を尖らせたら、彼は笑って「分かっているよ」と言う「ヒョンの服、濡らしちゃってごめんなさい」「全然だよ…って、もう時間になったんじゃないかな」「え、本当に?」濡れたまま恋人の手のなかのスマホを覗き込もうとしたなのだけど、その手は背中に隠されてしまった「教えてくださいよ」「まずは身体を拭いてから風邪を引いたらいけないだろ…俺の大切な番なんだから」「…っ……」意地悪や気を遣って見せてくれないのかと思ったら、僕の身体を心配して、だなんて…それも、以前ならば僕がオメガになって体力が落ちたりだとか、まるで女性のように見られているように感じたかもしれないでも、今は違うユノヒョンはずっと、僕自身を見てくれているだから、ちゃんと愛されているからだって分かる「俺が拭いてあげようか」「自分で出来ます、こども扱いしないでください」差し出された大きなバスタオルを受け取って身体に巻き付けるようにした今更、僕だけ裸なのが恥ずかしくなったからユノヒョンはくすりと笑って「違うよ、俺が触れたかったから…下心だよ」なんて、物凄く爽やかに言ってのけるバスタオルを巻き付けたまま、もう一度「時間は?」と尋ねたら、ユノヒョンは僕には隠すようにしてスマホを見たそして…「始まったみたいだ」「え!もう?気になります」覗き込もうとしたけれど、ユノヒョンは更に過保護で「服を着て」と僕を浴室の外へと促すこんな時のヒョンは僕が何か言っても見せてくれないであろう事も分かっているし…僕も、気になりつつも怖い気持ちがやっぱりあるから、準備しておいた新しい下着と、スウェットの上下を急いで身に付けた着替えながら、ちらちらと見ていたら、ユノヒョンはひとりでスマホのなかを見ている「教えてください、と言うか僕にも見せてください」僕のiPhoneはリビングに置きっ放しだから目の前のヒョンの手元を覗き込んだら…「…凄い、チャンミナ」「え…それって…」「もう、一旦完売したよ」やっと、ユノヒョンが見せてくれたスマホのディスプレイそれは、ついさっき発売された僕達のコンサートのチケット発売サイトのページ先日、僕が動画を配信して、自分の口でオメガになった事、そして番のアルファが居る事を語ったその上で、これからも変わらずに活動をして行きたいと意思表明をした世間の反応は勿論様々で…どちらかと言うと、ファン以外の世論は、オメガだと公表する事で今後他のオメガもそれに続いたり、隠れなければならないと言う風潮が無くなっていくのではないか、と肯定的な意見が目立っていたけれども、僕達のファンには女性が圧倒的に多い彼女達のなかには妊娠出産が可能なオメガに僕が突然変異した事で…複雑な気持ちを抱えるひとも少なくは無いのだと知ったそんななかで発売される、次のコンサートのチケットその売れ生きがどうなるか、は直接ファンから僕達に下される評価のようで、この日が来る事も少し…いや、かなり怖かっただけど…「…本当に?ちゃんと完売したんですか?」「ああ、驚くくらい早かったもしかしたら、コンサートで直接俺達を…チャンミナを見て、ファンとしての動向を決めたい、というひとも少なくは無いのかもしれないだけど、きっとそれだけじゃあ無いし…チャンミナがちゃんと、逃げずにファンや世間と向き合ったからだよ」チケットサイトには、確かにはっきりと完売だと書かれている時刻を確認しても、発売からまだ数分以前ならば、それを当たり前だと思っていた節もあるだけど、今はそれがとても有難いこんな風に、オメガになったからこそ気付けた事は沢山ある「…ファンの方達に、もっとちゃんと向き合って…体力が減ってばててしまう、だなんて情けない姿は見せたく無いです」「無理は駄目だよ、以前とは違うんだからでも…その気持ちが嬉しいし、俺以外にもきっと伝わるよ」「頑張るけど…倒れる程の無理はしません今はふたりきりだからユノヒョンに抱き締められて助けられても良いけど…こんな姿、他には見せられないので」「…俺は、本当は何時でも触れていたいけど」そう言うや否や、真正面から強く抱き締められた「ユノヒョン…」「良かった、まずはまたひとつ…前に進めたな」「…うん…本当は、チケットの売れ生きを見る事が怖かったんですだから、ひとりで風呂のなかで色々な事を考えていてて…少し現実逃避していたのかもしれません」「何を考えていたの?」少しだけ腕の力が緩んで、吐息が掛かる距離で見つめられた「…今までの…オメガになってからの事です何だかあっという間だし…最初に倒れた時はまだ暑かったのに、なんて今更思いました」「そっか…そうだったな」「今、やっと冷静に色々と振り返る事が出来た、なんて思っていたんですでも、そんな事を考えていたら何時の間にか時間が経っていて…だから、現実逃避です」自分の心の内を語る事は少し恥ずかしいだけど、ユノヒョンになら…以前よりも話す事が出来る知って欲しい、とも思う「そんな事無いよ考える暇だって…きっと無かっただろ?当事者じゃ無い俺だってそうだったチャンミナの事ばかり考えていて周りが見えていなかった俺だって、後先考えずに妊娠したら良かった、なんて思っていたでも…今はあの頃より冷静になれた」「…番になったから?」「それも有るけど…でも、何よりも、俺達がちゃんと向き合えるようになってからだと思う」ユノヒョンが笑って僕を見てくれるそれだけで、まだまだ大丈夫だって思える自分の弱さを晒す事は怖いだけど、僕達はお互いの弱さを知っても、失敗をしても、それでも一緒に進んで行こうと決めたし…その気持ちは揺らぐ事が無い「そうだ、提案が有るんだけど…」「何ですか?」「最近、俺はチョコレートを控えていたし、チャンミナはアルコールを控えていただろ?」「…控えて、と言うよりもそんな余裕も無くて…が正解だと思いますが」上目遣いにユノヒョンを見てぼそりと言ったら、彼は僕の腰をぐっと抱き寄せて笑った「確かにそうだなでも、今日は…まだ時間も早いし、好きなだけ食べて飲もうか」「パーティーみたいですね」「チャンミナが頑張って、それがちゃんと届いたから…お祝いだ」「まだそんなの分からないですけど…」「でも、そうやって信じて頑張って進むしか無いだろ?大丈夫、俺が誰よりもチャンミナは変わっていないって分かっているから」きっと、僕だけならば…例えコンサートチケットが直ぐに完売したって、不安は簡単には拭えないと思うだって、いざステージに立った時にどんな視線を向けられるかなんて分からないからでも…僕はひとりじゃあ無い何時だって、隣にはユノヒョンが居るそして、彼は誰よりも僕の事を知ってくれているある部分ではもしかしたら、僕よりも僕の事を知っているかもしれないそして、それは逆も然り、だ「僕が酔ったら介抱してくれますか?」「その前に、俺の方が酔っ払って駄目になるかもしれないけど」「駄目って…こっち、の事ですか?」僕だってユノヒョンを驚かせる事くらい出来るだから、右手でそうっと彼の中心を撫ぜたなのだけど…「…あっ、…」「誘ってるの?なら、先に『こっち』にしようか」「違…そんなつもりじゃあ無くて…っあ……」ユノヒョンの手は僕の後ろに伸びて、スウェットパンツの上から尻の窪みに伸びたぐっと押されると、それだけで後ろが濡れていくのが分かる「ユノヒョン、あの…ワインを開けたいです」「うん、良いよでも、先にベッドに行こうか」「……」番になると、こんなにも自分を律する事が出来なくなるのだろうかもう、欲しくて欲しくて堪らないだけど…それだって、考えてみれば番になる以前からだ変わった事は、もう僕達はお互いにしか反応しないという事「嫌?」「……」答えはもう決まっているでも、言葉に出すのは恥ずかしいから、抱き着いたこんな風になってしまえばもう僕の事なんてお見通しなユノヒョンには言葉は要らなくなるからだけど…「ベッドでは、ちゃんと素直になる事」微笑んで、僕の項に甘く噛み付いたユノヒョンは優しいけれど意地悪で、そして僕を誰よりも愛してくれているランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村このお話は特殊設定のオメガバースです1話から読んで頂ければ分かるようになっていますが、詳しくはこちらに説明を載せてあります ↓Fated 設定とお知らせ

  • 06May
    • 二年半なのでホミンちゃんの相関図を作りました

      ご訪問ありがとうございます今日は、私にとって、と言うかこのお部屋にとって節目の日なので…もう、最近抑えている荒ぶりやホミンちゃんへの想いを色々出していこうと思います2017.11.6、無理矢理語呂合わせでいい(し)むの日ですと書いて始めたこのブログ、今日で開設2年半が経ちました(セルフお祝いの絵文字を勝手に付けた事をお詫び申し上げます…)初期のお話や雑記は今非公開にしているものが多いのですが…思い返してみれば、誰も読まない事を分かっているのに、語呂合わせにもなっていない語呂合わせでいいしむの日に始めてみますと書いた自分の変わらなさに震えそうです…確か、当時偶然(も何も語呂合わせになっていないのですが…)この日に書き始めて、何を書こうかなと思った結果が一番初めのブログから色文字太文字謎のテンション、語呂合わせになっていない語呂合わせになってしまった気がしますなんて話はどうでも良いよ、だという事は分かっています申し訳ございません…ホミンちゃんへの想いがひとりでは抱え切れずどうしようも無くて始めたこのお部屋ですが、変わらずにほぼ休む事も無く書いても書いても新しいホミンちゃんが膨らんでしまって書き出す事が追い付かずで今もそのまま、なのですが、いつもいつもお付き合いくださる方達がいらっしゃる事に本当に本当に感謝していますもうずっとコメントだけは必ず全てお返事を、と以前は思っていたのですが、ここ数ヶ月はそれも間に合わなくなってしまい、声を掛けて頂く度に有難い気持ちと、お返事出来なくても申し訳無い気持ちがあります。ただひたすら、私が好きで堪らない気持ちと溢れて止まらない頭のなかのお話を書き出して、それを読んで共有してくださって…それだけでもとても有難いのに、色々な手段でお声掛けくださる皆様がいらっしゃって、とても感謝しています。お返事が出来ていないものも全て拝読しています。直ぐに感動してしまったり泣いてしまう方なので、ひとりで読んでは有難いなあと涙したり(気持ち悪い自覚は常に持っているので突っ込み等は大丈夫です)お話を好きだと言って頂けたり、以前のお話でも好きだと言って頂けたらまたそのふたりを書きたくなったり…常に書きたいものが多くあるので、ご意見や感想を頂けるとそこから進めるお話も今まで少なくないしとても嬉しいですと、何を書いても長くなるので…今は特に、外での楽しみが無くなったり、ユノとチャンミンに会える予定が一旦白紙になったりという時なので、このお部屋が少しでも息抜きや何かの役に立つ事が出来れば良いなあと思っています。そして、これからもこのお部屋にお付き合い頂ければ幸いですここからは勝手に二本立てで行こうと思います以下、ホミンちゃんが大好き、全てはホミンちゃんを中心にまわっている私の独断と偏見と妄想が含まれておりますので、大丈夫だよ、もしくは何とかスルー出来るよ、という方はお付き合い頂けましたら幸いです先ずは、あっという間に終わってしまったチャンミンのソロ活動、色々とユノの話も出て来たので、その一部を勝手に振り返り纏めてみようと思います…⚪ChocolateのMV撮影にはユノヒョンがアイスケーキを沢山差し入れに持って参上。その際、特に会話は無かったが、チャンミンはユノヒョンの目を見れば、アイスケーキには「チャンミンのMVを素敵に作ってくださいね」という意味が込められていると分かるし、ユノヒョンはチャンミンを見守って帰っていきました。つまり、ユノヒョンと僕には会話は要らないし目を見れば分かるんです、の通じ合ったご夫婦の匂わせという事なのでは?と思いました…(事実に基づく妄想です)⚪VLIVEにて「僕はユノヒョンにスケジュールをひとつひとつ報告するタイプでは無いのですが、ユノヒョンは僕のスケジュールを把握してくれています。ストリーミングもしてくれていると画像までつけて報告をしてくれます///」つまり、ユノヒョンは僕の事を何でも分かってくれていて、言う前にもう知ってくれているので敢えてお知らせする必要も無い程傍にいるんです、の匂わせ更に、このくだり、話し終わった後のユノヒョンのウリチャンミナがやたらと恥ずかしそうに含羞んでいた事をここに勝手に書き記しておこうと思います…⚪ラジオ「グッドモーニングFM」にてQ ユノさんはどんな存在ですか?チャンミン「家族のような存在です」Q ユノさんとは家族のなかで例えるなら父親、母親、兄、姉、弟、妹…どんな間柄ですか?チャンミン 「例えるなら夫婦です」Q え、夫婦ですか?💦チャンミン「はい、もう子育てを終えて自分達の時間をそれぞれ持つ事の出来る黄昏夫婦です夫婦のなかでは僕が妻です。」この流れは心に刻まなければならないと勝手に思いました…質問では、家族なら父親や母親や…と具体的に聞かれたのに選択肢には無かった夫婦、更に自分が妻だと何故か幸せそうに微笑みながら宣言するユノヒョンの妻ウリチャンミナ…この時のDJさんの、初めは驚きつつも全てを受け入れてくださったような笑顔が忘れられません…ホミンちゃんは夫婦、そしてチャンミンは妻、つまりユノヒョンは夫、つまりホミンちゃんという事ですねここはホミンちゃん検定に必ず出るので必須です、と最初は斜線無しに書きましたが、最近、荒ぶり記事を書いていなかったので、以前良く使っていたこの言葉を使う事が若干恥ずかしくなってしまった為斜線を引いてみました…⚪スパイバージョンのお衣装は「映画キャットウーマンの女性キャラがセクシーなのでそれを僕のバージョンで着てみたらどうだろうかと提案して作りました。」自ら、魔性のBAD GUYならぬ魔性のセクシー女性スパイになろうと提案する、あざと匠セクシーマイスター、ユノヒョンの奥様ことユノヒョンのウリチャンミナ、あざと可愛さに磨きがかかりました、よねまだまだ振り返り足りない事が色々とあるのですが…毎回、書き出すと直ぐに投稿時に「写真の数が多いです」「文字数が多いです」とエラーになって泣く泣く削る事になるので、次に行きます最近、Twitterで話題になっている「相関図」ご存知の方もそうで無い方もいらっしゃると思うのですが…つまり、ドラマとかであるような人物相関図、です今流行って?いるのは、主人公(ヒロイン)が、それを作成する個人になっていて、例えば色々な俳優さんや有名人、キャラクターがその方を取り巻いて…主人公(私)の事を皆が好き、という幸せな世界が広がる、というもので…私、最近それをTwitterの鍵付きアカウントでひたすら繰り広げているんです…ですが、私はホミンちゃんと自分が何か、という事は一切必要無い世界は全てホミンちゃんで回るというホミンちゃんペンなので、ヒロインがチャンミン、ヒロインを取り巻く沢山のユノヒョン、で相関図にもならない相関図を作りました止まらなくなってTwitterに載せるのも申し訳無くなってきた為、お気に入りのユノヒョン達とウリチャンミナをこちらに勝手に相関図として置いておこうと思います(諸々気持ち悪い自覚は常にごさいますので、気持ち悪いよ、等の突っ込みは受け付けておりません申し訳ございません…)では行きますまずは、こちらがヒロインで…こちらが、砂浜をサーフボードを小脇に抱えながら走る世界一可愛い丘サーファーなヒロイン(男)を取り巻く世界一のイケメン達ですひたすらホミンちゃんフォルダから好きなユノのお写真を選んでは、ここ数日時間のある時に作り続けるという、本当に気持ち悪い自覚はあるのですが止まらず…とにかく格好良くて完璧なチョンユンホと、兎に角ユンホに愛されるドジっ子属性ヒロインチャンミン(男)という、今流行りの相関図を作ってみました…ちなみに、ヒロインは通常ひとりなのでチャンミンはお気に入りの写真集「LIFE IS A JOURNEY」から丘サーファーチャンミンにしてみましたが…こちらのヒロインも私の一押しですちなみに、こうやって自分で勝手に設定を繰り広げておいて、ですが…ユンホの人数とチャンミンの人数がこれだと釣り合わず、ヒロインチャンミンの身体が持たなくなる、もしくは報われないユンホが現れる可能性があると気付いて悲しくなってしまったので、ヒロインも増やしていかなければならないと思いました今日は自分で勝手に2年半のお祝いという事で、荒ぶりどころか、な謎のホミンちゃん相関図を勝手に載せてみたのですが…とても楽しいし止まらないのでお許しください…もしも他にも見てやっても良いよ、荒ぶりにも付き合ってやっても良いよ、という方がいらっしゃれば最近ブログで荒ぶる事があまり無くてTwitterで荒ぶっているので…@hominismmomi 通常のホミンちゃんへの荒ぶりや振り返り@hominism0212 お話の事や完全にホミンちゃんご夫婦仕様の荒ぶり(鍵アカウント)こちらもお付き合い頂けたら嬉しいですそんな訳で(も何も無い事は分かっています…)気が付いたら2年半、このお部屋を続ける事が出来ました拙いお話や荒ぶりやレポや独り言だったり…お付き合いくださって、一緒にホミンちゃんへの気持ちを共有出来る事に、何よりも私がいつも幸せな気持ちをもらっています。なので、このお部屋がご訪問くださる皆様にとってもそのような場所であれば良いなあと願っています。まだなかなか先は見えない状況ですが、ホミンちゃんが、そしてこのお部屋をご訪問くださる皆様がいつも笑顔で健康で、そして幸せでありますように今日はこのお部屋の記念日なので、ぽちっでお祝いして頂けると嬉しいですそれでは…幸せホミンちゃんにぽちっ♡ ↓にほんブログ村

    • 未必の恋 27

      恋人になってからのユノさんは、それ以前と少し変わった勿論、VIP客と宿泊ホテルの副支配人という関係と恋人、では全く違うし変わって当たり前なのだけど元々ユノさんは優しくて、たまにやって来る少し横暴なVIP客とは違って無理難題を言ったり、僕達従業員を見下す事もしない一対一で接する時も、チェックインした日こそ…僕がニットを引っ張って駄目にしてしまった事が切っ掛けで、半ば強引に肉体関係を迫られたけれど、それだって僕はそもそもユノさんに憧れていたから嫌だと思ったり…彼に失望する事も無かった変わった事と言えば、ユノさんが一ヶ月を過ごしすホテル最上階のVIPスイートルームでの事それまでは、仕事が立て込んでいる時は僕は部屋には入らずに、呼ばれたら部屋に向かって仕事をしたりユノさんと過ごしたり、が当たり前だったでも、一週間前のオフの日にユノさんと恋人になってからは、彼は常に僕を傍に置くようになった傍に、と言うと極端だけれど、つまりは部屋のなかに居させてくれるという事とは言っても、勿論真横に居る訳では無くて、少し距離を置いているホテル内で一番広い部屋だから僕の待つ場所は幾らでも…と言うと大袈裟かもしれないけれど充分あるその間に掃除をしたり、もしくは僕は僕自身の仕事をしたりするそして今日は…「チャンミン、良い匂いがして来たけど…完成しそう?」「はい、もう出来そうです」換気扇をオンにしても、広い部屋中きっとチゲの匂いでいっぱいになっている気がする一応、大蒜は抜きにしてみたのだけど、VIPスイートルームが大衆食堂のような匂いに満たされてしまった「…あの…匂いとか大丈夫ですか?」「え?あはは、俺は気にならないんだけど…副支配人としては気になる?大丈夫、その内に匂いは取れるよ」「えっ、違います、そうじゃ無くてユノさんに匂いが付いたりしたら…」「俺が食べたいって言ったのに…気にする訳無いよ」ユノさんと恋人同士になってから、何度か料理をしているそもそも僕が簡単なものしか作れないからホテルの料理とは比べ物にならないけれどだけど、ユノさんに『負担にはさせたくは無いけど、二日に一度はチャンミンの料理が食べたい』なんて囁かれてしまったら嫌だなんて言えないそれは、彼がVIP客で僕は彼の要望に全て応えるべきだから…では無くて、僕が彼を好きだから「ユノさん、あの…」「ん?何?」「もう出来たので、その…そこに立っていたら危ないです」後ろから僕の腹に腕を回すようにして身体を密着させる恋人ちらりと振り返って伝えたら、キスをされた「じゃあ、一歩後ろに下がって抱き締めるのはOK?」「…一緒です嬉しいけど、チゲが熱いし危ないから…」ひとり用のチゲ鍋に、野菜やスパム、それにラーメンを入れたチゲは簡単だし料理と言える程のものでも無いし…例えば女性ならばもっと可愛げのある物を作るのかもしれないだけど、ユノさんがこれが良いって言ったから…「あ、そうだ…このままの方が雰囲気は有りますが、熱いから取り皿もあった方が良さそうですよねそれか、此処で入れ替えてしまいますか?」この部屋で料理をするようになったから、もう常に調理器具を置くようにしたとは言っても、最低限の鍋や皿、元々置いていなかった包丁とまな板くらいだけどスイッチをオフにしたIHのコンロの前に立ったまま振り返って尋ねたら、猫舌のユノさんは「取り皿が良い」と、少し恥ずかしそうに言った「…あの…」「何?」「ええと…言っても良いですか?可愛い、です」甘える恋人が、ユノさんが愛おしい一週間前までは気持ちは封じ込めておかなきゃって必死でいたから言えなかった事も、今ならば言葉に出来る「チャンミンの方が余っ程可愛いし…でも、それを分かっていないようだから…今夜が楽しみだな」「…っユノさん!」「その為にも食べて仕事を頑張らないと」なんて言いながら、冷蔵庫に向かうユノさん恥ずかしくて嬉しくて…そして、今でも勿論葛藤は有るけれど、素直になって良かったと思う「辛い…けど美味しい」「だいぶ控えめにしたんですが…僕が辛党なので、それでも辛かったかもしれないですね」テーブルについて向かい合わせに座って、チゲを食べるユノさんを見つめる以前はそれも、あまりまじまじと見てはいけないと思っていた気持ちが知られたらいけないし、僕はただの客室係だからでも今は、どんな瞬間だって忘れたくないし焼き付けていたいユノさんを全部全部刻み込みたい「ミラノではあまり辛い物を食べる機会が無くて」「イタリアも、唐辛子を使うイメージが有るんですが…」「でも、韓国程じゃ無いよ昔から辛さは得意な方じゃ無かったんだけど、イタリアで暮らすようになって、更に弱くなったのかも」そう言うと、ユノさんは着ていたニットの袖を捲った少しだけ額に汗が滲んでいるようにも見える「やっぱり辛過ぎましたよね、ごめんなさい」確か冷蔵庫にチーズが有った筈それを入れたら少しは辛さも和らぐだろうか、と思ったそうして立ち上がろうとしたら、前からユノさんの手が伸びてきて、テーブルに置いた僕の左手に触れた「ユノさん?」「違うよ、辛いけど美味しいんだ故郷の味が恋しい、なんて我儘を言ったのに作ってくれてありがとう」「そんな…僕はユノさんの為になるなら何だって…って、こんな気持ちは流石に重たいですよね、はは」素直になったは良いけれど、我慢が出来なくなる流石に全て素直に気持ちを出す事は出来ないだってそうしたら、『チェックアウトしたらもうこの関係は終わりですか?』『次はいつ会えますか?』『ユノさんはこの先の僕達の事をどう考えていますか?』と聞いてしまいそうだからそして、それが…ユノさんさら前向きな言葉が有れば、僕の不安も小さくなるのだろうけど、彼の口からチェックアウト後の事は語られる事が無いだから、僕は尚更聞けないままでいる「あの、辛いならチーズを入れたらどうかなと思ったんです取って来ます」「駄目」「え…でも、チーズはお好きですよね?」相変わらず長い腕を伸ばして僕の手を掴んだままその手が少し汗ばんでいるのだけど、それすら憧れのひとも僕と同じ人間なんだって思えるようで嬉しいいや、汗なんて…抱かれている時にだって感じているし今更なのにでも、何でも無い時にこんな風に触れ合う事は、ユノさんから好きだと言ってもらえて恋人同士になってからだからやっぱり嬉しい触れ合った手を見下ろした立ち上がれないでいたら、ユノさんは辛さの所為か、少し火照ったような顔で僕をじっと見て口を開いた「辛くても美味しい、苦手な訳じゃ無いからこのままが良いそれに…」「どうかしましたか?」言葉に詰まるように止まったから尋ねたら、彼は僕の左手を握る右手にぐっと力を込めた「…故郷の味を食べたいのも勿論本音だけど、それより…チャンミンの手料理が食べたかったんだだから辛くても美味しいし嬉しいし、このままが良い」「え…」「チーズはまた別で食べるし、本当に美味しいよ俺が…直ぐ汗をかくし、辛いと熱くなるから勘違いさせてごめん」「勘違いなんて…と言うか、僕の料理が食べたかったって…先週の、オフの日から思っていてくれたんですか?」「…その前から機会を狙ってたまだチャンミンに恋をしている自覚は無かったけど…考えてみれば、特別に好きじゃ無きゃ誰かの手料理を食べたいだなんて思わないから」そう、普段よりも少し早口で言うと、ユノさんの少し汗ばんだ熱い手は離れていった「…そんな事を言われたら、料理を勉強したくなります」取り分けた皿にスプーンを入れるユノさんはもう、俯いている視線が合わない事を良い事に本音を話したら、彼は「そんなに可愛い事を言うと、夜まで我慢出来なくなるから駄目」と呟いたこの時間が当たり前にずっと続けば良いのに勿論、そんな事は有り得ない事は分かっているだって、彼の家はイタリアのミラノだデザイナーとしての活動拠点も勿論その場所で、ソウルに戻って来たのは夏に向けて旗艦店を作る為でも…もしも店舗が出来たら、たまにユノさんがソウルに戻って来る事もあるだろうか妹や姪もこちらに居るし…なんて、それも全て、ユノさんが何か教えてくれたら会話の糸口になるのだろうだけど、チェックアウトはもうあと一週間後に迫ったけれど、僕は何も知らないだから、聞く事すら出来ない「夜も…ユノさんが良ければ何か作ります僕も料理をもっと勉強したいので」「本当に?じゃあ、夜は俺も手伝うよこの後仕事が入っているけれど、それが終われば今日はもう落ち着くから」「はい、でも、ユノさんは無理しないでくださいね」恋人の前に、僕はホテルの副支配人だから、尚更我儘で聞き分けの無い恋人になんてなれないVIP客であるユノさんの気分を害するような事や、ホテルの滞在にネガティブな感情を抱かせる訳にはいかない「…難しいな」「ん?何か言った?」「いえ、僕も熱くなってきました」チゲをスプーンで掬って口に入れて、後はもう他愛の無い話を交わしたなのだけど…「え!聞いて無いです!」「だって、言ったら真面目なチャンミンの事だから『匂いが残るから昼は作るのを止めます』だとか…『ルームサービスにしましょう』って言われそうだと思って」「…言いますよ、だって…部屋に取材が入るだなんて聞いていないです」それは、昼食のチゲを食べ終わって片付けをしていた時ユノさんは汗をかいたから服を着替えるのだと言って奥に向かって、僕は食器を軽く洗って洗浄機に入れたそして、テーブルを拭いて部屋の換気を強めにしたり、なるべく匂いが早く消えるように…なんて思っていたところに、着替えたユノさんがやって来たのだ「道理で…何だか外出でもするような格好だなあと思いました物凄く格好良いですが」「派手かな?あまり地味な格好は止めて欲しいと先方から言われていてこれは春夏の新作なんだけど…気に入っているんだ」「物凄く素敵です…」そう、本当に素敵だそれに、僕のなかでは世界一格好良いと思うだから胸がときめいて仕方無いのだけど…でも、午後から部屋のなかで雑誌のインタビューと撮影だなんて聞いていないユノさん本人は大丈夫だと言うけれど、雑誌のスタッフやカメラマンの方達が部屋に入ればチゲの匂いに驚くだろう「ごめん、チャンミンを騙すつもりじゃ無くて…でも、どうしても今日はチゲが食べたくてだから、取材の件はチェ支配人に話して許可をもらっているんだ」「…許可があるなら僕は…と言うか、僕は外に出た方が良いのですか?」匂いも気になるけれど、ホテルマンが部屋のなかに在中している事も違和感を感じられそうだ部屋を片付けて…掃除はしているけれど、もう一度確認して、それから取材スタッフが来る前には出ないと、と頭のなかで考えていたら、鮮やかで、けれども甘さを押さえたピンクのシャツを着たユノさんが僕を抱き締めた「…っえ…ユノさん、僕は着替えていないし匂いも…」「隠す必要も無いし良いんだ多分、後少しで来る予定だけど…チャンミンも部屋で寛いでいて流石に一緒に取材を受ける事は出来ないけど」「え……ええと、隠れていれば良いですか?」「あはは、隠れなくて良いよ」何だか、ユノさんは自由だでも嫌じゃ無い、どころか…今までは仕事をしている風景を見られなかったから、嬉しいって思ってしまった「じゃあ、急いで掃除をします後、スーツにも匂いが付いたので…掃除の前に着替えます」「そのままでも良いのに…」「駄目です、僕は副支配人なので」真正面から僕を抱き締めてじっと見つめてくるユノさんゆっくりと顔が近付いて来て、キスをされると思って瞼を瞑ったら、口には何も触れなくて…「着替えたら、キスをする時間が無くなりそうだから寂しい」左の耳元に甘く囁かれて、チゲを食べていた時よりも汗が噴き出してしまいそうになった「…っ、もう…それだって、先に言っていてくれたら…ユノさんは狡いです」「あはは、ごめんね、狡くて」触れていたら、僕だって…いや、きっと僕の方が離れ難くなるだから、皺にならないようにそっとユノさんの胸に手を置いて身体を離しながらだけど我慢出来なくて、一度だけキスをした「午後の仕事…その取材が終わったら、今日はもう終わりですか?」「うん」「じゃあ、その後で沢山、今の分もキスがしたいです」恥ずかしいから俯いたままそう言って、部屋に置いてある別のスーツに着替える為に奥のクローゼットへと向かった背を向ける前に一瞬見えたユノさんの顔が嬉しそうだったそれだけで幸せ、だけど一週間後のその先も同じ気持ちで居られたらもっと良いのに、と思った「ユノさんは…僕達のこの先をどう考えているんですか?」直接聞く勇気は無い結局僕はホテル従業員で、ユノさんはVIP客それが邪魔をして本音を出し切れないだから、広い部屋の奥で、ユノさんに絶対に聞こえない場所で口に出せない不安を音にして紡いだランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村

  • 05May
    • Switching! 6

      生まれて初めて恋人が出来た高校二年生の今の事をきっと、僕は一生忘れないと思うなんて、まだ高校二年生なのにはっきりとそう言える…いや、思えるのには理由が有る勿論、ひとつ年上の恋人、先輩の事が大好きだこんなに胸が苦しくなるような気持ちになった事は今までにどんな女の子を見たって無かった事だから好きになったひとと同じ気持ちになれて恋人になれて、初めてだし幸せで仕方無いでも、忘れられないであろう大きな理由はそれでは無いそれはつまり…『チャンミン、明日デートをしないか?なんて、本当は学校か、帰り道で言いたかったんだけど…緊張して言い出せなくて』「…ユノオッパ…」オッパ、と呼ぶのは勿論僕僕は僕で、シムチャンミン、高校二年生のれっきとした男だでも、オッパ、と呼ぶのは間違えでは無くて…つまりは、僕は現在女子高生として高校に通っていて、今僕が通話をしている恋人、チョンユンホ先輩は僕を当たり前に女子だと思って好きになってくれたのだオッパ、ユノ先輩は女の子を好きになったでも、その女の子は僕だから男で…男なのに、男である先輩を好きになった僕は、男同士なんて有り得ないという自分のなかの常識よりも恋心が勝ってしまって、そうして先輩と恋人になったつまりは、女子の振りをして同性と付き合ったのが初めての恋人関係になってしまっただから、一生忘れられないだろうと思う、という事『チャンミン、嫌?勿論、変な事なんてしないし…普通に…そうだな、買い物をしたり、休日にも会いたいんだ』「…っ、変なとか…そんなの考えて無いです」『あはは、ごめんチャンミンが黙ったから不安で…』先輩は、格好良いし優しい女子にとてもモテるだけじゃ無くて同性からも信頼が厚いそれなのに、僕の反応ひとつで不安になるくらい、僕を好きでいてくれている誰とも付き合った事の無い僕いや、女の子…つまり彼女が怖い思いをしないようにっていつも気を遣ってくれている『それで、さ明日は休みだし天気も良さそうだからデートをしない?』「あ…ええと…」ユノ先輩と付き合いだして、二週間が経ったこの間も学校では毎日顔を合わせているお昼ご飯は一緒に食べる事が多いし、時間が合えば先輩の自転車の後ろに乗って、家まで送ってもらうキスは、何度かしたまだ恥ずかしいけれど、やっと慣れて来たでも、デートは先週も誘われたけれど避けていただって…「私服とか…」『え、何?ごめん良く聞こえなかった』「あっ、何も、何でも無いです」スマホを耳と肩に挟んで話をしながら、自分の姿を見下ろしたひとり暮らしの部屋は、現在唯一僕が僕のままで居られる場所だから、男として…今なら、学校から帰って来て直ぐにブレザージャケットや膝上丈のプリーツスカートを脱いで、スウェットのパーカーと同じくセットアップのハーフパンツ姿まあ、一応女子だってするかもしれない格好だけど、何とか普段は女子として周りから見られていても、こんな格好になれば完全に男だ私服で女の子の服装なんて持っていないし…『チャンミン…?』「あ、あの…私、可愛い服とか、デートに合う物とか持っていないんですだから、ユノオッパに幻滅されそうで怖くて」『え…だから困っていたの?』「…困っているの、分かりましたか?」デートが出来ない上手い言い訳なんて思い付かないから、本当の事を告げた勿論、一番大切な真実は言えないから、良心はちくちくと痛むけれどでも、そんな事を勿論知らないユノ先輩は『分かるよ俺が執拗くて嫌われたのかと思って怖かった』なんてどこまでも優しくて、男同士なのに先輩に夢中になってしまった僕にとっては有り得ない事を言う「そんな訳無いです、絶対!だって…私、ユノオッパの事が好きなんです好きだから嫌われたくなくて、可愛く無い姿を見せるのが怖くて…だから、デートはまたもう少ししてから…」『そんな事なら全く問題無いよ』「え…」これで上手く断れたと思った勿論、僕だって好きだから会いたいそれに、ひとり暮らしをしているし引越してからもまだ日が浅くて友人も殆ど居ないホームシック、とは言わないけれど、ひとりだと人恋しいし寂しくなるだけど私服で、学校以外で会ってしまったら男だってばれてしまう危険性があるだから避けなければならないのに…『どんなチャンミンでも好きな自信が有るから心配しなくても大丈夫、そのままのチャンミンで良いよ』「あの、でも…」どんなチャンミン、つまりどんな僕…も何も、僕は男だユノ先輩は、ユノオッパは当たり前に僕を女子だと思っていて、だから好きになってくれたこのままの僕だったらそもそも好きになんてなってくれていない『チャンミンは俺とデートするのが嫌なんじゃあ無くって、可愛い物を持っていないと思っているから…俺に嫌われるのが怖いって事…だよな?』「…うん」『なら問題無いよ俺は、まだ知らないチャンミンを沢山見たいだから、明日を楽しみにしているよまたメッセージで時間を決めよう』「あ…オッパ…!」『好きだよ、チャンミン「お休み」はメッセージで伝えるけど、もう遅いし電話は出来ないから…お休み』「…っあ…お休みなさい…」『うん』ユノ先輩は嬉しそうに僕に応えると、通話は終わってしまった僕は先輩の事が大好きだでも、たまにこんな風にマイペースに、と言うか彼のペースで進むと着いていけない事があるでも、男だから、ばれてはいけないから強く出る事も出来ない「…どうしよう、眠気も完全に覚めちゃった」立ち上がって辺りをうろうろと歩いてみただって、落ち着かないし明日の事を思うと、今は楽しみよりも恐ろしくて仕方無い「クローゼット…探さなきゃ」せめて、数日前にでも決まっていれば…いや、せめて帰り道に言ってくれていればそうしたら、今日だってこのマンションまで送ってもらったけれど、その後にこっそりひとりで出掛けて服を買う事だって出来た数日前ならば、インターネットで買い物する事だって出来た「…オッパのばか……嘘、大好き」焦りを恋人への怒りに変えようと思ったけれど、それを口にするだけで胸が痛むなんて、これは完全に本気の恋だ本気だからこそ、誰よりもユノ先輩に本当の事を知られたく無い彼が可愛いと言ってくれて、そうして好きでいてくれる自分で居たい「…女の子に見える服なんて無いよ…」何とかなかに入れる大きさのウォークインクローゼットその扉を開けてなかを覗き込んだまま項垂れたそもそも、制服でブレザージャケットを着ているから、胸が無い事を何とか誤魔化せているのだ例えば本当の女の子ならば、シンプルなシャツにデニムパンツを履いたって変わらずに女の子のままだろうでも、僕がその格好をすれば、ただの貧相な少年僕はそもそも、昔から女の子に間違われる事があるくらい、男らしくは無いでも、勿論男だ「…兎に角、諦めずに考えなきゃ」クローゼットを隅から隅まで見て、何とか少しでも可愛く見えそうな物を取り出したそして、ひたすら鏡の前で着替えて…そうこうしている内に、先輩からのメッセージも受信した彼は、『彼女』が準備をする時間も必要だから…本当は早く会いたいけれど我慢をして昼に僕のマンションに迎えに来る、と言った「…昼…ああもう…」薄ピンクの春用のニットがあったそれと、スキニーパンツ少しボーイッシュな女の子になれるかと思ったけれど、制服のように誤魔化しは効かない何だか悔しくて悲しくて涙が溢れて来てしまった確かに付き合っているのにユノ先輩はそう思ってくれているのにそれなのに、僕は彼が好きでいてくれる姿で居る事すら簡単では無い「…っあ、え、嘘アラーム止まってるし!」朝、気持ち良く目が覚めて…何か違和感を覚えてスマホを手に取ったら、時刻は十一時夜中、眠る前にスマホでアラームをセットしていて、その時間は確かに九時だっただけど、スマホを見る限り、僕はアラームを無意識で止めてしまっていたらしい「約束の時間まで後一時間しか無いし…嘘だろ」夜は結局、コーディネートが決まらなかったどんな組み合わせで頑張ってみても、そもそもスカートが無いから女の子に見えなかったのだそうして時間だけが過ぎて、眠ったのは確か三時頃それでも充分眠る時間は有るし大丈夫だって思っていたのに、初デートの日に寝坊だなんて有り得ない「兎に角何とかしなきゃ!」ベッドから起き上がって洗面所へと向かったなのだけど、そんな日に限って寝癖が酷い横も後ろも襟足も全部くるん、と丸まっているブローで丁寧に、だとか髪の毛を洗って乾かして…なんて時間は無いから、濡らしてオイルを付けて押さえてみた顔を洗って、いつも使っているほんの少し色の付いた日焼け止めを塗って…「制服ならこれで何とかなるのに…」時間が無いから、兎に角焦ってしまう何もしていないのにただ慌てていたら、ハーフパンツのポケットに入れたスマホが震えてユノ先輩からのメッセージ「『時間通りに迎えに行くよ』…先輩も寝坊してくれたら良かったのに…」なんて事は言えないから『分かりました』と可愛いスタンプを添えて返信したその後、ひとつだけ少し良い事を思い出した普段は使っていないけれど、クラスの女子に『買ったけど私には色が合いそうに無くて…』と、未開封のまま貰ったものそんなの、使える訳無いって思っていたけれど、今日は助け舟になりそうそうして、一時間はあっという間に過ぎて…「…はあ、…疲れた…」もう、これしか無い、という結論に至って準備が終わったポケットのなかにら、使い慣れた薄い色付きのリップと、それからスマホ、後は小さなタオルそれ以上の荷物も無いからバッグは無しふう、と溜息なのか何なのか良く分からない息を吐いていたら、マンションエントランスのインターフォンが鳴った「…っはい、あ…先輩…」『オッパ、だろいつも言っているし、それに…今日は学校じゃあ無くてデートなんだから』「…はい、あ、ええと今から行きます迎えに来てくれてありがとうございます」もう、引く事も出来ないし、この姿なら安心だ最後にもう一度、全身を鏡でチェックした普段よりも跳ねてしまった髪の毛は落ち着かないけれど、服装が何とかなったからこれも良しとしよう扉を開けて廊下に出て、鍵を閉めて戸締まりの確認急いでエレベーターに乗って、降りるやいなや走ってマンションエントランスに向かったら…「ユノオッパ!おはようございます」夜からずっと、もうどうしようと思っていた朝だって寝坊して絶望したそれなのに、顔を見ると嬉しくて幸せで、好きで仕方無い手を振って名前を呼んだら、彼も僕を見てそして…「服が無いって言っていたけど…だから制服になったの?もしかしたら今日は平日で、俺が間違えたのかと思った」「あ…ええと、はい昨日あの後ずっと服を選んでいたんですが…本当に可愛い服が無くてこれが一番安心かなあって…制服じゃ駄目ですか?」ひらり、とスカートの裾を両手で持って先輩を見上げたら、彼はふっと優しく笑って「駄目じゃ無いよ」とひと言「私服も楽しみだったけど…何だか今日のチャンミンはいつもと違うデートだから可愛くしてくれたの?いつも可愛いけど」「…分かりますか?普段はしないけど、チークを…下手ですが」クラスの女子からもらった、薄ピンクのチークそんなの、絶対有り得ないと思っていたでも、頬に少し塗ってみたら何だか普段よりも女の子らしく見えた少し、いや、かなり恥ずかしいけれど僕をじっと見てユノ先輩は大きく頷いて「可愛い」と言った「何も無くても可愛いけど、いつもと雰囲気が違う髪の毛も…」「え…っあ、これは寝癖と癖毛で…」「寝癖でこんなに可愛いの?どうしよう、頬が緩みっぱなしだ」必死で整えようとした髪の毛なのに、先輩はこれが可愛いだなんて言う思ってもみなかった反応に、やっと気持ちが落ち着いてきたこれなら、ちゃんとデートも出来そうな気がする「あの…」「何?」「ユノ先輩の私服も、凄く素敵です」「……」「……?」僕の『彼氏』の私服はデニムのジャケットと、インナーが黒のスタンドカラーのトップスボトムスは黒…いや、多分黒に近い紺色のスキニーパンツシンプルだからこそ、スタイルの良さが際立っているスニーカーがごつめで男らしくて格好良いまるでモデルのような姿に見蕩れている間も、先輩は僕をじっと見るばかり「…あの…」「チャンミン、また『先輩』って呼んでたけど?」「あ、ごめんなさい…」腕組みをしたユノ先輩は、僕をじっと見てからにこりと微笑んだそれにほっとして、怒っていた訳じゃ無いのだと胸を下ろしたのも束の間、先輩は僕にとってはとんでも無い事を言ったのだ「こうしようか次に『先輩』って言ったらその場でキス」「え…」「チャンミンからする事」「え、でももしも誰かひとが居たら…」「恥ずかしいかもしれないけど、デートだし学校じゃ無いんだから誰に見られたって俺は構わないよ人前で、が恥ずかしいなら、ちゃんと『オッパ』って呼んで勿論『ユノ』でも良いよ」僕にとって恥ずかしい提案をした先輩は、嬉しそう『ユノ』と呼べば、男のままの僕でも自然だでも、年上だし、それに呼び捨てにするだなんて恥ずかし過ぎる「…ユノオッパ、デートを始めたいです」右手を伸ばして、『オッパ』のデニムジャケットの裾を掴んだ恥ずかしいから俯いてしまったけれど、顔を上げたら…「…どうしよう、めちゃくちゃ幸せだ」そう言ったら、大きな左手で口元を押さえて僕を嬉しそうに見つめた僕だって幸せだ、物凄くだって、女の子にもこんな想いを抱いた事なんて無いでも、可愛く無いと思われたり…何よりも男だと知られる事が怖いなんて感傷的になったのに、僕の身体は緊張感も何も無くて…「…っあ、…」「…もしかして、お腹空いてる?」「……実は寝坊して…何も食べて無いんです」思いっ切り、僕の腹から『ぐう』と音が鳴ったそれでもユノ先輩は笑ったり馬鹿にするどころか「可愛い」と言って、僕の手を繋いだ「まずは何か食べよう実は俺も緊張して…朝から殆ど食べて無いんだ」「…私は寝坊だけど、一緒ですね」「うん、俺達は凄く気が合うみたいだ」こんなに優しくて素敵なひとを失いたく無いチークを塗った顔も女の子の制服も、本当の僕じゃあ無い、これは偽物の僕だそれに胸が苦しくなるけれど、ユノ先輩は確かに今、僕を見てくれている本当の自分で向き合う事なんて出来ないだから、彼が好きでいてくれる僕で居ようと思ったランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村

    • Fated 109

      インタビュー形式で行われたチャンミンの動画配信は、無事に終わった俺はもう、約三十分の配信中ずっとチャンミンを見て、ただ見守るだけしか出来なかったのだけど、スタジオに居たマネージャーや事務所のスタッフ達はリアルタイムでSNSを確認して世間やファンの声を調べていたようだ配信が終わってからトイレに向かったチャンミンを追い掛けて、ふたりきりで緊張の糸が解けたチャンミンを宥めるように抱き締めたり、それにキスをしたカメラの前では一度も怯む事無く、そしてオメガである事を卑下したりする事も無く…かと言って、ファンを安心させる為に大袈裟な事も言わず、真摯に語っていた勿論、打ち合わせをした上で、のインタビューだけど、ちゃんとチャンミンの言葉だったふたりでマネージャー達の元へと戻ったら、彼らも俺達を探していたようで、ふたり揃って頭を下げたマネージャー達は、一先ずは無事に済んで良かったという事勿論過激な声も一部ではあったけれど…オメガに対する差別自体、一昔前と違って許されない風潮だからか、ファン達は冷静に見ていたようだと教えてくれた「多分、スクープが出て公表して…それだけで無くて、あまり間を開けずにチャンミンが顔を見せて語った事で気持ちが伝わったんだと思う」マネージャーのその言葉に、チャンミンはほっと胸を撫で下ろしていた事務所の立場ある人間達は、勿論これからも隙を見せる事は出来ないし…何時だって足を掬われる可能性は有るのだと、少し厳しい言葉を俺達に掛けたそれでも、「チャンミンが逃げる事無く語って、自分は変わらないのだと伝えた事で…番になってパートナーが出来たショックはあっても、安心したという声が多く見られた」と教えてくれた「それだけ皆、二次性が変わってしまう事を大きな事だと自分に置き換えて考えたり…チャンミンの精神状態だったりを心配していたって事なんだと思う」「マネージャー…ありがとうございます」「礼を言う事なんて無いよその代わり、これからも俺達と一緒に働いてくれたらそれで良い」チャンミンは少し瞳を潤ませて頭を下げたオメガを区別したり差別する事は良くないと言われているだから、チャンミンが公表した以上は記者が付け回したりする事はまず無いだろう、と言われているけれども、今回はそれだけでは無く『アルファの番が居る』という事を…相手は俺だから勿論伏せて、チャンミン自身が生配信で打ち明けたどんはファンが居るかも分からないし何が起こるかも分からないから、当分は俺のマンションから仕事に通うように、と事務所から通達された「何か足りない物とか無いか?」「…服も下着も少しはユノヒョンの部屋に置いてあるし…」「そんなの、無くたって俺のを着れば良いよ下着は…俺は気にしないけど、まだ新しいのも有るし勿論、同居が長引くなら幾らでも買えば良い」俺の部屋に戻って来てから、チャンミンとふたりでソファで一息吐いて話をした俺の言葉にチャンミンは少し考えるように視線を上下左右に動かしてからこちらを向いて「前だったら、新しい物が良いって思ったけど…今は、ユノヒョンの匂いが付いた物の方が良いです」なんて誘うような目で見たかと思ったら、直ぐに視線を逸らして大きな耳を赤くした「チャンミナ、それって…俺の事が物凄く好きって事?」「…ユノヒョンと一緒に住む事が許されたみたいで嬉しくて安心して、何だか少し変になったみたいです」「だから、今の言葉は忘れてください」と顔を右側に向けて丸い頭を俺に見せてくるだけど、隣り合って座る身体はぴとり、とくっ付いたままそれがまるで、恥ずかしくても離れたくは無いのだというチャンミンの意思表示のように思えた「変でも良いよいや、変じゃ無いよ俺だって、チャンミナの穿いたままの下着だって普通に穿けるし」「…っ、ユノヒョンのそれは…昔からですよね?」「あはは、ばれた?間違えて穿いた事が何度もあったもんな」ソファの背凭れとチャンミンの身体の隙間に右腕を伸ばして、細い腰を抱き寄せた「わっ」と小さく声を上げたチャンミンはこちらを向いて俺を見上げる見つめ合ったら更に触れたくなるのは必然で、ゆっくりと顔を近付けてキスをしようとしたら…「っあ、薬…」「薬?」「抑制剤とピル、この部屋にも予備を置いていましたが、もうあまり無いし…そろそろ診察に行って薬を処方してもらいに行かなきゃ」「そっか…時間のある時に行こう」「…一緒に来てくれますか?前回、駐車場で写真を撮られてしまいましたが…」左手で頬を包んで一緒に行こうと言ったら、チャンミンは少し不安げな顔で尋ねる何だかここ最近ずっと、色々な事があって忘れていたけれど…前回、病院に行った時に駐車場に停めた俺の車のなかでチャンミンとキスをして…その光景を、俺達を、いや、チャンミンを張っていた記者に撮られてしまった事を切っ掛けに、チャンミンがオメガである事を公表するに至ったのだあの時は本当に、自分達はどうなってしまうのだろうと思ったし、チャンミンを守り切れるだろうかと恐ろしかったでも、ふたりで乗り越える事が出来た勿論、まだまだこれからだけど…「勿論、公表したからと言って堂々とする必要も無いけど…幾らゴシップ記者でも、オメガの人間を付け回す事なんて道徳的に出来ないし許されないから一緒に着いて行くよ」「…良かった…」「でも、キスは誰からも見られないところでしないと、だな」「…っん……」ぐっと身体を抱き寄せてキスをした触れる全てが甘くて、全てがぴったり嵌るような気がする勝手に何かに決められた『運命』のオメガ女性と擦れ違った時は、あの甘い匂いが嫌で、恐ろしくて仕方無かったのにチャンミンの匂いは俺の心を時に穏やかに、そして時に…我慢出来なくなるくらいに、心と身体を熱くさせる「俺の事を、運命の相手だって言ってくれて嬉しかったよ、本当に…」「だって、事実ですよね?あの女性の事を…無かった事にする訳じゃあ無いですでも、無条件に身体が反応するから『運命』だなんて…そんなの、僕は認めません」「あはは、チャンミナも強くなったな」ちゅっ、と頬に音を立ててキスをしたら、彼はきっと素直に…「強がりです、だけど本音だから」と言った強く見える、強く見せているチャンミンだけれど、俺の前では弱音を吐いて、強くなり切れない本心を見せてくれるそれを、彼はもしかしたら情けないと思っているかもしれないだけど…俺は安心出来るし、彼が弱い部分も見せてくれる事で、俺自身もアルファだから見せられないと思って隠している弱さを見せる事が出来るのだ「今日はチャンミナが本当に頑張ったから、何でも好きな事をしてあげようか」「…じゃあ、緊張して肩が凝ったのでマッサージをお願いしたいです」「それって、普通の?」「…さあ…」勿論、まだ彼自身怖さを感じているだろうもう直ぐに差し迫っているコンサートチケットの発売それに、今後仕事で会う事になるスタッフ達の反応勿論、ファンの反応だって…今はSNSのなかだけ、だけれど番組収録だったりが行われたら、テレビ局に出入りをすればファンの視線は否が応無く俺達に直接注がれる俺だって考えるのだから、オメガになったと公表して、更に番が居るのだと公表したチャンミンからすれば…すっきりした気持ちと同じくらい、いや、もしかしたらそれ以上に不安があるに違い無いそれでも、俺に触れて落ち着いた様子で居てくれる事が嬉しい勿論、泣いたって良いし不安をぶつけてくれても良い「じゃあ、普通にマッサージしてから…後はその時の雰囲気に任せてみる?」「…ユノヒョンって最近大胆ですよね」「チャンミナに言われたく無いけど」ぼそりと言ったら、真っ赤になって離れようとするだけど、勿論本気で無いのは分かるし、そうだとしたって俺も離すつもりなんて無いじゃれ合うようにして抱き締めて、もう一度キスをしようとしたら…「…っあ、何か…」「どうした?」チャンミンがぴたっと止まってスウェットパンツのポケットに手を入れた取り出されたiPhoneは震え続けているから、どうやら着信のようだ「あ…」「誰?」「ソユンです、オメガの…」それは、俺が昔付き合っていたアルファの女優、スジンが番になった女性オメガ俺達の事を知っていて、そして俺達も彼女達が番になった事を知っているそして、スジンは番が居る事も、その番が女性である事も公表していない「出ますね」「…うん」チャンミンは左耳にiPhoneをあてて通話を始めたソユンの声は薄ら聞こえるけれど、聞いて良いのか分からないから、チャンミンをそっと抱き寄せるようにして黙っていたのだけど…「あのね、スピーカーモードにしても良いかなユノヒョンも隣に居て…うん、勿論大丈夫」そう言うと、彼はiPhoneを耳から離して顔の前に持って来た俺の方を向いて「ユノヒョンにも聞いて欲しくて」と恥ずかしそうに笑った『チャンミン、聞こえる?』「うん、聞こえるよ」ソユンの、儚いけれど芯の強そうな声がはっきりと聞こえたそれから、彼女は夕方のチャンミンの配信を、丁度オフだったスジンとふたりで見たのだと教えてくれた『最近あまり連絡を取っていなくて…記事が出た事も見ていたけれど、何て言えば良いか分からなくて心配していましただけど、今日の配信を見てスジンとふたりで泣いたの』「え…本当に?」『嘘なんて言わないだって、オメガは差別は無いと言われても隠れて生きるのが当たり前だって思っていたのに…私だって、自分の事は受け入れてはいても、いつもどこかで怖いって思っていたのになのに、チャンミンは堂々と、アルファもベータもオメガも変わらないって言ってくれたから』「……」チャンミンは真っ直ぐにiPhoneを見ている彼の頭を抱き寄せるようにして柔らかな髪の毛を撫ぜたら、チャンミンはちらりと俺を見て下唇をぐっと噛み締めた「…アルファにはなった事が無いから…アルファの事なんて知らないだろって思われるかもしれないけど」『でも、チャンミンはユノさんを知っているし、私だってスジンを良く知っているしスジンも、私より弱いところだっていっぱい有るのよ』そう言うと、彼女の後ろから何か声が聞こえて…きっと、スジンがソユンに何か言ったのだろうと分かったチャンミンは俺を見て、少し瞳を潤ませて微笑んだ「オメガもアルファも、ベータだって関係無く…もっと皆が自由に生きられたら良いなって思うんだ僕の行動を良くないと思うひとも居るかもしれないけど…」『全員の賛同を得ようだなんて、そんなの誰にも出来ないわでも、少なくとも私達はふたりを支持するし…スジンと話したの、私達もいつかちゃんと発表しようって』「…本当か?スジン達が?そうしたら、勿論真っ先に祝福するよ」元恋人、と言うよりも同志のような仲間のようなスジンだって、チャンミンとの事も何度も相談しているからそして、オメガのソユンを彼女がとても愛して大切にしている事も知っているからだから、思わず声を出してしまったら、小さな機械の向こうから、ふたりの声で『ありがとう』と聞こえた話は尽きる事も無いから、また時間が出来たら四人で会おうと約束をして通話を終えたスジンは、ソユンを通して俺へのメッセージを残して…曰く『番になったと発表する事を、ユノに先を越された』だそうだでも、俺達はまだ相手を公表していないし…だから、公表したのはチャンミンであって、俺の名前は何処にも出ていない「いつか、俺達が番なんだって言える日が来るかな」「…それが許される時が、いつか来たら良いですねでも、その前に…それが許されるくらい必死で頑張らないと」「ああ、勿論まだまだチャンミナと見たい景色が沢山有るから」「…ん…っ、あ、此処で?」もう我慢出来なくて、チャンミンにキスをしながら彼のスウェットトップスのなかへと手を入れたチャンミンは俺をじっと見て瞳を潤ませるそれはもう、涙では無くて、期待に満ちている証拠だと分かる「チャンミナは我慢出来るの?」「…多分、無理」「多分なの?」「…絶対無理です、もうずっと…配信が終わった時から我慢しているから」そう言うと、今度はチャンミンからキスを仕掛けられたそのまま、後はもう本能のままに抱き合ってソファで横たわり息を整えた風呂に入る前に、チャンミンがぼそりと、少し枯れた声で「SNSを見てみたい」と言った「大丈夫?無理に見なくても…」「…今なら、沢山ユノヒョンを補給したので多分悲しくなるし怖くなるけど…ヒョンと一緒に受け止めたいんです、駄目ですか?」「…駄目じゃないよ、勿論」安心させるようにキスをしてから、俺のスマホでSNSを開いて検索をした少し探しただけでも、沢山の声があって…やはり、辛辣な声や、ショックを受けたであろうファンの声もあったチャンミンはそれを無言で見ていて…「大丈夫?」「…正直、きついですでも、見ないでいるよりも、ちゃんと向き合いたいそれに、夢が出来たんです」「え…夢?」「はい、夢だなんて言うと大層だし、今日も話した事ですが…もっと、二次性に縛られない社会を作りたいですオメガが隠れなくても良いようにアルファだって自然体で居られるようにだから、オメガとしてこれからも変わらずに活動しますその為にはやっぱり体力をもっと付けないといけないけど」きっと、彼はとても傷付いているその証拠に、強い言葉とは裏腹に、ずっと俺のスウェットの袖を掴んで離さないからそして、その手が少し震えているからでも、それを隠さないでいてくれる事が嬉しいそして…「一緒に叶えようか」「ユノヒョンも同じ気持ちでいてくれますか?」「勿論」笑い掛けたら、チャンミンが「良かった」と笑った以前からずっと、チャンミンが俺の唯一無二の、他には代わりなんていないパートナーだと思っているそして、今はそれだけでは無くて愛しているアルファとオメガが番になれば、ドラマや映画のなかではもう、ハッピーエンドだだけど、俺達はまだまだこれからだし、それに…番になったから、また新しい目標が出来たいつかチャンミンが、そして俺も…心から幸せだと言えるような、胸を張っていられるようなそんな日が来る事を願って、いつもよりも俺を縋るように抱き着いてくるチャンミンを抱き締めてこの日は眠りに就いたランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村

  • 04May
    • sleeping beauty 最終話

      夢のなかの『俺』が警告し続ける事チャンミンを掴まえないと後悔する、という事確かに、以前よりもクリアに見えるようになった夢のなかで、『俺』はチャンミンを呼び止めているけれどチャンミンは俺の元から走り去って行って…そして、いつも夢はそこで終わってしまう起きると疲れだったり、えも知れぬ恐ろしさのようなものに覆われて、そんな時に隣にチャンミンが居るとそれだけで落ち着く現実世界でチャンミンが居ると、良かった、と思うそれは、夢のなかでは彼は俺の元から去ってしまうし、そして現実の俺はチャンミンを好きになってしまったから『チャンミンを掴まえろ』と言われても、どう掴まえれば良いのかなんて分からないどうすれば夢のなかの俺が後悔しなくなるのか、彼と俺は本当に同じなのか…それすら何も分からないただ分かった事は、チャンミンを好きだという事だけでも…「チョン君、今日もひとりになったの?私達と遊ぼ」「もう寝ようと思ったんだけど…何?」「折角の昼休みなのに勿体無いよ、ね?」高校三年生になってから約一ヶ月、昼休みも隣の席のチャンミンと過ごす事が当たり前になっていたなのに、この一週間、彼は毎日何処かに行ってしまう本人は『図書室に行く』と言っているし、あくまでも勉強なのだと言うだけど、同じクラスの女子とわざわざ別々に教室を出て別々に帰って来て…ふたりで一緒の時間を過ごしているらしい俺が一緒でも良いのだと言ってはくれるけれど、その女子がいつもチャンミンの事を見ている事に…俺だってチャンミンの事が好きだから気が付いているそれなのに、男である俺が、いつも隣の席に居られる俺が着いていく事なんて出来なくて、昼休みは午後に備えて眠る事が増えたなのだけど…「遊ぶって何をするの?」「ええと、普通に話そいつも、シム君がチョン君を独り占めして狡いって思ってたのそれに、チョン君今彼女居ないんだよね?どんな子がタイプなのか、とか…皆知りたくて」「タイプ…別に特には無いよ好きになった子がタイプかな」「そうなんだ、じゃあ…」告白される事は昔から少なく無いそれはきっと、俺の外見が異性にはそれなりに好まれるから、だと思うもしかしたら、目の前の三人の女子もそうなのかもしれないでも、恥ずかしそうに、だとか俺を見て頬を染める、だとか…そんな姿を見ても心は動かないとは言え、睡眠障害になって授業中眠る事にも理解してもらっている今それでも周りが話し掛けてくれる事は有難いし、話し掛けられて拒む理由も無い昼休みは彼女達と話していたらそれなりに時間も過ぎて、寂しさも少しは紛らわす事が出来て…「あ、もう予鈴…あっという間」「もっとチョン君と話したいのに」なんて、別に面白くもなんとも無い俺と話したいだなんて言ってくれる事も有難いなあと思っていたら、教室の後ろの扉が開いたのが視界の隅に見えた誰だろうと何となく思ったら、女子達の向こう側に見えたのは…「…っあ……」手を挙げて振ろうと思った名前を呼ぼうと思ったけれども、チャンミンの後ろには、彼の昼休みをここ数日独占している彼女が居たから、何も出来なくなった「チョン君、どうかした?」「え、あ、何でも無い眠くなって来たけど…午後も頑張ろう」気付かなかった振りで目の前の、チャンミンの机を囲むようにして立つ女子達に返したら、彼女達も眠くなって来た、なんて言って笑っていた「あの…もう授業が始まるから座っても良いかな」「え…あ、シム君、ごめんね」「チョン君、午後も頑張ろうね」「眠かったら寝ても大丈夫だし、皆気にしないから」彼女達の後ろから声を掛けたチャンミン彼は何だか居心地悪そうな顔で、俺を見る事は無い三人の女子が居なくなった後に俺の右側に座ったチャンミンは「ユノって本当にモテるよね」と、また俺の事を見る事も無く言った「…チャンミナの方がモテるだろ今日は図書室から一緒に帰って来たの?」「…っ、別にそんなんじゃあ無い」やっと俺の顔を見てくれた否定しているけれど、何だか必死な様子に見えるのが余計に怪しくて、胸がつきつきと痛んだ放課後は、その日もチャンミンの部屋に寄っただって、目的は勉強だからそれに、チャンミンに『部屋に行っても良い?』と言っても拒まれる事が無かったからでも、拒まれない事が逆に意識なんてされていないのだと言われているようで切なかった「ユノ、コーヒーでも飲む?今日は少し肌寒かったし、熱いのを淹れようかなんて、レンジで温めるだけだけど」「…猫舌だから温めが良い後、少し砂糖を入れて欲しい」「ふふ、知ってるよ…ユノが甘党な事くらいでも、猫舌は知らなかった」「了解」と言って、チャンミンはいつも通り俺に笑顔を見せて部屋を出て行った昼休みの終わり、それからその次の授業は少し気まずかったでも、それだって…俺が勝手にチャンミンの事を好きで、チャンミンと図書室で勉強しているあの女子に嫉妬しているからきっとチャンミンは何とも思っていないのだろう「それどころか、あの子と良い雰囲気で幸せなのかも…はあ…」ひとりだから、溜息くらい許して欲しい夢に出て来る『ミナ』の正体がチャンミンである事が分かったそして、夢のなかの俺が俺に警告するあの夢が俺の勘違いか何かで無ければきっと、夢のなかの俺が望む事をすれば悪夢に魘される事…つまり、毎晩チャンミンに逃げられてしまう夢を見て、起きた時にとてつも無い悲しさや恐ろしさに見舞われる事も無くなる筈それなのに、どうすれば良いのか分からないまま寝不足は解消されないまま俺を悩ませるのはチャンミンへの恋心「先ずは睡眠障害を治さないと…」少し頭が重くて、額に右手をあてて俯いていたら扉が開いてチャンミンが戻って来た「ユノ、疲れてる?大丈夫?」「ん?そんな事無いよ」「でも、昼休みも眠れなかったみたいだし…無理しなくて良いよ」右側斜向かいに座ったチャンミンは、マグカップを差し出して「温めで甘めにしてあるから」と微笑んだそれだけで寝不足の疲れは飛んで行くなのに、眠気は覚める事が無いのが辛いチャンミンが持って来てくれたコーヒーを飲んで、その後カフェインのお陰か少しは眠気が覚めたけれども、中間試験に向けて復習をしていたら次第にまた眠くなって…意識はぷっつりと途切れてしまった夢は、珍しくいつもの夢では無かったけれどもやっぱり、夢のなかにチャンミンは出て来て遠くで笑っているチャンミンの元へ駆けて行こうとしたのだけど、隣には良く見るとあの女子が居たどうしよう、と立ち止まっていたら、数メートル先に居るチャンミンが俺の視線に気付いたようで、唇だけ動かして…多分『ユノ』と俺の名前を呼んで切なげな顔をした『チャンミナ』と名前を呼んだ筈、なのに声にならなくて…そして、彼の隣に居る彼女がこちらを振り向いて、困ったように俺を見ると脚が動かなくなってしまったチャンミンの傍に居たい、俺が一番近くに居たいそれなのに…「…っ…」「っわぁっ!」「え…今……」はっと目が覚めて身体を起こした…いや、頭を持ち上げたそれで、はっきりと分かった眠ってしまった事、夢だった事そして…「今、もしかしてキス…」「…っ違…っ、ユノが起きそうだって思って顔を近付けたらユノが急に起きて動くから…」どうやら俺はまた、チャンミンの膝で眠っていたらしいそして、起きた勢いで頭を、上体を起き上がらせたのだけど…その時に、唇が確かに触れ合ったようだ「あ…ごめん…」目の前のチャンミンと同じく、思わず唇に手をあてたチャンミンは真っ赤になっていて、困っている様子だけど、それを勘違いしてしまいそうになる俺の事が好きだから赤くなるのだとでも、そんな事よりも何よりも、自分の心臓がもう信じられないくらい速く鼓動を刻んでいて大変「これ、ユノ用にノート纏めたから」「え…」「試験勉強に役に立つかと思って」チャンミンは、口元から手を離したけれどもまだ頬を赤くしたまま一冊のノートを差し出した「書きながら纏めたら僕の復習にもなるからユノが嫌じゃ無ければ家でも使ってくれたら嬉しい」「…ありがとう」その後は、何も無かったように勉強を再開しただけど、唇が触れ合ってしまったチャンミンは真っ赤にはなっていても俺を拒絶するように、嫌悪感を表す事は無かっただから、勉強を終えて帰る前に半ば勢いで聞いてみた「あのさ、最近あの子と仲良いみたいだけど…それに、多分チャンミナの事が好きだよな?」「…知らないよ、そんなの」「本当に?まさか、あの子とキスしたとか…そんな事無いよな?」「…っ、変な事言うなよ!それに僕には好きなひとが居て…っあ…」「好きなひとって、あの子じゃ無くて?」俺を玄関まで送ってくれたチャンミン彼の細い手首を掴んで尋ねたら、「違う」と言って俯いて首を横に振ったでも、それ以上を聞こうとしたら、彼は「また明日」と言って腕を引いて、そしてもう帰って欲しいのだと言うように扉を開けたチャンミンに嫌われたく無いだから、それ以上執拗くなんて出来なくて…「チャンミナはキス、した事ある?勿論、さっきのは数えないでそれだけ教えてくれたら帰るよ」彼女が居た事も無いと言うから、答えはNOだと思って聞いたそうして安心したかったアクシデントとは言え、俺が初めてのキスだって思いたかっただけど…「有るよ」「え…」「もう、親も帰って来るし遅くなるから…また明日!」固まる俺の背中を押して、あっという間に扉は閉められてしまった 分かった事は、あの彼女とは付き合っていないという事そして、どうやら別に好きなひとが居るらしいという事そして、チャンミンにはキスの経験があった、という事結局、俺が嫉妬する事には変わりは無いだけど…「…これ…」その夜、家に帰って眠る前に少し勉強をしようと思ったチャンミンからもらったノートを開いてぱらぱらと見ていたら、丁寧に要点の纏められたノートの一番最後のページ、隅に『早くユノがゆっくり眠れるようになりますように』と書かれていたそれは走り書きで…だけど、チャンミンが恥ずかしそうに書く姿が思い浮かんで、好きだと強く思った『ノートありがとう、それにメッセージも』急いでチャンミンにメッセージを送ったそうしたら、『僕の方こそ、いつも付き合ってくれてありがとう』なんて、絵文字も顔文字も無いシンプルな返事が直ぐに帰ってきた「やっぱり…伝えなきゃ後悔するよな」夢のなかの俺の後悔、の正体は分からないそれを取り除かないと俺の睡眠障害は…少なくとも、それ以外に原因が分からないから、改善する事も無いのだろうでも、今俺は生きていて、チャンミンの事が好きだあの女子には勿論、他の誰にだって…チャンミンを取られたくなんて無い玉砕するかもしれない、気持ち悪いと言われるかもしれないだけど、伝えなきゃ何も始まらない「良し」明日の放課後に告白をしよう、と決めて、チャンミンの作ってくれたノートに向き合った「チャンミナ、あのさ」「何?」翌日の昼休み数日ぶりに、チャンミンは俺と過ごしてくれたと言うか、聞いてみたら、今日はあの女子に図書室に誘われなかったから、らしい天気も良いし、教室だと皆が居るから…裏庭の普段は静かなベンチで弁当を広げてふたりで話をした静かな、というのは、普段は裏庭だし人気も少なくてただただ静かな穴場そして、今も人気は無いのだけど、丁度俺達に影を落とす校舎が現在改修工事中で、この裏庭はその音がなかなかに響いて、少しうるさいそのお陰で更にひとは居ないのだけど、物凄く気になる、という程では無いし何より気候も良いし、ふたりで此処を選んだのだ「もう直ぐ試験だって事は分かってるんだけど…プラネタリウムのチケットを二枚、親から貰ったんだそれが、もう今日までで…前にチャンミナが星を見るのも好きだって言っていたし、勉強にもなるし…放課後に一緒に行かないか?」「え…でも試験前だし…」「大丈夫、上映時間は三十分だし、会場も電車で直ぐだから人気でなかなかチケットも取れないらしくてしかも、今朝親からチケットもらって」なんて、なるべく必死にならないように説明したのだけど…本当は、昨日の夜オンラインでチケットを購入したのだ人気らしいし今日が最終日なのだけど、何とかチケットは買う事が出来たどうやって告白をしよう、と昨夜考えたのだけど、以前何気無く話していた時に彼が星が好きだと言っていたのを思い出したからプラネタリウムを見て、その後に告白をしようと決めたのだ「…プラネタリウム、人気のやつだよね?」「そう、チャンミナも知ってる?」「僕も気になっていたからでも、一緒に行くのは僕で良いの?」「勿論、チャンミナと行きたいんだ」窺うように俺を見るチャンミンに大きく頷いたら、彼はどこかほっとした顔で「分かった」と言ってくれたこの恋が上手く行くか、なんて分からないでも…放課後に告白して、せめて意識して欲しいもしも振られても、もうこんなにも好きになってしまったから…頑張るしか無いふたりきりの昼休みは穏やかな時間が流れて、チャンミンもどこか嬉しそうに「放課後が楽しみ」なんて言っていたなのだけど、残り時間が後十分、となった頃、彼のスマホが震えた「…何だろ」もう弁当は片付けて、ふたりでのんびり過ごしていた右側に座るチャンミンはブレザーのポケットからスマホを取り出して、どうやらそれはメッセージの通知だったようだ「どうしたの?」深く考えずに覗き込もうとしたら、チャンミンは胸にスマホを当てるようにして画面を隠して、そして言った「あの…あの子が、今から告白したい事があるから来て欲しいって…」「え…告白したい事、って…」そんなの、そのままじゃあ無いかって思った「それって、好きだって言われるって事じゃ無いのか?どう見てもあの子はチャンミナの事が好きだろ」「…そんなの分かんないよ、でも…」「でも?それに、チャンミナには別に好きな子が居るんだろ?」「…簡単に言うなよ、僕の事を知らない癖に」チャンミンが行ってしまいそうでもしも先を越されたら…例え、俺もあの子も同じ片想いでも、あの子は女子で…俺は男で、勝ち目なんてそもそも無いだからこそ、少しでも良い雰囲気で、それにあの子よりも先に告白しようと思ったのだ「…チャンミナ、行くの?気持ちに答えられないなら行く必要無いよ」「何でユノが決めるんだよユノは友達だろそれに、話さなきゃ…」チャンミンは立ち上がって背を向ける確かに、彼の言う通りだ俺はふたりの関係を知らないし、彼女の話が本当のところ、何なのか、なんて知らないだけど…「チャンミナ、俺は…」「先に教室に戻ってて」一度だけ振り向いたチャンミンが、俺を見て眉を下げたその、どこか切なそうな表情に胸が苦しくなった戻って来て欲しいだけど声が出ない勇気が出なくて、悔しくて堪らないまるで、あの毎日の悪夢を見た時のように胸がざわつく後悔なんてしたく無い俺の方がチャンミンの事を好きで…「チャンミナ!」ぐっと拳を握って名前を呼んだら、固まった脚が動いた夢のなかではいつも脚が動かないのに…なんてふと思った追い掛けて、後ろから右手を掴んだそうして振り返るチャンミンを走ってきた勢いのまま抱き締めたその時…「…うわっ!」「わあっ!」音、と言うよりも衝撃が走った地鳴りがしたかと思って、更にチャンミンを抱き締めて『何か』から守ろうとした「何…?」チャンミンは小さく震えて俺の腕のなかで抱き着いてきて、そして俺を見上げる何だったのか、と思っていたら、チャンミンの直ぐ向こう側、ほんの二メートル程の場所にコンクリートらしき塊が落ちていたそして…「大丈夫ですか!」上から、そして近くから何人ものひと達が駆け寄ってきた「大丈夫、です…」どうやら、校舎の上で工事をしていたところから誤ってコンクリートが落下してしまったようだ「チャンミナ、大丈夫?」「…うん…びっくりしたけど、本当に」結局、その後教師まで駆け付けて、俺達は確かに怪我が無かった事を確かめた上で…今日は安全の為、なんて理由で帰宅する事になった丁度、弁当やペットボトルが大きくて、荷物を持ってリュックごと裏庭に来ていたし、クラスメイト達も心配して騒ぎになるといけないから…と、言われて教室にも戻らないまま下駄箱で靴を履き替えていたら、チャンミンがはっと思い出したようにスマホを取り出した「…連絡返すの忘れてた」「…どうするの?」尋ねたら、チャンミンは何も応えずに、どうやらメッセージを返信したようだその後は、お互いに黙って学校の門を出た「あ、チャンミナ…プラネタリウムは行ける?なんて、今はそんな気分じゃあ無いかな」だって、もしもあの時俺が手を伸ばしていなかったら…そう思うと恐ろしいまだ俺の手も少し震えているし、チャンミン本人は更に怖かっただろうそんな事を思いながらチャンミンの方を見たら、彼は俺をじっと見て、そして誰も居ない路地で立ち止まった「チャンミナ?」「あのね、ユノ…さっきは助けてくれてありがとう」「…うん、偶然だけど…」それに、本当はあのまま勢いで告白してしまおうか、と思っただけど、騒ぎになってしまってそれすら出来ていない自分が情けなくて、見つめてくるチャンミンの視線から逃れるように俯いたら、向かい合うように立つ彼の脚が一歩、俺の方へと近付いた「チャンミナ?」「僕、ずっと逃げていたんだ」「え…」「上手く行く筈なんて無いってだから、別の誰かを好きになれたら忘れられるかもって思ったでも、駄目だったし…キスしたらもっと好きになった」「キスって…」昨日の偶然のキス、を思い出しただけど、あればキスじゃ無いってチャンミンは言うし、確かにアクシデントだ「多分、さっきあのまま行っていたら告白されたと思う今見たら、『やっぱり振られたかな』ってもう一通メッセージが来ていたからでも、ちゃんと会って…告白されたら断ろうと思ってた」「そうなんだ…」それなら、俺が無理矢理引き止める必要は無かったという事だけど、彼を引き止めたから…チャンミンはきっと、事故に合わずに済んだ「断ろうとは思ったでも、自分の事は…告白する勇気も無くてそのままで…後悔するって分かっていても何も出来なかっただけど…さっき、もしかしたら死んじゃっていたのかもしれないって思ったら、怖くて」「…チャンミナ…そうだよな、俺も怖かったし何も無くて良かった」チャンミンの手が、腿の前でぎゅっと握られた両の手が震えていたから、思わず手を伸ばして上から包むように握った触れてから、嫌がられるかと思ったけれども、チャンミンはじっとそれを見下ろしてから、俺を真っ直ぐに見つめた「こんな風に、死んでいたかもってなって漸く言えるだなんて情けないって思うでも、もう後悔したく無いんだユノの事が…凄く好きだ」「え…」「…驚くよね、男同士だし…」そう言うと、チャンミンは手を引いて、自分で自分の手を握るようにして落ち着きなくしている「ええと…とりあえず伝えたから今日はもう帰った方が良いかな」そう言うと、さっきのようにまた背を向けるはっと気が付いて、慌ててまた後ろから抱き締めた「待って!俺も…俺もチャンミナが好きだ」「…え……嘘…」「本当だよ、だからさっきも…先にあの子に告白されるって思ったらもう我慢出来なくてチャンミナを抱き締めて…」まさか両想いだなんて思っていなくて、心臓はさっきと同じくらいうるさいでも、さっきは怖さや驚きで、だったのに…今は、信じられないくらいの幸せで、喉から心臓が飛び出てしまいそうなのだ強く抱き竦めていたら、チャンミンは「苦しい」と小さく呟いた慌てて腕の力を緩めたら、彼はくるりと俺の腕のなかで振り向いて…「…信じられない、でも…生きていて良かった」「チャンミナが死んだら俺だって生きていけないよ」「死んでないし、ユノが助けてくれたからだから、もう後悔したくない、ユノが好きプラネタリウムだって…ユノが嫌じゃ無ければ行きたい本当は嬉しくて嬉しくてどうしようって思っていたんだから」チャンミンは薄ら涙を浮かべてそう言うと、俺にとっては世界一可愛い笑顔を見せてくれたあの子には、結局メッセージで『付き合う事は出来ない』と伝えたらしいチャンミンとしては、直接会って断るつもりだったらしいし、半ば気持ちに気付いていながら誘いに応じて…勉強だけだから、と図書室に行っていたらしいでも、それもずっと罪悪感を抱えていたようで、次に会ったら直接謝りたい、と俺に言った俺も、これからはチャンミン以外の誰かに何かを誘われたりしても、良い顔ばかりせずにいよう、と決めたプラネタリウムはほぼ満席そして、やっぱり嘘は良くないから…本当は、チャンミンに告白する為に自分でチケットを買ったのだと告白した彼は大きな目を丸くしてから『嬉しい』と俺に微笑んだプラネタリウムはとても美しくて…だけど、心地好い音楽と共に暗くなるから、不眠症の俺にとっては眠ってくれと言われているようなもの昼休みも眠れなかったし、必死で耐えても眠ってしまうのだろうなあ、と思っていただけど、眠気は訪れる事が無かったそれどころか…「あはは、もしかして勉強で疲れていたのかな」途中、右側のチャンミンが俺の肩に当たってきたどうしたのだろう、と思ったらそれは彼の丸い頭で、どうやら眠ってしまったようだそのまま、上映が終わっても目を覚ます様子が無かったまだ暗い間なら、周りから見える事も無いチャンミンが俺の前で眠る、だなんて初めてだから…俺の『眠り姫』にキスをしてみようか、なんて思ったのだそうしたら…「……ん…っ、あ、…え、ユノ?」「…本当に目を覚ますと思わなかった」「え、あ、僕寝ちゃって……」唇に唇で触れて、そしてゆっくりと顔を離した瞬間に目を覚ました正真正銘、俺の眠り姫にその事実を告げたら、彼は真っ赤になって『実は僕も、眠るユノにキスをした事がある』と教えてくれたそして、それが彼の言っていた『キス』である事も分かった不思議な事はまだ続いて、その夜は夢を見たのだけど…そこに出て来たのは、もうひとりの俺だけだったそして、『俺』は俺を見て初めて嬉しそうに笑って言った『チャンミナを掴まえてくれてありがとうこれで、もう俺は必要無くなった』それはきっと、もう夢は見ずに済むという事そしてその時初めて、『夢のなかの俺』が警告していた事が、昼休みの事故なのだと理解したチャンミンを救えた事は良かっただけど、夢のなかの俺は一体何処へ行ってしまうのかそう思うと胸がざわついて、彼に尋ねてみたそうしたら…『俺は、お前なんだからいつも一緒に居るよ』そう、当たり前のように笑って、そして夢のなかから消えた「ユノ、今日どうしたの?」「ん?何が?」「もう昼前なのに、一度も寝てない」午前中最後の授業教師の目を盗んで、チャンミンがこそっと俺に尋ねてきた「うん、もう大丈夫みたい」「え…それって睡眠障害が治ったって事?」「しいっ、先生に聞こえるから」「あ、ごめん、驚いたし嬉しくて…」口元に右手人差し指をあててチャンミンを見たら、彼は耳まで真っ赤にして口を両手で押さえた「実は、凄く不思議な事があって…もしかしたら信じられないかもしれないんだけどチャンミナに聞いて欲しいんだ…後で聞いてくれる?」吐息混じりに、他の誰にも聞こえないように俺の恋人に囁いたら、彼は小さく頷いて言った「ユノの言葉なら信じるよ」非現実的な事、なんて信じていないそれが自分達の身に振り返って来るだなんて想像すらしていなかっただけど、これは真実で…そして、後悔しないように自分の想いを信じて、そして伝えれば、この先もきっと、ふたりで笑っていられるのだと確信しているランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村前後編で収まると思って書き出したのですが、倍の長さになってしまいましたタイトルで遊び心を持たせてみたり、少しいつもとは違う雰囲気を出せたら良いなあと思いました読んでくださってありがとうございます最後なので、眠り姫チャンミンも置いておきます ↓にほんブログ村

    • sleeping beauty 後編

      ユノと隣の席になって、約一ヶ月が過ぎた大勢で賑やかにするのは苦手だし、かと言ってひとりで居る事も寂しいそんな僕に、ユノの存在はとても心地良かった「…なんて、そんなの失礼だよな」放課後にこうして僕の部屋に寄って帰るのももう確か五回目こんな風に回数を数えている事を、隣で眠っているユノが知ればきっと気持ち悪いって思うだろう『友人』と言えるような存在になったユノはいつも笑顔で優しいけれども、睡眠障害…所謂不眠症、だなんて大変なものを抱えている夜に寝付きが悪くて、その分日中に自分の意思とは関係無く眠ってしまうらしい「凄いな」シャープペンシルを持ったままくるりと回して呟いただって、ユノはさぼりたいと思っている訳でも無い眠ってしまう事で授業を受けられなくなる時間があるから、それ以外の時間に皆に追い付けるように予習復習をしている睡眠障害なんて、僕も勿論そうだけれど…その立場にならないと分からない事で、なかなか理解はされ辛いだろう事それでも、ユノは誰にでも優しいし自分の…きっと、辛い事だって『仕方無いから』と笑って語ったり『眠り姫』なんて呼び名にも笑っているユノの性格が良いし、それにイケメンだから皆ユノを慕っているそれなのに、僕は…この一ヶ月、学校でも、最近はこうして放課後も隣に居る事が多いからこそ、彼が本当は睡眠障害に苦しんでいる事を感じているそれなのに、起きていると穏やかに話が出来て心地好くて、眠ってしまっても隣に居てくれる事に何だか安心する、だなんて…本当に僕は、優しいユノと違って自分の事ばかりだ学校からは僕の家の方がユノの家よりも近いそして、共働きの両親は帰りが遅いだから、ユノは数日に一回はこうして僕の家に寄るふたりで僕の狭い部屋のなかで予習や復習、宿題をするでもそれだって、僕が偶然ユノの隣の席にならなければ…ユノにとって僕である必要は無いと思う「勝手に思っているだけだけど…眠る時だって、僕や周りに迷惑を掛けないように静かに寝落ちてるんだって分かってるよ」ついさっきまでは起きていた事を知っている小さなひとつのローテーブルに向かって、ふたりでそれぞれ明日の予習を進めていたでも、僕が少し集中している間にユノは眠ってしまったようだユノに後で見せて分かりやすいように予習をしてノートを纏めるそうする事で、勿論僕自身の勉強にもなるからなるべく静かに勉強をして…「…姫、じゃあ無いけど本当に整った顔だよね」眠り王子、だと語呂が悪いから眠り姫と呼ばれるようになったらしい眠っているだけなのに、まるで俳優だとか男性アイドルのようなユノの顔は、丁度僕の方を向いてテーブルの上に置かれた腕の上にある起きていても、眠っていても、ユノの隣は心地好いだけど、それは僕だけで無くてきっと皆そう単に僕は偶然隣の席になったから、一緒に居る時間が多いだけだし、ユノは誰にでも優しいから、僕以外の誰かが隣の席に座っていたなら…今、ユノはきっと僕の隣には居ない分かっているのに、それが切ないそして、その正体になんて気付きたく無かったそれなのに…「…本当に眠り姫なら…」右手で、制服のシャツの上から胸をぐっと押さえたユノを見る度に胸が苦しくて仕方無いそう気が付いてまだほんの僅かだけど、その胸の痛みに、苦しさに気付いてしまったらもう転げ落ちるように、這い上がれない程になってしまった起きていれば自制出来るだって、気持ち悪いと思われたく無いし嫌われたく無いからでも、眠っていれば…こんな事は絶対に駄目だと思っているのにそもそも経験すら無いのに気持ちに気付いて始めてふたりきりになった先週は、ユノが僕の膝の上で眠っていても我慢出来たでも、もう駄目だ「……お願いだから、起きないで」シャープペンシルを、音を立てないようにノートの上に置いた細心の注意を払って中腰になって、それから…「……」ゆっくりと顔を近付けて、眠るユノの唇に、ほんの一瞬、ほんの僅かに唇を触れさせた「…っ……」これがキスと言えるのか、すら分からないくらいの接触だけど、高校三年生にもなって情けないけれど、まだ誰ともした事の無い行為それを眠る同性の友人にしてしまった触れたい、キスをしたい…もしかしたら、僕のキスで目覚めるかも、なんて有り得ない事を思って触れたけれども、実際にそれを実行してみたら、勿論心臓はばくばくと五月蝿いのたけど…嬉しさや興奮よりも、勝手に想いを寄せてしまったユノを汚したようで、自己嫌悪に見舞われたしかも、自分の唇を右手で押さえながらユノを見ていたら、彼は王子様のキスで目を覚ます、どころか眉を顰めて…「ん…っ…」「…ユノ…また魘されてる」ユノの夢見が悪い事それが元で睡眠障害になっている事は聞いているだから、今もきっとそうなのだろうでも、まるで僕の所為に思えてしまって辛い「…ユノ…大丈夫?」触れるだなんて今は出来なくて、少しだけ顔を近付けて彼の名前を呼んだそうしたら、はっ、と目を開けたユノは寝起きなのにはあはあと息を荒くしている「…っあ……チャンミナ…良かった…」「また夢を見ていたの?起こして良かったのか分からないけど…大丈夫?」「ああ…チャンミナが居てくれて良かった、本当に…」迷子になった幼いこどものように僕を見て、そして救いを求めるように腕を伸ばして抱き締められるもう、こんな事も何度目かだから少しは慣れたし、これが僕の感じている『特別な想い』つまり恋心によるものでは無くて、何かしらの悪夢に悩まされるユノだからなのだと分かっている「大丈夫だよ…早く普通に眠れるようになれば良いのにね」「…うん、ありがとう」何だか、この悪夢は僕がキスをした所為なんじゃあ無いかと思えて、とても申し訳無い気持ちになったそもそも、僕は男が好きな訳では無い付き合った事は無いけれど、これまで好きになったのは皆異性最近ずっと、あまりに近くに居るし…それに、ユノがあまりに整った顔をしていて優しいから、何かの勘違いをしてしまったのだろう「そっか、そうだよね…」他に、ちゃんと、良いと思える子を見つければ良いそうすればユノへの気持ちは勘違いだと分かるし…もう二度と眠る彼に勝手にキスをする、なんて事をしなくて済む「チャンミン?」「ん?お茶でも飲む?眠ったのに疲れた顔をしてる」「…もう大丈夫、チャンミナが居てくれるから…」「でも喉が乾いたから何か欲しい」とどこか申し訳無さそうな顔をするユノに、また僕のなかの罪悪感は膨らんでしまったただでさえイケメンで優しくて、傍に居たら分かるのだけど…ユノは非の打ち所なんて無いのでは無いかと思うくらいそんな彼にクラスの女子達も近付くチャンスを狙っているのだろうなあ、という事をいつも感じているそして、そんな彼女達が狙うポジションは多分、僕それはつまり、僕が特別な訳では無くて、ユノの隣の席だからふたつ連なった席に座っていて、授業中にユノが眠れば必然的に僕がノートを見せたり、分からない事が有れば聞かれれば答えたり学校側としては、僕の成績がそれなりに良くて、そして真面目だからそういう対応が出来るだろう、という事で敢えて隣にしたらしいだから、僕は自ら望んで多くの女子が望む席に座っている訳では無いのだけど、何だか嫉妬の対象になっているようだ今までも何度も、授業中に眠ったユノが授業が終わっても起きないから起こそうとしたら…その前に女子がやって来て『後は私がチョン君を見ていようか?』『シム君ばっかりチョン君のフォローをするのは大変でしょ?』なんて言われた最初はその意図すら分からなかったしかも、別に苦痛でも大変でも無いしユノの隣は心地好いから『大丈夫、ありがとう』なんて返事をして…そして、女子達は少しむっとした顔をして去って行った多分僕が鈍かったのだろうけど、同じクラスの男子に『女子はユノに近付きたいんだよ』『シムの場所が羨ましいんだ』と言われたり…何より、僕自身がユノへの恋心を持つようになって、彼女達の気持ちが分かった「…いや、その気持ちが分かるって我ながら気持ち悪いよ」廊下をひとりで歩きながら呟いて溜息を吐いていたら、後ろから名前を呼ばれて振り返った声は女子のもので…「あの!シム君、今少しだけ良い?」「え、何?」それは、同じクラスの女子だったあまり話した事は無くて、『ユノの隣に居る僕』に嫉妬してきたというなかにも居なかった子だから、急に話し掛けられて驚いた「あの、教室だと恥ずかしくて声が掛けられなくてその、シム君って頭良いよね?」「え、いや別に…」「この間の小テストも上位だったし…ちゃんと知ってるそれでね、今度勉強を教えて欲しいなあと思って…」「…僕が?」こくん、と小さく頷く彼女は少し恥ずかしそうに僕を見て「放課後とか…昼休みでも良いから教室だと目立つかもしれないから図書室とか…シム君の勉強のついでで大丈夫だから」と言った「…ええと…昼休みとか、たまになら中間試験も近いし、僕も復習しなきゃって思っていたからあ、でもユノももしかしたら居るかも…」「チョン君?いつも一緒だもんね…うん、本当はふたりが良いけど…勿論大丈夫」彼女はそう言うと、メッセージアプリのIDを交換しよう、とスマホを取り出した女子として、異性として…彼女は可愛いのに、僕はときめく事も無かったでも、拒む理由も無いから促されるままに交換をしたその後、午前中最後の授業の途中で彼女からのメッセージを受信した『お弁当を食べたら図書室で勉強しよう』断る理由も無いから、大丈夫と返事をして、隣で眠るユノを見た女子からのメッセージで…もしかしたら僕を少しは良いと思ってくれているのかもしれないそれなのにどきどきしなくて、ユノを見るとどきどきするこれじゃあ駄目だって思った「チャンミナ、昼を食べ終わったら次の予習を一緒にしたいんだけど…」「あ、ええと…図書室に行く事になっていて」「え、なってる、って…誰かと?」席が隣だから、昼を食べるのも必然的に、と言う訳では無いけれど、自然といつもユノと一緒ユノの隣は心地好いし、今は寝ていても起きていてもどきどきしてしまうユノが女子だったら…それか、僕が女子ならばこのどきどきを素直に認めて、もしかしたら告白だって出来るかもしれないでも、そんな事は有り得ない「うん、勉強を教えて欲しいって言われてユノも行く?」「それってもしかして女子?さっきから、ずっとチャンミナの事ばかり見てる子が居るけど…」「え……っあ…」ユノの視線を追って、廊下側に視線を遣ったら、数人のグループで弁当を広げて食べている、あの彼女と目が合った瞬間、恥ずかしそうに逸らされてしまったから本当に一瞬だけど「チャンミナは分かりやすいなまさか付き合うとかじゃ無いよな?」「…そんな…単に勉強を教えて欲しいって言われてそれだけだよそれに、ユノには関係無いだろ」見透かされた事が恥ずかしかったそれに、少し冷たく言い放たれてしまって怖くて、僕も冷たく返してしまったユノは「そうだな」と小さく呟いて、その後は殆ど会話は無くなってしまった何だか空気の重たい弁当の時間が終わってからユノに「図書室に行く?」と声を掛けたけれども「邪魔をしたら良くないから」と視線すら合わせずに言われた僕にとっては優先事項はユノだ本当はあの子とふたりきりになりたい訳でも無いでも、そんな本音を言ったらユノに気持ち悪いと思われてしまうだろうし、そうしたらもう、隣に座っていても気まずさしか無くなってしまう「じゃあ、また次の授業で」「…うん、俺は少し寝るよそうすれば午後は起きていられるかもしれないから」「そっか、少しでも寝られると良いね」ユノが眠れば彼を狙う女子達だって彼に話し掛ける事は無い筈ユノの睡眠障害が治れば良いのに、と本気で思っているし心配しているけれどもそれよりも…僕は自分の嫉妬が優先だし、ユノが僕の隣で眠る、あの時間を恋しいと思ってしまっている僕は最低だ昼休みは楽しい、とは言えなかったけれど、しっかり勉強が出来たから良かった彼女は真面目で、それに彼女自身も成績は悪く無いようで、中間試験に向けての復習やお互いに分からないところを聞き合って有意義な時間が過ごせたやっぱり、僕はどきどきしたりする事は無かったけれど…「ありがとう、シム君と勉強するの楽しかったまたこうして誘っても良い?」「え…ああ、うん」「ありがとう、嬉しい!」彼女は普通に可愛い『普通に』なんて我ながら失礼だし、きっと他の誰かが見たら僕には勿体無いと思うに違い無いだけど、そもそも僕はあまり異性に慣れていないし彼女が欲しかった筈なのに、心は何も動かないでも…彼女ともっと近付いて、彼女を知れば、ユノに対しておかしな気持ちを持たずに済むのだろうか「シム君っていつもチョン君の事を見ているし…優しいなあって思う」「そんな事無いよ」「ううん、皆はチョン君が格好良いって言うけど私は…っあ、何でも無いええと、教室に戻ろ」「…うん」ユノに特別な想いさえ抱いていなければ、きっと僕は彼女に惹かれただろう勿論、彼女が僕の予想通り僕の事を好きなのか、は分からないけれど「チャンミナ、昼休みは楽しかった?」「…変な聞き方するなよ」放課後は、また僕の部屋にユノが寄った彼は『昼休みには勉強出来なかったから』と、少し拗ねたように僕に言っただけど、昼休みに眠れたお陰で午後の授業では一度も眠っていなかった「だって、あの子完全にチャンミナ狙いだろ」「…別にそんなんじゃ…普通に真面目に復習しただけだよ」「…ふうん」「ユノの方が…女子は皆ユノの事を狙ってるってあの子も言ってた」そんな事、言わなくたってユノ自身分かっているだろう告白される事も少なく無いと、本人も昨年までの彼を知るクラスメイトも言っていたから勿論、優しいユノは自慢するような言い方はしないし、『なかなか自分から好きになれないから嬉しくは無い』とぴしゃりと言っていたのだけど「狙われたら嬉しい、なんて思わないよ」「狙うって言うと変な言い方だけど…ユノはモテるだろ」「好きでも無いやつからモテても嬉しく無い」「……そっか、うん、そうだよね」ユノが、どこか冷たく言い放った言葉は僕の胸にぐさりと突き刺さったもしも僕が想いを堪え切れなくなって告白めいた事でもしてしまったら…その言葉は僕自身に向けられるのだ「兎に角、勉強しよ明日の予習、しておいた方が良いから…」ユノは無言で頷いて、僕達はいつもよりも重たい雰囲気で勉強を始めたそうして、お互いに黙々と明日の範囲を勉強していたのだけど…「…っ……」とん、と肩に何かが当たったと思ったら、左側斜向かいに座っていたユノの小さな頭だった「…僕が居なきゃ、床にぶつけて大変だったんだからな」起こさないように小さく呟いたそれから、少しだけ身体を右にずらして…ゆっくりと、ユノの小さな頭を胡座をかいた腿の上に乗せたこんな事、ユノだって本当は嫌だと思うでも、以前もこうして眠ってしまった事があったし、起きた時も嫌そうな顔なんてしていなかったこれが僕だけの役割であって欲しいと思うでも、そんな事はユノ自身が望んでいないだろう三十分程経ったら、以前のように足が痺れて来てしまった「…どうしよう…ちょっと動けば楽になるかな…」少しだけ体勢を変えようと、ユノの頭が乗っていない右足を動かしたら…「…チャンミナ…」「…ユノ?起きたの?」「…ん…っ…」今はキスなんてしていないのにそれなのに、眠り姫…いや、眠り王子は眉を顰めて苦しげに僕の名前を呼ぶそんな訳無いと分かってはいるけれど、まるで僕の悪夢を見ているようだ「ユノ…そろそろ起きた方が…」「…っ…!…っあ…チャンミナ、良かった…」はっ、と目を覚ましたユノは、僕が伸ばし掛けた右手を掴んで僕を見上げる「あ…ごめん、俺またチャンミナの上で…」「…起こしたら良くないと思ってユノは嫌かもしれないけど、別に大丈夫だよ」「そんな事…ありがとう、寝かせてくれて」不快そうな顔をされなかったから、心から安堵したあの彼女に頬を染められても心は何も動かないのに、ユノを見るだけで心は落ち着かなくなるただでさえ睡眠障害を抱えているユノそれなのに、優しいユノ彼の負担になりたくないし嫌われたく無い変わらずに傍に居たいだから、気持ちは閉じ込めてしまおうランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村中編に、あと一話と書いたのですが…後編が長くなり過ぎたので分割して今日中に最終話を更新させて頂こうと思いますあと一話、お付き合い頂けたら幸いです

    • 未必の恋 26

      何度もユノさんに抱かれた広いベッド何度か一緒に朝を迎えた広いベッドその上でユノさんに抱き締められて、逞しい胸のなかで溢れて止まらない涙を流した悲しいから、では無くて幸せでだけど、幸せの先にあるものを…想いが通じ合っても考えてしまうから、やっぱり悲しさも少しだけ混じっている「…っふ……」「大丈夫?あまり泣かれたら…情けないけど、どうしたら良いか分からなくなるよ」背中を擦って宥めてくれているそれなのに、その手が優しくて、何度も囁かれる『好きだ』という言葉が夢のようで、想いが涙になって溢れて止まらない「…ん、…っ…ユノさん…」もうどれだけ泣いているのか分からないでも、目元はぐちゃぐちゃになっているであろう事は分かるし…鼻水も出て来てしまって、そのままにはしておけないから何度も啜っている幾ら今日はオフになった、とは言ってもここは僕が副支配人として勤務しているホテルで、ユノさんはVIP客なのに「うん、此処に居るよ…って、そういう事じゃ無い?俺の腕のなかに居てくれるのは嬉しいけど…まだ、チャンミンの気持ちを聞いていないからどうしたら良いか分からないよ」「…っあ……」疲れてしまって眠ってしまって、起きたら『好きだ』と言われたその言葉に涙が止まらなくなって、嫌かと尋ねられてそうでは無いとは言っただけど、僕はまだ自分の気持ちすら伝えないままで…「好き、好きです、ユノさんの事が…」流石に泣き疲れてしまって、息も何だか荒れているまだまだ泣ける、なんて男らしく無い事を思ってしまうのだけど、それだけ好きなのだでも、ユノさんだってあまり泣かれても困るだけだろうし、何よりも大切な事を伝えていなかったから、顔を上げて告白した「…声、僕…なんか酷いですねいや、顔も絶対酷いし…」告白した、は良いけれど、ユノさんは僕を見て固まってしまっているこれはもしかして、早速『好き』と言ったのを後悔されてしまっただろうかなんて、一通り泣いたら少し冷静になっただって、もう毎日思っている事だけれど、ユノさんと僕は生きる世界が違うから彼はVIPで世界的なデザイナー僕はただのホテルの…副支配人なんて名前だけはそれなりだけど、庶民「あの、顔を洗ってきます」俯いて、それからユノさんの胸に手を置いて身体を離そうとしたのだけど、ユノさんはびくともしないそれどころか…「…チャンミン…」「え……っん、…っ…」顎を掬われて顔を上げたそうしたら、目の前にまるで宝石のように綺麗な黒い瞳泣いていたから少し滲んで見えるけれど、目を離せずにいたらそのまま唇が重なった「…ふ、……ん…っ…」「…チャンミン…」昼間プールで抱き合った時、僕の方が普段よりも開放的になってしまって、行為もキスも普段よりも激しかったでも、今も…普段は余裕のあるユノさんの舌が、キスが、いつもよりも荒々しくていつもはスマートなのに、何だか余裕が無いように感じた「…っふ、…はぁっ……んっ…」漸く唇が離れて、また鼻水を啜った涙はキスで止まったけれど、今度は胸の高鳴りが止まらない少し下を向いてふうふうと息を整えていたら、また唇が触れ合うくらいに近く、ユノさんが僕を覗き込んできた「チャンミンも俺を好きって…本当に?」「え…っ、あ、はい…好き、です」本当は、勢いで、ただただ想いの丈をぶつけたいこの気持ちが恋だと自覚してからはまだ日は浅いけれど、それだって『恋では無い』と思い込もうとしていたからで…元々憧れのひとだから、きっと恋をしたのは出会って直ぐなのだと思うでも、そんな事を言って重たいと思われたく無い少しでも幸せな思い出を作りたい「…同じ気持ちになれるだなんて思っていなかったんですだから、ユノさんに好きだと言ってもらえて、驚いて嬉しくて泣いてしまいました」「チャンミン…俺も…自覚したのは今だけど、ずっと独占欲ばかりでこの気持ちは何だろうって思っていたんだでも、もしも恋だったら…チャンミンは仕事で俺の傍に居てくれているだけなのに、これじゃあ気持ち悪がられるかもしれないと思った」「え…」「だから、恋じゃ無いと思いたかったのかもしれない」「ユノさん…」勿論、気持ちの大きさは…元々憧れを抱いている僕の方が大きいだろうでも、同じようにユノさんが悩んでくれたり、仕事だからと思っていたり…そう思ってくれていただけでも嬉しいのに、打ち明けてくれた事、恋だと思ってくれた事が嬉しい「でも、さっきも言ったけど…寝言でチャンミンが『好き』って言ったんだ誰に、かも分からないのにでもその顔が可愛くて愛おしくて…ああ好きなんだなあって思ったよ」背中を抱き締めていた手も、顎を掬った手もどちらも僕の頬を包んで優しく触れる優しい顔を見ていると、また泣いてしまいそうに感極まってきただから、もう涙を見せないようにずっ、と鼻を啜って「でも、こんな顔を見たら可愛くも何とも無いって思わないですか?」と尋ねてみた「こんな顔って?」「今の僕、涙でぐちゃぐちゃで汚いと思いますそれに、男なのに嬉しくて泣くなんて…」自ら先に言ってしまえば、そう言われても傷は浅くて済む一度、いや、何度も好きだと言ってもらえたから、いつもよりも勇気も出るとは言え、実際に好きなひとに汚いと言われたらきっととてもショックだからどきどきしながら、相変わらず顔を逸らせないままユノさんを見ていたら、彼はじっと僕を見てから優しい笑みを浮かべた「ユノさん?」「俺が好きだって言っただけで嬉しくて泣いたの?そんなの、幸せ過ぎるよそれに、こんなに泣いたチャンミンは始めて見たけど可愛くて堪らない」「…っ、ユノさんの趣味ってちょっと変わっているんじゃあ…」「そんな事無いよチャンミンは自分の魅力に気付いていないだけだそれと、ひとつ質問がある」「え…」とても優しい顔をしていたと思ったら、急にきり、と表情を引き締める何を聞かれるのだろうかとどきどきしていたら、ユノさんは右の頬に触れていた左手を離してこめかみを掻いたじっと僕を見ていた視線を逸らすから、何だかばつが悪そう視線を逸らされたら今度は僕の方がユノさんをじいっと見たすると、彼は「こんな事を聞くのは恥ずかしいんだけど」と前置きして言った「寝言だし覚えていないだろう事は分かっているでも、気になるんだ『好き』って寝ながら言っていたけど…何が好きなの?」「…っあ……」それは目を覚ます直前の事で、はっきりと覚えている初めてユノさんの服を知った時の事を夢に見ていたそして、彼の創り出す服を、彼の世界を、そして今は目の前に居る彼、ユノさん自身を好きだと思って、それが実際に声に出ていたようなのだ「…あの、覚えて…無い、です」左側を向いて俯いただって、我ながらユノさんの事ばかり考えていて…それを知られるのが恥ずかしい「涙が乾いて気持ち悪いので、顔を洗って来ます」今度こそ腕のなかから抜け出てベッドを降りて、洗面所へと向かった大理石で出来た洗面台、大きな鏡に映る自分の顔はユノさんが言うような可愛さなんてひとつも無い「…我ながら酷いな…」でも、ユノさんの言葉にもその表情にも嘘は感じられなかった本当に僕の事を好きになってくれたのだと思うと、また胸がいっぱいになる水を出して顔を洗って、それから新しいタオルで拭いた明日は仕事だし、瞼が腫れないと良いなあと思いながら、鏡のなかの充血した目を見てまるでこどものようだと笑った「…あ!そうだ!」告白されて頭のなかが混乱して忘れていたけれど、今夜はユノさんに手料理を振る舞う事になっていたのだ眠る前に、ユノさんがフロントに電話を掛けて、足りない調理器具を持ってきてもらうようにお願いをしていた筈「あの、ユノさん、届きましたよね?」慌ててベッドの方へと戻ってユノさんに尋ねたら、彼は立ち上がり僕の傍へとやって来た真正面から腰を抱かれて、何だかとても甘い雰囲気洗面所に向かう前は薄暗かった部屋は、もう明かりがしっかりと灯っているからユノさんの優しい顔がはっきりと見えるそれはつまり、顔を洗ってもぐちゃぐちゃな僕の顔もユノさんからしっかりと見えてしまうという事「今何時だろう…兎に角、急いで作ります」顔を背けて、眠っている間に届いた筈の調理器具を探そうと思ったら、左の耳にふっと息が掛かってびく、と震えた「え…」「料理は明日の楽しみにしても良い?」「え、どうして…」ユノさんが言ったのだ僕の作った料理が…普通の、特別で無い料理で良いから韓国料理が食べたいのだとだから、今日は午前中にふたりで買い物に出た前を向き直ってユノさんを見たら「やっぱり疲れてる」とひと言「プールでだいぶ無理をさせただろ?それに、少しは眠れただろうけど、毎日俺に付き合わせているし…つい嬉しくて色々お願いをしてしまったけど、食材は明日なら問題無いだろうから、今日は良いよ」「良いよ、って…やっぱり、僕の作る物なんて要らないですか?」「まさか!物凄く楽しみだよでも、今日はこのままチャンミンとゆっくり過ごしたいもう一度プールで夜景も見るだろ?」ぎゅっと優しく抱き締められて、「調理器具があれば、チャンミンは疲れていても無理して作るだろうと思ったから、フロントには頼んで無いんだ」と言われた「え…じゃあ…でも、電話をしていましたよね?」「今夜はルームサービスにしようと思ってふたり分頼んであるよプールの後だいぶ疲れているのが分かったからゆっくりして欲しかったんだ」「…僕が寝る事も分かっていたんですか?」「あはは、流石にそこまで予測は出来ていなかったでも、俺の隣で眠ってくれて…安心してくれているようで嬉しかったよ寝顔も可愛かったし」「…可愛くは無いです」ユノさんは僕の言葉に「いや、可愛い、それに好きだよ」と少年のように嬉しそうに笑うから、僕も同じ気持ちを伝えたその後ルームサービスが部屋に運ばれて来た普段ならば僕が出て対応して…なのだけど、今日ばかりは泣き腫らした目を、情けない顔を部下に見られたく無くて、部屋の奥でじっとしていたユノさんが対応してくれたのだけど、部屋の入口の方から「今夜は凄く気分が良いんだ」なんて嬉しそうに言う声が聞こえて来て、それが僕との事なのだと思うと胸が擽ったくなったユノさんは食事をしながら、以前彼の妹とその娘…つまり姪と四人でカフェで会った時、妹から『あのひとの事が好きなんでしょう?』と言われたのだという事を教えてくれた「その時はまだ自覚は無かったでも、独占欲はあったし特別だって返したんだだけど、それがもう恋だって言われたよ」「…そうだったんですね僕は…そうですね、僕もあの頃はまだ自覚していませんでしたでも、ずっとユノさんの事は憧れていたし、特別です」勤めている僕が言うのもなんだけど、我がホテルの食事の味は絶品だだけど、胸がいっぱいで幸せで、正直味はもう分からなかった食事を終えてから、もう一度ふたりで貸切の温水プールへと向かった服を着たままで、プールの外を歩いて、大きな窓からまるで境目なんて無いくらいに大きく広がる夜景をふたりで眺めた 「…ミラノの夜景はどんな感じですか?」「そうだなあ…俺の家は少し郊外に有るんだだから、こんな風に高層ビルなんて無いし、静かだよ勿論、ソウルの夜景は美しいし自分の国だから安心するだけど、今夜が一番綺麗だ」「…どうして、そう思うんですか?」窓の前で並んで立っている左側を向いて尋ねたら、ユノさんは僕を見て、左の耳元に「恋人と一緒に見ているからだよ」と囁いた「…恋人…って思っても良いんですか?」「だって、同じ気持ちだろ?嫌?」「…っ…」ぶんぶんと首を横に振ったそれだけで、ユノさんは安心したように笑って「良かった」と言うユノさんの事を好きなひとなんて、きっと沢山居るのにそれなのに、僕の言葉で、仕草で…そう思うと、先に別れが待っていたとしたって、それで我慢して後で後悔する事なんてしたくないと思っただから…「ユノさん、僕、さっきひとつだけ嘘を吐いていました」「…え…嘘…?」僕の腰を抱き寄せる大きな手に力がこもったもしかしたら、何か悪い事を想像されてしまったのかもしれないだから、恥ずかしいけれど笑って…「寝言…覚えていないってさっき言いましたよね」「うん…もしかして覚えているって事?」「はい…本当は、初めてユノさんの服を知った時の夢を見ていました感動して一瞬で夢中になりましたそれで…ユノさんの服が、デザインが好きだし…今は、ユノさん自身の事も大好きだって思ったんです」「チャンミン…」「まさか、声に出ているとは思わなくて焦りましたでも、それが切っ掛けでユノさんに好きだと言ってもらえたから…恥ずかしくて言えなかったけど、ちゃんと告白します嘘を吐いた事、許してもらえますか?」月の光に照らされるユノさんの小さな顔身体ごと、僕の恋人の方を向いてじっと見つめたら「許さない」と…少し悪戯っぽく笑って言われた「え…駄目ですか?」「うん、今から一緒にプールに入ろうそうしたら許すよ」「プール?水着は持って来ていないのに…」驚いて瞬きを繰り返したら、ユノさんは少し、いやかなり…熱のこもった瞳で「ふたりきりだから、何も要らないよ」と囁いて僕にキスをしたこの後はもう、思い出したら顔から火を噴いてしまいそうに恥ずかしいから割愛しようと思うだけど、ユノさんとふたりで裸でプールに入って、そのなかで溺れてしまうくらい沢山キスをしてそして、何度も何度もお互いに『好き』と繰り返したユノさんがチェックアウトするまで、後二週間きっと、今日からはもっと毎日があっという間に過ぎて行くに違い無い別れる時に涙を流してしまわないように、沢山大好きなひとを自分のなかに刻み込みたいランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村このお話ももう後半です最後までお付き合い頂けたら嬉しいです読んでくださってありがとうございます

  • 03May
    • 執事のお仕事 12 後編

      チャンミンとふたりで出掛ける事は珍しくは無い勿論、あくまでも俺はシム家の執事だから…幾らチャンミンと付き合っているとは言え、自らデートに誘うだなんて事はしない小学生の頃から知っているチャンミンに忠誠を誓っているだとか…恐れ多い、と思っている訳では無い小学生の頃から知っている我儘なお坊ちゃんに夢中になってしまったから、これ以上理性の箍が外れないように…仕事を仕事として全うする為にも、普段は出来るだけ受け身でいようと心掛けているのだ「ねえ、ユノ四十分後の回があるから、チケットを買っておいても良い?」「四十分…道も混んでいないから大丈夫座席をどこにするか、はチャンミナに任せるよ」映画館に向かう車中助手席に座るチャンミンはインターネットでオンラインでチケットを購入しようとしているスマホのディスプレイを眺めている彼を横目で見ていたら、はっと何かに気付いた顔をしてから肩を落としたから「どうした?」と尋ねた「…カップル用の座席を狙っていたの埋まってた休日だし早く埋まるみたい」「じゃあもう一本後の回にする?それか、別の映画にするとか」そう言えば、そもそも鑑賞する映画のタイトルも聞いていないまあ、チャンミンの観たいもので異論は無いし、俺もチャンミンもアクション系やサスペンスが好きでそれに関しては趣味が合うだから、幾つか話題になっているタイトルを思い浮かべてそれらの内のどれかなのだろう、と考えた「…次の回だともう夜になるから、普通の座席にする」「上映回数が少ないのか?」「……そうみたい」ついさっきまでまるでこどものようにはしゃいでいたのに、カップル用の座席が無くなっただけでしゅん、と沈む俺からすれば、俺達は同じ家で暮らしていていつだって一緒に居られるし…例えカップル用の座席では無くても隣に座るから拘る必要は無いのではないか、とも思う「残念?」「…だって、デートだしユノは車を運転してくれるから…僕だって恋人らしい事をスマートにしたくて」『映画を見に行くから車を出して』なんて、我儘に傍若無人に誘ったかと思えば俯いてしおらしい態度「大丈夫、チャンミナは充分おとなになったし、もう充分デートだろ?」右手を伸ばして頭を撫ぜたら、少しだけ甘えるように身体をこちらへと傾けてきたチケット代金はオンラインで既に精算したと言うから、駐車場に到着した時に現金でふたり分渡そうとしたのだけど、『僕が誘ったデートだから』と断られてしまった「じゃあ、ジュースとポップコーンは幾らでも俺が買うよ」車を降りてからそう言ったら「僕はこどもじゃ無いからジュースなんて飲まないし」なんて…少し拗ねた声で言われたお坊ちゃんはなかなかに難しいけれども、そんなところも可愛いと思ってしまうのだシアターが幾つも入っている大きな映画館は、休日ともあって賑わいを見せているチケット販売ブースも混雑しているようだし、相変わらずこれから見る作品名すら分かっていないけれど、上映時間まで後二十分を切っているから、チケットを購入しておいてもらって良かった「ジュース…じゃあ無くて、お茶を買おう」「うんユノは?ユノの方がジュースにするとか?」映画館のなかへと足を踏み入れたら、混雑しているから自然と距離は近くなるチャンミンがはぐれないように細い腰を抱き寄せるように右手を伸ばした『こども扱いするな』なんて頬を膨らませるかも、なんて思ったけれど、素直に身を任せてきたチャンミンは昔から分かりやすく俺を慕ってくるだけど、最近は成長して俺達の関係も変わって…どうやら、はっきりと恋人として扱われたいのだろうなあという事が伝わってくるそれは、彼よりも一回り以上年上の俺からすれば簡単な事の筈なのだけど、恋だって常に来る者拒まず…とは言わないけれど、誘われるまま受け身だった俺には意外と簡単では無いけれども、簡単では無いからと嫌になんてならないないし…むしろ、三十を超えてこんなに年下の、しかも同性の我儘なお坊ちゃんに夢中になるだなんて、我ながら恥ずかしい「ユノ?」「ん?ジュースにしようかな家のなかでは格好付けてあまり飲まないようにしているから」「ユノがジュースを好きな事くらい、僕はお見通しだからね?別に無理しなくて良いのに」「あはは、ありがとう」恥ずかしい、けれども嫌じゃ無いチケットは有るけれど、意外と飲食物を買う列が混んでいて、時間に余裕は無さそうだとは言え、幾らお坊ちゃんでも優先的にジュースやポップコーンを買うだなんて出来ないチャンミンは少し焦っている様子だけど、きちんと大人しく待っている「チャンミナ、多少遅れても予告が流れる時間も有るし大丈夫」「…分かってる、だけどもっとスマートに計画したかったなって思っただけたし」そう言ってしまうところがもう可愛いのだけど、我儘だけれど素直なチャンミンに俺は夢中で…そして、俺はおとなで狡いから、それは言わないでおいた列も順調に進んで、後数組でレジに辿り着くと思ったその時…「ユノ?びっくりしたこんな所で…!」「え…」女性の声で名前を呼ばれて、声のする左側を向いたこちらに駆けてきて、マウンテンパーカーを着た俺の左腕をネイルが施されてきゅっと握ったのは…一瞬分からなかったけれど、以前に関係のあった女性だ「ああ、ええと…久しぶりだな」「ユノがこんな年下のこどもと居るのなんて珍しい」「そう?」「あ!もしかして昔話していた『お坊ちゃん』?なんてそんな訳…」「そうだよ」別に付き合っていた訳では無いけれども…確か、執事として働き始めて何年かした頃に出会って迫られて当時、お互いの利害が一致して肉体関係を持っていた甘い関係でも何でも無いし、まだチャンミンは小学生で…俺への気持ちも本気だなんて思っていなかった頃「ユノがこんなこどもと居る訳なんて無いと思ったの久々だけど変わらない…と言うか、服の趣味が変わったみたいユノにはもっときちっとした服が似合うのにねえ、また今度…」「あの、デートなのでもう話し掛けないでください」「え…」うるさい女性に、内心…どころか思い切り溜息を吐いていた特別深く関わった訳では無いけれど、相手はそうでは無かったのか…それとも、丁度男が居なくて寂しいのか彼女の真意は分からないけれど、最後まで言い終えたら『今度は無いから』と断ろうと思っていたら、チャンミンは真剣な顔で『デート』と言って彼女をじっと見た「デート?お守りの間違いじゃあ無くて?男だし、こどもだし…」困惑した様子でチャンミンと俺を交互に見る女性正直話すのも面倒だそれに、こんな女性と一時でも関係を持っていたのかと思うと我ながら頭が痛いもう隠す事も面倒で、はあ、と溜息を吐いたら俺にぴとりとくっ付いていたチャンミンがびくっと震えた気がしたその様子を見て、もしかしてチャンミンに溜息を吐いたのかと捉えられてしまったのかと思ったそんな訳は無いし、俺がチャンミンを充分愛している事なんて、傍若無人で我儘なお坊ちゃんは分かっている筈なのに…「…ユノ…」「離れるな」僅かに身体を離そうとしたから、右手でぐっと腰を抱き寄せたチャンミンはバランスを崩して俺の胸に手をついて、周りはちらちらとこちらを見ている目立つ事は好きでは無いだけど、それ以上に…いつだって誤解だと言えるのに、今チャンミンに誤解されたく無い、少しでも悲しませたく無い、だなんて俺らしく無い「見れば分かるだろ、大事なデートなんだだから邪魔をしないでくれるかな」「…え…何?ユノって変わったのねもう良い、さようなら」さようならも何も、もう既に関係は終わっているヒールの音を立てて歩いて小さくなる背中をもう見る事も無く肩を竦めて溜息を吐いた急に声を掛けて掻き乱すような事をするから、内心少し苛立ってしまった「チャンミナ、悪い…」「…昔の恋人?」「違う、まあ何も関係が無かった訳じゃ無いけど…チャンミナを意識する前の事だ嫌な思いをさせてごめん」あの女性の声が小さくは無かったから、やはり周りはちらちらと俺達を見ているただでさえ、男同士で年の差もあるのに俺は決して目立ちたい訳では無いのにだけど、それよりも何よりも、普段はあんなに強気でいるチャンミンが切なげにしている事の方が耐え難いこんな気持ち、チャンミンはきっと知らないし…情けないから出すつもりも無いのだけど「…デートってちゃんと言ってくれたから許すでも…」「でも?」腰から背中を擦るようにして撫ぜて、チャンミンの顔を覗き込んだら顎を引いて上目遣いに俺を見て拗ねたように言った「僕がどれだけユノを好きでも、どんなにお金があったって年の差が埋まらない事が悲しいし悔しい僕はずっと…小学生の頃からユノの事が好きだったのに意識すらされていなかった事が悔しい」「…チャンミナ…小学生相手におかしな気持ちを持ったら流石に大変だよ」「…でもやだ、悔しい、ユノは僕だけのユノなんだからな!」もうこどもでは無い、なんて言っておいて切なげな顔をしておいて…今度は幼いこどものように、誰かの目なんて何も気にならないのだと言うようにぎゅっと強く俺を抱き締める「俺はずっと、出会った日からチャンミナのものだよ…で…もうレジなんだけど…」「え…っあ、ごめんなさい…」勿論、俺だって恥ずかしいけれども年上の…落ち着きのある執事として、動じていない振りで言って、目の前のスタッフに注文をしたチャンミンはアイスティー、そして俺は炭酸のジュースそれに大きなサイズのポップコーンを買った映画のチケットは、チャンミンがスマホの画面を見せてそのまま入場出来たのだけど…「チャンミナ、どのシアター?…ああ、これか?」左右を見渡しながら、それぞれの映画のポスターを見て、多分これであろう、と思ったアクション作品を見付けたトレーに乗ったドリンクとポップコーンを両手で持っているから視線と言葉でチャンミンに尋ねたのだけど…「違う、こっちだよ」チャンミンはふい、と顔を背けて前へと歩き出したそのまま半歩後ろを着いて…そうして、俺のお坊ちゃんが入ったシアターはポスターを見れば一目瞭然なのだけど、海外の恋愛映画が上映される場所だったチャンミンは普段、家で見るドラマや趣味の漫画だって、恋愛物になんて興味が無いであろう事はずっと見て来たから知っているだから珍しくて…「どうしたの?これが気になっていたのか?」「…別に、デートだしそれっぽいかと思って僕ももうおとなだし」「そうか、確かにデートらしいな」席に着いて、映画が始まるまでのほんの数分の間、デートなのにチャンミンは多分…恥ずかしがっているようで、こちらを向いてはくれなかった右側を見ると長い睫毛が少しだけ震えていて、それに見蕩れていたら一度だけ俺を見て「ユノは僕の、なんだからな」と舌っ足らずに早口で言った「嫉妬してくれたの?でも、俺はチャンミナしか見ていないよ」本当は、少し意地悪をして『お坊ちゃん』と呼ぼうかと思っただけど、悲しげな顔をするチャンミンを見るとそれだけで胸が苦しかったから、あんな女性の事で折角のデートに水を差されたくは無いと思って素直な気持ちを告白した映画は、多分だけど…女性に喜ばれそうな甘いラブストーリーだったそして、内容はと言えば、平凡な男とお嬢様が恋をして、主人公の男性は身分違いの恋ながらも彼女への想いを真っ直ぐに伝えて、ふたりは周囲の反対を押し切ってふたりで未来を切り拓いて…なんて、言葉にすると少し陳腐だけれど、座席がしっかりと埋まっているだけあってストーリーはしっかりしていたそして…「…っ……」チャンミンは分かっていたのか、それとも分かっておらずにこの映画を選んだのか、は分からないけれど…『しっかりとしたラブシーン』が何度も挟まれていたその度に少し俯いたり、居心地悪そうにするチャンミンが可愛くて、一度だけ意地悪をしたつまり…「…っん…」スクリーンのなかの男性主人公と同じタイミングで同じように胸に触れたら、スクリーンのなかのお嬢様よりも俺のお坊ちゃんの方がしっかりと甘い声を漏らした「…っユノ…」「しいっ、声が聞こえるから」小さく漏れる甘い声を聞いて震える身体を見てしまったら、一気に身体に熱が灯ってしまったスクリーンのなかのラブシーンを見たって何も思わないのに「もっとこっちにおいで」耳元で囁いたら、チャンミンは暗がりでも分かる潤んだ瞳で俺を見て、身体を寄せて来た何時だって傍に居るのだし、カップル用の座席である必要なんて無いと思っていただけど、今はひとりずつの座席を仕切る肘掛けが邪魔で仕方無いほんの少し胸に触れて、そして肩を寄せ合っただけで耐えられなくなる求められるばかり、誘われるばかりで特別誰にも興味なんて無かったのに、これじゃあまるで十代の少年だ結局、映画本編が終わると同時に立ち上がり、左手でトレーを持って右手でチャンミンの手を引いてシアターを出た途中から、映画よりもチャンミンにばかり気を取られてしまって殆ど食べられなかったポップコーンは申し訳無いけれどスタッフに渡して破棄をして…「ユノ?何…」「もう無理、早く…」そのまま、我慢なんて出来ない思春期の少年のように駆け足で駐車場の車に戻って、チャンミンにキスをした「…っふ……ん…ユノ…」「…あんな映画のようになる訳が無いと思っていたけど…悔しいけど、チャンミナの勝ちだ」「…勝ちって…」「まだまだ足りないって事じゃあ無いの?あんな…まるで、俺達みたいな映画を見るなんて」作品内容なんて勿論分かっている筈だから、押し倒した助手席のシートの上から覆い被さるようにして…やっぱり、肘掛けやらが邪魔な狭い車内で俺を夢中にさせる年下の恋人に触れた「…だって、ユノはいつも余裕で、僕が誘わなきゃ外には誘ってもくれなくて…」「家のなかであんなに抱いているのに?」「もっと、恋人らしい事がしたいし…っん…ふ…」「俺がどれだけ我慢しているか、なんて知らないんだろ?それに…もう三十も過ぎたのに、大学生のお坊ちゃんに夢中で、若い頃よりも我慢も出来なくて…こんな恥ずかしい事を言わせたんだから、チャンミナも俺にもっと恥ずかしい姿を見せないと駄目だな」「え…っふぁっ…!」薄手のニットを捲って、胸の先に吸い付いたスモークが張られているとは言え、ここは駐車場俺はあくまでも執事で、チャンミンは大切なお坊ちゃんだから、必死で自分を律しているのに…「ユノになら良い、だからもっと…!」頬を真っ赤にしながらも素直に求めるチャンミン年上だし、俺の方がずっと昔からチャンミンに好かれているし…なんて余裕で居たつもりだけど、いつの間にか俺の方が囚われて夢中になっているのかもしれないだって、抱き着かれただけでもう、理性は崩壊しそうだからでも、こんな事は悔しいから我儘で俺を振り回す最愛のお坊ちゃんには言ってはやらないこんな風に年の差が、とか立場が、なんて…拘っている時点で俺はもうずっときっと、チャンミンには負けっぱなしだし敵わないのかもしれないでも、それでも良い「ユノ、好き、僕だけを見て…お願いだから…」「…こんなに夢中になっているのに、まだ知らないのか?」「だって、足りない…それに、あの女のひとに嫉妬したし、映画を見てユノがこんな風になるのも…僕だけじゃなきゃやだだから…」「馬鹿だなずっともう、チャンミナしか見ていなかったのに」「じゃあ、証拠を見せてよ僕だけなんだって言う…だって、僕はユノのものでユノは僕のものでしょ?」真っ赤な顔で少し震えながら潤んだ瞳で俺を真っ直ぐに見上げる言葉ひとつで、視線ひとつで俺を振り回して夢中にしてしまう、俺のお坊ちゃんはやはり最強だランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村

    • Fated 108

      チャンミンが、インタビュー形式の動画配信で彼自身の口からオメガに突然変異した事について語るそれは、前日に事務所から各メディアを通して告知されたチャンミン自身は『大丈夫』という顔をしていたけれど、実際は不安で仕方無かったのだと昨夜教えてくれたそれは、俺だけに打ち明けてくれた事俺達…番になったふたりだけの秘密だだから、事務所に到着してからも誰と会っても誰の前でも、チャンミンは真っ直ぐに前を向いていたとは言え、SNSでファンや世間の声を見聞きする事は出来なかったようで、配信が始まる前、最後にふたりで話をした時に『僕はまだ勇気が出ないですが、ユノヒョンは…嫌じゃ無ければ何を見てもらっても構わないです』と言われた勿論、俺だって、チャンミンに対して色々な邪推をされたり真実では無い憶測が横行したり俺達の活動についてネガティブな声が広まっていたら、と思うと怖く無い訳では無いでも、俺とチャンミンはふたりでひとつだそれは、ひとりでは何も出来ないという訳では無いふたりだからこそ成し得る事が有るし、乗り越えられる事があるそうして補い合えるのが俺達なのだと確信している「…何を見ているんだ?ユノ後少しで配信が始まるぞ」「マネージャー…チャンミナについて、どんな風に言われているかと思って」「何をしたって、良い声も有ればそうで無いものも有るもう分かっている事だろ?」事務所内のスタジオ数メートル先には椅子に腰掛けるチャンミンの姿向かって左側には女性インタビュアーも座っていて、スタッフと共に最後の打ち合わせをしながらメイクをチェックされている机の前の簡易タイプの椅子に座る俺の右側に立ったマネージャーは、俺にスマホをちらりと覗いて『大丈夫だから』と呟いた「分かっています、何時だって色々な風に評価されているという事はその声が、今は少し増えている事もでも、今は俺がリーダーとして…それだけじゃ無くても、受け止められる部分で受け止めてチャンミナを助ける事が必要だと思うので」スタッフ達はこれからチャンミンが公表する事…つまり、彼がアルファと番になった事を知っているし、マネージャーや一部の事務所スタッフに関しては、その相手が俺であるという事も知っている「ユノとチャンミンの気持ちが固まっているならそれが何よりだでも、俺も同じだからな?」「はい、ありがとうございます」「番が居る事を公表したら…またどうなるかは分からないでも、今の時点に関しては思っていた以上に肯定的な声も多いよ」「本当ですか?俺はまだちらっとしか見ていなくて…」SNSで少し検索を掛けただけであらゆる声が入ってくるそれは勿論匿名だから、という事もあるのだろうけど…悪意の有る無しに関わらず、オメガなのだから、多くのアルファを刺激しない為に芸能界には居るべきでは無い、だとか…これからの活動が不安だ、とかオメガだと公表した事を肯定するポジティブな意見も勿論見られるけれど、議論の場になってしまったり、オメガに対する潜在的な偏見だったりも露呈しつつあるように見えたマネージャーは「まあ、俺が何を言っても自分の目で見るのが一番だとは思うけど」と前置きした上で「チャンミンが自ら語ると決まった事で、安心したファンも多いみたいだし、ファン以外からも勇気がある、と注目されたようだ」と言って俺の肩をそっと掴んで優しく擦った「そうですか…ああ、もう本当に始まる時間ですね俺は、今隣には居られない分チャンミナの事をしっかり見て、それから彼を支えて行きたいですどんな声も受け入れるし、それが出来るくらい、俺達は真剣に仕事に向き合っていると思っています」「ああ、勿論俺達も分かっているよ」マネージャーはそう言うと、別のスタッフの元へ向かい、俺の傍には誰も居なくなったそれは、偶然なのか、それとも何かしらの配慮がなされているのか、は分からないだけど、ただ数メートル先に座るチャンミンにだけ集中出来るから有難いし…隣に居る事は今は叶わないけれど、気持ちは同じなのだと強く想いながら彼を見つめた そうしたら、メイク直しを終えたチャンミンがこちらを向いて…「ユノヒョン、最後まで見ていてくださいね」「…当たり前だよ俺が付いているから頑張って」勿論、その表情には緊張の色が見て取れたでも、見つめ合って言葉を交わせば彼の笑顔は少しだけ柔らかくなった「今日は、僕がひとりでグループを背負う事になるのでしっかりやります」その言葉を最後に、彼はもう周りのスタッフやインタビュアーの女性の方を向いて、次に前を…こちらを向く時には、凛とした表情に変わっていたインタビューの動画配信は、アプリを利用したどれだけの人数が視聴しているのか、も大体リアルタイムで分かるのだけど、配信開始前からかなりの人数になっていたスタッフ達も緊張している様子が伝わって来たそして…「今日は、僕の事を少しだけお話させて頂こうと思います今から語る事は、全て僕の言葉ですそして、僕は今までもこれからも変わりませんそれは…二次性が突然変異してしまったからこそ分かる事です」配信開始と同時にチャンミンは挨拶をして、そしてゆっくりと語り出したインタビュアーはあくまでも補助的な立ち位置で、殆どチャンミンがひとりで話を進めた質問は、『いつ頃二次性が突然変異したのか』『どのような気持ちだったのか』『公表する時の気持ちは』『オメガになって大変な事は』と、きっと世間やファンが知りたがっているであろう事チャンミンは数ヶ月前に突然であった事身体の不調から病院を訪れて、検査で分かって始めは『何故自分の身体に滅多に無い現象が』と途方に暮れた事を話したけれども、淡々としながらも、常に真っ直ぐにカメラを見つめて話すチャンミンに悲壮感は感じられなかったそれはきっと…チャンミンが語っていた『同じオメガや、生き辛さを感じるひと達の力になりたい』そんな気持ちから来るものなのだと感じた例えば、同情を誘うような事を言ったり、どれだけオメガになって大変で、そのなかで頑張っているか、だったり…それを言うのは簡単かもしれないそして、俺は隣で見て来たからどれだけ大変だったか、も勿論知っているけれども、そんな事実を口にしたら、隠れて生活をしているオメガやその周囲のひと達にとってプラスにはならないだろう「これが、僕にとって大きな変化で無ければ公表する必要は無かったのかもしれませんですが、思春期を超えれば誰しも二次性が顕れます自分達の意思はどうであれ、アルファである、ベータである、そして…オメガである、というだけである種の評価をくだされますですが、僕はオメガである前に男性ですそして…アルファもベータもオメガも人間ですアルファのなかにも、ベータのなかにも色々な人間が居ます僕はふたつの二次性を経験して…だからこそ、悩みましたが…今は、隠すような恥ずべき事では無いと思いました」ゆっくりと語るチャンミンに、インタビュアーの女性は頷いて、そして質問を続けた「現在、芸能界にはアルファがとても多く…または、残りはベータだと言われていますオメガはヒートを起こしたり、アルファと番う事が多い為、アルファとオメガはお互いに反応してしまう事があるだから、オメガは芸能界には向かない、と言われています今後も芸能界で活動するにあたって、考えている事はありますか?」「…勿論、それは避けては通れない問題です現在の抑制剤の効き目はとても高いですなので大丈夫、と言いたいですが…ファンの方達や、仕事の関係者…スタッフや共演する事になる方、または多くの先輩や後輩達、今のように、オメガへの理解が薄いままではそれを僕ひとりが訴えても直ぐには難しいのかもしれないと思いました」「では、どうすれば…?」俺は、この後にチャンミンが何を語るのか、を知っているそして、この事実を公表する事で…チャンミンを、若しくは俺達のグループを見るファンの目は変わるかもしれない勿論、俺は映っていないカメラの後ろでチャンミンを見ているだけでも、チャンミンの緊張が伝わってくるようで、思わず唾をごくりと飲み込んだ「チャンミナ…大丈夫、大丈夫だから…」吐息混じりに、声にならない声で呟いた腿の上でぐっと両の拳を握って真っ直ぐにチャンミンを見たら、彼はふう、と息を吐いて、そして確かに俺を見て微笑んだそして…「…僕には、運命のアルファ、が居ましたそのひとは僕がベータであった時から僕を理解してくれて、オメガに突然変異した僕の事も変わらずに僕のままだと言ってくれました」「運命の…本当にあるのですね」「はい僕は…ユノヒョンと僕は、ファンがあっての仕事をしています通常、まだ二十代の僕達が特別に誰かと…という事はあるべきでは無いと…多くの方が思っていらっしゃると思いますですが、僕はまだまだこの世界で歌ってステージに立ちたいですユノヒョンとふたりでもっと多くの景色を見たいと思っていますでも、現状芸能界にはアルファが多く、オメガの僕は自分の意志とは関係無く…仰ったように『何か』が何時かあるかもしれません仕事に集中する為、そして…僕は何よりも歌を愛していて、ステージに立つ事が大変ですが好きですだから、そのアルファと番の契約を結びました」BGMは無いから、インタビュアーの女性とチャンミンの声だけしか無いスタジオ静かなこの場が更にしん、と静まり返った気がした勿論この場に居るスタッフは何を話すのか、を全て皆知っているけれども、この話はやはり、あまりにもナイーブで、そして…俺達の今後を左右する話であるのだと伝わってきた「僕は何も変わりません今までも…まだまだな所が多くありますが、歌う事が好きでファンの皆さんに会う事が好きです今もそれは変わらないし、オメガになったからこそ、もっと多くの方に自分の言葉や想いを届けたいと思うようになりました今の僕だから出来る事をこれからは更に魅せて行きたいし、これは…僕のリーダー、パートナーであるユノヒョンとも同じ気持ちです」「ユノさんとも今話された事は話されているのでしょうか?」「はい、勿論ですこれまでもずっと、尊敬して信頼していましたが…ユノヒョンは僕が突然変異しても見る目を変える事が無かったし、だからこそ僕もユノヒョンに向き合えました今、この場に居るのは僕だけですが、僕達は同じ気持ちで…ファンの方に対する気持ちは何も変わりません」チャンミンは、特別ファンに縋る言葉を吐く事は無かったそして、「どうか、これからの僕達を見て欲しいです」「何も変わっていないし、以前よりも仕事への情熱は増しました」と、真摯に語った三十分に満たない配信だけど、とても長く感じたそれはきっと、俺が…数メートル離れているだけで、立ち上がって駆け寄れば直ぐにチャンミンの元へ、隣へ行けるのに、今はそれが許されていないからだけれども、チャンミンは俺の名前を出して「同じ気持ちで活動している」とはっきりと言ってくれた「終了です、お疲れ様でした!」スタッフの声にチャンミンは立ち上がり、方々に頭を下げたそして、インタビュアーの女性にひと言ふた言告げて頭を下げた昔から俺達を知る彼女も安堵した様子でチャンミンに労いの言葉を掛けていた俺はと言えば、真っ先にチャンミンに駆け寄ろうとしてしまったけれども、チャンミンが俺を一切見る事無くスタッフ達に挨拶しているのを見て、どうすれば良いのか分からなくなってしまっただけど…「あの…実は緊張してしまって緊張の糸が解けてトイレに行きたくなって…少し外します」配信中の真面目な顔から、いつものチャンミンの少しおどけたような表情こちらへの向かいながら飄々とした様子でスタッフに告げて、そして俺の横をすり抜けるようにしてスタジオから出て行った「……」多分、俺だけが気付いているのだと思うそして、そうであって欲しい「お疲れ様でした、俺も直ぐに戻ります」笑顔で、何事も無いように近くのスタッフに告げて、焦らずにゆっくりと扉へ向かって歩いて、そして廊下へと出たそして…「…トイレ…あっちか」勿論、本当にトイレへと向かったかなんて分からないだけど、きっと…チャンミンは今、俺を求めてくれている「チャンミナ…」人気の無い廊下を駆けて、少し離れたトイレへと向かったそして、大きな個室の扉が閉まっている事を確認した「…匂いで分かるなんて…番になる前は無かったな」近付けば分かったそこに、チャンミンが確かに居る事を「チャンミナ、来たよ…開けて欲しい」「……」答えは無かったけれども、直ぐにゆっくりと扉が開いて…「…良かった、やっと抱き締められる頑張ったな、チャンミナ」「……っユノヒョン……っふ…」扉を閉めて、目の前で不安げに瞳を揺らすチャンミンを見つめて、そして直ぐにチャンミンを抱き締めた「緊張しただろ?そんな風には見えなかったけど…」「…大丈夫でしたか?ちゃんと、自信のある顔になっていましたか?」「ああ、俺が取り残されてしまうんじゃないかと思うくらい堂々としていたし、格好良かったよそれに、何も言えなくなるくらいに綺麗だった」震えて上下する背中を宥めるように擦り、柔らかな髪の毛に唇を落としたぎゅうっと強く抱き着いてくるチャンミンに「お疲れ様」と言ったら、ゆっくりとチャンミンの顔が持ち上がって、潤んだ瞳で俺を見る「今は?もう情けないですか?」「いつだってチャンミナはチャンミナだそれに、情けなくたって良いんだよそんな顔は…俺達はお互いにだけ見せ合えば良いんだから他のスタッフにこんな顔を見せたら嫉妬で狂ってしまいそうだから…俺だけに見せてくれて嬉しい」「…そんな事を言うの、ユノヒョンくらいです」「他に居たら許さないよそれくらい愛しているし…誰にも譲らない」 チャンミンは少しだけ笑って、その拍子に涙が零れた「ユノヒョンの番だから、誰も僕を狙ったりしません」なんて言うのだけど…「本当に強くて綺麗だっただから、番なんて関係無く…チャンミナの魅力が伝わった筈だよ誰にも譲らないけど、凄く誇らしい」「誇らしいって言ってもらえて嬉しい、ですでも本音は…閉じ込めたいって言って欲しい」今はふたりきりだから本音で俺に全てを委ねてくれるチャンミンを抱き締めて、キスを交わして…「そろそろ戻らないと心配される、よな?」「…はい皆の前に戻るのは緊張するので…噛まなくて良いから、項に触れてください」 甘えるようにそう訴えるチャンミンの、メイクで隠した噛み痕に、新たな痕が付かないぎりぎりの力で噛み付いた「あの言葉…嘘だって思いますか?」「え…」「『運命のアルファと番になった』って言った事」打ち合わせでは、『運命の』とは特別に言わない事になっていただからだろう、チャンミンは少し窺うような顔で俺を見てきた「どうして?俺達は運命よりも運命なんだから真実だ」「…うん…」チャンミンはほっと安堵したように眉を下げて、そうっと自らの項に触れた今夜もまた、彼の項を噛んで、止まる事の無い想いを伝えたいランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村長くなりましたが、読んでくだかる方がいらっしゃるのでここまでゆっくり大切に進める事が出来ました後10話程で完結出来るかと思います現実のふたりだからこそ、のオメガバースなので、普通のオメガバースのお話の雰囲気とは違うかもしれませんが、最後までお付き合い頂けたら幸いです

  • 02May
    • 執事のお仕事 12 前編

      お坊ちゃんは我儘で自由で、そしていつも唐突まあ、そうなってしまったのも何だかんだ執事である俺が甘やかしているからだし、彼は彼で俺以外の前ではそれなりにしっかりしている事も知っているからそれで良いのだけど…「ユノ、今から映画に行こう」「今から、ですか?チャンミンさんのご友人を誘えば宜しいかと…」「ユノと行きたい、車も出して欲しいし」「ならば送り迎えだけ…」「だから!ユノと行くんだってば」リビングのソファに座ってテレビを見ていたお坊ちゃん…つまり、俺が執事として仕えるシム家の長男であるチャンミンは、テレビの電源を消して勢い良く立ち上がった「ユノ、オッパがデートをしたいんだって気付いてあげて?」「スヨンさん…ああ、そうだったのですねでは今から準備を致します」リビングに顔を出して楽しそうに笑うのは、チャンミンの妹であるスヨン顔は似ているけれど、チャンミンよりも更に聡明な美人といった雰囲気だ勿論、チャンミンも黙っていれば…直接言ってはやらないけれど、物凄く綺麗に成長した「スヨンもユノも!分かっている癖に揶揄うなよもう!」まあ、口を開けばこんな感じで、大学生になった今もまるでこどものよう「チャンミンさん、車が必要なんですか?映画は見たいのに電車には乗りたく無いだなんてものぐさですね」休日のシム家、何時までも仲の良い旦那様と奥様はふたりでデートに出掛けているスヨンは「私は今日は勉強をするって決めたから、行ってらっしゃい」と言って、手を振ってリビングを後にした「…兎に角、ユノと行くんだって言っただろユノも準備してよ、スーツじゃあ無くて良いから」「着替えて来ます」にこりと微笑んだら、チャンミンは頬を赤くして階段を昇って行った執事として、普段は常にスーツを着ているもうそんな生活も十年以上だから勿論慣れたそして、スーツだと一気に気が引き締まるとは言え、気候も穏やかになって来たから夏用のものだとしても外をスーツで歩くには辛い季節がやって来る「…デートって事だよなじゃあ、これにするか」あまり、服への拘りは無いと言うか、昔から…これは自慢でも何でも無くて、ただの事実なのだけど、適当に選んだ服を着ていたって、大して身なりに気を遣っていなくたって異性からの誘いが絶えなかっただから、私服はTシャツとデニムパンツが基本後は季節に合わせてシャツを羽織ったりニットになったり、ジャケットやコートを羽織ったり…つまり普通だでも、折角可愛いお坊ちゃん、では無くて年下の恋人が誘ってくれたから、シム家のなかの自室でクローゼットを眺めて考えた着替えを済ませて玄関へと向かったら、扉の方を向いて立っていたチャンミンが腕を組んだままくるりと振り返ったそして…「ユノ遅い、僕はもう……っあ、それ…」「スーツから着替えるのは時間が掛かるんですそれに急だったし…この服装はどうですか?」「…似合ってる、と言うかやっと着てくれた、遅いよ…」選んだのは、ノンウォッシュで細身のブラックデニムパンツそれから、チャンミンから貰ったつるりとしたシンプルだけれど形の綺麗なTシャツと、所謂マウンテンパーカー、というアウターチャンミン曰く『流行っている』らしい「折角貰っていた誕生日プレゼントを着るのが今になったけど…そもそも、春物だからなかなか着る機会が無かったのです」「だって、これから使える物じゃなきゃ意味が無いと思って…って、もうそろそろ敬語は止めてよ」「…嫌なのですか?」「いつも言ってるだろだって…もう、またスヨンに見られたら恥ずかしいし…兎に角行こう!」チャンミンは俺の手を引いて玄関に降りた靴を履いて、広い家の庭を歩いて駐車スペースへと向かっていたら…「ねえ、ユノ、僕とデートは嫌?」ついさっきまで強気だったのに我儘で自由なお坊ちゃんの顔をしていたのに振り返ったチャンミンは眉を下げて心細そうな顔で俺を見る「ユノは優しいけど時々意地悪で分からなくなる服も…今日やっと着てくれたけど、本当は気に入らなかったのかなって思っていたし」「そんな事無いよ、プレゼントが嬉しかっただから、デートでこうして着てみたんだけど…似合ってない?」正直、一回り以上年下のチャンミンと付き合っていて、たまに自分で良いのだろうかと思う事があるチャンミンは小学生で出会った俺に一目惚れをしたと言うそうして、ずっと俺だけを好きなのだと言ってくれた物凄く好かれていて、懐かれていて、愛されている自覚は有るけれども、俺はもう三十を超えたのに、チャンミンはまだ十九歳これから、例え男でも女でも、幾らでも出会いは有る筈なのに、と思ってしまうのだチャンミンはそんな俺の気持ちなんて知らないのだろう長い腕を伸ばして、小さな手で俺のアウターの裾をぎゅっと握って「格好良過ぎて狡い」と呟いた「あはは、そうか、ありがとうでも、ちょっと若作りになってない?」「全然!物凄く似合ってる…着てくれてありがとう」俺の言葉にほっとした様子で笑ったチャンミンは「敬語もやっと止めてくれた」と、今度は少し拗ねたように唇を尖らせて俺を見上げる「敬語は…公私混同してはいけないからまあ、さっきはチャンミナの反応が可愛くてわざと、もあったけど」「ユノの意地悪…でも大好き」塀に囲まれた庭のなか我儘だけれど、素直で可愛い俺のお坊ちゃんはぎゅっと抱き着いてきた「俺も…好きだよ、チャンミナ」身長は伸びて綺麗になったもう、俺の後ろを着いて来るだけのこどもでは無くなった少しの寂しさと、そしてその代わりに増えて大変なのは…異性に言い寄られる事が常で、自ら誰かを欲しいだなんて思った事の無かった俺にも存在したのだと分かった胸のときめき「デート、行こう、ユノ!」「ああ…で、何で車が良いんだ?もしかして、今日は少し気温が高いから電車や歩くのは嫌だ、とか?」単に疑問だっただけお坊ちゃんとは言え、勿論普通に生活をしているから、チャンミンだって当たり前に電車に乗るだからどうして車なのだろうと尋ねたのだけど、何時までもやっぱり可愛いお坊ちゃんは俺の言葉に頬を染めて俯きながら呟いた「だって…車なら、移動中もずっとユノに触れたり…信号で停まればキスも出来るし」「触れるって…チャンミナは本当にエッチだな」「…っ違っ!変な意味じゃ無くてそれに、僕がそんな風になったのはユノの所為なんだからな」真っ赤な顔で抗議するそんな反応を見るともっと揶揄いたくなるのだという事をチャンミンは知らないし…それも、全部可愛くて堪らないお坊ちゃんに、三十を超えた俺が夢中になる程好きだから、という事を本人は知らないのだろうまあ、そんな事を言ったらまた喜ばせてしまうし俺は恥ずかしいから、口にする必要は無い「ソユンさんは『ふたりとも分かり易い』なんて言うけど…」「ソユンが何?どうしたの?」身体をそうっと離して頭を撫ぜたら、大きな瞳でじっと見つめてくる「何でも無いよ兎に角、お坊ちゃんに俺は夢中って事だ」「…本当に?」冗談めかして本気の想いを口にして、期待するように俺を見る可愛い恋人にキスをしたランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村連休に入ったので、年末年始ぶりのお話を突発で更新します短くさらっと読んで頂けたら良いなあと…これまでのお話はカテゴリー「執事のお仕事」で読んで頂けますこれまでのお話はこちらです ↓執事のお仕事

    • お知らせ

      コメントを複数頂いて気が付いたのですが、「生徒会長と戯れ事 3」が公開されていて、更に飛ばされていたようですなのですが…こちら、丁度二年前の今日のお話で、当時も公開したら飛ばされてしまってFc2に本文があるお話です。それが何故か二年後の今日に復活してしまったようで…と言う訳で、多分タイトルのみ上がっていた当該のお話は、過去に掲載済みです数名の方に「あのシリーズが好きなので読みたいです」という風に有難くもコメントメッセージを頂いたので、こちらから改めてリンクさせて頂きます「生徒会長にお願い」シリーズは、成人指定多めのシリーズで学園物のお話です。こちらをクリックでカテゴリーに飛べます。 ↓生徒会長にお願い先程何故か更新されてしまったお話です。 ↓生徒会長と戯れ事 3最近書いていないお話なので今よりも色々拙いし自分で読み返すのも恥ずかしいのですが、お時間ある方、知らなかったよ、な方は良ければお付き合い頂ければ幸いですまた、自分で気付いていなかったので、こちらからになりますが、ご指摘くださった複数の読者様に纏めてお礼させて頂きます。ありがとうございます。お仕事の方は身体に気を付けて、そしてお家時間、の方も心身ともに健康でありますように幸せホミンちゃんにぽちっ♡ ↓にほんブログ村

    • chandelier 4

      今日は十二月二十四日、つまりクリスマスイブそんな今日は冬休みを迎える直前なのだけど日曜日で休みクラスメイト達は皆、好きな相手や彼氏彼女を誘う予定が有るのだ、とかそうで無くても誰かと遊ぶつもりなのだと浮き足立っていた俺も、実は休み前に同性の友人だけでは無くて…何人かの女子からも誘われた、というかまあ告白をされたのだけど、勿論断っただって、こんな事は誰にも言えないのだけど、好きな子が居る言えない理由は…家族になったばかりの義理の弟がその相手だから、だ義理の弟、つまりチャンミンと出会い淡い恋心を抱きながら家族になって初めて迎えるクリスマスイブ明日がクリスマス本番で夜は家族皆で過ごす予定だけれど、その前に終業式が有る高校二年生の俺と中学三年生のチャンミン、俺達はそれぞれ学校に通っているから丸一日一緒には居られないだから、休みの今日をとても楽しみにしていたそれなのに…『大事な予定が有るので、母さんと出掛けて来ます夕方には帰ります』そう言って、当たり前にイブを一緒に居られると思っていたチャンミンはあっさりと彼の実の母親、つまり俺の義母さんと共に四人暮らしの家を出て行ってしまった確かに、今日は特別にチャンミンと約束をしていた訳では無いでも、家族で兄弟になったし同じ家に住んでいるついこの間はふたりでクリスマスツリーの飾り付けをしたし、チャンミンは俺に懐いてくれていて『ゲームをしましょう』『漫画、これがおすすめです』なんて言って俺の部屋にやって来たり、一緒に宿題や予習をしたり…一軒家の二階、廊下を挟んで向かい合わせにそれぞれの部屋が有るのだけど、しょっちゅうどちらかの部屋で過ごしているだから、当たり前に今日だって約束なんて無くても当たり前に一緒に居られるものだと思って、誘いも告白も断っていたのだ「いや、告白はどちらにしろ…今はチャンミンしか考えられないから断るけど」呟いて溜息を吐いた勿論、男同士、しかも義理の弟になったチャンミンとどうにかなれるだなんて考えていないでも、傍には居られる事が当たり前になっていただから、ほんの少し離れる事にも寂しさを覚えてしまう正直、モテる方だ恋愛で悩んだ事も今までは無かっただから、自分にこんなにも女々しいところがあるだなんて…本気の、けれども叶う筈も無いしひとにも言えない恋をして初めて知った父さんも休日出勤で不在以前は毎日、とは言わなくともお手伝いさんが居たそれも父さんが再婚してからは契約を解除したから、広い家のなか、クリスマスイブなのにひとりきりチャンミンが居れば、一緒に外に出てクリスマスプレゼントを買って贈ろうと思っていたそれだって俺が勝手に考えていただけだし、好きな子へ…では無くて『義理の兄』から『義理の弟』へ、のものなのだけれど「大事な予定だって言ってたもんな仕方無いよな…」一階の、男ふたりには広かったリビング今はひとりだから更に広いチャンミンとふたりで楽しく飾り付けた大きなクリスマスツリーを眺めながらソファに座って溜息を吐いた腐っていたってそれこそ仕方無いから、気持ちを切り替えようと思ってスマホから電話を掛けたイブだし電話の相手も何か忙しくしているかもしれない、と思ったけれど、意外にと言うか直ぐに呼出音は止まって声が聞こえたから安堵した「もしもし、俺だけど…今から空いて無い?…いや、暇だろ?頼みがあって、ちょっと付き合って欲しくて…OK、じゃあいつもの場所で」通話の相手は一瞬渋ったけれど、直ぐに了承してくれたやはり、持つべきものは、といった存在だ階段で二階の自分の部屋に向かって、貯めていた小遣いを財布に仕舞った厚手のブルゾンを羽織ってマフラーを巻いて、家を出て自転車を漕ぐ足に力を込めた『いつもの場所』に到着したら呼び出した相手もほぼ同時に到着したから、顔を見合わせて笑って、それから礼を伝えた「学校でも毎日会っているのにわざわざイブに呼び出すだなんて…俺の事が好き過ぎるんじゃあないか?」にやりと笑ってそんな事を言う調子の良いやつだけど、頼みが有るのだと真剣に伝えたら直ぐに返事をくれる頼れるやつ「…今は彼女が居ないって知っているし…ドンヘなら空いていると思ったから誘ったんだ予定が出来てお互い良かっただろ?」「まあな…て、ユノも予定が無かったのかよ」こんな事が言い合えるのも親友だからまたふたりで顔を見合わせて笑った「感謝するよ、ひとりじゃ決められそうに無くて」「何が?」「その、プレゼント…弟への」「チャンミン君?お前本当に…」「何だよ」「ん?いや、別に」微笑ましい、というような顔で頷くまるで俺は分かっているのだと言わんばかりだまさか俺が恋心を抱いているとは思われていないだろうけれども、最近は学校でもずっとチャンミンの話をしている自覚が有るから、ブラコンだとは思われている気がする「ユノがチャンミン君を可愛がっているのは知ってるよプレゼント選びだろ?俺で良ければ付き合うよ」「ありがとう、じゃあ何軒か行きたい店が有るから…」師走の冷たい空気が肌を刺すそれを自転車で切り裂きながら、ふたりでショッピングモールへと向かった自転車を走らせて十五分到着したのはモールのなかのコレクター向けショップクリスマス商戦も大詰めだから、所狭しとプレゼント向けの商品が並んでいる「フィギュアかゲームにしようと思っているんだけど、どれが良いか分からなくて」「へえ…予算は?」「貯金箱に貯めていた小遣いをそのまま持って来たから…ええと、五万くらいかな」「…弟って何歳だっけ…」「中二、いつも言ってるだろ」「ユノ…お前の金銭感覚は普通じゃあ無いその半分でも充分だ」ドンヘはそう言うと俺の真正面に立ち、俺の肩に両手を置いて溜息を吐いて首を横に振った好きな子と過ごす初めてのクリスマス初めてのプレゼントだから金額では無くて『これ』と思えるものが有れば買えるように、と思っての事だっただけど「あまり高価なものだとチャンミン君が気を遣うし驚くだろ」と言われて、ドンヘを誘って良かったと思った時間をかけて何店舗かを回り候補を絞ったそのなかでどれが一番喜んでもらえるかドンヘにも聞いたのだけれど、『ユノが選ぶのが一番だろ』と何だか嬉しそうに言ってもらえたから…その選ぶ、という事が大変なのだけど、考えて考えてひとつに決めて、プレゼント用に包装してもらった大切なプレゼントは自転車のカゴに入り切らなくて、右腋に抱えて落とさないように慎重に自転車を漕いだドンへが『途中まで持とうか』と言ってくれたけれど、大事なプレゼントだからと断って親友の優しい気持ちだけ受け取った「ユノ、お前…チャンミン君に夢中だよな」「は?何だよ夢中って…変な言い方するなよ今まで弟なんて居なかったから嬉しくて…それだけだ」夢中、だなんて急に言われて…その通りだから、慌てて否定した必死になってしまったからか、何だか早口になってしまったドンヘはそんな俺を見て笑う「まあ、この間ユノの家に行った時にも会ったけど…女子よりも可愛いから気持ちは分かるよ」「俺の大切な弟だから…チャンミンに手を出したら、ドンヘでも許さないからな」折角夢中では無い、ただの弟なのだと言ったところなのに結局『女子よりも可愛い』と言われたら焦ってしまう勿論、ドンヘが本気だなんて思っていないけど、好きだからこそ過敏になる親友はどこか楽しそうに笑って左手を上げた「大丈夫、ユノの嫌がる事なんてしないよじゃあまた終業式に」「ああ、今日はありがとう」何だかんだ、やっぱり優しいドンへと別れて家路を急いだチャンミンから途中で連絡があった彼が帰宅する予定時刻まであと十分プレゼントを落とさないように大事に抱えながら自転車を漕いで、ぎりぎりの時間に家に辿り着いた「もし先に帰ってたら…上手く隠せるかな」大きな荷物を抱えて人目を避けるように、ゆっくりと鍵を回して扉を開いた家のなかは暗いししん、と静まり返っていたからふう、と息を吐いた「良かった…まだ帰ってない」急いで二階に向かった自分の部屋に入ってから、直ぐにクローゼットの奥に大きなプレゼントを隠したひと息吐いて安心してベッドに寝転がったその時、玄関の扉が開く音がしたから今度は慌てて起き上がり部屋を出て、階段を駆け下りた「お帰り、義母さん、チャンミン」「ユンホ君、お出迎えありがとう」廊下で新しく家族になったふたりを出迎えたのだけど、チャンミンは俺を見るや否や義母さんの後ろにさっと隠れるようにして一歩下がってしまった「…ユノヒョン…」「どうしたの?」いつもならば、俺を見て可愛い笑顔を見せてくれるそれなのに、今は眉は下がっているし俯いていて…何か嫌われるような事をしてしまったのだろうか、と不安になる「チャンミン…?」どうしたら良いのか分からなくて戸惑っていたら、義母さんはくすくすと笑うもう、余計に訳が分からなくて首を傾げたなのだけど、ふと気が付いた「ん?それ…」義母さんの後ろに立っても隠れられていないチャンミンの、両手を塞いでいる大きな袋にそして、大きい、半透明のビニール袋のなかに入っているのはどうやら白い箱「ユノヒョンに内緒にしたかったのに…」「ふふ、残念ね」唇を尖らせて項垂れるチャンミンに、『残念』なんて言いながらどこか嬉しそうに微笑む義母さん大きな紙の箱は見覚えの有る形で、誕生日やクリスマスに見た事が有るそれに、甘い物が好きだから分かった「…それってもしかして、クリスマスケーキだよな?って、それよりも用事は終わったのか?チャンミン、何かあった?」何故か悲しんでいるような様子のチャンミン『用事』と何か関係が有るのか…何が何だか分からなくて俺も狼狽えてしまうけれども彼は俯いたまま「母さんは夕飯の準備をするから、それはふたりに任せるわね」噛み合っていない俺達にそう言い残して、母親はキッチンへと向かった「チャンミン、大丈夫?」俯いたままの彼に声を掛けると、ぼそぼそと小さな、拗ねたような声が聞こえた拗ねているようではあるけれど、舌っ足らずで可愛いそして、何を言っているのかは聞き取る事が出来なくて顔を近付けたら…「ケーキ…ユノヒョンが甘い物を好きだから…母さんと一緒に作って来たんです家だと、ヒョンに内緒で作れないから」「え…」もしかして、まさか…心当たりすら無いのだけど嫌われたのだろうか、とかチャンミンに何か悲しい事があったのか、とかほんの短い間に色々な事を考えていたから、チャンミンの言葉に安堵した…と言うか、今度は頬が緩みそうになって大変だ「もしかして、今日の大事な予定って…」「これです」相変わらず拗ねた声で言いながら、ケーキの入った箱を大事そうに両手で抱き抱える「皆で食べる時まで内緒にしたかったのに…」折角のクリスマスイブなのにチャンミンは出掛けてしまって、しかも、大事な予定だなんて言われて寂しかったついさっき、帰って来たチャンミンの様子がおかしくて、どうしようかと焦ったけれども今はもう、こんなにも嬉しくて堪らない「ユノヒョン、どうして嬉しそうにしているんですか?僕はサプライズに失敗して凹んでいるのに…」頬をぷくり、と膨らませて抗議するでも、嬉しいからこれ以上表情を引き締める事なんて出来ない「ケーキを作れるなんて凄いし、大好きだから嬉しい」「…驚きましたか?」「ああ、サプライズでって思ってくれた気持ちが本当に嬉しい中身は食べるまで楽しみにしてるよありがとう、チャンミン」『大好き』なのはケーキより何より、本当はチャンミンだでも、今ならどさくさに紛れて気持ちを伝えられるような気がして…それくらい、俺の心は今嬉しくて踊っている彼の両手が埋まっていて抵抗されないであろう事を良い事に、チャンミンの柔らかな髪の毛をそっと撫ぜたら上目遣いで少し恥ずかしそうに…でも笑ってくれたから胸が締め付けられた十二月二十五日クリスマスをこんなにも待ち望んだ事なんて、今まで無かったと思う朝起きたら、俺とチャンミンそれぞれの部屋には両親…ではなくて、サンタクロースからのプレゼントが届けられていたチャンミンには彼が欲しがっていたゲーム俺には、沢山荷物の入るスポーツブランドのリュックだったいつもの通学路、途中まで一緒に登校している間チャンミンは上機嫌だった苦手だと言う寒さに頬を赤くしながらも、強い風に少し目を潤ませながらも笑みを絶やさない「早く夜にならないかな…ユノヒョンと一緒にゲームをしたいです」「俺もチャンミンに負けてばかりじゃあ悔しいから、ゲームが上手くなりたい」「年齢じゃあ勝てないから僕もゲームではヒョンに負けたくないけど…あ、じゃあここで…学校が終わったら直ぐに帰ります」高校と中学、それぞれ向かう分かれ道でいつも通りチャンミンと別れて学校へ向かったそして、終業式は無事に終わり急いで我が家へと帰って…「ただいま!」寒さに肩を竦めながら玄関の扉を開けたら、廊下の奥からぱたぱたと足音が近付いて来る「ヒョン、お帰りなさいでも、もう待ちくたびれて…ずっとそわそわしていたんです」「あはは、もう直ぐ帰るよって言ったろ?」癖っ毛をふわりと揺らしながら俺の目の前にやって来たチャンミンにスマホを掲げて、メッセージアプリのトーク画面を見せた勿論、俺とチャンミンのトーク画面だ「だって、もう十分前の話じゃないですか…直ぐって言うから待ってたのに…十分じゃあ『もう直ぐ』じゃ無いです」「あはは、チャンミンは厳しいなあ」「だって早くユノヒョンに会いたくて」そんな、俺にとっては舞い上がるような事をさらりと言ったかと思ったら赤い舌をちらっと出して上目遣いその仕草が照れ隠しだって、もう知っている十分という時間を長く感じるくらい楽しみに待っていてくれたそれだけで、クリスマスに感謝したいくらいの気持ちになったリビングを覗くと父さんも既に仕事を終わらせて帰宅していて、家族四人が揃った昔から通っていて…そして、俺の父さんとチャンミンの母さんが結婚式を挙げた教会へと家族で向かった「結婚式を思い出します僕達はここで家族になったんですよねだから、僕にとってはここは特別な場所なんです」講堂内の天井に飾られたステンドグラスは、冬の貴重な日差しを受けて光輝いている「うん、またここで神様に感謝しなきゃ素晴らしい家族を授けてくださってありがとうございます、って」クリスマスミサに家族みんなで参加した俺の右隣で目を瞑り手を組むチャンミンの姿はとても清らかだった新しい家族の幸せを…そして、チャンミンの笑顔をずっと守れるように、神様に祈りを捧げたミサを終えて教会からの帰り道目の前には両親、そして俺の右隣にはチャンミン冬の一日は短くて日は暮れてしまったけれど、まだまだ今日という日は残っている「僕、もうお腹空いてきちゃいました早くご飯が食べたいです」「まだ夜には少し時間があるよチャンミンって、本当に見かけに寄らず大食いだよな」「だって、母さんが今日はご馳走だって言うから…楽しみだなって思ったら余計にお腹が空くんですそれに、ケーキも早く食べたいし…」昨日、チャンミンと母さんが『内緒で』作ってくれたクリスマスケーキ今夜食べるまで、俺には見せてくれないらしい「ユノヒョン、どんな顔するかなあ…楽しみです」「あははそんな事を言われたらもう、気になって仕方無いよ」「駄目です、夜までちゃんと我慢してくださいね」日差しが無くなったから余計に寒いし風も冷たいそれなのに、チャンミンと並んで歩くとそれだけであたたかく感じるふたりで盛り上がっていたら前を歩く両親が振り返り笑って、俺達も顔を見合わせてから両親に笑いかけた今まではずっと、父さんとふたりだけだった食卓クリスマスのディナーはお手伝いさんが用意してくれていた豪華な食事とケーキ、それらは特別なものでもちろん嬉しかったけれども、忙しい父親は帰りが遅くて、用意してもらった食事をひとりで食べる事もあったそれでも、それは仕方無い事だと分かっていた俺にとって家族がふたりだけなのはもう当たり前だったから、寂しいだなんて思った事は無かった父さんはどれだけ忙しくても顔を合わせて会話してくれたし、俺もそんな優しい父さんに感謝しているだけど、こんな家族の暖かさを…そして、好きな子と一緒に過ごす事の出来る幸せを知ってしまったら、この温もりから抜け出す事なんて出来ないと思ってしまう「凄い、美味そう」食卓には南瓜のスープにベリー系のフルーツを散らしたサラダ、スモークサーモンやターキー、それにミートローフとパンが並んでいる「食べ盛りのふたりには少なかったかしら…」義母さんはテーブルの前で心配そうに首を傾げた「僕がふたり居たら危なかったかもね」「チャンミンがふたりも居たら、料理を作るのが追いつかないわ」顔を見合わせて笑う親子に連られて俺も思わず笑ったら、目の前にいる父親も笑っていた俺も今、もしかしたらこんな風に物凄く嬉しそうな顔をしているのだろうかそう思うと恥ずかしくて、小さく咳払いをして誤魔化した「さあ、いただこうか」「はい」父親の言葉を合図に、手を組んで祈りを捧げる祈る事も願う事も、以前は熱心では無かったでも、今は違う神様に祈りを捧げて、チャンミンの幸せを、そして家族の幸せを願いたいと思うようになったチャンミンとの出逢いが俺を変えていくこんな出逢いはきっと、人生に幾度も無いだろうまだ人生の序盤の癖に、とおとなが聞いたら思うかもしれないけれども、チャンミン以上のひとなんて俺には現れないと思うだって、理屈じゃなくて…笑顔に、ふとした視線に俺を見つけて細くなる大きな瞳にそれだけでもう、惹かれて止まないから母さんの手料理はどれも美味しくて、どこか懐かしくて優しい味がする「懐かしい?ありがとう、ユンホ君ここに来るまでは私の両親…チャンミンのおじいちゃんとおばあちゃんと暮らしていたから、かしら…」「いや、その、変な意味じゃあなくて優しいっていうか…兎に角、凄く美味しいです」「大丈夫、伝わっているわ美味しいって言ってくれてありがとう」チャンミンと義母さんはとても似ているけれども、笑うと彼女の方が儚げで、また違った印象になる「ユノヒョン、母さんに鼻の下が伸びてる母さんは、お父さんのお嫁さんだから駄目です」「え?」勿論そんな訳は無いと言うか、義母さんを見てチャンミンの事を考えていた…と本当の事を言いたいけれども、そんな事言えないから、「そんな訳無いだろ」とだけ返した「それより、そろそろケーキが食べたいな」少し拗ねているようにも見えたチャンミンだけど、『ケーキ』と聞いて途端に瞳を輝かせたそれから、母親に視線を遣って長い睫毛を瞬かせて…「ねえ、もうケーキを出しても良い?早くユノヒョンとお父さんに見せたい」待ち切れないと言った風に、そのまま椅子から立ち上がった「俺も手伝うよ」「駄目、です!僕がテーブルを片付けてケーキを用意するので、ふたりはリビングに行っててください絶対にこっちを見たら駄目です」立ち上がり片付けを手伝おうとしたけれど、小さな両手をめいっぱい広げたチャンミンに首を横に振られてしまった「ユンホはチャンミンには敵わないようだなチャンミンの言う通り向こうで休んでいよう、な?」なんて、流石に俺よりも余っ程おとなな父さんに促されてリビングに移動したなのだけど気になって仕方無くて…「なあ、父さん…チャンミンと義母さんって俺達に気を遣っているのかなあ」「どうして?」「だって…俺達に手伝わせてくれないし」「違うよ、ユンホあのふたりは家族で楽しい思い出を作る為にサプライズをしようとしてくれているんだそれに…チャンミンが『ユノヒョンを驚かせたい、喜ばせたい』と母さんに頼んでケーキを作る事にしたらしいぞ」「え、チャンミンが?」「そう、母さんから聞いたから間違いない…なんて、この話をした事は内緒にしないといけないな」俺の為にチャンミンが…確かに昨日、サプライズをしたかったのに…と言ってどこか悔しそうにしていたそれが父さんと俺の為、じゃあ無くて俺の為だったなら…例え父さんへの照れ隠しだとしても嬉しい「食べて無くなるのが勿体無いから、写真を沢山撮らなきゃ」「もうおとなだと思っていたけど、ユンホもまだまだ可愛い所が有るんだな家族が増えて息子の新しい面を知れるだなんて幸せだ」しみじみと話す父さんに、「結婚してから父さんの新しい面を沢山知れたよ」と笑って返したら、少し照れ臭そうに父さんも笑った何だか気恥ずかしいし間がもたなくなりそうで、テレビでも見ようかとリモコンに手を伸ばしたら、気配がして…「ええと…準備が出来ました」ダイニングとリビングを隔てる扉を開けて、チャンミンがこちらに顔を覗かせた父さんに続いて俺もテーブルの方へ向かおうとしたら、またもや可愛い弟に阻まれてしまった「ユノヒョンはまだ見ちゃ駄目です僕が腕を引っぱって案内するので、目を瞑っていてくださいね」「え…ちょっと…」好きな子にそんな事を言われたら心臓の鼓動が一気に速まるどうしたら良いのだろうと戸惑っていたら、チャンミンの小さな右手が伸びて、そのまま視界が暗く塞がれたそして、反対の左手で、俺の右手を…まるで手を繋ぐように掴んだ「こっちです、気を付けて歩いてくださいね…はい、ここに座ってください」チャンミンに従って促されるまま歩いた目は見えなくてもチャンミンが嬉しそうに笑っているのが伝わって来る「ここ?」「はい、ここです」顔も身体も、暖房の所為では無くて熱い目元や掌、チャンミンと触れ合う箇所から体温が伝わって来て緊張は最高潮手を引かれたまま椅子に腰掛けたら、そうっとチャンミンの手が俺の目元から外された繋いだ手も離れて…反射的に握って引き止めようとするところだったけれど、何とかその気持ちを押し込める事が出来た小さく深呼吸をしてゆっくりと瞼を持ち上げたら…「メリークリスマス、ユノヒョン」「凄い…これ、チャンミンが作ったの?」「母さんとふたりで、だけど…」「ユンホ君の為に物凄く頑張ったのよね?チャンミン」「もう!母さん、言わないでよ…」目の前には丸くて大きなチョコレートのケーキ上には沢山の苺が乗っているチョコレートのホイップが苺の周りを囲っていて、俺の好きなものだらけだ「チャンミン、そうだ!ケーキの横に立って?」「え…」「早く早く!」嬉しくて仕方無くて、今の気持ちをそのまま残したくなった目を丸くして首を傾げるチャンミンとケーキをスマホの画面越しに眺めて、それからカメラアプリのシャッターを押した「ユノヒョン、撮るなら言ってください僕、きっと変な顔をしていたから消して欲しいです」「嫌、折角チャンミンが作ってくれたから記念だよ」その後、撮り直して欲しいと言うチャンミンをケーキと一緒に何枚も撮った本人に見せたら「これなら大丈夫です」と言ってくれたけど…勿論、一枚だって消せないと思った「さあ、ケーキをいただきましょう」嬉しそうに微笑む母さん、そして父さんふたりは俺達が仲の良い兄弟だと思っているのだろう勿論そうだし…でも、やっぱり俺にとってはチャンミンは弟だけれど、恋をする相手言うつもりなんて無いから、そっと想う事は許して欲しいケーキの味は勿論、言うまでもなく最高チャンミンは「僕には甘過ぎるかも…」なんて言っていたけれど、俺には丁度良かった甘い物が好きだと知ってくれているから、わざと甘くしてくれたと教えてくれて、感動して涙が浮かんだくらいだ「チャンミン、義母さん…本当に美味しい」「良かったわね、チャンミン」「……うん」ついさっきまで『自信作です』と自慢げだったのに、ストレートに褒めたら顔を真っ赤にしてしまうそんな顔を見ると、俺にとってチャンミンが特別なように、俺もチャンミンの特別なのだと勘違いしてしまいそうになるそんな勘違いも、特別な今日だけは許して欲しいちゃんと、俺達は兄弟だって分かっているから一緒に飾り付けたクリスマスツリーの灯りとチャンミンの笑顔甘いチョコレートケーキと苺俺にとってはこれ以上無い特別な日になったし、最高のクリスマスになったなのだけど…俺には大事な事がまだひとつ残っているチャンミンがケーキを作ってサプライズしてくれたように、俺もプレゼントを用意しているお腹いっぱいになって、幸せな気分のまま風呂に入り、それから廊下を挟んだ向かいにあるチャンミンの部屋の扉をノックした「チャンミン、入っても良い?」「ユノヒョン?…ちょっと待ってください」「うん」どきどきしながら扉の前で待ったほんの少しの時間、なのにとても長く感じて…「……どうぞ」一呼吸置いてから、扉は開いた俺より先に風呂に入っていたチャンミンの頬はほんのり赤いだけどきっと、今の俺も顔は赤いに違いないだって、物凄く緊張しているから好きな子の為にプレゼントを選ぶだなんて初めてだから…「チャンミン、メリークリスマス!」背中に隠していた大きな袋それを勢い良く前へと差し出した「え…わっ、これは?」袋を前に出して、そのままチャンミンを袋ごと押すようにして身体を部屋のなかへと押し込んだそうして扉を閉めてから、改めてプレゼントを差し出した「チャンミンにプレゼント、俺が選んだんだ気に入ってもらえると良いんだけど…」「え…本当に?ありがとうごさいます開けても良いですか?」「勿論」そうっと、俺よりも小さな両手で受け取ってから色々な角度から眺める袋のまま少しだけ振ってみたりして、それから俺を上目遣いで見つめる「中身は何ですか?」「あはは、言ったら意味が無いよチャンミンが自分で開けてみて?」「ほら」と促したら下唇をきゅっと噛んで恥ずかしそうな顔それから紙の包みを開けて…チャンミンの瞳がきらきらと、まるで星空のように輝いた「これ、僕が欲しがったやつ…ユノヒョン、知ってたの?」「本当?良かった…!どれが良いか分からなかったんだでも、フィギュアが好きだからこれが良いかなって…」「ユノヒョン…ありがとうございます!これ、一緒に作りましょうね」必死で悩んで決めたフィギュアは正解だったようだほっとしていたら、チャンミンがぎゅっと抱き着いてきた「わっ!」「あ、嬉しくてつい…ごめんなさい…」「あはは、大丈夫…喜んでもらえて良かった…」背中をそっと撫ぜてから、ゆっくりと離れる物凄く嬉しいけれど、離れなければこのまま抱き締めてしまいそうだし、これ以上は俺が持たないと思う『嬉しい悲鳴』って、こういう事を言うのかもしれない真正面からチャンミンを見つめていたら、今度は真顔に戻って困ったような顔をする「どうしたの?」「僕、何も用意して無くて…ごめんなさい」「え?ケーキを作ってくれただろ?あんな素敵なプレゼント、他に無いよ」「そんな…だって、僕ひとりで作った訳じゃ無いし…」フィギュアの箱をぎゅう、と抱き締めて俯くそんな姿も可愛くて、大きな耳を両手でふに、と軽く引っ張った零れ落ちそうに大きな瞳をぱちぱちと瞬かせて俺を見る、その破壊力たるや…なんて思っている事は絶対に言えない「わっ、何ですか?」「ケーキ、凄かったし美味しかったそれに、もしもケーキも何も無くたって、チャンミンが居てくれるだけで良いんだよ」「ありがとうございます…ユノヒョンは僕のサンタさんですねでも、来年は僕がユノヒョンのサンタさんになるので期待してください」どこまでも可愛い事を言う、俺のたったひとりの弟チャンミンは俺の人生に舞い降りた天使で、サンタクロースからの最高のプレゼントなのかもしれない大切だから、チャンミンを絶対に悲しませないし絶対に守ってみせる例え、いつか彼に大切なひとが出来たとしても兄として傍に居る俺の一方的な恋は叶う筈も無いけれど…この気持ちは、きっと、ずっと変わらないと思っているランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村現在この先はもう読めないようにしてあるのですが、高校一年生のユノと中学三年生のチャンミンは、この先高校三年生と高校一年生まで成長していますゆっくり進むお話で、このお話のように季節も移り変わっていくので…加筆修正をして再掲すると時期がずれてしまって読み辛いのかなあ、と思っています最後まで頭のなかにはあるので、また何時か新たに書き直しながら最後まで進められたら良いなあと思います今回、序盤を加筆修正して、初めての方にもこのふたりを知っている方にもそれぞれ沢山読んで頂けて嬉しかったです拙いお話ですが、読んでくださってありがとうございます

    • 未必の恋 25

      プールでユノさんは泳いで、僕はと言えば泳いではいないけれどユノさんと運動のようなもの、をして…つまり、思い出しただけで顔から火を噴いてしまいそうなのだけどプールのなかで抱かれたベッドの上では何度も何度もユノさんに抱かれている男同士、しかも抱かれるだなんて勿論ユノさんが初めてだけれど、何度も抱かれる内に身体は慣れたし、心はどんどんユノさんへと惹かれていくなんて事は今は置いておいて、ベッドでは慣れた筈の行為も、運動不足の僕にはプールのなかで行うと、その後はなかなかの疲労感に襲われた勿論、僕にとっては好きなひとと触れ合う事だから幸せだけど、ユノさんはどんな気持ちなんだろうってふと思う「もうそろそろ食事の準備をした方が良いですよね」「ん?まだフロントに頼んだ調理器具も届いていないのに」「でも、下準備なら何か出来るかなあと思って…」広いベッドにふたり並んで腰掛けている広い広い、VIPスイートルーム勿論ソファだって木製の重厚な椅子だってあるなのに、僕達はベッドに座って、目の前に小さなサイドテーブルを置いて、その上でユノさんは僕の淹れたカフェオレを僕はユノさんの淹れてくれたコーヒーを飲みながら、ユノさんがヘタを取って皿に入れてくれた苺を摘んでいる「チャンミン、疲れているんだろ?」「…いえ、そんな…」大切に大切に飲んでいるのだけど、もう後僅かでユノさんが僕の為に淹れてくれたコーヒーは無くなってしまうそれが何だかとても寂しいと思っているなんて僕の気持ちはきっとユノさんは想像すらしていないのだろうなあと思う勿論、それは当たり前の事「本当に?顔が疲れているし…やっぱり、プールで少し激しくしたからじゃないか?」「ユノさんは疲れていませんか?」「なるべく時間が取れたらトレーニングをしているからだけど、心地好い疲れはあるよ身体は少し疲れもあるけど、何だか満たされている気もする」そう言って微笑むと、もう完全に冷めてしまったであろうカフェオレを啜ってふっと微笑む「苺、もっと食べないのか?」「食べて良いんですか?」「チャンミンの為にヘタを取ったから」と言う事は、僕に食べて欲しいという事なのだろうたまに見せるユノさんのこどものような部分それを見る度に、知る度に胸がぎゅっと苦しくなる「いただきます」手を伸ばして苺を取って、口に含む甘いだけでは無くて爽やかな酸味もある苺の瑞々しい果汁が口いっぱいに広がって心地好い何度も何度も考えている僕達はどんな関係に見られるのだろうユノさんは僕をどう思っているのだろう、と勿論そんな事、本来僕は考える必要すら無い事なのかもしれないだって、ユノさんはVIP客で、僕をそれなりに気に入ってくれて手元に置いてくれている男は『そういう対象』では無かったユノさんとそして僕も、だけど…きっと最初は好奇心で抱いてみたら、それなりに相性が良くて続いている僕にとってはユノさんに抱かれる事も仕事の内で…だから、セフレ、には当たらない筈でも、つまりはそういう事だと誰かが知れば思われるのかなあ、なんて思うと切なくなるユノさんはとても優しいだから勘違いしてしまいそうになる今だって、同じ男として分かるのは、欲が発散されればもう、例え相手が恋人であっても必要以上に触れる事が面倒になったりするものそれなのに、ユノさんはプールから出た時も今もずっと優しいこれはただ、デートだから甘い雰囲気なだけに違い無いのに「あ…暗くなって来ましたねもう少し部屋の電気を明るくした方が…」ついさっきまで夕焼けの赤が部屋を覆っていたのに、あっという間に窓の外は暗がりになった街を照らす太陽の代わりに、高層ビルや近隣ホテルの明かりがきらきらと輝いている「明かりは今はこのままで良いよちゃんとチャンミンの顔も見えるし、このくらいも落ち着くから」「…そうですか?じゃあ、調理器具が届いたら…」ユノさんと居ると時間が分からなくなるだって、幸せな時間はあっという間に過ぎていくから、感覚が狂ってしまいそうになるのだでも、今は自分の感覚がそれなりに合っている気がする だって、ユノさんがフロントに連絡をして…つまり、僕がメモに書いた必要な調理器具達を持って来てもらうようにお願いをしてから、かれこれ十五分以上は経っている気がするから「あの…少し遅いので、僕からもう一度連絡してみましょうか」「ん?何が?」「調理器具です色々と頼んでしまったので、もしかしたら準備をしているのかもしれませんが、通常こんなに時間は掛からない筈で…」厨房は僕の担当では無い飽くまでも僕は客室係だからけれども、部屋で待つお客様の元へ出来る限り迅速に運ぶ事は当たり前だし、それが何かしらの理由で遅れるのであれば、その旨を伝えるべき「チャンミン」「はい」「今日はオフだろ?だから気にしなくて良いそれに、疲れているんだから、少しゆっくりすれば良いよ」明かりを絞った広い部屋のなか僕達の声だけがすうっと広がる外を見れば沢山の街明かりがあるそのひとつひとつのなかに、きっと誰かが居る勿論このホテルのなかにだってそれなのに、まるでこの世界にユノさんとふたりきりしか居ないような錯覚勿論それは僕の願望で希望、なだけだと分かってはいるけれど「カフェオレ、美味しかったよ…ありがとう」ユノさんは、大きめのマグカップのなかのカフェオレを飲み干して、テーブルにかたん、と小さな音を立てながらカップを置いた僕も真似をするように、コーヒーカップをもう一度手に取って…残しておいた最後のひと口、を口に含んでからゆっくりとカップをサイドテーブルの上に置いた「僕も、美味しかったですありがとうございます」「ただ、スイッチを押しただけだから恥ずかしいけどでも、そう言ってもらえて嬉しいよ」その言葉に、また、僕の方が嬉しくなる事なんてきっとユノさんは知らないただ隣に居るから触れているだけなのかもしれないけれども、僕の背中に伸びた彼の大きな手が背中を優しく擦り、そのまま肩を抱き寄せるように触れるそれが、泣けるくらい幸せで胸が熱くなる事も、きっとユノさんは知らない「……」言葉にならない好きで、愛おしくて、今が永遠になれば良いのにと思うまだこれから、料理を作ってユノさんと食べて…夜はもう一度プールに足を運んで、そこからの夜景を見よう、という話もしているだけど、ただ黙って肩を抱かれて、ユノさんの逞しい胸に頬を寄せるそうして座っているだけで、他には何も要らないと思う程「いつも、俺に付き合ってくれてありがとう」「…ユノさんの傍に居られて幸せです……ユノさんは僕の、憧れのひとなので」仕事だから傍に居るのに仕事で無ければ傍に居る事なんて許されないひとなのに住む世界も生きる世界も違うのにそれなのに、不意にありがとうだなんて言うから、本音が漏れてしまったそれでも、『好き』と口走らなかった事は…少し頭がぼんやりして来た僕なのに我ながら良くやった、と思う「チャンミン…眠たい?」「…そんな事…」ユノさんの言葉が何処か遠くで聞こえるような気がする僕を抱き寄せる腕が、衣服越しに触れる胸があたたかいユノさんの服を着ているから、全身大好きなひとに包まれているようで、幸せで涙が込み上げてくる「寝て良いよ」「…ん……」頭では、眠っては駄目だと分かっているだけど、優しい声が、あたたかな体温が、今何よりも落ち着く彼の匂いがそして、プールのなかで体力を消耗した所為で瞼が重い「…起きなきゃ…」「良い、このままで」「…ん…っ…」瞼に温もりが触れて、それが唇なのかもしれない、とぼんやり理解をして…そこで初めて、もう僕の目を閉じてしまっている事に気が付いた「チャンミンの寝顔を見るのも好きなんだだから、沢山見せて」僕の寝顔だなんて、絶対に良いものでは無いそう、一応思ってはいるのに、やっぱりこの声を聞くともう駄目で…ああ、もうユノさんの声も聞こえなくなってしまった『うわ、何だよこれ物凄く格好良い…』それは、何気無く見ていたインターネット配信の映画を観ていた時の事作品自体は、まあ正直B級といった感じ…なんて、これは僕の好みの問題なのだけど最後まで観る事も無いか、なんて思っていた時に主人公…では無くて、脇役の男性が身に付けていた服それが、僕の心を一目で奪ってしまった一見クラシカルでシンプルなニットとジャケットなのだけど、良く見ると細かな所に遊び心があるし…何よりも、普段仕事でスーツを着て、そして数多くのセレブやVIP客達を見ているから分かった事があったそれはつまり、その脇役の男性の着ていた服は、身に付けるひとに寄り添う服だという事服は、勿論見ているだけでも存在するけれど、身に付けて始めて役に立つもの、とも言えるそして、その服は脇役の男性を同じ画面に映る主役よりも…そのシーンでは際立たせていたのだ『なんてブランドなんだろう…』作品名や俳優の名前でインターネット検索をしたB級映画だったからか、直ぐにはヒットしなかったのだけど…『「JYH」…え、しかも韓国人デザイナー?めちゃくちゃイケメンだし』当時もう、有名になりつつあったブランドそして、調べればユノさんの顔も出てくるし、これまでのコレクションを見る事も出来たし…流石に良いものだけあって、庶民の僕にとっては簡単に手が出る値段では無かったけれども、初めてユノさんの作り出す服を手にした時に、自分の感覚は間違っていなかったのだと気付いて益々夢中になった「…好き…」ユノさんの作り出す服が、彼の世界がそして、今はそれらを創り出すユノさんの事も「次は何を買おう…」最新コレクションを思い出したら頬が緩んでしまう夏物は、秋冬物よりも手が届く価格になるから、選択肢も増えるし、何枚か買えるなんて思うだけで幸せで…「……ふう……っん…?」幸せで、ごろん、と寝返りをしようとしたのだけど、何故か動けないその違和感に初めて此処は一体何処だろう、と思った僕は映画を見ていた筈それは僕の狭いマンションの部屋で、あの時僕はベッドに寝そべってはいなかったそもそも、あれは過去の思い出で、僕は今…「…っ…!」「あはは、こんなに可愛い寝起きは初めて見たよ」「…ユノ、さん……」僕は確かにベッドに横になっていただけど、此処はそう、勿論僕の部屋では無くてユノさんが一ヶ月宿泊中の…僕が副支配人として勤務する高級ホテルの最上階のVIPスイートルームそして、横向きになって身体を横たえている僕の真正面には向かい合うように横になって、肘をついて僕を見て微笑むユノさんの姿「あの、さっきから僕に触れてましたか?」「ああチャンミンが目を覚ます直前に、寝返りをして向こうに身体を向けようとするから背中を押さえたんだけど…それで起こしてしまったかな」「ごめんね」と言いながら、僕の背中を優しく擦るまるで恋人同士のような雰囲気に心臓は起きたばかりなのに、まるで全力疾走をした後のように速い「あの、僕どのくらい眠って…」「三十分くらいだよ、全然問題無いそれより…」「…え…」上半身を起き上がらせようとしたら、ユノさんの手が背中から離れたそれで良いのに、寂しい、なんて思ってしまった確か、ユノさんは『寝て良いよ』と言っていて…だから、眠ってしまった事は謝らなくても良いのかもしれないそれに、問題無いと言ってくれているしいや、だけどやっぱり僕はホテルマンで、幾らオフだとは言え今日はまだする事だってあるのにそう思って頭をぶんぶんと振って完全に目を覚まそうとしたそうしたら「チャンミン」と、どこか真剣な声「あ…はい、何でしょう眠るつもりでは無かったのに…申し訳無いです」ベッドの上で座ってユノさんを見つめたら、彼も起き上がって僕の目の前に片膝を立てて座ったそして…「ずっと、寝顔を見ていたんだ」「…はい」「それから…今さっき、チャンミンが『好き』って…寝言なんだろうけど」「え…っあ、え、嘘、僕声に出していたんですか?」それは、ユノさんの服、そしてユノさんへの想いだまさか声に出しているだなんて思っていなかったから恥ずかしくて右手で口を押さえたそうしたら、ユノさんは薄暗い部屋のなかで、僕達ふたりだけのしんと静まり返った広いベッドの上で僕だけを真っ直ぐに見つめた真剣な目をするから、口から手を離して正座をした腿の上に両手を置いて肩に力を入れたもしかしたら、僕は思い切りユノさんの名前を呼んでいたのだろうかどう思われてしまったのだろうか考えると怖くて震えてしまいそう視線を逸らしたいけれど、ユノさんの視線に射抜かれてそれすら出来ない少しだけ顎を引いて彼を上目遣いに見ていたら、ユノさんはふう、と息を吐いて語り出した「何か夢を見ていたんだろ?でも…その前からチャンミンの寝顔を見て色々な事を考えていたそれで思った事があって…」「え…」「チャンミンの言葉を聞いて、確信したんだ」そんな訳無いって思っていたこれはもしかしたら夢の続きなのかもしれない、ともだけど、ゆっくりと伸びたユノさんの両手が、僕が腿の上に置いている両手をそっと握るその手は確かにあたたかくて夢じゃあ無いのだと分かる「チャンミンの事が好きだチャンミンはホテルの従業員なのに…仕事で俺の相手をしてくれているのにさっきの『好き』は寝言で、俺じゃあ無いって分かっているのに…どうしようも無いくらいに好きだ」ずっと、ユノさんは何を思っているのだろう、と思っていたけれども、以前に『特別だけどそれ以上は分からない』そんな風に言われていたから…それだけでも充分過ぎるくらい幸せで、それ以上を望む事なんていけないと思っていた「…信じられない…」「…嫌?」「…だって、違う…僕はずっと……」好きだって、ずっとずっと口にしてはいけないと押し止めてきただから言葉にならないのでは無くて…気持ちが溢れてしまったから言葉が紡げなくなってしまったそんな情けない僕を優しい目で見るユノさんの手が上に伸びて、真正面から強く強く抱き締められた耳元で囁かれる「チャンミンが好きだ」その言葉に、ただ涙が溢れて頷く事しか出来なかった眠ってしまう前、今が永遠になれば良いのに、と思ったでも、やっぱり今が良いだって、別れは確実にやって来るのだからランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村

  • 01May
    • 望みの彼方 4 最終話

      特別な場所はきっと、誰にだって存在している僕にだって勿論そうで、三十年以上生きてきて色々な思い出や記憶と共に心のなかへと焼き付いている場所が幾つもある昔、家族で訪れた場所だったり、美しい景色に感動した場所初めて立ったステージに思い出深い仕事の場所もう訪れる必要は無くて、思い出のなかでのみ存在して、その時のままであれば良いという場所もあるだけど、苦しい想いを抱えながら、僕をそんな風に苦しくさせた…なんて、つまりは勝手な片想いをしていただけなのだけどそんな片想いの相手と訪れて、そして叶う筈なんて無いと思っていたのに想いが通じて恋人になってからひとりで二度目の訪問を果たした場所そんな、苦い思い出やどこか切ない思い出が詰まった美しい場所は僕のなかの特別の、更に特別な場所で…その場所に、片想いをしてから恋人になったひと、つまりユノヒョンと一緒に訪れて、今の気持ちで美しい湖を、この街を眺められたら良いのにと思っていた考えてみればただの我儘だ美しく心に残る風景を、初めて訪れた片想いの頃とは違う気持ちで愛するひとと分かち合いたかった、なんてだって、あの頃はただの僕の片想いで、ユノヒョンからすれば僕はただのメンバーで弟のような存在だったのに恋人になっても言えなかった我儘な本音言えないままで閉じ込める事すら出来ずにインスタグラムにだけ残した本音それをユノヒョンは覚えていて、僕をこの特別な場所、コモ湖へと連れて来てくれた「ユノヒョンって凄いですよね」「何が?抽象的で分からないよ」「だって、僕はただ、伝えられない言葉をインスタグラムに書いて残しただけなのに他の場所じゃあ無くって、一度も訪れた事の無い場所でも無くて、僕がずっとヒョンと訪れたいと勝手に思っていただけのコモを旅先に選ぶだなんて…凄いです」湖のほとりの小さな木造の駅から『フニコラーレ』と呼ばれるケーブルカーに乗って小さな山をゆっくりと登っているこの山は、旅行が決まってから下調べをしていたからちゃんと名前を知っているコモを見下ろす事の出来る、ブルナーテ山だいつもと同じ左隣…じゃあ、無くて右隣に座るユノヒョンを見たら、彼は少し思案するような顔をしてから口を開いた「勿論、チャンミナがそこまで考えていてくれたなんて…此処で聞くまで分かっていなかっただけど、あんな風にSNSに書き残すだなんて、意味のある事だとずっと思って…だから言っただろ?俺もずっと、またふたりで来たいと思っていまって」「…うん」「それに、俺が充分過ぎるくらい、チャンミナに対して独占欲でいっぱいだって事も分かっただろ?」そう言うと、ユノヒョンは右側に一瞬だけ視線を動かした「…ただ挨拶をされただけだと思いますが…」「だったら、俺達ふたり、に声を掛けるだろ?一緒に居るんだからあの男はチャンミナしか見ていなかったし、夜に会おうだなんて…あわよくば誘おうとまでした俺達が恋人だって分かっていなかったのか、知っていて誘ったのかは分からないけれど、チャンミナは俺だけの恋人なんだから」僕の右側にユノヒョン、そしてその右側にはローマからコモへと旅行にひとりで旅行にやって来ているのだというイタリア人男性ケーブルカーに乗る為に並んでいたら、イタリア語で話し掛けられたあたふたしていたら、簡単な英語で『ひとりだから気楽で良いけど、ローマからは五時間も掛かったから寂しくて』『案内するし夜に食事でも行かないか?』と、多分僕に向けて言われた誘いは有難いけれど、と断ろうとしたのだけど、その前にユノヒョンが断ってくれたその後、乗り込んだこのケーブルカーで…多分、それは並び順で席に腰掛けたから、なのだけど僕の右隣にその男性が腰掛けたから、ユノヒョンは『場所を交代しよう』と僕に言って、いつもは左側に居るヒョンが、今は右側に居るのだ「…独占欲、嬉しいです、でも我儘を言っても良いですか?」多分、この旅が始まる前なら言えなかった事コモに辿り着いた昨夜だったらまだ言えなかったであろう事「何?」「…ユノヒョンが断ってくれて、嬉しかったですでも、『俺の恋人だから』って言ってくれたらもっと嬉しかったです…なんて」「……」ケーブルカーのなかには何人ものひとが居るだけど、アジア人は僕達だけ韓国語で話していれば誰も分からないだろうし、そもそも此処には僕達を知るひとも誰も居ないそれでも素直になれなかった僕だけれど、ユノヒョンとコモを眺めながら沢山話が出来たから…遅かったかもしれないけれど、普段ならば漸く閉じ込めていたであろう気持ちを音に出来たとは言え、無言で僕を見ているから、やっぱり流石に我儘だし言い過ぎた、と焦った「冗談です、本気にしないでください」笑って窓の外を眺めたつい数分前までは湖の傍に居たのに、もう湖は遥か下にある花々はまだ咲き誇る前だけれど、新緑の緑と湖の青、それらを輝かせる太陽の光がとても美しいケーブルカーは更に速度を落として、山の頂上付近、地上約七百五十メートルの駅へと到着しようとしている「もう着きますね」降りる準備をしよう、と膝の上に置いていたバックパックに手を掛けたところでユノヒョンの手が右側から伸びて、僕の手に重ねられた「…ユノヒョン?」「…言えば良かったやっぱり、咄嗟に英語で話すのはまだまだ…日本語のようにはいかないな」「本気で言ってますか?」「勿論、チャンミナは本気じゃあ無いの?」「…本気です」ユノヒョンの目が真剣で、嬉しくて擽ったいじっと見つめたら、彼は僕の手をぎゅっと握って「あいつが見ているかも」なんて言って笑った本当のところ、向こう側の彼が僕を『そういう意味』で誘ったのか、なんて分からないし僕達の勘違いであればとても恥ずかしいだけど、ユノヒョンの方を向いたらその向こう側のイタリア人男性が僕の方を向いて肩を竦めて…多分、少し残念そうな顔をしていたから、僕達が恋人関係だと伝わったのかも、と思った「…ユノヒョン、ちょっとゆっくり…」ケーブルカーを降りれば、本当の頂上まで距離にすればさほど無い…のだけど、勿論歩くと少し時間は掛かる、と聞いていた僕達はそれなりに普段から鍛えているし、山頂からの景色を見たかったから歩いていたのだけど…最近登山もしていないから、息が上がって足が張って来た情けないけれど、僕の前を歩く恋人に声を掛けたら、目の前の広い背中が振り向いて、僕を見て片眉を上げて微笑んだ「ごめん、少し早かったかな」「…ブーツだから歩き難くて…」お気に入りのサイドゴアブーツ慣れているし、本格的な登山では無いし、これで問題無いだろうと思って履いてきたこんな事ならユノヒョンと同じくスニーカーにすれば良かった格好付けて足を引っ張るだなんて情けない「ごめんなさい、遅くて」「謝るのは無しだって言ったろ?コモに来るのはチャンミナは三度目、俺は二度目だけど、此処に登るのは初めてだし何も知らないんだから時間はたっぷり有るし…多分後少しで頂上だしゆっくり登ろうか」きっと、スニーカーを履いていたってユノヒョンには追い付けないだろう何時だって、ヒョンに追い付きたくて、足でまといになりたくなくて必死でトレーニングを続けているそれでも体力やスタミナはなかなか追い付けない仕事では…昔はそれなりにしていたけれど、僕もおとなになったし言い訳はあまりしたくは無いでも、今はプライベートでユノヒョンは僕の恋人だから、伸ばされた手を繋いでゆっくりと歩き出した「ヒョンの体力はやっぱり凄いです」「あはは、さっきから『凄い』だらけだな俺からすればチャンミナも…俺には無い凄いものばかりなのにああでも…」「でも?」繋いだ手はお互いに汗ばんでいるなのにそれすら心地好い時おり擦れ違うひとも居るし、そのひと達が僕達をどう思うのか、なんて分からないでも、繋いだ手を離さないようにしっかりと握って一歩ずつ足を進めた「でも、『夜』は…俺の方がいつも体力が余ってしまって、チャンミナがダウンしてしまうから…ふたりで鍛えてもっと頑張ってみる?」「鍛えるってどうやって…」「実践あるのみ、かな」「…っ、ユノヒョン、もう…」恥ずかしいだけど、嬉しいそして…今までは嬉しい気持ちは出してはいけないし、出さないようにしていたんだけど…「そんなのは嫌?」「…嫌じゃ無い、今夜は沢山食べて体力を付けて、それから…沢山ユノヒョン…ユノが欲しい」「…どうしよう、めちゃくちゃ嬉しい」僕が珍しく、昼間からこんな本音を滲ませたから、だろうかそれは良くない事だと自制していたのに…僕の珍しい本音に、ユノヒョンも珍しく照れるような顔をして、左手で口元を押さえているふたりの気持ちが同じなら、幸せな気持ちも伝播してもっと大きくなるのかもしれない「チャンミナ、寒くは無い?下よりもやっぱり涼しいな」「ケーブルカーでかなり登ったから…でも、今は歩いたし日差しも有るから、少し暑いくらいです」昔ながらの、何処か懐かしさを感じる石畳の登り道木々が周囲に生い茂っていて、風が吹く度に新緑の匂いがする「外でこんな風に手を繋げるなんて夢みたいです」「夢じゃ無いよ」「…もう、ちゃんと分かっています到着してからも何度も夢かもって思っていましたが、今は…夢が叶って、夢のように幸せです」「俺も幸せだよ、凄く」優しい声が心に染み入るコモに来れた事が夢のようなのに違う、初めて仕事でコモにやって来た時は、隣に居るひとにひっそり抱いて悩んでいた想いそれなのに、こうしてそんな彼への想いが通じた事が彼の、ユノヒョンの傍に居られる事が傍に居る事に関しては仕事のパートナーだから当たり前だってひとは思うかもしれないだけど、当たり前の毎日は全部、一所懸命に生きる『今』の積み重ねで、そして僕にとっては夢のような今に繋がっているのだ「『コモに来るのがユノヒョンも一緒ならもっと良いのに』って書いたのは、直接伝える勇気が無かったからでも、ヒョンが僕の気持ちに気付いてくれて、こうして望みが叶いましただから、これからは僕がもっとユノヒョンの力になりたい」「…本音を話してくれた事が凄く嬉しいって知ってる?」「僕も、ユノヒョンの本音を聞けて物凄く嬉しいから分かります」握った手に力を込めて、いつも通り僕の左側を歩く恋人に笑った本当に欲しいものを欲しいと言えないだって、失敗する事が怖いからいつだって引き返せるようにひとつでも逃げ道を作っていれば、夢が、望みが叶わなくたって…欲しいものが手に入らなくたって自分に言い訳出来るからでも、僕にとってユノヒョンは絶対に失いたくないひと「ユノヒョン…」「ん?まだ早い?」僕の言葉に、少しだけ足を進めるペースが落とされた「もう、ブーツで登るのにも慣れて来たから大丈夫です」「うん、ブーツの所為だもんな」「…嘘です、それだけじゃあ無くて僕の体力が足りないから」山道にはペンションのような建物が点在しているけれども扉は閉まり柵がされていて、まだ観光シーズンでは無いから、なのかもしれない「チャンミナが着いて来てくれる事を信頼しているから、いつも前を歩いていられるんだよだから、これからも離れないでいて欲しい」「当たり前です、僕がどれだけユノヒョンの事を好きなのか、きっとヒョンはまだ知らないんです」目を見て言うのは恥ずかしいから、前に広がる美しい山の景色を見ている振りで呟いただけどその分触れていたくて、肩がぶつかるくらいに身体を寄せたら「歩き難いよ」なんて嬉しそうに言うから「良いんです」と、やっぱり耐えきれなくて愛おしいひとを見つめた足が張っていた筈だけど、手を繋いだらそんな事すら気にならなくなった気がする澄んだ綺麗な空気とそよぐ風、春の匂いが心地好い止まったら寒いくらいだけれど、歩いていたら、ユノヒョンの体温が伝わって来たらそれだけでじんわりと心もあたたかくなる一歩足を踏み出す度に肩が触れ合って、その度にお互いに顔を見合わせて笑うそうしていたらいつの間にか視界が開けて…「あ!灯台…やっと頂上ですね写真で見るよりも大きいし…綺麗です」大きく聳え立つ山頂の灯台を横目に、拓けた視界の先を見ると、下にはコモ湖やコモの街が広がっている向こう側には山も見えるし…「あっちはスイスらしい晴れていたら見えるって言っていたから…一番向こうの方はそうなのかも」「凄い、スイスまでは行けないですが、見る事は出来たって事ですよね」辺りを見渡すと、ひとは疎らそして、やはりその殆どが観光客のようで、ガイドブックを持っているひとが多い空いているから、灯台に昇って展望スペースから街と湖、その向こうのまた別の国の街や山を眺めたブルナーテ山は初めてだけど、見下ろしている景色、その場所へやって来たのは三度目仕事で来るのとは違うひとりで…いや、沢山のスタッフ達と来るのとも違うユノヒョンが居たって、片想いをしていた頃とも違う同じ場所なのに、どうして心が通い合った今ユノヒョンと一緒に同じ時を、同じ景色を共有するとこんなにも心が踊るのだろうそして、言葉に出来ないくらい綺麗だと思うのだろう「夏がシーズンらしいけど、今の方がひとも少ないし正解だな」「歩くのを止めるとやっぱり少し寒いから、ユノヒョンにくっつけます」ジャケットの袖を掴んで、額をヒョンの右肩に擦り寄せたそうしたら、掴んでいるのと反対の左手が伸びてきて、あっという間に抱き締められた「…っわ…」「チャンミナが素直になってくれるのは嬉しいけど…」「…駄目、ですか?」我慢するのはやめようと思ったいつも、気持ちの半分も伝える事が出来ていなかったから嫌われたくなくて、聞き分けの良い恋人でいたくて…でも、それで後悔をしたくは無い自分を、本音を曝け出す事は怖いでも、ユノヒョンの優しさにばかり頼る自分を変えたいそんな思いで、見つめてくる黒い、吸い込まれてしまいそうに美しい瞳に負けないように見つめ返したそんな僕にヒョンはふっと微笑む「駄目な訳無いむしろ、可愛過ぎてどうしたら良いか分からないよ」「可愛い、も良いけどそろそろ格好良い、が良いです」何時までも年下で追い付けない自分それが少し口惜しくて、頬を膨らませたそうしたら、ユノヒョンは瞬きをして困ったように微笑んだ「ステージの上のチャンミナは格好良いよまあ、それも可愛いと思うんだけど…でも、俺の前ではただ可愛い、どうしてかな」「あ…っ……ん…」直ぐ傍にはひとは居ないでも、此処は灯台の展望スペースで、下を歩くひと達に見られてしまう可能性だって有るのに「ごめん、我慢出来なかった」「…僕もキスしたかったので…」そう、恥ずかしさよりも勝る本音で返したら、もう一度柔らかな、そして少し乾燥した唇が僕の唇に重なったこんな風に、まるで普通の恋人として外で居られるなんて…「夢みたいです、でも夢じゃ無いから…またこうやって旅行が出来たら良いな」「じゃあ、その為にも仕事を頑張らないと…だな」優しく笑う恋人に「着いて行きます」そう答えたら「ありがとう」と出会った頃のままの少年のような笑顔で、けれどもあの頃よりも大きくなった掌で頭を撫ぜられた頂上をぐるりと回り、時間なんて気にせずにベンチに座り眼下に広がる雄大な景色を眺めたこんなにゆっくり出来た事自体が久しぶりで、それがユノヒョンとふたりである事が何よりも幸せ寄り添って座りながら、黙って景色を見たり時折iPhoneで写真を撮っていたら、左隣から視線を感じた「どうしましたか?」「チャンミナ、俺に言う事は?どうしてコモに俺と来たかったの?」「え…」急に真面目な顔で真っ直ぐに見つめられた「もう言いましたが…」「初めての時は俺に片想いをしていて、二度目は俺が居なかったから本当にそれだけ?」顔を近付けて、また唇が触れてしてしまいそうな距離キスされるのかと思って目を瞑ったけれど、それ以上は近付いて来ない「チャンミナ、ちゃんと話してくれないと…ホテルに帰ったら、今度こそ立てなくなるくらいに抱くけど良いの?」「……っだって…」「本音でぶつかってくれるんだろ?」ああ、もうまさか、『あんな事』を覚えているだなんて思ってもいなかったけれどもやはり、ユノヒョンの前では隠し事なんて出来ない僕がどれだけ隠していたって、きっと全部お見通し何も知らない振りで、本当は全部知っているのだと思った「…笑いませんか?」「勿論」顔に熱が集まるのが分かるだって、知らないし気にしていないと思ったインスタグラムのメッセージだって、気付かないと思っていたくらいなんだから小さく深呼吸をして、そしてユノヒョンの熱い視線から逃げるように俯いて口を開いた「ユノヒョンと初めて、写真集の仕事でコモに来た時に綺麗で胸を打たれて…次は、人生を共にするひとと来たいと思ったんですでも、それはあの頃の僕にとっても今の僕にとってもユノヒョンしか居なくて…」写真集を制作した時、インタビューで言ったのだ『次はコモ湖に結婚相手と来たい』と勿論、それが『誰』なのか、なんて言わなかったし、当時の僕はユノヒョンに片想いをしていただけで…だから、若い僕の思い付きのようにも取られるであろう言葉なんて、ユノヒョンが気にしていたり覚えているだなんて思ってもいなかっただけど、僕の告白にユノヒョンは驚く様子も無いそれはつまり…「知っていたんですか?」「あはは、何でそんなに驚いているの?当たり前だよチャンミナこそ、俺がその言葉を聞いた後凄く複雑で…それが嫉妬だって気付いた事なんて知らなかっただろ?」そっと、ふたりの間の手が繋がれた山頂の風に吹かれて冷えつつあったのだけど、触れるとそれだけで寒さなんて感じなくなるユノヒョンの言葉が一瞬理解出来なかったでも、触れ合うところから流れてくるあたたかさと一緒にじわじわと僕の頭に届いて…「ユノヒョンも、僕を好きだったんですか?」「チャンミナが自覚を持ったよりは後だと思うけど…自覚無しに…多分チャンミナより昔から、だと思う」「…本当に?夢じゃ無いんですか?」顎を引いて俯いたまま、視線だけ持ち上げるようにして見つめたらくすりと笑う「俺がどれだけチャンミナを愛しているかまだ伝わっていないみたいだから、ホテルに戻ったらちゃんと分かってもらわなきゃいけないみたいだな」「…っ嬉しいけど…動けなくなるのは困ります」「あはは、でも止まれなくなりそうだ」素直になれなかったら分からなかった事が沢山有る恥ずかしくても、勇気を出して伝える事でこんなにも幸せになれる「動けなくなったら、ユノが介抱してくれますか?」「勿論」「じゃあ…それでも良いです」深い青から少しずつ茜色へと変わっていく空何時の間にか時間は過ぎていて、人気も無くなってきたあと数十分もすれば薄暗くなってしまいそうだそうしたら、きっともう誰にも見られないから、大好きな恋人を思い切り抱き締めようと思ったふたりきりの旅片想いの苦い思い出もあったコモは、数え切れないくらい多くの幸せな記憶で塗り替えられたユノヒョンに沢山求められて、僕も同じくらい求めた幸せなだけじゃあ無くて恥ずかしい思いも沢山した数え切れないくらい『好きです』『愛しています』そう、薄れ行く意識のなかで言ったような気もする普段はなかなか呼べないけれど、いつもより多く『ユノ』と呼んだし、そんな僕の声を聞いたユノが嬉しそうに微笑む顔も沢山見たオフが終われば僕達を待っているのはいつも通りの日常僕達の関係は秘密で、それは僕達だけが知っていれば良い事でもあるけれども、オフが終わってからもこの幸せは続いたそれは、帰国してからのユノヒョンのインスタグラムへの投稿で…ブルナーテ山からコモ湖を見下ろして撮った一枚の写真そこに残された彼の言葉は『ウリチャンミニと一緒に来れて楽しかった』この投稿はあっという間にファンの方達の間で広まって、僕達の微笑ましいエピソードのひとつ、になったらしい僕の片想い、それにユノヒョンへの重たすぎる気持ちも知っているシウォニヒョンには、その後思い切り揶揄われたのだけど、幸せだから良いか、なんて思ってしまったユノヒョンとふたりで思い出の地を訪れる事次は、ユノヒョンと…僕が一生を共にしたいと思うひとと訪れてそんな本音を使える事それは、誰かからすれば小さな、なんて事の無い望みなのかもしれないでも、叶う筈が無いと思っていたものだそして、それはユノヒョンが動いてくれた事で叶った今度はまた新しい夢を見たいそして、それを叶える為に僕はもっと素直になりたいし、望むものの先にある景色を、ユノヒョンとふたりで見続けたいランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村現実からのもしも、のお話でした今は叶う事の無いものですが、自由に特別な場所へと行き来する事の出来る日が戻ってくる事を願っています短いお話の長い最終話でしたが、読んでくださった方がいらっしゃれば心から感謝致します初めてのコモ湖、の時のホミンちゃんも…幸せホミンちゃんにぽちっ♡にほんブログ村

    • sleeping beauty 中編

      確か、最初にあの夢を見たのは秋頃最初はぼんやりとした夢で、起きたらもう内容は忘れていた夢なんて、元々あまり見る方では無く何となく印象に残っていた二日に一度だった夢は、二週間経つ頃には毎日、になったそして、起きたらもう内容すら覚えていなかった夢は、その頃には現実の世界に目を覚ましても俺の頭のなかに残っていて起きても夢と現実を彷徨っているようだし、会いたくて仕方無いし…何より、夢のなかの俺が何度も何度も現実の俺に警告をしてくるから探していたのだけど、勿論本当に存在するかどうか、も分からない『彼女』を探す手立ても無ければ顔すら見えないその内に、悲しい夢を見る度に、俺はいつだって『そのふたり』つまり、夢のなかの俺と姿の殆ど見えない彼女を見ているだけなのに…夢のなかの俺の悲しみが伝わってくるようで、眠りは浅くて夜が怖くなった非現実的な夢の話は病院でも恥ずかしくて伝えられなかったけれども、夜中にあまり寝付けず、そして昼間の方が安心出来るからか、頑張って耐えても眠ってしまうのだと伝えたら、医師は『精神的なストレスから来る一時的な睡眠障害』と俺を診断した気持ちを落ち着ける薬や睡眠を助ける薬を極僅かに処方されたけれど、まだ高校生だし…何よりも俺自身が薬には頼りたく無くて、数日は飲んでみたけれど効果も見られなかったから、診断を元に学校へ配慮のみをお願いしただって、夢のなかの俺が言うんだ『いつか出会える』『その時に気持ちを伝えれば後悔は無くなる』『俺がユノに助けを求める未来は来ない』非現実的な事はあまり信じてはいないでも、インターネットで調べてみれば、例えば予知夢だとか、例えば未来からの警告だとか勿論それらが真実かどうかなんて分からないけれど、夢のなかで俺の目の前に現れる俺は、確かに俺つまり、見た目が同じだけの怪物や何か、では無くて…自分だから、確かに俺だと分かる「何て、そんな事は例え病院で話したって理解されないよなあ」「何が?不眠症の話?最近少しましになったって言っていたけど、やっぱり辛い?」「…っわ!びっくりした…」右肘をついて窓の方を向いて朝から考え込んでいたら、頭上から声が降ってきて顔を上げた驚いた俺に、声の主も驚いた顔をして、それからぷくっと頬を膨らませる「ひっくりしたって何だよ、まるで僕が気配を消したみたいにじゃ無くて、存在感が無いとか?」「そんな事言ってないよ、チャンミナ俺が考え事をしていて…だから気が付かなかっただけ、ごめんね」「…別に謝る事じゃあ無いし」なんて言いながら俺の右隣に座るだけどまだ少し頬は膨らんだまま高校三年生になった春、クラス替えをして新しい座席で…とは言え、俺は睡眠障害で日中、授業中でも眠ってしまう事があるから、もうずっとこうなってからは最後列の窓際なんだけどそんな俺の隣にやって来たのは、同じ高校に通っていても今まで出会った事の無かった男、シムチャンミン彼は、自らを『オタクだし社交的でも無いし』なんて卑下するけれど、とても良い奴だそして…「今日もチャンミナに会えて嬉しいよ、おはよう」「…おはよユノって凄いよね…そんな言葉でも嫌味も無いしさまになるんだから」「嫌味も何も本音なのに…チャンミナはこんな事を言われたら嫌?」「嫌じゃ無いけど、男同士だしなんかその…」「嫌じゃ無いなら良かった」ほっと胸を撫で下ろすように笑ったら、チャンミンの頬は元通りになって「変なの」なんて言う彼の照れ隠しだとは分かっているけれど、少しだけその言葉が胸に突き刺さるだって、自分でも今の…睡眠障害になってからの俺は『変』だと分かっているから「今は眠く無い?一時間目から小テストだし、なるべく起きていられたら良いね」「うん、最近は少し調子が良いから…多分大丈夫」そう、三年生になって、そしてシムチャンミンと出会った俺は不思議な夢に悩まされる日が少しだけ減ったのだそれは、彼が…「あれ、ここ……まじかよ、また夢?」もう慣れてしまった、眠っていてもまるで起きているように俺を、俺の身体も脳も…全てを落ち着かせてくれない夢の世界だ薄暗いし、何だか空気も重たいそして、必ず現れるのが…『…ミナ!俺はお前が…』遠くで聞こえる声と、そして…遠くても分かる、確かに俺の姿「俺は此処に居るのにな」なんて本気で思って悩む頃はもう過ぎた戸惑いや恐れは慣れに変わったし、慣れたからと言って良いものでは全く無いだけど、今は少しだけこの夢の出口が見えてきたのだそれは…『ユノは友達だろそれに、もう急がなきゃ…』向こう側に居る『俺』が掴んだ左手俺と同じブレザージャケットの袖から出ているのは俺よりも細く見える手首、そしてその手首にあるのは紺色のシンプルな時計夢でずっと見ていたのは、もうひとりの俺が『ミナ』という誰かを呼び止めるのと、それから紺色の腕時計をした細い手首そして、腕時計は女子らしい可愛らしいものでは無い、という事いつも夢のなかで、ミナ、と呼ばれている誰かは夢のなかの俺の元から逃げていくその誰かが何処へ行くのかも分からないし、そもそも俺には『ミナ』の姿も声も何も分からなかったそして、もうひとりの俺は、俺の元へとやって来て『俺のように後悔をしたく無ければ、出会えたらちゃんと捕まえて欲しい』なんて言うそれ以上、を聞いても『俺』は悲しげに、苦しげに首を降るだけだし…何の事なのかは分からないのに、俺まで目の前の、同じ姿の男の感情が乗り移ったように悲しく苦しくなるだけど、変わった事がひとつあるそれは、夢のなかの『ミナ』と同じ腕時計を付けているシムチャンミン…チャンミナと出会った事が切っ掛け名前、それに腕時計、それだけじゃあ無くて予感がしたそして、彼に出会った日の夜から、俺の夢のなかでは姿の見えなかった『ミナ』はシムチャンミンの姿として見えるようになったけれども結局…『そろそろだから、だからチャンミナを…』「チャンミナを?教えてくれよ……っ、…」目の前に居る『俺』に尋ねて腕を伸ばして触れた途端、世界は弾けてしまって…「…っ…!」「…ユノ…今丁度起こそうと思ったんだけど…」「え…あ、俺また眠って…」はっ、と夢から現実へと舞い戻り顔を上げたら、周りのクラスメイト達はそれぞれ話をしたり、立ち上がっていたり起きた俺に「おはよう、ユノ」なんて…こんな睡眠障害を抱える俺に普通に話し掛けてくれたり「一時間目が終わったから起こそうと思ってなんだけど…多分、何度か小さな超えて僕の名前を呼んでたよもしかして、僕の夢でも見てた?」「…嘘、本当に?」「そんな嘘吐いても仕方無いだろ、男同士なのに」寝起きだから…いや、あの夢を見たから頭はまだ重くて左手で額を押さえるようにして俯いたそうしたら、チャンミンは心配そうに俺を覗き込んできた「隣になったよしみだし、何かあれば…僕で良ければ聞くよ『授業中に眠っても怒られないなんて羨ましい』って言うやつも居るけど…今だって、ユノは寝たく無かったんだよね?早く『眠り姫』じゃ無くなると良いね」「チャンミナ…ありがとう」彼は、少しぶっきらぼうだし自分を卑下しがちだけど、本当はとても優しいし…男だけど、何だかとても、そう…今みたいに笑うと、身長があるのに小動物のようで可愛らしい「因みに…小テストって終わった…んだよな?」「…うんでも、小テストだし大丈夫だよ先生もそう言っていたから後は、今はここと…それから、ここまで進めたんだ」「え、メモして良い?」「ノート、後でコピーして渡すよ」チャンミンは、俺の睡眠障害を知っても、隣で眠っても優しく接してくれる…いや、殆どのやつらが皆そうなんだけど、何故かチャンミンだと特別に嬉しい彼とは何だか気が合うし、隣に居て心地好いだけど…夢のなかの俺が、彼とどんな関係なのか何を後悔してしまうのかそして…『チャンミナを掴まえて』と言われても、何をどう掴まえれば『俺』の後悔が無くなるのか何も、まだ分からない「チャンミナ」「何?」「何か困っている事とかって無い?」「…別に無いけど…そうだなあ、『姫』なんて呼ばれているユノが女子にモテるのに、僕はモテないそれくらいかな」「俺だって別にモテてる訳じゃ…いや、まあ…どうかなあ」だって、確かに告白される事はそれなりにあるだから素直にそう言ったら、チャンミンは唇を尖らせて「じゃあ彼女を作って、彼女にノートを見せてもらえば?」なんて言う「でも、好きな子は居ないし…それに、チャンミナの隣が心地好いんだ、凄く」「…変な事ばかり言ってたら皆に誤解されるだろ」「変じゃあ無いよ、本当だから」だって、チャンミンは出会う前から俺の夢に出てきたくらい、『夢のなかの俺』にとって特別なキーパーソンそして、夢のなかの俺がそうだから、なのか分からないけれど、何故かとても傍に居ると心地好いのだだからこそ、出会えたのに夢が…少し頻度は減ったけれど、相変わらず夢を見て、そして夢のなかの俺が夢のなかのチャンミナに逃げられて…そうして魘されてしまう事に溜息を吐いてしまうのだけど俺の夢のなかに登場する『ミナ』ことチャンミンと出会って約三週間相変わらず、学校では自然と隣に居る授業中は勿論、休憩時間も隣に居る事が多いチャンミンは『ユノが寝たら寝たで、休み時間なら僕はゲームをすれば良いし』『ひとりは少し寂しいし大勢は苦手なんだでも、ユノなら何だか落ち着くから』なんて言って、俺が起きていても眠っていても気にしないでいてくれるとは言え、学校でしか会う事は無いから、チャンミンの事を特別に知る事は出来ないし、『俺の後悔』の理由も分からないだけど…毎日のように夢に出てきて俺自身に警告するくらいなのだから、きっととても大きな事なのだろう「いや、本当にあれが現実で…俺の妄想や何かじゃ無ければ、だけど」例えば、自分の頭がおかしくなってしまったのだろうか、とも思った事があるつまり、幻覚だったり、何かの病気とかでも、家族も、どれだけ親しい友人も、それに今ならチャンミンも…皆、俺が眠ってしまう以外は何もおかしな事は無いと言うまあ、夜に眠っても疲れも取れないし眠りも浅くて起きても身体が重たくて…なんてだけで充分、健康とは言えないくらいだとは思うのだけどそして、元来の性格のお陰か周りの理解があるからか…いや、それに何より、こうして夢のなかだけの人物だと思っていたチャンミンに出会えたお陰で、病気や何かでは無くて、まるで何かの物語のように不思議な出来事なのではないか、と思えるようになった「だけど、女子だったら…ちょっと、どころかかなり運命的だったんだけどなあ」初めてやって来たチャンミンの家そのなかの彼の部屋でひとり座って呟いたチャンミナ、と夢のなかの俺はずっと呼んでいただけど、チャンミンに出会うまでは『ミナ』としか聞こえていなかったそれに、手首も細いし…相手は異性だと思っていたのだ「まあ、この方が現実って感じだよな本当に女子だったらまるで映画だし…」漫画やフィギュアが幾つもある部屋を見渡して呟いたら、気配を感じて振り返ったそうしたら…「…女子がどうしたの?」「…いつの間に戻って来ていたの?チャンミナ」「今だけど因みに、気配は消していないし存在感も薄くは無い筈だし…単に、扉を薄く開けたままだったから、気付かれ無かっただけじゃないかな」「…拗ねてる?」「拗ねてない、どうせ僕は地味だよ」ペットボトルの炭酸飲料を冷蔵庫から持ってきてくれたチャンミンは、俺に一本渡してから右側、斜向かいに座ってふい、と向こう側を向いてしまう「地味じゃ無いよ俺がぼうっとしていただけその、チャンミナの部屋に来るのは初めてだし、色々有るなあって思って」「…オタクだって思ってるんだろ」「そんな事無いよそれに、オタクだって良いし、俺も漫画が好きだよ」「本当?何が好き?」チャンミンは俺の言葉にぱっとこちらを振り向いて、大きな目を輝かせるくるくると変わる表情が可愛くて、つい頬が緩んでしまう「定番のやつくらいしか読まないから、チャンミナのおすすめが知りたいでも…漫画なんて読み出したら予習が出来なくなりそうだから、元気のある内に先に始めない?」「あ…そっか、そうだよね」チャンミンは恥ずかしそうに頬を赤くして、炭酸飲料を飲んだ彼の事を知りたくて、俺の悪夢を断ち切るヒントが欲しくて、『一緒に予習をしない?』と成績の良いチャンミンを誘った、というかお願いをして、彼の家にやって来た「両親は仕事でいつも遅くて帰ってもひとりだし、決まった友達しか部屋に呼ぶ事も無いから何だか緊張する」「友達って?」彼の部屋の床に直接置かれている四角いローテーブルそこに教科書やノートを広げながら尋ねたら、チャンミンははっと何かを思い出したような顔をして「キュヒョン!知ってるよね?」と言った「知ってる、二年生で同じだったから…って、チャンミナと仲が良いの?」「そう、僕の貴重な友達でね、今思い出したんだけど…三年生のクラス替え発表をふたりで見ていたんだ」「誰と?」「キュヒョンだよ」『友人』について語るチャンミンは、何だかとても嬉しそうだそれを見て、何故か胸がちくりとした「キュヒョンが僕の新しいクラスを見て言ったんだ『眠り姫が居る』って詳しい事はそれ以上聞かなくて…『姫』なんて言うから、てっきり女子だと思ってそうしたら、僕の隣だし、姫じゃ無くて…むしろ王子だし凄くびっくりしたんだ」「男でがっかりした?」「別に期待していた、とかじゃあ無いしそれに…ユノは良いやつだし、一緒に居て楽しい」ついこの間の事を思い出して、楽しそうに語るチャンミン良いやつ、楽しい、そう言われて嬉しいだけど、それよりもキュヒョンの事を話すチャンミンの顔が嬉しそうで、それが何だか嫌「予習、始めよう」「え、あ…ごめん…」何故かむかむかしてしまって、冷たくなってしまったチャンミンが戸惑っているのが分かるけれど、何よりも俺が…自分で自分が分からなくてフォローする事も出来なかったきっと、チャンミンと出会えたは良いけれど、これからどうすれば『俺の後悔』を無くせるのか、何も見えて来ないから焦りを感じているのかもしれない「明日はここから進めるから…」冷たくしてしまったのに、チャンミンの声は穏やかで心地好いたまに、右側をちらりと見たり、チャンミンに質問をしたり勉強をしていれば、その内に正体の分からないむかむかも無くなったから気持ちは落ち着いたのだけど…「…ユノ、…ユノ…」「……ん……」「あの、ごめん、起こさない方が良いとは思うんだけど…」ああ、これは夢だだけど、何も見えないそれに、チャンミンと出会ってからの夢のなかでも少し遠くでしか聞こえないチャンミンの声が、今はとても近くに聞こえる「あのね、その…ちょっと脚が…」「……ん……脚?」「そう、痺れそうで…」「……え…」姿は見えないだけど、会話が出来た夢のなかで、いつもチャンミナは遠くに居て、俺は彼と会話なんて出来ないなのに今は確かに会話になっていただけど、何かおかしいだって、いつもは感じない温もりを感じるし…「ユノ、ええと…起こしちゃったけど、起きたんだよね?」「……え、…っわ、え、ここ…っ」「…っ痛、っユノ、脚が痺れてるからゆっくり…」はっと瞼を持ち上げたら、視線の先には床何だかとても視界が低いそして、顔を動かしてみたら…「え…」「ユノ、お願い、今動かないでいや、もう退いて欲しいんだけど動いたら脚が痺れてるから…」見上げたら、そこにはチャンミンの顔そして、俺はと言えば…胡座をかいて座るチャンミンの上で横になって眠っていて、つまりこれは膝枕ってやつ、だあまりに驚いて、心臓は一気に飛び跳ねたいや、普通男同士なら気持ち悪いと思っても当たり前なのに「チャンミナ、その、どうしてこんな事に…」「…ユノが急に眠り出してそのまま僕の方にふらっと倒れるようにして…受け止めようとしたんだけど、僕が鈍臭かったのか、ユノがここに来て…そのまま起きないから、予習してた」「…どれくらい?」正直とても恥ずかしいけれども脚が痺れて動かないで欲しいと言われたから、チャンミンの方に顔を向けたまま尋ねた「…二十分…三十分くらい嫌な夢とか…大丈夫だった?魘されてはいなかったみたいだけど」「…全然、多分夢も何も見ていなくて…そっか、もっと寝ていたのかと思った何だか凄くすっきりしてる」「そっか、良かった…あ、ちょっとましになったかもあの、ゆっくり退いてもらっても良い?」チャンミンはそう言うと、ぐっと目を瞑って…多分、痺れに耐えようとしているようだその姿が、そんな仕草が可愛いそして…「…ゆっくり…こんな感じで大丈夫?」「…っん……大丈夫…」そうっと身体を浮かせたら、チャンミンはぴくっと瞼を震わせるそれにどきり、としてしまって、もっと彼の…まだ見た事の無い顔を見たいと思ってしまっただから、目を瞑る彼の膝から身体を浮かせて、そのままチャンミンの顔を覗き込むように近付けたそうしたら、ゆっくりと長い睫毛が動いて瞼が持ち上がって…「…っわあっ!」「あはは、驚き過ぎ」「ユノは寝起きなのに元気過ぎ」「だって、チャンミナの膝があまりに気持ち良くて」驚いて仰け反ったチャンミンは、脚が痺れたのかぎゅうっとまた目を瞑って固まっている「ごめん、でもありがとう」「不眠症なんて大変だと思うし…気にしないで」優しいチャンミンの気持ちが嬉しいなのに、それだけじゃあ無くて胸がざわつく「チャンミナ」「…何?」漸く痺れが落ち着いた様子のチャンミンは、ローテーブルの上のペットボトルを手に取って、ひと口飲んでふう、と息を吐いた「『眠り姫』が眠っているから、キスで起こしてくれたら良かったのに」勿論、これは冗談だだけど、何故か、本当にそうであれば良いのに、なんて思ってしまった俺はれっきとした男だし、見た目で言えばチャンミンの方が余っ程可愛いから、姫では居たくないけれど「…っ変な事言うなよ」だけど、冗談にしなければならない本音混じりの言葉を滲ませたら、チャンミンはあっという間に頬を赤く染めた「え…あ、ごめん…」上手い返しも面白い事も…『眠り姫』なんてあだ名を付けられてからはこんなやり取りにも慣れている筈なのに、何も言えなくなってしまった睡眠障害を直すヒント、『夢のなかの俺』の言う後悔を無くす為の行動、も何も分からないチャンミンを捕まえろ、なんて言われても…どう捕まえて良いのか、も分からない何も分からないままだけど、分かった事がひとつ俺は、彼に恋をしてしまったのかもしれない、という事ランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村

    • Fated 107

      彼への独占欲や支配欲アルファだからこそ、番になったからこそ強くなってしまうそれらは俺のなかの汚い部分だ理想の自分、つまり優しくて頼れる男だとかリーダーだとか、アルファだけれどアルファらしく無い、だとか…そんな自分で居たいのに、チャンミンと番になってからは益々彼への想い…いや、アルファとして愛するオメガを閉じ込めたいという気持ちが膨らんだけれども、そんな俺のなかの汚い部分を隠さなくても良いのだと分かったチャンミンがオメガであるという事を、切っ掛けはさておき公表してからそして項を噛んで番になってからは、何だかとてもしっかりとして今の自分自身を受け入れているように見えていたチャンミンけれども実は、世間にどう思われるかという怖さやこれからの事に対して不安を抱いて、それを必死に閉じ込めているのだと分かったからいや、そんな感情や様子を俺にも見せないようにしていたけれど、閉じ込めている事で心と身体が乖離してしまったように、彼のなかで溢れてしまって俺に『気付かせて』くれたからだから、俺もチャンミンへの独占欲や支配欲を顕にしたつまり、俺達はお互いの二次性、アルファとオメガの本能による理性的では無い部分を愛していて嫌われたく無いからこそ隠していたのだけど、そんなところすら同じだったと気付く事が出来たのだ「ガウンはクリーニングに出せば良いと思うんだけど…」「駄目です、何が付いているか知られたら恥ずかしくて…」「でも男だし、まあ…どうしても洗うなら俺がするよだって、俺の、が付いたんだから…」「…っ、や、良いです!」起きた瞬間は、とても甘い雰囲気だった昨夜は浴室で本能を剥き出しにするように抱き合って、眠る前にもベッドで話をしたお互いの本能や汚い部分だって、ふたりきりの時は隠さずにいようと話し合えたなのだけど、目を覚まして少ししたチャンミンは『まだ残ってる気がする』と視線を泳がせて耳まで赤く染めて慌てた様子で立ち上がりシャワーを浴びて着替えて洗面所に立って、そして今に至る、のだ「シャワーで残っていたのを掻き出したの?眠る前は『このまま僕のなかで混じり合えば良いのに』なんて言ってくれたのに…」「…っ、ユノヒョン!もう!今は朝です」「朝でも、ヒートの時や、この間のオフの間は時間なんて関係無く、だったろ?」昨夜、浴室で抱き合ってチャンミンの後ろに注いだモノを掻き出す事無く、そのままガウンだけ羽織らせて眠った多分、眠っている間に後ろから漏れて汚れるだろうけど、朝に洗えば良いかと話していたけれども、俺がそれをしようかと提案しても『恥ずかしいし嫌です』なんて言って断る、そんな理性を取り戻したチャンミンも愛おしい「兎に角、僕が着ていたガウンなので僕が洗います」「付いているのは俺の出したモノ、なのに?」恥ずかしがるチャンミンが可愛くて、斜め左後ろから覗き込むようにして尋ねたすると、彼は俺をじろりと…多分、恥ずかしさ故の表情で可愛く睨んで「オメガは濡れるんです、だから…」なんて、睨んでおいてもごもごと、普段以上に舌っ足らずに、そして早口で言ってまた前を向いてしまっただけど…「チャンミナ、顔を見られないようにしたつもりかもしれないけど、鏡に写っているから分かるよ」「…何がですか」「真っ赤になっているのがそれに、チャンミナの、も付いているなら、ガウンの上で混じり合ったって事だし嬉しいよ」「…ユノヒョンって変態です」「うん、お互い様だな」チャンミンは何だかとても乱暴にガウンを手洗いして、それを洗濯機に放り込んだ「次はちゃんと掻き出してから寝ますじゃなきゃ…朝起きた時に思い出して大変なので」「それって、抱かれたくなるって事?」「…ユノヒョンもオメガになれば分かります」チャンミンは手を洗ってからちらりと俺を見て少し悪戯っぽく言ったもしかしたら、そう言えば俺が何も言えないと思ったのかもしれないだけど…「チヤンミナのそんな言葉を聞けば抱きたくなるし…そうじゃ無くても抱きたくなるから、アルファでも分かるよ」「…抱かれたくなる、とは言ってないです」「あはは、そっか…でも分かるよ」洗って八割がた乾いた柔らかな髪の毛に指を入れて梳くようにしながら言ったら「今日のユノヒョンはいつもと違う」なんて、口を尖らせて言う「違わないよ、我慢していた本音を出しているだけだし、チャンミナもそうだろ?」一歩前を歩くチャンミンは、振り返らないままだけれど小さく頷いた首が隠れる長さの襟足から、昨夜また噛んだから痕が目立つ『番になった証』が見えた「昨夜のままなら、もう今日は…きっと、逃げ出してしまいたくなる程怖かっただけど、今は…怖いけど、やるしか無いって少しだけ思えます」「チャンミナ…」「本当は、もう何も怖く無い、なんて言えたら良いんですが…まだそこまで強くはなれないようです」振り返って、少し儚げに微笑むだけどやっぱり、俺からすればチャンミンは強い強い、と言うともしかしたら彼の負担になるのかもしれないでも…「俺の二次性が決まったのは、事務所に入る直前だチャンミナもそうだったろ?」「はい、それがどうかしましたか?」「俺はもう、アルファとして生きて十年以上経っているそれでもアルファで在る事に葛藤するし、ベータで在れば良かった、なんて思っていたチャンミナはオメガになってまだ数ヶ月だそれなのにこんなにも自分を分かっていて、受け入れようとしていて、それがやっぱり…チャンミナは凄いよ」「…受け入れなきゃ生きていけないですから」「だけど凄いよ、本当に、自慢の恋人だ」くしゃっと頭を撫ぜてから抱き寄せるようして抱き竦めたら、小さな手が俺の背中に伸びて「ユノヒョンが居なきゃ、ひとりじゃあ無理でした」と囁かれた「本当に?」「はいひとりで何も乗り越えられないなんて弱いなあとも思いますでも、ユノヒョンと僕は…多分、ふたりだから色々な事を乗り越えて来られました…よね?」「勿論」「だから、それを恥じる事も無いし…やっぱりユノヒョンは僕の運命です」「チャンミナ…」彼はずっと、俺に『運命のオメガ』が現れた事で心を痛めていたそうする事で何時誰か別のアルファに襲われて妊娠してしまうかも分からないのに、俺にも主治医にも黙ってピルの服用を止めて俺のこどもを妊娠して繋ぎ止めようと思う程にオメガに突然変異して、男である俺と恋人になったそれだけでも、そもそも男らしく在りたいと思っていたチャンミンからすればプライドが傷付いたり自分自身を否定されるような出来事だったと思うそれなのに、彼の口から、理性のある時に運命だと言ってもらえた「…ありがとう俺の運命もチャンミナだけだよ」「まあ、運命なんて言葉じゃあ陳腐なくらいですけど」ぐいっと俺の胸を押して笑うチャンミンはもう、外行きのチャンミンの姿ても、その顔を見れば彼が涙を堪えている事が分かった「配信、俺は参加出来ないみたいだけど…見ているのは許してくれる?」「…はい、勿論頑張るので、見ていて欲しいです」強く在ろうとするチャンミンをもう一度抱き締めた触れれば触れる程本能が前へと顔を出してくるだけど、お互いに理性でそれを押しとどめて、身支度を整えたそして…「チャンミナ」「え、何か忘れ物でも有りましたか?」ふたりで部屋を出る時、玄関の扉を開けようとする俺の番を後ろから呼び止めた扉に右手を置いたまま振り返るチャンミンにキスをして、そしてそのままくるりと跳ねる襟足を右手で掻き分けて俺達を繋ぐ印にもキスをした「今日のチャンミナのナカには俺が溶け込んでいるし、大丈夫」「…だからもうそれは…」「あはは、でもこのくらいの方が良いだろ?」勿論、分かっている今日はチャンミンがリアルタイムで配信を行う内容は、彼自身の口からオメガになった事や今の事、これからの事について語るもので、これによって、俺達を…チャンミンを見る世間やファンの目はまた変わるかもしれないこの先に予定しているコンサートのチケットの売れ生きは勿論、コンサート自体もどんな反応が出るのか分からないチャンミンはどれだけ『大丈夫』と言っても、きっととてつも無く大きなプレッシャーを感じているだろうだからこそ、こんな時こそ俺が大丈夫だって言ってやりたいそれだけしか出来ない事がもどかしくて仕方無いけれどもう、部屋を出たら不用意に触れる事は控えなければならないだから、もう一度指先で少し隆起した番の印、つまり噛み痕をなぞってから笑い掛けた「大丈夫、ユノヒョンが居ればだって、もしも世界中が敵になったって、ユノヒョンと僕は運命共同体なので」「うん、勿論」「…ちょっとは『重い』とか『それは流石に…』とか言ってくださいよ」「言う訳無いよ、本当にそう思っているんだからチャンミナもだろ?」もう、扉を開けたチャンミンに後ろから語り掛けたエレベーターに乗り込んだ時にちらりと彼を見たら、長い睫毛に縁取られた大きな瞳が少し潤んでいた配信は夕方それまではもう、ひたすら打ち合わせ何を言っては良くて、何は言ってはいけないか、だったり…この事については語ってこの事については語らないなんて事を、俺とチャンミン、マネージャーと事務所の上層部の人間、そしてチャンミンをインタビューする事になる女性と共に話し合ったインタビュー担当の女性だけは俺とチャンミンが番になった事は知らないけれども、チャンミンが『アルファと番になった』という事だけは伝えたそして…「僕は、誰か、と番になったという事も公表したいですそうで無いと…例えばファンや一般の方々に芸能界のアルファ達と何か有るのではと思われたり、妙な心配をされたり…自分だけでは無くアルファの方達を巻き込む事もしたくはありません」「そうだな、それは俺達もここ数日ずっと考えているよ」マネージャーはチャンミンの言葉に頷いた曰く、勿論そうなのだけど…俺達はそもそもアイドルだつまり、ファンの多くは女性で、俺達を疑似恋愛のような目で見ているファンだって少なくは無い、筈そして、そうで無くてもアイドルの恋愛沙汰は小さな問題では済まないのが常チャンミンに番の相手、つまり男女どちらかのアルファが存在するという事はファンにとっても世間からしても通常…今までの常識であれば有り得ない事けれども、アルファが殆どである芸能界のなかでオメガになったと告白した事で、世間ではチャンミンの身を案じる声も少なからず上がっているらしいそれは勿論、ファンの間でも「勿論、ふたりも知っているだろうけど…チャンミンがオメガだという事で、男性として見辛いと言う声もある」「…そう、ですよねだってオメガは妊娠出産が出来るので」「チャンミナ…」マネージャーの言葉に項垂れるチャンミンの背中を擦った勿論、メンバーとして、仕事のパートナーとしてそして、仕事のパートナーで誰よりもチャンミンを見てきたからこそ言える事がある「チャンミナは本当に男らしいですよアルファの俺が驚くくらいに肝が座っているし…オメガになってからまた更に頼り甲斐のある男になりましただから…チャンミナのこれから、を見て頂ければ伝わる事もあると思います」俺がどこまで何を発言すれば正解なのか、は分からないけれども俺達は番だし…その前に、長年ふたりで仕事をして来た唯一無二のパートナーだそんな俺に、斜め前に座るマネージャーは頷いて口を開いた「分かっているよ色々な意見を見た上で、そしてチャンミン自身の意見も聞いて…ユノもそれで良いと言うのなら、事務所としてもチャンミンに番が居る事は公表して然るべきだと思っている」「マネージャー、本当ですか?」「ああ、勿論それで、どんな形であれ恋人のような存在が居る事で離れてしまうファンも…防ぎ切れないだろうだけど、オメガが芸能界に居るならばそれが一番安心だ俺達はふたりをサポートし続けると決めただから、公表した上でこれから進んで行こう」マネージャーは俺達を真っ直ぐに見てそう言ったその左右で事務所の立場のある人間達はあまり表情を動かす事無く俺達を見ているそれは、もしかしたらやはり…公表する事もひとつの戦略で、オメガを雇い区別や差別する事無く働かせるというロールモデルを作ったりだとか…他の事務所とは違う、だとか、新しいアイドルの形を魅せる為、なのかもしれないだけど、それでも俺達が変わらずに舞台に立ち続ける事が出来るなら良い「チャンミナ、それで大丈夫か?」「…怖いですが、そうしたいと思ったので…」「そうか、俺も同じ気持ちだし…チャンミナが不器用でもちゃんと色々な事を大切にしている事は分かっているから」「…不器用、は余計です」チャンミンは唇を尖らせて俺をじとりと見た俺達は事務所に試されているのかもしれないだけど、それでも良いこれが俺達が自ら選んだ運命だからそして…「チャンミンさん、物凄く綺麗に仕上がりましたよ」「え、本当に?」配信に向けてヘアメイクを施されるチャンミンとは別室で書類仕事をしていた勿論ずっと気にはなっていたのだけど…そうしたら、スタッフが俺を呼びに来てくれた彼の居る、少し離れた部屋へと向かっていたら、チャンミンも廊下の向こう側からこちらへと歩いて向かってきた「……チャンミナ…」「…!ユノヒョン」俺より後でこちらに気が付いた、俺のパートナーは右手を上げて大きく振る「どうですか?物凄く気合いを入れられてしまったんですが…」「…うん…信じられないくらい綺麗だこんなに綺麗なチャンミナを見たら、きっと誰も何も言えなくなるよ」「…綺麗になりたい訳じゃあ無いんですが…ユノヒョンに言われたら嬉しいです」流石に、廊下で抱き締める事は出来ないから、必死で堪える為に腕組みをしてチャンミンを見つめたずっと、チャンミンは嫌がっていたけれど、チャンミンの今の…性別すら凌駕した美しさを存分に引き出す、丁寧に作り込まれたメイク決して派手では無いけれど、チャンミンの芯の強さも引き出されているようで、近寄り難いくらいだ「折角時間を掛けてメイクもしてもらったので、後は頑張るしか無いですよね」「うん、俺は見ているだけしか出来ないけど…」番になったのは俺だそして、チャンミンの仕事のパートナーは俺だだけど、今俺が前に出れば余計な誤解を産む事にも成りかねない俺の出番はきっと、もっと後で良い「ちゃんと見ているから」抱き締める事は出来ないだから、肩にそっと手を置いて言ったら、チャンミンは「ユノヒョンは今、僕のなかに溶け込んでいるから一緒ですだから大丈夫です」なんて、緊張で握った拳は震えているのに笑顔で告げたそんなチャンミンが誇らしくて、そして…やっぱり、誰よりも愛していると思ったランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村このお話は特殊設定のオメガバースです1話から読んで頂ければ分かるようになっていますが、詳しくはこちらにも説明を載せてあります ↓Fated 設定とお知らせ