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- 24Apr
Switching! 4
昨年度、つまり高校一年生を過ごした時と今では変わった事が幾つかある勿論、一番大きな事は転校して『ちょっとした手違い』から女の子の制服を着て女子として過ごしている事それだけでは無く、女子として過ごすには色々と気を付けなければならない事がある例えばトイレ本当は勿論男子トイレに入りたいだって、僕は男だからでも、学校では僕は女子…という事になっているだから、学校ではあまり水分を摂取しないようにして、どうしても…の時は、休憩時間に校舎の端の誰も利用しないような女子トイレの個室に駆け込む例えそれぞれ個室を利用するにしても、他の女子と一緒に、だなんて絶対に無理だからひとりでしか入らないもうひとつ、制服を着ているから何とか誤魔化せてはいても、裸や下着姿を誰かに見られたら男だと知られてしまうだから…海外の両親から学校に連絡をしてもらい、『シムチャンミンは身体が弱く、体育は全て見学で』という事になった実際は、体力には自信は無いし運動は苦手だけれど、健康だ両親に『女子の制服を着ていても誰にも男だと気付かれないし、言い出せなくなった』と伝えたら、『昔から間違えられる事があったし、それも良い人生経験なのでは?』なんて、流石と言うか…間違えて届いた女子の制服を着て登校してみれば良いと提案した僕の親だし、結局は自分で今のまま過ごす事を決めてしまったのだからひとの所為にはもう出来ない「まあ、その分ゆっくり自習が出来るし、体育は苦手だし」今日は午前中最後の授業がまさにその体育で、僕はと言えば図書室でひとり自習中特に監督の教師も居ないから自由、とは言えさぼったり出来ないそれは僕が真面目だから、では無くて…勿論真面目だけれど、何よりも目立ってしまって男だとばれたら大変だから「二週間女子として過ごして、今更本当の事なんて言えないよ」誰も居ない広いテーブルの前に座って溜息を吐いた勉強は特別に得意では無いけれど嫌いでも無い本を読む事は昔から好き孤独が好きな訳では無いけれど、大勢のなかでわいわいと過ごす事は少し苦手そんな僕には週に数回、図書室でこうして静かにひとりの時間を持てる事は有難い授業中だから、ほぼ誰かが入ってくる事も無いし、少しだけ気を抜く事も出来る「でも、午後の予習をしなきゃ昨日、料理に夢中になっていたから何も出来ていないし」図書室に並ぶ本達に惹かれてしまうでも、今は授業中体育を免除されただけでも有難い事だし…と言うか、流石に着替えを誰かに見られたらお終いだから、その分勉強を頑張って怪しまれないようにしなければならない教科書とノートを広げて、そこからは集中出来た午後の英語は、前に通っていた高校よりも少し進みが早くて、毎回予習をしないとついていけそうに無かったから、この時間があって少し心に余裕が持てた電子辞書も有るしスマホでも調べられるけれども、難しい単語と例文が出て来て訳がなかなか上手くいかない「辞書で見てみよ」両腕を上げて伸びをしてから立ち上がり図書室内で辞書を探す事にした先週も此処で自習していたけれど、まだ何処に何が有るか分からないからきょろきょろと辺りを見渡しながら棚を見ていたら…「声?」窓際の棚に近付いた時、外から声が聞こえた此処は二階で今は授業中僕達のクラスは体育館で授業中だ何だか楽しそうな声が聞こえて、少し…いや、かなり気になったでも、後少しで予習も何とか終わりそうこの後は昼休みだけれど、今日のお昼はユノオッパ…いや、ユノ先輩と一緒に食べる事になっているから勉強は出来ない「…あ、辞書!」窓の横の棚の一番上、探していた辞書があった右手を伸ばしてそれを取ったら、何だか埃臭いわざわざ図書室で辞書を引く生徒は少ないのかもしれない「…っ…!」少し咳込んでしまったから、辞書を右手に持ったまま、左手で目の前の窓を開けたまだ冷たさも残るけれど、春の匂いと気持ちの良い風が舞い込んできて心地良い「…良いお天気」図書室のなかの篭っていた空気も入れ替わっていくようで、少しだけ窓から顔を出して外を覗いてみたそうしたら…「…あ!…っ」声を出してしまって慌てて口を閉じた此処は二階だし、外のグラウンドに居る『そのひと』に気付かれる訳なんて無いでも、一瞬で見付けて、しかも笑顔になってしまった自分が恥ずかしがったのだ「…ユノ…ヒョン」普段は呼べない呼び名グラウンドでジャージを着て他の男子と笑い合っている姿を見下ろしながら、独り言のように呼んでみた彼のクラスもこの時間が体育ならば、また来週も自習中にこっそり見る事が出来るかもしれない運動は苦手だけれど、先輩の姿を見ていると楽しそうだし僕もあの場に居られたらなあ、なんてふと思ってしまう「寂しく無い筈なのに…」ひとりが気楽、なんてついさっき思ったばかりでも、静かな誰も居ない図書室にひとりで居るのが何だかとても孤独だって、グラウンドの先輩達はとても生き生きしているからせめてもう少しだけ先輩の笑顔を見て、お昼休みに会ったら『実はユノオッパの事が見えていました』なんて言ってみようかと思ったそうしたら…「わあっ!」びゅうっと風が吹いて、思わず目を瞑った外の空気が一気に図書室に流れ込んで制服のスカートがふわっと捲れたまだ慣れないその感覚に、慌てて振り返ったけれども風はもう止んだしスカートも元通りそもそも図書室には誰も居ないから気にしなくても良かったのだと思って前を向いたら…「…あ…」「チャンミン!」「どうして…あ、声が聞こえたのかな」グラウンドからこちらを見上げて手を振っていたのは、僕がこっそり見下ろしていた先輩目が合うと名前を呼んで笑っているから、思わずそれに釣られて左手を振ったなのだけど、先輩の周りのひと達までこちらを見上げて手を振って来たから、右手に持っていた辞書で顔を隠して窓に背を向けた「…びっくりした…」運動した訳でも無いのに、心臓がばくばくする反射的に手を振ってしまったけれど、僕が先に先輩を見ていた事を知られたらと思うと恥ずかしいし…授業中なのに盗み見していた、なんて思われてしまうかもしれない「……」授業中にメッセージを送信するのも駄目だとは分かっているけれど、『自習していたんですが、空気を入れ替えたくて窓を開けましたオッパの声が聞こえてびっくりしました』そうやって送信してから『お昼休み、楽しみにしています』もう一度だけメッセージを送信して、後は少し埃っぽい辞書を開いて予習を再開させた外に気を取られてしまったから思ったよりも時間が無くなって、後はもう一気に集中して教科書と辞書に向き合ったチャイムが鳴った時にはっと気が付いて窓の外を見たけれど、もう先輩達の姿は無かった「もう着替えに帰ったのかな」ほっとしたような、けれども残念なような気持ちまた直ぐに会う約束をしているのに僕も辞書を棚に戻して、教科書やノート、筆記用具を持って教室へと戻ったそうしたら…「シム!」「え…」三階の教室へ向かう途中の階段、後ろから声を掛けられて振り返ったら、見た事のある男子多分、隣のクラスで挨拶くらいはした事があった筈「何か用…?」「今、その…」階段の中腹で立ち止まったら、彼はこちらに駆け上がってきて僕の隣に立った声を掛けておいて俯くから「約束が有るから急いでいて…」と言ったら「待って」と声だけで引き止めるもしかして、僕の秘密に気付いたのだろうか、とひやりとして何も言えずにいたら、彼は顔を上げて僕の肩を両手で掴んできた「えっ、…」「シム、好きだ、一目惚れで…俺と付き合って欲しい」「…は?」「だから、好きなんだ急だって分かっているし…だから今からでも考えて意識して欲しい」僕は男で、つまり僕達は男同士でも多分…いや、絶対に、女の子だと思われているそれは今の僕にとって安心出来る事だけど、付き合える訳が無いし…「怖い、その、急に触られたら…」「え…っあ、ごめんでも考えて欲しい」「あの、私行かないと…ごめんなさい!」僕の言葉に手が離れたからほっとして、後はもうどうしたら良いか分からずに頭を下げて階段を必死で駆け昇った「…っはあ……怖いよ…」女の子に告白された事はあるでも、その時に『怖い』なんて思った事は無かった同性から女子だと思われて、そして迫られる事がこんなにも怖いと思わなかった息が上がる、先輩と目が合った時とはまた違う心臓の鼓動の速さ先輩に無性に会いたくなって、ブレザージャケットのポケットからスマホを取り出したら、メッセージの通知があった急いでアプリを確認したら『俺も、チャンミンの声がして驚いたんだ一目でも顔が見えて嬉しかった』なんて、文字だけでも優しさの伝わってくるメッセージ「…オッパ…」スタンプを返したら、直ぐにまた返事が来た「え、もう中庭に居るの?急がなきゃ」もう、さっきの男子の事は忘れて頭のなかは先輩でいっぱい急いで教室に入り、教科書を置いて、お弁当の入った鞄ごと持って中庭へと向かった「…ユノオッパ!お待たせしました」「チャンミン、急がなくても良いのに…でもありがとう」オッパが教えてくれた中庭のベンチに駆け足で向かった人気もあまり無くて、外だけど目立たないこれならゆっくり過ごせると思って右側に座った二週間で分かった事が幾つかあるそのひとつは、彼は左利きだという事だけどそれは食べる時で、物を書くのは右を主に使うらしい並んで立つと彼はいつも僕の左側に立つから、僕は自然と彼の自然にまわるようになった「図書室に居たんだろ?移動したら時間も掛かるだろうし…」会いたかったけれど、いざふたりきりになったら何だかとても恥ずかしくて、右側に置いた鞄から弁当を取り出した「いえ、時間はそんなに…そうじゃなくて、あ、そうそう!急に声を掛けられたんです、それで…」「え、声って?誰に?」「あ…」忘れていたついさっきの出来事それをふと思い出して言葉にしたのだけど、これは先輩に言わなくても良い事だと気が付いた「ええと、何でも無いです」「…チャンミンは俺に隠し事をするの?」俯いて視線を合わせないようにして弁当箱を開けようとしたら、顔を覗き込まれてしまった目が合ってしまったら逸らせないし『言えないです』とも言えなくて…「大した事じゃ無いです」「じゃあ教えて?誰かに声を掛けられて遅くなったんだろ?」いつも優しい先輩だけど、何だか今はとても強引で有無を言わさないような雰囲気それに飲まれてしまったし…そもそも、一応告白はされたけれど断って終わったのだから、隠す必要も無いか、と思った「隣のクラスの男子で…」「もしかして、告白?」「え、どうして分かるんですか?」何とか視線を逸らして話し出した瞬間に悟られて、思わず顔を上げたら、先輩は僕をじっと見て「やっぱり」とひと言「言っただろ?チャンミンはモテるんだよさっきだって、皆チャンミンを可愛いって言ってた」「手を振っていた先輩達、ですか?」「そう、だから…チャンミンは駄目って言ったんだ」「え…」『どうして僕は駄目なんですか?』そう聞こうとしたけれど、その前に、腿の上に置いた弁当箱を上から支える僕の手にゆっくりと大きな手が伸びて言葉を紡げなくなったどうして?そんなの、あまりに緊張してしまったから男同士なのに「手に触れても良い?」「…はい」僕の手の上にそうっと重なった先輩の手さっきから何だか、普段よりも強引だけど、触れる手はとても優しいついさっき、挨拶を交わした記憶しか無い男子に肩を触れられた時は、驚きと不快感や怖さばかりだったそれなのに、今は不思議な感覚「告白されて…どうしたの?」「…一目惚れって言われて…だけど、ちゃんと話した事も無いしそうじゃ無くても考えられないから、断りました」物凄く整った顔が近くにあるから恥ずかしくて、触れられた手を見下ろしながら答えたそうしたら、ほっと息を吐く音が聞こえた「良かった…」「…どうして、先輩が『良かった』って思うんですか?」僕は、女の子と付き合った事が無い女の子を好きになった事はあるけれど、告白する勇気も無いし…結局、密かに思っているだけ、の恋しか経験が無い告白は以前された事があるけれど、その子の事は好きにはなれなくて断った恋愛経験なんて乏しくて、目の前の彼に抱き始めている気持ちが正しく恋なのか、も分からないだって、先輩は…ユノオッパは僕を女の子だと思っているけれど、本当は男だからけれども、彼が僕を、多分、特別に思っていてくれている事はもう分かるし、彼はそれをこれまでに何度も言葉で伝えてくれているそして、僕はそれが嫌じゃ無い、どころか嬉しいと思ってしまっている「どうして…他の先輩が…私、を可愛いと言うと駄目なんですか?」ついさっき聞けなかった問いを、ゆっくりと言葉にした答えが無いから恐る恐る顔を上げたら、黒い瞳はじっと僕を見ていた「…先輩…」「オッパ、だろ」「オッパ…」「うん…やっぱりもう隠せないなチャンミンが好きだ先を越されたから告白したようで悔しいけど…俺の方がずっと、チャンミンを好きだよ」「……」一瞬で、頭が真っ白になってしまっただって、もしかして…いや、きっとそうだと思っていた彼が、優しいだけでは無くて僕に特別である事を分かっていたけれども、目を見つめられて言葉を紡がれると、頭は真っ白だし、胸はもう…「あの、手を離してください…」「え…あ、ごめん」ゆっくりと離れていく手そうしたら今度は寂しいって思ってしまった僕から離してと言ったのにだけど、そうでもしないと苦しい程に高鳴る胸をどうしようも無いから「……っ…」空いた両手で胸を押さえた何だか目頭が熱くて、こんな気持ちは初めて彼は僕を女の子だと思って好きだと言ってくれているでも僕は男だから、本当はきっと断らなきゃいけない「チャンミン、どうしたの?ごめん、嫌だったかな…」隣で気配が動いて、僕の前に影が出来る腕が伸びて…だけど、触れて来ないのは、きっと『女の子』の僕に気を遣っているからでも…「チャンミン…」「嫌じゃ無い、ですそうじゃ無くて、胸が苦しくて…」同じ気持ちだと分かったのに彼の言葉で、この気持ちが恋だと確信したのにそれなのに、止める事も蓋をする事も出来なかった優しいオッパが好きで、もっと僕を見て欲しくて、特別になりたくて…「チャンミン、それって…」「僕も…違う、私も…ユノオッパが好きです」「…っ、…僕、なんて言うチャンミンも全部好きだよ」「わっ!お弁当が…!」躊躇っていた腕が伸びて抱き締められて、腿の上のお弁当がぐらついた僕のそんな声に、彼は慌てた様子で腕を離して「落ちなくて良かった」と少し恥ずかしそうに含羞む「俺と付き合ってくれますか?」もう一度手が伸びて、僕の左手が大きなふたつの手に優しく包まれたまるで、姫をエスコートする王子のようだ彼の立場に憧れなきゃいけないのに、僕はと言えばもう…引き返す事も出来ないくらい、好きになってしまっているようだ「…はい、宜しくお願いします」こうして、僕は、女の子と偽って学園一のイケメンだと名高いユノオッパの『彼女』になったこうなればもう、絶対に男だとばれないように生活するしか無いのかもしれないそれはまるで非現実的だし、許される事でも無いのかもしれないだけど、それでもこの恋を手放したく無い程に幸せを感じてしまったのだ「……どうしよう、めちゃくちゃ嬉しいさっきまでずっと、クラスの皆もチャンミンを可愛いって言うし告白された、なんて言うし嫉妬して情けなかったのに俺、めちゃくちゃ現金だよな」「…嫉妬…それも、私の事が好きだからですか?」「勿論」「…嬉しい、です」女の子になったからなのか何だかとても素直になれるそして、素直になったら僕の『彼氏』がとても嬉しそうに笑うそれが嬉しくて、非現実的な恋へと一気に堕ちてしまったランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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Fated 104
突然、予定外の質問をされたのに、『オメガで在る事』について語るチャンミンは驚く程にしっかりしていた身体には力が入っていたし、固く握った拳は少し震えていたから、勿論緊張や戸惑いが大きかったのだと思う俺は、彼と番になったし、今の彼に誰よりも近い存在だと思うけれども、例えどれだけ抱き合ってひとつになっても、番になっても、お互いの全てを…考えを理解する事は出来ないだから、隣に座るチャンミンがインタビュアーの女性に対して堂々と『大切なのは二次性では無くそのひとの中身』『僕の言葉が生き辛さを感じている誰かに少しでも届けば嬉しい』そんな風に語るのを見て聞いて、何だか目から鱗だったのだチャンミンが思い浮かべていた『届けたい誰か』は、もしかしたら彼と同じ男女のオメガだったのかもしれないけれども、生き辛さを感じている誰か、という言葉…それは、きっと多くのひとに当て嵌るもの例えば、アルファの俺もアルファである事が良いと思えずに、その二次性だけで『優れている』と判断され何もかもが出来て当たり前と捉えられる事が嫌だっただって、まるで俺自身なんて見られていないようだからでも、オメガに突然変異したチャンミンが、変わっていく自分と向き合い、葛藤しながらも前に進み成長する姿に感銘を受けた二次性なんて関係無く強いチャンミンを尊敬するし、アルファなんて…と思っていた自分自身が何よりも二次性に囚われていた事に気が付いた二次性に関係無くても、様々な事で悩みを抱えたり、何となく閉塞感を感じるひとはきっと少なく無いそんな人々に、オメガに突然変異して好奇の目に晒されながらも前を向き発言するチャンミンの姿はきっと、何かしらの救いになる筈「凄いよな、本当に…」「…チャンミンの事か?」「あはは、声に出てたんですね…勿論ですインタビュー中も堂々としていました俺の方が立ち上がって『聞いていないです』と慌てたくらいで…」「…ああ、俺も聞いていなくて本当に申し訳無い」「大丈夫、分かっていますそれでも…俺達をこのまま使ってくれてマネジメントしてくれるそれが充分有難い事だと分かるので」「ユノ…」雑誌の取材を終えて、マネージャーとチャンミンと三人で事務所へと戻ったチャンミンは、上の人間と話したいと言って…それだって、本当は俺もついていきたかったのだけど、彼がひとりで向かうと言うからマネージャーと待機をしている「マネージャーだって、俺達の担当で無ければ…こんな事に巻き込まれずに平和で居られたんだから本当に感謝しています」「…もっと巻き込んで欲しいくらいだよ今、こうして一緒に動けて嬉しいって思っているんだから」「…ありがとうございますでも、マネージャーがあまりにも頼りになってしまったら、番の俺の立場が無くなってしまうので…なんて」こんな風に、少しの冗談を言えるのも信頼が有るから彼は『じゃあ、ユノにもチャンミンにも嫉妬されるくらい、これからもふたりを支えるよ』なんて言われた程無くして戻って来たチャンミンは、すっきり…とは言えなかったけれど、上の人間と納得行く話が出来たのだと言ったマネージャーが運転する車、その後部座席にふたりで乗って、チャンミンの話を聞いた「考えてみれば当たり前なのかもしれないですが…事務所は、今の僕でどれだけ世間に受け入れられるか、を考えているようですオメガである事を公表してから、世間は僕自身の声を聞きたい、一体どういう事なのかを知りたいとインターネットやSNS上で声をあげたそうです勿論ファンの方達も…」「…うん、俺も少し調べたから分かるよ」「そうでしたね」今ならば、マネージャー以外誰にも見られる事が無いだから、インタビュー中も本当は触れたくて仕方無かった小さな手を、その上からそっと握って彼を見つめたチャンミンは俺をちらりと見てから、空いた右手で項に触れたそれはきっと、彼自身が噛み痕を確認するもので、俺に見せる為のものでは無い筈だけど、それを見ると何だか身体が熱くなるそれに、以前よりもチャンミンからのフェロモン自体を強く感じる「上の人間達は、世間の反応を見た上で…この先に控えているチケットの販売で売上を落とさずにファンを繋ぎ止める為には僕自身が発信する事が必要だと思ったそうですそれで…あのインタビューで語るように仕向けたと教えてくれました」「…そうだろうな、でも…本当は先に言って欲しかったしマネージャーとして悔しいよ」ルームミラーに映るマネージャーの表情が悔しそうで、そんな風に俺達の立場に立ってくれる事が、それだけでもう力になるチャンミンをもう一度見ると、彼は小さく頷いて、インタビュー中のように『大丈夫』と視線で伝えてくれた「僕が、雑誌が発売するよりも先に…なるべく早めに自分の声で話をしたい、と伝えたら驚いていました」「そうなの?」「はい、多分…何も語りたくは無いと思われたのだと思います」聞き返したら、チャンミンは少し悪戯っぽく笑うそして、俺の手をぎゅっと握り返した少しだけ俺よりも体温の低い小さな手が愛おしくて、更に強く握った「今細かな事を決めてもらっていて…多分、動画配信でインタビュー形式で話す事になりそうです」「インタビューは誰が?」「ふふ、ユノヒョンとマネージャーが重なりましたね」同じ問いをチャンミンに投げ掛けたら、彼はまた微笑んで、事務所の人間か関係する誰かになるそうなのだと教えてくれた「そうか…記者会見のような形だと心配だけど…配信で流せるなら、その方が安心だよ」「そうですね、何でも大丈夫だと言えたら良いのですが、僕はユノヒョンのように喋りも上手く無いので」「…そんな事無いよでも、大切な事だからチャンミナが安心出来るのが一番だ」「うん、ありがとうございます」チャンミンはその後、俺達の前で『あまり見ないようにしていましたが、世間の声を自分からも調べて見てみようと思います』としっかりと告げた俺はと言えば、チャンミンが益々強くなって、そして、それはつまりオメガである事を以前よりも受け入れられているからだとか…公表した事で、心のなかの重荷のようなものが少し軽くなったからなのだろう、なんて思っていた「話には伺っていましたが、本当にどなたかと番に…内緒で教えて頂く事は駄目ですか?」「駄目、それは本当に秘密だからヘアメイクのスタッフ達にだけしか番の事だって言ってないんだから」「はい…ごめんなさい、シムさん」チャンミンへの質問を、隣でメイクされている俺が答えたからか、チャンミンはこちらをじとりと見て「自分で答えられますヒョンは何時までも過保護です」なんて言うヘアメイクスタッフの女性は、チャンミンの項の噛み痕つまり、俺が付けた番になる為の噛み痕を丁寧にメイクで隠していく「オメガになったからでしょうか…以前よりもお肌がとても綺麗になっているので、お顔よりも『こちら』に時間を使ったくらいです」「…ありがとうございますでも凄い、これなら動いて項が見えても全く分からないですね」「はい、問題無しです」噛み痕の隠れたチャンミンは、メイク技術に感動して合わせ鏡で項を確認して感嘆の声をあげているだけど、俺はと言えば…少しだけ面白く無いだって、番になった目に見える証拠だから「ユノヒョン、凄くないですか?ほら、見てください」「うん、全然分からないな…」「ひゃっ、ヒョン!触らないでください、もう!」座ったまま右手を伸ばして触れても、ほんの少しの凹凸すら隠れている「ごめんね」と言うと、チャンミンはほんの少し赤く染まった頬で俺を可愛く睨んでいる多分、『あまり怪しまれるような事はしないでください』という事なのだろうけど、番だから触れたくなってしまう「では、一旦失礼します」「ああ、ありがとうございます」ヘアメイクのスタッフが頭を下げて楽屋から出て行って、後はもう出番までチャンミンとふたり「チャンミン、少しだけ抱き締めても良い?」「…駄目ですもう直ぐ撮影だし、衣装が皺になるし」「そうなの?でも触れたい、少しだけ…な?」番になってから、益々彼の事が愛おしいそれに、俺がもっと守らなければと思うだけど、最近のチャンミンはあまりにも強くて…何だか、まるで俺なんて必要無いように見える勿論それは仕事での事で、毎日どちらかの部屋に一緒に帰れば必ず触れ合うし…毎晩のように抱き合っている番になったから、もうお互いとしか関係を持つ事が出来ないそれを俺もチャンミンも、何度も考えた上で納得をして番になったでも…何だか、最近は少し一方通行のような寂しさがある「一度だけ…リップは取れるし、キスはしないから」座ったまま、チャンミンの方に両手を伸ばして強請ったら、彼は「一度だけなら…」と、頷いて答えて立ち上がった「ありがとう、チャンミナ…愛しているよ」「…っあ…」彼に続いて立ち上がり、そのまま細い身体を抱き竦めた触れるとそれだけで、チャンミンから甘いフェロモンが溢れてくるようで、必死に理性を働かせるきっと、番になった今は俺だけじゃ無くてチャンミンもフェロモンの匂いを感じている筈だからか、彼の身体からは少しだけ力が抜けて、俺の肩に顔を乗せて凭れかかるように身体を預けてきたそれがとても愛おしくて…「チャンミナ…」「…っん、…や…っ!」思わず、項に口付けた勿論噛み付いてなんていなくて、キスをしたすると、チャンミンはびくっと身体を震わせて、そのまま俺の身体を押し返した「…何で…」「…っあ…ごめんなさい驚いて…それに、項はメイクをしたから…触れたら取れちゃいます」「…そっか、そうだよな、ごめん…」『でも、甘い匂いがして止められなかったチャンミナはそうじゃない?』そう聞きたかったけれど、彼の表情が強ばっていて尋ねる事が出来なかった撮影は、順調に進んだスタッフ達も勿論今は皆、チャンミンがオメガになった事を知っている直接その事について話し掛けて来るひとも数人居たけれどもチャンミンはその全てに嫌な顔をする事無く答えていた「何だか綺麗になったなあとは思っていました」「はは、そうですか?多分、ホルモンの所為で髭があまり生えなくなったからです他は特に変わらないし、黙っている方が悪い事をしているようで嫌だったので、今はすっきりしています」外見の変化に触れられてもそんな風に答えるから、スタッフの方達も「男らしいですね」なんて笑って、チャンミンも「当たり前です、男なので」と笑っていた撮影で求められる姿はいつも、俺の方が男性的でチャンミンの方がどこか女性的にも見える姿それは今回もそうで…だけど、カメラを見据えるチャンミンの視線はとても強かった撮影中も後も、露骨にチャンミンに対して差別的な目で見る人間は居なかった、と思うだけど、一度だけ女性スタッフが『ファンの方は少し複雑かもしれないですね私の好きな男性アイドルがもしもそうだったら…戸惑ってしまいそうです』と話しているのが聞こえてしまった会話は少しだけ聞こえてきただけだから、真意は分からないだけど、『夢が見られない』『男性アルファやベータと恋人や番になったらと思うと見る目が変わる』なんて言っていたようだ撮影を終えて、彼女の傍を通る時にさり気なく「今日のチャンミナ、俺よりも男らしかったですよね」と話し掛けてみたら、少し戸惑った様子で頷いていた今日の彼の表情や視線は本当に男らしかったそれは、いつも隣で見ている俺がはっきりとそう思うくらいにだけど、オメガだという先入観なのか、それとも…彼女には以前と全く違う姿に見えてしむうのか、俺にはそれ以上分からなかった撮影を終えて事務所に帰ったら、またチャンミンは呼び出された三十分程待って戻ってきた彼に聞いたら、明日チャンミンが自分の口から今の事を語る配信を行う事が決まった、という事だったインタビューを担当するのは、何度も仕事をした事がある女性インタビュアー事務所の人間では無いけれど、俺達を昔から知ってくれているし、世間の好感度も高いから、彼女なのだと聞いて安堵したチャンミンも、マネージャーと俺に『これですっきりします』なんて笑顔で語っていたそれを頼もしく思うのと共に、また少しの寂しさを抱えながら、それでもチャンミンが前向きで居られる事が何よりだから、と自分を納得させていたなのだけど…「チャンミナ?」ふたりで、チャンミンの部屋に帰宅したオメガだという事を公表して初めて、大勢に囲まれて撮影をした事で少し疲れたというチャンミンは俺には断りを入れてから先に浴室に向かったあまり邪魔をしてはいけない、と待っていたのだけど、普段よりも何だか遅いそれに…普段のチャンミンならば『ユノヒョンがまだだから』と少し早めに出てくる筈あまり深くは考えていなかったただ、やはりひとりは寂しいし、何となく気になって浴室に向かい、扉の外から声を掛けた「チャンミナ、開けても良い?」磨り硝子の向こう側、チャンミンの影が見えた多分、浴槽のなかに居るようだだけど、答えが無くて…「チャンミナ…?」扉を開けてみたら、彼はほんの少ししか湯を張っていない浴槽のなかで膝を抱えて小さくなって俯いていたそして…「…あれ、ユノヒョン…」「あれ、って…何度も呼んだけど気付かなかった?」「ごめんなさい、ぼうっとしていて…」顔を上げたチャンミンの瞳は潤んでいたこちらを見上げたけれど、俺の言葉にまた俯く「もうだいぶ入っているから…そろそろ上がる?」腕を伸ばしてチャンミンの身体に触れたら、冷たくて驚いたそして、ほんの少ししか入っていない湯に触れたら、それもとても温くて身体なんて温まらない筈だ慌てて浴槽のなかのチャンミンの腋に腕を入れて立ち上がらせた軽い身体は俺に逆らう事無く立ち上がったそして…「…ユノヒョン、僕…」「チャンミナ?」漸く視線が合ったと思ったら、潤んだ瞳から大粒の涙が零れたそれを切っ掛けに、彼は声をあげて泣き出した冷たく冷えた細い身体をスウェットのまま抱き締めて背中を擦る「大丈夫、俺が居るから…だって俺達は番だろ?」「…っ…ん……」仕事中、ずっと、まるでひとりで大丈夫だというように弱みを見せる事の無かった恋人オメガである事も、周りに何かを言われる事も、その全てを強く受け止めているようで、それを見て切ない気持ちを抱いていたけれども、今の彼は違う何か、を抱える彼を可哀想だと思うのに、俺を頼ってくれる姿に愉悦を感じてしまったそんな自分が嫌だと思うのに、アルファの本能のようなものが確かに喜びを感じていて、結局二次性からは逃れる事は出来ないのだと思ったランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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- 23Apr
お花売り 77
Side Yチャンミンの、彼単独名義でのファーストアルバムの制作が佳境に入るのと同時に、俺はと言えば新たなドラマがクランクインした遠方にロケに出る事は無かったけれど、朝早くから夜遅くまでスタジオでロケをする事が増えた芸能界は長いし、元々歌手としてデビューしたけれど俳優としても長く活動している演技も好きだし、地方ロケだって慣れている新しいアルバムを作る時もそうだけれど、新たなコンセプト、新たなキャラクターになって新しい環境に身を置く事も自分自身を鼓舞する事に繋がるから好きだなのだけど…「…はあ…」今はひとりだから、誰も俺を見ていないし声だって聞こえないから溜息も許して欲しい「ひとりがこんなに寂しいだなんて…もう忘れていた…いや、知らなかったな」三日間の済州島ロケその二日目の撮影を終えて宿泊ホテルへと帰ってきた用意された部屋はベッドもセミダブルだから身長のある俺にも有難いだけど、広さがあると余計に寂しくなる両手両足を広げてベッドに仰向けに横たわり呟いたけれど、勿論ひとりだから誰からも声なんて返って来ない「チャンミナ…」まだ仕事中であろう恋人の名前を呼んで、真っ白い天井を眺めたもう長い間ひとり暮らしをして来た仕事では常にひとと関わるから、家でひとりの時間を持つ事はリフレッシュにもなるし落ち着く時間だった…なんて言うのは、もう半年を超えて一年、の方が近くなったのだけど、チャンミンに出会う以前までの話街でリヤカーを引いて花売りをしていたチャンミンに真冬の日、何故か目を奪われて花を買った今思えば我ながら行動力が有るなあ、なんて思うけれど、理屈では無くて性別を超えて一目で惹かれてしまったのだメモを見たチャンミンが俺に出会った後に偶然…これはとても不運な事だったけれど、スリに遭ってしまった事が次の切っ掛けになって、俺達は共同生活を始めた「行動力どころか…いや、困っているチャンミナを助ける為でも有るけど…好きになってくれて良かった」出会った頃の自分を思い出してみると、本当に久しぶりに感じた胸のときめきに突き動かされるようにしてチャンミンに接していた気がする『韓流の帝王』なんて、現実の俺とは掛け離れた呼び名がある事は恥ずかしいけれど、そんな風に世間でもテレビのなかでも呼ばれるくらい名前が知られていたからこそ、チャンミンも怪しまずに居てくれたのだろうこの仕事が好きだし天職だと思っているだけど、普通の青春時代を送る事も出来ないし常に人目に晒されている事で逆に寂しさや虚しさを感じていた30を超えて、新たな夢ややり甲斐を特別に見出す事が出来なくなっていたそんな時にチャンミンと出会って、純粋な気持ちを取り戻したような気がする「それも全部、今思う事だけど…」真冬に出会った季節は巡って、冬の足音が聞こえてきたずっと一緒に居たらその時その時が大切で、一所懸命だったからこそ振り返る事も無かったでも、久しぶりにひとりの時間が出来た事で、寂しいけれど自分を振り返る事が少しだけ出来た夢を追い掛けていたチャンミン彼は実力が有るにも関わらず、いざ人前に出るとあがってしまい、素晴らしい歌唱力を上手く披露する事が出来ずに歌手になれずに居たそんな彼から見て、若い頃から第一線で歌手と俳優として活動していた俺はきっと…悩みなんて無い人間に見えただろうし、俺自身もひとに弱みは見せたく無いと思っていたけれども、俺を知っていて安心してくれても、俺に媚びる事の無い、当たり前に普通に接してくれるチャンミンに気が付いたら弱みを見せられるようになって…チャンミンとの出会いで、歌を更に好きになれたし忘れかけていた気持ちを取り戻す事が出来た「懐かしいな、あの歌…」少し久しぶりに口ずさんだのは、出会って直ぐの頃、チャンミンと初めて声を合わせた曲少し悲しい歌詞だけれど、あたたかな旋律にどこか胸があたたかくなる曲その後発売したアルバムに、あの曲も収録されていて、チャンミンがバックコーラスとして参加してくれたどのアルバムも全て思い出深いし、初めて出したアルバムは特別でも、チャンミンと一緒に声を重ねて作り上げたアルバムはまた違う特別、なのだ何だか、まだ自分のなかに眠っていた新しい可能性に気付けたような…「……っん?…チャンミナ?」仰向けのまま歌の世界に入り込んでいたら、遠くでスマホが震える音いや、遠くだと思っただけで実際はヘッドボードの上だから直ぐそこで…それだけ、俺があの歌に入り込んでいたという事慌てて上半身を起こして右手を伸ばしスマホを取ったら、それは電話の通知で、その主は待ち侘びていた相手、そのひとだった「ヨボセヨ、チャンミナ!」『…ふふ、元気ですね、お疲れ様です』「元気じゃ無いよ」『あ、ごめんなさい今日も朝からのロケだって言っていたのに…』穏やかな恋人の声いつもと同じ、な筈だけど、機械を通しているからか、距離が有るからか…何だか不思議だなんて思うのはきっと今、俺がとてもチャンミンに会いたくて寂しいからだって、同じ部屋に住んでいたって仕事が別々であれば電話で話す事なんて珍しくは無いし電話越しのチャンミンの声だって良く知っているから「違うよ、チャンミナ、その…元気が無いのは、もう二日もチャンミナに会えていないから」誤解されてしまったから慌てて訂正したら、直ぐに『そんなの、僕も同じです』と、少し拗ねたような声『仕事だって分かっているし、勿論僕もアルバム発売前で…今頑張らなきゃいけない事が沢山有るし集中しなきゃいけない寂しい、なんて言ったら駄目だって分かっていますでも、寂しい、それに…』「それに?」同じ気持ちである事が嬉しくて、それだけでほんの少し寂しさが減って、そこを優しい気持ちが埋めていく『それに、撮影中のドラマってラブストーリーですよね?』「え…うん…」『キスシーンだって有りますよね?』「まだ無いけど…いずれは…」『ユノがプロで、演技に私情を持ち込まない事も…演技で何かを思ったりしない事も分かっていますだから気にするなんて情けないって事もでも、離れていたら寂しくて余計に嫉妬します』「チャンミナ…」『聞かなかった事にしてください』そんなの、もう聞いてしまったし…こんな可愛い嫉妬、幸せでしか無い「明日帰ったら直ぐにキスしたい」『事務所に寄って帰るんですよね?僕も明日は事務所に居ます』「じゃあ、事務所で皆に見られないところでキスをしよう」ひとりの部屋は寂しくて、とても広く感じたロケで宿泊して泊まるホテルは…チャンミンと出会う前は環境が変わるから好きだったのに今は、早くふたりの部屋に帰りたくて堪らない勿論、その為には良い仕事、良い演技をしなければならないのだけど『本当は駄目ですって言わないといけないのかも、ですが…ふたりきりになれるならと言うか、僕だって早く会いたいんです』チャンミンの素直な気持ちが嬉しいでも、そんなチャンミンを前にするとやはり俺は…いつも、何だか甘えてしまう壁掛けの時計、針は午後の10時を指している俺は余計通り撮影が終わり、もう食事も風呂も終えたチャンミンは、予定では9時に終わると話していて…仕事が終われば連絡をくれる事になっていたきっと、仕事が押してしまったのだろうけど、早く声を聞きたくて俺だって我慢していた「そう言えば、今どこ?静かだけど…まだ事務所?マネージャーの車のなか?」『ユノ…質問攻めですね』「だって…いや、ごめん!俺、お疲れ様、も言って無い…遅くまで大変だったよな」『ふふ、言わなくても伝わっているから大丈夫ですでも、嬉しい…ありがとうございます』チャンミンの声も少し疲れているだけど、俺がチャンミンの声を聞いて元気が出たように、チャンミンの声も少しずつ甘さが増している気がする「疲れただろ?」『そうじゃ無いって言ったら嘘になりますでも、やり甲斐があるし…大変だけど楽しめています本音はユノと一緒が良かったけど…これはユノにしか言いません』そう、悪戯っぽく言ったチャンミンチャンミンの周りはとても静かだったのだけど、小さな足音がして、それからがらっと音がした「どうしたの?」『今どこ?って言いましたよね実はもう家に帰って来たんです』「え…何で連絡をくれなかったの?」カトクでメッセージをひと言、でも良いから欲しかったそうすれば、帰り道だって連絡を取り合えたのにいや、もしかしたらマネージャー以外の誰かに送ってもらって連絡が取れなかったのかもしれないなんて、分からないと色々考えてしまうから、チャンミンの言葉を待ったそうしたら…『僕だって早く連絡したかったですでも、メッセージをしたら声を聞くのが我慢出来なくなるから』「え…」『マネージャーに送ってもらったんですが…彼も遅くまで僕に付き合ってくださったのに、運転してもらいながらユノの事ばかり考えているのは…新人だし申し訳無いって思ってせめて考えているだけで、連絡は我慢しようって思ったんですだから、帰ってきてから電話をしました』「そっか…流石チャンミナはおとなだな」『…そんな事無いですユノの仕事に対する姿勢をいつも見ているから…だから、僕も見習おうって思ったんですでも、結局寂しいし我慢出来ないって言っちゃったので、まだまだです』我慢出来ない、なんて切なげな声で言われると少し…いや、かなりどきりとしたでも、今それを言えばチャンミンは恥ずかしがって通話を切ってしまうかもしれないなんて冷静に考えて、一旦胸のなかへと仕舞う事にした『あ、ユノ…!』「どうしたの?」俺が下心たっぷりの事を考えていたら、チャンミンの弾む声それだけで、また俺の胸は踊る『今、寝室なんですさっきまでベッドに居たけど、窓を開けて外を見ていて…そうしたら、満月でした』「え…本当に?でも、ロケをしていた時は雲が分厚くて…」もしかしたら、済州島とソウルでは天候が違うのかもしれないなんて思いながら、ベッドから降りて窓を開けてみたそうしたら…「…本当だ、しかも何だか凄く大きい」『同じですソウルも、僕が帰ってくる時も雲で覆われていて…でも、空はユノの居る済州に繋がっているからと思って外を見てみたんですそうしたら満月だなんて、何だか嬉しいです』「うん…今、同じ月を見ているって事だよな」夜はもう、風が冷たくて肌寒い冬はもう、直ぐそこまで来ているけれども、冬はチャンミンと出会った季節だから嫌じゃ無いどころか何だかそわそわする『ユノ』「うん…」『月が、凄く綺麗ですね』「うん、本当に綺麗だ」『……』チャンミンの言葉に、勿論見えない事は分かっているけれど頷いていたら、小さな声で『あの…』と耳元に届いた「どうしたの?」『…さっきの僕の言葉…日本だと、別の意味が有るんです』「え…日本?急にどうした?」『以前テレビで偶然見て知った事があって、それで…でも、恥ずかしいからもう良いです僕、今からお風呂に入るので…じゃあ』「え、チャンミナ…!…っ、切れた…」最後は小さな声で、舌っ足らずな癖に早口で言うから、理解する前に通話は切れてしまった「日本だと…?さっきのって…満月?月が綺麗…?」もう一度電話をしようかと思ったけれど、遅くまで仕事をして、風呂にも入っていないのなら邪魔は出来ないチャンミンの言葉を思い出しながら、彼の言葉を日本語に翻訳したり、別の意味、を調べてみたのだけど…満月、は日本語でも満月を意味するし、月も同じ「…どういう事だ?」『美しい月』と調べても、意味は変わらなくて頭を捻っていたら…「ん?これ…」検索画面をスクロールしていたら出てきた言葉それは確かに日本でのみ意味する、特別な言葉だった電話は今は我慢だけど、俺だって伝えたいだから…『伝える前に通話が終わってしまったから、俺にも言わせて今夜の月は特別に綺麗ですねそれと…チャンミナを愛してる』そう送ったら、直ぐに既読になって返事があった『それじゃあ、二回言った事になります早く、直接聞きたいから…早く明日になって欲しい今からシャワーを浴びて来ます』きっと、俺からの連絡を待っていたのかもしれないなんて思うと、益々恋人が愛おしい勿論、その夜は眠る前にもう一度声を聞いて、顔は見えないけれど声で想いを伝え合った恋がひとを成長させる、なんてまるでドラマや映画のなかの話で、俺は自分自身の努力が成長に繋がるのだと思っていただけど、チャンミンは俺が忘れていた純粋な気持ちや諦めない気持ちを思い出させてくれて…彼と出会った後の今の自分が、素直に好きだと言えるそして、もっと上を目指したいし…また、チャンミンと声を重ねたいと強く思う「その為にも頑張らないと…キスシーンは頑張らなくて良いです、なんて言われそうだけど」カーテンを開けていたらベッドからも大きくて綺麗な満月が見えた所為か、離れていてもチャンミンを傍に感じる事が出来たそうして、この夜は少しばかり寂しさから解放されたランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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未必の恋 21
私服で…と言うか、ほぼユノさんに借りた服なのだけど、スーツ以外でホテルの客用出入口から出入りするだなんて初めてで、何だかとても緊張した帰りのタクシーのなかで、ペットボトルのコーヒーで喉を潤したのに「あの、ユノさん、僕が持つので…!」「え?駄目だよだって、チャンミンには俺のカフェオレを持ってもらわなきゃコーヒーも有るから両手も埋まっているようだし」「ペットボトルはその袋に入れれば問題無いです」スーパーで購入した食材の入った大きなビニール袋をふたつユノさんは両手にぶら下げて、タクシーを降りてホテル入口へと向かう身長は変わらない筈、なのに脚の長さが違うのだろうかユノさんの一歩が大きくて早足で無いと追い付けない僕の着ている、ユノさんのレザージャケットとレザーのパンツはどちらも細身でポケットも小さいポケットのなかには流石にペットボトルを入れられないし、両手で二本持つ事も出来なくて斜め右後ろから声を掛けたら、今度は「俺が買ったんだから俺が持つよ」なんて言われてしまったその時に思い出したのだけど…「あ!ごめんなさい、僕半分払わないと…!」「駄目、もう俺が払ったしそれに、これくらい格好付けさせて?いつもチャンミンには色々とお世話になっているから」「色々って、そんな…」だって、僕はこの一ヶ月、ユノさん専属の客室係仕事で、ユノさんはホテルで一番高い部屋に宿泊してその料金を支払っているのだからあらゆるサービスだって当たり前なのに何とか袋を持とう、とホテル入口の大きな扉を潜りながらユノさんを見たら、にやりと微笑み僕を見る「色々は…勿論、ベッドのなかの事も…だよ」「…っユノさん…!」「あはは、兎に角、本当に気にしないでそれに、今日はチャンミンはオフだけど…デートだからまだまだ付き合って欲しいんだだから、買い物は俺が出してチャンミンはカフェオレを買ってくれた、それで良いだろ?」そこまで言われてしまったら、あまり執拗く『払います』と言う事も出来ないそれはきっとユノさんの優しさだとも思うし…だけど、スーツだって全部で四着、それに合わせてワイシャツやネクタイも買ってもらっているのにもしかしたら、ユノさんはVIPだしお金には困っていないから深い意味も無く払ってくれているのかもしれないだとすれば僕が『払わなければ』と気にする必要も無いでも、それはそれで、今度は切ないだって、別に僕の為では無くてお金が有るからで…僕が特別だから、では無いという事のように思えてしまうから「チョン様、お帰りなさいませ沢山買い物をされて来たのですね」「ああ、総支配人…チャンミンに料理を作ってもらうんだだから食材を買い込んだんだ…な?チャンミン」「…はい…まあ…」ユノさんは何故かフロントへと向かったすると、総支配人のチェ先輩と話をし出して…は、良いにしても、ユノさんの言葉に恥ずかしくて俯いた「ユノさん、部屋に戻りましょう」左脇に自分のコーヒーを挟み左手でユノさんのカフェオレを持って、空いた右手でユノさんの腕をそっと掴んだら、前に立つチェ先輩が微笑んで口を開いた「シムの料理は意外に美味いですよでも、チョン様に召し上がって頂くとなるとシムも緊張してしまいそうですね」「総支配人はチャンミンの料理を食べた事が?」「ええ、賄いを以前作ってくれたので」チェ先輩は微笑んでいるけれど、何だかユノさんの声が硬い多分だけれど嫉妬してくれた気がする勿論、それは恋では無くて所有欲のようなものだとは分かっているけれど「あの、ユノさん、もう部屋に…」「シム」「え?何ですか?」ユノさんに声を掛けたところで、チェ先輩に声を掛けられた前を向いたら、彼はフロントデスクのなかから鍵を取り出して僕に差し出した「チョン様は手が埋まっているだろう?」「え、これって…」あまり見覚えの無いカードキー部屋の物では無いし…何だったろう、と思っていたら、ユノさんはユノさんで「部屋に戻ろう」と背を向けて歩き出してしまったから、慌ててカードキーを受け取ってモスグリーンのトレンチコートの広い背中を追い掛けた「ユノさん、待ってください」今はスーツでも無いし今日はオフ扱いになっただからホテル内を走っても許される筈なんて思いながら少し罪悪感は有るけれど走って、何とか先にエレベーターのボタンを押す事が出来た直ぐに扉が開いて、ユノさんに続いて庫内へと乗り込んだ「ユノさん?」「……」扉横の操作盤の前に立って、左後ろを振り返り声を掛けたけれども、視線は合うのに返事が無い「あの…もしかしてチェ先輩…いえ、総支配人の言葉ですか?あれは、お話した通り従業員用の賄いを以前作っただけで…」しかも、あの時作ったのなんて、確かカレーにパスタ特別なものでも何でも無いだから話に出される事すら恥ずかしいようなものなのだなんて事は、ユノさんの前では言えないから彼を見ていたら、「キスをしてくれたら許す」と表情を変えずにぼそりと言われた「え…あの、今ですか?」「嫌なら良いよ」聞き返しただけなのに、ふい、と反対側を向かれたそれだけで、ユノさんを好きな僕は胸がじくじくと痛むのに彼はそんな事をきっと知らない僕がどれだけユノさんに夢中になっているかなんて知らないのだ「こっちを向いてください、じゃなきゃ……」後ろに一歩脚を踏み出して、カードキーを持った右手でユノさんのコートの襟元を掴んだ『キスが出来ません』と言ってから、僕からキスをしようとしたのに…「ん、っ……ふ…ぅ…」「…嫉妬したからお返し」「…っ…!」左手ひとつで大きな袋をふたつ持ったユノさんは、右手で僕の頬を包んだ唇が触れる、と思った次の瞬間にはもうキスされていて、舌も入ってきた上顎をなぞられたらそれだけで腰がぞくぞくして力が抜けて…「チャンミン、もう着いたよ降りなきゃ」「……腰が抜けかけて…ユノさんの所為です」「あはは、ごめんね」もういつもの顔をしていたユノさんは、大きな右手で僕の腰を支えてエスコートしてくれたそれから、部屋の鍵を開ける僕の耳元で「嫉妬は本当だけど、チャンミンからキスをして欲しくてわざとエレベーターで無視をしたんだ…ごめんね」なんて、低くて甘い声で囁くから、僕の腰はまた抜けそうになってしまった「でも、ユノさんからキスしたのに…」「だって待てなくて、駄目?」「駄目じゃ無いです」出会って…つまり、ユノさんがVIP客としてホテルにやって来て直ぐの頃は、キスは抱かれる時だけだし…それだって、恋人のように甘い雰囲気では無かっただけど、最近は抱き合っている時以外のキスも増えたこれは僕にとってとても嬉しい事でも、顔には出さないようにしなければならない「食材は僕が片付けるので、ユノさんは寛いでいてください」「本当?じゃあ言葉に甘えるよ」「はい」ユノさんはもう、さっきのように嫉妬している顔では無くなったし…何だか嬉しそうに見えた彼に背を向けて、緩む頬を抑えられないまま冷蔵庫に食材を仕舞っていたのだけど…「あの鍵…何だっけ」カードキーだけれど、普段使うものでは無いそれは僕が客室係だから分かる事で、つまりはどの客室のものでも無い紙の箱に入っている三パック分の苺をひとつひとつ取り出して冷蔵庫に仕舞い終わった時に思い出した「あ!」「チャンミン?どうした?大丈夫か?」「あ、いえ、何でも無いです」ユノさんの声に、振り返って答えたそうだ、あの鍵はホテル内の温水プールの鍵だけど、日中は通常宿泊者に開け放たれているから、鍵は担当者が朝と夜に開け閉めしたり掃除の際に使うのみ「え、でもその鍵を渡したって事は…使うのかな」今はオフシーズンで宿泊客は少なめそれに、プールはなかなか豪華で我がホテルとしては誇れる施設なのだけど、景色が見える訳でも無いからあまり利用する客は多くは無いユノさんが貸切で使うのだろうか、なんて思いながら食材を仕分けて片付けて立ち上がり振り返ったら…「あれ、ユノさん、着替えられたのですか?」「ん?ああ、片付けをありがとう、チャンミン」ベッドの傍に居たユノさんは、コートと黒の上下から、スウェットのセットアップに着替えていたグレーのシンプルなスウェットなのに、ユノさんが着ているだけで信じられないくらい格好良い「これも『JYH』の物ですか?」「残念、これはスポーツブランドの物だよここのスウェットは動き易いしリラックス出来るんだ」「へえ…ユノさんのお勧めなら、僕も今度見てみようと思います」「うん、チャンミンに似合う形もきっと有るよ今夜一緒にネットで見てみる?」「はい!」ユノさんと出来る事、する事小さな事でもひとつずつ増えていく事が嬉しい我儘だけど、全部忘れたく無いし心のなかに残しておきたい「あ、そうだ…ユノさん、さっき受け取ったのってプールの鍵ですよね?」「ああ、流石だな、分かるの?」「分かります、これでも副支配人なので」なんて、本当は直ぐには分からなかったけれど見栄を張ったユノさんはそんな僕に「運動不足だし、折角だから使いたくて貸切にしたんだ」なんて、少年のように笑って言う「だからスウェットに?」「そう、チャンミンが片付けてくれている間に水着も穿いたよ」「え、全然気付きませんでした」「あはは、急いだから」見ると、もうコートやニットも綺麗に片付けられていて、ユノさんは本当に服を大切に扱っている事が分かる水着、なんて聞くと…男同士で普通はそんな気持ちになる訳が無いのにどきどきする「今日他にもやりたい事って…もしかしてプールの事だったんですか?」「正解、チャンミンも着いて来て?」「え、今からですか?」「勿論」そう言うと、ユノさんは冷蔵庫のなかからつい今しがた入れたばかりのオレンジジュースのペットボトルを取り出した「これも持って行こう」「プールの外にも水が有ります」「そうなの?でも、ジュースも大事だから」運動不足だからプールに…なんて言いながら甘い物を好むユノさんが可愛い彼はベッドの傍のソファにいつの間にか置いていたナイロンのボストンバッグにそれを入れて、更に新しいバスタオルも詰め込んだ「良し、行こう」「はい」ホテルに戻って来たから、もうデートは終わってしまったような寂しさもあったけれども、普段客室係の僕が立ち入る事の無いプールに行くだなんて、まだデートが続いているようで嬉しいそれに、ユノさんの水着姿や泳ぐ姿が見られるだなんてどきどきしてしまう「貸切って何時までですか?と言うか、いつの間にそんな事になっていたのですか?」「今朝だよチャンミンをオフに…とフロントに連絡する時にお願いしたんだ今は使うひとも少ないから、今日はずっと貸切だよ」「ふふ、でもそんなに長くプールには居られないと思います」フロントで受け取ったカードキーを持って部屋を出て、またエレベーターに乗ったユノさんのスイートルームのある最上階から少し下へと降りた階にあるプールは、利用者の少なさとは裏腹に、贅沢に広さを出しているつまり、ロッカールームに休憩室も含めてワンフロア全てプールとその付属施設になっているのだ「貸切って事は…今日はこの階で降りる方もいらっしゃらないという事ですよね」「そうだな」「何だか不思議な感じです」エレベーターを降りて、僕が案内をした普段立ち入らないからあまり詳しくは無いのだけど、勿論基本的な事は全て分かっているカードキーは、エレベーターを降りて直ぐの扉のもので、なかへと足を踏み入れたから、もう誰も入って来る事は無い「此処がロッカールームで着替えが出来ます広いから変な感じですね」ユノさんを案内して、誰も来ないけれど安全の為にロッカーに荷物や着替えを入れるように、とお願いした「ありがとう」と言ってロッカーの前の長椅子にバッグを下ろしたユノさんはスウェットパーカーを脱ぎ出したあまり見てはいけない気がして、辺りを見渡す振りで背を向けた時にふと思い出した先日、ユノさんのブランド『JYH』のインターネットサイトを見ていたら、男性向けの下着が出て来た事をもしかしたら、ユノさんが今穿いているのも彼のデザインしたものだろうか、なんて思ったけれど、下着があったからと言って水着はまた別物だ兎に角、ユノさんは身体付きまでまるでモデルのように均整が取れている、という事は知っているから…あまりじろじろ見ないように、でもこっそり見よう、なんて思ってしまった「チャンミン」「…っはい!」「こっちに来て?」振り返ると、もうユノさんは水着姿になっていた競泳用とまではいかないけれど、身体のラインに沿った細身のボクサータイプのもの濃紺に夏らしい花柄がプリントされていて、ユノさんにとても似合っている「ええと、その…素敵です」「ありがとう、チャンミンも早くこれに着替えて?」「え…」目を丸くする僕にもユノさんは何のその濃紺のつるりとした生地の…畳まれているけれども、多分水着であろうものを差し出して来た「いえ、僕は傍で…」「どうして?今日はお互いにオフでデートなのにひとりで泳ぐつもりならチャンミンと一緒に来ないよ折角だから息抜きしよう」「僕、ユノさんより運動不足で泳いだりはあまり…」「大丈夫、水のなかを歩くだけでも運動になるから」受け取らないように、と胸の前で両手を振ってみたけれど、ユノさんは笑顔を崩さないし…多分、これは引いてはくれない「男同士だし気にする事無いよ」「……この水着はユノさんのデザインしたものですか?」「勿論、だからチャンミンに着て欲しくてそう、言い忘れていたけれど、新作で…元々自分で使おうと思っていたんだけど、まだ使っていないしきっとチャンミンに似合うから穿いて欲しい」「そんな風に言われたら嫌だって言えないです」だって、ユノさんは憧れのデザイナーユノさんのデザインする服が大好きなのだから「ええと…その…着替えを見られるのは恥ずかしいので、先になかに行って頂けますか?」受け取ったは良いけれど、ユノさんが僕の目の前、長椅子に座ったから流石に『お願い』をした駄目、と言われるかもしれないし、もう裸も全て見られているから今更かもしれないでも、とても広いスペースにふたりきり、普段の部屋のなかでは無い事が何だかとても恥ずかしい「じゃあ…良いよその代わり、俺も寂しいから直ぐに来て?」「分かりました…っん…」水着を着ても分かる弛んだところなんてひとつも無い身体抱き締められてキスをして、ユノさんはプールの方へと歩いて行ったそうして、僕はユノさんに渡された水着を漸く広げてみたのだけど、多分、いや、絶対…ユノさんが穿いていたものと同様、面積が小さいでも、ボクサーパンツの形だし、そう思えば普段の下着と変わらないし、下着どころか全て見られているし…「…良し!」それでもやはり恥ずかしくて、気合いを入れて着替えた「これってインナー…あ、裏地があった」ユノさんが穿く筈のものだと思うと、それも…恥ずかしいし、嬉しい急いで着替えてから、ロッカーに全ての荷物を入れて鍵を持ってプールの入口へと向かった「…お待たせしました」扉を開けてきょろきょろとなかを見渡したら、もう大きなプールのなかに居たユノさんが濡れた前髪を両手でかき上げて笑う「おいで」室内だから景色は望めないでも、このプールは中性のヨーロッパをイメージした作りになっていて、その真んなかで僕を呼ぶユノさんが居る何だかまるで、映画の世界のようだ「先に身体を濡らさないと…」「でも、もう待てない温かくて気持ち良いよ」プールの真んなかからあっという間に泳いできて、縁に腰を掛けて僕を手招きするゆっくりと歩いて、ユノさんの右側に立って、そうっと座って脚だけ温水につけた直ぐに、濡れたユノさんの腕が伸びて抱き締められて…「わっ…!」ざばん、と音を立てて一気になかへと身体が入った驚いたけれど、そこは足がつく深さで、胸の下まで温水に浸かった「ありがとう、デートに付き合ってくれて」楽しそうに微笑むユノさんが眩しいのは揺れる水面がライトに反射している所為なんだって思いながら、近付いてくる唇に瞼を閉じたランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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- 22Apr
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両親と暮らしていた頃は、甘えてばかりいた気がする家でする事と言えばゲームをしたり漫画を読んだりテレビを見たり…一応、簡単な料理くらいは出来るけれど、男だし…なんて言ったら女子から怒られてしまいそうだけれど、家事はあまり手伝ってこなかったても、ひとり暮らしを始めたら必要に迫られて…最初は寂しいし大変でもあったけれど、二週間が経って少しだけ慣れてきたそんな僕の朝はと言えば…「…ん……っあ、朝…!」だんだん大きくなるアラームの音に、慌ててスマホを掴んでアラームを消したごろり、と寝返りを打って瞼を開けて、慣れた、なんて言っても住み慣れた家族で暮らしていた家とは違う、ひとりだけの部屋に気付いてやはり少しの寂しさを感じるだけど…「あ…」ふと手元のスマホに目を遣ると、通知ランプが光っている目を擦って欠伸をして、それからメッセージアプリを開いたら、それはもう日課になったような『彼』からのメッセージだった「オッパ…って、今はひとりなんだから、ヒョン、だろ」自然に彼の事を呼んでしまったから起き上がって慌てて頭を横に振ったらくらりとした起きて直ぐに動いたからで、恥ずかしい独り言が増えたのも、ひとり暮らしを始めてからだって、1DKのこの部屋のなかに居ると話し相手も居ないから「『おはよう、今起きたよ、チャンミンは?』僕も今起きたところです」メッセージに独り言で返しても、勿論伝わらないでも、こうしているとまるで会話しているようで何だか嬉しいベッドから脚を下ろして、まずはスタンプを送った僕がお気に入りの桃のキャラクターが笑っているものだ『今起きました、おはようございます昨日はありがとうございます』なんて、面白みも何も無いメッセージそれに、昨日も部屋に着いてから重たい荷物と共に自転車で送ってもらったお礼をしたのに…「でも、何を話せば良いか分からないし…」そう、だってメッセージの主、つまりユノオッパ…いや、ユノヒョンは先輩だ人気者だし、僕ばかりがあまり馴れ馴れしくする訳にはいかないでも、彼が毎朝起きたらメッセージを送ってくれるから、朝起きた時の寂しさがいつも少し和らぐ僕の朝は大体こうして、オッパ…じゃあ無くて、ヒョンからのメッセージで始まる返信してベッドから起きて顔を洗う少し前までは周りの友人達と比べても全く髭の生えて来ない、第二次性徴の遅い自分の体質が嫌だったでも、今は朝鏡を見てほっとするだって…「良かった、今日も生えてない髭なんて生えてきたら…隠せなくなるよ」隠す必要なんて本来無いのにそもそも僕は男で、女の子の制服なんて着る必要は無いのにそれなのに、今はこのままが良いって思っている「ユノヒョン…ううん、ユノオッパの所為だ」鏡にじっと近付いて至近距離で見ても髭は無いでも、一応右手でも顎や口の周りに触れて生えていない事を確認した寝癖を確認して、跳ねた後頭部の髪の毛を濡らしてドライヤーで乾かすこれだって、以前は少しくらい跳ねていても良いかな、なんて思っていたでも今は少しでも良く…つまり、可愛く思われたくて気になってしまうその対象は今のところ、先輩ひとりだけ「良し、大丈夫だよね?」三面鏡で後ろも左右もしっかり確認した流石に本当の女の子のように髪の毛を伸ばすつもりは無いし、そもそも女の子になりたい訳でも無いメイクだって日焼け止めを塗る事しかしいないし…でも、このままの僕で出来るだけ女の子に見えるようにしていたいのだ起きてメッセージを送って、それから身嗜みを整える次の日課は、男から女の子になる事つまり、スウェットを脱いで…膝上丈のスカートとハイソックス、それにシャツとブレザージャケットを着る事因みに、下着は短めのボクサーパンツ不安だからその上に一分丈のスパッツを履いているこれは変装でも女装でも無くて、これしか僕の制服は無いのだだって、両親の手違いで女子として入学してしまったから「僕の所為じゃ無いし…うん」まだ、脚がスースーする事には完全には慣れないでも、この姿の自分にはだいぶ見慣れてきた「可愛い…かな?悪くは無いけど…でも、ユノオッパが言う程可愛くは無いよ」鏡の前でくるりと回るとスカートがひらりと舞う何だか恥ずかしくて慌てて裾を抑えた次の日課は、お弁当作りだこれは毎日では無いけれど…出来るだけ、やろうと思っている事高校には食堂もコンビニも有る勿論、通学途中にもだけど、僕はひとり暮らしをしているし…海外の赴任先へ一緒に行こうと言う両親に我儘を言って残っている手前もあって、なるべく節約をしたいなあと思っている「昨日は送ってもらったお陰で疲れなかったし時間も有ったから色々と作れたし…」安売りしていた食パンを切って、昨日作ったおかずと合わせてリメイク簡単だけど同じおなずを食べるよりも楽しめるから、僕のお弁当の定番他にも、野菜と卵を使って同様にもう少しバリエーションを増やせたら良いなあ、なんて楽しめているから意外と家事も向いていたのかもしれないなんて、苦手意識のあった事に取り組めているからひとり暮らしは僕を成長させてくれているし…何よりも、学校が楽しいからそんな風に思える「女の子の格好だし、初日に学校に向かう時は最悪だって思っていたのに…僕って順応性が有るのかな」なんて言ってみたけれど、本当は違うって分かっている全部…と言うと言い過ぎだけれど、彼が居るから「あっ、時間無くなっちゃう、急がなきゃ…!」お弁当を詰めて、鞄のなかに押し込んだそれからもう一度鏡の前で身嗜みをチェック最後に、これは一応メイクじゃ無くて…薬用の、ほんの少しだけ色の付いたリップを塗って、ダイニングに置いていたスマホを手に取ったこれが僕の、平日の朝の日課なのだけど、今日はいつもと違う事があった「え…嘘、本当に?」僕の硬いメッセージに返事が二度あったのだけど、二度目のメッセージはつい三分程前だから今気付いて良かったとほっとしたでも、本当なら急がなければならないだって…「本当に?待ってるの?」革靴を履いて、玄関の戸締りを確認鍵を仕舞ってから廊下を走ってエレベーターに向かうこんな時はやって来るまでにやけに長く感じて…「来た!」扉が開くと同時に乗って一階を押して、扉が開いたら走ってマンションの外へと向かって…「ユノオッパ!」「…チャンミン!良かった、気付いてくれたの?」「はい…っあ、今さっき気付いたから返事もせずに慌てて来て…」ほんの少し走っただけでも、運動不足かつ体力が無いのと、更に緊張してしまって余計に息が浅くなるふうふうと息を整えていたら、自転車の傍に立っていたオッパは僕の頭を優しく撫ぜて「俺が勝手に、しかも急に来たんだから慌てなくて良いのに」と言った「でも、先輩を待たせたら…」「俺が早く会いたかったのそれに…折角チャンミンのマンションが高校に向かう途中にあるって知れたから慌て無くて良いし慌てさせたならごめんでも、そのお陰で早く会えたから嬉しいよ」「早くって言ったって…どちらにしろもう登校する時間だから、ほんの少しの違いだと思います」嬉しい、と言われると恥ずかしいほんの少しの違いでも、待たせてはいけないし何より早く会いたくて、姿を見たくて急いだのは僕なのにそれなのに今度は『急いでも急がなくても違いは無い』なんて天邪鬼な事を言ってしまうこれでは可愛くなんて無いのに「チャンミン」「何ですか?」「嫌じゃ無かった?その、返事が無いのに此処で待っていて…」オッパはそう言うと、少し困ったようにこめかみを指先で掻くそれは多分、彼の癖ひとつ年上の先輩だけど、何だか可愛いなあなんて思う「嫌じゃ無いです、全然朝はその…お弁当を作ったり忙しくて、起きて直ぐに返事をしてからスマホを見ていなかったんです部屋を出ようとしたら先輩から『迎えに行っても良い?』『学校に向かう途中だから…寄ってみたよ』なんてメッセージがあって嬉しくて…っあ…」「あはは、嫌じゃ無くて嬉しかった?それなら良かった怖がられたらどうしようって思ってどきどきしていたんだ」ユノオッパはとても紳士だと思う昨日もそうだったけれど、ひとり暮らしの僕が…いや、女の子が怖がらないように、と考えてくれている「僕…いえ、私は大丈夫ですそれに、オッパは格好良いから嫌がるひとなんて居ないと思います!」だって、男の僕から見ても非の打ち所も無いくらい嫌味も無いし、イケメンだからと言って誰かを見下したりする事も無いこんな風になりたいって思うのが男として正しい反応なのかもしれないでも、僕はそんな彼に可愛いと言われて嬉しいと思ってしまっている女の子の制服を着るようになった僕は、少しおかしい「勿論誰にだって嫌われない方が良いよでも、一番はチャンミンだから…」「え…」「だって、今俺はチャンミンを迎えに来ただろ?だから、嫌がられなくて良かった」一番、なんて言われてどきりとしたいや、僕が勝手にどきどきしただけだ「荷物を貸して」と言われて渡したら、昨日の帰り道のように自転車の前籠に鞄を入れてくれた「お弁当が入っているの?」「はい、弁当、なんて良い物じゃ無いですが…」「へえ、気になる」後ろに乗ってと促されて、二度目のふたり乗りゆっくりと自転車が動き出したから、昨日と同じように「重たく無いですか?」と聞いたら「全然」と笑う「チャンミン、俺も今日は学食じゃあ無いんだ」「そうなんですか?」「うん、だから…天気も良いし、中庭で一緒に食べない?」「え…」一瞬、風に邪魔をされて聞き間違いをしたのかと思っただけど「他の先輩達と一緒にですか?」と聞いたら「それは駄目チャンミンが可愛いから皆に狙われるし…俺とふたりじゃ嫌?」なんて、少しだけ拗ねたような声で、さっきよりも少し大きな声で返ってきた「狙うって…私、を?」「当たり前」「そんなひと居ないです」確かに、ちょっと、もしかしたら…狙われているかも、と思った事も有るだって、クラスの男子が皆とても親切だからでも、それは女子も同様だし…僕が二年生になってから転入して何もかも分からない状態だから優しくしてくれているだけ、だと思うそもそも、ユノオッパだって転入初日に不安いっぱいだった僕に校内を案内してくれた事で親しくなったと言うか、優しいからこそ、気に掛けてくれているのだ「背も高いし女っぽく無いし髪も短いし…クラスにも、もっともっと可愛い子が何人も居るんです」でも、目の前で自転車を漕ぐひとに感じるようにどきどきする相手はひとりも居ないのだけどなんて事は言えないからひっそり心のなかでだけ思ったそうしたら、彼は道の端で急に自転車を停めた「え…どうかしましたか?」信号も無いし、何かあった訳でも無さそう後ろから覗き込んだら、くるっと急に振り返ってくるからあまりに顔が近くて慌てて仰け反っただって、近過ぎて恥ずかしいし…あまりに近いと、男だってばれたらどうしようと焦ってしまうから「…オッパ…?」「チャンミンは分かってない」「え…何を…」「自覚が無いのも可愛いけど…そう、チャンミンは凄く可愛い三年生のなかでも話題になっているのを知らないの?『可愛い転入生がやって来た』って」「……」思わずぶんぶんと首を横に振っただって、勿論そんな事知らない冗談かと思ったけれど、彼は真面目な顔で僕を見て、はあ、と溜息「つまり、チャンミンを狙っている男は居るよだから、隙は見せないようにする事」「…それって…自転車に乗ったら駄目だったって事ですか?」少しだけオッパが怖くて、怒らせてしまったのかと思って更に身体を後ろに引いたでも、一応自転車に乗っているからブレザージャケットの裾は両手で掴んでいる「降りた方が良いですか?」「っ、違う、違うよ…ごめん、ただの俺の勝手な気持ちなんだ俺以外に隙を見せて欲しく無い」振り向いたまま、こめかみを掻いて俯いているそんなの、やっぱり僕が特別なのかも、と思ってしまうこんな気持ち…僕は男だから抱いてはいけないのに「…ユノオッパにも隙は見せていないつもりです」何だか、今度は良い雰囲気になってしまいそうだから、頬を膨らませてふい、と顔を逸らして言ったそうしたら、彼は声をあげて笑う「そうなの?じゃあ…俺には隙を見せて欲しいなんて言ったら警戒されちゃうかなもっと…少しずつでも良いから仲良くなりたい」顔を逸らした僕を、今度は追い掛けるように覗き込んでくるさっきはオッパの方が俯いていたのに「…お昼ご飯のお弁当」「ん?」「他の先輩達が居たら人見知りで緊張するからやだなあって思っていたんですだから、ふたりだけなら良いです」顔を逸らしながら言って、それから視線だけで彼の方を向いたそうしたら、とても嬉しそうに笑ってくれて胸がぎゅうっと締め付けられた「やった!って…急がないとぎりぎりだチャンミン、少し急ぐからなるべくくっ付いて」「え…あ、はい!」ぎりぎり、と言われたから勢いで彼の腹に両手を回して額を背中にくっ付けたスカートは捲れてしまわないように、座る時にお尻の下に生地を寄せたのだけど、オッパが少し横や後ろを向くと僕の脚が見えるのかも、と思うととても恥ずかしい例えば夏にショートパンツを履いたり水着だったり…男だって脚を出す事はあるのに「誰かに見られたら羨ましいって言われそうだ」「それは私のせりふですだって、ユノオッパは格好良いし優しいって…クラスの女子に人気なんです知っていましたか?」「え…そうなの?」「……嬉しそう」左肩の上から顔を覗かせるようにして運転する彼を見たら、何だか頬が緩んでいるそうすると、自然と唇が尖ってしまう「えっ、いや、違うよその…嬉しくないって言ったら男だし嘘になるけど…でも、チャンミンに言われるのが一番嬉しい」格好良くて優しくて、そしてきっと、嘘が苦手なひと勿論、二週間しか彼を知らないから僕の思うその姿が全てかどうかは分からないでも…僕が思っている通りなら、今度は頬が緩んでしまう男同士なのに本当は恋なんてしてはいけない相手なのに「オッパは格好良いし優しいし…沢山メッセージを送ってくれるから寂しくないし…オッパが居るから、ひとりでも、新しい学校でも寂しくないです」だから、せめて仲の良い後輩で居たい「俺も…こんなに楽しいのは久しぶりだよ」もう、広い背中に顔を埋めてしまったから彼の顔は見えないけれども、声で嬉しそうなのは分かるそして…『久しぶり』が何を意味するかも分からないのに、もしかしたら以前の恋や彼女の事を示しているのかもしれない、なんて思って勝手に過去に嫉妬している僕は男で、制服が女の子なだけ心だって当たり前に男だそれなのに…「チャンミン、風が少し有るけど寒くは無い?」「オッパの背中があったかいから大丈夫ですそれより、オッパの方が風を受けて寒いんじゃあ…」「俺も、チャンミンが居るからあったかいよ」彼の、ユノオッパの言葉ひとつでこんなにも簡単に気分が下がったり上がったり朝起きて言葉を交わして、学校で会って…いや、今日はもう朝から会えたそれにきっと、今日もまた帰宅してから眠るまでの間にも何度も他愛の無い、けれども僕にとってはトーク画面を眺めるだけでも幸せになるような言葉を交わすのだろう彼の存在はもう、僕の日常や日課のなかに組み込まれてしまったようだランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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Fated 103
Side C自ら、話をしたいと思っていただって、オメガは例え目立たなくとも確実に存在しているのだ様々な事情が有るし、彼らは皆自らの身を守る為、平和に過ごす為にベータに擬態してはいるけれども、オメガであるという事自体は犯罪でも無ければ咎められる事でも無い勿論、通常オメガがそうである事を世間に知られるなんて事はまず無いし、僕はアルファばかりの芸能界で仕事をしているだからこそファンや周りは皆きっと驚いたと思う事務所はそれを見越して色々な配慮をしてくれていて、それを有難いとは思うでも、隠れていてももう仕方無いって思っていたこれから事務所に自ら話を持ち掛けて、そして何かしらの形でファンに自分の気持ちや今の事を話した上で活動を続けたいし多くの嘘を吐きたくないと思っただけど、それが急に訪れるだなんて知らなかったし、僕がオメガである事については取材やインタビューでは現状触れられないようにするとマネージャーからも聞いていたそれなのに…「では、次はチャンミンさんに質問です先日、私達も皆驚きましたが…二次性がオメガに突然変異したと公表されましたね今の気持ちや、これから活動していくにあたっての考えを聞かせて頂きたいです」「え…」これは、雑誌のインタビューだもうインタビューはとっくに開始されていて、幾つもの質問に答えているし話題にも触れているインタビューを始める前には勿論、と言うか…僕の現在の二次性についての話にも少しなったけれど、インタビューでは『この話』は触れない約束だった筈インタビュー風景にはカメラが回されていなくて良かっただって、思わず固まってしまったから「あの、その質問は…まだ外に向けての発言は控えようと事務所とも話しています」がたん、と左側で音がしたのと同時にユノヒョンの声彼の方を見上げたら、険しい顔をするヒョンが居た物凄い剣幕、と言った様子では無いそれに、僕の事だから僕が何か言わなきゃ、と思うのに突然の事に喉が張り付いたように言葉が出ない「お掛けください」これまでも何度も仕事をした事のある女性インタビュアー彼女もきっとベータなのだろう大多数で普通である彼女にはきっと、アルファの気持ちもオメガの気持ちも分からない…なんて、当たり前の事だけれど「あの、ユノヒョン…」「…だけど…」漸く出た声アルファのヒョンにオメガの僕が触れたら…今は何か思われてしまうかもしれないから、声と視線だけで『座ってください』『大丈夫だから』と訴えた彼は小さく溜息を吐いてからゆっくりと椅子に腰掛けた僕はもしかしたら、少しばかり冷静に見えるのだろうかでも、内心は全く逆心臓はばくばくと速く鼓動を刻んでいて、この音が外にまで聞こえてしまうのでは無いかと思う程でも、目の前のインタビュアーもユノヒョンも僕を…何かおかしなものを見るような目では見ていないから良かった多分、ユノヒョンが直ぐに反応してくれたから僕はただ座っていられただけこれがひとりならば逃げ出してしまいたくなったかもしれない「事務所サイドから、その事について取り上げて欲しいと言われました」「え…」ユノヒョンが座ったのを確認して、彼女はゆっくりと、そしてはっきりとそう言った僕もヒョンも、思わず顔を見合わせて…お互いに『聞いていない』と視線を交わしたそんな僕達の様子を見ても目の前のインタビュアーは驚く様子も無いから、僕達には黙って事務所が雑誌サイドと話を進めていたのだろう、と察した「公表したからには、隠すつもりは無いし隠しても不自然だから、と…弊社を信用してインタビューも任せると仰って頂きました勿論、記事にする前にはチェックをして頂きますが」「……」正直、悔しかったそして、自分の考えが如何に幼稚で…全て自分に都合の良いように、事務所に守られて当たり前だと思っていたという事に気付かされたこのインタビューでは二次性について触れない、と言っていたマネージャーの言葉にも顔にも嘘は感じられなかったつまり、勿論予想だけれど、上の人間達が判断したという事そして…何故そんな事をするのか考えてみれば…考えたくは無いけれど、僕が、僕自身がアイドルという商品で、この話は人々の興味を引くであろう事ちらりと前のインタビュアーを見たら、一瞬目が合った好奇でいっぱい、だとか、人々の興味を引くであろう記事を作成出来る事への高揚のようなものが見られるのだろうかと思ったけれども、僕達が…いや、ユノヒョンが『話が違う』と言ったからだろうかどこか申し訳無さそうな顔に見えた面白可笑しく話を聞かれるなら、正直こんな事今は拒みたいでも、事務所もチェックをすると言っているし、僕は事務所に所属しているある種商品ならば仕方無いそう思って覚悟を決めた「……」考えていたら、視線を感じて左側を見たヒョンが心配そうに僕を見ているから、小さく口だけを動かして『大丈夫』と言っただって、僕はもう自分の事を公表したのだ僕の発言によって、世間の大多数であろうオメガ以外の人々はオメガに対しての印象を新たに持つ事になる筈「…自分の口から言わなければならないと思っていましたなので…少し驚きましたが、お答えします」「ありがとうございます」これは僕の望んだタイミングでは無い本当は相談をして自ら発信をしたかったでも、僕はフリーで活動している訳では無いし、事務所にも大きな迷惑を掛けてしまっただけど…何だか自分を被害者のように思ってしまうし、見世物になっているようだとも思うけれどもやはり、オメガは何も悪い事じゃ無いそう、改めて思ったら俯くだけで無く前を向こうと思えた腿の上、きっとインタビュアーからは隠れて見えないであろう場所で両手をぐっと強く握り締めたそうしていないと、どれだけ覚悟を決めても恐ろしくて身体が震えてしまうかもしれないから今だって、もう世間の声は自分からは調べて見ないようにしているけれど、更に偏見の目が広がる事になるかもしれないからでも…僕の言葉でもしかしたら、それが良い方向に変わるかもしれない今それが出来るのは、もしかしたら僕だけなのかもしれないふう、と深呼吸をしてから前を向いて口を開いた「オメガである事を隠して生きなければならない、多くのオメガの方達や…オメガの事が分からない、という方達に少しでも役に立つのならその為なら僕は自分の事をお話させて頂こうと思います僕は珍しい突然変異でオメガになりましたでも、珍しいけれど誰にでも…どこかにオメガの血が入っていれば、可能性は有るのですなので、変わっている、特別だとは思わないで頂けると嬉しいです」「…はい…チャンミンさんの気持ちをそのまま伝えたいと思います」「ありがとうございます」突然だったから、上手く話す事が出来たかは自信が無いでも、生放送や全て録音されて公開される訳では無いから…ゆっくりと考えて話す事が出来た『ホルモンバランスが崩れたので体力が少し落ちたり体毛が少し薄くなった』『初めはとても驚いたし受け入れ難かった日々の仕事や生活を何とかこなすのがやっとでストレスが大きかった』『けれども、中身は何も以前と変わらないし、二次性に対して自分自身がどこか偏った思考を持っていた事に気付かされた』そんな事を話した「これからも、僕の夢は変わりません歌を歌ってステージに立って、それをファンの方達に届けたいし一緒に共有したいと思っています勿論、ファンの方達への気持ちも何も変わりません」冷静なつもりだけど、やはり身体には力が入ってしまっているまだぐっと拳を握って、でも目の前のインタビュアーから視線を逸らさずにいたら、彼女は僕の言葉をしっかり聞いて頷いてから尋ねた「もしも、私がチャンミンさんと同じようになったと考えたら…きっと、色々な事を何も出来なくなってしまいそうな気がします何故、そのように強い気持ちを持つ事が出来たのでしょうか?」「……そう、ですね…」頭のなかに浮かんだのは、オメガになってからヒョンが僕に何度も掛けてくれた言葉『チャンミナは強いよ』でも、そうじゃ無い何よりも、今の僕の事を知ったユノヒョンが…最初から言ってくれていたのだ「ん?どうした?」「いえ」左側を見たら、心配そうに僕を見る彼の顔を見たら緊張が少し解れて肩から力が抜けたやっぱり、ユノヒョンは凄いそんな風に思いながら前に向き直った「自分の気持ちを今のように固めたのは僕自身だと思いますですが、僕ひとりではこんな風になれなかったと思います」「そうなのですね、ではその切っ掛けは…?」「切っ掛けは、ユノヒョンです仕事のパートナーである彼には、今の二次性になってから程なくして打ち明けました迷惑を掛けてしまうだろうし申し訳無い、そう思っていたどん底の僕に、けれどもヒョンは…『チャンミナはチャンミナで何も変わらないよ』そう言ってくれたんです」「チャンミナ…」何だか、本人を前にして言う事は恥ずかしいけれども、それが事実だ「初めは…本音を言うならば、アルファのような特別なひと達にベータや…オメガの気持ちは分からないと思いましたでも、二次性が変わった事を切っ掛けに、それまでよりもユノヒョン…リーダーと沢山話をするようになりました彼はとても繊細で優しくて、そして僕の気持ちに常に寄り添ってくれますそんな彼を見て、アルファだとかオメガだとか…二次性に拘り過ぎる必要は無いと気付きました」本当は勿論、今全てが吹っ切れた訳では無い体力だってもっと欲しいし、男に生まれたからにはやはり、男らしさに憧れるでも、それは外見だけの話では無い「何よりも大切なのは中身だと気付きました勿論、僕はまだまだ中身も未熟ですが…烏滸がましい事ですが、僕の言葉が生き辛さを感じている誰かに少しでも届けば嬉しいです…今はこのくらいで…大丈夫でしょうか?」「…っあ…はい!ありがとうございます」インタビュアーの女性ははっと我に返ったように僕を見て、そして小さく頭を下げたこの件についてはこれで大丈夫だと言われて、残りの質問をユノヒョンとふたりで受けた気が抜けてしまって、と言うか緊張から解き放たれた僕は残りの質問は半分以上ユノヒョンに任せてしまったでも、多分ヒョンもそんな僕の様子に気付いてくれたようで、『僕とこれからも頑張っていきたい』そんな事を話している時に、腿の上で握ったままになっていた僕の手をとんとん、と優しく叩いてくれた勿論、握られたりする事は無く直ぐに離れて行ったのだけど、そのお陰でずっと手を握ったままだった事に気が付いて、汗ばんだ手を広げてもう一度肩の力を抜く事が出来た緊張のインタビューが終わって席を立った時、挨拶も終わったのにインタビュアーの女性に呼び止められたユノヒョンとふたり、顔を見合わせて振り向いたら…「あの、実は…私、家族にオメガが居るんです勿論周りには隠していて…ですが、チャンミンさんが公表された時に、『とても勇気の要る事で凄い』と家族で話をしましたこのインタビューは仕事ですですが、直接チャンミンさんにお話を聞けてとても嬉しかったです」「…オメガ…そうだったのですね」「…はい、私も…オメガもベータも、それにアルファも…勿論違いは有りますが、二次性では無く中身を見る事が大切だと思いますありがとうございます」深く頭を下げられてしまったからどうしようかと思っていたら、隣のユノヒョンが「こちらこそ、真剣に聞いてくださってありがとうございます」なんて、スマートに言葉を掛けて…僕も男だから、そんなヒョンのスマートさに少しだけ嫉妬してしまったそれだけでは無くて、流石僕の恋人…いや、番、なんて事も思ったのだけど「急に質問されて本当に驚きました」「ああ…マネージャーもきっと知らなかったって事だよな?」「多分…最初は見世物みたいで嫌だって思ったんですでも、今の僕の発言はつまりオメガ全体がそうだと捉えられる可能性も有りますよねだから、しっかりしなきゃって思ったし…やっぱり、インタビューだけでは無くて自分で話したいと思いました」控え室に戻りながら、そんな今の本音を話したら、ユノヒョンは「チャンミナは本当に強いなあ」なんて言う「あんまり強い強いって言われると本気にするので止めてください」「あはは、本当だよ俺なんて…どうやって守ろうってそればかり考えていたのにチャンミナはちゃんと前を向いている」「……」廊下で周りには誰も居ないでも、今は人目を気にして行動しなければならないだって、ヒョンと番になった事は知られてはいけないから「ん?どうしたの?」「…いえ、別に」チノパンのポケットからiPhoneを取り出して、ヒョンには見えないように急いで文字を打った送信して直ぐにまたiPhoneを仕舞って…「ヒョン、スマホ…何か無いですか?」「え…」「…スマホ、見てみてください」取材中は勿論サイレントモードにしていて、お互いそのままだからか何も気付いていない様子のヒョンにはっきりと伝えたら、彼は控え室の扉の手前でスマホを取り出したそして…「……っ…」「ユノヒョン?」多分、僕の送ったカトクのメッセージを読んだ筈でも、何も言わずに居るから斜め後ろから覗き込んだら、彼はそのまま控え室の扉を開けてなかへと入った僕も続いてなかへと入って扉を後ろ手で閉めたら…「っ、ユノヒョン!」「なかに入るまで我慢したから褒めて」「え…っでも、その…マネージャーが」直ぐ先には僕達に気付いてこちらを見て立っているマネージャー僕からすれば、ヒョンの肩越しに目が合っていて…「だって、俺が居るから前を向ける、ひとりじゃ無理だったなんて…そんな事を言われたら愛おしくて仕方無いよ俺だってチャンミナが居るから…」「…うん…ひとりじゃあ多分、震えて何も答えられなかったかもでも、多分ちゃんと話も出来たし良かったです」ヒョンの背中を擦って、それから「マネージャーが見ています」と言って胸に手をついて訴えたら「残念」なんて悪戯っぽく笑ってそうっと離れるマネージャーに咎められるかと思ったけれど、彼は僕達の傍にやって来て、やはりと言うか…インタビュー内容が変更になった事を後で知らされたのだと教えてくれた申し訳無い、なんて謝られたけれど、知らなかったのは僕達と同じで何も悪くなんて無い「マネージャー、あの…少しだけ時間を頂きたいんです」「何かあるのか?」「その…雑誌のインタビューでは無くて、僕自身からきちんとファンに、今の僕についての報告をしたいと思って公表してしまったのに触れない事にするのは…オメガ、自体をタブーにするようで…僕以外のオメガ達にとっても良い事だとは思えないんですだから…勿論、上と話をして許してもらえればですが」「…ユノとチャンミンがそうしたいと思うなら…俺はそれをサポートするつもりだよ」アルファにきっと僕の本当の気持ちは分からないオメガを家族に持つというインタビュアーの女性にも、僕達の傍に居てくれるマネージャーにも…そして、ユノヒョンにだってだけど、それは誰だって同じ事だからこそ、出来る範囲で自分の素直な気持ちを言葉にしたいそうして、今の僕でこれからもユノヒョンの隣でステージに立ちたいと思うランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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- 21Apr
Switching! 2
初めてのひとり暮らしそして初めての環境で新たな高校に転入して二週間クラスの皆はとても親切だし、人見知りの僕に優しく接してくれている優しくて親切な先輩も居るひとり暮らしにはまだ少し慣れなくて、寂しさも有るだけど、ひとりだからこそ親を頼らずに自分で頑張ろうと思えるし…現在海外赴任中の両親と暮らしていた頃よりも規則正しい生活を送れている「あの、この魚ってもう少し安くなりませんか?これも一緒に買うので…お願いします」買い物にも慣れたし、自分で限られた生活費のなかで遣り繰りする為には節約も大切なのだと分かってきた「ん?誰かと思ったら…今日も来てくれたのねひとりで親元を離れて、なんて健気だから安くしておくわ」「ありがとうございます!」そう、僕は思っていたよりも上手く新たな生活を送っていて…「可愛いししっかりしているし、うちの息子が独身だったら嫁に欲しいくらいだわ」「…はは、ええと…光栄ですでも、全然しっかりなんてしてないです」顔馴染みになった魚屋の女性店主は、『僕』つまり、男である僕を見て「謙虚だし、益々理想のお嫁さんだわ」なんて…多分、とても褒めてくれている「ありがとうございますこの間教えて頂いたレシピを作ってみようと思います」魚の入ったビニール袋を受け取って頭を下げたのだけど、思い切り頭を下げたらお尻がスースーしたから慌てて空いている左手で後ろを押さえて頭を上げた下着の上に短いスパッツを履いてはいるけれども、未だに慣れないのは…スカートを履いているというこの不思議な感覚僕は男だだけど、理由有って…なんて勿体ぶる必要も無い転校するにあたって、両親が高校に提出したデータで間違って僕の性別が女性になってしまったそしてそのまま申請は全てつつがなく通って、転入前日に届いた制服を転入日の朝に広げて、初めて僕はその事に気が付いて…親に連絡をしたけれど、『直ぐに男だって分かるわ』『でも、チャンミンは昔から間違われる事もあったし似合うと思う』なんて、世界を股にかけて働く両親らしい、ある意味おおらか、ある意味放任主義な言葉を投げ掛けられた僕は女子の制服で登校したそして…自分からは男だと言い出せず、更に誰にも怪しまれないまま二週間が過ぎてしまったのだ「こんな事って有り得る?いや、でも最近自分で見ても我ながら可愛いし似合ってるし…」魚屋の前に野菜も買ったこうして学校帰りに買い物をする事にも慣れたそして、女子高生になった僕に街のひと達も優しくて、色々とサービスをしてくれたりするだから、有難い事にいつも買ったもの以上に袋が膨れ上がる「日持ちするレシピ、探してみよう」元々料理は一応出来る方ひとり暮らしを初めてからはもう、必要に迫られて、だけど…学校でも外でも、常に『男だとばれたらどうしよう』という緊張感がどこかであるから、自分の部屋でひとりで料理をしたりゆっくり出来る時間が至福の時「重た…自転車、やっぱりあった方が良いのかな」学校までは歩いて通える距離でも、買い物をして荷物が増えるとなかなかきつい筋肉があまり無いから、筋トレにはなるかも…でも、今筋肉を付けたら男だってばれてしまうかもしれない「いや、男だし…でもばれたら…ああもう、何で僕、最初に言わなかったんだろう」転入の日、焦ってしまって…母さんにも『直ぐに男だって分かるし、そうで無くても言えば大丈夫』なんて言われたでも、皆僕を女子として接してくるし、そうしたら言えなくなってしまった違う、それだけじゃあ無くて男だって言い出せなくなった理由がもうひとつ有る「…あ、赤…」目の前で信号が赤になったから立ち止まった何となく、カトクのトーク画面を見たくてスマホを取り出せないかなあと思ったけれども、両手は高校の鞄と、それから買い物袋で埋まっていて取り出せない別にひとり暮らしの部屋に帰ってからでも問題は無いだけど、僕がメッセージを送った後、どうなった確認していないそれに、『そのひと』は僕が男だと言い出せなくなった理由のひとつで…「チャンミン!」「え…っあ、ユノオッパ…!」声に振り返ったら、近付いて来たと思っていた自転車の音は、丁度今思い浮かべていたそのひとつまり、ひとつ上の先輩である三年生のユノヒョン…では無くて、ユノオッパのものだったようだ因みに、この二週間で僕は『オッパ』と呼ぶ事に慣れてしまった「もうとっくに学校を出たって言っていたから…しかも帰り道に会えたのなんて初めてで嬉しいな」「あ、ええと…見ての通り買い物をしていました毎日じゃあ無いけど、大体帰り道で色々と寄るんですひとりなので」「そっか…大変だよな」そう言うと、オッパは自転車を横断歩道の脇に停めて降りて、そして僕を手招きする「どうしたんですか?」「見るからに重そうだ、籠に入れたら良いよ」「えっ、あ、でも…」どうしようかと思っていたら、あっという間に僕の手から袋はオッパの手に移った重たかったのに、ひょい、と持って丁寧に自転車の前籠に入れられた「鞄も貸して、邪魔だろ?」「え、邪魔じゃ無いです、これくらい…っあ」ユノオッパは優しい、けれども何だかとてもマイペース籠に買い物袋を入れて運んでくれるつもり、なのだろうけど、幾ら僕が女の子に見えたって鞄くらい持てるし邪魔になんてならないのになんて思っていたら、彼はこめかみを指先で掻くようにして何かを思案するような顔「どうかしましたか?」「ん?いや、ええと…下心が有ると思われると困るなあと思ったんだけど…なんて言う方が怪しいよな」「え…」思わせぶりな言葉何の事だか分からなくて首を傾げたら、困ったように笑うそんな顔までとても格好良くて、モテる理由が分かる男としては羨んだり妬む対象になっても良いものなのに、僕はと言えば見蕩れてしまっている「荷物が重たいだろ?だからチャンミンのマンションまで運ぼうと思ってでも、俺はチャンミンの住所を知らないつまり…嫌じゃ無ければどの辺りか教えて欲しい」「あ…え、でも良いんですか?ユノオッパのお家の方向ともしも違ったら…」「俺は自転車だし、女の子を放っておけないよ」そう、きっと僕だから、じゃあ無い僕を女の子だと思っているからだからオッパは優しくしてくれるそして僕はいつもこの優しさに甘えてしまうし…『実は男なんです』なんて言えなくなってしまう「ありがとうございますじゃあお言葉に甘えて…」住所を告げたら、物凄く近所、では無かったけれど方向は同じだった僕のマンションの向こうにユノオッパの家は有るらしい「住所を聞いただけで分かるかな?と思ったけど、それなら直ぐに分かるよ」「凄いです方向も同じだなんて嬉しいし…あ、青になってるから渡らなきゃ…」「待って!」歩き出そうとしたら、左腕を掴まれた制服のシャツとブレザーの上からだけど彼の手の力ははっきりと伝わってきて、何故かどきどきしてしまう男同士なのに「…どうしたんですか?」「折角自転車が有るんだから乗って?」「え…」「だから、鞄も預かったんだよ持ったままじゃ掴まり難いだろ?」「あ……そっか…」鞄を『邪魔』と言ったのは、重たいからだと思ったのだけど…つまりは、ふたり乗りする時に邪魔になるという事だったらしい「重くないですか?僕…じゃ無くて、私、身長もあるのに」「自転車だから問題無いよそれにチャンミンは細過ぎるくらいなのに」大丈夫だから後ろに乗って、と言われたから「失礼します」と声を掛けて後ろに跨ったそうすると、どうしても脚が少し開いてしまうから、脚がスースーして少し心許無いもしかして、女の子は横向きに脚を揃えて乗るのだろうか、なんて思ったけれど、乗り直すのもおかしいから諦めた「じゃあ行くよなるべく安全運転で行くけど…嫌じゃ無ければしっかり掴まって欲しい」「…はい」自転車は動き出した目の前の背中は、細く見えるのに大きいブレザージャケットの腰の辺りを両手で掴んで、上半身は少し離したでも、スカートは捲れ上がってしまいそうだから、オッパの腰に触れるようにしてぴたりと寄り添った「学校には慣れた?」「はい、クラスの皆も優しいし…それにオッパも居るし毎日カトクで話してくれるし寂しく無いです」「俺はその…話をしたいからでも、そう言ってもらえて嬉しいよ」多分、何となく、だけど僕達は良い感じだ出会った初日、つまり僕が転入する日の朝、初めて出会ったのがユノオッパだった優しく学校を案内してくれてとても嬉しかったカトクのIDを交換して、その日には休み時間にも心配して教室まで来てくれて…毎日、例え会えなくてもメッセージのやり取りをしているし、学校でも偶然会う事が少なく無いオッパはとてもモテる僕のクラスにも彼に憧れている女子が少なく無いだから、羨ましいって言われるけど…僕は、ただの親切な先輩で友達だと彼女達に伝えているだって、僕以外学校の誰もこの事実を知らないけれど、僕達は男同士だから「チャンミン」「はい」「ええと…下り坂なんだで、少しだけ危ないかもしれないから…もう少ししっかり掴まって欲しい」ぼんやりと夕方の街並みを眺めていたから、その声で初めて坂に差し掛かっている事を知った「しっかり…こう、ですか?」「うん…坂の間だけでも良いから」確かにくっ付いていないと危ないかもと言うか、オッパが心配しそうだから、腰に腕を回すようにして顔も胸も背中に付けたゆっくりと自転車は坂をくだり出したから、背中に頬を付けたまま左側の景色を見ていた、のだけど…「…!」はっと気が付いて、慌てて上半身だけそっと彼の背中から離したブレザーを着ているし、その下にはシャツも着ている勿論、自転車を運転している目の前の彼もそうだ衣服越しだから違和感は感じないかもしれないだけど、僕は男だから当たり前に胸の膨らみなんて無い「チャンミン?ごめん、やっぱりくっ付くだなんて嫌だよな」「え、いえ、その…そうじゃ無くて…恥ずかしいしそれに、胸も無いし…」坂は漸く終わって、また赤信号で自転車は停止した腹に回していた手を少し引いて、ブレザージャケットの腰の辺りをぎゅっと掴んだら小さな頭がこちらに振り返った「恥ずかしいのは俺もだよ…勿論悪い意味じゃあ無くてそれに、チャンミンは魅力的だから何も気にする必要なんて無いよ」「…ありがとう、ございます」格好良くてスタイルも良くてしかも優しいし気遣いも出来るこんなのモテない訳が無いだから、男の僕までどきどきしてしまうのだ「でも、誰にでも言ってたり…なんて」「言わないよ、こんな事言っただろ?チャンミンと居ると楽しいし…ふたり乗りだって誰でも誘ったりしない」「…そっか…」「うん」もう、前を向いて自転車はゆっくりと走り出す擽ったいようなユノオッパと過ごす時間こんなの、男同士だから普通じゃあ無い勿論、オッパは僕を女の子だと思っているからなのだけど…だからこそ、僕が距離を置かなければいけないそう思ってはいるでも、この擽ったい感覚に幸せを覚えてしまった「わ、もうマンションの近くです!買い物の後に歩くといつも凄く時間が掛かるのに…今日は料理に時間が使えそうです」「あはは、嬉しそうな声が聞けてほっとしたよ」「嬉しいに決まっていますだって、凄く助かりましたオッパはその…重くて大変だったと思うけど」風を切る音で声が届きにくいから、抱き着くようにして後ろから小さな顔を覗き込んだでも、ちらりとこちらを向くオッパと視線が合うと距離が近くて何だか恥ずかしいそれに、また胸が背中にくっ付いていたから慌てて上半身を離した「マンション…教えるのが嫌だったら近くでも良いよチャンミンの好きな所で停まるから」オッパは僕を女の子として見ているだから、こんなにも優しいそして…多分、オッパの周りに居る沢山の女の子達のなかでも、僕は少し特別な位置に居る、筈荷物を持ってくれたし自転車に乗せてくれた僕に言う言葉を他の女の子には言わないのだと言う僕を見る目がいつも優しい毎日、まめに連絡をくれるし、分からない事が有れば何でも聞いてと言ってくれるひとり暮らしの僕が寂しくないようにって今だって…僕が『ひとり暮らしの女の子』だから、家を教えるのは怖いのでは無いか、なんて気遣ってくれているのだでも、僕は男だ「大丈夫です、あの先の…あ、ちらっと見えている白いマンションですオッパがしんどく無ければそこまで乗せてください」「勿論、だってチャンミンの部屋があそこなら…俺の家はそのもっと先に有るから」嬉しそうなオッパの声を聞くと、この答えは正解だったって嬉しくなるのと共に、やっぱり本当の事なんて言えないと思うだって、当たり前じゃあ無いか女の子の格好をして女の子の振りをする男なんて気持ち悪いに決まっている女の子だから優しくしてくれるけど…男であればそんな必要なんて無いのだから二週間歩いていた道は、自転車で通るとまた違った景色が見えたもしかしたら、それだけでは無くて彼と一緒だったから、だろうか「本当にあっという間でしたありがとうございます」「お礼なんて良いよそれに、放課後は会えないと思っていたのに偶然会えて嬉しかったから」籠からビニール袋と僕の鞄を取り出して「重たいから気を付けて」なんて言う確かに重たいけれど、男だし問題無い「ありがとうございます、じゃあまた…明日」「うん、また明日」自転車の先輩と別れてマンションのなかへと入ったオートロックを解除してエレベーターに乗っている間もずっとそわそわするまだ両手は塞がってスマホを取り出す事が出来ないから「ふう…着いた」エレベーターを降りて廊下を歩いて、僕ひとりの城の前で鍵を取り出して扉を開けたなかへと入って靴を脱いで、急いでキッチンにビニール袋を運んで…「…あれ、これって…今、だよね?」漸く取り出したスマホカトクのトーク画面は、最後に見た時は僕からユノオッパに『これから帰ります、また明日』と送ったメッセージだったそれを見たであろう話をしていたから、返事があっても一件、だと思っていたでも、オッパからは二件のメッセージがあった一件は、僕の言葉に対して『また明日』というものそして、もう一件の送信時間はつい今さっきで…「『会えて凄く嬉しかったなんて、実際目の前に居るとなかなか伝えられないんだけどチャンミンと近所なのも嬉しい』…嬉しいって伝わってます、ちゃんと」『また明日』と言い合っても、いつもひとりの部屋でカトクを交わしているだから、今日もそうなると良いなあって思っていたでも、先にオッパからメッセージがあると思っていなかったから…驚いたし嬉しいし、たったそれだけでひとりになった寂しさが薄れていく『私も嬉しかったですちゃんと伝わっていましたか?』何度も打ち直して作った文章何故かいつも、送信する時にどきどきする友達にメッセージを送る時も、他の先輩にメッセージを送る時もこんな風にどきどきしたりしないのに送信した後は何だかずっとふわふわしていて落ち着か無い直ぐには既読にならなかったから、彼はまだ自転車を漕いでいるのだと言い聞かせて買い物した野菜や魚を取り出したキッチンを片付けて、今夜は何を作ろうかとスマホでレシピを探していたら通知ランプが光って…『そうだと良いなあと思っていたけど、言葉で言ってもらえると凄く嬉しいし伝わったよ』「…返事が来てもふわふわするだなんて…こんなの初めてだよ」恋は胸が苦しくなるし、そして幸せにもなるつまり今僕は、ほぼそんな状態ほぼ、と言うのは…この気持ちが勘違いであって欲しいからだって、恋をしても、例え両想いになっても本当の事は言えないし、男同士だから進展のしようも無いどころか、知られたらその瞬間に全てきっと終わってしまうから暗くなっていくダイニングキッチンの電気をつけた現実について考えると、僕の心も暗くなってしまうから、明るいスタンプを返して美味しい料理の事に頭を切り替えたランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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未必の恋 20
ユノさんが『チャンミンには特別に見せてあげるよ』と言って連れて来てくれた、彼のブランドのソウルでの旗艦店予定地勿論、元々ユノさんのブランドが大好きでユノさんに憧れている僕としては、こっそりとインターネットで調べていたのだけれど、ソウルに店を出す事は記事になってもその場所までは明かされておらずで…何となく、中心部なのだろうと思っていたけれども、タクシーで到着してみたらそこは表通りから一本外れた場所で、近くには公園もある静かな場所だった「此処だよ」「え…此処…どなたか住んでいるのでは?」「いや、もう誰も暮らしてはいなくて持ち主はこの建物を壊してしまおうと思っていたらしい」それは、少し古びてはいるけれど立派に見える屋敷近代的なビルやマンションの増えたソウルに於いては珍しい、少し歴史を感じさせる韓国式の建物で、二階建てのようだ「俺のデザインにはいつもこの国への気持ちも込められていて…歴史が俺を育んでくれたと思っているから、自然や大地と調和するような店が良いなあと思って場所を探していたんだそうしたら、場所どころか、建物まであった!凄くないか?」「ふふ、凄く嬉しそうですね理想に近い物件だったのですか?」「ああ、勿論リノベーションはするよ良い所は残して新しさも出して…だけど、この少し静かな場所も全て、これ以上の場所は無いと思ったんだ」見渡してみると、住宅街という訳でも無さそうだ古い店舗や小さな会社がぽつぽつとある大通りから近い、とは言えやはり目立つ場所では無い「あの、でも…折角のソウル一号店なのに目立つ場所では無くて良いのですか?ホテルは喧騒から離れる事も有りですが、都市部だとやはり利便性や分かりやすい場所にある事が大切なのでホテルと比べるものでは無いかと思いますが気になって…」そう言ってから、水を差すような事を口にしてしまったと思い「ごめんなさい」と頭を下げたすると、左側に立つユノさんは僕を見て何故か嬉しそうに笑う「…何ですか?」「いや、『申し訳ございません』じゃないから嬉しくて」「…っ、砕けた方が良いと言われてから気を付けているので」でも、改めて言われると恥ずかしいそれに、ホテルマンの良心が痛むけれども、ユノさんが普通に話して欲しいと言うし…今日は僕もオフになっただから、今日は恋人、なんて我儘な事は思わないし勿論言わないから、せめて友人のように振る舞えたら良いなあと思う「ユノさんの服は…上手く言えないですが、作り手の愛情を感じるんですだから大切にしたいって思うんです新しいのにどこか懐かしさも有るそんな雰囲気にも合っていると思います」「ありがとう、そう言ってもらえたら嬉しいよ場所は勿論、目立てばそれだけ新たな客を掴む切っ掛けにはなるでも、それよりも自分が表現したいものが有るんだ商売として売らなければならないなら、場所や小手先の事では無くて、デザインや素材をもっと良いものにしていけば良い」「流石ユノさんですね」勿論、単身イタリアに渡って苦労も多かったと思う以前何かの記事でそんな話を見た事があるそれでも、自分の力で、実力で切り拓いてきたからこそユノさんの言葉には説得力がある頷いて、まだ工事が着工される前の建物を見上げていたら、左肩にユノさんの肩がとん、と当たったから彼の方を向いたすると、ユノさんは『わざとだよ』と言うように微笑んで、また前を向いた「声に出せば叶うし、怖気付いても仕方無いもっと自分のブランドを…この国で知って欲しいんだ」ユノさんのその言葉は、何だかとても、僕の胸のなかにずっしりと響いた『声に出せば望みは叶う、そして怖気付いても仕方無い』平凡な僕からすれば、声に出す事で叶う事ばかりでは無いと思うだけど、確かに怖気付いてばかりでは前に進む事は出来ない自身のブランドを世界に向けて発信し続けるユノさんの言葉だからこそ、説得力があるし…これまでやって来た事があるからこそ言えるのだと思った「ソウルで、この街でユノさんの服を着るひとが増えたら嬉しいです」「俺も、チャンミンがこうして着てくれると嬉しいでも、安くは無いから無理に買う必要は無いんだよ」「…今までもお給料を貯めたり遣り繰りして買っているので大丈夫です兎に角、お店が出来るのを楽しみにしています!でも…」「でも?」『でも』なんて勢いで言うのでは無かった言わなければ何も変に思われないのにだけど、つい嬉しくて…それにスーツを脱いでユノさんの服を身に纏っている所為か、普段のように自分を律する事が出来ない「単なる戯れ言ですお店がオープンしても、そこにユノさんが居ないなら寂しいなあって思って」「チャンミン…」「おかしいですよね、ちょっとこうして一緒に居るだけなのにユノさんは大切な仕事をしているし、僕も…今日はオフだけど仕事なのにあ、内緒で写真を撮っても良いですか?誰にも見せないしオープンした時に比べたいなあって……っ…あ…」レザージャケットのなかからスマートフォンを取り出して電源をつけたカメラアプリを起動させて建物に向かって掲げたところで肩を抱き寄せられた「…ユノさん…?」「写真、どうせなら一緒に撮ろう」「え、一緒って…」抱き寄せられた事、それにユノさんの言葉僕はもう、パニック状態まるでこんなの本当にデートのようだ「誰にも見せたら駄目だよああ、でも…総支配人には『デートで撮りました』と自慢しておいて」「しておいて、って…決定事項ですか?」「ああ、勿論」悪戯っぽく笑うと、肩を抱いたままくるりとまわって建物に背を向けるようにして立った「よし、じゃあこれでチャンミンが撮って?」「…どんな顔をすれば良いのか分かりません」「あはは、どうして?笑って欲しいよ」ユノさんは僕がとんでも無くどきどきしている事なんてきっと知らないのだろういや、例え知っていたって、そんな反応をされる事も日常茶飯事で何とも思わないのかもしれない、なんて思った「早く撮って」と急かして僕に頬を寄せるそんな姿はやはり少し幼くも見えるけれど、僕をこんなにもどきどきさせるのはおとなの男性だからいや、普通は男にどきどきなんてしないけれど「もう、撮りますよ」「うん、お願い」右肩を抱かれたまま、頬はくっ付いたまま上手く笑えているか、なんて分からないけれど、ユノさんと写真を撮る機会なんて滅多に無い事は分かっているから、こっそり連写モードにして、その上何度もシャッターを押した「一緒に、は終わりです後は建物を撮って…あ!ユノさん、もう少し向こうに立ってください一緒に写したいです」「え?向こうに行けば良い?」「はい、モデルのようにポーズを取ってくださいお願いします」建物の目の前まで駆け足で向かったユノさんは、こちらを向いてトレンチコートのポケットに手を入れたまるでランウェイの真ん中でポーズを取るモデルのようにくるりと回るとコートの裾がはためいてとても綺麗だまだ、近くに立つ木々も芽吹いてはいないけれど、春になればきっと…ユノさんのモスグリーンのコートのように穏やかな緑が広がる光景が想像出来た「撮れました、ありがとうございます後でユノさんにも送りますね」「うん、ありがとう」なんて、まるでユノさんの為に撮ったような事を言ったけれど、この写真達は一生消せない僕の大切な宝物だ離れ離れになってしまえば、見る度に切なくなるかもしれないでも、何も残らないより余っ程良いスーパーマーケットが近くにあったから、歩いて移動した天気も穏やかで、冬はなかなかに厳しいソウルにも春が近付いている事が感じられたユノさんは歩きながら周りをきょろきよろと見ては黒い瞳をきらきらと輝かせていたどうしたのかと聞いてみたら、この辺りには最近良く仕事で来てはいるけれど、タクシー移動が殆どだし、何よりも仕事中は気も張っているのでゆっくりと辺りを見渡す事が出来ていなかったそうだ改めて眺めて、都会だけれど少し落ち着いた場所は自分の望む理想に近くて、あの建物を選んで正解だと告げたインターネットのなか、雑誌のなかだけで見ていた憧れのデザイナー大好きなブランドのデザイナーだから同じ国の出身で年も近いからまるでモデルのようなスタイルで、彼自身がブランドアイコンでもあるからだから憧れていたでも、中身を知れば知る程、憧れから恋へと変わるユノさんを知れる事は嬉しいけれど、優しくて素晴らしい彼の事を僕と同様の気持ちを持って見つめるひとも多いのだろうと思うとまた切なくなる「…っ、もう考えないようにしなきゃ」「何が?」「いえ、その、メニュー…どうしようかなあってええと、考え過ぎても何が良いか分からないので、ユノさんが食べたいものを教えてください」カートにカゴを載せて店内を進んでいたら、ユノさんの手が伸びてカートは彼の前へと移動した「俺が持つよそうだなあ…特別なものじゃ無くて良いんだチヂミが食べたいし、チゲも食べたい煮込みも作れるって言っていたよな?ならそれもあと、苺…これはこのままデザートにしよう」「…僕の料理より、ユノさんには苺が有れば良いのでは?」苺を見て瞳を輝かせるユノさんについ笑ってしまったひねくれたり苺に嫉妬している訳では無くて本音で言ったのだけど、苺を三パックもカゴに入れたユノさんは僕の方を向いて「両方大事」と言った今だけは、僕の心のなかでだけは、本当のデートだって思っても許されるだろうかそれが崩れたら、ただ虚しくなるだけかもしれないけれど「折角作るなら美味しくしたいので…食材も厳選しましょう」「何でも良いよ、俺が出すから値段は気にしないで」「え…ユノさんひとりで食べるんですか?」「ん?そんな訳無いだろ俺も料理をその…少しは手伝うし、一緒に作って一緒に食べよう」「じゃあ、僕も半分出します…全部、と言えなくて申し訳無いですが」頭のなかでレシピを思い描いた基本的な調味料は、少しくらいなら厨房から借りても許されるだろう足りない調理器具も同様に借りたら良いそうして足りないものを、ユノさんとふたりで店内を回りながらカゴに入れて回ったのだけど…「これ、なかなかの量になりましたねちょっと欲張り過ぎたかなあ」「大丈夫、品数は多いけどひとつひとつはそんなに無いし」レジに並んだところで、カゴがふたつ分いっぱいになった事に気が付いた実は甘党であるユノさんのお菓子が多いから、というのも有るのだけど「店を出たらタクシーをつかまえてホテルに戻ろう」「はい、そうですね」レジに並びながらも、何だか物凄く視線を感じる僕に、と言うよりはやはりユノさんにだって、本当に芸能人のように素敵だし、僕からすればどんな芸能人よりも外見も内面も格好良い…芸能人の内面、なんて知らないけれど「あ、チャンミン」「どうしました?」もう僕らの会計の番、という時ユノさんがはっと何かに気付いたように僕を呼んだ「買いそびれたものがあって…どうしても飲みたいんだ、お願いしても良い?チャンミンの分も一緒に持ってきてくれたら良いから」「え、でももうレジが…」「良いよ、ここは取り敢えず俺が出しておくからごめん、どうしても今飲みたくて」『お願い』と手を合わせて頼まれたから、レジ列から離れてドリンク売り場へと向かったユノさんが指名したのは、ペットボトルのカフェオレだ僕も飲んだ事があるけれど、とても甘くて一度しか飲んだ覚えが無いもの「やっぱり甘いから好きなのかな?」言われたそれを一本と、それからブラックコーヒーのペットボトルを一本、それぞれ棚から取ってレジへと向かった間に合うかと思ったけれど、ユノさんはもうレジ会計中仕方無いから空いていたセルフレジで会計を済ましたのだけど、ユノさんはもう出入口の傍で袋を抱えて立っていた「すみません、お待たせして」「あはは、むしろ俺の方がありがとう、だよ」袋を持とうと手を伸ばしたけれど、必要無いと首を振られてしまった「でも」と言い淀んだら、「チャンミンはコーヒーを二本も持っているから」なんて言う僕は非力な女性では無い、だから少しだけ素直に喜んで良いのか分からなかっただけど、直ぐに乗り込んだタクシーのなかでユノさんは僕からカフェオレを受け取って言った「チャンミンにはいつも色々な事をしてもらってばかりだろ?だから、俺に出来る事はさせて欲しい」「そんなの…だって仕事で…」「…仕事だって言い切られたら少し寂しいかなだけど、苺のワインをこっそり準備してくれたり、俺の我儘に付き合ってくれたり他の客にはした事が無いって言ってくれたから仕事だけじゃあ無いって信じているよ」言うだけ言ったら、ユノさんはペットボトルの蓋を開けてカフェオレを嬉しそうに飲んだ仕事だけじゃあ無いって思っているのは何よりも僕の方だそう思い込んでいないと、そう言い聞かせていないと、この気持ちがどこまでも膨らんで隠し切れなくなるから「…甘く無いんですか?」「美味しいよ、チャンミンのそれは苦く無いの?」「飲んでみますか?」「うん、じゃあ交換しよう」お互いのペットボトルを交換して飲んでみたカフェオレはやっぱり、僕には甘過ぎるでも、少しだけ口のなかにはブラックコーヒーの味が残っているから、甘さも少しは中和された「苦いな…でも、チャンミンが好きだって言うなら美味しい気がする」「カフェオレも甘いですでも、僕のコーヒーと混ぜたら甘さも控えめで飲みやすいかも」ユノさんの言う、仕事だけだと寂しい、というその言葉の真意は何なのだろうそんな事はこれまでも何度も考えてきたでも、ひとの気持ちは様々で、恋愛かそうでは無いか、の二択では無いユノさんと僕は、これだけ近くに居て近付いたような気持ちになっても、やはり生きる世界は違うそれでも、傍に居れば、混じり合えば、全く同じ気持ちにはなれなくても似た感情を共有する事は確かに出来る筈いや、もうそれは叶っている筈「今度、部屋でカフェオレを作る時は少しだけ甘さを控えめにして欲しい」「甘さ控えめに目覚めましたか?」含羞むように笑うユノさん僕のコーヒーの好みに少しだけ近付いたらしい彼の私服を身に付けている僕は今、それならば…彼とひとつに混じり合っているのではないか、なんてひっそりと思ったのだけど、あまりに恥ずかしいし昨夜のベッドでの事を思い出してしまったから、窓の外の流れ行く景色を眺めた見慣れた景色なのに、隣にユノさんが居るだけで違う認めてはならないと思っていたけれど、恋は僕の感性を少しだけ豊かにしてくれるようだランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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- 20Apr
お花売り 76
生まれて初めてブリーチをして明るくなった髪の毛まるで銀髪、いや真っ白になった…と言ったら、ユノには『プラチナブロンドだよ』と笑われたのだけど、僕にとっては違和感しか無かった髪の毛もユノからすれば天使のように見えたらしい…なんて事は蛇足で、ブリーチした後に少し色を乗せた髪の毛の色は結局ブロンドで、目立つ事には何も変わりは無かった僕がひとりでアルバムを発売するにあたって、僕の為にチームが出来た元々素人の僕は、歌が何よりも大切だと思うのだけど、スタッフ達からすればビジュアル面でのアピールもとても大事らしいユノのアルバムにコーラスで参加して、その後の音楽番組に出演したり各種メディアの取材を受けた時も少しは染めていたけれど、所謂茶髪で落ち着いていた世間は僕に落ち着いたイメージを持っているだろうし、バックコーラスだから前に出るイメージも無いだからこそ、それを払拭してひとりでも存在感を示せるように、とスタッフの方達が僕の新しいビジュアルを考えてくれたのだだけど…「僕にこのコンセプトって…ユノならまだしも…」着替えを終えてから、何度も自分の姿を確認したユノと一緒にメディアに出た時に色々な衣装を着たけれども、勿論主役はユノで僕はバックコーラスなのに自分の役目以上に表に出られていただけだから、ユノより目立つ事も無かったし、例え普段は着ないような衣装だとしてもユノも一緒だったから安心感があったでも、ひとりで派手な服を着る事にも、髪の毛やメイクだけで無く服装まで派手になった自分の姿も見慣れない「俺ならまだしも?」「わっ、ユノ、いつの間に…」「ん?俺の打ち合わせが一旦終わったからチャンミナの応援に来たよ」こんな事も、今日は事務所内での撮影だから直ぐ傍に居たスタッフは「本当に仲が良いですね」と笑っているけれど…僕達が恋人同士だという事は知らないと信じている「へえ、聞いてはいたけど、実際に見てみたら凄く良いいつもと雰囲気が違ってインパクトも有るし」「インパクト…やっぱり僕にはこんなの着こなせないですよね」スタッフの方達ならまだしも、ユノに見られるのは恥ずかしいだって、誰よりも普段の僕を知っているひとだから衣装が皺にならないように、だけど何とか少しでも今の自分を隠せるように両手で自分を抱き締めるようにして顔を逸らしたら、ユノの気配が近付いて来て「違うよ、色気が凄くて」なんて耳元で囁かれた「ひっ、ユノ!近いです!」「え?いつももっと近いのに…兎に角、似合っているよ」「……」真正面から僕をじっと見て微笑むユノの顔に嘘は無いでも、こんな…お腹の部分がレースになって完全に透けているニットだったり、お尻の形まで分かってしまいそうな白のスキニーパンツだったりそれに、ニットの上には胸さえ隠れないくらい丈の短いトップスを重ねていて、これじゃあまるで何だか…海外の映画や夜の街に出て来そうな格好だ「あはは、チャンミナの不服そうな顔も可愛いなでも、知ってるだろ?俺だって、仕事では色んな衣装を着ているよ普段着とは全く違う、そんなものだよそれに、俺と一緒に露出していた時とは全く違う魅力を打ち出そうというコンセプトだから…正解だよ」「インパクトは大事だと分かっているし仕事だと分かっていますでも、まるで服に着られているようで…」「大丈夫、俺と一緒の時も出来たし、だから今日だって出来るよ」そう言うと、スタッフの方達も周りに沢山居るのに、ユノは僕を強く抱き締めた恥ずかしくてどうしようかと思ったでも、触れられたら少し緊張が解けて…「シムさん、あちらにお願いします」「…っあ、はい!」慌ててユノから身体を離して、スポットライトの下へと促されるまま向かった心の準備を、なんて思ったけれど、それが出来ないまま撮影は始まった僕の今回のコンセプトは、まずは何よりも今僕を知ってくれているひと達が驚くくらいのインパクトをビジュアルで与える事ユノのバックコーラスとして声で参加をして、それだけでは無くてアルバムブックレットや各種テレビ番組にも数回参加したその時はユノと対になる衣装ではあったけれど、勿論僕はあまり目立たないようなスタイリングやヘアメイクだったそのイメージをまずは壊す事そして、それだけでは無くて僕の声の幅を知ってもらう…なんて自分で言うと恥ずかしいのだけど、ひとより少しは音域の広い僕の声を生かす曲が選ばれた因みに、歌詞は二曲だけだけれど僕が全て書いたこれがなかなか大変な作業だったけれど、ユノの事を想いながら書いたし、曲に乗ると我ながらとても素敵なものになったと思う「適当に動いてください」「…適当…」どうしよう、と思っていたら、数メートル先に立つユノと目が合った今はもう撮影中だし、ユノに見蕩れたらいけない、と視線を逸らそうとしたら…「チャンミナはモデル経験も有るだろ?それを思い出して、自由に動いてごらん」「…っ!ユノ、それはもうアルバイトで…モデルって言ってもただの広告用の、なのに…」「うん、知ってるよ実はこっそりインターネットで探して保存してあるから」ユノは僕に手を振りながら、とんでも無い告白をしてきた「そのままなるべく目線はカメラにお願いします」「あ、はい、すみません!」顔が熱くて、ユノにどの写真なのか聞きたいし消して欲しいだって、僕がやっていたモデルのバイトなんて、インターネット広告や店舗の広告に載るだけのもの今のように特別に着飾ったりメイクをされて、自分だけの為にスタッフの方達が動く訳じゃ無い立って手の動きを付けるくらいで、ポーズなんて殆ど無いようなものだし…「あ…」ひとりじゃあ無理だしこんな衣装やブロンドの髪の毛、目鼻立ちを際立たせるようなメイクも全て、僕には合わないと端から尻込みしていただけど、これはまだ無名の僕が少しでも注目される為だし、無名の僕に沢山のスタッフの方達が考えてくれての事それに、ひとりじゃあ無理だって思っていたけれど、ユノの隣で活動に参加していた時、僕は撮影もレコーディングも収録も、それに記者会見だって普通では経験出来ない事を経験させてもらった「良いですね、今の表情もっとカメラを見てください」「……」自分の表情が変わったのかどうか、なんて分からないでも、顔を上げたらカメラマンの傍にユノが居て…見られているのは恥ずかしくもあるけれど、ユノが居るから大丈夫と思えたそれに何より、ユノの僕を見る目が何だかとても熱かったから、僕も次第に彼の目に吸い込まれるようになって、次第にフラッシュや沢山の視線は気にならなくなった「チャンミナ!凄く良かったし…まだまだ知らないチャンミナの姿が有るんだって嬉しくなったよ」「…ありがとうございます」この衣装での撮影を終えて、モニターの前で写真のチェックをしていたら、僕よりもカメラマンよりも誰よりも、ユノが上機嫌だった「ん、これも良いな」そう言うと、徐にスマホを取り出してモニターを写真に写すユノとふたりの撮影の時も、彼はそうしていたのだけど…「あの、写真に撮るのって自分の写りを客観的に見る為なんじゃ…」「…ええと、これはプライベート用綺麗なチャンミナを残しておきたくて」「…アルバムが出来上がったら載るかもしれないのに?」「これが選ばれるかは分からないから」ユノの手元を覗いたら、写真のなかの僕はカメラを見て何だかとても切なそうな表情をしていたそれもやはり、ユノの事を考えながら撮られていた時の写真「僕、こんな表情をしているんですね」「新しい発見が有るだろ?」「恥ずかしいですが…」そう言ったら、歌手として僕の大先輩で、そして恋人は「どんなチャンミナも素敵だよ」なんて言ったその後、衣装を二度程替えて撮影をしたユノも流石に別の仕事があるらしく、事務所内のスタジオを出て行ってしまったけれど、最初にユノが居てくれたお陰か…大きな問題も無く撮影を終える事が出来たやはり、と言うか、少し表情が硬いとは言われたけれど、それも強めの衣装やメイクと合わせると何処かアンバランスで、それが魅力になる、なんて僕からすれば褒められているのか分からない事を言われたどの衣装も、僕を目立たせるようなもので恥ずかしかったけれども、それにも徐々に慣れる事が出来たなのだけど…「…やっぱりこれが一番落ち着く」ユノとふたり暮らし、そして元々ユノがひとりで住んでいた部屋この部屋で、発売するアルバムのなかでも今自分が一番お気に入りの曲を口ずさんだ勿論、どの曲もお気に入りだし大切にレコーディングを重ねたアップテンポな曲はとてもキャッチーで耳に残るでも、ユノと一緒に居る穏やかな時間や、彼とのこれまでの思い出だったりを振り返りながら作詞した優しい歌は口ずさむのに丁度良い「…沢山のひとが聴いてくれるかなひとりはやっぱり寂しいけど」もう、後少しで僕の昔からの夢である歌手になる事、が叶う30を迎えて、もう叶う訳も無いと思っていた夢だけど、ユノと出会って動き出した夢ユノのバックコーラスとして声を重ねて、それがあまりにも自分のなかでぴったりときただからもう、ひとりで、なんて考えは自分では無かったけれども、僕の声を聴いて少なからず心が動かされたと思ってくれたひとが居たらしい事は、やはり僕の力になったスマホから流れる自分の音源を聴いて、それに合わせて口ずさむ自分の声だけじゃあ少し寂しいけれど、お気に入りの曲になったそれは、歌のなかの『僕』と、彼とは全く性格の違う恋人ふたりの歌性格も何もかも違うけれど、何だかんだ上手く行っているし、一緒に過ごす内にお互いをより大切に想えて…なんていう、何でも無い日常の、もしかしたら有り触れているかもしれない光景を歌ったもの僕の歌詞は特別なものでは無いでも、その言葉が乗る曲はとても穏やかで優しくて、普通の日常が特別だって思えるような、そんな歌「僕の日常も、すっかり『普通』からは外れたものになったけど…」「ん?何が?」「わっ、ユノ、いつの間に…!」ソファに座る僕の後ろから声を掛けられて、慌てて振り向いて流れる音源を止めたユノは微笑んで「風呂の準備が出来たよ」とソファの背凭れに肘をついて僕を見つめる「…ありがとうございます」つい、顔が近いからキスをしてからお礼を伝えたら、ユノの手が伸びて頬を包まれて、少し濃厚なキスが返ってきた「…っふ……ん、っ…」「何が普通じゃ無くなったの?」じっと見つめるユノは、僕の、僕だけの恋人だ僕の事をとても愛してくれているし、僕も彼を愛しているでも、彼は『韓流の帝王』なんて呼ばれるくらい有名で人気のある歌手で俳優「平凡な花売りと広告モデルで何とか生活していたのにユノに出会って、一気に僕の全部が特別になったって事です」身体ごと振り返って腕を伸ばして抱き着いたそうしたら、ユノは僕の左の耳に囁いた「俺の毎日も、チャンミナに出会って特別になったよこんなに夢中になれる誰かに出会えると思わなかったプライベートも、それに仕事も」「仕事も?」「そう、チャンミナと歌う歌が凄く好きなんだ」触れると止まらなくなるそれに、これから風呂に入らなくてはいけないだから、腕を少し離して距離を取ったでも、やっぱり、ふたりきりの間は、この部屋に居る間は、韓流の帝王は僕だけの恋人だから…「お風呂のなかで、僕の曲を一緒に歌いませんか?」「聴かせてくれるの?まだ内緒だって言うから我慢していたんだけど…」「…もう、レコーディングも終わったし、ちゃんと歌を自分のものに出来たかなって思ってあ、でも!」「ん?どうしたの?」思い出した事があるから、ソファから降りてユノのスウェットのポケットに手を伸ばした「あはは、何?」「スマホ、先に見せてください僕の恥ずかしい広告は消さなきゃ駄目です」「ああ」とユノは思い出したように微笑んで「俺の宝物のひとつだから駄目」とにべも無く断られた恥ずかしいけれど、ユノが嬉しそうだからそれ以上は言えなくて…だから、僕も自分の今の夢はまだユノに内緒にしておこうと思う叶えられるか分からないし、まずは目の前の仕事を精一杯こなして結果を出さなければ駄目だけれど…自分の気持ちが変わらなければ、僕の夢を動かす切っ掛けをくれたユノに、この気持ちを伝えたいと思うランキングに参加していますお話のやる気スイ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この後の更新について
この後、6時に「お花売り」を更新致します。止まっていたお話ですが、もう後半なので、ここから最後に向けて更新していきたいなあと思っています。歌手で俳優のユノと、歌手を目指しながらもそれがなかなか叶えられなかった花売りのチャンミンのお話です。これまでのお話はこちらです。 ↓お花売り後少し、最後までお付き合い頂けたら幸いです。応援してくださいね幸せホミンちゃんにぽちっ♡ ↓にほんブログ村
もう一度教えてください
ご訪問ありがとうございますチャンミンのソロ活動が遂に終わってしまいましたね。毎日怒涛の色々が公開されて、途中からはもう全部確認する事は出来なくて…でしたが、昨年のユノのソロ活動の時も同様に途中から必死で追っていたなあ、なんて思い出しました露出する活動が一旦落ち着いてしまう事はとても寂しいですが、この時期に活動してくれた事で本当に幸せをもらったなあと思うし、この後は追い切れなかった色々を少しづつ振り返ったりしたいなあ、と思いました。昨日公開された映像では、ずっと歌手として歌い続けたいとチャンミンが語っていました。音楽の好みだったりは年と共にその都度変わるかもしれないけれど、その時好きな音楽をファンの為に届けて歌い続けていられるなら、それは自分にとって恵まれた人生ではないかと思うと真っ直ぐに語っていて…XVの今年に入ってからの京セラ公演でも、長く活動して歌っていきたいという風に語ってくれた事を思い出しました。私はユノとチャンミン、ふたりのファンなので、これからまた個人活動があれば勿論応援しますが…でも、何より細く長くでもふたりの活動が続く事を何よりも願っています。今はこんな状況で先が見えなくて…ですが、また次の活動を楽しみに待とうと思いますと言うのは前置きで…表題通り、お話を読んでくださっている皆様に教えて頂きたい事がありますお時間ある方は教えて頂けたら今後の参考になるのでとてもとても助かります…ここ最近、短編集(にもならないお話未満の短編集)だったり、一話のSSを続けて更新しています。普段から、なのですが、常に書きたいお話が膨らんでどんどん増えてしまうのと、ここ最近のユノのGQや色々、そしてチャンミンソロのビジュアルで更に更に書きたいものが増えてしまってどうしよう、という状態で…ブログだけでは足りずにTwitterでもお話未満のものを吐き出してここでも書いて、なのですが、どれも先まで頭のなかに有るのでこのお部屋で書けたら良いなあと思っています。なのですが、時間は限られているしこの状況でなかなか時間が沢山は取れず、という状態です…全部並行したり、どんどん書いて全部消化出来たら良いのですが、流石にそれは出来ないので、どれを続けて書くか、を絞りたいなあと思っています(大丈夫です勝手にすれば?と言う事は百も承知です…)そこで、このお部屋のお話を読んでくださっている方に質問が有りますコメント欄から教えて頂けると本当に本当に参考になるし助かるので…御協力頂ける方がいらっしゃれば嬉しいです。ちなみに、私のブログのコメントはAmebaの会員の方で無くても、どなたでも書いて頂けます少し前に同様の質問をさせて頂いて、沢山回答を頂きました、本当にありがとうございますなのですが、有難い事に全部もしくは複数読みたいです、と仰ってくださる方が多くて突出したものが無くて…だったのと、前回質問をしてから更にお話が増えたので、再度お時間ある方、協力してやっても良いよ、という方はコメント頂けましたらとてもとても助かります質問は…今まで登場したお話やお話未満の色々、のなかで今後連載として読みたいものがありますか?もしもございましたらコメントから教えてください、です。(勿論もしも有れば…なので、無いよ、どうでも良いよ、の方はスルーして頂ければ…また、「○○なお話もお願いします」等の新たなリクエストはこの場では受け付けておりません🙇🏻)以下、色文字のタイトルをクリックでお話に飛べます。⚪Drowning in love水泳インストラクターユノ×サラリーマンチャンミン⚪Moonlight Fantasy転校生のユノ×生徒会長のチャンミン⚪under the radar (続編も同カテゴリーにあります)探偵ユノ×チャンミン⚪What is love 前編 (後編とその続編も同カテゴリーにあります)夜の街に生きるユノ×真面目な高校生チャンミン⚪Switching!高校生ユノ×訳あり高校生チャンミン⚪願いの彼方 前編 (後編も同カテゴリーにあります)幼馴染みのふたり⚪僕は運が良くない 前編 (中、後編も同カテゴリーにあります)カースト上位の人気者ユノ×知られたくない秘密のあるチャンミン⚪assortment 1 (お話の詰め合わせ)アイドルチャンミンのファンユノ×駆け出しアイドルのチャンミン大学生ユノ×恋愛未経験だけど好奇心は旺盛な大学生チャンミン⚪assortment 2泌尿器科医ユノ×悩みを抱えるサラリーマンチャンミン出版社の編集者ユノ×小説家チャンミンここに挙げたものは頭のなかに全て先があるのですが、お話によって短いものも有れば少し長くなるかな?というものもあって、それぞれです以前から「再開予定です」と書いている「お花売り」はもう直ぐ再開を、と思っています。(と書きつつつい新しいお話を書きたくなってしまいずれ込んでいるのですが…)上に挙げたもの以外でも、これまでに登場したお話だったりで「先を読みたい」というものがもしも有れば、コメント欄から教えて頂ければ幸いです書きたいものがとても多いし、更にホミンちゃんを見るとどんどん増えてしまうので、意見を頂けると「先にこれにしようかな」「これも久しぶりに書きたい」と自分のなかの優先順位が付けられたり決める事が出来るので、とてもとても参考になります期限は特に無いので、お時間あって教えてあげても良いよ、という方がいらっしゃればお願い致します声が多いお話、望んで頂けるお話がもしもあれば、優先的に続きを書けたら良いなあと思っています。そして、いつもいつも、雑多に拙いお話をひたすら更新しているこのお部屋にお付き合い頂ける皆様に感謝しております。気が付けば、ほぼ毎日ホミンちゃんを書き続けてもう直ぐ二年半です毎日書いていても書きたいものが減るどころか増え続けるくらい大好きで堪らないふたりの存在に何よりも感謝しています。私の暮らす場所は最初に非常事態宣言が出て…でしたが、全国的に宣言が出されましたね。この先、ひとりひとりの頑張りや協力で事態が終息に向かっていく事を願って止みません。環境の変化や色々で、疲れやストレスが溜まっている方も少なく無いかと思いますが、このお部屋が少しでも癒しになれば嬉しいです。ユノとチャンミンが今日も明日もその先も幸せで笑顔で、このお部屋を訪れてくださる皆様が同じく健康で笑顔でありますように幸せホミンちゃんにぽちっ♡ ↓にほんブログ村
Fated 102
飛ばされてしまいました一応R指定です本文はこちらからお願い致します ↓Fated 102ランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村
- 19Apr
願いの彼方 後編
授業中で廊下には人気が無くて良かっただって、一年前までの『まるで女の子みたい』なんて言われていた頃ならまだしも、高校に上がる前から一気に身長が伸びてしまい、昔の可愛さの欠片も無くなってしまったそんな僕の事を、学校中でイケメンと言われているユノがお姫様抱っこなんてしているのを見られてしまったら、笑われてしまうかもしれないから一緒に体育を受けていた同級生達には見られてしまったけれどもそれは皆理由を知っているから、優しいユノ故の行動だと理解されるだろうでも、そうで無ければ気持ち悪いって思われてしまうかも昔のように可愛く無くなった僕いつの間にか、ユノと並んで歩いていると『ふたり共イケメン』なんて…男なら喜ぶべき事なのだろうけど、僕にとっては喜べない言葉をもらうようになってしまったから女の子になりたい訳じゃ無い心が女の子な訳でも無いただ、物心ついた時からずっとユノが傍に居たずっとずっと『チャンミンは僕よりも小さいし可愛いから守らなきゃ』だとか『可愛いチャンミンには僕のお嫁さんになって欲しい』なんて言われ続けてきたそれが僕にとっては当たり前で、例え本当に結婚が出来なくても、僕達の関係はずっと変わる事なんて無いと思っていたでも、結局僕は成長と共に変わってしまった男だから当たり前の事でも、男だっていつまでも小さくて女子のように可愛いやつだって居るだろうし…「チャンミン、大丈夫?やっぱり痛いのを我慢してるだろ?」「…別に、ユノが大袈裟なだけだよ」どれだけ頑張って身体を丸めても、昔のように小さくはなれない可愛くも無いし、可愛げも無くなってしまった僕を抱き上げて歩きながら心配そうに問い掛けるきっと、望めばいつだって可愛い彼女が出来るのだろうだって、昔からずっと僕に『可愛いから好き』と言い続けてきたのだから「大袈裟じゃ無い!」「…っ、何だよ急に大きな声…授業中なのに」「あ、ごめんつい…」ジャージ越しにユノの心臓の音が伝わって来る体温だってその心地良さに溺れてしまいそうになりながら、だけどこの場所は少なくとももう、今の僕の場所では無いのだと思っていた避け切れ無かったサッカーボールが当たった左脚の脛よりも胸の方が痛いだから、脚ばかり心配するユノに身勝手に苛立ってしまったいつもユノは優しくて僕に怒る事だって無いそれなのに、苛立ちを顕にするように声を荒らげるからユノの腕のなかでびくっと身体が震えた「傍に居たのに守れ無かった俺が先にボールに気が付いたのに、腕を伸ばしても間に合わなくてボールが当たるのを見ているだけで…ごめん、幾らチャンミナが大丈夫だって言っても間近で見たから」「…当たったのは僕が悪いんだしそれに、ユノが心配する程じゃ無いよ」怒られたのかと思って驚いたから、その後の言葉にほっとした沈んだ様子の声のユノに、僕の苛立ちも少し解けていくそもそも苛立ち自体が本当に自分勝手なものなのだけど「…ユノは本当に、誰にでも優しいよね僕とは大違いだ」「誰にでも?そんな事無いよそれに、優しいのはチャンミナだ皆に心配を掛けないように、ボールを蹴ったやつが自分を責めないようにって痛く無い振りをしたんだろ?」「別に…」小さく呟いて続けようとしたら、頭上から「着いた」というユノの声が聞こえたから口を閉じた「失礼します」僕の好きなユノの声声変わりをしても優しいユノの声良かった事と言えば、僕も声変わりをしたけれど、ユノよりは低い声にならなかった事もう、可愛いなんて言われなくなってしまったけれど、それでも少しでも…なんて馬鹿みたいだ「ありがとう、もう降りるよ」「ん?残念…分かったよ」保健室の扉の前、ゆっくりとユノがしゃがんで降ろしてくれた右脚は何も無いのだから、もっと雑に扱ってくれたって良いのにそうやっていつも、いつでも優しいから、未練がましく昔の事を何時までも思ってしまうのに…違う、全部全部僕の勝手な都合だ「大丈夫?歩ける?」「もう保健室だし大丈夫」とは言ったものの、左脚を軸にして立つと痛い骨には何も無いだろうけど、場所が場所だけにじんじんする扉を開けたユノに続いてなかへと入り、扉を閉めたのだけど…「あれ…」「どうしたの?あれ、先生が居ない…」ユノは奥へと進んで、それから養護教諭の机の前まで向かった僕の方を振り返って、一枚の紙を掲げて見せたとは言え、文字が小さくてまだ入口付近に居る僕には読めない「この授業中は職員室に居るらしい用が有れば内線で呼ぶように、って」「え…そうなの?別に血が出ている訳でも無いし呼ばなくて良いよ教室でこのまま休憩しても良いし…」なんて話していたら、ユノがこちらに向かって歩いてくる何だろうと身構えた多分、真面目で優しいユノの事だから『駄目だよ、先生を呼んで治療してもらわなきゃ』なんて言うのだろうと思っていたどきどきして突っ立っていたら、ユノの手が伸びて来たそして…「…っ、ユノ!何でまた…!」「ん?ふたりきりだから恥ずかしく無いかなと思って」あっという間にまた抱き上げられたそのままユノは奥へと向かって、僕をベッドの上に下ろした「ごめん、ええと…椅子に上手く下ろせそうに無くてそれにベッドの方がチャンミナの脚も楽かなあって」「…先生は…?」「今は呼ばないうん、血は出ていないし…痣にはなってるな、痛そうだけどあの速さなら骨は大丈夫だろうから…」ベッドの左側椅子に腰掛けて、勝手に僕のジャージの裾を捲り脚を見るユノの言う通り、早速少しだけ痣になっている箇所にそっと触れられた「痛い?」「それくらいなら…骨は大丈夫、当たって痛いだけだよ」「あ!」「何?」ベッドの上に伸ばした左脚足首から膝の下にかけてそっと擦るユノの手にどきどきしながら答えていたら、また大きな声「やっと『痛い』って言ってくれた」「…痛く無い訳ないし」「うん、でも…皆に心配を掛けないようにする為だって分かってはいても、俺にも本当の事を教えてくれないのが寂しくて昔は何でも…いつも隣に居たし何だって言えたのに」脚から手を離して立ち上がったユノは、程なくしてアイスノンを持って来た「少し冷たいけど我慢して」と言うと、痣になった左の脛にあてた「痕にならないと良いんだけど…」「ユノは大袈裟だよこれくらい直ぐに治るだろうし、別にもう…」言い掛けて口を噤んだふたりきりで過ごすのも、最近は避けていた触れられて距離が近くて、つい本音が漏れてしまいそうになったこのまま放っておいて欲しい可愛くも何ともない僕に、ユノだって昔のような興味はもう無いのだろうからそれなのに、ユノの優しさはいつも僕を追い詰める「もう?どうしたの?」「…何でも無い」アイスノンが落ちないように上から押さえるユノもう片方の手も、僕の左脚を固定するように膝の上に触れるジャージで足首まで覆われている右脚を立てて、そこに顔を埋めるようにして顔を逸らした脚だって、昔のように華奢では無くなった新地ばかり伸びて細い方だけど、昔のように可愛くなんて無いそれを見られるのが怖いもう今更だけどそう思ったら、黙っているのも馬鹿らしくなって来た「別にもう、昔みたいに女の子に見える僕じゃ無いおままごとみたいに、ユノのお嫁さんになる訳でも無いだから、痣が残ったって問題無いしユノにも関係無いなんてね、もうユノは戻ったら?サッカー楽しみにしてたんじゃ無いの?僕はもう大丈夫だから……」「チャンミナ」「…っ、何……触るなよもう!」脚だけでも緊張でどうにかなりそうだったのにユノの両手が僕の頭をかき抱くように抱き締めて、その拍子に脛の上にあったアイスノンはずれてシーツに落ちた「何…なんで…」「ごめん、でももう…ずっと我慢していたけど無理だよ関係無いだなんて…」何だか苦しげに吐き出される言葉ユノの手は頭から降りて僕の身体を抱き締める身長はもう、殆ど変わらないでも、ユノが椅子から立ち上がって僕を抱き締めるから、まるで僕が小さくなったように感じる勿論、そんな訳は無いって分かっているけれど「関係無い、は言い過ぎたよ…ごめんユノは…幼馴染みだし大切な友達、だしでも、僕は昔のような可愛い僕じゃ無いだから心配する事なんて無いって言いたかったんだ」抱き上げられた心配してくれている脚に触れて、抱き締めて…例え可愛くは無くたって、ユノのなかの大切な内のひとり、ではまだ居られているそう思えたら、少しだけ素直になれた可愛く無くなった自分について、視覚だけじゃ無くて、自らの言葉によって自覚させる事は苦しいでも、それが事実だし、そもそも僕達は男同士「だからもう、離して…」「駄目」「え……っ、何、近い…」駄目と言われたけれど、抱き締める腕の力は少しだけ緩まって、ユノが僕を見下ろしてくる顔が近付いて、じっと見られたら可愛く無くなった僕をまた確認されるようで怖いのにぎゅうっと目を瞑って俯いて、怖いからつい目の前にあったユノのジャージの裾を掴んだそうしたら、ふう、と息を吐く音が耳に届いて…「駄目だ、やっぱりもう我慢も限界」「…っ……」可愛くも無いし可愛げも無くなったもう、友達でさえ居られないのだろうか昔は僕を見るといつも『可愛い』『好き』『お嫁さんになって』と言っていたユノでも、もう今はそれが無くなって、何を思っているかなんて分からない「もう良いってば、戻ってよ!」「駄目、だって…チャンミナは俺のお嫁さんだろ?嫌だって言っても、もう無効だって言っても…もう、気長に待つ振りなんて出来ないよ」「…え…」その言葉に、思わず目を開けて見上げたら「やっと見てくれた」と微笑むそして、僕の右の頬に僕よりも大きな手が添えられた「何時からだったかな俺が可愛いって言うと、チャンミナが複雑そうな顔をするようになったチャンミナも男だし、もう俺との事なんて気持ち悪いって思うのかなと思って…だから、良い男になって、昔のように言葉で言わなくてもチャンミナがまた俺を見てくれて『お嫁さんになっても良いよ』って言ってくれるように頑張ろうって…」「ユノ…嘘……」「あはは、どうして嘘だなんて言うの?ずっとずっと、『可愛いチャンミナをお嫁さんにしたい』って言ってきたのに」「だって、最近は全然言わなくなった…って、近いってば!」まるで、した事は無いけど…キスをするくらい目の前にユノの顔驚いて顔を背けようとしたけれど、今度は両手で頬を包まれてそれも出来ない「言っただろチャンミナが嫌そうな顔をするから嫌われたくないから言えなくなったんだよ」「嫌そうになんて…!だって、身長が伸びて可愛くなんて無くなったからユノに言われても、嘘だって思った」さっきまで、珍しく苛立っていたように見えたでも、今は僕が焦っているのを見て何だか嬉しそうに笑みを浮かべている「…っ、何で笑うんだよ!」「え、だって…今更気付くなんて遅いけど…嫌われてはいないと思っていたでも…今は可愛いって言うのは必死に我慢していたんだだけど、言っても良いって事だよな?だってチャンミナは可愛い、変わらないよ」「嘘だ…だって小さくも無いし、皆もう僕を可愛い、だなんて…」頬を包まれながらも首を横に振ったそれでもユノは優しく笑って、椅子じゃ無くてベッドの上、僕の左側に腰掛けた「あ…やだ…」「え、何が?」「だって、立っていたらユノの方が大きかったのに……っあ、嘘!何でも無い!」頬から手が離れたから、右を向いて上半身もベッドに横たえて小さくなった「やっぱり脚が痛いから…じゃ無くて、体育は苦手だから寝るユノはもう授業に戻って」「無理…ねえ、チャンミナ身長が伸びたら可愛く無くなった、なんて思っていたの?」「…嘘、全部嘘だよ」髪の毛を梳くように触れるユノが僕を可愛いと思っていてくれている僕の反応を見て言わないようにしていたそれが分かって嬉しいだけど、可愛い、だけじゃ…僕は今でもユノのお嫁さんになりたいと思っているのにだから、これ以上期待しないで済むようにもう出て行って欲しいユノはそんな僕の気持ちなんて知らないのだろう髪の毛から手を離したと思ったら、ベッドが軽く軋んで、そして…「…っ、ユノ…」「成長したし、チャンミナは変わっちゃったのかなって…それでも諦めるつもりなんて無かったけど、今は距離を置くべきなのかって悩んでたでも…俺は臆病になってばかりでチャンミナの事がちゃんと見えていなかったのかも変わって無いよ、だって…」僕を、後ろから抱き締めるユノまるで添い寝をしているようで心臓が爆発してしまいそう「昔から、俺が『お嫁さんになって』って言うとチャンミナはいつも『なってあげても良いよ』って言葉だけ聞くと冷たいけど…顔で分かっていたよ、同じ気持ちだって今だって、『嘘』って言うチャンミナの顔を見れば分かる」「…っ…」可愛いと言われる事お嫁さんになって、と言われる事それが当たり前で、成長して外見が変わる自分に絶望して、それまでと同じ事を言われても信じられなくなったのは僕の方それなのに、ユノは…「こんな、見た目も中身も可愛く無いやつをお嫁さんにしたいって思うの?」胸に回された手その上からそっと触れて、勇気を出して顔だけで振り返ったユノはそんな僕を見て、昔より更に格好良くなったけど昔と変わらない笑顔で見つめた「ねえ、チャンミナその考え方がもう、とんでも無く可愛いって知ってた?」「そんな訳…」「それに、最近は可愛いだけじゃ無くて綺麗で…おかしな気分になるのを必死で抑えるのが大変なんだ」「おかしな?」寝そべって抱き締められていても、少しだけユノの目線が高かったから見上げたすると、囁くように「ずっとずっと好きだよ、チャンミナは?」なんて、突然聞いてきた心臓はもう、多分壊れてしまったかもしれないだって、ユノの声に自分の鼓動の音が重なっているし、走ってもいないのに脈が速くて息が苦しいくらい左手で胸を押さえたずっと、素直になれずに言葉を受けてばかりだったでも、無くなってずっと後悔していた今更もう、遅いかもしれない、だけど…「…ユノが好き、本当はずっと…今だって、無理だって分かっているけどお嫁さんになりたいくらいで……っん…」「……ごめん、我慢出来なかった初めてのキスはロマンチックにって思っていたのに」触れるだけのキス幼い頃だってした事の無かったキス振り返ったまま、確かめるように胸に置いていた手を口元に持っていってそっと触れたいつもの唇だけど、何だかとても不思議だ「どうして我慢出来なかったの?」「…分かるだろチャンミナが可愛過ぎるからああもう、優しい俺のままで居ようと思って我慢していたのに」ユノの困る顔、なんて珍しい何だか昔に戻ったみたいな気がする「…優しいユノが好きでも…強引なくらい毎日『お嫁さんになって』なんて言うユノも好きずっとずっと、素直になれなくてごめんなさい」その言葉は本音やっと言えた言葉に心が軽くなったそれに、僕の言葉にユノが恥ずかしそうに笑ってくれたから幸せを感じたでも…この後、『自信を取り戻した』と嬉しそうに語ったユノに、僕はまたお姫様抱っこで教室まで運ばれた因みに、休み時間で沢山の生徒に見られたし、降ろしてとせがんでも聞いてもらえなかったただの打ち身だったのだけれど、『心配だから俺に任せて』なんて真剣に言われたら今はもう恥ずかしい、よりも嬉しさが勝ってしまって、最終的には素直にユノの言葉に身を任せたのだ噂は一気にその日中に校内を駆け巡って…とは言え、単に仲の良い幼馴染み、というくらいで僕達が結婚を約束した仲だと思われる事は無かったそんな事は当たり前だけれど、安心したのと同時に少しだけ残念だったユノに言わせれば、『もっと俺達の仲を広めてライバルを無くしていかなきゃ』で、後半の言葉については僕も同意見今夜からはもう、眠る前に願いを込める必要は無くなって…と言いたいところだけれど、思春期は悩みが尽きないもの今度は自覚して始まった恋や性の悩み、つまりもっとユノと進展したい…なんて事を僕は願うようになるのだランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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未必の恋 19
ユノさんが滞在中の一ヶ月間は僕も彼の専属ホテルにずっと留まっているしいつでも対応出来るようにしなければならない言わば、休みは無い状態最初は大変な仕事になると思っていたのだけど、実際はと言えば…ユノさんがホテル内に居て、忙しくしていない時だったり、食事や時には就寝するのにも僕は呼ばれて一緒に部屋で過ごしているだから、緊張はするけれど通常業務からは半分以上、いや、七割は離れているから、休んでいるのか働いているのか、良く分からないような状態それでも、ユノさんの専属客室係として一ヶ月間任命されたのだから、何があっても気は抜き過ぎてはいけないし、だからこそ、と思っていた事があるのだけど…「え、そんなの駄目です」「どうして?俺が着て欲しいって言っているのに」「いえ、その…私服は控え室にずっともう置いてあって…じゃあ無くて、僕は常に仕事中でして」昨夜は数日ぶりにユノさんの部屋で眠ったそれはつまり、眠る前には抱かれていて、そのまま裸で逞しい腕のなかで眠ったという事朝の目覚めが良かったのは、きっとユノさんと一緒だったからそれに、今日は一日ずっと一緒に居られる予定だから大丈夫かなと言う気持ちもあるけれど、今日は僕がユノさんに料理を振る舞う予定も有るし、その為にこれから買い物に向かうから内心、頬が緩んでしまうくらい舞い上がっているけれどもそれを顔には出さずに、着替えようとベッドから抜け出たら、ガウンを羽織ったユノさんはスイートルームの大きなクローゼットを開けて、僕にレザーのスキニーパンツを差し出してきた「スーツじゃ無いと…この部屋のなかならまだしも、ホテルを出入りする時にスーツで無い事を従業員仲間に見られたら、その…」「でも、今日は俺がオフなんだだからチャンミンもオフで良いだろ?一ヶ月ずっと、俺が居る間対応してもらって…それは全て完全に仕事でしか無いの?」スーツを着ようとしたら、ユノさんに『これはどう?』と差し出されたボトムスそれはユノさんの私物で、多分きっとユノさんのブランドのものだって…僕の目に間違いが無ければ、写真で見た事のあるボトムスだから憧れのひとの作り出す憧れのブランドの服しかも、ユノさんが着ているものこの間は、僕が一度引っ張って駄目にしてしまって…それから綺麗に直したニットを貰ってしまったのだけど、それ以外にも借りて着られるだなんて夢のような事でも、公私混同し過ぎる訳には…「チャンミン…似合うと思うんだけど」「完全に仕事なら…ユノさんの為に勝手に苺のワインをプレゼントしたり…幾らVIPのお客様の為でも、そんな事はしないですそれに、そもそも一緒に眠るとか…っあ、いえ、何でも」寂しげに僕を見てくるユノさんにときめいてしまって、つい言わなくて良い事まで言ってしまった慌てて顔を逸らして、右手でガウンの胸元をぎゅっと寄せるようにしたユノさんの方は見ていないでも、何だか、多分嬉しそうにしているのが伝わってきて…「一緒に眠るなんて特別だよな俺だって、今まで他のホテルの担当者を抱いた事はあっても、部屋に泊まらせた事なんて無いよ誰かと同じベッドで眠る事も随分久しぶりだ」嬉しい、だけど…今彼女が居ない事も、恋愛では無かったとしても僕を特別に思ってくれている事も、言葉でも態度でも伝えてくれているから知っているそれなのに、『久しぶり』と言われただけで、過去に当たり前に存在したであろうユノさんに愛されたひとの存在を感じてしまって切なくなる僕は充分特別で幸せな想いをさせてもらっているのに「……僕が男で気兼ねないから、ですか?」行ってから後悔したただでさえ男で可愛げも何も無い抱かれるにしたって女性のような柔らかさも何も無いそれなのに、素直に嬉しい、だとかありがとうだとかそんな事すら言えない言い訳みたいだけれど、結局これは仕事だからその気持ちと、僕は本気になってしまったけれど…ユノさんが同じ気持ちで居てくれる訳が無いと思っているから今の現状を幸せだと受け止めて満足しなければならないのにそれなのに、本当は愛されたいと思っているし、それを伝えて傷付く事も怖いと思っている「すみません、そんな事は当たり前ですよね兎に角、ユノさんは大切なお客様なのでスーツで…え…っん…!…」背を向けたまま、ユノさんとは別の、僕のスーツを掛けてあるハンガーラックへと向かった昨夜、泊まるつもりで無く部屋にやって着たから、昨日着ていたスーツ…つまり、ユノさんに買ってもらったグレーのスーツだワイシャツの替えは部屋に置かせてもらっているから、それを着ようそう思って手を伸ばしたところで後ろから抱き締められて、反射的に振り返ったら唇が重ねられた「ん、っ…ふ……っ…」「…気兼ねない、と思っていたら…昨日先に眠ってしまったチャンミンの寝顔を見続けたりしないよ」「…っえ…と言うか僕、先に眠っていたなんて…」可愛く無い事を言ったのに、可愛く無い僕を抱き締めてキスそれだけでまた…自分で思っていたよりも単純らしい僕の気分は浮上する、どころかふわふわと浮いているくらい幸せになる「昨日は少し激しくしてしまったから、きっと疲れたんだよ悪いなあと思っているのに寝顔を見たら穏やかだから…可愛くて目が離せなくて、それに…」「…それに?何かあったんですか?鼾?もしかして五月蝿かったとか…」言い淀むユノさんに、つい問い詰めるように畳み掛けてしまった実際にそうだと言われたらまた後悔しか無いし…時間を見付けて『鼾をかかない方法』を検索しなければならないどきどきしながら、振り向いてユノさんのガウンの襟元を握ったら、腰を抱いていた彼の左手が上がって来て、あっという間にガウンの隙間から胸に触れた「…あっ、…ユノさん!」「…覚えていないの?」「ん、っ…何が…」指先で胸の中心をくに、と押されてそれだけで声が漏れる腰が引けてしまうのに、右手でしっかり腰を抱かれたままで逃げられない「寝顔を見るだけで…可愛いし我慢しやければと思ったんだでも、無防備に眠っているから、ついこうして胸を…」「ひっ…ん、…っ」きゅっ、と軽く先端を摘まれたそれだけで後ろまで疼くし、前だって反応しそうになる慌てて両手で口を押さえて首を横に振った「覚えて…と言うか知らないです、本当に?」「…うん、言わなければ良かったかなまあつまり『気兼ねなく』じゃあ無くて幸せな気持ちで眠りに就いたって事」「……そう、ですか幸せだと言って頂けると嬉しいです」「それは、ホテルマンとして?チャンミンとして?」先に『ホテルマンとして』と強がって言っておけば良かったでも、それは結局嘘になるそれに、こんな甘い雰囲気で聞かれてしまったら…「…どちらも、です」そうとしか言えないだからせめて、緩む頬を、赤くなる顔を隠すように俯いたそんな僕をユノさんはぎゅっと抱き締めて、耳元に囁いた「今日は私服を着てくれると嬉しいニットはあの、俺がプレゼントした物が有るだろ?アウターも貸すし、チャンミンをコーディネートしたい」「…でも、昨日着ていたのもユノさんに選んで頂いてプレゼントまで頂いたスーツだし…」「それはそれしかも、先に別の男達にスーツ姿を見せていたから嫉妬しているんだ、忘れたの?」「……」恋では無くても、その気持ちが何なのかは分からない、と言っていても、嫉妬は教えてくれるこんな時のユノさんの顔は少し幼く見えて、この表情を忘れたく無いなあと思ってしまう「…忘れていません」「じゃあ決まりだって、一ヶ月ずっと勤務だなんて俺の所為とは言え大変だ今日はオフで、俺とデートだから夜はチャンミンが料理を作ってくれるし…」「それ、仕事の延長のようなものなのでは…」「デートだから良いんだそれに、俺も手伝うよ」『決まり』と言ったくせに、今度は「駄目?」と僕をじっと見つめる「駄目じゃ無いです…」だって、僕はユノさんの専属で、ユノさんの望む通りに動く事が仕事だから…違う、本音はただ嬉しいから今日だけは仕事では無い、ただひとりの人間としてユノさんに接する事が許されるようで幸せだから「良し、じゃあ時間は有限だ本当は…こんな、だからベッドに戻りたいんだけど、それはまた夜に置いておこう」「…っん……」抱き寄せられたら前が触れ合う身長が変わらないから、お互いに少し反応しているのが分かる自分だけでは無いし…僕に触れてそんな風になる事を教えてくれるのが嬉しい「チャンミンも我慢出来る?」「…っ、当たり前です!もう…」羞恥を隠す為に、つい言葉が砕けてしまうでも、そんな僕に何故かユノさんは嬉しそうに笑うこんなVIP、今まで見た事無い元々憧れだったひと知り合って最初は、無茶苦茶なひとだと思った生きる世界が違うと思ったし、勿論今だってそれが事実でも、特別で憧れだったひとは、知っていく内にどんどん僕の心のなかをいっぱいにしてしまったもうきっと、この後にどんな女性を見たって…例え男性だとしたって、誰を見て知っても満足なんて出来そうに無いユノさんに貰ったアイボリーのモヘヤのニット勿論、一枚だと透けるし、前回そのまま素肌に着て恥ずかしい思いをしたから、インナーもきちんと着ているボトムスは、ユノさんが選んでくれた彼の私物で、黒のレザースキニーアウターも黒のレザーのショートジャケットを借りた「うん、スーツばかり見ていたから余計に良い勿論スーツも似合っているけど…普段はレザーは着る?」「いえ、あまりジャケットは持っていますが、パンツは初めてですだから少し変な感じ…いや、変って言うのは慣れていないだけで」慌てて胸の前で手を振ったら、ユノさんはくすくすと笑って「分かっているよ」と言った彼は、僕がホテル従業員達の目を気にしている事を知って、フロントに連絡を入れて、今日は一日オフの自分に付き合わせるのだと伝えた僕も、総支配人であるチェ先輩にメールを入れて、私服で外出する事を伝えた返事は『丁寧な報告をありがとうだけど、信頼しているしチョン様の事はチャンミンに任せて有るから問題無い』との事だった「私服で最上階のスイートルームから出るとか…こんなの、絶対に有り得ないです」「あはは、まだ部屋を出ただけで誰にも会っていないのにそんなに緊張するの?」「…はい、まあ…」エレベーターに乗り込んで、僕が一階を押そうとしたら、先にユノさんの手が伸びて押されてしまった従業員なのに良いのだろうか、というスーツを脱いだからこその緊張それと、ユノさんには言えないけれど…まるで、一緒に泊まっている恋人同士みたいだって思ってしまう胸の高鳴り思うだけなら自由だし、口にしなければ分からないだから、今日は少しだけ浮かれるのを許して欲しい口笛を吹いているユノさんは、シンプルだけれど見ただけで上質だと分かる黒いタートルのニットそれから、ゆとりの有る同じく黒のボトムス焦げ茶のブーツに裾をインしているそれだけでも、部屋のなかで見た時にまるでモデルか俳優のようだった今はアウターで濃いモスグリーンのトレンチコートを羽織っていて、それがあまりに似合っているから、ユノさんの一歩後ろに立って必死に鼓動を落ち着かせている「着いた、行こうチャンミン」「え…っあ、はい」当たり前のように右手が伸びて、手を握られたどうしようとユノさんを見たら「休みだし、スーツじゃ無いから目立たないよ」なんて言う僕からすれば、ユノさんがもう…黒を着ていたってあまりに輝いて目立っているから同じだと思う颯爽とエントランスに向かうユノさん擦れ違う宿泊客は皆ユノさんをちらちら見ている僕はと言えば俯いて着いて行く事しか出来ないそして…「チョン様、おはようございます行ってらっしゃいませ」「ああ、総支配人昨日は途中でチャンミンを部屋に連れて行って申し訳無かった」「いえ、何も問題など今日は天気も良いので楽しんでいらしてください…勿論、シムも」「……はい」漸くホテルを出られる、というところでチェ先輩に呼び止められてしまった僕はもうずっと下を向いてユノさんと手を繋いだままちらりとユノさんを見上げたら、昨日は先輩に嫉妬したらしいけど…今は「少しだけですが、デートなので楽しんで来ます」なんて言って爽やかに微笑んでいる「今日はホテルでやりたい事も有るから買い物が終われば戻って来たいんだけど…」「言っていましたね、それは何ですか?」「ん?内緒」ホテルを出てタクシー乗り場に向かいながら尋ねたけれど、含みをもたせるように笑って教えてくれない気にはなるけれど、ユノさんが楽しみにしているなら良いとしようタクシー乗り場のドアマンは僕を見て一瞬驚いた顔をしていたけれど、ユノさんと一緒だからか直ぐに平静な顔で…まあ、察してくれたのだろう「そうだ、チャンミンだけ特別に…店の場所を見てみる?なんて、まだ店はこれから作るから今見ても仕方無いかもしれないけど…」「…見たい!見たいです!」タクシーに乗り込んで直ぐに言われて、ふたりきりだから…とつい素が出てしまった勿論、タクシーの運転手は前に居るのだけど「あはは、そんな風に言って貰えたら嬉しいじゃあ、買い物の前に寄ろうかチャンミンは本当に俺のブランドを好きでいてくれているんだな嬉しいよ」ユノさんは住所をすらすらと告げて、タクシーは走り出す元々、ユノさんのブランドが一番好きだし、高くてなかなか買えないけれど憧れでも今は…ユノさん自身が何より好きだし、ほんの少しだけだけどユノさんの事を知ったから、そんな彼が作り出す服がもっと愛おしいと思うようになった「はい、大好きです」「え…」「ユノさんの創り出す物や、その世界観ユノさんの仰る通り大好きなんです」「…うん、ありがとう」緊張で震えてしまいそうだったでも、タクシーに乗り込む時に繋いだ手が離れたから、腿の上で両手を握って力を込めて、耐える事が出来た本当は、ユノさん自身が何よりも好き後から付け加えてしまったけれど…でも、初めて『大好きです』と目を見て伝える事が出来た僕はホテルマンだそして、ユノさんは大切なVIP客だから、こんな風に自己満足のように気持ちを伝える事が良い事なのか、それとも悪い事なのかは分からないでも、スーツを脱いだら僕は少し素直になれるのかもしれないそして、素直になると心は軽くなるし、別れが寂しくなる必死に蓋をしないと気持ちがもっと溢れてしまいそうになるランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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- 18Apr
願いの彼方 前編
ずっとずっと、自分は変わらないと思っていた昔から、性別を間違えられる事は当たり前男女問わず、年齢問わず可愛いと言われ続けてきたとは言え勿論僕は男だから、女の子の格好をした事なんて一度も無いそれでも、可憐だとか女の子よりも可愛いだとかそう言われるのがずっと当たり前だったそして…『チャンミナ、大きくなったら僕のお嫁さんになってくれる?』『男同士じゃ結婚なんて出来ないよ、ユノは知らないの?』『知ってるよ、でもチャンミナが一番可愛いし好きだから』『…じゃあ、考えてあげても良いよ』『やった!約束、決まりだよ』僕の曖昧な答えにも幼馴染みのユノは喜び、僕を抱き締めたそれが小学生に上がる前の事で、その後もユノは事ある事に僕に『可愛い』と言ってきた可愛い、が当たり前だった僕にとって、ユノの言う『可愛い』もそれと同じでも、ユノは良いやつだし優しいし勿論男同士だから嫁になんてなれる訳も無いけれど、僕はずっとユノと一緒に、変わらずに過ごしていくのだと思っていた『チャンミナ、大好きだよ早くおとなになりたい』『どうしてユノはおとなになりたいの?』『だって、そうすれば結婚出来るし…可愛い僕のチャンミナがお嫁さんになってくれるから』あれは確か、小学校五年生の夏の日だったろうかふたりで部屋で遊んでいた時、西日が差し込むなかでユノはそう言って、僕に手を伸ばしてそっと手を握られたユノの嬉しそうな笑顔が眩しくて、彼の思う通りになっても良い、なんてあの時の僕は思って…「…っあ………また…夢か」やり直せたのかと思った何って?自分を、に決まっている昔話をしていた事が出来る訳なんて無いと思っているでも、確かに僕は夢のなかのように言われて育ってきただから、毎晩眠る前にひっそりと祈っている『起きたら昔の僕に戻れますように』でも、もう昔じゃあ無い成長したからこそ、そんな事に意味が無い事も僕は分かっている「…今日も変わらない」ベッドからゆっくりと降りて、クローゼットの扉を開けたそこに映る、昨日までと変わらない自分の姿を見て溜息を吐いた変わった事と言えば、眠る前に願いを込めて祈る…なんて言うと大層だけれど、願い事をしているから昔の夢を見る事が増えたただ、それだけだいつかもう、こんな願いから解放されて欲しいそう思いながらも僕はきっと、今夜も叶う筈の無い願いを胸に眠るのだろう「シム君、おはよう」「おはよ」挨拶をされたから返しただけあまり仲の良い女子では無いし、僕から話し描ける事も無いそれでも、挨拶を返しただけで彼女は頬を赤く染めて俯いて含羞む「チャンミン、今日も朝から相変わらずだな」「相変わらずって何が?寝起きが良く無かったし…今日はあまりやる気が出ないかも」教室へと向かう廊下を歩いていたら、クラスの男子が僕の肩を組むように寄ってきた 「やる気が無くてそれじゃあ、俺達の立場が無いよ」「何だよそれ」冗談めかして言う彼に少しむっとして返したら「モテるやつは違うな」なんて言う確かに、昔から…物心ついた時からモテてきたでも、それは主にユノのような男子だったり、年上の男に声を掛けられたりそれは多分全て、僕が昔から言われてきた通り可愛かったから当たり前に男の格好をしていても、まるで女子と間違われてしまうようにでも、今僕はモテているのは…「チャンミナ、おはようあれ、もしかして寝坊したとか?いつもと少し顔が違う」「ユノ、俺も居るんだけど?チャンミンだけかよ、寂しいなあ」「あはは、ごめんつい…おはよう」教室に入って直ぐに声を掛けてきたのは、昔から僕を『お嫁さんにしたい』と言ってきた幼馴染み「おはよ、ユノ」挨拶をして自分の席へと向かったら、まだ僕の肩を抱く男子は「流石、親友だなユノは良くチャンミンを見ているし、幼馴染みで親友でふたり共イケメンとか狡いよなあ」なんて言うユノがイケメンで気が利いて、という事は全面的に同意するだけど、僕は…「別に僕はイケメンじゃ無いから」肩に乗っかる重たい腕を退けて言ったそれは僕の心からの本音それなのに、僕の真意は伝わらないようだ「ユノは気が利くチャンミンはイケメンじゃあ無い、なんて謙虚だし…俺には敵わないな」「そんな事無いよ」それも僕の本音それなのに、「イケメンな上に優しいなんて」と喜ばれてしまった何度も何度も考えるどこで間違ってしまったのだろう、と確か、まだ一年前…つまり中学生だった頃は周りの皆から『可愛い』と言われていた断じて言うけれど、別に僕は可愛く在りたかった訳では無いイケメンになりたかった訳でも無いけれど兎に角、中学生の時はこっそり同性に告白される事も何度もあったし、異性には『私より可愛い』と言われる事も少なく無かった勿論、そんな声には否定をしていたけれども、皆僕にそのような評価を与えて来たし、幼馴染みのユノだってそうだったふたりきりの時に『お嫁さんになって』と言う事は無くなったけれど、学校で皆の前では『俺達は結婚の約束をしているから』なんて言って…特に、僕を狙う同性が居る時は、ユノが常に隣に居てくれてそんな風にアピールをしてくれていた高校生になった今は?もう、何も無くなってしまったユノは相変わらずいつも僕の傍に居る彼はいつも僕に優しいし、昔から格好良かった今は身長も伸びて体格も良くなって、益々男らしいし格好良い周りは皆、僕達を親友だと言うそれに対してユノは否定する事も無いつまり、もう僕はユノの『お嫁さん候補』では無くなってしまったのだ「…当たり前だよね一気に身長が伸びたし、もう女子に間違われる事も無いし何処からどう見ても…可愛いなら『イケメン』なんて呼ばれる事も無いし」ジャージの上下を着て、手を袖のなかに入れるようにして肩を竦めた僕は、僕の見た目は変わってしまったけれど、中身は変わらない身長が伸びるのと比例して異性に告白される回数が増えた周りの同性は羨ましいと僕に言うだけど、嬉しくなんて無い「チャンミナ、どうした?あ、もしかして休憩中なのを良い事に女子の方を見ていたとか?」「ユノ…別に、ユノには関係無いだろ」広い高校のグラウンド体育は男女に別れて行われていて、確かに僕の視線の先には女子達が居た因みに、僕達男子はサッカーをしているだけど、何も誰も視線になんて入っていなかっただって僕が興味有るのは…なんて事は勿論言葉には出来ない「あはは、関係無いなんて寂しいな昔からずっと一緒だったのに」「昔から一緒だからって…成長したら変わるよ身長だって、僕はこの一年で随分伸びたし」「うん、そうだなチャンミナは昔はあんなに小さくて可愛くて…」「もう良いだろ、別に僕に構わなくたって…!」結局、身長が伸びて成長しても、僕はその分本音を出す事が出来なくなってしまったいや、そう言えば昔からそうだった『お嫁さんになって』と言うユノに好かれているのを良い事に『考えてあげても良いよ』たとか『そんなに僕の事が可愛い?』なんて、今思えばとても偉そうだったと思う愛されるのが当たり前だと思っていたのだだけど今はもう、可愛いと言われる事もお嫁さんになって、と言われる事も無くなったそうしたらもう、僕だって『考えてあげても良いよ』と言う事すら出来ない結局、本気にしていたのは僕だけで、ユノにとっては今の…ユノに追い付くくらい身長が伸びて可愛く無くなってしまった僕なんてどうだって良いのだ「チャンミナ、あのさ…」「…何、また告白されたとか?ユノは本当にモテるもんね」「告白されても…全部断っているよチャンミナや、その、皆と遊ぶ方が楽しいから」「ふうん、勿体無い」だって、昔から僕をずっとお嫁さんにしたい、と言うくらい恋愛体質なのかと思っていたからなんて事は無くて、ただのこどもの一時の勘違いなのだと本当は分かっている折角階段でひとりで座っていたのに、ユノは僕の左隣に座った「チャンミナ、最近俺を避けてない?前は朝だって一緒に登校していたのに最近は『ぎりぎりまで寝ていたいから』なんて言って…折角近所なのに」「近所だけど、隣でも無いしそれに…」「それに?」言いたく無い、こんな事だって、僕はまだまだ可愛くなくなっていくのだと宣告されているようだからでも、もう今更だ「成長痛、最近夜痛くて…良く眠れないんだだからぎりぎりまで寝ていたくて」「そうなの?俺はあまり無かったんだけど…ずっと伸び続けているからかなチャンミナは急に伸びたから…」心配そうに僕を覗き込むそんなの嬉しく無いだって、ただの幼馴染みとしてだと分かっているから「あれ、チャンミナ…少し顔が赤いもしかして熱…」「え…っ、ちょっと、近いってば!」伸びて来た大きな掌が、前髪を掻き分けるようにして額に触れるそれだけじゃ無くて、更に顔まで近付いて来て…「手だけじゃ分からないな」「…っ…」昔のように額を当てて熱が無いか確かめるつもりだ熱なんて無い赤くなっているならばそれは、ユノがあまりに近いから、なのに…もう心臓がばくばくと五月蝿い昔はずっと、ユノの方が僕を好きだと言って、可愛いと言って、お嫁さんにしたいと言って嬉しそうに顔を赤くして僕の手を掴んでいたのに…「やめっ…」「チャンミナ危ないっ!」額が触れ合う直前、僕が顔を逸らしながらユノの肩に手を置いて身体を離すのと、ユノが慌てた様子で僕を呼んで手を掴んだのと、多分ほぼ同時だった声に目を開けて、そして直ぐに気が付いただけど恥ずかしさからもうユノの傍に居られなくて力任せに立ち上がった僕は逃げる事も出来なくて…「…痛っ……」「チャンミナ!」左の脛に当たったのは避け切る事の出来なかったサッカーボールコートからはあまり距離が無かったから勢いもそれなり痛みは有るけれど、それよりも避けられ無かった事が情けないプレイしていた同級生達が駆けて来て、一緒に次の出番を待って休憩していたやつらも僕を見てやって来た「…大丈夫、その、お腹が空いてぼうっとしてたんだ丁度良いから保健室で休んで来るよどうせサッカーは苦手だし」ジャージの上から当たったから見た目には何も変化は無いだから、『今の僕』らしく、何でも無い振りで手をひらりと振って、痛む脚を引き摺らないように歩き出したそうしたら、後ろから左腕を掴まれたその手が直ぐにユノだって分かるくらいに僕は…ああもう、何時まで昔の事を引き摺っているのだろう「チャンミナ、俺の肩に手を置いて」「え、何…」「ああもう良いよ、ほら」「…っ、ちょっと!おい!ユノ!」そもそも自分の不注意だユノは純粋に心配して熱が有るかを確かめようとしてくれたのに、僕が勝手に意識をして目を瞑って逃げて…だからボールに当たった皆に心配を掛けたり目立ちたい訳でも無いそれに、今の僕は女の子のように可愛くて人見知り、では無くてクールなイケメンだって皆に思われているそれを崩す訳にはいかないなのに…「痛いだろ?我慢しているつもりかもしれないけど、見れば分かるよ」「…っ、何でそんな…もう、降ろせってば!」「暴れたら危ないしこれ以上目立っても良いの?」「…っ…」ユノに横抱き…つまり、所謂お姫様抱っこをされて耳元に囁かれたぐっと押し黙ったら、満足そうに笑ってからこちらを見る同級生達に「保健室に連れて行って来る俺が見ているから気にしないで」なんて、どこまでも爽やかに言って歩き出す「ごめん、チャンミナ…俺が先に気付いたのに守れなくて」「…何言ってるんだよ守るとか…僕が避けられ無かっただけなのに変な事言うなよ」見下ろされたら顔を見られてしまうだから、身長が伸びて大きくなってしまった身体をユノの腕のなかで小さく丸めるようにして顔を隠した「そっか…ごめん」守って欲しい訳じゃ無いだけど、守ろうとしたのだと言ってくれた事が嬉しい今でもユノが変わらずに優しい事が嬉しいそんなユノだから僕は何時まで経ってもあの『約束』が忘れられないし、それがいつか叶うように、僕がまた可愛い姿に戻れるように…なんて叶う筈も無い願いを胸に抱いているユノはどれだけ優しくても、もう最近はずっと『お嫁さんになって』なんて僕に言わないのにそれが答えで、そんな事は当たり前なのに自分がもう、可愛くなんて無い事は毎朝起きて確認しているから分かっているのに「重たいだろ」「昔よりはね、でも全然大丈夫、軽いよ」ユノの優しさは時に残酷だ脚よりも胸が痛いこんな事ならば、目立ってでも拒んで…いや、走ってでもひとりで保健室に向かえば良かったランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村おはようございます止まっている連載のお話や、再開予定の「お花売り」を進めたいのですが、最近ちらちらと出したお話未満の物もまた続きを書きたいものが沢山あって…更にまだまだ書きたい新しいお話も増えてしまって、なので単発で更新させて頂きます前後編予定なので、後編もお付き合い頂けたら嬉しいです
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事前に仕事のスケジュールを調整して、俺達に予定外に与えられたオフは三日間勿論、と言うか、その間は一緒に過ごしているチャンミンの部屋から出ないようにと言われていた番になった俺達は、常に傍に居て、日に何度も抱き合ったオフが開けて少しずつ仕事が再開されれば、今度は俺達…特に、いや、オメガに突然変異したと世間に公表したチャンミンにはあらゆる視線が集まるだろうから、項の噛み痕以外には余程目立たない位置では無いと痕を付ける事は出来ないその分、チャンミンは繋がる事を求めたり、胸の先に触れて欲しいのだと強請る事が多かったオフの初日、つまりチャンミンがオメガだというスクープ記事が出て、その後事務所が事前に準備していた文章を発表したそれは、以下のようなものだった『シムチャンミンの二次性は、以前のベータから突然変異によって数ヶ月前にオメガに変化したとても珍しい事だが誰にでも起こり得る事で予測は出来ない事だった騒ぎにしない為、また二次性の問題はとても繊細なので未だ好評は控えていたけれど、報道された為真実を公表します』俺達はその頃、抱き合っていて、そして事務所の許可を得た上でお互いに納得をして番になって…だから、どのタイミングで記事が出て事務所が公表したのか、は分からなかったけれども、光り続けるお互いのスマートフォンでそれを察したし、その後ふたりで一緒に通知を確認したら物凄い量の連絡が届いていた仕事関係に関しては、これまで多く関わった会社やスタッフの元には、一律で事務所からフォローのメールが送信されたその後は連絡は落ち着いたそれでもやはり連絡は途絶える事は無かったし、SNSやテレビ、インターネットのニュースでもチャンミンの事は取り上げられ続けたチャンミンはと言えば、想像していたよりは元気だったそれは俺が心配して危惧し過ぎていた所為も有るのかもしれないし、初日に色々な声をインターネットやSNSで見た後はあまり見ないようにしていた所為なのかもしれないけれども、俺が『大丈夫?』と尋ねると『大丈夫です』と微笑んで、俺が別の場所に移動する時は必ず着いて来ただけど…三日目、つまり仕事に復帰する前日になって、チャンミンは俺と少し距離を置くようになったとは言え勿論、同じ家のなかに居るから離れてもほんの僅かなのだけど「チャンミナ、少しだけリビングでダンスの練習をしようと思うんだけど」夜は抱き合ってそのまま眠って、朝起きて朝食を食べたその後またベッドに戻って抱き合って…勿論まだまだ抱けるし触れていたら欲しくなるけれども、チャンミンの体力も心配だし明日はレッスンも有るだからベッドから抜け出たのだけど…「じゃあ…僕はもう少しゆっくりしますそれに、シャワーも浴びようかな」「そう、落ち着いたらおいでいや、でも無理はしなくて良いから」「はい、ありがとうございます」沈んでいるようには見えないけれども、昨日までとは何だか違う番になってから、以前よりも何もしなくても繋がっていると思えるようになったけれどもそれだって、同じ家のなかに居るからで…例えば、この先別々の仕事をする時に物質的に距離があってもそのように感じるのか、はまだ分からないそれでも確かな事は、俺とチャンミンは番になっただから、別のどんなアルファだってチャンミンを抱く事は出来なくなるつまり、離れていても守る事が出来るという事「うん…安心だ勿論俺だって他のオメガに誘惑される事も無くなるし」番は結婚よりも何よりも深い繋がりで、言わば命が尽きない限り続く契約例え互いに嫌気が差したとしても離れられないし、他の相手を選ぶ事は出来ないそれが俺はずっと気掛かりだった何故ならばチャンミンを縛ってしまう事になるからけれども考え方を変えてみれば、どんな恋愛だってどんな関係だってそうだけれど、何の努力も無しに相手から永遠に同じ気持ちで想われ続ける、だなんて有り得ない事だからこそ、今の気持ちを大切にして、互いに努力をすれば良いそれに、チャンミンがオメガになる前からずっと俺達はもう、約十年一緒に居る最初は生意気盛りの少年だったし、そうで無くても俺達はあまりに性格が違うそれでもずっと上手くやって来れたのは、生来の相性も有るのだろうけど…互いに信頼し合って共に壁を乗り越えて来たからだ「そう言う意味でも誰も俺達には敵わないって言っても…自惚れじゃあ無いよな」リビングでストレッチをしながらそんな事を考えたそれから、リモコンを手に取ってテレビの電源をつけたすると、流れていたのはニュースで、そして取り上げられていたのは偶然なのだろうけど、チャンミンだった「……」反射的にチャンネルを替えようかと思ったけれども、リビングの扉は閉めてあるし、チャンミンは寝室で此処には居ない音を小さくして、ストレッチを続けながらニュースを見た番組のなかのトピックスのひとつだっただからそう長くは無かった、筈けれども俺にはとても長く感じた報じられていたのは、まだ良心的な内容ではあったかもしれないけれども、アルファが多い芸能界にオメガが存在する事は安全であるのか、とか…今までの均衡が乱れてしまうのでは無いか、とかそれに、ファンや一般人のインターネット上での声を取り上げたり、約一年前と最近のチャンミンの写真を比べてみたり…それが当たり前の反応なのかもしれないけれど、彼が一般人であればこんな風に取り上げられる事は無いのに、と思った「流石にはっきりと…アルファを誘惑する、だとか…俺とどうにかなるのでは、だとかそんな事は言っていないんだな」勿論、事務所からもある程度指示は出ている筈だだから番組側も下世話な事は言えないのだろうけれども、希少なオメガに芸能人が…アイドルが突然変異したというのは、世間の大きな関心事であるという事が窺えた「もしも俺だったら…どう思うかな」アルファだから、強く在りたいとずっと思ってきたけれども、生まれつき強い訳でも無いし、自慢する事では無いけれど、小さな事でも気にしてしまうタイプだこれまでと自分を見る目が変わったとしたら…やはり怖くて仕方無いと思う身体の変化について行って受け入れるのだって大変な筈なのに、更に人目に晒される事は大きなストレスだろう「だから守るよ、でも…」ふと思ったのは、守ろうとして俺が前に出ると、今度は俺達の関係を勘繰られてしまうかもしれない、という事実際、恋人だし番になったけれども、それはまだ公表なんて出来ない「…はあ…難しいな」もう一度リモコンを手にして、チャンネルを変えたまたしてもニュース番組で、映ったのは俺とチャンミンの写真『芸能界に衝撃が走りました』だとか『オメガだと公表した事で身の危険は無いのでしょうか』だとか…「駄目だ、替えよう」勝手知ったる、でリモコンを操作したデッキのなかに入っていたディスクには俺達が昨年行ったコンサートの映像が収められていた「…懐かしいな」テレビの前で、それを見ながら口ずさみ身体を動かした約一年前だから、若い、だとか今と比べると…なんて事は思わないけれどもそれは自分自身に対しては、だ「チャンミナ…」ずっと一緒に居ると情けない事に本当には分かっていなかったのかもしれない彼の身体の使い方や動かし方、それに身体付き声だって、今よりも低音が低い気がするオメガになってから少しずつ変わっていた事は分かっているそれほ俺だけじゃあ無くて、周りのスタッフにも指摘されるくらいだったからけれども、変化は僅かずつ、だったし俺にとっては何が起ころうともチャンミンはチャンミンで…だから、気にはしていなかったでも、何だか涙が溢れてしまった「…っ……」番になった後、彼は俺に言ったこれまでずっと自分は何も変わらないと思いたかったのだとそう思う事で耐えていたのだとそして、自分を受け入れて番になって、今はまるで生まれ変わったような気分なのだと、とてもすっきりとした顔をしていた「男として生まれてベータで…こんなに変わったら苦しかったよな」『チャンミナは変わらないよ』なんて、俺は何度も何度も言ったそれは俺の本音だけど、変わった事だって確かに有るのだもしかしたら、俺の言葉がチャンミンを追い詰めた事もあったのだろうかと思うと申し訳無い気持ちに苛まれた溢れる涙をスウェットの裾で拭って、止まってしまった身体を動かそうとしたそうしたら、かたん、と音がして振り向いた「…チャンミナ、いつの間に…」「あ、ごめんなさい、盗み見るような…何だか、ユノヒョンが悲しんでいるような気がして」音は、扉が開いたものでは無かっただから、彼は今此処に来た訳では無い扉に手を添えていたチャンミンがゆっくりとこちらに歩んで来たから、慌ててぐっと目を瞑り涙を無かった事にした彼は、そんな俺を横目で見てテレビの前へと歩んだ「こうして見るとやっぱり少し変わりましたよね、僕」「…ああ、今更気が付いたよずっと傍に居たら分からなくて『チャンミナは何も変わらない』だなんて無責任に言っていた自分が情けないよ」数歩前に居る彼の後ろ姿を見て呟いたすると、チャンミンはくるりと振り返って俺を見て微笑んだ「泣かないでくださいよ、もう」「泣いてない」「…背中が揺れているのも見たし、横顔が見えていたので分かっています」得意気に言って、俺の元へと戻ってきたテレビのなかの俺達はと言えば、激しいダンスナンバーを終えて暗転して…今度はバラードが流れ出したチャンミンは俺の手を引いて、ソファに誘う隣同士、いつものように座ったら、彼は流れるバラードを口ずさみ始めたその曲は、優しい曲で、だけど一途に恋人を想う男性の心情を歌ったもの愛するひとの最後のひとになりたい、そのひとの居る場所こそが天国時に愛おし過ぎて触れる事すら出来ない、だけど自分だけを見て微笑んで欲しいそんなメッセージの歌「僕、この曲が以前から好きなんですだからこの時も…我ながら良い表情をしているなあって思います」「うん、俺も好きだよ」チャンミンの肩を抱き寄せたら、俺を見て微笑むそんな姿を見たら、この歌のように俺だけを見て笑って欲しいと素直に思う「でも、ずっと本当にこの歌の気持ちなんて分かっていませんでしたただ、こんな感じなのだろうと想像して歌っていて…だけど、今なら分かるんですそれはきっと、オメガになってユノヒョンに恋をしなかったら…別の誰かにはここまで思えなかったって確信しています」「あはは、本当に?嬉しいな」「うん、だから…今の自分をちゃんと受け入れていきます、これからも」「チャンミナ…」じっとテレビ画面を見るチャンミンは、ぼそりと「ずっと以前のコンサート映像が見られなかったんです」と言ったそれは、今まで知らなかった事「変わった自分を確認する事が怖くて体力が落ちた事を突き付けられるのも嫌ででも、今口ずさんでみれば、今の方が良い歌を歌えるって思いました体力は…頑張ってまたトレーニングして筋肉を付けますオメガの僕に合わせたトレーニングを組んでもらえば、次のコンサートに向けて身体を作れると思うんです、ね?」本音か、強がりなのか、幾ら番になっても分からないだから、「見ていなかったのに目に入れてしまってごめん」と謝ったそうしたら…「…っ痛っ、チャンミナ…!」「ユノヒョン、ヒョンが言ったんですよ?謝ったりは駄目だって次から、こんな風に謝ったら…ヒョンが僕を抱きたいって言ってもさせてあげません」俺の頬を両手で引っ張ったチャンミンは「痛くないくせに」とこどものように朗らかに笑った「まあ、痛くは無かったけど…抱かせてくれないの?でも、チャンミナもそれって我慢する事にならない?」「…そこまで考えなくて良いんです」ふい、と顔を背けて脚と手を組んで俺を避けるような態度でも、声はどこか甘い「ずっと見られなかったのは本当ですでも、今見たら…大丈夫でしたそれに、今の僕だから、色々な事を知った僕だから表現出来るものも有るのだと思います」茜色に染まっていく空を見ながら、チャンミンは穏やかに言ったその後は、チャンミンも『ベッドでは運動をしていたけど、身体を動かさなきゃ明日からちゃんと動けないかも』なんて言って、俺と一緒にトレーニングをしたストレッチや、自分達の映像を見て軽く踊ったり防音だから良かった、なんて笑い合いながら「なあ、聞いても良い?」「何ですか?」少し汗をかいて、ふたりでフローリングに座って休憩した時に尋ねてみた「どうして今日は、あまり俺の傍に居ようとしなかったの?」こうかもしれない、と考える事はあるけれども、ひとりで考えても考え過ぎてしまったり、的外れだったり…番になったからと言って全て分かる訳では無い事が少し悔しい本当は尋ねずに正しく察する事が出来たら良いのだけど、俺にはまだそれが出来ない「我慢していたんです」「え…」「明日からも勿論ほぼ仕事は一緒ですそれに、今回の事はふたりで乗り越えようとユノヒョンは言ってくれていて…だけど、それに頼り切ってはいけないし、人前に出てファンが居る以上はしっかりしないと、と思って」もしかしたら、明日からまた人前に出て仕事に復帰する事でナイーブになっていたのかもしれないとも思っていたけれども、チャンミンはやはり俺が思う以上に強い勿論、色々な事を乗り越えての強さだけれど「ひとりで考えていたんです、これからの事を」「うん」「こう出来たら良いなあと思う事があってでも、そんなのは僕の勝手かなあって迷って…」「どんな事?」覗き込んだら、外を見ていたチャンミンが漸くこちらを向いてくれた茶色い髪の毛は射し込む光に少し透けていて、とても美しい右手を伸ばして項に触れたら、まだ少し盛り上がっている噛み痕が分かったチャンミンは擽ったそうに肩を竦めて、俺を真っ直ぐに見た「勿論、事務所と相談して、ですが…以前の、ベータだった頃の映像もちゃんと見る事が出来たから、出来る気がするんです僕は…僕の言葉で、きちんと、今の僕について、をファンや皆に話したいです」「…怖くは無い?」「怖く無いと言えば嘘になりますでも、先に進みたいって思ったんですユノヒョンが僕を愛してくれて、ヒョンを愛する事が出来たから今の僕に後悔は無い、だからきっと大丈夫」『勿論、どんな反応が出るかは分からないけど』と少し眉を下げてチャンミンは続けた「支えるよ、何が有ってもそれに、チャンミナのバラード…また泣きそうになるくらい素晴らしかったよ」「ありがとうございますでも、ユノヒョンが居ないと完成しませんそれは僕だけじゃ無くてヒョンの歌だって…そう思って良いですか?」「…勿論」ふたりでひとつ、なんてまるでひとりじゃあ何も出来ないという風に思われるかもしれないだけど、俺達はふたりで居れば何処までだって行けるような気がするそれが例え勘違いだとしたって、本気でそう思って、もっともっと努力を重ねればいつかきっと届く筈チャンミンの迷いの無くなった顔を見て、俺の番は世界で一番だって心から思ったランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村作中でタイトルを伏せたバラード曲は、書かなくても分かる方も多いかな?と思うのですが、再始動後のバラード曲「SHE」です100、を超えると早く終わらせないと…とタイトルにナンバリングする度に思ってしまうので…思っている最後に辿り着けるように進めていきたいと思っています長いお話ですが、最後まであともう少しお付き合い頂けたら幸いです
- 17Apr
black day 28 後編
チャンミンに言わせれば、今日は俺と再会した…いや、探しても探しても会えなかった名前も知らない俺をもう一度見付けた日、だと言う二年前のホワイトデーの日、俺が偶然転けたチャンミンに手を差し伸べたそうしてチャンミンは俺に一目惚れをして…なんて自分で言うと恥ずかしいのだけど、そうしてまた会えないだろうか、と何度も同じ道を通っていたらしいチャンミンがその後の一ヶ月間、ただ手を差し伸べただけの俺の事を忘れないでいてくれただから、二年前の今日、四月十四日にまた出会う事が出来た「やっぱり今が有るのはチャンミンのお陰だよ」「ただ僕は諦められなかっただけです名前も知らないし何も分からないから調べようも無くて…外に出た時に辺りを見渡す事しか出来なかったし」ふたりで向かったのは、今日は俺のマンションチャンミンは昨日『僕の部屋に来ますか?何か作ります』と言ってくれたでも、今日は俺の部屋に来て欲しいと言ったのだ「特別な事も何もしていないのに好きになってくれた事それに、忘れずに居てくれた事も…その一ヶ月間のチャンミンに会いに行きたいくらい嬉しいよ」玄関の扉を開けて、先にチャンミンをなかへと招いたそうしたら、頭を小さく下げてからなかへ入ったチャンミンが振り向いたそして、俺が扉を閉めたのを確認してから少し唇を尖らせる「どうしたの?」「…ユンホさんの気持ち…嬉しいんです、嬉しいけど…」多分これは拗ねている顔だけど原因が分からない何か気に触る事でも言ってしまったのだろうか靴を脱ぐように促して、ふたりで廊下を奥へと進もうとしたらチャンミンが抱き着いてきた「…チャンミン?どうしたの?何か嫌な事を言ってしまったかな…」「…違う、違うけど…僕がこどもなだけです」背中を丸めて、俺の胸元に頭を寄せてぶんぶんと首を横に振る「こども?そんな事無いよチャンミンは出会った時から比べてもおとなになったし…」「…でも、おとなならきっとこんな事思いませんだって…ユンホさんに会えなくて片想いしていた一ヶ月の間の僕に、今のユンホさんが会いに行ったら…昔の僕の方が可愛げがあるとか…今の僕よりも好きになってしまうかもしれないから」「……」一瞬、理解が出来なかったそして、冗談かな?とも昔のチャンミンに会いに行く事なんて現実には不可能だからそれでも…勿論、実際にもっと早くに二度目の出会いを果たせていたら、なんて思う事もあるけれども勿論それは空想で…「…もう終わりです、ええと、その、重くてごめんなさい」「チャンミン、それって…本気で昔の自分に嫉妬してくれたって事?」がばっと身体を離して俯く恋人その顔を覗き込むようにして囁いたら、耳まで赤くなった「本気じゃ無ければこんな情けない事言わないし…言って直ぐに後悔もしないですもう、言うんじゃ無かったです」そう言うと、今度は脇をすり抜けるようにして廊下を進むだから、今度は俺が後ろから抱き締めて捕まえた「ユンホさん、離してください、恥ずかしいから…」「ふたりきりなのに触れたら駄目なの?そんなの拷問だよそれに、これからずっと一緒に居られても過去のチャンミンには会えない俺が知らないチャンミンが居るのが悔しいなあって」勿論現実には無理な事だけど、俺を想って一ヶ月を過ごしていたチャンミンにもっと早く会って…会えば好きになってしまうのだから、安心させてやりたかったなんて烏滸がましいけれど思ってしまう「…本気で言ってますか?」「勿論前にも言ったけど、チャンミンしか俺を知らなかったなんて悔しいよ」嫉妬をして恥ずかしがって、自らの発言を後悔しているというチャンミンだから、俺は俺で、もっと早くに出逢えていたら、なんて叶う筈も無い願望を話した顔を赤くしてこちらを向いてくれなかった恋人は、ゆっくりと顔だけで振り返ってじっと俺を上目遣いに見る最近はもう、スーツ姿のチャンミンにも見慣れてきし、おとなの男になったのだなあ、と思う事もあるだけど、彼はやはり俺にとってはいつまでも可愛い恋人「あの一ヶ月は…もう会えないかもって悲しくてそれにユンホさんには彼女が居たし男同士だし苦しかったし切なかったです」「うん…」「でも、それも僕の大切な思い出です僕がちゃんとまた、ブラックデーの日にユノさんを見付けられた事も、ユノさんが黒を着ていた事も全部全部それに…」「それに?」また前を向いてしまったから、前に回り込んで俯く恋人を抱き上げた「わっ!ユンホさん!」「おとなじゃあ無くてこどもなんだろ?だから素直に俺に任せて」「…おとなですって言ったら抱き上げてくれないんですか?」「あはは、勿論そんな事無いよ」横抱きにしてリビングに入り、そしてソファにゆっくりとチャンミンを下ろしたら、彼は言った「一ヶ月は長かったです今思い出してもあの時には戻りたく無いし…でも、二年前の今日、ブラックデーに黒を着るユンホさんを見たから迷わずに声を掛ける事が出来たんですだから、これで良かったんですそれから…」「それから?」ソファに座るチャンミンの前にしゃがみ、同じ目線で彼を見たチャンミンは悪戯っぽく含羞んで…多分、恥ずかしいからだろう、普段よりも舌っ足らずに言った「あの一ヶ月分、僕の方が長くユンホさんを好きなんですこれは僕の自慢です」「あはは、じゃあ…一生チャンミンには敵わないな」恥ずかしそうに話す彼が可愛くて頭を撫ぜたら「こんなにも僕を夢中にさせるユンホさんに僕は一生敵いません」なんて言われたから、結局俺の方が勝ってしまったようだ今日は俺にとって特別な日明日も平日だけれど、今日はチャンミンがこの部屋に泊まるから朝まで一緒に居られる勿論、好きだから欲しいし…と言うか、今直ぐ抱き合いたいだけど、今日は考えている事が有るからまずはそれを進めなければならない「そうだ、ユンホさん、食事…」「ああ、うん今日は俺が作るからチャンミンは寛いでいてテレビを見ても良いし音楽を聴いても良いしそれか、先に風呂に入っていても良いよ」「え…ユンホさんが?なら僕も手伝います」勿論、そう言われるだろうと思っていたでも、今日は駄目だって…「二年前、チャンミンが声を掛けてくれたから今が有るんだそれに俺は感謝したくて…だから、チャンミンは何もしないでゆっくりする事、分かった?」「…っん………分かりました」キスをして囁いて、目でも訴えたチャンミンは嬉しさと、それに少し申し訳無さそうな色も滲ませているから「ありがとう、嬉しいよ」と言ってもう一度キスをしたら漸く「先にお風呂に入って、ついでに浴室を掃除します」と言って、俺の案を受け入れてくれた昨夜の内に下準備はしておいただから後は仕上げるだけ「良し!」スウェットに着替えて、それからキッチンに立ったスマホを見て、父親からのメッセージに返事をしたら緊張が高まって来ただけど、まずは料理を完成させなければならない一応自炊もするけれど、自分だけならば簡単なものばかり出来合いのものに頼る事も多いし、ふたりで居る時はチャンミンの方が料理を得意とするから、俺は手伝うばかりだから、二年一緒に居ても俺がきちんと作る事なんて本当に数える程しか無かった「チャンミンがいつも喜んで準備してくれるけど…それはかりじゃ駄目だよな」得意では無いでも、美味しいと言ってもらえたら嬉しいし、恋人の笑顔を想像しながらする準備は楽しい特別な物は作れないけれど、昨夜から別々の下味を付けている牛肉と蛸にそれぞれ野菜を足してブルコギと蛸の辛い…いや、辛さを少し控えた炒め物を作ったそれに、わかめと葱のスープも「良し…って、ご飯…忘れてた!」準備が順調に進んだと思ったら、最初にセットしておく予定だった米を炊く事をすっかり忘れていた味見したプルコギをごくり、と飲み込んで今から炊いたら遅くなるしお互いに腹も減っているし…なんて思っていたら、チャンミンの足音が近付いてきた「…わあ!凄い、美味しそうな匂いがします」タオルを胸に抱くようにして持った、スウェットの上下なのにとんでも無く可愛い恋人は俺の傍にやって来てすんっと鼻から匂いを吸った「チャンミンの方が良い匂いだ俺と同じシャンプーなのに別物みたい」「…一緒です、それに僕の方がユンホさんと同じ匂いで嬉しいって思っています」そっと隣に立って「手伝う事は有りますか?」と尋ねるチャンミン少し情けないけれど、「ごめん」と前置きをしたら不思議そうに首を傾げて心配そうな顔「実は、米を炊き忘れて…他は全部出来ているんだけど、今から炊いたら時間も掛かるし俺も腹が減ったし…」もう一度「ごめん」と謝ったら、チャンミンは俺のスウェットの裾をぎゅっと掴んでほっ、と息を吐いた「良かった…何か大変な事があったのかと思いましたお米よりユンホさんの作ったおかずが楽しみなので、無くて良いです」「本当に?」「勿論それに、お腹が空けば夜食を食べれば良いんです」そう言って胸を張るチャンミンに「沢山有るから夜食は要らないかも」と伝えたら「でも、僕が全部食べちゃうかも」なんて、顔に似合わずに大食いの恋人は言った「…ご馳走様です、本当に本当に美味しかったです」「本当に?俺はやっぱりチャンミンが作ってくれた料理の方が美味しいなあって思ったんだけどでも、喜んでくれたなら嬉しい」チャンミンの言葉には嘘は感じられないし、実際に美味しそうに食べ切ってくれた自分でも悪くは無いと思うけれど、とは言えやはりチャンミンの味には敵わない最後に残ったスープをスプーンで掬って飲んだら、チャンミンは「僕の為に作ってくれたのが美味しいだけじゃ無くて嬉しいだから美味しいだけじゃ無くて幸せです」なんて、恥ずかしげも無く言う出会った時からチャンミンはいつもそうだった素直に想いをぶつけてくれるし、表情豊か俺のちょっとした言葉に勘違いしてへこんだりする事も有るけれど…素直な彼がいつも眩しいくらいそして、日々を何となく、それなりに楽しいというくらいで過ごしていた俺の毎日は、チャンミンと出会って変わった「俺もいつも、チャンミンが作ってくれた料理で美味しいだけじゃ無くて嬉しくて幸せな気持ちももらっているよ」素直に気持ちを伝えてくれる事が嬉しくて、そんなチャンミンが眩しくて愛おしいだから、俺も同じように気持ちを伝えられるようになったそれに、気持ちを素直に伝えれば可愛い恋人はもっと笑ってくれて…そうすれば俺ももっと幸せを感じるから「至れり尽くせりで嬉しい事まで言われて、どうしたら良いか分からないです」「あはは、そっか…じゃあ…チャンミンにひとつだけお願いが有るんたけど、聞いてくれる?」「え…何ですか?」ふたりで片付けをして洗い物を終えてソファに腰掛けてから、話を持ち出した真面目に言わなければ、と思って表情を引き締めたのだけど、チャンミンはそれに何だか緊張した様子早く言わなければ、不安にさせてしまうかもしれないだけと俺も緊張で…「…ええと…その、もうプロポーズもしたし、お互いに同じ気持ちだって思ってる」「はい、僕もユンホさんしか考えられないです、勿論」「うん、ありがとうでも、親にはきちんと話していなかったよな、お互いに」「……」これまで、話が出なかった訳では無いでも、どれだけ自分達の気持ちが揺らがなくても、男同士だからこそ親には言い辛いいつか話をしよう、とチャンミンと話し合った事はあったけれどそのままで…「今日は俺にとって本当に特別な日なんだ二年経って気持ちは深まって、俺を見付けてくれたチャンミンに感謝しているし…俺を育ててくれた親にも感謝してるそれで、先に…チャンミンと…と言うか同性と真剣に付き合っていると伝えたんだ」「え…本当に?」「勿論」チャンミンは大きな瞳をもっと見開いて俺をじっと見るその瞳は少しだけ不安に揺れていたから、大丈夫だと言う代わりに先に肩を抱いた「父親に話をした驚いていたけど、俺が本気なんだって伝えたら本人の意志を尊直すると言ってくれたよ」「……」「で…少しだけでも話をしてみない?」「え!今ですか?」どきどきしながら提案したら、チャンミンはやはりと言うかとても驚いた様子「気持ちの準備が…」と小さく呟きながら、両手を組むようにして落ち着き無く動かしている勿論、これは俺が勝手に進めた事だけど、父親は俺の話を聞いてこう言ってくれた「『声を聞くだけで分かるくらい、そこまでユンホが夢中になるならとても良い相手なのだろう』電話で話しただけなのに…それくらい俺は分かりやすかったらしい」「ユンホさん…僕はまだ言えていないのに」「時間はまだまだ有るから良いんだ俺が今日に向けて話をしたかっただけだから」「少しだけ話をしてもらえる?父さんが俺が好きになったチャンミンの声を聞きたがっていて」そう尋ねたら、チャンミンは少し俯いて手を組んで、それから二回深呼吸をして「はい」と答えてくれた勿論、緊張している事は分かるし、俺だって逆の立場になれば同じ筈だから、少しでも緊張が取れるように、今日やり取りをしていた父親とのメッセージ画面を見せた「ほら、見て?父さんと話をしていたんだけど…『怖がらないように伝えてくれ』だとか…『電話では緊張して上手く話せないかもしれないから、もしそうなったらユンホがフォローして欲しい』俺が凄く良い子だって言ったから余計に緊張したみたい」「…ハードルが上がりますでも…ユンホさんのお父様なら良い方だって分かりますだってこんなに素敵な息子を育てられた方だから」逆に、また緊張させてしまったようだけれど、チャンミンは少し笑顔を見せてくれた緊張で喉が乾いたから、とお茶を飲んだチャンミンが大丈夫だと言ってくれたから、父親の番号をタップしたそして…「ヨボセヨ、父さんええと…その、お待たせ俺の大切なひとを紹介させてください」結局、俺もかなり緊張してしまったそして、父さんも声だけで分かるくらいスピーカーモードにして、チャンミンと三人で少しだけ話をしたチャンミンだって勿論、と言うか…当たり前に一番緊張していたと思うでも、いつも通り俺の…俺なんかの事を好きで仕方無いという事だったり、俺と出会って色々な事を頑張れたのだとか…真剣に一生を共にしたいと考えている、という事をほんの少し震える声で語るチャンミンに、父親の声はどんどん優しくなっていった『話をしてくれてありがとう今度、遊びに来てくれると嬉しい』父さんは何だか余所行きの声でそんな風にチャンミンに優しく語り掛けたそれが何だか格好付けているようで笑ってしまったそうしたら、父さんは俺を叱って、チャンミンもくすりと笑って…緊張したし、まだまだ俺達はこれからだけど、チャンミンと出会って彼を好きになり出して二年経った今日、未来に向かってまた一歩、前へと進めたような気がする「ユンホさんのお父様の声…少し、ユンホさんに似ていました」「…え、本当に?自分じゃあ全然分からないんだけど」通話を終えたら、チャンミンがふう、と息を吐いて緊張の糸が解けた様子でそう教えてくれたあまり言われた事も無いしなあ、なんて思ったのだけど…「僕はいつもユンホさんの事を考えているので、小さな事でも分かるんですそれに…ユンホさんに似ていたから、緊張したけど恐くは無かったです」なんて、やはり緊張していたからか、それとも緊張が解けたからか…もしくは安堵したからか少し潤む瞳と、ほんの少し震える手を両手で握って、けれども笑顔で俺に告げたチャンミンにとっては二度目の再開をした二年前の今日俺にとっては…一度目はしっかりと覚えていないから、『初めて』の日あの日も、チャンミンは大胆だったけれど、たまに思い出して感じるのは、少し目が潤んでいた事と、後ろで手が組まれていたという事声を掛けられて振り向いて、そうして正面から対峙したから見えなかったけれど、もしかしたらあの時も後ろに回された手が震えていたのかもしれない、なんて思った大胆なチャンミンは、ただ大胆なだけでは無い彼の勇気にいつも俺は助けられているし、切っ掛けをもらっている「次は僕の番ですね」「俺を紹介してくれる?」「はい、だって自慢の恋人なので」一ヶ月、チャンミンの方が長く俺を好きで居るそれは事実でも、想いの強さは負けないくらい、どころか…多分、チャンミンが思うよりも俺は彼の事を愛しているのだと思っているランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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未必の恋 18
ユノさんが予定よりも少し早く帰って来たその日フロントに立っていたら帰って来たユノさんと鉢合わせて、そのまま一緒に最上階の彼の部屋までやって来た僕はと言えば、その日初めてユノさんに見立ててもらい買ってもらったスーツを仕事で着用した生地が良い事は勿論だけれど、身長があるから普段は殆ど直しに出す事も無いスーツを細かく僕の体型に合わせて詰めてもらっただから、とても着心地が良くて…なのたけど、それも、僕を求めてくれたユノさんに直ぐに脱がされてしまった少し時間を掛けてゆっくりと、だけど激しく抱かれたユノさんへの恋心を自分の心のなかで認めて以来、気持ち良さが増している気がする勿論圧迫感は有るし全く痛みが無い訳ではないそれに、少し前までユノさんが手加減して抱いていてくれた事も分かったから…最初の頃よりも激しいと感じるでも、それも全て幸せだし、我慢せずに…なんて言ったら烏滸がましいけれど、僕だけで済むように僕を抱いて欲しい、なんて思ってしまう「…ふう、流石に疲れたな…」「ユノさんが…そんな風に言うのは珍しいですね」「ああ、悪い抱き合ったからじゃ無いよ、仕事が…」「分かっています今日も朝早くにホテルを出ていたようですしゆっくりお湯に浸かってください、外は寒かったと思うし…」「チャンミンは?」広過ぎるくらい広いベッドだけど寄り添って寝そべっていたのに、更に抱き寄せられた本当は…一緒に風呂に入りたい気持ちもある実際にそうした事もあるでも、それは僕がもう動けなくなってしまって、身体中色々と…色々、は詳しくは言わないけれど、兎に角べとべとになってしまった時に申し訳無いと思いながらユノさんと一緒に浴室に向かい身体を清めてもらったのだ今はと言えば、一度抱かれただけで…身体も心も慣れてきたから僕は問題無い叶わないであろう恋を抱えている事は切なくも有るけれど、こうして憧れていて好きなひとと一緒に過ごせる幸せを噛み締めているから元気なくらい「僕は今は大丈夫です今日はその…風邪で休んだスタッフが居て、後でまた部下のフォローをしたいんです、だから…ユノさんはゆっくり入って来てください」「俺が風呂に行っている間に居なくなるの?」「そんな事しません!部屋を片付けたりしておきます」何だか駄々っ子のようなユノさんが可愛いでも、やはり傍に居れば分かるユノさんが疲れている事がだから、ひとりの時間もきちんと設けて、折角宿泊しているこの場所で少しでも元気になって欲しい「俺はもっとチャンミンと一緒にも風呂に入りたいんだけど…」「…ユノさんが望むなら…でも、今日は駄目です」VIP客に『駄目』だなんて…ユノさんがやって来た頃の僕なら絶対に言えなかっただろうでも、今は…僕がある程度普通に接する事を彼が望んで、そして喜んでくれる事を知っているから僕として、VIP客と客室係という距離を保つ事が大切だとも思っているでも、本音は勿論プライベートの仲になりたい望みなんて果てしなく薄い事は分かっているけれど「チャンミンが待っていてくれるなら、少しだけ風呂に入ってくるよ」「急がなくて大丈夫ですユノさんが疲れを取る事が最優先なので」挨拶の、なのか親愛の、なのか…それとも単にユノさんの所有物だから、なのかは分からないだけど、僕の言葉に嬉しそうに微笑んでキスをしてくれたベッドから抜け出て歩いていく広い背中それを見ると抱き着きたくなってしまうだけど我慢して、僕もベッドから起き上がった「掃除…って言っても、ユノさんって割と神経質だよね」清掃係が入る事も無いこの部屋に入るのは、ユノさんと僕だけだから、僕が居る時は掃除をしたりもするのだけど、大抵ごみが散らばったりしているなんて光景は無い彼は何だか全てが完璧で…僕の付け入る隙なんて無いのでは無いかと思ってしまう流石に、僕も軽くシャワーで流さないと、汗をかいたままで真新しいワイシャツとスーツを着る事ははばかられるいつもこの部屋で使っているガウンに袖を通して、それからベッドから降りた簡易キッチンも綺麗だし、床も特には汚れていない冷蔵庫を開けてみたら…「…ユノさん、いつの間に…ルームサービスで頼んだのかな?」それは、我がホテルで夕食のコースに食前酒として提供しているうちのひとつ、苺のワインだ以前、それを飲んだユノさんがとても気に入って…僕からすれば少し甘めなくらいなのだけど彼は甘党らしくて、その後僕が自分で購入してこの部屋に持ち込んだ事もあった「五本もある余っ程気に入ってくれたのかな」製造しているメーカーは国内だだから…こんな事を考えるとまた寂しくなってしまうのだけど、約二週間後、ユノさんがイタリアに帰国する時にはお土産に沢山渡してみようか、なんて思った「でも重たいし…空輸…いや、別にオンラインでも買えるんだけど」なんて考えている自分の気持ちが重たくて、溜息を吐いて冷蔵庫を閉めた結局、乱れたシーツを整えて、補充するアメニティをチェックするくらいしかする事が無いハンガーに掛けていたスーツのジャケットのポケットからスマートフォンを取り出して、ベッドの傍の椅子に座った「そうだ、ニュースや話題になっているのかなあ」はっ、と思い立ったのはユノさんが現在忙しくしているその要因つまり、彼の生まれ育ったここ韓国ソウルに作る彼のブランド『JYH』の旗艦店についての事個人的に僕があまり聞くのは良くないだろうし…そもそも詳しく聞いて良い事でも無いと思っているから、店舗の場所が決まって話し合いを進めている、という事しか聞いていないでも、勿論、完成したら見に行きたい僕にはユノさんのブランドはとても高いけれど、給料とボーナスをやりくりして毎シーズン必ず少なくとも一着…いや、二着は買いたいこれまではオンラインショップか、もしくはセレクトショップで一部取り扱いがあるだけだったそれが店舗内全てユノさんの作り出す物で溢れるだなんて凄い事だ「…あ!記事になってる!凄い…夏にはもう完成するんだ…なら打ち合わせも急がないと、だよね」インターネットでブランド名で検索したら、直ぐに旗艦店が出来るという記事が出て来た今後、店舗を増やす事も検討しているし…何よりも、韓国出身のデザイナー、チョンユンホが自らの国で自分の服を多くのひとに着てもらいたい、という気持ちがある事が書かれていて、それだけで嬉しくなった記事には、もう既に販売スタッフや現地スタッフを採用している、とも書かれていたから、求人も出ているのかもしれない場所はソウル中心部を予定している、としか書かれていなかったから、まだ内密なのだろうか僕は口頭でユノさんから教えてもらったけれど、勿論誰にも言っていない「特別過ぎるくらい特別だよねこんな事もう一生の内に二度と無いよ」多くのVIP客を対応してきただから、テレビで見掛ける誰か、を見るのも慣れてしまっているだけど、自分が何よりも憧れているひとを直接接客し饗す事が出来るだなんて思ってもいなかった直接、どころかもう…ユノさんの裸も全部知っているし「っ、もう、何考えてるんだよ!」ぶんぶんと頭を振って、記事を閉じたでも、今はユノさんの部屋に居るこの部屋に居る時は『俺の事を考えて俺の為に働いて』そう言われていたから…まだユノさんが浴室から出て来ないのを良い事に、少し久しぶりに彼のブランドの公式インターネットサイトを開いた「見たら欲しくなるんだよね…でもやっぱり凄い、良いな…」既に春夏の商品がアップされているコレクションも毎回チェックしているから、ショーに使われていた服は見覚えがあるそうじゃ無くて初めて見る服や小物も、わくわくするものばかり夢中になって見ていたら…「え、そんな物まで出しているんだ知らなかった」意外なアイテムも出て来て驚いた流石にそれを買う事は無いだろうけど、店舗が出来たらソウルにも並ぶのかな、と想像して…そうしたら、ユノさんが居ない事は寂しい事だけど、オープンする店に行けばいつもユノさんを感じる事が出来るのかもしれない、なんて思った「チャンミン?」「え?わっ!いつの間に…」「いつの間にって今だけど…何?俺の服を見ていたの?嬉しいな」「あっ、いえ、その…掃除もしたのですがあまり汚れていなくてそれで…」後ろから声を掛けられて慌てて立ち上がった自分の胸にスマートフォンを押し付けるように握って、ディスプレイを隠しただけど、しっかり見られてしまったようだ「疲れ…少しは取れましたか?連日打ち合わせやお仕事で、それに久しぶりにソウルに長く滞在したら環境が変わってお疲れだと思います」スマートフォンは机の上に伏せて置いて、それからガウンを羽織ったユノさんに向き合ったまだ少し水が滴る黒髪がとても綺麗で、ユノさん自体が芸術品のようだと思う「バスタブで少しゆっくりしてすっきりしたよやっぱり気が張っていたのも有るのかな…疲れを見せるなんて情けないよ」「そんな事…僕には幾らでも見せてもらって問題無いです」左手にタオルを持っていたから、それを取ってユノさんの頭を優しく拭いたすると、擽ったそうに笑って「チャンミンには良い所ばかり見せたいんだ」なんて言う「ユノさん…」「でも、何よりもチャンミンを見てこうして一緒に居るのが安らぐんだだからチャンミンに会えて良かった」その言葉ひとつで、僕は幸せになれるそんな事、彼はきっと知らないのだろう「あの、明日は…明日も打ち合わせですか?新しい店舗を作るなんて大変ですよね」恋人では無いから、心の内を全て出して喜ぶ事は出来ないそれに、彼はホテルマンとして僕を見て、僕が担当者で良かったと言っているのだだから、更に良いサービスを提供出来るように頑張らなければならない「食事も、もっと我儘を言ってくださいユノさんがお好きな物を準備します…作るのは僕では無いですが」そう言ったら、ユノさんは目を少しだけ見開いたそれから、何だか嬉しそうに考えるような素振り「冷蔵庫、苺のワインが沢山でしたねあれに合う料理も料理長に聞いてみます」「あはは、見付かったか凄く好みの味なんだ、だからつい…」「お口に合って嬉しいです何か召し上がりたい物は有りますか?今夜の夕食にはもう間に合わないですが…明日以降、ユノさんの都合に合わせて準備させてください」出来る事は何でもやりたい喜んで欲しいホテルマンとしても、僕としてもそして…またいつか、ソウルに滞在する時には、此処を選んで欲しいそんな思いでじっと見つめていたら、ユノさんは「じゃあ…」と微笑んだ「はい、何でしょう?」「…チャンミンの手料理が良い」「え…」「勿論明日で良いよ、それか明後日の夜でも今週頑張って打ち合わせを進められたから、明日は休みにしたんだ」「明日は休み…それは良かったですでも、手料理…」「そう、あまり辛過ぎるのは苦手だから唐辛子は控え目でイタリアだとあまり食べられないし、此処でもフレンチが多かったから…韓国料理が良いな」「あ…」ホテルマンなのに副支配人で客室係のトップなのに僕はそんな事すら考えられていなかった事に気が付いたユノさんはもうイタリアに渡って長いけれど韓国人だ確か、オンラインショップで韓国の食材を取り寄せて故郷の味を食べる事も有ると言っていたでも、やはり頻度は少ないだろうそれに、此処ではユノさんが言う通り洋食がメインだ「申し訳ございません、僕、思い至っておらず…」頭を下げたら、直ぐにユノさんの手が伸びて両手で頬を包まれ顔を持ち上げられた「チャンミン」「…はい」少しむっとした顔のユノさんびくっと思わず目を瞑ったら、唇に温かいものが触れて、浴室に彼が向かう前と同じくキスをされたのだと分かった恐る恐る瞼を持ち上げたら、彼は何だか複雑そうな…いや、少し寂しそうな顔をしていた「申し訳ございません、は禁止そうだな…ごめん、くらいなら良いよでも、そもそもチャンミンが謝る事じゃ無い」「でも…」「勿論故郷の味は恋しいよでも此処の料理は美味しいから何も問題無いそうじゃ無くて…」頬を包んでいた手がゆっくりと降りて、首を擦る心地好くてふっ、と息を吐いたら、ユノさんの顔が近付いて来て耳に息が掛かった「ユノさん…っ」「俺は、チャンミンの料理が食べたい下手でも良いよ、何でも良い俺の為に作ってくれる料理が良い」「…え…でも僕…チゲや煮込みくらいしか…」「充分だよ部屋にも折角キッチンが有るだから…明日でもその先でも良いから、俺の我儘を聞いて?」ユノさんからすれば、深い意味なんて無いのかもしれないだけど、僕からすればまるで夢みたいな事とは言え、料理なんて最低限の自炊をするだけの腕しか無い「本当に、センスも無いし特別な物も作れないですそれでも良いんですか?」「うん、作ってくれる?」「ユノさんがそれで良いなら…」「やった、ありがとう!チャンミン」そう言って僕を抱き締めると、「じゃあ明日にしよう明日は休みだから買い物に行って…」なんて、まるでこどものように嬉しそうに続ける「いや、でも…明日はチャンミンの仕事は大丈夫?今日は人手不足だって言ったよな」「明日はシフトもひとが足りているので問題無いですユノさんと、その…一日一緒に居られます」「良かった他にもチャンミンとしたい事が有るんだ」もうひとつの事、については『内緒』と言って教えてくれなかったでも、明日は午前中にユノさんと食材を買い出しに行く事になった残り後二週間、こんな風に過ごせる時間は後どれだけ有るのだろうと思ってしまうと切なくなるだから、今は明日の楽しみの為に、今夜の仕事を全力で頑張ろうと決めたランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村こんばんは読者様からメッセージを頂いて思い出した事があって「未必の恋 14」の最後を書き足してあります本編の流れには大きく関係無いものですが、今回の内容と少し繋がっています私が伏線を回収するのを忘れたままになっていて…読み返して頂かなくても展開上問題は無いですが、14話の最後にエピソードが増えたので、教えてくださった読者様にこちらからのご報告とお礼と共に記載致します
- 16Apr
transparent
本当は勿論、いつだって傍に居て欲しいけれどもそんな事は我儘だと分かっているし、彼の居ない寂しさだって乗り越えて、僕が引っ張ってステージを作り上げなければいけない最初の収録は早朝から応援に駆け付けてくれて、恥ずかしさもあったけれどそれ以上に力になった後は…心のなかでは何度も『来て欲しいです』と言ったでも、そんな事言える訳も無いし甘えだとも分かっているから、今日も…ソロ曲のパフォーマンスをする為の音楽番組の収録に早朝から参加した僕がカトクで『ソロは楽しいけれど寂しさも有るそれに何よりユノヒョンが居ないし…』と情けない本音を漏らしたら、それを受けた親友が収録にやって来てくれた多くのスタッフ達や今回一緒に活動していダンサー達彼らにも勿論自分の気持ちを話す事は出来るけれど、プライベートでも付き合いのある親友…つまりキュヒョンが居ると安心感が大きかった収録前、緊張する僕に、スタイリストやメイクのスタッフ達に混じってメイク直しに参加したり…セルカや動画をとって、本番前や合間の時間を過ごした「…で…昨日だったかな?黒の透けたレースのやつも凄かったけど、今日は更に…コンセプトがセクシー、なんだっけ?」「…改めて言うなよ、僕だって素になれば恥ずかしいんだからその、折角のソロだし普段とは違う雰囲気を見せたいと思って…」「成程、その結果がこの…いや、良いんだけど…」ふたりだけになった本番前の楽屋キュヒョンは僕の前に座ってじっと…頭のてっぺん、では無くて首の下からお腹の辺りを凝視するように見るビニールコーティングされて張りのある生地で作られたショートジャケットその裾を両手で持って、胸元を隠すようにした「透け過ぎとか、見えてるとか…そんな風に言いたいんだろ」「うん、だって…女性スタッフも、だけどさリハの時、男性スタッフもちらちら見てたの気付かなかった?何だか最近のチャンミンが本当に色気が有るって話題だよ」「え…嘘、本当に?と言うかキュヒョンも僕に色気が有るって思う?」「いや、俺は無いだって良く知っているから、まあお互い様だけど」「……」今はそんな機会は無いけれど、普段は定期的に一緒に酒を飲んだり、ゲームをしたり僕にとって貴重な芸能界での友人最近はもう無いんだけど、以前は泊まり合った事もあったし、寝起きの顔だってお互いに知る仲だからまあ、色気なんて感じられなくても当たり前そう思ったのだけど…「でもさ、ユノヒョンと付き合い出してからのチャンミンは変わったよな」「…っ、急に変な事言うなよ!」「え?変も何も事実だろそれに、今は俺達だけだし」ストローで飲んでいたペットボトルのミネラルウォーター思わず噎せてしまって、顔を背けて咳き込んでいたら、優しい親友は立ち上がり腕を伸ばしてジャケットの上から背中を擦ってくれた「…っ、ありがと…」「こんな光景も、ユノヒョンが見たら怒られるかな」「…そんな訳無いよ、キュヒョンは友人だし」「ふうん、そうかなあ…兎に角、ユノヒョンと付き合い出してから、チャンミンは確かに色気と言うか…雰囲気が変わった気がする俺はその衣装には唆られないけど、可愛い女の子が着ていたらやばいと思う」「…勝手に想像するなよな」今回の活動は、少し大胆な衣装が多い髪の毛をブリーチしたのもそうだし、コンセプトに見合うようなヘアメイクを施されて僕が完成するでも、素の僕は色気なんて無いと何よりも自分が分かっているだから、ユノヒョンと付き合って…と言うのは恥ずかしいから置いておいて、色気のような物が出たと友人に言われたのは満更でも無かった「…っあ、はい!どうぞ」噎せも収まって、もう一度ストローに口を付けて喉を潤したところで、楽屋の扉がノックされた扉を開けたら、そこに立っていたのは番組プロデューサーとスタイリストだった「え…ジャケットを?」「はい、リハーサルの風景と映像を見たのですが、ジャケットが有ると動きが見え辛くて…背景とも同化してしまうので、本番はそちらのジャケットを脱いで行う事になりました」「…そうですか…」「冷えてはいけないので、本番まではそちらを羽織っていてください」「……はい」勿論、僕に異論は無い見え方は大切だし、彼らの言う事は勿論分かるからだけど…「…これ…ジャケットが無いともう…」扉を閉めて、キュヒョンに背を向けたまま自らの姿を見下ろしたカフェオレのようなモカベージュの透け感の大きい長袖トップスそれ一枚だと遠目で見ると素肌のようにも見えるかもしれないだけど、ハーネスベルトが細いとは言え丁度胸元を隠しているし、ポイントになっている「いや、でも確かジャケットを無しにしようかどうかってスタッフが迷っていたし…これはファッションだしコンセプトだし…」正直恥ずかしいでも、カメラが回れば、ステージに立てば僕は望まれるキャラクターや歌の世界に入り込めば良い恥ずかしいのは今だけ、そう思って挑んだそれでもキュヒョンには『やっぱりセクシーだな』なんて、揶揄い混じりに、そして本番前には『大丈夫、ちゃんと似合っているし良いと思うよ』とサムズアップして背中を押してくれたから普段通り全力で挑む事が出来た「ユノヒョン、帰りました」僕の部屋、だけど恋人が昨日から泊まっているから駐車場に到着した時にカトクでメッセージを入れておいた扉をそうっと開けてなかへと入って、靴を脱いでじっと待ってみたけれど小さくて速い足音は聞こえて来ないから、僕の『娘』は眠っているのかもしれないそれか、彼女お気に入りのユノヒョンに夢中になっているのかもなんて思いながら手を洗ってリビングに向かったら、丁度リビングから顔を覗かせた恋人と目が合った「お帰り、それにお疲れ様、チャンミナ」「ありがとうございます」普段は僕よりも忙しいユノヒョンだけど、今はこの業界も皆仕事を控えているから、ヒョンにとっては珍しくゆっくりする時間が出来ているようだとは言え、僕が言うのもなんだけど、僕のヒョンは凄くて…時間が出来たから、と色々な書籍を読んだり、この状況が落ち着いた時に次に出来る事を考えたり…前向きなヒョンが僕はとても誇らしいなんて事は惚気のようなもので…「僕の娘…ポッチは?」「さっきまで起きて遊んでいたんだけど、寝たよ」「…寝顔…見たいけど、そうしたら起こしちゃうかなあ」「そうだなあ、可愛かったし見せてやりたいけど…今はふたりの時間が欲しいから我慢して?」まだ幼い僕の家族、ビションフリーゼの女の子成犬と比べても睡眠時間が長いし、遊び疲れると眠る事も多いきっと、ユノヒョンに沢山遊んでもらったのだろう可愛い鳴き声や僕の胸に飛び込んでくる姿を思い出して頬を緩めていたら、ソファで隣に座ったユノヒョンに抱き締められた「…っあ…」「こどもに奥さんを取られた旦那はこんな気持ちなのかな」「…僕はポッチのパパだし…」「でも、俺の妻だって言っただろ?」「それは…っ、知ってるんですか?」「勿論」まさか聞かれているとは思わなかっただって、ラジオでちらりと言っただけなのだユノヒョンは家族のような存在だとと言うか、自分ではそこまでで留めておくつもりだったのだけど、ラジオDJに具体的に、父親だとか母親だとか、どのような存在なのか、と質問が続いたからだから、長い時間の経った夫婦のようだし、役割分担を考えるのななら僕が妻だ、とあくまでも話の流れで答えたのだ「ラジオも聞いたし、それに沢山記事にもなっていたよ俺達は夫婦だってだから、チャンミナは俺の妻でポッチのママ、だな」こんなの、言葉遊びのようなものだと勿論分かっている僕達は男同士でこどもなんて作れない、まるでままごとだだけど、僕の言葉にユノヒョンが嬉しいと思っているのが伝わってきて何だか胸が擽ったい「ふたりきりの間はそういう事にしておきます」「…本当は嬉しい癖に」「お互い様です」寝室には可愛い『僕達の愛娘』が居るから…扉を閉めたリビングのソファの上、覆い被さってくる『僕の夫』の首に腕をまわして唇を重ねた「あっ、そうだ、もう放送…!」「ん?もうそんな時間?」結局、盛り上がったままソファの上で抱き合ったヒョンは前を寛げただけなのに、僕は気が付いたら裸…いや、脱がされていて、慌てて下に落ちているスウェットトップスと下着を取ってテレビの電源をつけた「今日の衣装もかなりセクシーだよな」「…まあ、その…コンセプトなので色気、感じてもらえていますか?」「ああ、うんでもついさっき、充分見せてもらったけど」「…んっ……」折角スウェットを着たのに、裾から手が入ってきて胸の先に触れられたそれだけで身体はびくん、と震えて甘い痺れが全身を駆け巡る「また欲しくなるし…今日はヒョンが居なくて寂しかったから、放送は一緒に観たいだから、あんまり触ったら駄目です」ユノヒョンは脚を大きく広げてソファに座り、僕をその内側に座らせた後ろから抱き締められて…嬉しいけれど、落ち着かない「勿論、チャンミナの登場はしっかり観なきゃいけないでも…一緒に居たら触れたくなるのは仕方無いよ、好きだから」「…そんな風に言われたら『触れたら駄目』なんて言えなくなるじゃないですか」「二度目、は放送後まで我慢するよだからチャンミナもちゃんと我慢して?今も腰が揺れているから」「…っあ…」僕があまり触れないで、と言ったからだろう敏感な胸の先は避けて、周りを大きな掌がそっと撫ぜる「最近、前よりも柔らかくてつい止まらなくなる」「…太ったんです、言わなくても分かっていると思いますがちゃんとまたトレーニングして引き締めます」「これくらいで良いよ、充分痩せているし」なんて、最近益々逞しい、スポーツブランドの顔にもなっているユノヒョンに言われると自分が情けなくなるやはり、食べ過ぎには注意して少しは身体を引き締めようと誓った「あ!僕の番です」「本当だ、朝から収録お疲れ様」後ろから左の耳元で囁かれた歌を歌っていなくても、何でも無い事を言うだけでも声が良過ぎて座っていても腰が抜けそうになる「顔がリラックスしてるキュヒョンも来ていたようだし、後輩も居るからかな」「そう見えますか?でも、確かに後輩と一緒だったから…」今日の音楽番組は、MCのひとりが事務所の後輩グループのメンバーだ本番前にも勿論話をしたし、彼が居る事は心強くて緊張も少なかった「本当は、この上にボトムスとセットアップになっているジャケットも羽織る予定だったんですでも、リハーサル後に『無い方が良い』って言われて…ちょっと恥ずかしかったです」透け感のある、身体のラインの出るトップスにハーネスベルトそんな衣装でトークをするテレビのなかの僕収録で、いつも通りヒョンが隣に居るならまだしも、放送で初めて収録した時の衣装を着た姿を見せるのは恥ずかしくて、振り返りながら説明した「確かに似合ってるけど…じろじろ見られたりしなかった?」「……別にそんな事は…」キュヒョンに本番前に言われたから気になってしまって…実際は確かに本番中に少し気になったでもそれはきっと僕の勘違いだから、ヒョンの方を振り返って『無いです』と言おうとしたのだけど…「…チャンミナ」「え…っあ、これ…恥ずかしいですね、はは…」後ろから呼ばれて、それが何を意味するか分かって笑った撮り直す必要も無かったようでそのまま進められたのだけど…トーク中、MCを担っている後輩のジェヒョンがソロデビューのお祝いに、と舞い上がらせた紙吹雪が眉の辺りに付いてしまったそれに左隣のジェヒョンが気付いて取ってくれたのだ先輩としては少し恥ずかしいけれども優しい彼のお祝いも、その後の自然でスマートな行為も嬉しかった「実はあまり気付いていなくてでも、何だか違和感はあったんです流石MCをしているだけあって、周りを良く見ていますよね」なんて、自分の恥ずかしさを隠しつつ後輩を褒めたら、後ろから左耳を甘噛みされた「っあ…んっ、…ユノヒョン?」「チャンミナは隙が有り過ぎ気付いていなかったのはまあ、仕方無いにしても…他の男に触れさせてあんな風に笑って…勘違いされたらどうするんだ?」「笑ってって…あれは単に照れ隠しです先輩として恥ずかしくて」勘違いも何も、何も有る訳が無いそれは勿論、ユノヒョンだって分かっている筈なのにそれなのに拗ねたような声で「嫉妬する」なんて言って、スウェットのなかへとまた手を入れてくる「ひっ、あ…」「それに、『ここ』だって見えているし…」「んっ、嘘…だってハーネスが…」「ハーネスは固定されていないんだから動けば胸が見えるだろ?今だって、ここが映っているし…」そう言いながら、ヒョンの長い指が僕の胸の中心を摘むそれだけでもう、普通に座っていられなくて、声も抑えられなくて…必死に、口に手を当ててびくびくと震える身体に力を入れて耐えた「ユノヒョン…」「分かっているよ、チャンミナが俺を好きでいてくれている事だけど、最初のチャンミナは綺麗過ぎて心配になる」「…っん、…それって…色気も?」「勿論、普段だって寝起きだって」僕の寝起きなんて色気も何も無いだけど、ユノヒョンの声は真剣だそれはつまり、愛されているという事だと思うから嬉しくて胸がぎゅっと切なくなる「今日キュヒョンが…ユノヒョンと付き合い出してからの僕が変わったって言ったんです」「変わった?」胸をやわやわと揉むようにして触れながら、相変わらず耳元で囁くユノヒョントークは終わって、後は歌を残すのみ「そう、僕は自分では分からないんですが…キュヒョン曰く、『ユノヒョンと付き合って色気が出た』って…だから、テレビのなかの僕にも色気が有るなら、それはユノヒョンのお陰…じゃなくてユノヒョンの所為ですだから、僕は別に勘違いさせる気も何も無いし男が好きな訳じゃ無くてユノヒョンが好きなだけだし…」少し恥ずかしい衣装で披露したパフォーマンスが始まったから、ユノヒョンにも見て欲しくて、後はもう小さな声で「兎に角好きなだけです」と言ったパフォーマンスについて、はヒョンは褒めてくれた魅力的だと言ってくれたし、黒いジャケットならば確かに無い方がすっきりしているから正解だ、と言ってくれたなのだけど…「やっぱり、胸が見え過ぎていたな」「…そんなに見えてましたか?確かにその、少し透けていましたがハーネスもあったし…あ!そうだ、あのトップス、持ち帰ってきたんです」ユノヒョンがやたら透けて胸が見える、というから思い出したモカベージュのトップスは、収録中にアクセサリーで引っ掛けてしまって少し引き攣れてしまったのだ殆ど分からないくらいなのだけど、衣装ではもう使わないと聞いたから、これからの時期にインナーに使えそうだと思って買い取ってきたのだ「ええと…あ、これです」ソファの前に置いていた鞄のなかから薄手のモカベージュのトップスを取り出したまずは洗わないと、なんて思いながらヒョンの右側に座り直して広げて見せたそうしたら、ユノヒョンは衣装だったトップスをじっと見て…「少し、どころか物凄く透けそうだな」「でも…普段ならインナー使いにすれば…」「さっきは一枚で着ていただろ?チャンミナが透けないと言うなら、実際に俺に見せてみて?確かめるから」「え…」透けていない、というか胸が気にならないと言ったのは、ハーネスベルトを着けていたからだけど、流石にあのベルトは持って帰ってなんていない「いや、今は別に…汗で汚れたままだし…」「問題無いよ一度見せてもらえればそれで良いからだって、こんなに薄いのにチャンミナは透けないって言うから…確かめないと」有無を言わさない、完璧な笑顔多分、これを着たら、またその上から胸に触れられたり…一枚で着たら勿論物凄く透けるから、それを指摘されるに違い無い恥ずかしいし、汗をかいたままだし…だけど、さっきもずっと触れられていたから身体はまた熱を持っている本当は今直ぐもう一度抱き合いたいでも、そんな事を僕は素直には言えないだから…「着れば良いんですか?」なんて、本音を隠してユノヒョンに従う振りで尋ねただけど、駆け引きをしようとしたのは僕だけだったのかもしれない「うん、俺もチャンミナのセクシーな姿が直接見たいだから…お願い」そんな風に明け透けに言われたら、『ユノヒョンに言われたから仕方無く着ます』なんて言い訳はもう出来ない「…本当はまだ足りなくて…それに、恥ずかしいけど、本当は直接ヒョンに見て欲しかった」だから、僕も恥ずかしいけれど素直な気持ちを口にしたその結果、トップスを着たままその後二度抱かれたそして、もう当分この服は着ないでおこう、と心に決めた何故かって?それは、身に付けたらこの日抱かれた事を思い出して疼いてしまうだろうからこの気持ちは流石にユノヒョンには恥ずかしくて言えないでも、きっと言わなくたって視線で、そして態度で、ヒョンには伝わってしまうに違い無いランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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Fated 100
Side C生まれた時から僕は僕で、それは何があっても変わる事なんて無いと思うそれは、ベータからオメガに突然変異してもそうで…今までの僕とは全く同じでは無いし、実際に身体は変わってしまっても、それでも心は何も変わらない僕のままだと思っていたそれは、僕が少し頑固で聞かん気が無いと言われる性格である所為も有るのだろうけれども、そんな僕だから『普通』と言われるベータでも特別である希少なアルファ達のなかで芸能活動を続けて来られたのだと思っている半ば意固地になって、僕は僕だと思う事で堪えて来た部分もあるそれは多分僕の弱さだし、何があっても自分は変わらないと思い込まなければ、決して特別に強く無い僕には耐えられなかったユノヒョンは、オメガになってからの僕に対して何度も『チャンミナは強いよ』『俺の方が支えられている』なんてさらりと言ってのけた勿論、ユノヒョンを支えられているならば嬉しいし、褒められる事だって同様だヒョンがそれを本気で言ってくれている事だって分かっているでも、本当はずっと、簡単に…と言うと『違うよ』と言われそうだけれど、僕からすればするりとそれを言葉に出来るユノヒョンの方が強いと思っていた結局、どこかでずっとずっと、ベータである、即ち普通であるというコンプレックスがあったそして、アルファには負けたくないという気持ちもそれらが僕を奮い立たせる原動力でもあったそれが逆に、オメガに突然変異してからは、アルファよりも数としては少なくて希少ではあるけれど、なりたくなんて無い特別になってしまった事で…今度は、ベータの僕として、普通だと思われるように過ごしたいとびくびくしていた隠さなければならないでも、オメガになった事でユノヒョンを特別に愛したヒョンも僕を愛するようになったオメガの僕を受け入れてくれる優しくて強いヒョン受け入れてもらえる事で、僕も自分は自分のままだと少しずつ自尊心を取り戻して構築してきたそれでもやはり、隠す事ももう限界だった…世間に公表する事で色々な弊害が出る事も想像すれば分かるけれど、それでも隠し続けられる訳でも無い事も薄々分かっていたユノヒョンと一緒に居て、キスをしたり身体を寄せ合う写真を撮られてしまった事は僕達の危機管理不足でも、それは反省をして、起こった事を受け入れて前に進まなければならないなんて言う事は簡単だけれど…前に進むには、結局自分の心構えだけでは上手くいかなかった気がする僕はまだまだ本当には強くなんてなれていなくて、デビューしてからはそれなりに経っても25歳だし…人生経験はまだこれから積んでいかねばならないなんて事はまた別の話で、オメガになってからの僕が、そして僕を支えてくれたユノヒョンが選び進んできた道は、それを誰かが見れば最善では無かっただろうそれでも、悩みもがいて僕なりに必死に向き合ってきた公表に至る切っ掛けは良いものとは言えなかったでも、切っ掛けがあって公表して、これから本当の意味で『今の、オメガになった自分』で世間やファン、仕事と向き合う事が出来るそして、ユノヒョンとふたりでもがきながら向き合って擦れ違いも沢山経験して、失敗だらけでも情けない事だらけでも…それでもお互いへの想いは確かなのだと解って、ヒョンが僕の項を噛んで僕らは番になった「…物凄く我儘を言うなら…いえ、やっぱり止めておきます」「何?そんな風に言われて『言いたくないなら聞かないでおくよ』なんておとなな事は言えないと言うか、チャンミナの事なら何でも知りたいから教えて?」「だって、俺達は番だろ?」そう、ベッドのなかで抱き着いている僕の耳元で囁いた項を噛まれた後、少し落ち着いてふたりで話をした確かに番になったと僕には分かったから、それをユノヒョンに伝えたら『多分そうだと思っていたけれど、口では上手く言えなかっただから本当に嬉しい』と感動したようで少し泣いていた僕も、少し貰い泣きしてしまったけれど、無防備に静かに泣くユノヒョンを見て愛おしさが込み上げて、僕が守らなきゃ、なんて思って涙を堪えた話をした後は、その最中もずっと僕のナカに在ったユノヒョンのモノがまた大きくなって、触れ合っていたからそれに呼応するように僕の身体も熱くなって…そうしてまた抱き合ったら、番になったと思ったからか、それとも本当に番になった所為なのか、また止まる事が出来ないくらいに求め合ってしまった「チャンミナ、優しくしたいけど…言ってくれなきゃ弱い所を攻めようかなもう流石に体力も限界だろ?良いの?」「…ふふ、凄い脅し文句ですね攻めても良いですよ、と言いたいところですが…教えてあげます」なんて、勿体ぶってしまったのは、本当にこれは僕の我儘だと分かっているからでも、今なら素直な気持ちを伝えられる気がする布団のなかで僕の『弱い所』のひとつである背中を優しく擦る大きな手が心地好くて、ヒョンの胸に顔を擦り寄せながら言った「本当は、誰かに許可を貰って、じゃ無くて…僕達のタイミングで番になりたかったって思ったんですでも…」「でも?」話をしながら思った、というか気が付いただけど、これを続ければ都合が良いと思われるだろうか…でも、それもやはり僕の本音「ほんの少しタイミングが残念って思ってしまったんですでも…さっき噛んでも良いかってユノヒョンに聞かれて、僕は…心から一生ユノヒョンの傍に居たいって思いましただから、事務所の許可を受けての事だったけど、やっぱり一番良いタイミングだったって思います」「……」結局、やはり言葉にしてみれば都合の良い事を言っているようだでも、それが本音失敗の積み重ねと切っ掛けの積み重ねそうして今があるそれを否定したくないし、何よりも僕は…これからの日々が怖くないと言えば嘘になるけれど、乗り越えようという意欲がある「…何だか良く分からない事を言って…変ですよね、僕兎に角嬉しいし幸せなんです」「チャンミナ…やっぱり凄いなあ」「何も凄くなんて無いです」何だか無理矢理褒められているようで恥ずかしいだから、腕のなかから逃れようと、逞しい胸に手をついてそっと身体を離したマネージャーにも、番になった事は…これも恥ずかしいけれど、伝えた方が良いだろうだからメッセージを送ろうメッセージやら色々な知り合い達からであろう連絡でランプが付きっばなしのiPhoneも流石に放置する訳にはいかない起き上がりベッドから脚を下ろして、傍にあったiPhoneを手に取った通知を見るのはやはり怖くて、小さく深呼吸をしたところで後ろから抱き締められた「…ユノヒョン?あの、マネージャーに番になったと連絡を入れようと思って」「ああ、そうだな、言わないと…でも、その前に凄いって言ったのは本音だよだって、俺だって…我儘を言うなら自分達だけのタイミングで決められたらもっと…そうだな、例えばロマンチックだったかもしれないからでも、俺は幸せそうなチャンミナの顔を見て、そして…運命よりも運命だって言葉に、もうそれだけで全部が報われるくらい幸せなんだ」ゆっくりと振り向いたら、「だからチャンミナは本当に凄い」なんて言って、本当に幸せそうに微笑むヒョンのその顔で、その言葉で逆に僕がどれだけの幸せや勇気を貰っているのか、なんてきっと知らないのだろう「凄くなんて無いですだって…今はただ幸せだけど、これからはきっとまた大変な事が沢山待ち構えているだろうしそうなればまた弱音を吐いたり挫けるかもしれないし」「それは…有って当たり前だよだから、俺が…番が居るんだろ?なんて…番じゃ無くたって守るよ、チャンミナが俺を守ってくれるように」男性アイドルがオメガになったそれは面白可笑しく報じられるかもしれないし、腫れ物に触るように皆が僕を遠巻きに見るかもしれないでも、それが今の僕だし、今の僕を愛してくれるひとが居る「ヒョン」「ん?」後ろから僕を優しく抱き締めて顔を覗き込む恋人…いや、番名前なんて何でも良いのかもしれないけれど特別な運命のひと彼を見据えて、さっきまで考えていた事を今、まだ幸せだけがある内に伝えておこうと思った「そろそろ、僕もヒョンも、大量に来ているであろう連絡に目を通したり…怖いけど世間の反応を見るべきなのかなあって思います」「…そうだな」「だから、その前に言わせてくださいこれは僕の今の心からの本音です」下ろした脚をもう一度ベッドの上に乗せて、顔だけじゃ無くて身体ごと振り向いたちゃんと顔を見て伝えたかったからそれでも、僕はヒョンのように話が上手くは無いから、思うままに伝わるのかは分からないけれども…それでも、伝えたい「ずっと、僕は変わらない自分で居たいと思っていました変わったら『負け』てしまうようで…変わらずに普通で、普通だけれどアルファ達に負けないようにって思って来ました、半ば意地で」「…うん」ヒョンが、薄いタオルケットを僕の肩に掛けてくれた僕はそんなヒョンの手をそっと握って続けた「変わる事が怖いし嫌だったんです何があっても僕は僕だから、ってでも…今、初めて自分が生まれ変わったような気持ちなんです」「…生まれ変わった?」「恥ずかしいですが…新しい自分になれたような気持ちなんです何だろう…脱皮?違うかなあ…兎に角前に進めたって思ったんです」良い言葉が浮かばなくて首を傾げたら、ユノヒョンは俯いて肩を揺らす「…っもう!笑ってますよね?脱皮は確かにおかしかったかもでも、生まれ変わったって思ったんですヒョンと番になったからか、気の持ちようが変わったからなのか…分からないけど」「いや、うん、ごめん…チャンミナが脱皮って想像したら何だか唆るなあと思ってしまって」「…それはちょっと理解し難いですでも、脱皮って言った僕とお似合いですね」「一生離れられない番だから」揶揄うように笑っていたのに、今度は真剣な顔で僕を見つめる本当に、今ですら、ほんの少しですら離れるのが惜しい程だから、キスをして少し乾いた厚みのある唇を舌で舐めて、「新しい僕の事も愛してくださいね」と冗談めかして言ってみた「当たり前だし、昨日のチャンミナも今日のチャンミナも、明日からも愛しているよ」なんて、熱烈な言葉で帰って来たから、僕はやはりユノヒョンには叶わない 流石に裸でずっと居る訳にはいかないから、下着とスウェットの上衣だけお互いに身に付けた僕のiPhoneから、マネージャーに『ユノヒョンと番になりました』と報告をしたきっと、今マネージャー達も色々な対応…つまり、僕のスクープが出て、その後事務所サイドが認めて、僕達と一緒に作成した声明を出した事で連絡が立て続けに入っている筈既読には直ぐにならなかったから、ユノヒョンと並んでベッドに腰掛けて、普段からは考えられない量のカトクやメールを確認していった「…一度しか仕事をしていないスタッフの方までも…凄いなあ」「皆こぞって『本当なのですか?』だな」「…はい」少し危惧していたのだけど、僕の連絡先を知っている仕事関係者や知り合いから、直接的にオメガである事を非難するような言葉は無かったただ、皆が驚いている事は伝わってきた「ユノヒョンの方は…どうですか?」「こっちはまあ…興味本位、だな本当なのか、もそうだし…俺がアルファだから、おかしな事になったりはしないのか、なんて事も俺達が番になった事は勿論、付き合っている事も伏せなければならないから問題無いと全て返すよ」「…迷惑を掛けてごめんなさい」交友関係の広いユノヒョン僕にも普段からは考えられないくらいの連絡が入っているけれど、僕と同じくらい彼の元にも連絡が入っていた一緒に乗り越えていこう、と話しているけれどもやはり、目の当たりにすると申し訳無くて俯いたそうしたら…「こうしようか、チャンミナ」「え…何ですか?」ぐっと肩を抱き寄せられて、バランスを崩し掛けてヒョンの胸にスウェットの上から手を付いた少し見上げるようにして彼を見たら、にやりと意味有りげに僕を見る「気持ちは分かるよでも、迷惑なんてひとつも無いだから…これから『僕の所為』だとか『迷惑』なんて言ったら…チャンミナがもし俺を欲しいって言っても、その言葉を言った回数我慢する事」「…ええ…」「勿論、番になれば他の誰かと関係は持てないそれに…どれだけ自分で後ろに触れても、俺じゃなきゃ満足出来ない時が有るだろ?」「…教えません」本当は、これまでだって何度も、ユノヒョンの事を想って、抱かれる事を思って後ろを慰めた事があるでも、それは流石に素直に言えない「気は進まないけど、善処します」ヒョンは冗談めかしているけど、迷惑なんて何も無いと思ってくれている気持ちが伝わってきただから、生まれ変わった僕も、生まれ変わったのだからもっと自分に自信を持てるように頑張ろうと思う「チャンミナ、ファンや世間の反応をSNSやネットニュースで見てみようと思うんだけど…先ずは俺だけ見ようか?」「……」それが一番怖いだって、仕事で関わりのある方達はもしかしたら…実際に会えば気を遣ったり配慮してくれるだろう事務所もそのようにお願いをするだろうしでも、世間の声は素直な、そのままの声だ普段だってSNSを覗けば落ち込むような声があるのに、今なんてもう…でも、それを乗り越えなきゃ前に進む事は出来ないユノヒョンが今日一緒で良かった「…見ます、僕もちゃんと…多分傷付くし怖いし…でも、僕は僕だし、それをユノヒョンも知ってくれているから」「勿論、それに…俺だけだって言えば格好良いのかもしれないけれど、マネージャーも、事務所のスタッフ達だって…チャンミナは変わっていないって知っている筈だ」「…うん」ぐっと肩を抱き寄せて腕を擦る僕の番触れ合ったところから、ユノヒョンの強さと優しさが伝わってくるふたりで開いた数々のネットニュースや、事務所の声明を引用したもの、それに、僕と僕達のファンのひと達の声それらは驚きと衝撃と、不安の声が多かったそれでも、ついマイナスな言葉に引き摺られてしまいそうになるけれど…例えば、オメガになってからの最近の僕の映像や写真を引用して『以前と変わらずに好き』だとか『とても綺麗になったと思っていた』だとか…『発表する事はとても勇気が必要だった筈』と、少しでも理解を示してくれる意見もあった「大丈夫、俺達なら仕事だって前に進める」「ここまで頑張って来て今の位置まで来たのに…」「もしも後退りするような事があったって、はい上がれば良いだけだ」驚いたり衝撃を受けた様子の声を見ると、やはり心中穏やかでは無いそれでも、これが今の僕で…誤魔化したりする事無く進むのだと決めただから、今日だけは…ふたりだけの間は空元気で大丈夫な振りをする事は止めて、不安もユノヒョンに伝えて、そうしてふたりでこれからの事について、を沢山語り合ったランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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