シリーズ物ですが、単発で読んで頂けます
これまでのお話はカテゴリー「blue blue」にございます
こちらです→blue blue
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真夏の日差しが照りつける
午後のちょうど一番暑いであろう時間
炎天下のなかを歩いているけれど、暑さよりも何より苦痛なのが…
「…気持ち悪い、痛い」
こんな事ならば練習して慣らしておけば良かった
ケースは持っているから、いっそ我慢するのは止めて『いつも通り』楽にしてしまおうか
そう何度も思うけれど、やっぱり驚かせたい
「いや、別に驚くかどうかは分からないけど…」
言いながら目をぎゅっと瞑って右手でごしごしと瞼を擦った
そんな事をしても変わらないのだけど、少しでもこの違和感を紛らわせたくて
信号待ちの間にスマホを取り出してLINEを開いた
『あと少しで着くよ』
送信したら直ぐに既読になった
「…もしかして待ってた、とか?」
年下の可愛い恋人の顔を思い浮かべたら、痛みや違和感も飛んでいく
直ぐに可愛い、僕には何という名前なのか分からないキャラクターのスタンプが送られて来た
嬉しそうに笑っていて、僕の頬も緩んでしまう
それだけで痛みも何だか落ち着いたから、スマホをハーフパンツのポケットに仕舞って歩き出した
もう何度も訪れているけれど、昼にやって来る事はほぼ無い
明るいと大きさや豪華さ…と言うと大袈裟かもしれないけれど、少なくとも僕の住むマンションよりは余っ程高級そうだから、夜よりも圧倒されてしまう
ここに暮らす恋人は僕よりも2歳も年下
なのに高級マンションに暮らしているから
「歌舞伎町でNO.1だもんね…はは」
見上げて呟いて、改めて僕の恋人は凄いひとなのだと思い知らされた
多分、と言うか、誰が見たって僕達は釣り合っていないと思われるだろう
だけど、一目惚れだった
理想が服を着て歩いている、そんなひと
見た目だけでは無くて知れば知る程惹かれた
なんて、ほぼ身体から始まったようなものなのだけど
「…昼から何考えてるんだよもう…!」
ぶんぶんと頭を振ったら、また目が痛くなってしまった
右手でまた擦って、それからマンションエントランスのオートロックに恋人の部屋番号を入力した
直ぐにぷつり、と音がして…
「あ、ええと…着いたよ」
こんな時恋愛経験が豊富な男なら気の利いた台詞が出るんだろうけど、残念ながら僕はオタクで、そして付き合うのもこの歳…つまり25で初めて
漫画やアニメは好きで、恋愛モノも色々見て来た筈なのに、いざとなるとそれすら参考にならないという事もこの恋で初めて知った
「…あ、ありがとう」
僕がひとりでぐるぐる考えている間にオートロックは解除された
慌ててなかへと入ってエレベーターに乗り込んだ
「驚くかな…」
エレベーターすら空調がよく効いているのもやはり高級マンションならではなのだろうか
汗が引いていって心地好い
胸に手を当てて緊張を解した
恋人と会うのはもう緊張しない、筈
だけど、僕は普通の冴えない…は余計だけどサラリーマン
恋人は夜の仕事をしているからなかなか昼間にデートなんて出来ない
だけど、僕がお盆休みに入った今日、恋人も偶然休みで…
とは言え前日は勿論夜に仕事をしているから、こうして午後から会ってデートに出掛ける事になったんだ
上階にある恋人の部屋
その前に立って深呼吸をしてからインターフォンを押した
そうしたら…
「…おはよう、チャンミン」
「……おはよう、ユノ」
扉を開けてまだ少し寝起きのような顔で微笑んだのは、夜見るととてつも無く美人なのに、昼や寝起きに見るととても可愛い…男
「チャンミン、今日も可愛い」
「わっ、ちょっ、まだ外だから…!」
可愛い、のだけれど、僕よりも体格は良いし力も強いし男らしい
強く抱き竦められて慌てて身を捩って、急いで部屋のなかへと入った
「誰かに見られたらどうするんだよ、もう…」
「あはは、ごめん
でも…このマンションは同業が多いから真昼間は皆寝てるよ」
流石に皆寝てる事は無いだろう、と思ったけれど、夜の仕事をしている住人が多いなら、例え男同士で僕達が抱き合っていてもそれ程気にしないのかもしれない
「ユノは起きたところ?昨日もお疲れ様
一日有るんだしゆっくり準備してくれたら良いよ」
「ありがとう、昨日…いや、今日だけど…帰りが遅くて」
「店が忙しかったの?」
なんて、ユノはNo.1ホストだから、例え店が忙しく無くてもユノは関係無しに忙しいのだと思うのだけど…
でも、ホストの恋人を持っても、まだ僕にホストの世界は分からない
見た目は勿論だけど、接客業だから口下手な僕には絶対に無理だろうし、夜の仕事に偏見を持つひとも居るかもしれないけれど、僕はユノを知っているしそんな気持ちは無い
エアコンの効いたリビングに進んだら、ソファに促された
ユノがお茶の入ったグラスを渡してくれたから一気に飲み干してふう、と息を吐いて暑さから生き返った
左隣の恋人を見るとTシャツと、それからショートパンツ姿
長い脚が惜しげも無く晒されている
男の脚になんて興味は無いのに、ユノだとどきどきする
そんな気持ちが悟られないように必死で真顔でいたら、ユノはそんな僕をくすくすと笑う
「何だよ」
「いや、可愛いなあって
あと、さっきのは本当は違って…」
「え…?」
聞き返したら手招きするから顔を近付けたら、寝起きの癖に信じられないくらい綺麗な顔でにこりと微笑んで、それから僕に耳打ちした
「本当はいつも通り帰ったんだけど、今日のデートが楽しみ過ぎてなかなか寝付けなかった
それで少し寝坊した」
「…やっぱりユノの方が可愛い」
「俺に可愛い、なんて言うのはチャンミンくらいだよ
でもチャンミンに言われるのは嫌じゃないかな」
「本当は完璧に準備をしてから出迎えようと思ったんだけど」
そう、少し恥ずかしそうに言うから今度は僕から顔を近付けてキスをした
「…好きだよ」
漫画やアニメをどれだけ見ていても気の利いた台詞はなかなか出ないけれど、ユノと付き合い出してから経験は積んでいる
だから、キスなんてもう簡単
彼氏らしい事が出来た、なんて内心ガッツポーズをしながらユノを見つめていたら、僕を見てとてつも無く綺麗な顔が優しく微笑む
「チャンミン、それで『また』彼氏になったつもり?
俺の方がどう見ても『彼氏』だと思うんだけど…」
「え…っあ……ん、っ…」
座ったままぐっと抱き寄せられて、Tシャツの裾からユノの大きな手が腰に直接触れる
最初に『チャンミンは俺の彼氏、良い?』なんて言って来たのはユノの癖に、まるで僕の方が、抱き合う時も彼女のよう
年上だし、せめて少しは上に立ちたいのに、結局いつもユノに翻弄されてしまう
「汗ばんでる
それにもう感じてるの?」
「や、っ汚い…から…んっ」
ユノの肌はさらりとしているのに、僕は外を歩いて来たから汗ばんでいる
急に恥ずかしくなってユノの腕のなかから逃れようとして身を捩っていたら…
「…っ痛…」
「チャンミン?どうした?」
目をぎゅっと瞑った所為かもしれない
気にならなくなっていたのにまた多分、ずれてしまったのだ
違和感のある右目を右手の甲でごしごし擦ったら、その手をユノの手に掴まれてしまった
「肌が傷付くよ…あれ、もしかして…」
ユノが僕の手を掴んだままじっと顔を見つめて来る
そう言えば、折角今日は気合いを入れた『初めて』に挑戦してデート仕様にしたのに、まだその事を何も言われていない
「…何」
どきどきしながら痛む目をもう一度ぎゅっと閉じてから聞いたら、ユノは黒い目をぱちぱちと瞬かせた
「コンタクト?怖いから嫌だって言っていたのに」
「やっと気付いてくれた
だって、綺麗な恋人と外を歩くから少しでもマシな姿で居たいし…」
「そっか…俺の為?ありがとう」
勿論そう
僕は昔から近視でずっと眼鏡を掛けている
コンタクトにすれば良いのに、とオタク友達にさえ言われる事も有るけれど、目に異物を入れるだなんて怖くて…
それに、眼鏡に慣れているし目立ちたい訳でも無いから今更必要無いと思っていた
だけど、ユノと出会って…
こんな僕でも好きになってもらえたり、美人な恋人と少しでも釣り合うように、と思うと自分を変えてみたくなった
「こっそり眼科に行って、コンタクトを買ったんだけど…
怖くて結局全然使って無かったんだ
今日、初めてちゃんと装着してみたらごろごろして」
気になるとやっぱりずっとじわじわ痛みや違和感が有る
自由な左手で両目を擦ると涙がじわりと浮かぶ
「駄目だってば
辛いなら外そう、な?」
「…でも折角のデート…」
「コンタクトが無いと見えない?」
「慣れた場所なら大丈夫」
「そうか、なら俺がずっと隣に居るから大丈夫だよ」
ユノはそう言って笑うと
「ハード?ソフト?」とか
「使い捨て?」とか…
まるで彼の方が年上のようだ
「コンタクトにした方が良いって思ってもらえるかと思ったんだ」
「うん、だって…チャンミンの可愛い顔が眼鏡で隠れるなんて勿体無いから
でも、そんな事は関係無く好きだよ
痛いのに無理してコンタクトにしなくても良いから」
そう言って、まるで恋愛モノのヒーローのように微笑んで僕を抱き締める
「…初めて、の時それなりに痛かったけど…」
綺麗で可愛い
だけどそれ以上に格好良くてどきどきする
…違う、可愛いって思ってなきゃ格好良過ぎてどきどきも好きな気持ちも止まらないんだ
いつも僕ばかりどきどきさせられるのが悔しくて、ユノの言葉の揚げ足を取って返してみた
そうしたら…
「…ごめん、チャンミンが可愛くて止まれなかった
真面目そうなのにエッチだから」
そう、少し恥ずかしそうに言われた
僕の綺麗で格好良い恋人は、歌舞伎町のNo.1ホストのブルー
だけど、僕だけが知っているブルーは、やっぱり年相応に可愛いところも沢山
デートに行く前に先にもっと触れたくなってしまった
だけど、その前にまずはコンタクトレンズを取ってから、にしようと思う
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おはようございます
少し久々にこのふたりです
前後編の予定です
お付き合い頂けたらとても嬉しいです




