hominism
「もみ」といいます。

東方神起のおふたりが何より大好きで大切です。
ふたりのお名前を借りて頭のなかのお話やライブレポを書き綴っています。
お話はホミンのみです。

あくまでも私の頭のなかのお話なので、そのような内容に興味の無い、お好きでない方はそっと閉じて頂けましたら、と思います。
また、お話は全て幸せな結末にしかなりません。

Twitter → @hominismmomi
@hominism0212 こちらは鍵でブログの事も呟いています

ご訪問ありがとうございます、ご縁があれば幸いですニコニコ







  • 30Mar
    • assortment 1

      この記事は、お話未満(かもしれない)お話の詰め合わせ、つまりassortmentです最近、益々新しく書きたいホミンちゃんが増えてしまっていますそれをTwitterでは吐き出して何とか落ち着けようとしているのですが、増える一方でどうしようも無いし、連載のお話もあるのでひとつのお話、にしていたらきりが無くて…という訳で(も何も無いのですが…)お話として書きたいホミンちゃん、のさわりを幾つか勝手に書いていこうと思いますシムチャンミン、27歳、性別は勿論男かなり遅咲きだけれど、漸くアイドルとして世間に知られるようになったところ両親には『もう芸能活動は諦めてどこかに就職を』なんて心配されていて…けれども、そんな彼らをやっと安心させてあげられるようになった「ありがとうございます!これからも応援宜しくお願いします」「こちらこそ、これからも応援しているので頑張ってくださいあ、それと…これ、プレゼントです」「え…ありがとうございます」CD発売に合わせた握手会これまでは企画しても殆ど売れなくて、結果開催に至らなかったけれども今回漸くそれが実行に至ったのだサインを目の前で書いて、それから握手百人以上のファンは抽選で選ばれたのだと言う本当は購入者全員に直接お礼を言ってまわりたいくらい、なのだけどマネージャー曰く『全員だなんてチャンミンの手が折れるよ』そう言って笑うくらいの数だった「ライブにも必ず行きます!」「はい、待っています」女性ファンはプレゼントだと言う可愛いグラスまで渡してくれたこの握手会はプレゼントも受け付けていて、食品以外はOK、となっている一応、物騒な世の中だから、マネージャーやスタッフが最終的にはチェックしてから僕が自宅…なんて言っても未だ狭いワンルームマンションなのだけど、そこに持ち帰る事になっている「でも、まさか本当にプレゼントまで貰えるなんて…僕、本当にアイドルになったんだ」今までCDは何度が発売したけれど、一度もどの曲もヒットしなかったけれども、今回は発売前に偶然テレビ局のディレクターの耳に楽曲が届いて、そしてドラマの主題歌に使われる事になりヒットに繋がった「明日はドラマ出演の打ち合わせだし…忙しくなるぞ」「マネージャー…はい、頑張ります」水を飲む為の一瞬の休憩時間隣に控えていたマネージャーが声を掛けて来たから、口元を拭って答えた明日は、主題歌として使ってくれたドラマが僕をゲスト出演までさせてくれるらしくて…その打ち合わせに向かう何だか一気に追い風が吹いてきたようで、忙しさも何のその、やる気に満ち溢れている「よし!」ガッツポーズをしたら、次のファンがやって来て…「あ…今日はありがとうございます男性の方も来てくれるなんて凄く嬉しいです!」「…女性ばかりで恥ずかしかったんですでも、前からずっとチャンミンのファンでやっとこうして直接伝えられて嬉しいです」すっ、と伸ばされた手は大きいけれど、とても綺麗で何だかとても印象に残った「以前からファン…ありがとうございます僕も同性が歌を聴いてくれるのは凄く嬉しい来てくれてありがとう」男はチューリップハットを目深に被っているだから、顔は良く見えない身長は僕と変わらないからかなりの高身長だ「…あの、何ですか?」「え…っあ、帽子で顔が隠れているから…次にライブやイベントで会えた時に顔を覚えていられたら良いなあと思って」両手で彼の左手を握るように握手をしたまま、少し首を傾げて帽子のつばに隠れた顔を覗き込んだ「俺、凄くあがり症なんですチャンミンが憧れで…凄くファンなので目が見られなくてだから勘弁してください」「え…あっ、ごめんなさい、無理矢理…」男性ファンが嬉しくて…女性相手だとあまり自分からは触れない、だとか近付かないようにと気を付けているのだけれど、ついそれを忘れてしまっていた慌てて手を離したら、男は「すみません」と小さく言った慌てて首を振って、気を悪くさせてしまっただろうかと思っていたら、彼は僕に大きな紙袋を差し出してきた「これ…プレゼントです」「え…僕に?」「…ずっとファンで、ずっと渡したくて…だから、いつも傍に飾ってください」「えっ、あ…うん、ありがとうございます」なかを覗いたら、それは両手で抱える程の大きさの可愛らしい熊のぬいぐるみだったきちんとお礼をする間も無く、男はそのまま慌てて立ち去ってしまったから、やはりあがり症と言うか照れ屋なのだろう「マネージャー、これ…」「ん?随分可愛いなああ、これ…有名な高級メーカーのものだ」「え、そうなんですか?」頷くマネージャーによると、ヨーロッパの老舗メーカーのぬいぐるみで、手頃なコートが買えるくらいの値段、らしい「…ぞんざいには扱えないな」「…可愛いものはあまり選ばないんですが…そうですね」僕は甘い物を好みそう、だとか中性的だと言われるけれど、中身はむしろ逆だけど、ぬいぐるみを貰うなんてアイドルらしいこの日は沢山のプレゼントを貰って、沢山のファンにあって…男性ファンは片手で数えられるだけだったのだけど、なかでもチューリップハットの彼は一番印象に残っていた初めての握手会は幸せな思い出しか無くて…だけど、このぬいぐるみを貰った日を境に、僕の日常はゆっくりと変わっていくぬいぐるみには『ユノ』と書かれた札が付けられていた手書きだったから、ファンの彼の字なのかもしれない何となく、その熊のぬいぐるみを僕はユノと呼ぶようになり、部屋に飾ったユノは、いわば僕の生活の全てを見つめるような存在になるのだ①アイドルチャンミンのファンユノ×駆け出しアイドルのチャンミン『その言葉』はもう最近ずっと、探さなくても目に入ってくるくらい、SNSを開けば当たり前に有る物だったとは言え、その殆どが本気では無くて…つまりは、金銭が絡むものや、『その言葉』で引き寄せておいて目的は別の何か、つまり勧誘だったりするもの若しくは単にフォロワーを増やし注目を浴びる為のもの、である事が殆どだという事は周知の事実だろうと思っていただから、ある日偶然見掛けた『それ』に違和感を感じたつまりは本気なのでは無いか、という事「…ふうん…何だか騙されそうなやつ」彼の目的に、男である俺が応じる訳なんて勿論無いけれども何だか危なっかしいし…どんなやつが『その言葉』を本気で書いているのだろう、なんて気になってしまったのだ「ユノ、最近楽しそうだないつもスマホを見ているし…もしかして新しい彼女?」「彼女はもう当分良いよ」「ああ、元カノ…俺達から見ていても我儘そうで、ユノが疲れているのが分かるくらいだったもんな」分かっているのなら言わないで欲しい話し合って円満に別れたし、むしろ彼女の方が俺では物足りない、と言って別の男を作って別れた元々告白されて付き合い出したのだけど、束縛…と言うか、始終一緒に居たい、というタイプだったから俺とは合わなくてあっという間に終わったのだ「じゃあ、女じゃ無いの?」「うん、男…SNSで話してて」「へえ…男と?余っ程趣味が合うとか?」「いや、そんな訳でもまあ、でも楽しいから飽きるまではと思って」友人を適当にあしらって、ダイレクトメッセージの返事をしたら、彼…つまり、『シムチャンミン』からは直ぐに返事がやって来た「…っはは、早過ぎ…本当に必死なんだな」まさか本名を名乗るとは思っていなかったけれど、彼は本気で『それ』を募集するくらいだから、少しずれている…いや、危機感が無いのかもしれない『ユナちゃんも昼休み?午後の授業も頑張ろうね』メッセージは、確かに俺『チョンユンホ』に向けられているものつまり、俺はチャンミンの前では『ユナ』という女子大生なのだ「新しく作ったアカウントで、可愛い写真をアイコンにして名前を付けたんだけど…簡単に信じるものなんだなまあ、顔が見えなきゃ分からないか」だって、チャンミンの望みに応じるには女で無ければならないだから、ユナ、になってSNS上で声を掛けたのだ「『頑張ろうねそれに…今日は学校が終わればやっと会えるから楽しみ』…まあ、やり過ぎてはいないし良いよな?」一応、男に思われないかどうか、を確認してから送信したすると、また直ぐに返事は返って来た「『ユナちゃんとオフパコ出来るのを楽しみにしています』真面目かよ…いや、やっぱりずれてるのかな」そう、この男はネットで出会って肉体関係を持とう、なんて事を不特定多数に呼び掛けたのだ流石に、と言うかアカウント上ではユーザー名を使っているけれども、俺が『ユナ』として個人的にダイレクトメッセージでそれに応じたいのだと声を掛けたら、2、3日後には本名を教えてきたのだ「俺じゃ無かったら美人局とか…騙されるところだったんじゃ無いか?」いや、俺も面白がって声を掛けただけそれに、今日の夜だって…待ち合わせ場所を遠くから見て、顔だけ確認したらもう帰ろうと思っている何だかそう思うと今更良心が痛んできたけれども、本気で金を払う事も無く求めるやつだなんて、誰が考えたって格好の餌食だだから、俺がやっている事はつまりは人助けで…なんて思いながら、もう後には引けないから『ユナ』としてもう一度返事をして教室へと向かった『もう着いたよ、凄く緊張してるチェックのジャケットと、それにデニムを履いてる髪は…昨日染めたから少し茶色くて、身長は高いよ』待ち合わせ時間の5分前、ダイレクトメッセージを受信した俺はと言えば、いざとなったらやはり少し…いや、かなり気が重くて時間ぎりぎりになった「顔は合わせない、とは言え…髪まで染めたとか純粋過ぎるだろいや、簡単に抱けると思っているなら純粋じゃあ無いか」メッセージで会話を重ねたのは一週間知っているのはお互いに大学生であるという事東京に居るという事それから…チャンミンは、今まで彼女が居た事が無くて、なかなか積極的にもなれなくて、だから思い切って『あんな募集』をしたという事「ユナちゃんが声を掛けてくれて本当に良かった、なんて言ってたよな…」チャンミンの姿を確認したら、ダイレクトメッセージで『急に用事が出来たから会えなくなりました』なんて送って、それでアカウントを消してしまおうと思っているでも、何だかとても胸が痛い待ち合わせ場所の駅前広場が見えて来た時、メッセージが来た『分からなければ連絡してね』必死なのか、心配しているのか、俺には分からない分かる事は…最初は面白がっていたけれど、『ユナ』として…自分の事を確かに俺は語っていたし、自分の気持ちをチャンミンに語っていただから、この不思議なやり取りももう無くなってしまう事が寂しいという事「…あそこだな」駅前広場からほんの少し離れた場所から眺めた平日の夕方、待ち合わせをしているひとや行き交うひとも少なくは無くて…「あ…」だけど、直ぐに分かった色々な想像をしたけれど、そのどれよりも…同じ男なのに可愛い「…嘘だろ、本当に?」純粋なのだろう、とは思った遊びたい、のでは無くて、それを切っ掛けに出逢いが欲しい、彼女が欲しいのだと伝わってきた今日だって、ついさっきのメッセージでは『初めは普通に話をするだけでも良いから』と『ユナ』を大切にして気遣うような言葉まであったチェックのジャケットを羽織り、デニムを履いた男は不安そうな顔できょろきょろと辺りを見渡している何度も右手に持ったスマホに視線を落として、溜息を吐いたり姿を確認したらもう、メッセージを送って立ち去ろうと思っていたのに、俺はただ眺めているだけで…「…っわ…!びっくりした…」左手で握っていたスマホが震えたから慌てて確認したら、それはもう後少し歩けば会えるチャンミンからだった『やっぱり、ネットで会って…なんて怖いかな僕は本当にユナちゃんに会いたくて』そんな言葉を見たらもう、嘘なんて吐けないと思った「…ああもう…っ…」頭を掻き毟って覚悟を決めて大股で歩き出した駅前広場で不安げに立っているチャンミンの前まで歩んで…「…え…」「シムチャンミン、だよな?」「…どうして僕の名前…」「……ユナ、だけど」「……っえ…」名乗るまでは心臓が飛び出てしまいそうだっただけど、俯いたまま名乗って、それからチャンミンの顔を見たら…もう、性別なんて関係無く物凄くタイプだった恋愛は当分こりごりだと思った男なんて勿論論外SNSで抱く相手を求める男、なんて内心笑っていた筈それなのに…ミイラ取りがミイラになる、とはこの事を言うのだろうか「ほら、これ…『優しく抱いてあげたい』って言ってただろ俺に」「え…いや、違っ、僕はユナちゃんに…」「うん、だから俺なんだってユナ、じゃ無くてユノだよ」目を丸くして、長い睫毛を音が聞こえるくらいばさばさと揺らめかせるように瞬きをして驚くチャンミン「ちなみに、抱かれるつもりは無いから」こんな出逢い、有り得ないだけど…「…え、その…本当に?」「メッセージ、これを見れば分かるだろ」スマホのトーク画面を見せたら、チャンミンはごくり、と喉を鳴らせてじっと見たそれから、ずるずるとしゃがみ込んで言った「…本当は怖くて…初めてだしリード出来る気もしないし…だから、男で良かった、かも…それに、ひとりで待つのはもう不安で怖くて…だから、来てくれてありがとう」「…っ…」これは、反則だ何がって?可愛過ぎるからこれじゃあ、謝る気持ちよりも、声を掛けたのが俺で本当に良かった、なんて自分を正当化してしまうからどきり、としたのは勘違いでは無くて…本当にチャンミンの事を良い、と思ってしまうから②大学生ユノ×恋愛未経験だけど好奇心は旺盛な大学生チャンミンと、詰め合わせになるように、この後更にあとふたつ…せめてひとつは載せたかったのですが、お話未満のお話、の筈が冒頭だけでも長くなってしまったので、またこのようにちらっと出してみようかなと思いますどちらも頭のなかには先まで広がっているので、読んでくださる方がこの先を…ともしも思ってくだされば、単独でお話として書けたら良いなあと勝手に、勿論勝手にですが思っています…が、少し書き出してすっきりしました読んでくださってありがとうございますランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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    • 未必の恋 11

      Side Yどれだけ、自分はただの普通の男だと思っていても放っておいて欲しいと思ってもそれでも周囲は俺をそっとしておいてはくれないなんて言うと生意気だと言われるのかもしれないけれど仕事で有ればそれで良い注目して貰える事は有難い事だ学生時代から必死で努力して誰も自分の事なんて知らないイタリアに飛んで、言葉も殆ど分からないなかでやって来て今が有るからけれども、プライベートでは放っておいて欲しいと思う事ばかり『あの…一度だけで良いので抱いてもらえませんか?』『癒しも必要だと思うので…』『身体だけで良いです、だから…』思い返すだけでも溜息が出るのだけれど、数日以上宿泊するホテルでは必ず…上司や同僚の目を盗んでなのだろう女性従業員が代わる代わる、暇を見付けては俺の部屋にやって来て誘って来る事ばかり外見なのか、それとも若手だけれど名前が知れたデザイナー、と言うのが良いのかは分からない彼女達はただ媚びて来て、俺のプライベートに入り込もうとする健全な男だから、嬉しく無い、とは言い切れないけれども飢えている訳でも無いし誰でも良い訳でも無いだから、ホテルに長期滞在をする時は『ひとり』に決める事にしたつまり、複数の女性従業員が誘って来たら、そのなかで一番口が固そうな美人を選ぶ隠す事も無く、その彼女を専属として扱って…そして、傍若無人なVIP客という立場で居れば、残りの全ては簡単に拒む事が出来る噂が別のホテルにも流れれば、ひとりを選んでしまえばもう他の女性達が誘って来る事も無いその内に、自分のなかでもそれが普通になって、端から宿泊予定のホテルには『美人で頭の良い従業員を担当に』なんて無茶なリクエストをするようになったその担当者が俺を見て、身体の関係なんて必要無いと言うのならそれで良い関係があるように振る舞えば他の女性従業員が寄って来ないからまあ、実際はそんな事は一度も無くて、俺に選ばれたのだと勘違いされたり、若手デザイナーに抱かれたいのだと言って求められて…断るのも面倒だし悪い事では無いから、と抱いてきた今回だってそう、いつも通り何も言わずに宿泊して、勝手に女性従業員達から誘われ続けるのを断わるのは面倒だから、『美人が良い』と先にホテルに伝えていて…ホテル側からはOKという連絡をもらっていたけれども、ホテルに到着して俺を出迎えたのは男そして、俺の担当だと言う彼…つまり、今フィッティングルームのなかで二着目のスーツを試着中のシムチャンミンは、何も知らず、何も聞かされていないようだった出会って直ぐ、ホテルの前でキスをしたのは、それが誰かに見られてホテル中に噂でも広がって…今回は相手が男でも彼を選んだのだと思われれば女性達から誘われる事も無く静かに過ごせるだろうと思ったからそれとまあ、男となんて考えた事は無かったけれど顔がタイプだったから「…あの、着替えました」まだ、チャンミンと出会って…つまり、東方ホテルに滞在するようになって一週間けれどもこの一週間は退屈する事なんて無かった静かにひとりで、どころか常にチャンミンを手元に置いているなんて事を考えていたら、チャンミンの声がして顔を上げた「ん?じゃあ見せて」グレーのスーツを購入する候補にして、だけどまだまだチャンミンに似合うスーツは有る筈妥協なんて出来ないから、二着目を渡したついさっきまでいじけたようだったチャンミンの声は、今は…ベルベットのカーテン越しだから、では無くて小さい「チャンミンが開けなきゃ俺が開けるよ」早く見たくてカーテンを開けた勝手に開けたら怒られてしまうだろうか、とも思ったけれど…「背中は向けたまま?それに俯いて…でも、鏡が有るから俺から隠れようとしても無理だよ」「……別に隠れて無いです」何だかチャンミンは物凄く可愛いほんのついさっきまで、彼の様子はおかしかった店の男性スタッフに良い顔をしたかと思えば、俺には急に、何だか心を閉ざすような態度だったり『僕の事なんて放っておいて大切なひとのところへ行けば良い』なんて言い出したり何の事か分からなかったのだけど、どうやらこの店に到着して二度掛かってきた妹からの着信を、存在しない恋人だと思っていたそうだ「誤解は解けた筈だけど…まだ怒っているの?何か不満が有るのなら言ってくれなきゃ分からないよ」「……不満だなんて何も僕はただのホテルマンで、客室担当なだけなので」チャンミンはさっきもそんな事を言っていた『ただのホテルマン』だなんて、まるで俺とは他人のようだと言っておきながら、妹や姪に嫉妬していたらしいから、可愛くて堪らない「なあ、チャンミン」「…何ですか」「今、出会った時の事を思い出していたんだ」「え…」俺の言葉が意外だったのか、紺にアイボリーのチョークストライプが入ったスーツを着たチャンミンが振り返った「…ああ、これも凄く似合ってる」両手を広げて思ったままに言ったのに、チャンミンは少し俯いて窺うように俺を見る「どうした?」肩のラインを合わせて、サイズ感を見る為に袖やウエスト部分に触れていたら、チャンミンは小さく「出会った時の事って何ですか?」と聞いてきた「ああ、気になる?」「…具体的に言われないままだと気になります」どうやら、物凄く気になるらしいチャンミンの事はまだ分からない事だらけだし、なかなか心を開いてくれないから読めない事も多いけれども、この顔は多分、知りたくて仕方無いという顔だという事は分かるジャケットのなかのベストの形を整えながら、話す事にした「チャンミンも聞いていると思うけど…今までも宿泊したホテルで担当者の女性を抱いた事がある」「…っ、…存じ上げています」「あはは、また急に畏まる普通にして?お願いだから」敬語だと、まるで俺達は他人だと言われているようで…何も関係無いと言われているようで寂しい勿論、俺達は実際に他人だけれど「それに、急に身体に力が入ってるこれじゃあきちんと合わせられないから肩の力を抜いて?」「……」ジャケットの上から肩を擦って微笑んだら、チャンミンは唇を噛み締めるようにして斜め下を向くこんな時、彼が何を思っていて何を言えば正解なのか分からないけれど、笑った顔が好きなのに勿体無い「ホテル業界には俺の噂が流れていると思うだから、チャンミンもそれを聞いているかと思うんだけど…俺が、自分から抱いたのはチャンミンが初めてなんだよ」「……え…」「やっと俺を見てくれた目が真ん丸だな…そんなに驚いた?」確かに、噂になるように仕向けたのは俺だゆっくり休む暇も無いくらい、ホテル従業員の女性達が部屋にやって来るのが煩わしくて、美人な担当者を付けてもらうようにしたそうして、その彼女達も周りに何かを吹聴したのか…そんな事はもう知らないけれど『チョンユンホはホテルに滞在すると必ずお気に入りをひとり傍に置いて、その従業員に肉体関係を持つ』なんて噂が俺の耳にも入ってくるまでになった「嘘だ…だって、その…ユノさんはお気に入りを見付けては抱いて、って…」「…それは誤解…まあ、抱いたのは確かだけどでも、噂はあくまでも噂だなんて事も別に言う必要も無いと思っていたでも、どうしてかな…さっきの姪の事もそうだけど、チャンミンには俺の事を知って欲しいし、誤解されたくないって思ったんだ」デザイナーとして世界を飛び回って、ソウルに普通に暮らしていれば見ない世界や知らないであろう事を沢山見聞きしてきた妬まれる事や勘違いされる事、自分の思いが伝わらないもどかしさなんて幾らでも経験して来たアジア人だから、とか若いから、とか…偏見の目や先入観で見られて悔しい思いをする事も未だに少なく無いそれでも、自分が分かっていれば良いと思っていたでも、何故か、チャンミンには誤解されたく無いいや、そうでは無くて…「どうして僕に誤解されたく無いんですか…?」裾の長さを見ようと、チャンミンの前にしゃがんだ後ろから男性スタッフがやって来る足音が聞こえたから、しゃがんだまま振り向いて『必要無い』と手で制止した胸の前で手を組むようにして俺を見下ろすチャンミンぐっと下唇を噛み締めて、まるで祈るようにも見える考えても、何故なのか、は分からないだって、今気付いたばかりだから分かる事はひとつだけで、それが全てだとは思う「恋人が居なくて、会いたいのは姪だって言った時のチャンミンの顔が…凄く可愛かったからもっとそんな顔が見たいと思ったから、かな」何だか、言葉にしてみたら良く分からないけれども確かにそう思っただから、本当の自分をもっと知ってもらって、普通に楽しく過ごしたいと思ったのだ「…可愛いって…」「安心したような顔だっただろ?それが可愛くて…そうだな…此処がホテルの俺の部屋だったら今直ぐ抱いているところだ」「…っ、ユノさん!」裾上げの必要は無い、けれども…むしろ、チャンミンには少し短いかもしれないこれならば、同じ生地か近い物でオーダーを頼んだ方が良い裾を少し引っ張りながら考えて、それから立ち上がったらチャンミンは真っ赤な顔で俺を見ている「どうした?」「…店で変な事言わないでください!」「あはは、俺の言葉よりも、チャンミンの声の方が大きくて…ほら、またあのスタッフがこちらを見てる」振り返ったら、俺が通話している最中にチャンミンを接客していた、チャンミン曰く『優しくて丁寧』な男性スタッフがちらちらとこちらを窺っている確かに悪いスタッフでは無いと思うひとつ前の店では自分の店の服にばかりプライドを持っているスタッフが居たから、彼に比べれば全く問題なんて無いけれども、チャンミンに対する距離が何だかとても近かった事が気になる「…見てるのは…さっき、ユノさんが僕に、その…キスとかするからです!」「え?ああ、だって、あのスタッフがチャンミンに矢鱈と近いからチャンミンは俺の専属なのに」「専属って…それはホテルの話だし、別にあのひとは親切なだけで……ん、っ…」可愛く無い事を可愛い顔で言うからキスで唇を塞いだ「また…此処はホテルじゃあ無いのに…」「ごめんね、でも…」『面白く無くて』そう言い掛けたけれども、そんな自分が自分で分からなくて、言葉にする前に口を閉じた少し視線を逸らして、俺は何を言おうとしたのだろうと考えていたら、チャンミンが覗き込んできた「あの…」「……」「もしかして、ユノさんもあのスタッフに嫉妬した、なんて…いえ、そんな訳無いですよね申し訳ございません、着替えます」「…っあ…」シャッ、とカーテンの音がして慌てて顔を上げたそうしたらもう、カーテンは閉まっていてチャンミンの顔は見えない彼の言葉は揶揄うような物では無くて、小さくて少しだけ震えていた今ならまだスーツを脱いでいないだろうし、カーテンを開ける事だって出来るでも…「……っ、何なんだよ…」何だか顔が熱くて、伸ばした左手をそのまま引いて口元を覆った一番初め、出会った瞬間にホテルの前でキスをしたのは、他のスタッフ達への見せしめのような物で…そうすれば、今回の担当は男だったけれど、他の女性従業員が誘って来る事も無くなるだろうし、チャンミンは良い虫除けになる、くらいにしか思っていなかった可愛い、綺麗な顔をしていると思った俺の事が憧れだ、なんて大きな瞳をきらきらさせていた気が付いたらあっという間に気になるようになって、暴きたくなって…『理由』を付けて抱いた「…これって…嵌ってるってやつか?」誘われて抱いたって、どんなに綺麗な相手を抱いたって、夢中になる事なんて無かったけれども、今は頭のなかがチャンミンでいっぱいだ「……」あの男性スタッフは、俺が嫉妬していると思っているのだろうかそう考えるととても恥ずかしいそして…『そうじゃ無い』とはっきり言えない自分が居る事が、まるで自分では無いようで…今は兎に角、チャンミンが着替えて出て来るまでに、この動揺を落ち着かせて余裕のある姿を見せようと心に決めたランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村

  • 29Mar
    • blue blue 9 後編

      R指定です大丈夫な方はこちらからお願いします ↓blue blue 9 後編ランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村本当はまだこの先も有るのですが、長くなってしまうので後編、にしました久しぶりのホストユノ、覚えていてくださったり「好きです」と言ってくださる方が沢山で、とても嬉しかったです読んでくださってありがとうございます

    • Fated 91

      突然変異でオメガになってからずっと、体力が落ちても男らしさを失っても、例えヒートになったりアルファの男に狙われたって…勿論タイミングもあったけれど、ほぼ休まずに仕事に穴を開ける事無く、怪しまれるような事も無く仕事を続けてきたチャンミン休ませようと判断したのは俺だけど、本人もそれに対して『大丈夫だから仕事に行きます』と言う事も無かったのは、彼のなかでもヒートがまだ収まらず仕事が出来る状態では無かったという事ヒートになった事を除いても、ピルの服用を止めて妊娠したかもしれないと…例え本人が望んだとしても妊娠の有無に振り回されて彼自身ストレスを溜めて疲弊していたつまり、チャンミンは体力的にも精神的にも参っていたそれを俺は全て分かっていたなのに、早く打ち明けたらそれだけ俺達の未来に繋がる、だとか…『誰かに分かってもらいたい』そんな気持ちが大き過ぎて、電話でもまだ疲れた様子の声を聞いていたにも関わらず、自分の気持ちばかりでチャンミンの様子を鑑みる事が出来ていなかったのだと思うマネージャーとふたりでチャンミンの部屋に向かって、迎え入れてくれた部屋の主を見て、少しは落ち着いたとは言えヒートである事を察したベータのマネージャーは気が付いていない様子だから、やはり朝よりもましにはなっているのだろう本人も『大丈夫』と言って迎え入れてくれたチャンミンとふたりきりなら彼のフェロモンに抱きたいという気持ちが抑えられなくなりそうだけれど、マネージャーも居るし大丈夫だと思っていたけれども、同じ空間に居るとヒートは強くなるのだろうかチャンミが纏う甘い匂いが濃くなって、くらくらしたコーヒーを淹れると言ってキッチンに向かったチャンミンの背中をじっと見ていたら、何だか危なっかしくて…いや、離れてはいられなくて、マネージャーの隣から立ち上がりキッチンの恋人の元へと向かったマネージャーも、俺がヒョンとして心配している、くらいにしか思わないだろう特に立ち上がった俺に何を言うでも無かったから後ろからスウェットを着た恋人に近付いた手を伸ばせば触れる距離にまで来た時、彼は棚の上からケトルを取ろうとして、けれども手が滑ったのかケトルがぐらりと落ちるのが分かって慌てて腕を伸ばした「…っわっ!」「チャンミナ!」後ろから腕を掴んで、こちらを向かせるようにして抱き締めたケトルは多分、フローリングに落ちたのだろうけれども、触れたらもうチャンミン以外の何もかも、五感は感じなくなってしまったようで…「…ヒョン…」「良かった…当たって無いよな?……っあ…」駄目だ、と一瞬確かに思った一気にチャンミンのフェロモンが濃くなって俺の本能の部分を刺激したから身体が一気に熱くなって、思考が奪われる目の前のチャンミンの瞳が潤んで唇が薄く開いて…まるで食べてくれと言わんばかり「ヒョン、駄目…」何が『駄目』なのか分からないただ俺はチャンミンのフェロモンに支配されて離れる事なんて出来なくて抱き締めていて…けれども、チャンミンは熱を帯びた瞳で小さく首を振るその理由が分からないまま、もう分かる必要も無いと思った気付いた事は、彼の髪の毛が少しだけ濡れていた事くるんと丸まった長めの襟足が少しずつ束になっているから、前からでも項が見えるようで…きっと、『そこ』が一番甘いと思った「……チャンミナ…」「…ユノヒョン、駄目…っ…」名前を呼んで、呼ばれたような気がしたけれども幻聴なのかもしれないぐわん、と耳の奥で反響して良く分からない分かる事はただ、チャンミンの匂いが濃くなった事そしてそれはきっと、俺が、俺達が対面したから『運命』の相手では無かったけれども、昨夜チャンミンが『ユノヒョンの事を愛しているからヒートになったのかもしれない』と言ったように、愛しているから互いに反応しているのかもしれないそれならば、そこから目を背ける必要も拒絶する必要も無いチャンミンのフェロモンに呼ばれるまま彼に近付いた瞬間、鉄の味がじわりと口内に広がって、自分が歯を立てたのだと気が付いた「ユノ!お前何をやって…!」「……え……っあ、チャンミナ!」ぐらっ、と腕のなかの恋人から力が抜けた後ろからマネージャーが俺の肩を掴んで叫ぶ甘い匂いは確かにしていて、そして自分が何をしたか、に漸く気が付いた「チャンミナ!大丈夫か」「…っ…ん…」俯くチャンミンの首の付け根、鎖骨の上辺りにはくっきりと歯型が付いて血が滲んでいるそれを見たらごくりと喉が鳴って、そんな自分が恐ろしい「ユノ…チャンミンは…」俺達を引き剥がそうとしたマネージャーは、鼻を押さえるようにして視線を泳がせている「チャンミナをソファに連れて行きますあの、マネージャー…後ろの棚の一番右側に消毒薬やガーゼがあった筈なので…持って来てもらえますか」「すみません」と言いながら、少し震えるチャンミンの身体を支えてリビングに向かったマネージャーは無言で俺の示した棚へと向かった「…っん…」「チャンミナ、ごめん…俺、無意識で…」ソファに横たえるように促したけれど、チャンミンは首を横に振って座った「…っ、大丈夫…でも驚いて…」顔を顰めてはいるけれど、前にしゃがんだ俺を見てくれた少し震えているから「大丈夫?」と聞いたら、少しだけ視線を逸らされたまだチャンミンの匂いは濃いけれど、それよりも口のなかに広がった鉄の味や、自分が無意識で項を噛もうとした事そのショックと、何よりもチャンミンに申し訳無くて冷静になった「…噛まれたいって思ったのに、なのに怖くて…」「…うん…ごめん…俺も今そんなつもりじゃあ無くて…もう大丈夫、だから…ごめん」噛んだ場所は首の後ろの項では無かったそれに…マネージャーが鼻を抑えていたという事は、多分オメガのチャンミンのフェロモンを感じたという事アルファとオメガが番になれば、そのふたりはお互いにしか反応しないし、オメガがフェロモンを出したりヒートになっても、番のアルファ以外は反応しなくなる「…番になって無いよな?良かった…妊娠もそうだけど…やっぱり、ふたりで決めて、じゃ無いと」「…うん…番になりたいのに怖い、なんて…」怖い、と言って俺の噛んだ箇所を右手で押さえながらもチャンミンは俺を見てくれるそれに胸を撫で下ろしたけれども、噛み跡は少しだけど血も出ているし、自覚無しに、だからこそ思い切り噛んでしまったから患部は痛々しい「ごめん、チャンミナ…」「…大丈夫、大丈夫です」チャンミンは噛み跡から手を離して、たどたどしく、だけれど俺の頭を撫ぜてくれた落ち着くとやはり甘い匂いにくらりとするけれど、今はもう大丈夫「そうだ、マネージャー…」棚の右、とは言ったけれど、直ぐには分からないかもしれないつい任せてしまった事すら頭から抜け落ちていたから立ち上がってチャンミンの向こう側のマネージャーを見た彼は背中を向けていて、何かを持っていた消毒薬やガーゼが見付かったのだろう、と思ったけれども、振り返った彼の手には白い袋があって…「なあ…もしかしてって思ったんだでもそんな訳無い事は知っていて…なのにどうして…」「マネージャー、それ…」ゆっくりと、こちらに向かって歩いてくるマネージャー確かに消毒薬やガーゼの入った箱も持っているけれども、それとは別に持っているのは、チャンミンが定期的に病院で処方して貰っている薬の入った紙袋「ユノヒョン?どうしましたか?」「チャンミナ…」座っているチャンミンからは死角で見えないのだろう振り返ってから、今度は立ち上がった俺を不安げに見上げる「話したって良いって思っていたって…知られたい訳じゃ無い、よな?」「…あ…っ…もしかして薬…」チャンミンは見なくても気が付いたようで、俯いた話をしさえすれば楽になれる前に進めるそんな風に簡単に思った…いや、簡単になんて思っていないけれど、言わなきゃ楽になれないと思っていたけれども、ベータのチャンミンがオメガである、だなんて事が通常簡単に受け入れられる訳なんて無いのだ「マネージャー…」チャンミンは俺に噛まれた首元を右手で隠すようにして立ち上がったマネージャーは俺達をじっ、と見ながらゆっくりと歩いて来て、そして白い小さな紙袋をこちらに向けるように腕を伸ばした「なあ、嘘だよな?『シムチャンミン』って書いてあるけど…発情抑制剤、だとかピルだとか…冗談だよな?チャンミンの彼女がオメガだとか…」「……」チャンミンは言葉を失ったように立ち竦む俺が何か言わないと、と思うのに動揺した様子のマネージャーを見ると言葉にならない「…ユノヒョン…」ちらりと視線だけで俺を見るその顔は不安でいっぱいと言った様子胸が痛くて、マネージャーに見られる事なんてもうどうでも良くなって細い腰を抱き寄せた「…っあ…」「大丈夫、俺が居るから」『俺が居るから』なんて…俺が今日マネージャーを連れてきたのにまだチャンミンのヒートが完全に収まっていない事だって分かっていたのにもっと平常な時に話をすれば…見せなくて良い姿も物もあったのに「…ユノはチャンミンを噛もう、としたんだよな?チャンミンがオメガなら…まさか番になんてなって無いよな?」ゆっくりと近付いてくるマネージャーの言葉その真意は分からないけれど、それはいつか番になろうとふたりで気持ちを同じにした俺達にとってはとても残酷な言葉だ「…番になっていたら…マネージャーはチャンミナのフェロモンなんて分からない筈ですベータでもその事は知っていますよね?」「ユノヒョン!そんな言い方…」「分かってる、分かってるけど…何でチャンミンが?それにお前達は…」マネージャーは言いながら歩いて来て、ソファの前のローテーブルに救急用品の入った小さな箱と、それから薬の袋を置いてから片手で頭を掻き毟るようにして溜息を吐く「マネージャー…その…話をしなければと思っていましただけど…っ、その、言えなくて…」チャンミンは小さく震えて肩を揺らすように浅い息を吐きながら、胸の前で手を組んで呟いた「…分からないよ兎に角…そんな噛み跡が残ったら困るから手当てをしよう」「…ごめんなさい…」チャンミンが謝る事なんて何も無い望んでオメガになった訳でも無いし、オメガなのを隠してこの業界に入った訳でも無いだけど…俺達は何も言わずに来たそれに、マネージャーがまるで俺達を拒むように俯いて視線を逸らすから何も言えなかった「チャンミナ、座って」「…ユノヒョン…」「菌が入ったら大変だから大丈夫、きっと痕になんてならないよ」「ごめん」と小さく言いながら、箱を開けたアルファは…いや、そうで無くても男として愛するひとを守りたいのにそれなのに結局は誘惑に負けて無理矢理項を噛もうとした話をする前にそんな光景を見せた事で、マネージャーはきっととても驚いただろう強くなんて無い自分チャンミンを怖がらせて守る事も出来ずにまた傷付けてしまったそれでも愛している「ユノヒョン…」「ん?」何とか、作り笑いのように微笑んで顔を上げたら、チャンミンは「大丈夫」と小さく言った一番辛いのはオメガになったチャンミンなのにいつも助けられてばかりで、少しだけ涙が込み上げてしまった二メートル離れたフローリングの上に胡座をかいて座ったマネージャー彼の視線を感じたけれど、赤い血がほんの少し滲む、とても甘そうな首元に消毒薬を染み込ませたガーゼをそっと押し当てた「…っ…」ぎゅっと目を瞑るチャンミンを見てまた喉が鳴って…愛しているのに、純粋に恋をしているのにそれなのに、アルファとオメガはこんなにも厄介なのだと苦しくなるそれでも、彼以外を選べば良かっただとか『運命』に従って、あのオメガ女性を選べば良かっただなんて思わない自分の気持ちが変わらない事、チャンミンが確かに俺を求めてくれていると分かる事が救いだったランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村

  • 28Mar
    • 未必の恋 10

      仕事だと思えば、例えばとても理不尽な事や、受け入れ難いような事でも受け止める事が出来る勿論、宿泊客の奴隷のように全て従う、という訳では無いけれども少しでもホテルで良い思い出を作って欲しい笑顔でチェックアウトして欲しいまた、このホテルに戻って来たいそう思ってもらえるように常に笑顔でいる事を心掛けている今だって勿論勤務時間中つまりこれは仕事ユノさんと僕はプライベートでの知り合いでも何でも無い彼にどんな交友関係があったって、それは僕には何も関係無くて当たり前「チャンミン、これも似合いそうだ」「そうですか?」「ああ、ほら…似合わない物の方が少ないから迷うな」僕に良くしてくれた男性スタッフが少し距離を置いた瞬間、ユノさんは上機嫌になってラックに掛かったスーツを吟味し出した次々と「これが良いかな」と言いながら僕の前に合わせては「どう?」と聞いてくる「これはどうだ?うん、色が凄く良いし、チェックでも品があって幼くも無いチャンミンの髪色や瞳の色にも合っていると思うんだけど…」「…本当ですか?ありがとうございます」『いつも』のように笑顔でだって、憧れの世界的デザイナーが僕の為にスーツを選んでくれているのだこんなに有難い、貴重な経験なんてきっともう二度と無いだから、鏡の前でユノさんが選んでくれたスーツを合わせて立っている「これも良いし、さっきのも素敵だと思いますセンスには自信が無いので、ユノさんに決めて頂ければ…」「…ふうん…じゃあ、これは?」「はい、そちらも凄く品があって…それに、合わせやすそうですよね」濃紺の単色のスーツだけどとても深みのある色合いと肌触りの良い素材でシンプルなのに品がある流石ユノさんが目星を付けていたというブランドだ「これ、試着してみますか?」もう相当ユノさんは僕の前にスーツを持ってきては戻してを繰り返しているどれが一番似合うかは分からないけれど、選んでくれる物はほぼ全て着てみたい、と思うものだった「…いや、まだ探そう」けれども、僕はずっと笑顔で応えているのに、ユノさんは段々と納得いかないような様子を見せてくる「…じゃあ…これはどうだ?チョークストライプは少し落ち着いた印象になるけど…チャンミンなら顔立ちが華やかだから地味にならないよそれに、この色ならカジュアルにもならないからどんな客にも対応出来ると思う」「はい、こちらも凄く良いと思います」「…もう一着持ってくる」「え…いや、もう…」『これ以上は大丈夫です』そう言おうとしたら、スーツを持ってまた別のスーツを探しに行ってしまった「何なんだよ…」ユノさんは良く分からないこの店に着いてから、彼の元に着信があった相手が誰かは知らないけれど、とても嬉しそうに話をしていた『恋しくて、声を聞きたかった』なんて、物凄く熱烈な愛の言葉としか思えない事を甘い声で囁いていた楽しそうに通話しているから、僕は話し掛けてくれた親切な男性スタッフにスーツを購入しに来たという相談をした僕の予算を聞いても嫌な顔ひとつせずに一緒に探してくれると言う、そんな良いスタッフに出会えて良かったと思っていたのに、通話を終えたユノさんは男性スタッフをまるで『必要無い』と言うように不機嫌になったふたりになってスーツを選び出したユノさんは上機嫌になったけれども、選んでもらったスーツのほぼ全てに『良いと思います』と言って…本当は、誰か大切なひとが居るユノさんの事を思うと泣きたい気持ちなのに笑顔で答えている僕に、今度は何だか面白く無さそうな顔「早くスーツ選びを終わらせて大切なひとの所に行きたいのかな」自分で言葉にしておいて胸がずきん、と痛むだなんて滑稽だユノさんは僕の勤務する高級ホテルの大切なVIP客恋をするような相手では無い僕達は住む世界が違うし…もう分かったじゃあないかユノさんには『恋しい』と蕩けるような顔で告げる相手が居る事を「……」胸が痛いし辛いでも、僕は恋なんてしていないだから大丈夫それに、ちゃんといつも通り笑えているし「スーツ、選んで貰ったのを来たら苦い思い出が蘇りそう、なんて思ったけど、買うのは僕なんだし着なきゃ勿体無いよ」そう、これは恋じゃ無いのだから何も凹む必要なんて無いなのに…「チャンミン!これはどうだ?グレーが似合うって言っただろ?このグレーは少しだけ赤み…いや、ピンクが入っているんだなんて言っても分からないかな、だけどこの色がチャンミンの肌色に…」左手でハンガーを、それからスーツを大切そうに右手で支えるようにして持って来たユノさんが嬉しそうに語るユノさんのブランドではシンプルなオフィス用のスーツ、は見掛け無いけれども何よりも服が好きだというのが伝わってくる「はい、これも凄く良いと思います」生き生きとするユノさんを見たら何だか涙が滲んできたでも、そんなのも悟られる訳にはいかないから、鼻を掻いて啜る仕草で涙を引っ込めて微笑んだ「じゃあ、これを着てみようそれから…別のも試着して…すみません、これを試着しても?」ユノさんは一瞬僕を見て目を見開いたようにも見えたでも、大丈夫、気付かれてなんていないだって、これでも僕は異例のスピードで高級ホテルの副支配人にまで上り詰めたのだからつまり、自分のプライベートに例え何があったって、宿泊客からどんな事を言われたって常に笑顔で、変わる事無く臨機応変に対応出来るのだ付かず離れずの距離に居た、先程の男性スタッフの元にユノさんは歩んで何かを話しているそれから満足そうな顔で戻って来て、「直ぐそこがフィッティングで、使って良いそうだ」なんて言って…きっと、『俺が見るから自由に使わせてくれないか』なんて言ったのだろうなあと思ったらふっ、と笑ってしまった「どうした?このスーツなら良いだろ?」「…はい」嬉しくなる自分がなかなかに単純だと思うでも、今は確かにユノさんは僕の傍に居るスーツを選んでくれるなんて、本当に幸せな事「…本当に勝手に使って良いんですか?」尋ねがら、ユノさんの向こう側に居る男性スタッフをちらりと見たら、笑顔で『どうぞ』とジェスチャーしてくれたから、スリーピースのスーツを試着する事にした「着たらカーテンを直ぐに開けて」「…分かりました」ユノさんは何だかこどものように、嬉しそうに僕を見る大丈夫、僕達はホテルマンと宿泊客として良い関係を築いている…肉体関係が有る、なんて普通では無いけれどでも、それだって僕の常識からは外れるだけで、ユノさんは別のホテルでもしてきた事で…「…もう考えるのは止めよう」ベルベット素材のカーテンを左から右側に閉めて、自分のスーツのジャケットとスラックスを脱いだユノさんが選んでくれたスーツのスラックス、それにベストとジャケットを羽織って鏡を見たら…「…本当に色が合ってる…凄い」グレーのスーツはもう何着も持っているだけど、素材の違いはあれど、色で大きく違いなんて無いと思っていた無難で使い易いしシーズンにも左右されないのがグレーの良さだと思っていた「デザインも勿論凄く洗練されてるでも、それよりも色が凄く良いかも」フィッティングルームのなかだから、自然光の下で見たらまた印象も変わるのかもしれないでも、何だかとてもぴったり嵌る、と思った少し照れ臭いけれど、ユノさんに見てもらおうなんて、スーツに気持ちも上がってベルベットのカーテンに手を掛けた時、ユノさんの声が聞こえた「…ん?ああ、良いよ今日この後…そうだな、三時間もすれば向かえると思うそれまで眠ったりしないよな?」「…っ……」また、さっきの声名前を呼んではいないから確実では無いでも、この甘い優しい声はきっと、先程と同じ相手なのだろう「そっか…ソウルに恋人が居るって事?」呟いた自分の声は何だか、喉に張り付いたように掠れていたユノさんが甘く囁くその相手は、彼が長期滞在するホテル毎にお気に入りを見付けて抱いている、なんて事を知っているのだろうか今日これから会いに行くようだけど、そんなユノさんが昨夜だって僕を…ホテルマンを抱いた事を知っているのだろうか「…いや…知ったところで僕に勝ち目なんて端から無いだろ」カーテンから手を離して、カーテンに背を向けて鏡を見た『いつもの』笑顔を作ってみたけれど、何だかぎこち無いでも、それは自分だからそう思うだけに違い無い「これ…うん、凄く良いからこれにしよう」言いながら値札を初めて見たら、僕の考えていた二着分の予算だった「…うわ…着心地が良い筈だ」その予算すら、かなり見栄を張ったものだけど、クレジットカードで分割払いにすれば何とか払える代わりに、ユノさんのブランド『JYH』の今シーズンの新作はもう買えないだろうけれども仕方無い良いスーツはきっと長く着る事が出来る「…良し、これで良い」早く買い物が終われば、ユノさんだって大切なひとの元へ早く向かえるこんな風に一緒にスーツを見に行けただけでとても幸せな事だから、これ以上なんて望む訳も無い「……」幾ら言い聞かせても、鼻の奥がツーン、とする鏡を見ると情けない自分の顔が写ってしまうから、俯きながらジャケットを脱いで左側のハンガーに掛けていたら…「チャンミン?まだか?」「っちょっ!急に開けないでくださいよ!」驚いて思わず声を荒らげてしまったユノさんが選んでくれたスーツのスラックスにベスト、それから自分のワイシャツ姿のまま固まっていたら、ユノさんは僕をじいっと見てからむっと眉を顰める「どうして見せてくれないの?流石に、これから着るってところじゃ無くて脱いでいるんだよな?」ユノさんの手にはスマートフォンが握られているついさっきまで、僕が居るのに甘い声で別の誰かに囁いていた違う、僕はただのホテルマンで僕達の間に何か特別な物、なんて無いのに何を考えているのだろう「これ…気に入りましたなので、これを買う事にします裾上げや細かな調整はまた後日、個人的に頼もうと思います」「は?どうして?今すれば…」「それと、お恥ずかしいのですが、僕は庶民なので…折角素敵なスーツを選んで頂きましたが、この一着を買うのが精一杯ですなので、オーダーはまたいつか考えようと思います良い物を選んでくださってありがとうございます」話し出せば、何だかすらすらと出て来たそれに、大丈夫、ちゃんと笑えている折角良いスーツと出会えたのだから、感謝しなければならない「じゃあ、残りも脱ぐので…」「おい、ジャケットも見せて…」カーテンを閉めようとしたら、スマートフォンを持ったままのユノさんの右手がフィッティングルームのなかに入ってきて、僕達の間を遮る事が出来ない「チョン様はこれから向かうところが有るようなので…タクシーを呼びますか?僕が着替えたり、会計をするのを待って頂くなんて勿体無いです」「え…」「今日は僕なんかに付き合ってくださってありがとうございます夕食や明日の朝食、必要かどうか分かればご連絡頂けますでしょうか?大切な方がいらっしゃるなら、ゆっくり過ごされた方が良いかと…」「チャンミン!」もう、ユノさんは半分フィッティングルームのなかに身体を入れているカーテンを閉めさせてくれないから、背を向けて鏡の方を向いた俯いていないと情けない顔が写るから、思い切りし下を向いたやっぱり、スーツの色はとても綺麗で、これならば誰の前で着ていても恥ずかしく無い「申し訳ございません僕も業務が有った事を失念していて…もうホテルに戻らないとなりませんだから着替えさせて…っあ…」流石に、このままでは着替えられない何時までも商品を着ている訳にはいかないから、俯いたまま振り返ったそうしたら、ぐっと抱き締められて息が止まったかと思った「チョン様…」「ユノ、だろなあ、さっきからやっぱりおかしいよ笑っていたつもりなのかもしれないけど、どのスーツを見せても心ここに在らずだしやっと気に入ってくれたと思ったらフィッティングから出て来なくて見せてくれないし、それどころか突き放すように…わざとだろ?」「…別に…僕は何も…」「俺が何かした?チャンミンに似合う物を探そうって思っていたのに」そう言うと、まるで被害者のように眉を下げる抱き締める腕は緩まったけれど、何だか悪い事をしているようで逃れられないだけど、被害者はむしろ僕の方だひとをその気にさせて…いや、僕が勝手にどきどきしていただけだけど、でもやっぱりむかむかする早くもう、大切な誰かの元に行けば良いのに、まるで僕の買い物が有るから行けない、と言われているようで…「もう、早く行けば良いじゃないですか会いたくて仕方無いんじゃあないんですか?声を聞くだけで蕩けるような顔で……っ、ちょっと!ユノさん!」「…良かった、今度は『ユノさん』に戻った…」ユノさんは安堵したような声で、僕を抱き締めながら呟いて…それから、耳元に熱い息が掛かった「…っあ…」「あはは、近かったかな…ええと、会いに行くのはチャンミンも一緒だよだから、スーツを選んでから、まあ…あと三時間も有れば良いスーツを選べるからそれで良いかと思っている」「は?どうして僕がユノさんの恋人に…」思わずユノさんの胸を押し返した言葉遣いが悪くなっている自覚は有るでも、流石に言っている事がおかしいそれとも、僕を用心棒代わりにでもして着いて越させようとしているのだろうか滞在中はユノさんの専属で、と言われてはいるけれどもそれはあくまでもホテル内での事彼のプライベートは僕には関係無いもうむかむかして、身を捩って逃れようとしたそれなのに、更に強く抱き寄せられて…「恋人?何を言っているんだ?」「は?だからさっきの…!」「電話の相手?ソウルの妹だけど…」「え…いや、でも、妹にあんな甘い声…」思わず口が開いてしまった瞬きを繰り返して至近距離のユノさんを見た今見る限り、彼は特に何か嘘を吐いているような様子も無い「まあ、流石に、会いたくて堪らない可愛い姪はまだひとりで電話を掛ける事は出来ないから、代わりに妹が掛けて来たんだけどな」「…会いたくて堪らない姪…」「……もしかして、彼女を恋人だと思っていたって事?言わなかった?俺はフリーだよ」「…聞いてない…彼女は居ますかって聞いたら…『気になる?』って言われて終わりでした」「あはは、そっか…居ないよ」ユノさんは俯く僕を追い掛けるように覗き込んで来て「顔が赤い」だとか「もしかして嫉妬?」だとか、好き勝手に言っている「もう!良いです!兎に角これを買って僕はホテルに…っん…」「……駄目、ちゃんとジャケットも羽織ってそれに、スーツは俺が買うんだから」「……え……」何だかもう、頭が働かないだって、キスされた直後、ほんの一瞬だけど…僕達から視線を逸らそうとする男性スタッフと目が合ったような気がしたから「チャンミンが嫉妬かあ…うん、さっきは急に避けてきたり、何を選んでも張り付いたような笑顔だったし、どうしようと思っていたけど…うん…悪く無いな」「……」これは喜んでも良いのだろうかだけど、キスされたのを確実に見られてしまった嬉しい、なんて思ってはいけないだけど…一度思いっ切り気持ちが沈んだから、何だか頬が緩んでしまう「…あれ、ほっとしてる?」「…してません!」揶揄うように覗き込んで来られて悔しいでも、ユノさんも…スーツを選んでいる間、途中から不機嫌にも見えたのに、今は何だかとても嬉しそうに見えるつまりは、僕達はお互いに誤解をしていたのだろうか「ジャケット、着せてやるよ」「…自分で着られます」「うん、分かってるでも、俺が着せてあげたくて」何だか甘やかされているだけど、今は…さっきまで寂しくて仕方無かったから、受け入れておこうと思う「姪っ子…電話を掛けられないならまだ小さいんですよね?とても可愛いのでしょうね」「ああ、物凄く可愛いよ…嫉妬する?」「…そんな訳有りません僕はただのホテルマンなので」袖を通したジャケットの肩を整えるユノさん顔が近くてどきどきしたけれど、顔を逸らして動じていない振りをした「チャンミンが何を思っているかは…まだ俺には分からないけど、本音かそうで無いか、は何となく分かるよ」「…っ、姪っ子に嫉妬する訳無いです!」ああもう、ユノさんと居るとペースが狂うだけど、さっきまでの悲しみはもう消えてしまったから、文句なんて言えないランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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  • 27Mar
    • 無題

      ご訪問ありがとうございます何だか、日々刻々と色々な事が変わっていく日々ですが、ご訪問くださる皆様は変わりなく(何て言うとそんな事は難しいかと思いますが…)過ごされていますでしょうか?感染症に関して(当たり前ですが)素人なので、ほんの一ヶ月前は「4月末の東京ドームの頃には少しは事態も落ち着いて、運営も開催の方向で行くのかな?」と思っていました。勿論健康が第一ですが、運営側も仕事だしとてつも無く大きな金額が動く話なので…なんて思っていたのがもう凄く過去のような事ですが、ここ最近はまず決められた通りの開催は難しいのだろうなあと思っていました。何となく、今日お知らせが来るかな?とどきどきしていながらも実際のお知らせを見るまでは…という感じでしたが、Twitterの公式アカウントでもお知らせが来た通り、25日から27日の東京ドーム追加公演とアニイベが見送り、となりましたね。今回、二公演分当選していたのでメールでもお知らせが来ました今きっと、お住いや職場家庭環境によって皆様様々だと思います。例えば(もう有り得ない話ですが…)予定通り開催されたとしても、移動の不安や周りの方に何かあったら大変だから、とチケットを持っていても参戦しない事を決めていた方も少なくなかったのではないかと思います。ご家庭にお子様やご高齢の方がいらっしゃったり、職場からはっきりと禁止と通達が出ていたり、もう既に自宅からあまり出ないように心掛けている方も少なくないかと思います。日々世界中で感染者が増えていたり亡くなる方が、とか…大変な環境にいる方も沢山沢山いらっしゃって、そうで無くても、ひとりひとりが出来る事をやって少しでも拡大を食い止めるように…という今の状況ですよね。なので、上にも書きましたが、延期(もしくは悲しいですが中止)になる事は分かっていました。それに、分かっているし今はそれで当たり前の判断になるかと思うので、寂しいなんて思ってはいけないと思っていたんですが…ユノとチャンミンと、関わるひと達、勿論私達ファンも…と言うかもう世界中皆が健康で平和であれば、と思います。四月に会えないであろう事は分かっていたし、それで良かったと思います。だから、今ライブに行きたい、という気持ちでは無いです。でも、何だかやっぱり心にぽっかり穴が空いてしまったような気分で…ファンとしてのただの一意見ですが、音楽やエンターテインメントは、それが無ければ命に関わるものでは無いのでこのようになる事は今の状況で然るべき事だと思います。大変な方が数多くいらっしゃる状態で、日本もこの先どうなるか…なので、悲しいとか切ないとか、あまりそのような意見も今は出すべきでは無いのかなあとも迷います。(勿論、その業界に携わっている方達からすればまた別の色々な、生活に直結する問題が出てきますが、ここは一ファンのブログなので割愛させて頂きます。)個人的にはいつも、大好きなユノとチャンミンを直接その場で応援する事が出来なくても気持ちは何も変わりは無いし、姿が見えなくてもいつもいつもホミンちゃんの事ばかり考えているし…ですが、やっぱり、少し気が抜けてしまったような気持ちなのかもしれません上手く言葉に出来ないし、こんな時なので残念だとか嫌だとか、そんな気持ちは一切無いです。今まさに大変な方達が数え切れないくらい居らっしゃる事も分かっています。でも、少し切なくて…メールやTwitterのお知らせを見て泣いてしまいました今はまだ先が見えないですが、ひとりひとりが出来る事に取り組んで、少しでも早く皆の元に日常が戻ると良いなあと願って止みません。「明日は来るから」の歌詞にあるように「どんなに闇の深い夜でも必ず明日はくるから」と、この先もホミンちゃんの歌声やふたりの姿に元気をもらいながら、ステージに立つふたりを全力で応援出来る日を待ちたいと思いますホミンちゃんと、それからこのお部屋にご訪問くださる皆様がいつも笑顔で健康である事を祈っていますそして、この場所が少しでも皆様の息抜きや癒しだったり、そんな場所になれたら良いなあと思います。なんて、何の事?な独り言になってしまいましたが…いつか「あんな事もあったよね」と言えるような日が来るように、頑張りましょうね幸せホミンちゃんにぽちっ♡ ↓にほんブログ村

    • cute cute lollipop 15

      Side C「本当にもう大丈夫?」「大丈夫です」「乗る前にもう一度行っておいた方が…十五分くらいかかるらしいから」「ユノさん!もう!本当に大丈夫ですってば!」心配してくれているのは嬉しいけど、そもそもお腹が痛くてトイレに行っていた、というのは嘘だからあまりに心配されると困ってしまうとは言え『あれは嘘だったんです』なんて言ったら僕の頑張りも計画も水の泡「ごめん、心配でつい…顔色も良さそうだし大丈夫だとは思うんだけど、チャンミンはたまに無理をするだろ?だから、何か有ればちゃんと言って欲しくて」「…ユノさん…心配掛けてごめんなさいでも本当に大丈夫ですアイスが美味し過ぎてお腹がびっくりしたのかも」こんな事なら『お腹が痛い』では無くて違う事を言って時間を稼げば良かったでも、僕の頭では他に思い付かなかったのだ観覧車の前のベンチに並んで座って、ハーフパンツの右側のポケットの上を手でそっと押さえた「そっか、じゃあ信じるよ俺も…情けないけどひとりで待っているのが少し寂しくて外国だからかな?不安になったのかも」「ユノさん…」「情けないよな」「…っううん、全然」ぶんぶんと首を横に振って、左手でユノさんの右手をぎゅっと握った「あ…何だか一気に夕焼けが…そろそろ行きますか?」「本当だ、行こう」夕食はホテルで、を予定しているだから、後少しでこのアメリカンビレッジを出なければならない最後に向かうのは、目の前の観覧車行きたいって思って思っていたら、ユノさんも同じ事を考えていたらしい何だか通じ合っているようで、それだけで嬉しい折角なら日没には間に合わなくとも日が暮れていく様子を見る事が出来たら…とふたりで話し合って、観覧車の傍のベンチで待機して約十分、立ち上がったらユノさんから手を繋いでくれた「デートだから」「…はい♡」沖縄そばとアイスをダブルで食べた普段なら、大食いの僕には全く足りないくらいでも、もう幸せで胸がいっぱいで空腹なんて全く感じないそれに何より、僕にはユノさんに嘘を吐いてまで頑張った計画が有るからそれを成功させるという使命があるのだこの場所自体、観光地のようにも見えるけれどもやはりオフシーズンであるから、なのか、観覧車には列も無くて…「あ!あそこには乗っているひとも居るみたいですね」「…空いているから少し恥ずかしいな」「貸切みたいで特別感があって良いです」ユノさんは空いている左手で額を掻いてから、シャツの胸元に引っ掛けていたサングラスを取ってそれをかけた「僕とは恥ずかしいって事ですか?」「…違うよ、『俺が』恥ずかしいのチャンミンはまだ若いし可愛いから良いけど、俺は三十を超えているんだから」「…年齢なんて関係無いし、ユノさんは格好良いのに」唇を尖らせて言ったら、「ふたりきりになれば外すから」なんて物凄く良い声で耳元で囁かれたあまりにどきどきしてしまって、ただ黙って頷くしか出来なかった観覧車の乗り場に居た女性スタッフは、男同士で手を繋ぐ僕達を見ても嫌な顔する事無く笑顔で迎え入れてくれた乗り込む時に何か言われて、ユノさんはそれに「ありがとうございます」と返事をした「さっき、何て言っていたんですか?」「ん?今が一番おすすめの時間帯らしいだからたっぷり景色を楽しんでください、こんな感じだったかな」扉が閉まってゆっくりと動き出す観覧車のゴンドラのなか先に乗り込んで座った僕の正面にユノさんは座って、サングラスを外しながら言った「僕も日本語、覚えようかな」「そうなの?」「だって、そうしたら次にまたこんな風にふたりで旅行に来た時にユノさんの前で良い所を見せられるかなって日本なら近いし、なのに誰も僕達を知らないから恋人としてこうやってデート出来るし」右のポケットを押さえながら言ったら、ユノさんは何故か考えるような顔「日本語を覚えるのは良いと思うよ、でも…」「でも?」「チャンミンはきっと直ぐに、日本でも顔が知られるようになるよ」「そんな事…」「有るよ」『無い』って言おうとしたら、ユノさんは物凄く真面目な顔で言った「今だって、本当は少しどきどきしているんだ」「何が、ですか?」尋ねたら、ユノさんは座ったまま身を乗り出して、僕に向かって両手を伸ばしてきた腿の上に置いていた左手をそっと握って、少しだけ切なそうな顔右手をポケットから離して、僕からもユノさんの手を握ったそうしたら、少しだけユノさんが微笑んだ「日本にだって、沖縄にだって、チャンミンを知っているひとはもうきっと居るに違い無いから」「え…そんな訳無いですテレビだって雑誌だって全部韓国しか無いのに…」「でも、インターネットでも動画サイトでもSNSでも、何でも有るだろ?国内ではもうチャンミンは有名人なんだから、世界の誰が知っていたっておかしく無いんだよ」「…そんなの想像出来ないです」アイドルとしてユノさんに認められて、ユノさんの力になる事が僕の夢そうしてステージに立ってファンの方達の笑顔を見ていたら、それに幸せを感じるようになってやり甲斐になった沢山のひとが僕を応援してくれる事は嬉しい仕事が増える事も、ただのフリーターだった僕を雇ってアイドルにしてくれたユノさんと事務所の為になるから嬉しいでも、少しだけ寂しい「凄い事なんだよ、チャンミン」「…じゃあどうして、そんなに切なそうな顔をするんですか?」「……」もしかしたら、僕を知る誰かがこの国に居るのかもしれない次に沖縄に、日本に来る事が出来たら今度はもう…信じられない事だけど、こんな風に堂々とユノさんと手を繋いで歩く事やデートする事は叶わないのかもしれない「ユノさんも僕と同じ気持ちですか?…沢山のひとが知ってくれて、応援をしてくれるなら嬉しい仕事が増えたら嬉しいでも、もうこんな風にデート出来なくなると思ったら寂しい、です」繋いだ手を離して、それからユノさんの右側に座った立ち上がると一瞬ゴンドラがふわりと揺れたから、ユノさんにしがみつくようになってしまった「…ごめんなさい」「誰も見ていないからそれに、俺も本当は隣に座りたくて…でも、サングラスをしていても恥ずかしくて出来なかったから…ありがとう」ユノさんの左手が僕の髪の毛を撫ぜるそれだけで身体から力が抜けていって、抱き着くようにしてユノさんの匂いを思いっきり鼻に吸い込んだ「俺も同じ気持ちだよチャンミンがどんどん大きくなって嬉しいし誇らしいでも、俺の手から離れて行ってしまいそうで少し寂しいんだ」その言葉にばっと顔を上げた「僕がユノさんから離れる?そんなの有り得ないですそれに、ユノさんが許してくれるなら何時でも何処でも、本当は手を繋いだりくっついていたいし…それが本音だけど、ファンのひと達が居るから我慢します」「うん、チャンミンはちゃんとプロだよ」何だかこども扱いされているような気もするけど、褒められて嬉しい「あ…!ユノさん、話してばっかりで外を見るの忘れてます!」「ん?あはは、本当だもうだいぶ上がってきたな」もう、頂上の高さの半分を超えた外を見渡すと、夕日に照らされる海が見えた「…凄い、綺麗…」「ホテルからも海が見えるし昨日も海に行ったし、目新しくは無いかもしれないけど…」「そんな事無いですだって、観覧車からは見てないじゃないですか」誰も見ていないから抱き着いたままユノさん越しの海を見たそうしたら…「ユノさんの顔も夕焼けに照らされていて綺麗です」少し眩しそうに目を細める、大好きな僕のマネージャーでSPそして、今は恋人右手を彼の頬に伸ばして、景色よりも綺麗なユノさんを見つめたら大きな掌が僕の右頬に伸びた「チャンミンも一緒だよ、少し眩しいかな」「大丈夫」写真も撮りたいなあって思っていたでも、その為に離れる事すらもどかしくて、じっと見つめて、そしてキスをした「…ん…っ……ふ…」「好きだよ、チャンミン」「……ん、僕も大好きです…」なかなかキスが止められなくて、お互いに唇を離して見つめ合って少し笑ってしまったぎゅっと抱き着いて幸せを感じていたら、ゆっくりだって思っていた観覧車はもう直ぐ一番てっぺんに到着しそう慌ててユノさんから身体を離した「あっ!」「何?急にどうした?」「あの!海の向こう側見てください!」我ながらわざとらしかったかもしれないでも、これだって僕なりに考えた計画の内ユノさんの向こう側を指差して「早く見つけてください」と慌てる振りをした「何?何か有るのか?」ユノさんは疑う様子無く外を見てくれたから、その隙にハーフパンツよ右側のポケットにそっと手を入れて、それから急いで袋のなかから『それ』を取り出した「チャンミン、何が有るの?」ユノさんがこちらを振り向いた瞬間、右手を掴んで急いで用意した物を嵌めた「これ、です」「……え……」何だか慌ててしまってムードも何も無かったかもしれないユノさんは黒目がちな瞳を丸くして僕が用意した物…つまり、青い石のブレスレットをじっと見ている「ユノさんにプレゼントしたくて沖縄の海をイメージした、特別な硝子で作ったブレスレットです」「沖縄のって…沖縄に来てから用意したって事、だよな?いつの間に…」小さな丸い石が連なったブレスレットユノさんはそれを左手で何だかとても大切そうに触れた「…その…内緒、ですでも、僕が選んで自分で買いましたユノさんにプレゼントしたくて、思い出にしたくて」本当は、アイスクリームを食べてから…トイレに行く振りをして急いでアクセサリーショップに向かった日本語は分からないけれど、スマホの翻訳アプリを使ったり、お店のスタッフの方も簡単な英語混じりで説明してくれて…そのお陰で、気に入った物を見つける事が出来た「本当の宝石じゃ無いんですでも、特別な加工が施されていて、沖縄で作っているそうです」「宝石じゃ無くても何だって…チャンミンが選んでくれただけで凄く幸せだよ」「…えへへ、良かった本当は箱も付けてもらおうと思ったんですが……っあ、いえ、何でも無いです」そう、本当は専用の箱も有ったけれどもそれに入れたらポケットに入れた時に膨らんでしまって不自然になるから泣く泣く断ったのだでも、それを言うとついさっき購入した事が知られてしまうから口を押さえた「あ、ユノさん、一番上です!」「本当だ、もう他のゴンドラも見えないな」「…本当に僕達ふたりきりみたいです」ゴンドラに乗り込んだ時はまだ明るさがあったけれども、この十分弱で一気に空は暗くなって、海の向こうには日が沈みかけているユノさんは外を見て、それからブレスレットを装着した右手首を見下ろして…あまり表情の動かないユノさんだけど、喜んでくれている事がちやと分かるから嬉しい「あ、写真撮らなきゃ」計画も成功に終わったこれで後は沢山写真を撮って景色を目にも焼き付けてスマホにも残して…そう思いながら、ユノさんから少し離れて左のポケットのなかのスマホを取り出そうとしていたら、隣でユノさんも何かごそごそと動いている彼もスマホを探しているのだと当たり前に思っていたのだけど…「チャンミン」「…え、何ですか………っえ…」「…俺も準備していたんだけど…先を越されたから、決まらないかな」「………」スマホを取り出して、それを右手に持って顔を上げたら、ユノさんが僕の左手を掴んだそれを何となく見ていたら、ユノさんは僕の薬指にシルバーの指輪を嵌めた「これって…」「チャンミンに勿論、仕事中は着けたら駄目だよでも…プライベートで使ってくれたら嬉しい」「…………」シンプルだけれど、捻れたようなデザインは何だか凄くおとなっぽくて、目が離せなくなったじっと、自分の手を見下ろしていたら涙が溢れて…「チャンミン?あまり好みじゃ無かった?」「…っ、違っ……嬉しくて…」いつも、ずっと、ユノさんへの気持ちを沢山沢山言葉にしてきたきっと、男に言い寄られるなんてユノさんは迷惑だったと思うだけど諦められなくて、好きで仕方無くてでも、こんなに胸が詰まってしまったのは初めてで…景色を見なくちゃ、って思っていたのに、涙で前は見えなくなってしまったランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村チャンミンの選んだブレスレットは、実在するお店のものをモチーフにしました沖縄は行けませんが、調べて書くだけでもとても楽しかったです読んでくださってありがとうございます後少し沖縄編にお付き合い頂けたら幸いです

    • Fated 90

      更新しましたが飛ばされてしまいました教えてくださった皆様ありがとうございます一応R指定です本文はこちらからお願い致します ↓Fated 90ランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村

    • blue blue 9 前編

      昔から、勿体無い、だとか何かが足りない、だとか周りはそんな風に僕を見て好き勝手に言うだからひとから評価を受ける事は苦手だし、流行に乗ってその評価を上げるような事も同様それを、所謂『イケてる』やつらは僕達…つまりオタクだとか地味なやつらの事を努力が足りないだとか、何も考えていない、だとか言うけど、僕達は外見を磨いたり周りに迎合する事よりも趣味に生きているだけなのだ例えば僕ならば、勿論清潔感は失わないようにするけれど、おしゃれは二の次…と言うか興味が無い『もう少し服装を気にすればモテる筈』なんて言われた事も少なくは無いでも、あまり興味が無いし何となく反抗したくなるような気持ちもあってそのままにして来たなのだけど、そんな風に世間からはオタクと呼ばれる僕にも晴れて自慢の恋人が出来た物凄く美人で…だけど、誰よりも格好良い『彼』はつまり男で、そして新宿歌舞伎町のNO.1ホストのユノ彼はこのままの僕を可愛いだとか好きだと言ってくれている釣り合わないと思いつつも、釣り合うように自分を変える事も出来ないまま、付き合って半年以上が過ぎた自分の為だけになら変わる必要なんて無いでも…恋人の為に、一目惚れしたあの日からずっとずっと、好きで堪らないユノの為に変わりたいと思うそれでも頑固な僕はなかなか変わる事が出来なくて…けれども、漸くそのチャンスが訪れたのだ『新宿に着いた、今から向かうよ』仕事を終えて一旦会社から帰宅した着替えて準備をしてメトロに乗って、日本で一番であろう繁華街に降り立ったもう、ユノの勤務するホストクラブはオープンしている時間だからメッセージの返事が来る事には期待していないでも『到着したら必ず連絡をするように』そう、2歳年下なのに過保護なユノに言われていた「…おしゃれって何だか大変だな…スースーするし重たいし…」レザージャケットの上から腕を擦り、そして首元に手をやった歌舞伎町にはもう、多分以前よりも慣れたユノの店が有るから、ユノが夜を過ごす街で直ぐ傍には彼の住むマンションが有るからとは言え、出会った日はユノの店に招いてもらったり、その後も数回は少しだけ顔を出した事も有るけれども、最近はプライベートで恋人として付き合っているからユノの仕事の顔を見ていない「…はあ、楽しみこれならオタクなんて思われないだろうし、男性客も居るってユノも言っていたし大丈夫だよね」呟いてぐっと拳を握り締めて歩き出したもう既に、一度帰宅してから缶ビールを三本飲んできたアルコールには弱く無いからまだまだ余裕酔っ払っている、という感じでは無いでも、恋人であるユノが居る、とは言え久しぶりに向かうホストクラブそれに、ひとりで歩く歌舞伎町に緊張しないように景気付けで飲んできたのだ「ユノが知ったら『先に飲むな』とか言われるかなあでも、別に言わなきゃ分からないし…」どちらかと言うと後ろ向きで控えめな性格だけど、こうと決めた時の行動力はなかなかだと我ながら思うユノと初めて会った日もそうだったもう25だし、そろそろ『未経験』から卒業をしようと歌舞伎町にやって来た結果、女性よりも美人なユノに一目惚れして好きになってもらえて…僕の初めてはユノになるのかと思ったら…男は通常経験する事は無いであろう、違う初めて、を経験する事になって今に至るのだけど「なかなか店に来ても良いって言ってくれないから…もしかしたら浮気してるんじゃ無いかって不安だよ」大型店舗のNO.1ホスト着飾っていなくたって、ユノは誰よりも綺麗で格好良いそんな彼氏はいつも僕を好きだとか可愛いとか言ってくれる年下だけど、おとなっぽくて…でも、ふたりきりの時は甘えてきたり、可愛いところも沢山オタクなサラリーマンである僕の事を凄く好きでいてくれて…甘やかしてくれるけれども、仕事の顔は何故か最近ずっと隠そうとするホストだと初めから知っていて、それでも好きになったのに恋人の事は何だって知りたくて当たり前なのにそんな風に僕が不満を漏らしていたら、今夜ならば固定客の来客があまり無い予定だから来ても良いよ、と…割と渋々、だったけれど言ってくれたのだ「やっぱり僕がダサいからあまりひとに見せたく無いのかなだって、ホストなんてきらきらしているし、女性客だって皆着飾ったり…でも、今日は大丈夫…多分、だけど」歌舞伎町の入口、赤信号で立ち止まって自分の姿を見下ろした黒いレザージャケットを羽織って、なかにはアイボリーのざっくりしたニットを着ているボトムスも黒のレザーパンツだこれは全て、昨日仕事を早く終わらせてから訪れたショッピングビルのなかの店で購入したもの何が流行か、とか…そんなのは分からないけれど、ユノは仕事の時にレザーを着る事が多いイメージだから、店のスタッフに『何をお探しですか?』と聞かれて、緊張しながらも『レザーで、強く見えそうなものを』なんて答えて、気さくな男性スタッフに一緒に選んでもらったのだ「ユノ、驚くかなあ…自分では違和感だけど、お兄さんは似合うって言ってくれたしどきどきしてくれたら良いな」初めて履いた細身のレザーパンツデニムやチノパンに比べると動き辛さは有るけれどもこれもおしゃれの為だと思えば問題無いそれに、ユノもレザーのパンツを履く事が有るから…「こんな感じなんだ」何だか、大好きな恋人にほんの少しだけ近付けたようで嬉しいそれに、普段よりも歌舞伎町にも馴染んでいる気がする今までずっと、流行に乗ったり見せる為に服装を考えたり選ぶなんて自分らしく無いって思っていたでも、何だかわくわくするそんな風に普段よりも胸を張って歩いていたら…「もしかして、今から二丁目に行くの?」「……え?僕ですか?」前を向いて歩いていたら、右側から声がした僕はひとりだし、話し掛けられる訳も無いから、と思ってそのまま歩いていたのだけど、右側の男は僕と同じペースで歩いてやたらと距離も近い少しだけ歩くペースを落としてちらりと右を向いたら、スーツのサラリーマンらしき男は笑顔で頷いた「二丁目?いえ…この先のホストクラブですけど」「ホスト?君みたいな可愛い子が貢ぐなんて勿体無いよ俺と一緒にバーに行こう」「え…可愛いって…」まさか、夜だから僕を女性だと思っているのだろうか身長だって男でも高い方なのにだけど、レザージャケットにレザーパンツなら、確かに女性でも有り得る格好だし、新宿という場所柄、色々なひとが居るから高身長の女性だって居ないとは言えない「あの、僕、男なんで…」「え?そんなの分かってるよ兎に角俺と遊ぼうよそんな格好で…誰か探してるんだろ?」辺りはひとがいっぱいなのに、男は気にする様子も無く話し掛けてくるこんなの地元の駅なら目立ちそうだけど、ちらりと周りを見てもナンパしているような男も目立つからか、誰も気にする様子も無い「別に探して無いです恋人に会いに行くので…!」「え…ホストクラブって言ったよね?まさか、ホストを恋人だと思ってるの?そんなの騙されてるに決まってるよ」僕達の事を何も知らない癖に少し年上であろう男は勝手な事を言って、更に僕の右腕をジャケットの上から掴んできた「わあっ!止めろよ!」「は?そんなレザーのパンツで…誘ってる癖に何言ってるんだよ」僕にしては大きな声で訴えて腕を引いたけれども男はまた追い掛けて僕に触れようとする流石に周りも気付いてくれるかと思ったけれど、誰も僕達を気にする様子も無いこんな光景、この場所では決して珍しく無いのだろうかそう思うともう、怖くて、それに…男の目が何だか物凄く本気だったから、慌てて走り出した「っ、おい!待てよ!」「…っ、やだ…っ!」体力になんて全く自信が無いでも、捕まったらもう…何も無いのかもしれないけど怖くて慣れない服装で必死に駆けた「…っはあ、っ……」後ろからも足音が聞こえてくる振り返る事すら出来なくて、ただひたすら走って…「…っあった!」ユノの店が入るビルが見えてほっとしたその瞬間、後ろから腕を掴まれた「ひっ」「なあ、何で逃げるんだよ、俺はただタイプだから…っうわっ!」「え……」絶体絶命だって思って目を瞑った瞬間、男が呻いて腕を掴む手が離れた「あ…ええと……」「以前会っているよねブルーの代わりに迎えに出て来たんだけど…来て正解だったね」「…思い出した!ミノ…だよね?」ユノと同じ店のホストである正統派イケメン彼と話していたら、彼に腕を掴まれた男は逃げるように走って行った『ブルー』はユノの源氏名で、普段はその名前で呼ぶ事が無いから何だか不思議だ「…あ…良かった…ありがとう」安心したら力が抜けて項垂れたそれから、走ったから熱いけれども、暦の上では春とは言えまだまだ夜は冷える今レザージャケットを脱いだら流石に早いし、まずはユノにこの姿を見てもらいたいニットの胸元を掴んで扇ぐようにしてからもう一度ミノに頭を下げて礼を告げた「チャンミンは隙が有るなあって思ってたけど…そんな格好じゃあ声を掛けてって言っているようなものだと思うよ」「え…レザーってそうなの?」レザーを着たら声を掛けられる、だなんて聞いた事が無いけれどもホストが言うのならばそうなのかもしれないいや、でも、それならば、ユノなんてもっと危ない筈けれどもユノならば何を着ていたって美人だから声を掛けられるだろうし、だからこそNO.1ホストなのだろうし…「チャンミン?どうしたの?大丈夫だよ、凄く似合ってる」「えっ、あ、ありがとう…」「うん、じゃあ店に行こう」ホスト、なんて自分には縁の無いものだと思っていたそれに、あまり良い印象も無かったけれどもユノと出会って、それは偏見なのだと気付いたエレベーターに自然にエスコートされて、久しぶりの店内に入ると一斉に「いらっしゃいませ」と店のホスト達から声が掛かるその活気に少し圧倒されながらも店内を見渡した「あ…!」思わず名前を呼びそうになって口を噤んだだって、僕の恋人は女性客の隣に座っていたからじっと見ていたらユノはこちらに気付いたようで顔を上げて、そうして目が合っただけど、何だか不審そうな顔「何だよ…」やっぱり店に来るのは嫌なのだろうかでも、もう来てしまったし、折角気合いだって入れて来たのだ「ブルーは今接客中だから、こっちのテーブルに」「あ、うん…ありがとう」ミノなら初めてこの店に来た時にも少し話をしたし、ホストだしイケメンだけど好青年、といった感じだから話しやすい促されるまま、ユノのテーブルと通路を挟んだ斜向かいのソファに案内されて座った「何を飲む?」「ええと…じゃあ、何かカクテルで」「OK、待ってて」ミノはそう言うと奥へと向かった店内は関節照明で落ち着く雰囲気とは言え、店内の女性客はこちらをちらちら見ているやはり、男性客はゼロでは無くても珍しいのかもしれない「…やっぱり暑い」本当は、ユノが着てから脱ごうかと思ったのだけど、どうせ直ぐ近くに居る走って汗をかいたから、ジャケットが肌に張り付いて気持ち悪いだって、インナーは…「よし、脱ごう」汗で張り付くレザージャケットを脱いだら、ノースリーブのタートルネックのニットだから素肌と革が直接触れると何だか着心地は良くない「…ふう、すっきりした…けど何だかスースーする」こんな服装は初めてでやはり緊張するけれども、そう言えば冬でもノースリーブのニットを着る女性をたまに見掛けるだから、これもファッションなのだろうジャケットのなかに着込めるニットだから大きめのサイズ感では無いけれどもローゲージのニットだから、レザーと違って身体のラインが出る事も無いし、袖が無い事を除けば普通だでも、腕どころか肩も殆ど隠れていないから、やはり少し心許無い「……!」何だか落ち着かなくて店内を見渡していたら、視線を感じたそれは、斜向かいに座るユノだった普段と違うおしゃれをして来た僕をどう思っているのだろうかどきどきしていたら、彼は隣の女性客に微笑んで声を掛けて立ち上がるこちらに来てくれるのかと思ったら、奥へと向かって歩いて行くから肩を落とした「…やっぱり忙しいのかなそれか、この服…似合っていないのかな」俯いて呟いたただユノに会いたくて、ユノに相応しい恋人で居たくてそれに、仕事中のユノを見たいし、浮気とか…ホストは仕事だって分かっているけれど、ちゃんと僕を見て欲しくてやって来た普段と違う服装で居れば強くなれるような気がしたけれど、やはり僕は僕で変わる訳も無い迷惑なのだろうかと思っていたら、右側から「凄く綺麗ですよ」と声を掛けられた「え…」「ブルーさんの彼氏なんですよね?」「え…あ、うん…」「地味だって聞いていたのに…男でも唆られます」「なんて、これは内緒でお願いします」と初めて見る若いホストに言われた「僕、おかしく無い?」「全く、お世辞では無いですよ」「良かった…」ホストだから、そうは言ってもお世辞なのかもしれないでも、はっきり言ってもらえて胸を撫で下ろしたそのまま当たり障りの無い事を話していたら、「チャンミン」と良く知る声「ユ……あ、じゃなくてブルー」思わず『ユノ』と呼びそうになって慌てて口に手をあてた店の客に本名は明かさないだから、ここではユノは『ブルー』歩くだけでも優雅で品のあるユノ僕のテーブルにやって来た彼の手元を見たらカクテルグラスがひとつ話し掛けてくれたホストはすっと居なくなって、ユノが僕の左側に腰掛けた「良かった、少しはこのテーブルに居られるの?」嬉しくて、スーツのスラックスの上からユノの太腿に手を置いて尋ねたホスト姿のユノは普段の少し可愛い、年下のユノと違って物凄くオーラがある格好良くて、真正面から見るのが少し恥ずかしくて、下から見上げるように恋人を見たすると、ユノは僕をじいっと上から下まで見てきて…「…チャンミン、これを飲んだら帰れ」「…え…」「俺はまだ直ぐには帰れないから合鍵は持ってる?」「持ってるけど…」「店の前にタクシーを呼ぶから、俺の部屋に先に行って待っていて」ユノは何だか機嫌が悪い様子しかも、折角おしゃれをして来たのに僕の服装に関しても何も言ってくれないさっきのホストだってミノだって、この服を買った店の男性スタッフだって似合っているって言ってくれたのに恋人であるユノは何も言ってくれないどころか何だかむすっとしている僕は恋人だし、それに今は一応客だそれなのにお世辞すら無い何だか一気にむかむかしてきた「…それ、僕のカクテル?」「え、ああ…」「ちょうだい」「…っおい!」ユノの手のなかにあった細いグラス奪い取るようにして掴んで、一気に飲み干した甘さ控えめなのは、僕の好みに合わせてくれたのかもしれないけれども流し込むように飲んだから、味は良く分からない「迷惑ならそう言えば良いだろ良いよ、もう帰るから」『来て欲しい』と言われて来た訳では無いユノは渋っていたのに、僕が店に行きたいと強請って、そしてやって来ただけど、ユノが来ても良いと言ったのに嫌がるなら最初から断ってくれた方が良かった「明日も仕事だし自分のマンションに帰るじゃあね」財布から…一万円札と迷ったけれど、しがないサラリーマンだから結局五千円札を一枚出してテーブルの上に置いて立ち上がった「チャンミン!」「……」ユノが僕を呼ぶけれど、早足で扉へと向かってエレベーターのボタンを押した振り返りたい、追い掛けて来て欲しいけれどもプライドが邪魔をして出来ないああ、しかも脱いでソファに置いたレザージャケットすら忘れてしまったそれでももう振り返るのは恥ずかしいしむかむかするし…勢いで、やって来たエレベーターに乗った「…何なんだよ…ユノのばか!」露出した肩を抱き締めるようにしてエレベーターのなかで蹲った別に褒めて欲しかった訳じゃあ無いでも、ユノの為に普段は絶対しないような格好をしたそれなのに何も言わない、どころかどうでも良さそうな顔「でも…」ホストのユノはやっぱり物凄く格好良くて、スーツ姿や普段は下ろしている前髪をセットしていたのが頭から離れないきっと僕は仕事には邪魔なんだって分かるだけど恋人の事をもっと知りたかった「…何処かで飲んで帰ろうかな」何だかまるで失恋したような気分格好良くてときめいて…でも、僕を見る冷たい目が忘れられない飲んで酔っ払ってしまえばきっと胸の痛みもましになる筈エレベーターが一階に到着して、漸く立ち上がって…外の寒さに今度は震えた「…やっぱり最悪」あんな風に店を出た手前、ジャケットを返して、なんて言えないかと言って電車は動いているのにタクシーに乗って家まで帰るだなんて勿体無い事も出来ない仕方無いから駅までノースリーブのまま歩いて帰ろう、と肩を落としたら「俺と遊ぼう」と右肩を掴まれた「え…」「そんな格好で、誘ってるとしか思えないよ」また男しかも、僕よりも身長も高いレザーが誘うだとかどうこうだとか、そんな事僕は何も知らない男同士で誘うとか、それだって意味も分からないし歌舞伎町には慣れた、だなんて思っていたけれどそんな事は全く無くて…「…無理、あの、帰るので…」「え、そうなの?じゃあ少し飲むだけその格好じゃあ冷えるよ」強引かと思ったら、心配そうにそう言って、着ていたジャケットを脱いで肩から掛けてくれた「何か訳ありに見えるけど…良ければ話を聞くよ」私服だし、ホストでも無さそうどうやら普通の男僕は女性じゃあ無い来る途中に絡んできたサラリーマンは少しおかしかったけれど、彼が特別変わっていただけだろう「…話…」「うん、俺もひとりで飲むところだったから」急に肩を掴まれたり触られるのなんて苦手だけど、皆こんなものなのだろうか勝手に触れる事を除けば何だか好青年だし、話をすればこのもやもやした気持ちも飛んで行くかもしれない仕事とは言え、ユノだって色々な女性と毎日話して笑顔を振りまいている僕は浮気なんて絶対に有り得ないけれど、男同士飲んで話すなら何も問題は無いちらりと後ろを振り返ってみたけれど、ユノの姿は見えなかったから彼に応じる事にしたランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村とても久しぶりのお話になりましたチャンミンのアルバムのビジュアルの、ノースリーブニットがとても最高で…そしてこのチャンミンのブレスレットと、冒頭に使っているTrueColorsのユノのネックレスが同じブランド、という事で大変荒ぶってしまって…書き出したら長くなったので、前後編で更新させて頂きます続きもお付き合い頂けたら嬉しいです

    • この後の更新について

      この後、いつもの7時にはとても久しぶりなのですが…「blue blue」を更新致しますと書いても久しぶりなので「何の事?」となりそうなのと、未読の方も少なくないかな?と思うので、これまでのお話をリンクしておきます。 ↓blue blue上のユノがあまりにも格好良くて膨らんでしまったお話です。それではまた、7時にお会い出来ますように幸せホミンちゃんにぽちっ♡ ↓にほんブログ村

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  • 26Mar
    • cute cute lollipop 14

      恋愛自体、最近遠のいていた過去の恋愛はと思い返してみるならば、想うよりも想われる事の方が多くて、彼女の為に何かをすると言うよりもしてもらう事の方が多かったような気がするそれに、お互い自立していて、付き合っているとは言ってもそれなりに距離を置いていたり、各々の時間を持っていたり結局、その挙句に自然にお互いに気持ちが冷めて別れる事が何度もあった思った事は、俺はあまり恋愛には向いていないという事恋に夢中になるよりも仕事に夢中になっている方が楽しいし、その結果時に『熱過ぎる』とも言われるけれど、仕事に熱くなる事が悪いだなんて思わないプライベートも充実させたら、だとかたまにはゆっくり休んだ方が…なんて上司に言われる事もあったけれど、プライベートで特別何かしたいと思う事も無いからそれも必要無くて…そんな風にして、自分は仕事を極めて年齢を重ねていくのだろうと思っていた恋愛を疎んでいた訳では無いけれども自ら求める物でも無いし、無くても困る事なんて無いと思っていた求められる事にも飽きてしまって、想いを寄せられてもそれに応える事なんて出来ない自分にとっての最優先事項は仕事だと思っていたそれなのに…「ユノさん?」「え…」「アイス、溶けちゃいます」「…っと…危なかった…」チャンミンに指摘されて初めて、コーンに入ったアイスが溶けてコーンを伝いかけている事に気付いた慌てて下から舐めたら、チャンミンはじっとそんな俺を見てくる「何?」「僕ももうひと口貰って良いですか?」「ああ、うん」答えたら、チャンミンは顔をぐっと近付けてきて、俺の持っているアイスを直接ぺろりと舐めた「…やっぱり美味しいユノさんと間接キスだから余計に美味しいのかも」「間接キスって…」「だって、今ユノさんが舐めたところなので…恥ずかしいけど嬉しいです」まるで、高校生のデートだこんなの学生の時にだって経験した記憶が無いそれなのに、もう三十を超えたのに今更こんな事で幸せを感じてしまうなんて「僕のも食べますか?ココナッツ…後少し残ってます」「すっきりしていて美味しいです」と上目遣いで言われて小さな手で持ったコーンを差し出された少し恥ずかしいけれど、もう今更だ恥ずかしいのは嫌だから、じゃ無くて幸せだから「ひと口で、残り全部食べちゃうかもしれないけど良いの?」「そうしたら、また口移しで貰うので」むしろその方が良いかも、なんて名案を思い付いたように言うチャンミンがあまりに可愛いくて、とても小さなひと口にした「ほら、まだ有るよ」チャンミンの手を掴んで、差し出されたアイスクリームを彼の口元に戻したすると、可愛い恋人はぷくりと頬を膨らませる「……口移ししてもらえると思ったのに…」「チャンミン」「え……っん…」「ほら、口移し…俺のアイスだけど」可愛いから少し意地悪をしたくて、彼が望む口移しをしなかっただけど、それが出来なかっただけで直ぐに拗ねる姿が更に可愛くて、結局チャンミンの望むように…自分のチョコをひと口食べてからキスをして口移しした「…これ、癖になりそうです夏になったら毎日しても良いですか?」「あはは、そんなにしたら飽きるかもよ?」「ユノさんとなら飽きないと思います!」悩む事なんて一瞬も無く言い切る若さや勢いや、真っ直ぐさそれらが最初はただ眩しかったそれに、仕事だから良いけれどプライベートで関わるだなんて、自分とはあまりにも違うから有り得ないと思っていた「本当に飽きなくてびっくりだよ飽きるどころか好きになるばかりなんだけど…どうやって責任取ってくれるの?」自分でも、物凄く甘い事を言っている自覚があるだけど、チャンミンの所為だ急に俺の目の前に現れて…男同士で叶う筈も無いのに無邪気に好きだと言って、俺の為に頑張るのだと言って、俺が居るから頑張れるのだと言って認めてもらえるように頑張る、だとか言って初めは直ぐに飽きると思ったアイドルなのにファンの事を見ずに俺の事ばかりでは続かないとも思ったけれども、チャンミンは確かにただの素人だったけれど、動機は一回りも上の俺に一目惚れしたから、らしいけど…『ファンの皆さんが笑ってくれると嬉しい』そう言って、寝る間も押しんで歌を覚えたりレッスンに励んだり、見た目よりも余っ程根性もあったストーカーのようなファンに襲われ掛けても、それでもアイドルで居る事を後悔したりあの男を責める事無く、ファンの前でも俺の前でも笑顔を見せた想いを寄せられて嬉しいだなんて思わなくなっていたのに、もう恋なんて必要無いと思っていたのにそんな自分のなかの凝り固まった気持ちを崩したのは全てチャンミンだ「責任は…勿論、ずっと一緒に居ますユノさんが嫌だって言っても離れる気なんて無いし…」「へえ、俺が本当に嫌だって言っても?」「……そんなの、想像しただけで辛過ぎますだから、好きでいてもらえるように仕事もそれ以外も頑張りますそれに!」「それに?」尋ねたら、チャンミンは残ったコーンに被りついて咀嚼してごくん、と飲み込んでから俺の方を向いた「それに、これからもっともっとおとなになって、ユノさんが驚くくらいのアイドルになります」「驚くくらい…それってどんな感じ?」「それは…教えたら驚きにならないから内緒です」俺からすれば、チャンミンは毎秒毎に成長しているようでいつだって眩しいそんな若い彼に、自分は相応しく無いのではないかと思った事もあるし、今だってその気持ちはあるでも、俺だってチャンミンに恋をしている「じゃあ、俺ももっとチャンミンに好きになってもらえるように頑張らないと」「…っ!」「え…どうした?」じっと見つめて言っただけなのだけど、チャンミンは目を丸くして口を噤む少し恥ずかしい事を言った自覚は有るけれど、甘過ぎただろうか急に羞恥が襲って来て、こほんと乾咳をしたお互いにアイスを食べ終わったし、そろそろ移動しようかと腰を浮かせたら…「ユノさん」右腕をチャンミンに掴まれたもう一度ベンチに腰を落ち着かせて彼の方を見たら、チャンミンは頬を赤くしている「チャンミン?」「…それ以上ユノさんが素敵になったら、心臓が持たないので駄目です」「そんな風に言うのはチャンミンだけだよ」もう、韓国では知らないひとの方が少ないであろう人気アイドルのチャンミンそんな彼にそこまで想ってもらえる事は光栄だし嬉しいだけど、俺は裏方だし年上だし…なんて考え出すと、また自分は相応しく無いのではないかと思ってしまうから危険だチャンミンはしっかりと俺の腕を掴んだまま、一度俯いた顔を上げて俺をきっ、と見てくる「ユノさんは知らないんです最近、色々な現場に行く度に、スタッフの方も、それに…タレントのひと達も、女性が皆ユノさんの事を聞いてくるんです」「俺の事を?」「…そうです、しかも、以前からユノさんを知っているひとは『前にも増して素敵になっていますよね』とか『彼女が居るか知っていますか?』とか…」「彼女…チャンミンは何て答えてるの?まさか『僕です』とは言っていないよな?」「…言いたいけど言えないから…恋人は居るから狙っても無理ですってはっきり答えてます」チャンミンはまた頬を膨らませて、「ユノさんは危機感が足りません」なんて一丁前に言う可愛い嫉妬が嬉しくて、そして…チャンミン以外の誰かに想われたとしても何とも思わないけれども、以前にも増して何かが良くなったと思われるのならば、それはまずチャンミンとの事が原因だと思うつまり、恋人が出来て幸せだと言う気持ちや浮かれている様子や、日々に張りが出ている事が滲み出ているという事で…「ユノさん、にやにやしてますモテて嬉しいんですか?」「違うよ俺ももしも誰かに聞かれたら、名前は言わないけど大事な可愛い恋人が居るってちゃんと言うよ」「なら良しです」だけど、そんな事実を気付いていないであろうチャンミンには、恥ずかしいから言わないでおこう「よし、じゃあそろそろ移動しようか」「あ…っ!」「チャンミン?どうした?」まだまだ見るものは幾らでも有るし、それに後少ししたら日も陰って来るから…この後の予定を頭のなかで組み立てていたら、チャンミンがコーンの入っていた紙をぐしゃっと掴んで両手で腹を押さえた「…アイスを食べてお腹が冷えたみたいです…あの、ちょっとトイレに行って来るのでここで待っていてもらえますか?」「え…大丈夫か?俺もトイレの前まで行くよ」「大丈夫です!恥ずかしいし本当に冷えただけだから……兎に角、恥ずかしいのでここで待っていてください」もしかしたら、今まで我慢していたのだろうか急に腹痛を訴えたから心配だけれども、「こどもじゃ無いし大丈夫です」と言われてしまったらそれ以上言えなくなる顔色は悪く無いし、言葉もはっきりしているからきっと大丈夫だろう「分かったよもしも迷ったり何か有れば連絡する事」「はい、じゃあ行ってきます」チャンミンは頷いて立ち上がり、小走りで駆けて行った「俺って過保護なのかな…」マネージャーだし、SPだし、仕事で彼を護るのは当たり前だけど、プライベートでもつい…特に最近は、チャンミンが大切だからこそ全てを知っておきたくなってしまうそれに対して年下の恋人から『必要無い』と言われる事は無いけれど、このままではいつかそんな風に思われてしまうかもしれない匙加減はなかなかに難しいけれど、彼をひとりの人間として、過保護になり過ぎないようにしようと思った「…今日…少し忙しないかなでも、明日はもう帰国だし…」この後の予定は決めて有る余裕を持ってスケジュールを組んだつもりだけど、やはり初めての場所というものは実際に訪れてみると時間が掛かるものそれも楽しんでいるから良いのだけど、これから夕方までこのアメリカンビレッジに居て、それから夜はホテルに戻って夕飯を食べて…意外とゆっくりする時間は無いのだと気付いた五日間のオフ、もうその三日目の午後半分以上が終わってしまって…明日は夕方に帰国する最終日はふたりでゆっくり過ごそうと思ってスケジューリングしたのだけど、更にもう一泊して朝に帰国、でも良かったのかもしれない、なんて沖縄の青い空を眺めて思った「チャンミンも楽しんでくれているし…良かった」オフを取得するまでは大変だったし、正直心が折れかけた事もあった折角恋人になったチャンミンともスケジュールが合わず、彼について現場に行く機会も減ってしまったそれは全て、ふたりでのオフを取得する為だったけれど、チャンミンの仕事の全てを見られなかった事は残念でもある「なんて、物凄く我儘だな」こんなにも自分の独占欲が強かったのか、と驚いてしまうでも、恥ずかしくもあるけれど、仕事以外でこんなにも夢中になれるひとが出来た事はまるで人生に於けるギフトのようだとも思うそれが、何よりも大切だと思っている仕事と結び付いている事も、それはそれで何か運命じみているのかもしれない「…で…まだかな」スマホを見て時間を確認した流石にチャンミンがトイレに立った時刻は見ていなかったけれど、十分は経っているトイレは少し離れているようで、行き来するのにも時間は掛かりそうだそう分かってはいるし、腹痛だと言うチャンミンを急かすのも良くないとは思うでも、やはり少し…いや、かなり心配『大丈夫?』ひと言だけ、カトクでメッセージを送信した一旦トーク画面を閉じて、施設のマップをインターネットで開いてこの後向かう場所を確認して…「…いや、駄目だ気になる」もう一度トーク画面を開いてじっと見ていたら、俺のメッセージはどうやら読まれたようで…「…良かった…」我ながら盛大に安堵の溜息が出てしまったチャンミンからの返信には『大丈夫です、後少しで戻ります』そう書かれていて、それだけでほっとした『早く戻って来て、寂しいから』そう無意識で入力してしまって、慌てて消去した結局、格好付けてしまって『ゆっくりで大丈夫だよ、身体が心配だから』なんて返信してから後悔した「いや、良いんだけどでも、来ないでって言われたのにトイレに行くのもだしなあそれに、違うトイレに行ったり行き違いになったら大変だし」独り言を呟きながら、結局その後更に十分以上待つ事になったけれども、ゆっくりで良いと言ったし腹痛はどうにもならないし…見知らぬ土地でひとり、と言うのは思っていた以上に心細くて会いたくて堪らないと思った時に漸くこちらに向かってくるチャンミンの姿が見えた「チャンミン!」「ユノさん、お待たせしました……わっ!」「…遅い」立ち上がって、チャンミンがこちらに来るよりも先に駆けていって抱き締めたチャンミンの腕が背中に回されて「ごめんなさい」と囁く「…いや、チャンミンは悪く無いよ腹は大丈夫か?無理してない?」「…ええと、はい、もう大丈夫です!元気です」身体を離したら、チャンミンは満面の笑みを浮かべていたから心から安堵した「ユノさん、もしかして寂しかったですか?」「…そんな事無い、と言いたいけど…折角ふたりきりの旅行なのにひとりになるなんて寂しいに決まってるだろ」「……可愛い、ユノさん、大好き♡」ああ、結局弱い情けない部分を出してしまったけれども、チャンミンが喜んでくれているから良しとしようそれに、この後は俺だって良いところを見せる予定だから「よし、じゃあ…もう少しこの辺りを探索しようかお土産とか、欲しいものが有れば見てみよう」「……お土産…ええと…じゃあ、沖縄っぽいものを探したいです」チャンミンはにこにことご機嫌で「食べ物が良いけど、何なら持って帰れるのかなあ」なんて言っている顔には似合わない、と言うか想像出来ない大食いしかもさっきまで腹が痛いと言っていたのに…「もう完全に腹は治ったの?」「え…お腹?…っあ、はい!勿論!」チャンミンはまるで、もう腹痛の事なんて忘れてしまったように笑って俺の手を握った「行きましょう、確かあっちにお土産の店が有りました」我慢している風も無いし、やはり心配は要らなさそうだふたりで手を繋いで施設内を巡る事にした店を回って土産を探していたら、時間はあっという間に過ぎていったチャンミンは言葉通り食品ばかり見ていて、昼に食べた沖縄そばのセットや、アイスクリームの店でも使われていた沖縄のクッキー、それに普通の日本の物よりも辛いという唐辛子の調味料だったりを選んだ他にも、雑貨や衣類の店で夏に着れそうなシャツやTシャツを安く購入出来たそれに…「これ、衣装にも使えるかなあと思って…」「衣装にするの?もう今はちゃんと、チャンミンに合う一点物で作成出来るのに」アメリカンな雑貨や衣類を取り扱う店でチャンミンが両手に持って広げたのは、赤いチェックのミニスカート仕事熱心だなあと思いながら右側のチャンミンを覗き込んだら、彼は少し視線を彷徨わせてから上目遣いで俺をじっと見つめる「…本当は…今夜とか明日とかに着て…ユノさんが可愛いって言ってくれないかなあと思って」「え…」「衣装って言ったのは恥ずかしくてこれ…僕が履いたら駄目ですか?」「…駄目な訳無いだろ」絶対に可愛いに決まっているんだからとは言わなかった購入を決めた雑貨を入れているカゴにチャンミンの手から取ったスカートを入れたら、チャンミンは「やった!」と言って俺の腕に抱き着いてきた当たり前に恋人として過ごせる異国の地居心地が良過ぎて、帰国後に普段の距離感を保てるか、少し心配になってきた…けれども、それも嬉しい悩みだ時間はあっという間に過ぎて、夕方の五時をまわった暖かいとは言え、季節はまだ三月日没の時間は夏のように遅くは無い「チャンミン、疲れて無い?」「大丈夫です、楽しくて楽しくて…」「良かった、じゃあ…後一時間もしたらホテルに帰らないと夕飯が有るから最後に行きたいところが有るんだ」「…っあの…僕も…」「え…」勝手にスケジュールを組んでしまっていたけれど、どうやらチャンミンにも行きたい場所があるようだそこを回っても、二十分…いや、三十分残っていれば問題無いどきどきしながら聞いてみたそうしたら…「あの、ここに来た時に見えた観覧車…ユノさんと一緒に乗りたいなあって思って…駄目ですか?」「…駄目じゃ無い最初から行くつもりだったんだ夕暮れを一緒に見たくて」どうやら、サプライズにもならないサプライズだったようだ確かにアメリカンビレッジに到着した時から見えていたし、仕方無いでも、サプライズにならなくてもチャンミンは「同じ事を考えていたんですね」なんて言って無邪気に笑っているから良しとしよう「行きましょう、早く…ね?」「あはは、元気だな」「だってこんなに楽しいデート…一秒だって無駄に出来ないです」「何もしていなくてもユノさんと一緒なら無駄になんてならないけど」と小さく舌っ足らずに言う、今だけは俺だけのアイドルサプライズなんて苦手だ恋人の為に何かをする事もだけど、俺なりに色々と考えてきたから、もっとこの先も喜んでくれたら…それが自分の幸せだ、なんて我ながら甘い事を考えたランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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    • 咎送り 31

      我が領地に戻って来て数日、チャンミンはたまに何処か遠くを見るような、何かを懐かしむような顔をしていたそれは俺がそう感じているだけかもしれないけれど…『どうした?』と尋ねても『何も無いよ』と微笑んで俺に抱き着いてくるそうして夜は積極的に俺を求めて『離れないで』と訴える離すつもりなんて無いし、誰にも手渡すつもりも無い言葉で、身体でそれを伝えると漸くほっとしたような顔をするけれども、翌日にはまた不安げな顔をする俺はと言えば、生まれ育った我が領地に戻って来て…緊張はしていなかったつもりだけれど、やはりそれなりに緊張していたのだと気が付いた馴染みある故郷の空気はやはり美味いし、客人として饗されるよりもまだ跡を継ぐ前だから、とある程度自由に過ごせる事がとても有難いと思うチャンミンの父から、俺の父へ宛てられた手紙は開封してから俺達で封を閉じて渡したなかを見た事は言わなかった幾ら封をし直したところで一度開封した事は見れば分かるし、父親達は俺達が手紙を見る事すら想定の範囲内だったろうからだから、敢えて俺達からは何も言わなかったけれども、父は俺達に特別『隣の領主はどうだった』だとか尋ねる事も無く、今日に至るチャンミンの父が俺の父に宛てた手紙の内容も、その冒頭に俺達…つまり、息子達への言葉が紡がれていたそれは読んだけれど、愛し合っているという父親達の互いへの言葉を読む事は気が引けてしまって直ぐに手紙を閉じただから、結局のところ何が書かれていたのか、は殆ど分からないのだ「チャンミン、風が強いけど大丈夫か?」「問題無いよ早く海を見たかったから…もう何だか懐かしいほんの少し故郷に帰っていただけなのに」「…そうか俺も、チャンミンを連れて来るまではあまり海に行く事は無かったんだだから何だか懐かしいよ」チャンミンとふたり、人気の無い砂浜を歩いたここは整備されていないから景色を眺めるにも不向き船着場でも無くて、たまに貝や小さな魚を探しに民がやって来る事もあるらしいけれども、不要になった物が棄てられていく場所でもあるから、やはりこんな所にやって来る者はあまり居ない、という砂浜「我が領地の事を言うのは良くないかもしれないけれど、あまり綺麗では無いないつもの船着場の方が良かったかなでも、此処の方が人目に付かないから」隣に立つチャンミンの腰に右手をまわして、海風から守るようにぐっと抱き寄せた彼は俺のシャツをそっと掴んで身体を擦り寄せてくる俺を見上げる瞳が柔らかく弧を描いて、それだけで心臓が飛び跳ねるように高鳴る「綺麗じゃ無くても良い人目が無ければこうして恋人として居られるから」「チャンミン…」「人目が有れば、僕は隣からの人質だユンホと居たって、次期領主の慰みものか玩具だと思われるだけそれでも良いと思っていた、自分達が分かっていればでも…」「でも?」身体ごとこちらを向いた恋人は、背中に両腕をまわして俺を抱き締めた潮を孕んだ海風の匂いがチャンミンのくるりと跳ねる髪の毛から漂う「今は…我慢したく無い気分なんだ」「…それは、父上達の事を知ったから?」俺の言葉にチャンミンは頷いた俯いていて顔が見えないから、上半身を少し逸らしてチャンミンの頬を両手で包みそうっと持ち上げたチャンミンの大きな色素の薄い瞳は潤んでいる「泣いているの?」「…海風が…潮が目に滲みただけだ」「そう」「…んっ…」瞼を舐めるように口付けしたら、ぎゅっと瞼が瞑られたその拍子にぽろりと涙が一筋零れ落ちる「涙が塩っぱい」「海風の所為だ」強がっているのか視線を逸らすチャンミンだから、更に唇を近付けて、瞼に、鼻に、頬に、額に、それに唇にどんどん唇で触れていくチャンミンは擽ったそうに肩を竦めて身を捩る「確かに海風の所為かもしれないなこの間、我が領地に帰ってくる馬車のなかで舐めた涙の方が塩っぱく無かったから」「…っ、泣いてなど…!」「俺の前では隠す必要も恥ずかしがる必要も無いチャンミンを全部見せて欲しいんだ」かあっと頬を赤く染めるチャンミン益々身を捩り腕のなかから逃れようとするから、顔を逸らした事で目の前に現れた項に唇で触れた「…っあ…」「チャンミンの全ては俺のものだろ?勿論、俺の全てもチャンミンのものだ」「…っふ……ん…」何度も何度も吸い付いて痕を付けている首元シャツで隠れるか隠れないか…そんな際どい位置に付けては、自分達が繋がっている事を視覚で確認する「なあ、思っている事は全部話して欲しい良い事じゃ無くても…これからの事をふたりで話し合って決めるんだろ?それなら、思っている事は打ち明けないと…」「…ん、…っ…」細い腰を撫ぜて、そこから背中の形をなぞるように掌を上に滑らせていく薄い絹のシャツ越しだと、まるで素肌に触れているようで…けれども素肌では無いのがもどかしいチャンミンはふうふうと息を荒くして、俺のシャツの胸元をぎゅうっと掴み心地良さをやり過ごしているようだ「ユンホに思っている事を言えば…」「うん…」「弱くなってしまいそうなんだ」そう言うと、チャンミンは顔を上げて俺を真っ直ぐに見たその目は弱いだなんて思えないだけど、口調は弱々しくて、そう言えば我が領地に戻って来てから数日、ずっとチャンミンはこんな様子だ「後悔をしているのか?別れを告げて来た事を」「違う!そうじゃ無い」「じゃあ何を…」痛いところを、本音を突かれたからチャンミンの声が荒げられたのかと思った故郷に、隣領地に一旦戻った事で、次期領主という確かな地位と未来、それに領地や民に家族が恋しくなったのかと思ったけれども、チャンミンは小さく首を横に振る「違う、ユンホしか考えられないそれは何も変わらないただ、我が領地で、慣れ親しんだ地でそれを決意していたのと、此処で…ユンホだけを選ぶと思う事は違うだって、まだユンホの父上…旦那様とは何も話をしていない」「それは、父上が何も尋ねて来ないから…手紙だって開けたのに」「だから、ユンホも何も言わないのか?そのままずっと時が流れて春になれば…僕が覚悟を決めたって、故郷に帰されるのか?」チャンミンは堰を切ったように話し出したそれがきっと、チャンミンがここ数日暗い表情をしていた理由なのだろう、と漸く気が付いたそして、俺は…「…ユンホは、此処に居れば安心だろう?だから今、話さなくとも良いと思っているでも、僕にすれば…ユンホが今誰か他の女性に心惹かれたり、そうで無くても婚約の話が進めば…それだけで未来が無くなるようで怖いんだ」「チャンミン、でも…父上達は俺達が結ばれる事を願っているのだろう?」「だけど、まだ旦那様には直接何も聞いていないじゃあないか」「…っ…」返せずに固まってしまったら、チャンミンは眉を下げて俺を見たチャンミンは俺の弱さを分かっているのだいつでも話が出来る、だとか父が何も言って来なかったから、とか父親達が俺達が結ばれる事を考えているから、とか…そうやって、偉大な父と対峙する事を恐れていたのかもしれない…いや、結局、俺は今の地位を壊す事が怖いのだろうか「ユンホは、僕達が将来どうなればずっと一緒に居られると思う?」「…それは…」何度も考えているどうすれば良いのかを一番簡単に思える事は、俺が領主になって、チャンミンを愛人のように手元に置く事だけど…例え、愛し合いながら結ばれ無かった父親達が俺達の関係を後押ししたとしても、『元』隣の跡継ぎを俺が従えるだなんて政治問題に発展しかねないふたつの領地の関係性は揺らいでしまうだろうから、現実的では無いそれならば、俺もチャンミンも互いに領主になる事を放棄するけれども、それが例え出来ても…同性愛は禁忌なのに、居場所なんて無いそもそも、立場を放棄する事だって望んで出来るものでは無い犯罪者になったり、余程重い病気や命に何かが無ければ…「考えて無いんだろ?」「そんな事は無い!俺はチャンミンを選ぶと決めている」「でも、何も案なんて無い僕は…もう以前から考えているのに」「…何を…?」尋ねたら、チャンミンは俺の腕から抜け出て海に向かって歩き出した「チャンミン!」「……」少し早足で真っ直ぐにそうしたら、直ぐに寄せる並に彼の革の靴は濡れる一瞬、びくり、と身体が震えたような気がしたけれどもチャンミンはゆっくりと一歩ずつ前へと進む「チャンミン!戻れ!」後ろから追い掛けて呼び止めたけれどもチャンミンは足を止めないここは浅瀬だと知ってはいるけれども今は満潮だしかも、風は少し強くて波も小さくは無い「…海の向こうには…」「え…」潮風に半分攫われながらもチャンミンの声が届いた彼は膝下まで海水に浸かり、ぎりぎり濡れていない砂浜に立つ俺を振り返った「海の向こうには、別の国が有るのだろう?其処には…僕達が愛し合ったって許される国が有るかもしれないのだろう?だから、僕は……っ!」「チャンミン!」しまった、と思ったチャンミンの言葉を捉えるのに夢中で、彼がもう膝下まで浸かっている事も、波が低く無い事も頭から抜けていたのだチャンミンの後ろから彼を襲った波は決して大きなものでは無いチャンミンの膝に届くだけのものけれども、水の力は大きくて、チャンミンはぐらりと傾いて…「…っチャンミン!」走りながら靴だけ脱いで、前に飛び込むようにして海に潜った引き潮に乗って直ぐに前に進んで、そして…「……!」「…っはあ!っふ…っ」まだ浅瀬だったからチャンミンは波に攫われる事無く…そして、何とか崩れ落ちながらも足を付けて立っていたから、直ぐにしゃがみ込んだチャンミンを助ける事が出来た「海水を飲んでいないか?口に入っていたら出して海の水は決して飲むものじゃあ無いんだ」「…っげほっ!、っ…はっ、…」肩を抱いてゆっくりと砂浜へと戻りながら、チャンミンに声を掛けた彼は苦しそうに咳き込んで、それから…「…塩っぱいし不味い…」「チャンミンは海の恐ろしさを知らないんだ心配だから厳しく言う海は簡単に渡れるものじゃあ無い今、分かっただろ?俺が居なきゃ、チャンミンは…!」まだ小さく咳き込むチャンミン砂浜に戻ってから強く抱き締めた身体中から潮の匂いがするまだ我が領地は少し暑いくらいけれども海水は冷たくて、チャンミンの身体は直ぐに冷えていく「昔から幾度と無く…海が荒れて民が犠牲になった事も有る穏やかな顔だけを見ていたら想像つかないだろうけど…海は恐ろしい場所だと聞いている」「…僕、知らなくて…」「分かっている俺が何度も見せて綺麗な事しか言わなかったから」チャンミンは小さく震えて、俺に縋り付くように抱き着いているよく見ると靴は無くて…流されてしまったのかもしれない「…チャンミン、これを履いて」「え…あ、でもこれは…僕が靴を履いていたらユンホの顔が立たない」「街で買うよ、ふたり分それ迄はチャンミンが履いていてくれ…心配だから」「…ごめん」俯いて涙を流すチャンミン彼は悪く無いだけど、命を危険に晒した事は許せないだって、俺を置いていく事になるのだから「海…俺達だけじゃあ無理だでも…船は海を航海している本当にそんな事が出来るかは分からないでも、誰も俺達を知らない土地に行けば…いや、それしか俺達が共に未来を過ごすなんて無理だろうな」濡れて震えるチャンミンシャツの上に羽織っていた薄手のジャケットをチャンミンに羽織らせたそれでも、シャツが濡れていたら寒いだろうけど…「シャツも街で買おう全部着替えてしまえば良いよ」「…どうしたのかって思われるかな…」「あはは、問題無い次期領主が巫山戯ているとしか思われないよ兎に角、チャンミンが無事で良かった」それに、彼を追い詰めたのは我が領地に帰って来た事で安心していた俺だ俺だって、隣領地で過ごしている間は常に緊張していたし、心許無い気持ちだったのに…ただでさえ、人質のように我が領地にやって来たチャンミンは、更に、だろう「帰ったら湯を浴びて温まって…それから、今日は俺の部屋に篭ろうか」「…夕食は?」「要らない、チャンミンを抱きたい」「僕達だけ食卓に現れなければ皆に知られる」「今更だ、それに隠すつもりも無い…そうだな…チャンミンが明日も元気なら、明日父上と話をしよう」くしゃみをして肩を震わせるチャンミンが少し心配だけれども、これで海の恐ろしさも分かった筈俺達が選ぼうとして、そして俺達の父親達が息子達に背負わせようとした彼らの望みそれはあまりにも…まるで、考えれば考える程夢物語のようだそれでも、チャンミンを手放す事なんて考えられない「海…もう近付きたく無いんじゃあないか?」砂浜を後にして、チャンミンに尋ねたそうしたら…彼は一度だけ海を振り返り、そして俺の濡れたシャツをぎゅっと掴み身体を寄せたけれども…「海が怖いと知らなかったでも、それでも…ユンホと離れる方が怖い」寒さなのか、それとも海に飲み込まれた事を思い出して、なのか震えながら、けれどもはっきり言ったチャンミンは強いだから、そんな彼だから俺は惹かれて止まない…ふたりなら、未来を見る事が出来るかもしれない、と思うのだランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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  • 25Mar
    • Drowning in love

      トラウマ、だなんて言ったって、もう良いおとなだからと理解されない事なんて分かっているでも、怖くて仕方無くて踏み出せ無かった人生に於いて必ずしも必要では無いスキルだけど、必要に迫られてどうしても克服せざるを得なくなったのだ「ここか…痛い出費だけど仕方無い…」入口の前に立って見上げたのは、絶対に、近付きたくも無いと思っていた場所僕にとってのそれはつまり…スイミングスクールだ二十五にもなって今更カナヅチを克服しなければならなくなるだなんていや、無理矢理避ける事も出来たかもしれないけれども、今後の仕事を、社内での人間関係を円滑にしていく為にもこれは必要な事「…はあ…」溜息を吐きながら、けれどもぐっと拳を握って覚悟を決めて扉を潜った『東方スイミングスクール』そう書かれた受付で、スタッフの女性が笑顔で受け付けてくれた僕が予約したカリスマだと言う水泳の講師も何だかとてもイケメンだったけれど、この女性も物凄く美人だこんな事を言ったらセクハラだと言われてしまうだろうけど、インストラクターがこんな女性なら更にやる気が出るのに…なんて思ってしまった「…いや、駄目だろ!」ぶんぶんと首を横に振って、オンラインで登録した内容を伝えて改めて会員登録をした「では、シムチャンミンさん…早速これからインストラクターと初回のレッスンがあります水着は持って来ていますか?」「あ…はい、ネットで見たので…」「分かりましたインストラクターがチェックして、もしも泳ぎに適していないようでしたら次回は別の物を準備して頂くか、もしくはレンタルも…」「いや、レンタルは流石に…一応競泳用、と書いてあるのを購入したので大丈夫だと思います」そう伝えたら「でしたら問題無いかと思います」そう、美貌の受付女性は微笑んで、僕に紙の館内図を渡したロッカーや、会員が使える休憩室、付属のジムここはスイミングスクールだけど、運動後に身体を温める為の簡単な温泉まで有るらしいまだ新しい施設なのだけれど、インターネットで見てみるとインストラクター達の評判が兎に角良かった顔が良い、という下世話な口コミも多かったのだけど、それだけで無くて実力が有るらしい主に成人向けのここは、長く水に親しんで来なかったおとなを泳げるようにする事、そして運動不足を解消する為の水泳に力を入れているらしい「確かに、僕はまあ、理由があって泳げないけど…おとなになって泳げなかったら克服する機会なんてなかなか無いよね」館内図を見ながらロッカーに向かい、綺麗で広いロッカーにリュックを入れたインターネットで購入してそのままだった水着それを袋から取り出して、下着のような面積の小ささに正直溜息が出た女性インストラクターが良かった、なんて思ったけれど…自分の身体にも、男としての部分、にも自信なんて無いから男のインストラクターで良かった水着も下着と一緒、と思ったのだけれど、普段穿いているボクサーパンツよりもつるりとした生地の水着は形こそボクサーパンツのようだけれど…「え…これ、ちょっと密着し過ぎじゃ無いか?」いざ穿いてみたら、中心の部分が何だかおかしいいや、これで正しいのだろうけど、妙に形が分かるのだ見下ろすと気になって仕方無いけれども、確かに袋には競泳用水着と書いてあるし、おとな用だし…特に僕の、が大きな訳でも無いきっと、僕が水着に慣れていないからだろうし、形が変わる事でも無ければ何も問題は無い筈それに一対一のレッスンのインストラクターも男レッスン生に親身になってくれると評判だ「…うん、大丈夫…」自分で見下ろすとどうしても気になるけれど、ロッカーに備え付けられていた鏡で見たらそれ程目立つ事も無いそれよりも、運動不足で貧相な身体の方が目立つくらいだでも、それも、今日からのレッスンで泳ぎは勿論の事、筋肉も付けていきたい人気の無いロッカーで「よし!」と気合いを入れてプールへと向かったこのスイミングスクールを選んだ理由のひとつは、プライベートレッスンに特化しているという事勿論一対一、だけでは無いのだけど、プラス料金でプライベートレッスンを選べば、プールさえも他のインストラクターや会員と会う事無く居られるつまりは、二十五メートルや五十メートルのプールが幾つも有るそして、通常レッスンでもそれなりの値段でも…安くない、どころかただのサラリーマンの僕からすれば高い値段を払ってでも、必要以上に誰かに知られたり見られたく無いだから、ここはうってつけだったのだ「……失礼します、あの…今日からレッスンを受けるシムチャンミンです」プールの扉を開けて入ったら、二十五メートルプールの外には誰も居ないインストラクターが待機していると聞いていたのに…「え…僕、間違えた?」扉を閉めてきょろきょろとしていたら、水の音がして…「…っえ…」「……君がシムチャンミン?名前も、だけど…随分可愛い生徒が入って嬉しいよ」「は?可愛いって…」向こう側から泳いできて、僕の足元からざばっと水面から身体を浮かせたのは、インターネットで見ていたカリスマイケメンインストラクターだ戸惑っていたら、そのまままるで海の生き物のように軽々とプールサイドに上がって、黒い濡れた髪の毛を片手でかき上げて微笑んだ「インストラクターのチョンユンホだ指名してくれたんですよね?ありがとうございます」「あ…はい…宜しくお願いします」「うん、じゃあ、はい」「……?」目の前に立った男は写真で見るよりも数倍イケメンだったこのインストラクターをインターネットで指名したのだけど、実は人気で抽選だったらしくて…申し込んだ数日後に、僕が当たったのだと連絡をもらった目の前に立ったインストラクターは笑顔で右手を差し出してくる身長はどうやら変わらないだけど、水泳をしているからか肩が大きくて、身体付きも全体的に大きくて…だけど、暑苦しいような事は無くて、均整の取れた体型、と言った感じ「シムさん?」「え…ええと、この手は…」「あはは、握手に決まってるだろシムさんは色々と可愛いんですね」敬語だったり砕けていたり、何だか距離感が近いでも、嫌じゃ無いのはこの男にどこか品が有るから「…宜しくお願いします」「うん、それはもうさっき聞きましたよ」手を伸ばしたら、ぐっと握られたきっと、歳も同じくらいだろうだから少し緊張は解れたのだけど…「で…シムさんのそれはわざとなんですか?」「え…何が…」手を離したチョンさんがちらりとこちらを見るその視線を追ってみたら…「ちょっと!何見てるんですか!」「え?だってそんなの…見てくれって言っているようなものですよ」「わっ!ちょっと!触るなって!」「大事なところは触って無いんだから大丈夫ですよ」大丈夫じゃあ無い、距離が近過ぎる僕の水着のウエスト部分を指で引っ張られたそうしたら、ただでさえ張り付いているような前が更に張り付いたまま引っ張られるようで何とも言えない嫌な感覚「やっぱり一枚だこれ、本気でやってるの?それとも誘っているとか?」「え?は?」「ああ、すみません、驚いて…サポーター…いや、インナーって言えば分かりますか?普通はそれを下に穿くんですよそうしないとこんな風に…丸分かりだから」「…っ…!」手は水着から離れたけれど、チョンさんの視線は思い切り僕の股間にある男のそんなところ…気付いたって見ないで欲しいのにと言うか、見たくないだろうに「まあ大丈夫です、俺しか見ないので…だから、次回からもこのままでも良いですよ」「いや、もう今日はちょっと具合が悪いので…」そう言って背を向けてこのまま逃げてしまおうと思ったのだけど、腕をぐっと掴まれて逃げられない「安くないレッスン代は?シムさんの都合で帰っても返金は出来ないですよそれに、割安だからと十回以上のレッスンのパックを組んでますよね?」「それは…」「まあ、たまに穿かない方もいらっしゃいます男同士だし、俺しか居ないし…もしもどうしても気になるようなら、次回から俺のを貸しても良いですよ」そう言うと、「ほら、俺は今サポーターを穿いていますが…分からないでしょ?」と堂々と中心を指差して見せてくる水着の上からとは言え、恥ずかしい…いや、形が分かるような僕の方が恥ずかしいのだけど「兎に角、このままで大丈夫です一緒に泳げるようになる為に頑張りましょう、ね?」「…はあ…」やはり距離が何だか近い、と言うか近過ぎるだって、左隣に立って僕の腰に手を回してくるからだけど男同士で気にする事の方がおかしいし…「二十五にもなって泳げないとか…情けないですよね」「いいえ、全くそれに、今は不安かもしれませんが、水は怖くないです…なんて、今はそんな事無いって思うでしょうが…シムさんなら出来ますよ」僕のトラウマも知らないのにって思うでも、にこりと微笑まれたら大丈夫な気がしてくるから不思議だ「今日はまず、水に慣れるところから始めましょうここは水深も浅いので立って歩けます」「…早速泳いだり顔を水につけたりとか…その、そういうのが怖くて出来なくて…」「成程、色々な事情で泳げない方は少なく無いですよ胸から下なら濡れても大丈夫?」「…はい」少しふざけた男なのかとも思っただけど、多分、『水』と聞いて顔色の変わった僕をしっかり見ているようだトラウマを悟られるのも、水が怖いと知られるのも嫌だったでも、このひとになら晒しても大丈夫かも、と思う「あの、チョンさんって何歳なんですか?」「俺に興味が有るんですか?」にやりと笑うから、慌てて首を横に振ったら「悲しいな」なんて、冗談を言う「その!年…近いのかなって僕は二十五で…僕が上なら別ですけど、そうじゃ無ければ敬語じゃ無くて良いです」「俺は二十七じゃあ、お言葉に甘えて普通に話しても良い?」「…はい、その方が緊張しないし…って、でも…ちゃんと敬語にしない駄目ですか?」「いや、ここはふたりだけの空間だから」まるで太陽のように微笑むチョンさんは何だか眩しい克服しなければならない事、と思うと怖いでも、チョンさんとなら頑張れそうな気がする「インナーの事は気にしないでチャンミンは可愛いしそのままで大丈夫だよ」「……ひと言多いです」「あはは、冗談だよでも、本当に穿かなくても良いんだよ俺はその方が…いや、何でも」「え…」何か言い掛けて止めたから聞き返したけれど、チョンさんはまた髪の毛をかき上げて微笑むこんなの、女性なら絶対に恋に落ちるだろうし…このインストラクターの倍率が物凄いのも納得だ「多分、チャンミンは…ああ、ごめん、普通に名前で呼んでいたけど大丈夫?」「…別に良いです」「そう、良かった」腰から手は離れたけれど、妙に距離が近いそう思うのも水着で恥ずかしいからなのだろうか「チャンミンはきっと、まだ水着に慣れていないから恥ずかしいんだと思うよ俺なんて、仕事の時は殆ど一日中この格好そう思うとなかなか凄く無い?」「…っ、ふふ、確かに…殆ど裸ですよね」「そう、でも水着だから良いんだだから、チャンミンも直ぐに慣れるよ男同士だし、楽しくやっていこう」直ぐ傍にはプールがある今日これから、苦手な水に入る普段ならそれだけでも怖いって思うのに、今は何だかそれが無いそれに何より、僕の元にまるで人魚のように泳いできたチョンさんがあまりに綺麗で…僕も、あんな風に水に浮く事が出来たら良いのにと思ったランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので、続きをと思って頂けたら足跡と応援のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村Drowning in love 恋に溺れること突発SSでしたTwitterの鍵アカウントを見てくださっている方はご存知かも、なのですが…最近書きたくて仕方無いお話のうちのひとつで、頭のなかで膨らんでしまったので我慢出来ずに冒頭だけ出してしまいましたまだまだ先まであるので、また機会が有れば登場させられたら良いなあと思っています読んでくださってありがとうございます

    • Fated 89

      一夜開けてもヒートの状態が収まらなかったチャンミン彼をひとりにする事は心配だったけれども、まだチャンミンの秘密も、本当の事も何も事務所関係者や仕事の関係者に伝えていないのに、俺まで急に休むだなんて事は出来なくて、チャンミンをひとり彼のマンションに残してきた幸い、と俺が言うべきでは無いのかもしれないけれども、目覚めたチャンミンのヒートの状態は夜中よりは落ち着いているように見えた…いや、きっと彼は発情して辛いままかもしれないけれど、俺に及ぼす影響は少なくともましになっていたつまり、彼のフェロモンに何とか耐えて理性を失う事無く居られた「…良かった…」事務所に到着して、車を降りる前にスマホを見たら出発前に送信したカトクに返事があった『何か有ればいつでも連絡して』そう送信した事に対しての返信はスタンプひとつチャンミンが良く使うキャラクターが頷いてOK、と言っているものだスタンプなんて指先ひとつで送信出来るから…実際のチャンミンの状態は分からないだけど、それでも連絡が取れている事が安心材料だった「『もしも誰かに…アルファに、と思ったら…絶対に俺を呼んで』大丈夫だと思うし信じてる、でも…」メッセージを送信して呟いたヒートはオメガの本能だ妊娠出来る彼らが、アルファの優秀だと言われる遺伝子を求めて身体が本能的にアルファを求めてフェロモンを放出するヒートになったオメガも、そしてそれを前にしたアルファも感情なんて関係無く求め合う事になる「……無いって分かってる、でも…」チャンミンの前では取り乱したり彼を余計に不安にさせるような姿は見せてはいけないと思い冷静で居たけれども、本当は怖いチャンミンがもしも誰かを呼んだり、例えばもしも来客が来て迎え入れて…オメガ同士であれば何も起こらないけれども相手がアルファならば、言い方は良くないけれども据え膳だとか餌が目の前にあるような物俺はまだ、彼のヒートを数回経験しているし、『運命』のオメガのヒートにも何とか抗う事が出来たけれども自分では無いアルファがチャンミンのフェロモンに触れて我慢出来るとは思えない相手がベータであっても、ヒートだと…オメガのフェロモンに引き摺られてしまうかもしれないベータならば項を噛んで番にされる事は無いけれども、アルファならば抱かれるだけで無く番になってしまうかもしれないそうしたら、俺とチャンミンはもう…「…っ…」ぶんぶんと頭を振って悪い考えを追いやったもう車を降りなければならないから、『誰かが来ても扉を開けない事絶対に何か有れば俺を呼んで』そう、もう一度カトクを送って車を降りたマネージャーにはぎりぎりになってしまったけれど、朝チャンミンが起きる前に連絡を入れておいたその時点では起きたら仕事に出れるかもしれない、とも思っていたけれど…流石に疲労も溜まっているだろうし、普段ならば俺よりも先に起きるチャンミンがなかなか目を覚まさなかったから、今無理をするのは良くないと思ったのだもしもチャンミンが目を覚まして体調が良さそうだったり、もしくはヒートが収まっていれば…と思ったけれど、結果、程度はましになっていたけれど彼のヒートはまだ収まっていなかった「ユノ、その傷はどうした?歯型?」「え…ああ…寝惚けて噛んだみたいですすみません、血は出ていなかったし二、三日で治るかと…」スウェットを着てダンスのレッスンをしている間も、なるべく手の甲は袖を伸ばして隠すようにしていただけど、休憩に入り左手で額の汗を拭った時にマネージャーに見られてしまった本当は、昨夜チャンミンを抱いていた時に項を噛みたくて仕方無くて…耐える為に自分の手の甲を噛んだのだ見つかってしまったのに隠すのも不自然かと思い、笑いながらちらりとマネージャーに見せて、それから手を下ろして彼の視界に入らないようにした「…俺はベータだから分からないけど…もしかして、誰かオメガと何かあった、とかじゃ無いよな?寝惚けて噛むなんて…」「そんな訳…何も無いですよ」確かに、寝惚けて手を噛むだなんて我ながら無理があるだけど、本当の事なんて言えないチャンミンがオメガになった、という事はふたりで話をして事務所にも告げよう、と決めたけれども、それはあまりに繊細な話で俺が勝手に話す事では無いかと言って、誰かどこかのオメガと関係を持った、とか実はオメガと付き合っている、なんて事も簡単には言えないだって、オメガと関係するという事は番になる可能性があるという事俺達は仕事で多くの女性ファンから支持されているから、簡単にパートナーを作るだなんて、隠し通す事が出来ない限り事務所も簡単には許してくれないだろう「そうか…なら良いけど、寝惚けて、は気を付けないと痕が残ったら大変だからなそれと、ユノ…チャンミンは大丈夫なのか?と言うか昨夜は泊まっていたのか?」「え…ああ、そうですねチャンミンの部屋に泊まっていて…熱は無いようだし風邪でも無さそうなので…疲労だと思います」独断で休ませて申し訳無い、とマネージャーに謝ったら、彼は「ユノの判断なら問題無いよ」と言ってくれた「それにしても…最近、以前にも増して仲が良いみたいだないや、前が悪かった訳じゃあ無いけどメンバーの仲が良い事は良い事だよ」「…そうですね」何とか笑顔を作るのが精一杯だったマネージャーは何も知らない俺達が『仲が良い』なんてものじゃあ無くて、アルファとオメガで…番になる事や何れはこどもを、と考えているなんて事をだって、チャンミンは元々ベータで、今でもそうだと思っているひとが殆どアルファとベータだから、何が起こる訳も無いでも…チャンミンはオメガだオメガは男性アルファを無意識に誘惑する場合によってはベータでもオメガは妊娠出産が可能だそして、俺とチャンミンはアイドルとして主に女性ファンの前で歌って踊って…彼女達に支えられている女性ファンは、男性アイドルがオメガだと知れば一体どう思うのだろうかいや、ファンに全てを話す必要は無いのかもしれないだけど、それならばどこまで誰に真実を話すべきなのかどうすれば俺達ふたりの…プライベートでの未来は拓けるのか何が正しいのか分からなくなる「ユノ?」「…っあ、すみません、少し考え事を…」「良いよ、今は休憩中だしそれよりユノの体調は?チャンミンの分まで、なんて言って身体を壊したら元も子も無いから」「俺は大丈夫です、ありがとうございます」マネージャーは俺をじっと見て、「変わらずいつも通りイケメンだな」なんて言って笑う「チャンミンはその後大丈夫そうか?俺からも連絡しようと思うんだけど…」「あ…その、眠っているかもしれないし、俺が連絡します」立ち上がり、スマホを持って練習室を出た「…隠し事って…キツいな」勿論、今までだって、チャンミンがオメガになって以来、それを悟られないように気を付けてきたけれども、それを頑張ってきたのはあくまでもチャンミン自身俺が何か出来た事なんて殆ど無い廊下を歩きながらカトクのトーク画面を見た俺が仕事前に送信した『誰かが来ても扉を開けない事絶対に何か有れば俺を呼んで』に対して、少し前に返信があった「『ユノヒョン以外、考えられません』…良かった」スタンプだけの返信よりも安心出来る朝は苦しそうだったけれど、少しはヒートの状態も良くなってきたのかもしれない誰も使っていない廊下の隅の練習室の前まで進んでから、チャンミンの電話番号をタップした呼出音がやけに長く感じる「声が聞きたいよ…」恋しいから、は勿論けれどもそれ以上に心配で…他の誰かを呼んでいないかそうしてアルファに襲われていないかカトクの返事はあっても、それ以前に何かが有れば?悪い事を考えたい訳では無いだけど、こんなにも不安になるだなんて思わなかった「チャンミナも…俺があのオメガ女性と遭遇した後にこんな気持ちだったのかな」あの頃は自分の事ばかりだったそして、苦しかったけれど、自分は絶対に本能には負けないと抗って、結果彼女を探し出したり無理矢理抱いたり…そんな事はしなかっただけど、チャンミンは俺が彼女を選ばないか不安で仕方無かったのだと言っただから、番になって安心したかったのだと逆の立場になって初めて分かる事は沢山あって、その度に自分はまだまだなのだと思うばかり「…チャンミナ…」留守番電話に繋がる事も無く、呼出音は鳴り続ける祈るように目を瞑ってスマホを強く握っていたら、音が止んでがさがさと音がした「チャンミナ!」『……ユノヒョン…?』「あ…良かったごめん、ずっと鳴らして…体調は…その、ヒートはどうだ?」声は掠れているように聞こえるもしかしたら寝起きなのかもしれない『…少し残っていますが、でも大丈夫です誰の事も呼んでいないし…でも、やっぱり少し不安だから、ユノヒョンに早く逢いたい』「…そうか…俺も早く逢いたいよ」『うん…休んでごめんなさい』チャンミンははっきりと言葉を紡いでいるから安堵した誰も呼んでいない、つまり誰にも抱かれていないしそのつもりも無いという事俺があのオメガ女性のフェロモンに支配されてもチャンミンを選んで抱いて、そして耐えたように…きっと今、チャンミンはひとりで耐えている「そうだ…今日は多分早く帰れるよだから…マネージャーと一緒にチャンミナの部屋に行って、少しだけ話をするのはどうかな仕事中に、チャンミナの事を話すのは難しいし…まずは信頼出来る相手に話して、そこから一緒に考えた方が良いかと思うんだ彼なら俺達の事を良く知っているし…」一気に畳み掛けてしまったけれど、これ以上嘘を吐くのが苦しかったそれに、またもしもチャンミンにヒートが訪れたら?それが大切な仕事のタイミングなら?ヒートを耐えて仕事をする、だなんて不可能だだって、チャンミンの…オメガのフェロモンは芸能界に圧倒的に多いアルファを刺激するつまり、チャンミンがオメガである事が知られてしまうから「どうかな…勿論、ヒートが治まりそうなら、だけど…」『夜にはきっと…大丈夫、です』「本当に?良かった…勿論会ってみて話辛かったらまたにしようでも…話せるひとには話をして、そうすれば俺達の『この先』も考える事が出来ると思うんだ」そうすれば、番になる事も許されるかもしれない事務所が理解を示してくれればこの先の活動も…それに、いつかこどもだって何れにしろこのまま隠したままで黙って番に、なんて勝手な事は出来ない『…じゃあ、少し寝て体力を回復させておきますユノヒョンも無理しないでくださいね』「ああ、何か有ればカトクしていや、何も無くても…起きたら連絡して」チャンミンは少しだけ笑って、そして『分かりました』と言った大丈夫、彼の精神状態は落ち着いているヒートになったのも…昨夜チャンミンが『ユノヒョンの事を好きだからヒートになったのだと思う』と言ってくれた一日、ずっと事務所でのスケジュールだったから、予定よりも早く終わる事が出来たマネージャーには、『チャンミンの様子を見ていきますか?』と誘った話がある事は伏せて…そうで無いと、何か有るのかと身構えられてしまいそうだったし、それに対して上手くフォロー出来る自信も無かったから「明日以降のスケジュールの事も有るし、俺もチャンミンが心配だったから良かったよ」「少し前に電話を掛けたらだいぶ良くなったと言っていましたが…最近少し疲れも溜まっていたようなので」何も知らないマネージャーは安心した様子で俺に言う仕事を終えたタイミングでカトクでその旨を伝えたチャンミンからは直ぐにひと言『分かりました』と返信があったあまり、今の状態はどうかと聞くのもチャンミンに気を遣わせるだけかもしれないと思ったし…もしもヒートが続いていたら、マネージャーと顔を合わせたくは無いし話を出来る状態でも無いだろうと思った話をする事は緊張するけれど、それを乗り越えないとこのままもう先になんて進めないだろうチャンミンのマンションの客用駐車場に車を停めて、マネージャーとふたり、車を降りた歩きながら『着いたよ』とカトクを入れて、合鍵でオートロックを解除した「合鍵なんて持っていたのか?」「え?あはは、最近行き来する事が多くて便利ですよ」「へえ、不仲より余っ程良いよ」「不仲になんてなった事は無いですよ」マネージャーは少し驚いた様子だったけれど、特に不審には思っていない様子恋人だから、という真実を話せばどう思うのだろうそう考えると少し怖いけれど、チャンミンへの気持ちは揺らがないから不安は追いやる事にしたエレベーターを降りて、廊下を進んで、そして…「流石にインターフォンは押すんだな」「あはは、鍵を持っているからと言って急に開けたら驚くだろうから…」インターフォンを鳴らして扉の前で待ってみた普段も鳴らしてから入る事も有るけれど…いつもよりも、待つ時間は長く感じるだけど、マネージャーは何も言う事は無いから、長いと思っているのは俺だけなのだろうその内に、なかから足音のようなものが聞こえてきた扉の内側でがちゃがちゃと音がして、そして…「…すみません、お待たせして…」がちゃり、と扉を開けた瞬間に分かったチャンミンはまだヒートなのだと「…チャンミナ…何で…」「…正気のまま、話なんて出来ません」声はやはり掠れていたそして…チャンミンからは、朝よりは少しはましになったけれど、甘い甘いフェロモンが漂っている「ユノ?どうした?」後ろから、マネージャーの声ベータの彼には分からないくらい、らしいだけど…もしもこの付近にアルファが居たら、引き寄せてしまうかもしれない「なかにどうぞマネージャーも…休んですみません」「チャンミン、声…やっぱり風邪なのか?」火照ったように赤い頬掠れた声は…もしかしたら、ヒートの所為で欲求が抑えらずにひとりで鎮めていたから、かもしれない「大丈夫です、きっともう収まるので…」チャンミンはもう、背中を向けてなかへと進んでいく髪の毛は乱れているけれど、スウェットの上下をきっちり着込んでいる「ユノ…大丈夫か?」「……」チャンミンの後ろに続いて部屋のなかへと入っただけど、何を言えば良いのか分からなくなった冷静に話を出来るなら、と思っただけど…『正気のままじゃ話が出来ない』というチャンミンの言葉を聞いて、自分が考え無しだった事を思い知らされたような気がした早く言ってしまいたかったそうすれば認められるかもしれない、とだけど、オメガである事が知られる事で偏見の目に晒されたり、これまでと違ったように見られるのは何よりもチャンミン自身なのだこれが、チャンミンの覚悟なのか、それとも投槍なのかは分からないけれども、俺の言葉に『また今度で』と言う事は出来た筈それならば、俺が出来る事は少なくとも少しは覚悟を決めたであろうチャンミンの事を守るだけ「リビングへ…」廊下の先で振り返るチャンミンは、確かにフェロモンを纏っているけれど瞳はしっかりしていたやはり、覚悟を決めたチャンミンは強くて…アルファの俺の方が余っ程弱いのかもしれないランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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  • 24Mar
    • 未必の恋 9

      ユノさんが僕にスーツを見立てる為の外出それを僕は、勤務時間中だからしっかりとVIP客であるユノさんに失礼の無いように…と思っていたのに、浮かれたり、フランクに接してくれるユノさんに惚けて言葉遣いがつい砕けてしまうそれをユノさんは『その方が嬉しい』と言ってくれて…駄目だと思いながらも距離が近くなっていくような気分だったデート、な訳が無いこれは、ユノさんの気まぐれに違い無いそれなのに、憧れのひとにスーツを選んでもらうだなんて、まるで恋人同士がショッピングに出掛けるようでどきどきしてしまうそれなのに、折角何となく良い雰囲気だったのに、僕は早速ユノさんに気を遣わせてしまった「ごめん、あの店なら…と思ったのに無駄な時間を取らせたし不快な思いをさせたよなそれに、寒いのにまた外を歩かせる事になって…」「ユノさんが謝る事なんて何も無いですそもそも、折角世界的デザイナーがスーツを見立ててくれると言うのに、僕はその為の買い物に相応しいスーツすら持っていなくてはは、これも一応手持ちのなかでは高級な物なのですが、副支配人としてもっと良い物を身に付けないといけないですね」『ユノさんが羽織ってください』一軒目を出た後にそう言ったのに、また彼はコートを忘れた僕に着心地の良いマントコートを羽織らせてくれた「と言うか、やはり寒いですよね?今、『寒いのに』と言いましたよね?僕は充分温もったので、次の店に到着するまではユノさんが羽織ってください」自ら脱ぐのは失礼に当たると思い、言葉で訴えたすると、ユノさんは嵌めていた手袋を外してふたりの身体の間にある僕の左手に触れてきた「…っえ…」「……やっぱり手が冷たいチャンミンの方が寒がりだろ?俺はコートが無くても大丈夫、でもチャンミンの手は冷たいから羽織っておいて」僕の手を握ったユノさんの手は温かいけれどもそれは、彼が手袋を嵌めていて僕が素手のままだからその所為だと思うけれども、指摘しても否定されてしまう気がする「寒いのにって言ったのも、チャンミンがって事俺は大丈夫だし、チャンミンが冷えて寒そうにしているのを見る方が嫌なんだ」『どうしてホテルマンの僕にそこまで』そう、喉元まで出かかっただけど聞けないだって、ユノさんはただ気を許した相手には優しいひとなのだと思うからどうして僕には…なんて思うだなんて烏滸がましい僕はただのホテルマンで、ユノさんの事なんて…憧れだったけれど、彼の私生活や彼の人間関係なんて未婚であると言う事以外何も知らないのだから「ユノさんは優しいですね」「我ながら紳士だろ?当たり前だよ」何が当たり前なのだろうか紳士として、に決まっている手は握られたままで、どうしたら良いのか分からないいや、外で男同士なのに、と言うべきだけれどもそれを口にして本当に離れて行ったら寂しいだって、僕は好きに…なりかけているのだから「それよりチャンミン」「はい、何でしょう」「世界的デザイナーにスーツを…なんて言われたら寂しいんだけど」「え…何故ですか?」手を繋いで…いや、握られているから、ただでさえ距離が近いそれなのに、更に、歩きながら僕の顔を覗き込んでくる平日の日中のオフィス街、人通りはそれなりだけれど、人が多くて皆それぞれ他人になんて見ていないからか、逆にそれ程注目される事も無い「俺の事は名前で呼んで欲しいって言ってるだろ世界的デザイナー、なんて言われたらまるで他人のようだ」「…申し訳…いえ、すみません」「ごめん、で良いんだよいや、謝る必要も無いただ俺が寂しかったって知って欲しいだけだから」そう言いながら、更にぎゅっと強く手を握る頬を、鼻を掠める風はとても冷たい耳もぴりぴりと痛いだけど、繋いだ手は熱いくらいだ「それともうひとつ」「…はい、次は何ですか?」自分の声が、耳に届く声が何だか甘い嬉しさを抑えられていないのが知られてしまうだろうか、とちらりとユノさんを見たら視線が合って僕をじっと見るやはり浮かれているのが顔に出ていたのだろうか、と内心焦っていたら、彼は僕を頭の先から爪先までじっと見てから口を開いた「チャンミンのスーツは悪くなんて無いあの店のスタッフはプライドばかり高くて良くないなあいつは自分の店のスーツを買わせたくて『JYHのコートにそのスーツでは似合わない』なんて言ったのかもしれないけど、それだって最悪だそれに、服は値段じゃ無いよ」「ユノさん…」スーツを選んでもらう為に訪れた店舗は、ユノさんもデザイナーを知っているというブランドだったけれども、そこに居たスタッフは、ユノさんの高級コートの下にそれなり…くらいのスーツを着ていた僕を鼻で笑ったユノさんはそんなスタッフにぴしゃりと『客を服の値段だけで判断しない事』と言ってくれた「俺は自分の理想を形にする為に…それに、ブランドを背負っているから価格帯はまあ…一般的にはかなり高級になると思うでも、それを身に付けるからひとの価値が上がる訳でも無いチャンミンはきちんと自分に何が似合うか、を分かっていると思うよ」「…そんなの…ユノさんは僕のスーツ姿しか見た事が無いから…」「スーツを着こなすのは簡単じゃ無い、だろ?チャンミンはスタイルもだし、肌に映える色もきっと自然に分かっているんじゃあないかなと思う」「……褒められても何も出ませんけど」嬉しいのに、気の利いた言葉すら出ないホテルマンとして、副支配人としてのプライドはある仕事に対する自負もあるけれども…仕事中のスーツに関しては、給料のなかで買えるものだって限られているから自信が有るかと言われたら否、だそれでも、例えお世辞だとしても憧れのデザイナー…いや、ユノさんにスーツ姿を褒めてもらえるのは自信に繋がる「ああ、そうだ!それから…」「…それから?まだ有るんですか?…っあ、すみません…」「あはは、畏まっているよりその方が余っ程良いそう、まだ有るんだ、だってチャンミンが『スーツ姿しか見た事無いのに』なんて言うから」ユノさんはまた僕をじっと見て、「今度、私服を持って部屋に来て」なんて言った「え…?」「スーツだから変に畏まってしまうのかもと思って…いや、違うな俺が見たいんだ俺のブランドの服でも良いし他でも良いし…兎に角スーツ以外も見てみたい」こんなの、世界的デザイナー様の我儘だそう思うのに、僕を知りたいと思ってくれているようで嬉しいと思ってしまう「…許されるか分からないので、総支配人に聞いてみます」「俺の部屋で、ふたりきりの時なら良いだろ?そんな事を言ったら、部屋のなかでベッドで裸なんだから」「…っ、ユノさん!ここは外です!」思わず声を荒らげたら擦れ違ったひとが僕達を見た慌てて口を噤んで俯いて、更に手を離そうとしたけれど、ユノさんは強く僕の手を握る「チャンミンが大きい声を出さなきゃ聞こえないから大丈夫」当たり前だというように微笑まれたら何も言えないだって、嫌われたく無いから飽きられたく無いからその理由を考えてはいけないユノさんが目星を付けていた、というもうひとつの店は、歩いて行ける距離にあったそこは歴史ある建物をどうやら内装を変えて店舗にしたようで…外観からして、とてもおしゃれな雰囲気が漂っていた「いらっしゃいませ」扉を潜ると、にこやかに男性スタッフが頭を下げて挨拶する高級店独特のこの雰囲気が僕は少し苦手だって、僕は高級ホテルに勤めてはいるけれど、庶民だから「ここは俺も買った事は無いんだけど…ソウルに帰って来たら個人的に見に行きたいと思っていた店なんだ」「へえ…そうなのですね」「ああ、実店舗は韓国にしか無いけど、これから大きくなる気がするなんて、実物を見たのは今が初めてなんだけど」ユノさんは並ぶアイテムを眺めながら、目をきらきらと輝かせているそんな姿を見ると、何だか嬉しいと思う「コートを貸して、持っているよここは確かオーダーも出来るから…既成の物とオーダー、両方にしようか」「え…二着ですか?」値札は見える所に出ていなくて、二着も買えるか正直自信が無い「そう、だって、オーダーの方が良いとは思うけど…それだと、今直ぐチャンミンが着るのを見られないから」だけど、嬉しそうにそう言われたら、嫌ですとか無理ですとか…僕の情けない懐事情の事なんて言えない「…ありがとうございます」ただ、そう言うのが精一杯後はもう、恥ずかしいけれど、あまり高い物を選ばないようにするしか無いそう思っていたら、ユノさんがスラックスのポケットを探ってスマートフォンを取り出した「あ…」「どうかしましたか?」「ごめん、電話…ちょっと出るよ」申し訳無さそうに言うから、問題無いですと頷いたら、ユノさんはディスプレイをタップしてスマホを耳にあてたそして…「ああ、どうした?電話をくれるなんて嬉しいよ恋しくて、声が聞きたかったんだ」相手の名前は呼ばなかったそれに、そう言うと直ぐに僕に背を向けて店の隅に歩き出してしまっただから、相手の性別も名前も…勿論、関係だって何も分からないそもそも、例え名前を呼んだとして、それを聞いても僕はユノさんの交友関係なんて何も知らないからどんな関係のひとか、も分からないでも…「…そうだよね、当たり前だ」僕には『ごめん』と言って電話に応答したのに、会話を始めた瞬間に蕩けるような笑みを浮かべて甘い声で囁く恋しくて声が聞きたくて…なんて、そんなの彼の大切なひとに他ならない「本日は何かお探しですか?お手伝い出来る事が有れば、何なりと仰ってください」「あ……ええと、その…スーツを探していてホテル勤務なので、どんなお客様がいらっしゃっても恥ずかしく無いものを…」沈んでいたら、声を掛けられた普段ならば買い物中に声を掛けられるのは苦手でも、今は気を紛らわす事が出来るし、話をしていれば店の隅に行ったユノさんを目で追い掛けなくて済むから良い「今のスーツもとても素敵ですよでも、当店のスーツもおすすめですお客様はスタイルが良いので、きっととてもスーツが似合うかと」「…そんな…撫で肩だし幅も狭くて…」「体格はひとそれぞれですそれに、気になるようでしたらオーダーもございます」「…あと、予算も…」恥ずかしいけれど、ユノさんに言うよりは初見のスタッフに話す方が余っ程言いやすい「これくらいまでで」と、それでも高級そうな店に合わせて何とか見栄を張って提示したら、スタッフは頷いてくれた「大丈夫です、ご予算に合わせて探しましょう」「…ありがとうございます!良かった…」ついさっきの店のスタッフが、高級である事へのプライドを滲ませていたから、庶民にも優しいスタッフにあたって安堵した「ではこちらに…当店のスーツを紹介致します」「はい……っあ…!」何だかエスコートするように自然に、触れる事は無いけれど腰の後ろ辺りに手を伸ばされた触れられていないし絶妙な距離だから不快感なんて全く無くて、そのまま歩き出したらスタッフが立つのと反対側の左腕を掴まれた「チャンミン、俺を置いていくの?」「ユノさん…いえ、電話をしていらっしゃったので…」「また敬語?それに他の男に…」スタッフは僕達の会話を聞いてすっと僕から距離を置いたけれども、ユノさんに笑顔で「スーツを探されているとの事でしたので、一緒にそのお手伝いをしたいと思っております」と伝えた「…そう、なら良いけど…彼に似合う物を選びたいんだ既成の物とオーダーと…な?」「はい」ユノさんは何だか少し不機嫌スタッフは僕をちらりと見て、少し申し訳無さそうな顔何だか空気が重くて…「あの!この方は親切に、予算まで聞いてくださったんですだからその…三人で選びませんか?」「…良いけど…でも、取り敢えずは俺が選ぶ」「良いけどって…」勿論、僕としてはユノさんが選んでくれるのが一番嬉しいでも、折角スタッフの方が声を掛けてくれたから申し訳無い気持ちもあるそれに、何よりユノさんはついさっきまであんなに嬉しそうに笑って電話の向こうの『誰か』と話をしていて…「承知致しました必要な時にいつでもお声掛けください」「あ…すみません…」「いえ、当店のスーツはどれも自信を持っておすすめ出来るし、きっとお客様に似合いますどのスーツを選ばれるのか楽しみです」スタッフの男性はそう言って微笑むと、自然に距離を置くように離れていく同じ接客業として見習うべき部分があって、こんなスタッフが居る店は良い店だと思った…のは良いのだけど…「ユノさん」「何?」「折角あのひとが手伝ってくれるって言ったのに…」「俺と選ぶって言っただろそれに、予算だって…そんなの関係無いよ良い物を選ぼうとしているのに」金額よりも似合うかどうか、だと言っていたのにそれなのに予算は関係無いなんて言う結局、ユノさんはお金を持っているから…一流の世界で一流の物に囲まれて生きているから僕とは感覚が違うのだきっと、さっき電話で話していたひとだってそうなのだろう「…僕より…」「何?」「…何でも無い、です」思わず、『僕よりも電話の相手に服を選んだ方が良いのでは』だとか、何処に居る誰かも分からないのに『そのひととデートをしたら良いのでは』と言いそうになったでも、僕はただのホテルマン抱かれているけれど、それは…ユノさんが宿泊するホテルではいつもお気に入りを選ぶというだけの事それに…僕がユノさんのニットを駄目にしたからまるで恋人のように嫉妬をする権利なんて無いし、そんな自分が醜くて悔しい「ほら、スーツを見ようあのスタッフは少し…チャンミンに馴れ馴れしかったけれど、さっきの店より良さそうだ」そう言って、恋人でも無いユノさんに腰を抱かれる嬉しい、けれども僕達に『この先』なんて無い分かっているのに悲しくて、こんな所に来なければ良かったとまで思ってしまう「チャンミンは顔立ちが華やかだから…グレーでも品が出るし、ホテルで働くなら目立ち過ぎる事も無いから、明るいグレーも良いないや、でもこのネイビーも…」なんて言いながら、ラックに掛けられたオーダー用のスーツを見るユノさんオーダーをしたら、それが出来上がる頃にはもう、ユノさんはイタリアに帰ってしまうのだろうか端から一緒に居られる…いや、ユノさんの宿泊期間は決まっているそれなのに、僕はただのホテルマンなのに別れが悲しくて仕方無い「ほら、チャンミン…どうした?」「…目にゴミが入っただけです」振り返ったユノさんが、生地を僕の身体に合わせてきた目に溜まった涙を右手の甲で拭って視線を逸らした別れも何も、ユノさんは僕にとって特別だけれど…ユノさんにとっての僕は、ただの気まぐれの相手だと最初から分かっている事なのに高級スーツを着用するのは副支配人としては良い事だけど、今日選ぶ事になるスーツを今後着たら、苦い思い出が脳裏を過ぎる事になりそうだ簡単に恋をして、簡単に勝手に失恋をして、そんな馬鹿な僕の苦い思い出が…いや、これは恋では無いし恋であってはならないそう思えば傷は浅いし、僕達のような身分違いに端から恋が生まれる訳なんて無いのだ「大丈夫です」と言えばもう、何も無かったように、しかも何だか嬉しそうにスーツを選び出すユノさんきっと、彼の頭のなかはもう、スマートフォン越しに声を聞いていた相手の事でいっぱいなのかもしれないランキングに参加していますお話のやる気スイッチになるので足跡と応援のぽちっをお願いします 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