Side Y









昔から誤解されやすいところがある
それなりに勉強が出来てしまって、それなりに顔が良いと言われてしまって、友人達からは悩みなんて無いだろう?なんて言われて…
だけど、自分では自分が不器用である事を良く分かっている
分かっているけれどなかなか上手くいかないから不器用なんだ



不器用、と言っても全てに不器用な訳じゃ無い
手先はまあまあ器用
運動もそれなりに
友人関係も楽しく築く事が出来る
じゃあ何が?ともしも聞かれるならば、それは恋愛に於いて、だ



昔から好きな子が出来ても、なかなかその気持ちを伝える事が出来ないんだ
友人に相談したら、
『ユノは顔が良いし優しいから微笑んで優しくしてあげたらそれだけで相手には伝わるよ』
なんて言われた
確かにそれだけで…と言うか、俺の態度で相手も気付いてくれる事が多くて助かって来た

彼氏と彼女の関係になれば、まだ『好きだ』と伝える事も出来た
でも、ドラマのようには上手くいかないし、やはりなかなか直接的な言葉は言えなくて長続きしなかった



とは言え、自らの恋愛事に於いては不器用だけど、それが周りの事であればまた別で…
友人や後輩に好きな相手が出来たと聞けば、何とかして仲を取り持ったり、橋渡しのような事もしていて、周りは幸せになっていくのに俺にはなかなか春が来なくて…なんて状態だった



そんな不器用な俺が大学三年生の春に訪れた恋の相手が、ふたつ年下の大学の後輩であるシムチャンミンだった
同性を好きになったのは初めてだったのだけど、一目惚れだった

当時、広い大学の敷地内には桜並木…という程では無いけれど、桜の木が並ぶ通りがあった
それが確か半分以上散りかけた頃、たまたま歩いていたら風がびゅうっと吹いて思わず目を瞑った
花弁が飛んで来て埃が目に入って手の甲で擦ってから涙が滲む目を開けたら、ほんの二メートル前で同じように強風に目を瞑っていたのがチャンミンだった
長い前髪は風で流れて、丸い額も可愛らしい顔も見えて、一瞬で恋に落ちた



『あの…!』

『え…』

『これ、良ければ使いますか?ゴミが入ったのかなって…』



俺と同じように涙ぐむ彼に、ポケットのなかのハンドタオルを取り出して差し出したら小さく首を降られた



『大丈夫です…でも、ありがとうございます』



急に声を掛けて、少し怯えさせたかもしれない
風で乱れた髪の毛を撫で付けている姿も可愛い
可愛いけれど、可愛い顔が隠れてしまうのが勿体無い



『あの、俺は三年生のチョンユンホなんだけど、君は?』

『え…一年生のシムチャンミン、ですけど…』



少し怪訝そうに、だけど不器用にしか声を掛けられない俺に答えてくれた



その日から、俺の恋は始まって、毎日のように時間を見つけては彼の教室のある棟まで足を運んだ
周りは皆、俺がチャンミンに恋をした事に気付いたらしい
それも今迄と同じで、やはり俺は不器用だけれど分かりやすいのだなあ、なんて思った

直接『好きだ』と伝える勇気は無いけれど、会いたい気持ちも好きな気持ちも膨らんでいった
だから、『可愛い』という言葉に気持ちを込めた

チャンミンはいつも…多分、少し迷惑そうな顔もしていた
だけど、俺に否定的な言葉を掛けたりだとか、迷惑だとか…
そんな事は一度も言わなかった
それはきっと彼の優しさで、そんな優しさに俺はずっと甘えていた



どちらにせよ、男同士で上手く行くだなんて、そんな事はなかなか無いだろう
だから、毎日ほんの少しでも話が出来るだけで…
困ったような、だけど可愛い笑顔を見られるだけで良かった



『それで本当に良いのか?』
『好きなんだろ?』
『最近はお前達が付き合ってる、なんて噂も流れてるけど…噂だけじゃ何も意味なんて無いよ』
あたたかく俺の行動を見守っていてくれた友人達も流石に俺に痺れを切らしたようで、卒業前になると毎日のように
『ちゃんと告白するべきだ』
と言われた

曰く、例え振られても告白した方が良い、らしい
卒業後は外資系企業への就職が決まっていた
勿論直ぐに海外勤務になる事は無いだろうけれど、きっと時間の問題
そもそも男同士だし、俺はソウルから居なくなるかもしれないし…
そんな言い訳をしたけれど、周りは伝える事が大切なのだと、こんな情けない俺を説得してくれた



それなのに結局…



『二年間、チャンミンが居たから楽しかった、本当に』

『僕はおもちゃじゃ無いです…』

『あはは、そんな事…思って無いよ』



あの日、二年生のチャンミンの授業は無かった
それなのに大学に来ていて…
それがどうしてだったのか分からないけれど、最後のチャンスに声を掛けた
でも、顔を見たら何も言えなくたった
それ迄は毎日
『可愛い』
『今日も会えて良かった』
そう言えていたのに、それすら言えなくて…
結局、告白どころかありがとう、と伝えただけ



チャンミンはあまり目を合わせてくれなかった
だけど、確かに最後まで彼は優しかった
友人が少ないのだと周りからは聞いていた
内向的だったり、自分からひとに話さないのだと
だけど、俺が声を掛けるといつだって応じてくれた
無視されたりだとか、適当にあしらわれる、なんて事は無くて、俺のつまらない話をいつだって真っ直ぐに受け止めてくれた

結局やはり告白は出来なくて…
だけど、俺達は男同士だし、俺はそのうちに海外勤務になるだろうし、チャンミンにはきっともっと素敵な相手が出来るだろうし…
なんて必死に自分に言い聞かせた



忘れられないまま時間は流れたけれど、仕事に忙殺されて日々は過ぎていった
社会人一年目に、会社の先輩女子に告白されて…
良いひとだったから付き合い始めた
いや、本当はほんの少しだけチャンミンに似ていたから
けれども当たり前に彼とは違うし、ちゃんと好きになる事も出来なくて別れた

二年目に早速海外勤務になった
とは言ってもお隣の日本なのだけど
言葉を勉強しながらの仕事はなかなかにハードで、けれどもやり甲斐も大きかった
その後誰とも付き合わなかった、なんて事は無い
だけど、長続きはしなかったし、チャンミンは俺のなかの綺麗な思い出のようで…報われず想いも伝えられなかったからこそ、好きな気持ちもずっと残ったままだった



時間はあっという間に流れるもので、約十年の海外勤務を終えて韓国へと帰って来た
沢山の友人や知り合いが歓迎してくれて、週末ごとに呼び出されては食事に出掛けた
そのうちのひとり、大学時代の二年後輩の男に
『結婚が決まったので式に来て欲しいです
ユノ先輩に仲を取り持ってもらった大学の時の彼女と、やっと結婚出来るんです』
と幸せそうな顔で言われた

その男は二歳年下、つまりチャンミンの同級生で学部も同じで…
思い出話に花が咲いた
彼は俺がチャンミンを好きだった事も知っていたようで、そんな話にもなって…
けれども、俺がまだチャンミンを忘れられないのだと自嘲しながら言ったら、『じゃあ、彼も呼びましょう』と提案された

そんな事は申し訳無いと思った
だけど…
これがもしかしたら、想いを伝える最後のチャンスかとも思った
それに…
もしかしたら俺のなかで綺麗な思い出になっているだけで、もう一度会えば彼への恋心なんて勘違いだった、なんて気付く事も有るかもしれないと思った



だけど…



『チョン先輩…』



緊張しながら訪れた結婚式会場
大学時代の同級生や後輩には、俺が『まだ』チャンミンに想いを寄せている事が知られてしまっていて…
気恥ずかしくて控え室を出て、偶然見つけた美しい中庭のようなスペースへと出た
奥のソファベッドでゆっくりしながら、青くて美しい花々に見蕩れていたら、迷い込んで来たのが俺の…
空白の十年以上、なんて一気にゼロになってしまうくらい愛おしい、黒のタキシードなのにどんな花よりも色鮮やかなチャンミンだった



顔は勿論、と言うか以前よりも更に綺麗になっていた
大学時代、顔を隠すように長く伸ばしていた前髪は、今も多分長そう
だけど、タキシードに合わせてオールバックになっていたから綺麗な顔が存分に見えて…
綺麗だけど、話しているとやはり可愛らしい

見た目はやはりおとなになった
でも、俺のつまらない話に少し怪訝そうにしながらもちゃんと答えてくれるところは変わらなかった
他愛無い話でも話せば話す程、俺の想いは膨らんだ
…と言うか、ずっと閉じ込めていた気持ちが溢れ出した



大学時代ならきっと出来なかったと思うのだけど、再会出来た事が嬉しくて腕を掴んで引き寄せて…
ソファベッドの上に倒れ込んでチャンミンを抱き締めた
それだって、力づくで逃げる事も出来た筈なのに、結局俺に付き合ってくれた優しくて可愛いチャンミン



チャペルでの結婚式、俺が隣に座ったらちらりとこちらを見たけれど避けられる事は無かった
式の後、外で並んで新郎新婦をフラワーシャワーで出迎える事になった
その時も、何だか自然に俺達は隣合っていて…
嬉しくて話し掛けてしまうのだけど、チャンミンは少し困った様子でもちゃんと答えてくれた



今日の主役…新郎の後輩は、チャンミンと特別仲が良かった訳では無い
だけど、彼は思い出したように言っていた
 
『シムは人見知りであまり友人も多くなくて…
でも、俺達から見てもユノ先輩と話している時は楽しそうに見えましたよ
だから、先輩の卒業後は何だか寂しそうに見えました』

それが本当であれば嬉しいし、告白が出来ていたら違っていたのだろうか、とも思った
だけど、若くて不器用だった自分が遠距離に耐えられたかは分からないし…
未だに不器用だと思う



駆け引きなんて出来ない
それどころか、告白すら出来なかった自分
だけど、想いをひとりで消化する事も出来なかった
周りに気を遣わせて再会する事が出来て…
ならばもう、今度こそ自分で動くしか無いと、やっと腹を括る事が出来た

何から言い出そうと思って、新郎に恋愛相談をしていたのだと告げた
勿論、チャンミンの事だ
それで伝わる、なんて思ったのだけど…



「…もう帰りたい」


 
いつも、俺の不器用なアプローチを拒んだり避けたりする事の無かったチャンミンから初めてそんな言葉で出て焦ってしまった
新郎新婦が笑顔で近付いて来るのに、それどころでは無くなってしまって…



「え…どうして…折角会えたのに
新郎が…あいつが、俺がチャンミンに会いたがっているだろうからって招待状を送ってくれて…
チャンミンが出席するって分かって毎日どきどきしていたんだ」



大学時代、触れる事は殆ど出来なかった
だけど、チャンミンともっと話したくて、帰って欲しくなくて、俺を見て欲しくて…
空いている右手でチャンミンの左腕を掴んだ



「腕、離してください
フラワーシャワーをしないと、なんですよね?」



俺の不器用な言葉が悪かったのだろうか
少し苛立ち混じり
だけど、掴んだ腕はそのままで拒絶される事は無い
そんなチャンミンの優しさに甘えてしまう



「チャンミンの、そうやって…
俺が下手くそで直ぐに怒らせてしまっても、ちゃんと応えてくれるところや話を聞いてくれるところが俺は…」

「え…?」

「ああ、もう直ぐそこだ!おめでとう、ふたりとも!」



何だか、今ならするりと告白出来ると思った
だけど、大切な主役ふたりがやって来たから、チャンミンの腕を離して綺麗な花をふたりに投げ掛けた

幸せそうなふたりは俺の言葉に顔を見合わせて微笑んで、そして…



「しっかり受け取ってくださいね」



参列者の視線は優しく微笑んだ綺麗な…と言っても、俺のなかではチャンミンが一番なのだけど、そう、だけどとても綺麗な新婦と、それから彼女が見つめた俺の右側に立つひとに集まった



彼女が腕を上げてブーケが空に放たれると、わあっと歓声が上がってそして…



「…えっ………っわっ!え?」



ブーケは真っ直ぐにチャンミンの腕のなかへと収まった
焦っているチャンミンは多分、受け取りたかったつもりでは無いのでろうけど、真っ直ぐに飛び込んで来たから反射的に受け取ってたようだった

青と白の花々で作られたブーケは、ついさっきチャンミンと再会したあの中庭のように見えた
ブーケを受け取ったひとは次に幸せになれる、なんていうのは勿論ジンクス
だけど、新郎新婦がチャンミンに投げてくれたのも、きっと彼らから俺への思いで…
それを無駄にしたくないし、何よりもう気持ちを伝えずに後悔したく無かった



「チャンミン、俺の気持ちを聞いて欲しい」



新郎新婦は案内役の係員に従って、館内へと入っていく
俺達を見ている参列者も居るけれど、彼らも続々と新郎新婦に続いていく

それを横目で見ながら、ゆっくりと膝を折ってブーケを両手で持つチャンミンの前へと跪いた
こんな告白のチャンスなんてもうきっと無い
これを逃したらいけない
再会してもやはり彼は変わらず可愛くて綺麗で、そして何より俺の目を見て真っ直ぐに答えてくれて…
不器用だけど、気持ちを伝えようと、すう、と小さく息を吸ってからチャンミンを見上げた



「チャンミン、俺と結婚して欲しい」

「…は??」



正直、やってしまった、と思った
幸せそうな新郎新婦を見て、お付き合いを申し込む、どころかその先に気持ちが行ってしまったのかもしれない

『付き合って欲しい、好きです』
と言うつもりだったのに、これじゃあ気持ち悪がらせてしまったかもしれない

内心焦っていたんだ
でも…



「チャンミン、可愛い…いつも隠していた顔も耳も今日は全部見えるから、耳まで真っ赤になっているのも丸見えだ」

「…っ、そんなの、チョン先輩が変な事言うからじゃないか…」



大切な言葉を飛ばしてしまったけれど、やっと俺の気持ちが伝わったのかもしれない



「変な事じゃ無いよ
ずっと…大学の時から思っていたんだ
たけど言えなくて…」

「…僕と結婚したいって思ってたんですか?」



そう言いながら、チャンミンは左手でブーケを持って、右手を差し出した
その手を取って立ち上がり抱き締めたら、
「違う!」
と焦る声



「え…違うって?」

「跪かれても困るので立ち上がってもらおうと思っただけです
抱き締められてもその…ブーケが潰れるから困ります」



そう言うと、もぞもぞ身体を動かして腕のなかからするりと抜け出す



「…ブーケが無かったら抱き締めても良かった?」

「……その前に、ユノ先輩の気持ちを教えてください
大学の時からずっと…どう思っていたんですか?」



チャンミンは額や首まで真っ赤になっている
もしかしたら、タキシードスーツに覆われた身体も赤くなっているのだろうか、なんて不埒な事を考えてしまった



「言わなくても伝わっているかもって思ってた」

「…僕は男です、それに言わなきゃ分からない…」

「…うん、さっきのは言い訳だよな
不器用でチャンミンを目の前にすると上手く言えなくて……
好きなんだ、その…結婚したいくらい」



一度言葉にしてしまえば、何だかとても心が軽くなった
そして、好きだと言ったら閉じ込めていた気持ちがもっと溢れ出して…


 
「一目惚れだった
初めは顔が可愛いって思ったんだけど、俺が執拗く話し掛けてもちゃんといつも返してくれたり…
一緒に居られるだけで癒された
本当は卒業の時に告白しようかと思ったんだ
だけど、海外勤務になりそうだったし…
それに何より勇気が出なくて結局言えなかった
でも、やっぱり好きなんだ」



堰を切ったように溢れてしまった
もう一度抱き締めたいけれど、そうしたらまたブーケが崩れてしまうと言われそうだから…
我慢して、肩を両手でしっかりと抱いた

チャンミンは口をぱくぱくと開けたり閉じたりして、視線を泳がせた



「チャンミンはどう思ってる?俺の事を意識してくれていた?
好きになって欲しい、付き合って…男同士だから現実には無理かもしれないけど、結婚したい」

「意識も何も…チョン先輩が毎日のように可愛いとか色々言うから、それが忘れられなくて…
それなのに勝手にお礼だけ言われて卒業して、しかも彼女が出来たとか聞いて…もう、振り回されるのなんて嫌です」

「じゃあ…付き合ってくれる?
振り回したりしない
ずっとチャンミンが心のなかに居たんだ
再会出来たら自分の気持ちをもう一度確かめようと思った
だけどやっぱり変わらない、今のチャンミンも好きだよ」



もう止まらなくて気持ちを伝えたら、チャンミンは困ったように俺を見つめる
何だかもう、押したらいけそうな気がしてあと一息、そう思ったら…



「チャンミ…」

「ストップ!僕の気持ちを置いて突っ走らないでください!」

「え…」

「離れていた時間だって長いし…
その、正直先輩の言葉を嬉しいって思ってしまいました
でも、僕はずっと揶揄われたって思っていて…
ちゃんと、チョン先輩の事や気持ちが知りたいんです」



ほら、やっぱりチャンミンは優しい
拒まれてしまうかもって一瞬思った
だけど、真っ直ぐに俺を見つめてくれた



「この十年、僕だけを考えていてくれたんですか?
彼女が居たって聞きましたけど…」



大きな瞳を潤ませて俺を上目遣いに見る
正直、『チャンミンだけだ』と言おうか迷った
だけど、俺は不器用だし何よりも彼に嘘を吐きたく無かった
だって、自分の気持ちを伝えられずにずっと後悔していたから



「チャンミンをずっと好きだったよ
でも、チャンミンと付き合える訳なんて無いって思っていて…彼女が居た事も有る
だけど、結局いつもチャンミンが一番だから続かなかった
ここ数年はずっと仕事ばかりだったよ」

「……」

「怒った?」

「怒ったも何も僕はただの後輩だし…
それに、告白もしてもらって無いのに、十年ずっと僕だけを想って恋人がゼロだったら流石に重たいです、でも…」

「でも?」



ブーケを胸にぎゅっと抱き締めて俯いたチャンミン
思わず「花よりも綺麗だ」と呟いてしまった
そうしたら、顔を上げて恥ずかしそうに含羞む



「チョン先輩のそういう言葉…揶揄っているんだって思っていましたが、もしかして本気で言ってくれていたんですか?」

「揶揄った事なんて一度も無いよ、本当に
好きだっていう気持ちが上手く伝えられなかっただけで…」



何だかとても良い雰囲気
このまま良い返事がもらえるかも、なんてどきどきした
そうしたら…



「あの、もうそろそろ披露宴が始まりますので…」

「え…あっ、はい、すみません」



いつの間にか係の女性が近くにやって来ていて、申し訳無さそうに声を掛けられた
彼女は頭を下げて
「会場でお待ちしています」
と言い残して出て行った



「披露宴、行かなきゃですね」

「ああ、でもその前に…さっき何て言い掛けていたの?」



肩に置いた手を名残惜しいけれど離した
そうしたら、チャンミンはブーケを胸に抱いたまま、もう一度それを見下ろした



「恋人がゼロだったら流石に重たいって言いましたけど…
でも、本当はちょっと残念だって思いました
あと、ずっと好きでいてくれたなら…
嬉しいって思ってしまいました、悔しいけど」

「チャンミン…」



まだ答えはもらえていない
だけど、不器用な俺だけど告白が出来て一歩前へと進めた
後はもう、不器用だけどアプローチしていくしか無い

前を歩いて館内へ繋がる扉を潜るチャンミン
彼の左腕を斜め後ろから掴んで、振り返った頬にキスをした



「…っ何を…!」

「好きだ」

「…チョン先輩はいつもいつも突拍子が無いんです
……それなのに嫌じゃないのが悔しい」



不器用だけど気持ちを伝えたら、何だかチャンミンも変わった気がする



「なあ、チャンミン」

「…何ですか」

「披露宴が終わったらふたりで抜け出そう
話したい事も伝えたい気持ちもまだまだ有るから…駄目?」



俺を拒まない優しいチャンミンだから、もしかしたら今は隣に居てくれても、それ以上は駄目かも、とも思った
だけど…



「ずっと先輩の気持ちが知りたかったんです
だから…僕が嫌って言うくらい聞かせてください」

「…うん
ブーケを受け取ったから、幸せにするよ」

「だから、先輩はいつも突拍子が無いんですってば」



そんな風に言うチャンミンの顔は真っ赤
披露宴会場に入ったら、俺達のテーブルは同じだった
披露宴では新郎新婦に『お幸せに』なんて言われてしまって…
チャンミンは焦っていたけれど、大学時代の知り合い達は皆、俺の気持ちなんて見ていれば丸分かりだったようだから、何だか祝福されてしまった



不器用で恋愛下手
だけど、青い世界でチャンミンとまた出会えたから
十年越しの想いを漸く言葉にする事が出来たから
きっと、今日から新しい世界が拓けるような、そんな気がしている






















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読んでくださりありがとうございます

何だかとても長い後編になってしまいました…
付き合うところまでいかなかったので、もしも読んでくださる方の反応が良ければ、ですが…
単発でこの後のふたりを書けたら良いなあと思っておりますかおあせる


今日も日本にいるホミンちゃんが、そしてこのお部屋を訪れてくださる皆様が笑顔で幸せでありますように…ニコニコ