ほみにずむ(*∵)´,,•J•,,`)大好きなふたりのお名前を借りた、私の頭のなかのお話でフィクションです。興味の無い方は閲覧を避けてください。ブログ内の文章の著作権は全て私個人に帰属致します。転載転記は禁止致します。
あの日、理由も分からないまま抑え切れない衝動に突き動かされたあの時自分に対しては幾つものそれらしい理由と言い訳を重ねて、チャンミンに対しては俺の所為にすれば良いのだと逃げ道と理由を与えて彼の身体に触れた決して良い事ではない、許されない事だけど止まれなかったのは衝動が抑え切れないだけでなく、どうして触れたいのか、止められないのか、の理由が分からなかったから「教室に戻らないと…そうだよな、でも……」昼休みはもう終わり午後の授業が始まる一刻も早く戻らなければならないヒョンとして、見本になるような行動と言動を見せないといけないそうしないと、憧れて尊敬される幼馴染みのままで居られない「でも、何ですか?」チャンミンがこんな風に聞いてくるのは意外だった後で振り返れば、の話でこの時はそんな余裕すら無かったけど『でも』もう、抑え切れそうもないあの時は理由の分からぬ衝動に突き動かされて止まれなかった今は、はっきりと分かっているチャンミンに彼女が出来るかもしれない、と思うと耐えられなかったし見たくなかった聞きたくなかったこうして無理矢理連れ出したところで、何にもならないのに、それでも抑え切れなかった身体が動くのは抑え切れないのに、『好きだ』というひと言さえ言えない顔を上げられずにいたら、ふう、と息を吐く音が聞こえた呆れられたか、気持ち悪いと思われたか…俺の気持ちは知られていないだろうけど、良い所を邪魔したのだから何を言われても仕方無い「ユノヒョンが何を言おうとしているのか、は気になるけど…僕は、このまま、今はユノヒョンと居たいです」「…え……」ばっと顔を上げた、俺の顔はとても情けないものだっただろうけど、目が合ったチャンミンはこちらを憐れむような表情ではなかった「今日だけ、今だけ……ヒョンに話したい事があります」大切な話、告白の途中で大人気なくチャンミンを連れ去った盗み聞きしていただけでも酷い話なのに、チャンミンが答えを出す前に身勝手な俺の事情で連れ去った俺は今、こんなに情けないのに、チャンミンは太陽の下、俯く事無く俺と向き合っている走らせてしまったからか、頬が少し紅潮して胸は上下している文句を言われても詰め寄られても、良い所を邪魔されたと言われても全て受け入れなければならないでも、何を言われても膨らんでしまった恋心を無かった事には出来そうもない「ユノヒョン」「……」「さっきの…聞いていたんですか?」「…聞くつもりじゃなかったんだ教室に戻るところで偶然…話し声が聞こえたから出て行けなくなった…違う、ただの盗み聞きだ」最後にごめん、と呟いた謝っても何も無かった事には出来ないのに「見ていたんですか?」「声だけだよ」「そっか…でも、聞いていたなら話は早いですもう一度、僕からキスさせてくれませんか?」「……何言って…チャンミナ、冗談はよせよ」頭が真っ白になったもしかしたら、あまりに都合の良過ぎる聞き間違いだろうかそんな訳無い、と分かっているのに声は掠れるしくらくらした「冗談でこんな事言いません昨日は、少しだけ好奇心もありましたでも今は違います」「今話したい事がそれ?」「それだけじゃないけど…ユノヒョンが絶対に嫌って言うならしませんそうじゃないなら…」誰も居ない屋上本鈴が響いているポケットの中のスマホが震えたけど、ぐっと握って電源をオフにしたチャンミンは試したいのかもしれない俺とキスをすれば昨日は抱かなかったらしい嫌悪感に気付けて、告白された女子生徒への想いに応えようと決心出来るのかもしれないふとそう思った「嫌じゃない嫌なら、最初から触って手伝ったりしない」「良かった…」俺に、俺なんかに嫌がられていない事で安堵するチャンミンが不憫になった汚さずにいたい、と思いながらも彼を抱く夢まで見てしまった、そんな俺の本性を知らずに少しだけ表情を緩めたチャンミンが「こっち」と俺の手を引いて屋上の入口と反対側の日陰に移動した「知っていると思いますが、僕はユノヒョンと違って経験不足だし下手くそです見られたら恥ずかしいし、目を閉じてするのも下手だから目を閉じてください」分かったよ、といつもの調子で言いたかった昨日ならあんなに饒舌に話せたなのに今は何も言えず頷くのが精一杯恋の経験があっても、経験したどの恋よりも…いや、比べようがないくらいの想いが芽生えたら過去の経験は役に立たないようだ「…ありがとうございます、ユノヒョン」目を瞑ったら聞こえてきたチャンミンは今、どんな表情なのだろうきっと、これが最後のキスになる終わったら、チャンミンの言葉を待って俺は…どうやって、ここまで連れて来た言い訳をしよう考えは纏まらないままだけど、抱いてはいけない恋心は伝えるべきではない、という事は分かるチャンミンが本来キスをしたり触れ合うのはついさっき告白していたような異性だから「ユノヒョン」至近距離で名前を呼ばれた空気が揺れて、チャンミンが近付いているのが分かった「……」「……」昨日と違って、チャンミンの唇が俺の唇に重なったゆっくりと押し当てられて、それだけで泣けるくらいの幸せを感じたのは初めてだった「……です」「…え…何か言った?目を開けても良い?チャンミナ」名残惜しいくらい、あっさりと離れた唇それくらいで良いそうじゃなければ抱き締めて離せなくなっていただろうから「もう大丈夫です」と聞こえたからゆっくり、恐る恐る瞼を持ち上げた「さっき、告白されてキスして欲しいって言われました聞いていたんですよね?」「うん」「もしも、あの子にキスしたら分かるかなって思ったんですでも、しなくて良かった」日陰に移動したから太陽の光に照らされていない手を引いて走ったから息が上がったけど、もう落ち着いた筈だけど、チャンミンの頬はさっきまでよりももっと紅潮していた「…ユノヒョンが好きです普通の好き、じゃなくて、特別…恋愛の好き、だって分かったんです」「…何を言って…」「驚きますよね自分でも有り得ないって思います僕は同性とは絶対に無いって思っていたし、ユノヒョンはバイでも僕とだけは絶対に無いのに」昨日のチャンミンからのキスの時もついさっきも、俺には目を閉じるように言っていた昨日は恥ずかしいからだと話していたけれども、今彼は真っ直ぐに俺を見て、ひと言ひと言を噛み締めるように伝えてくれている「有り得ないだろ、そんなの…」嘘を吐いている顔には見えない長い付き合いだから分かるでも、あまりに都合の良い、まるで夢だ「俺、実はまだ保健室で寝てる…とか?」「保健室?ユノヒョン、保健室に居たんですか?体調は…」「大丈夫!元気!ただ寝不足だっただけ情けないけど」慌てて腕を伸ばすチャンミンを制止するような形になってしまったチャンミンは「良かった」と呟いてから「夢じゃない」と続けた「あの日からずっとユノヒョンの事ばかり考えているんです避けられたら悲しくて、元に戻りたいけどそうも出来そうになくて…好奇心でキスの練習をしたいって言ったら許してくれるし、舌まで入れるし…」「それは…反省してる」ふっと笑ったチャンミンは驚いたけど大丈夫だと言った「僕も触りますって言ったら拒まれたし、エスカレートし過ぎたのかもって思いましたどうしてこんなにユノヒョンの事ばっかり考えてしまうんだろうって悩みました好きな子が出来たら悩む事もないのにって思っていましたでも、いざ告白されたら…」それまで真っ直ぐ俺の目を見ていたチャンミンが、一度視線を逸らした唇をぐっと噛み締めてから、もう一度決意したように俺を見るその目はキラキラと輝いてまるで宝石のよう「違う、って思ったんですそんな時にユノヒョンが来るとは思わなかったでも、そのお陰で『このひとだ』って思えたし、キスで確信しました」「…俺を好き、だって確信したの?」「うん語っちゃってごめんなさい我慢出来なくて…」途端にバツが悪そうな表情になったチャンミンは、くるっと背中を向けたさっきまで堂々としていたのに、猫背になって自信無さげだ「嘘じゃないんだよな?」「…うん」「……」一度俺達が変わってしまえば、またその先どうなるかなんて分からない変わらないままで居た方が本当は良いのかもしれないチャンミンの母親に言われた事を思い出した今の関係がベストだと思い変化を厭ったとしても、変わる事は決して悪い事だけじゃあないそれなら、『今』も『この先』も、決めるのは自分達自身「チャンミナ」「……っ、え、何…」背を向けたままのチャンミンを後ろから抱き締めたびくっ、と肩を震わせたけど、逃げる様子はない「好きなんだ、俺も先に言われちゃったけど、多分、俺の方が先に好きになってた情けないな」「…ユノヒョンが、僕を?僕だけは絶対にないって言ってたのに?」「それは…その、お互い様」驚いた様子で顔だけ振り向いたチャンミンの鼻先に唇が触れた途端、真っ赤になって固まるから首を伸ばして唇にキスをした「俺は、チャンミナに触れておいて『何やってるんだよ』って反省して挙句チャンミナを避けたり、キスの練習だって言って俺にキスするチャンミナに好きだって気付いたりそれから…大切な告白の途中で我慢出来ずに連れ出したくせに、先に告白も出来ないような情けないやつなんだそれでも、恋人になってくれる?」言わずにいれば格好ついたかもしれないでも、思っていたのと違うから…なんて振られたら耐えられないどきどきしながら返事を待つ俺の気持ちなんて他所に、チャンミンは目を丸くしてからくすくす笑う「何で笑うんだよ」「ユノヒョンの方が先に好きになったって言うから何時かと思ったら…昨日じゃないですか」「気付いたのは、だよ本当は何時だったのか分からない」「そっか…」俺の腕の中でぐるっと回ったチャンミンが、不器用に俺を抱き締め返す「ヒョンの身体、逞しいですね」と笑うその表情は幸せそうだそんな顔をさせているのが俺だと思うと胸がいっぱいになる「情けなくても良いよ恋人になるって事は、今までずっと一緒に居ても知らなかった顔が見えるんですよね?情けないユノヒョンも楽しみです」「…やばい、もうその顔だけで胸いっぱいだチャンミナ、お願いだから俺以外のやつにそんな風に笑いかけないで」「ヒョンってクールに見えて嫉妬深いタイプですか?」むしろ逆心は広い方だと思っていただけど、この恋は特別で、今までのセオリーなんて通用しない気がする「普段は絶対にこんな事言わないんだけどさ今日だけ、このままサボってふたりで居ようか」「今、こんなに嬉しいのに授業なんて戻れるわけないよ」色々な笑顔を見せてくれるチャンミンが俺の唇の横にキスをした「チャンミナ、またずれてる」「わざとですこれくらいにしておかないと、またユノヒョンのキスで腰が抜けるかもしれないので」「あはは、そうだったな俺も、昨日はあそこで止めないとチャンミナに何をしてしまうか怖かっただから帰ったんだって知ってた?」ぶんぶんと首を横に降ったチャンミンは驚いた表情だ「何、って何なのか聞いたら良くないですか?」「今度、ちゃんと恋人としてしたいから今は駄目」我ながら狡い下心だらけだこんな自分を年下の幼馴染みに晒すだなんて想像すら出来なかった「僕も、ヒョンに言えないトップシークレットがあります」「トップシークレット?!」「はい恥ずかしいからまた今度…やっぱり言わないかも」まだ、お互いに秘密を抱えている始まったばかりの俺達ふたり知っていると思っていたけれども知らない事だらけで、それが今は新鮮で楽しみに思える━━━━━━━━━━━━━━━こんなに長くなる予定では無かったのですが、これでやっと終わりです久しぶりの毎日更新、お付き合いくださってありがとうございます多分皆様忘れていらっしゃるであろう連載やその他、も今度こそ再開出来たら…と勝手に思っていますまたお付き合いいただけたらとても嬉しいです最後に、読んだよ、のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村
約二週間前のあの日、自分勝手で都合の良い理由と言い訳、好奇心から湧き上がった我慢出来ない渇望で触れてはいけない大切な相手に触れた『そんな事』をしたら変わらずになんていられない考えたら簡単に分かるのに、理性よりも本能に従って、チャンミンが出した欲望を手に纏わせたままでひとり己の身体を慰めた「本当に馬鹿だな、俺は…」自分が最初に手を出したなのに、それを受け入れたチャンミンが『もう一度』と言ってきたら拒んだただの練習相手、手伝うだけの相手でいる事が耐えられない恋愛感情を抱いてしまったからこそ、触れる事が出来ない偉そうにそんな事を思ったけど、舌まで入れるキスをしてチャンミンを驚かせた結局俺は、年下の大切な幼馴染みが思うような完璧な兄でもなければ博愛主義者でもない最初から俺はそうだし、何も変わらないなのに、チャンミンにだけは良い顔をしていたい情けない兄だと思われたくない男の身体は時に簡単だ感情とは切り離されて反応を示す事もある思春期だとそれはより顕著だと言うあの日の俺が、ただの好奇心や何かでそうなったのか、それとも既にチャンミンを好きになっていたのか…後者であれば少しは格好つくけれど、現実はそうじゃないあれがあったから、チャンミンを意識するようになったキスをしたから自覚したなんて情けないのだろう、笑える「好きになってごめん」ひとり、ベッドの上で呟いたチャンミンからの無邪気な誘いを断って、急いで家に帰った持て余した熱はすぐに冷めて、心まで冷え切りそうだチャンミンからの『キスの練習』を受け入れて、その後許可を得ずに舌を絡めるキスをした忘れる訳なんてない、感触も熱さも、チャンミンが俺にしがみついた力の強さも忘れる事なんて出来ない、焼き付いているだけど、それを思い出してひとり自分を慰める気にはなれない無自覚のままなら出来ただろうけど、情けない俺もそこまで無神経ではなかったようだ「違う、チャンミナは悪くないよどうして俺なんかにこんな…」帰宅して、もう二時間は過ぎた『僕はバイじゃないのに、無神経に触ろうとしてごめんなさい』『この間は驚いたけど、ヒョンに手伝ってもらって気持ち良かった』『キスの練習もしてくれたから、お礼に僕もヒョンを気持ち良くさせられたら…と思ったんです』ついさっき届いたチャンミンからのメッセージを何度も読み返して、返信出来ないでいる俺がこの二時間、答えの出ない事を考え続けているのと同じくらい悩んで欲しい、だなんて望まないでも、チャンミンも少しは俺の事を考えていてくれたのだろうか「だとしても…深くは考えないよなきっと、チャンミナは直ぐに目が覚める俺の、なんて触らなくて良かったって直ぐに思う」『どうしてチャンミナが謝るの?』送信したらすぐに既読になった『ユノヒョンが直ぐに帰ったから』『俺が悪かったって言っただろ』『間違いが起こったら大変、ってどういう意味ですか?ユノヒョン、怒ってますか?』普段は生意気なところもあるチャンミンだけど彼が実は相手の顔色を良く見ている事も知っている普段は明け透けになチャンミンがこんな風に尋ねてくるって事は、俺の態度に相当違和感があったのだろう「気付けよ……違う、絶対に気付かなくて良い変わりたくない、チャンミナが大切だから…」物心ついた時から積み上げてきた十数年がある血は繋がっていなくとも、性格や性質がまるで正反対でも、家族のようだし兄弟のような唯一の相手お互いに絶対に恋愛対象にはならない、と思ってきたそれは揺るがないものなのだから、壊してはいけない『怒ってなんかないよ』『チャンミナは俺の大切な弟なんだから』急いでメッセージを送信して、通知オフにしてアプリを閉じたそうでないと、スマホを手に取る度に返信を気にしてしまうから「勉強……いや、無理だ」少し、いや、かなり早いけど無理矢理眠る事にした案の定中々寝付けなかったし、漸く眠れたと思ったら夢にチャンミンが出てきた自覚してしまった感情で汚してはいけない、この感情は一刻も早く無くしてしまわなければならないそう思ったのに、夢の中でチャンミンに触れてキスをして…「…っは……何やってるんだよ、俺…」俺は、チャンミンを抱こうとした夢の中の彼が抵抗を見せる、どころか俺の全てを受け入れるように笑ってくれるのを良い事に、欲望のまま突っ走った夢だから良い、なんて今は思えない一度自覚した想いは消えそうになくて、夢で抱いたら現実でも望んでしまいそうになる「折角、一線を引いたのにな」これまで何度かひとを好きになった憧れのような恋もあれば、それなりに自制出来なくなったものもあるそのどれもが、今芽生えた想いとは比べ物にならないくらい、今思えば気楽なものだった例え同性が相手であっても上手く行く時もそうでない時もある分別はつく方だし、物語のように恋に振り回されるタイプではないと思っていた「収まれよ、早く」無心で手を動かして熱を宥める事は出来そうにないかと言って、チャンミン以外の何か、を想像したところで心も身体も反応しないせめて、これ以上彼を汚さないように努力するしか出来ない大切だから幻滅されたくない大切だからこれ以上触れられない大切だから…そう思えば思う程、あの日の自分の行動やつい数時間前のキスが思い出されて自責の念に駆られた翌日の寝起きは最悪だった身勝手な夢を見たのは誰の所為でもなく自分の所為悩ましいのも、捨てたくても欲に塗れているのも全部全部俺の所為そもそも最初から、全部そう悪いのは俺、なのに高校に着いてから漸くチャンミンとのトーク画面を開いたら『僕だってユノヒョンを大切に思っています』『なのに勝手なお願いをして、気まずくさせて反省しています』なんてメッセージが届いていたから、自己嫌悪は更に深くなった「ユノ、クマが酷いよ」「え?そうかな…珍しく夜中まで勉強を頑張ったからかな」「試験は終わったばかりなのに、どれだけ優等生なんだよ」気遣ってくれたクラスメイト相手に、息をするように嘘を吐いてしまった嘘を吐いた罪悪感よりも好きになってはいけない相手を好きになったそれの方が大きいから、胸は痛まない本当の事なんて言えないのだから、絶対に怪しまれないように誤魔化すしかない「優等生なんかじゃあないよ」「ユノが優等生でなければ誰がそうだって言うんだ?お前はもっと羽目を外したって良いくらいだと思うよ」「あはは、ありがとう充分楽しくやってるから……大丈夫」「大丈夫って顔には見えないけど」と更に心配されてしまった寝不足の理由は己の浅ましい欲望と片想い、全て自業自得なのに気遣われてしまうと居た堪れない結局、たかが寝不足と恋煩いなのに昼休みを保健室で過ごす事になった違う、これは夏の暑さの所為だ「……寝た…」はっと目が覚めてスマホを見たらほんの数十分で、午後の授業前だったから焦りは消えたほんの数十分、だけど夢も見ず眠れた流石に高校で『あんな夢』見たら目も当てられない「先生、お世話になりました」「気分はどう?この暑さだし、無理して授業に出なくても…」「ありがとうございますもう大丈夫ですすっきりしたし、この後は水分もしっかり取ります」ベッドから降りたら養護教諭は俺の顔をじっと見て「顔色はさっきよりも良いから…少し安心しました」と微笑んだ保健室から出て、やっとチャンミンのメッセージに返信した『ありがとう』『改めて言うのは恥ずかしいけど、これからも宜しく』こんな風に、今までと同じヒョンで居れば何時かはこの想いも消えていくだろう十数年培ってきた関係なのだから、きっとこれは何かの間違い、一時の勘違いだ今は胸が痛むけれど、俺だけじゃあなくお互いの為「…何時までも見てるなよ、女々しいな」昨夜は直ぐに既読になった、けれども今はまだ一方通行のまま届かないメッセージ既読になれば返信が気になって仕方無い、だけど読まれなくても結局気になるふう、と大きく息を吐いて、同じクラスの友人に『元気になったから午後は授業に戻る』とメッセージしたこちらは直ぐに『無理するなよ』と返信があった保健室から続く静かな廊下を歩いて、角に差し掛かったその時、話し声が聞こえた「……っ…」それだけならば足を止める事はなかった足を止め、息を潜めたのはその声の片方、が紛れもなくチャンミンのものだったからだ「今、私の事を好きじゃなくても良いのお試しで良いよ無理だって思ったら振ってくれて良いから」「でも、そんなの…」「前に、シム君のクラスの子から聞いたの私なら『有り』だってシムくんが話していたって」「それは…そんな、本気の話じゃないよ」「本気じゃなくても良いよ有りだったら、ほんの少しでも本気になってくれる可能性はあるでしょう?シム君に好きになってもらえるように頑張るし、何でもする」この角を曲がれば、すぐその先にチャンミンが居る相手はどうやら彼と同じ一年生の女子例え友人同士の話であってもチャンミンが有りだと話していたなら、彼の好みかそれに近いのだろうチャンミンに彼女が出来る、その場面にこうしてひっそり立ち会って現実を突き付けられたら頭を冷やせるそもそも俺に勝ち目なんてない、例え『家族のような大切な幼馴染み』じゃなくても俺が男であるだけでチャンミンの恋愛対象にはならないなのに、それだけでは想いを消せないだなんて馬鹿だと分かっている「……僕は…」「深く考えなくても良いよじゃあ、キスして?嫌じゃなければ試しに付き合って」「…っ、近いよ…」チャンミンが告白される場面なんて見た事はない今も、声しか聞こえないけれども彼が困惑しているのは分かる今まで何度か『ユノヒョンは男子にも女子にもモテるから狡い』『僕だって、ヒョンほどではないけど告白された事はあるよ』なんて、可愛いライバル心を見せられた事はあるその度に、チャンミンは魅力的だから告白されるのも想いを寄せられるのも当たり前だと本心で伝えてきた今、勇気を出している女子生徒は見る目があると思う男の俺と付き合うよりもチャンミンにとっては幸せ…いや、俺と比べる事がおかしい「シム君お願い、キスして」女子生徒の高くて密やかな声に、喉の奥が気持ち悪くなるくらい緊張したチャンミンが応じて、俺とのキスやあの日の出来事を後悔すれば良いと思う『忘れて欲しい』と言ったのはチャンミンで、彼にとって良い記憶で塗り変えればそれも叶うだろうなのに、胸が苦しいここからそっと立ち去る事も出来ないし耳を塞ぐ事も出来ない受け入れる事も出来ない、ただ情けなく立ち尽くしている「僕は……」「……っ…」言葉を詰まらせたチャンミンに、勝手に身体が動いた声のする方に一歩踏み出したら、小柄な女子生徒の肩に手を置くチャンミンが見えた「ごめん、やっぱり僕は…」「チャンミナ!」「え!」だとか「ユノヒョン!」とか聞こえた気がするけど良く分からない目の前のチャンミンしか見えなかったどれだけ理性で推し殺そうとしても無理だった俺より細い手首を掴んで、駆け足で廊下を進んだ「…っ、ユノヒョン…どうしてここに…」「ごめん、チャンミナ、ごめん…」無我夢中で走った誰も居ないところに…そう思ったら、屋上に出ていた「ユノヒョン予鈴、もう鳴り終わったよ」「授業だよな俺、何やってるんだろう」予鈴が鳴っていた事すら気付かなった息が上がるくらい走った事も、その所為かチャンミンの癖毛が少し跳ねている事もそう言えば、あの日も勉強中に眠ってしまったチャンミンの髪の毛に癖がついていた事を思い出したあの時は可愛らしいと思ったけど、今はそれすら好きだと思う「授業に戻りますか?」「…教室に戻らないと…そうだよな、でも…」こんな風に歯切れの悪い事を言うのは『兄』としての俺らしくないチャンミンだって呆れてしまうだろういや、それ以前の問題だ「でも、何ですか?気になるけど…僕は、今はこのままユノヒョンと居たいです」「え…」「今日だけ、今だけ……ヒョンに、話したい事があります」息が上がったからか、少し胸を上下させているチャンミン太陽の下、彼の頬が少し赤くなっているのが分かった━━━━━━━━━━━━━━━あと一話ですお話のやる気スイッチになるので読んだよ、のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村
Side C唇を合わせるキスよりも先に、もっと凄いところに触れられた相手は絶対に恋愛対象にならない同性のユノヒョン手伝ってもらうだけ、練習相手になってもらうだけだから何も起こらない筈だった「…っふ……」僕からした二度目のキスは直ぐに終わる事なく、気が付いたらユノヒョンの舌が何かの生き物のように僕の舌をとらえて息も出来なくなった熱い吐息混じりの声で、鼻で息をするのだと教えられて必死に従った苦しいのにぞくぞくするような感覚に襲われて、腰に力が入らなくなった「……っ…ユノヒョン……あの」ずるずるとしゃがみ込みそうになった僕を、ヒョンが支えてくれた腰だけじゃなく身体中力が入らなくて、ヒョンに凭れるようにしてしがみついているそれに対してありがとうございます、と言うつもりだったけれども、気付いてしまってそれどころではなくなった「チャンミナも、だろお互い様」「…何の事か言ってないのに……」何だかこれって、まるで抱き締められているみたいだ気付いたら急に気恥ずかしくなったでも、そのお陰で顔は見られていないし、背中を擦るユノヒョンの手が暖かくて心地好いから離れたくないって思った「この間は寝てる時に…だったけど、今日はキスの所為?」「分かんないよユノヒョンは?」本当は分かっているユノヒョンのキスがあまりに刺激的だったから舌と舌を絡める、だなんて気持ち悪いと思っていたのに、頭の中が真っ白になるくらい気持ち良かったからだ「分かんないけど…ユノヒョンの所為です」『全部俺の所為にしたら良い』そう言ったのはあの日の事キスを練習したいと言ったのは僕だけど、手馴れたユノヒョン相手だからこんな風になってしまったとしか思えないまだ腰はもぞもぞするけど、ユノヒョンにしがみついたまま、固くなった部分が擦れ合わないように腰を引いた「そっか…俺の方はチャンミナの所為かなあ」「…余裕ですね、声も何もかも全部」「あはは、余裕に見える?まさかこんな事になるとは思わなかったから、ちょっと焦ってるよ」「ふうん…」ユノヒョンの顔は見えないけど、余裕そうだきっと経験の差僕も、好きな子が出来てちゃんと両想いになれて恋人として前に進めたら、そんな経験を重ねたらヒョンみたいになれるのだろうかそんな『もしも』を想像してみても、慣れた自分に恋人が居ないからと言って、幼馴染みの『手伝い』をしようとは思えない「ユノヒョンって、やっぱり博愛主義者ですね優し過ぎるよ」「急にどうしたの?」「キスの練習も、『あれ』の手伝いもしてくれたから…」腰の辺りに回された手が熱い心地好いけど、そわそわするこのまま触れられていたらどうにかなりそうで…だけど、どうなってしまうのか分からない、そんな不思議な感覚二週間前のあの日もそんな不思議な感覚があった「あの日の僕みたいになってる誰か、が居たらヒョンは手伝うのかなあ…」困っている人が居れば放っておけない、ヒョンはそんなひと誰彼構わず、でプライベートな部分には触れないだろうけど、ユノヒョンの親しい相手なら…きっと、僕じゃなくても同じようにしたんだろうなと思うそれがユノヒョン、だけど想像すると嫌な気分だった「流石に手伝わないよ」「え…」「誰にだって出来る事じゃないし、誰にだって触れたいとは思わないそれとも、チャンミナは俺じゃなくても相手が経験者なら手伝ってもらう?」「無理!!ユノヒョンでも恥ずかしいのに…!」顔を上げてぶんぶんと首を横に振ったら、ユノヒョンと目が合った少し険しい顔をしていたからびっくりしたけど、直ぐに優しく口角が上がったからほっとした「そっか、良かった」何が良かった、なのだろう聞きたいけど、聞けなかった目が合ったらもう緊張が最高潮になったし、緊張したら身体中がもじもじして腰がぞわぞわして、それどころじゃあなくなったから「ユノヒョン、あの…」「ん?」目を見るのが恥ずかしくて視線を逸らしたでも、そうしたら赤い唇が視界に入って、ついさっきの激しいキスを思い出してしまった腰の奥がうずうずして、何だか涙が込み上げてきそうだあの日以来、僕はと言えばユノヒョンに触れられた事を思い出して何度も何度も熱を持て余している今朝もそうだったし、お陰で大変だったこれは僕のトップシークレット、ユノヒョンにだって絶対に言えないと思っていた「実は……」でも、ヒョンもあの日あの後僕に触れた事が引き金になって同じようになっていたのだと教えられたこの秘密を打ち明けて、もう一度ユノヒョンに触れてもらえたらもう一度気持ち良くなれて楽になれるドッドッドッ、と心臓の音が身体の外にまで響いているような気がする緊張して目の前がチカチカするヒョンの腕をぎゅっと掴んで、意を決して口を開いた「ユノヒョンに手伝ってもらわないと、楽になれそうにないんですだから、もう一度手伝って欲しい…です」「え…」「その…ヒョンも同じ、だし…直接触るのは怖いけど、下着の上からでも良ければ僕も…ヒョンを手伝います、だから…!」男の身体に触れる、なんて考えた事すらない想像したら気持ち悪過ぎて無理でも、あの日以来僕は何度も夢の中で、想像の中でヒョンに触れられて気持ち良くなっている現実でキスをしても嫌悪感なんて一切無かったされるだけ、じゃなく僕もユノヒョンを手伝って気持ち良くさせる事が出来るなら、ふたりで秘密を抱えても…そう思った「チャンミナ、止めておこう」「え…」拒まれる、なんて考え一切無かったあの日、全てを始めたのはユノヒョンだから「これ以上、でエスカレートして間違いでも起きたら大変だろ俺達は幼馴染みなんだから」「間違い…」「俺が悪かったそろそろ帰るよ」「え、でも、ユノヒョン、そのままじゃ…」すっと身体は離れていったついさっきまで、ヒョンの下半身は確かに熱を持っていたでも、もう背を向けられて分からない「また明日、チャンミナ」「え…うん…」これは拒絶だどうすれば引き止められるかなんて分からないし、引き止めないといけないのか、すら分からなかったただ、扉の向こうに消えていく背中を見守ってから、扉に手を当てて項垂れるしかなかった「…どうして辛いんだろ…」キスの練習をお願いするだけじゃなく、もっと恥ずかしい事を口にして、にべもなく断られたでも、恥ずかしさよりも胸の痛みが遥かに勝っていたあの日以来、僕の身体を熱くさせる唯一のひと、が居なくなったらすぐに熱は引いてしまって虚しさだけが残ったもう、扉の向こうは静かだユノヒョンはとっくに廊下の向こうに行ったに違いないそう思っていた僕は、ユノヒョンが扉の向こう側で同じように頭を抱え項垂れていた事を知らない━━━━━━━━━━━━━━━読んでくださってありがとうございますあともう少しだけお付き合いくださいねお話のやる気スイッチになるので読んだよ、のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村
二週間前のあの時はされるがままだったのに、今度はチャンミン自ら『キスの練習を手伝ってください』なんて言ってきた堂々とお願いしてきたくせに、未経験だからか顔を近付けたら強ばってぎゅっと目を瞑っていた唇を押し当てたらあの日と同じように俺に全てを預けて微動だにせず…だけど、あの日とは違って、ぼんやりとした表情と潤んだ瞳で感想を述べられたし逃げられる事もなかった「キス…って、こんな感じなんだ…」指で唇をなぞる仕草から目が離せなかったキスは好きな相手とするもの、それ以外考えられなかったのに、手伝ってと言われてすぐに実行してしまったそして、家族のような年下の幼馴染みに恋をしたのだと、分かってしまった「……やば…」思わず声に出たこの二週間の悩ましさも、答えの出ない問いも全部晴れた理由はただひとつ、チャンミンを特別に意識して、いつの間にか恋をしていたからだ「ユノヒョン」「…っえ…うん、何?」「好きな子に僕からする時は、今のユノヒョンみたいにすれば良い?」少し潤んだ瞳で真っ直ぐ見上げられた後ろめたさなんて何も無いような顔に、胸がずきんと痛んだこれは、自分がその対象ではないという悲しみ、切なさ、そして嫉妬だ気付いてしまったらもうすぐに分かる「今、好きな子居るんだっけ?」「居ないよ別に報告する義務はないけど…ヒョンだって知ってますよね?今は居ないけど、僕だってもう高校生だからいつそうなってもおかしくないので」「キスより先に、もっと大切な所を俺に触れさせたのに?」「…っ、だから、それはヒョンが『俺の所為にすれば良い』って…揶揄わないでくださいよ」「あはは、そうだよなごめん」揶揄ってなんかないでも、こうでもして自分をアピールしなければ虚しくてやってられないだけ自分が撒いた種なのに「チャンミナさっきので、キスはちゃんと勉強出来た?好きな子が出来た時に上手く出来そう?」「……多分」「本当に?唇に合わせるのは意外と難しいと思うよ」壁際に追い詰めたまま、至近距離で尋ねてみたチャンミンはむむ…と眉根に皺を寄せて考えている様子「今度はチャンミナから俺にしてみる?」「…良いんですか?練習しても」「良いよ元はと言えば俺が言い出した事だし」元はと言えば『手伝い』で、好きな子との行為の練習では無かったでも、こんな風にして触れられるなら良いかと浅はかにも思ってしまった「じゃあ…今度は僕からします」チャンミンは俺の唇の辺りをじっと見て、それから舌で自らの唇をぺろっと舐めたその行為があまりに刺激的で、不覚にも下半身に熱が集まった大丈夫、まだ反応はしていないし隠せる「俺の肩に手を置いても良いし、腕を掴んでも良いよその方がやり易いだろうから」「あ…そっか…うん」身体をもう一歩、ぎりぎりの距離まで近付けた心臓の鼓動は一気に速くなった胸と胸が触れたらばれてしまいそうだから、抱き締めたくなるのをぐっと我慢している俺の気持ちなんて知らずに真面目な顔のチャンミンは、そうっと手を伸ばして遠慮がちに俺の二の腕をシャツ越しに掴んだ少し震えているのが分かって、内心歓喜する俺はまるで初恋を知った少年のようだ初恋なんてもうとっくに日常の中で過ぎて終わったのに、初恋よりも余っ程心が高鳴る「…駄目です、ユノヒョンが動いたら…!」「え、あれ、動いてた?」「うん、近付いて…緊張するから動かないでください」ファーストキスを俺で済ませても何食わぬ顔だったから、緊張しているだなんて思わなかったチャンミンにとってはただの練習で、ただ唇が触れ合うだけなのだと思っていた「チャンミナが初々しいから待ち切れなかった」「僕はユノヒョンと違って慣れていないんです」「うん…知ってる」ほんの少し前まで、チャンミンの恋愛事情を詳しく知る必要なんてないと思っていただけど、今はこの先の彼の恋が気になって仕方無いこうして俺が手伝って練習したとして、それをいつか大切な相手に実践するのだと想像すると胸が苦しい今チャンミンが触れているのは俺、なのに、ただの練習でしかない嬉しくて切なくて悔しい「…キス、しますね」「…うん、どうぞ」「……目を瞑ってください、見られてたらどうして良いか分からないよ!」「チャンミナも目を開けてるのに?」「だって、目を瞑ったらどこが口なのか分からないよ」あと数センチで触れる距離口を開くと空気が震える吐息が届く距離チャンミンの長い睫毛がすぐ目の前にあって、震えている「わっ、何…」思わず、細い腰を抱いた抱き寄せてはいない身体に変化があった時に気付かれてしまうからそれに、抱き寄せたら止まらなくなりそうだから「手持ち無沙汰だし、直立不動に立っているだけじゃあ雰囲気も出ないだろ」「…そっか…」「ぎりぎりまで目を開けても、キスをする時は閉じた方が良いと思うよ」「分かりました」こくん、と頷いたチャンミンは「今度こそ…」と決心したように呟いた赤い舌が見え隠れして目が離せなくなるこほん、と乾咳をしたチャンミンが俺の腕を掴む手に力が籠るゆっくりとチャンミンから近付いてきて、それを見ていたら腰を抱く手にじわっと汗が滲んだ目を伏せているのはきっと、俺の唇を見ているからだから俺はチャンミンの目を見て、ぎりぎりの所で彼の瞼が閉じられたのを確認してから同じように瞼を閉じた「……」「……あれ…」「…ふ…チャンミナ、ちょっとズレてる」チャンミンの唇が触れたのは俺の唇…から、ほんの僅か下にズレたところあまりに可愛過ぎる失敗にも、充分過ぎるくらいどきどきした「え…あれ、何で…ぎりぎりまで見てたのに」「慣れかな感覚が掴めたら目を瞑っても失敗しなくなると思うよ」「……キスって難しいんですね初めての時に失敗したら恥ずかしいし、練習させてもらって良かったです」また、チャンミンは自らの唇に指先を当てている無意識なのだろうけど、俺とのキスを思い出しているようでぐっとくるものがあるでも、それ以上にチャンミンの言葉が胸にちくりと刺さった「チャンミナの初めてのキス、は今だろ」「そうと言えばそうですけど…練習なら別ですよね?」確かにそう、なのかもしれない唇を重ねるまではそうだと思っていたでも、今は違う違うのにそれを言葉には出来なくてもどかしいだからせめて、狡い言い訳を重ねてチャンミンの初めてをもっともっと奪ってしまいたい「練習なら、ちゃんと習得出来るまで続けないと…」「……っん……!」空いている手で頬を包んで唇を重ねた角度を変えて何度も押し当てて、苦しそうに唇が薄く開いたその瞬間に舌を入れて絡めた「…っふ、苦しい…!」「鼻で息をしてチャンミナ、これがキスだよ」唇を離した時にはお互いに息が上がっていたチャンミンの身体からは力が抜けたずるずるとしゃがみこみそうになったから、腰を抱く手に力を込めて抱き寄せた「…ユノヒョン、あの……」「チャンミナも、だろ」身体の変化がバレてしまったでも、お互い様だった俺は恋で、チャンミンは初めての他人との触れ合いが刺激になっただけ男の身体は簡単だから分かっている分かってはいても、それだけで嬉しかった━━━━━━━━━━━━━━━今日も読んでくださってありがとうございますこのお話以外にも、更新の間も今もずっと、以前のお話を読んでくださる方やコメントをくださる方もいらっしゃって、とてもとても嬉しく思っています時間が経ったものも全て私にとって大切なお話です本当にありがとうございますこのお話はあともう少し続きますお話のやる気スイッチになるので読んだよ、のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村
物心ついた時から身近で、親同士の仲が良かった時に家族や親戚のように過ごしてきたけど、特にお互い思春期になってからは以前のようにほぼ毎日話をしたり一緒に過ごす事はなくなったチャンミンは昔よりも素直に懐いたり慕ったり、はしてくれなくなったそれでも可愛い事には変わりないし、少し素直ではないだけだと分かっている今の付かず離れず、な距離感だって心地好いし、離れたって俺達は兄弟のように近いのだから寂しさを覚える必要なんてないと思っていた二週間が長いか短いか、は時と場合によるだろうそれが俺とチャンミンならば、例え距離が空いても長く感じる事はないと思っていたでも、この二週間はとても悩ましく、そしてとても長かった「ユンホ君、もしかして少し辛かった?」「……」「ユンホ君?」「……」「ユノヒョン!食べないんですか?」「えっ?あ、いや、食べる!食べてるよ」チャンミンの声にはっと我に返った通い慣れたチャンミンの家、ダイニングテーブルに座る俺の目の前には、少し居心地の悪そうなチャンミン「おばさん、もしかしてさっき俺を呼んでましたか?」「…ユノヒョンが全然食べないから、辛過ぎたのかって聞いてたよ」「あ…!!いえ、凄く美味しいです!すみません、少し考え事をしていました」チャンミンの母親はふふっと笑って「考え事をしながらチャンミンの顔をじっと見ていたのね」と言ったその言葉にチャンミンは顔を真っ赤にして噴き出しそうになった「母さん、変な事言うなよ!ご馳走様、部屋に戻る」「え…チャンミナ、待って…」「ヒョンはゆっくり考え事しながら食べてください」食器を纏めて立ち上がったチャンミンについて行こうとしたけど、まだ美味しい夕飯が残っているこれ以上今は止められないから、箸を進めたチャンミンがダイニングの扉の向こうに消えた後、チャンミンの母親はくすくす笑って言った「久しぶりにユンホ君が家で食べる事になって嬉しい筈なのに、天邪鬼ね」「嬉しい…そう思いますか?」「当たり前でしょ?あなた達は昔から本当に仲が良かったし、小さかった頃のチャンミンの口癖は『ユノヒョンと遊ぶ』だったんだから」違う遊び、に目覚めてしまいました、なんて言えないいや、あれは遊びではないけど…そうだ、遊びじゃあないならば何だったのだろう冗談でも揶揄いでもなかった遊びではない、だけど本気、というのとも違う理由は分からなくて、ただただ必死だった止められなかった衝動のようなものだった「チャンミナと、これからも変わらずに居られたら良いなと思っています」「そうね、私達親も同じように思っているわでも、変わっても良いんじゃないかしら?変化は悪いものだけじゃなく、良いものも沢山あるんだから」「……」変わるのは悪い事ばかりじゃあない確かにそうだでも、俺は今のままが良いと思っている今のまま、家族でも恋人でもないけど他の誰よりも近くてお互いを知っているような仲「ご馳走様でしたチャンミナのところに行ってきます」食器を片付けてダイニングを出る前「あの子、きっと首を長くして待ってるわよ」と言われた今までと変わらない事なのに、何故かこそばゆいようなむず痒いような照れ臭さを覚えた扉の前で深呼吸した今までならすぐにノックして声を掛けていた何も考える事なく自然に部屋に入っていただけど、今日は初めて見慣れた扉の前で緊張した「…そのまま帰るのかと思いました」一呼吸置いてノックしたら、一瞬の静寂の後に足音が近付いてきてゆっくりと扉が開いた「帰って欲しかった?」「そんな事言ってません」「入って良い?」「…いつも聞かずに入ってくるくせに」少し拗ねたような、だけど待ち侘びているようにも感じられた約二週間の間、確実に避けられていただけど、さっき学校で逃げようとしたチャンミンを追い掛けて話をしてからは、ぎこちなさはあるものの拒絶されなくなった高校からの帰り道では『あの日の出来事』について触れられなかった人目もあるし、まだ外も明るかったからだけど、今ならふたりきりだから…「チャンミナ、あの…」「ユノヒョンもあの後ひとりでしたって言いましたよね?」「え……うん、そうだよ」俺が部屋に入るや否や、口火を切ったのはチャンミンだった「僕を『そういう目』で見てるわけじゃないけど、僕の、を手伝っていたら…だったんですよね?」俺の告白を反芻するように確かめるチャンミンの目は真剣だ間違いないと頷いたら、彼は心底安堵したように、胸に手を当て大きく息を吐いた「そっか…僕はヒョンに触られて…だったけど、ヒョンをそういう目で見たていた訳じゃないユノヒョンも同じだったって事ですよね?それなら、僕達は何もおかしくないんですよね?」「おかしくなんてないよ」いや、本当は多分おかしいそもそも俺が手伝うのがおかしいだけどチャンミンが真っ直ぐな目で言うから否定出来ない否定したら、何故おかしい事をしたのか…自分でも説明出来ない謎にぶち当たってしまうだけだから「良かった…学校でも言いましたが、あれ以来ヒョンに合わせる顔がなくてその…少し避けていました」「うん、気付いてたしちょっと寂しかった」そうなんですか?と意外そうな顔をするチャンミンに「当たり前」と返した「ユノヒョンには友達が多いし、僕が居なくても…って思っていました」「俺はけっこう寂しがり屋だよ」「寂しがり屋でも、周りに沢山のひとが居ますよね?」「もしもそうだとしても、チャンミナが居なきゃ寂しい」「ふうん…」どうでも良さそうな返事だけど、視線を逸らしたって空返事だとしたって、頬は緩んでいるこんな表情だって今まで見た事がある、なのにどうしてだろう、緊張したように胸が高鳴るのは「兎に角、あの日の事はもう忘れて、また普通に出来たら嬉しいです」「え…忘れる?」「うんユノヒョンには僕の恥ずかしい姿を見られたし、ヒョンもあの後…って教えてくれたお互いに恥ずかしかったから、これでもうあの件は忘れましょう」まるで、恥ずかしさ以外は何も無かったのだと言うようなチャンミン俺はあの日以来、何度も何度も思い出しては熱を持て余しているのに、切っ掛けを作った当の本人はけろっとしている「あの時も忘れてって言いましたよね?すぐに忘れる事は無理だとしても、もうあの件は持ち出さないで…」「それは無理」ぴしゃり、と断言してしまった言葉にしてから、気持ちがそのまま外に出た事に気付いた驚く様子のチャンミンを壁に追い詰めるようにしてじりじりと近付いたら、更にもっと困惑した様子になる「忘れられない、脳裏に焼き付いてるチャンミナの気持ち良さそうな顔や感触、それに…」生温い体液の味、とは流石に言わなかったドン引きされる事は目に見えているからでも、言わなくたって、既に引かれているかもああもう、元の関係に戻れるチャンスだったのに俺は馬鹿だ自分でも何をしたいのかが分からない『これからも変わらずに』ついさっきチャンミンの母親に話したばかりなのに、これじゃあまるで変わりたいみたいだ「ユノヒョン、何言ってるんですか」「気持ち悪い?」「だから、そんなんじゃあなくて…そんなの狡い、都合良すぎるよ忘れられないし無かった事にも出来ないなら、今までと同じように変わらずに…なんて無理ですよね?」壁際まで追い詰められても、支離滅裂な俺を諭すように潤んだ瞳で見上げてくる肩の横に手をついたら、びくりと震えたそれはほんの一瞬で、直ぐにまた鋭い眼差しを向ける「ユノヒョンは狡い『俺の所為にすれば良い』って言ったり忘れてくれないって言ったり…そのくせ、ヒョンだけが何も無かったように涼しい顔をしているのが狡い」「……」チャンミンには涼しい顔に見えているらしい実際はかなり緊張しているチャンミン相手に緊張する事なんてなかったのに、あの日以来俺はおかしい俺達はお互いを誰よりも分かっている、言葉で言わなくたって通じ合っている、似ていないしまるで正反対、だけど家族のような兄弟のような存在それなのに、今はチャンミンの気持ちが、何を考えているかが分からない「忘れられないし焼き付いているなら、もう一度手伝ってください」「…っえ……」ごくん、と唾を飲み込んでしまった気付かれただろうか、と思ったけど、いつの間にか壁についていた手と手の間にすっぽりと収まっているチャンミンの喉も小さく上下したから、俺達は今同じように緊張しているのかもしれないまさか、もう一度触って手伝って欲しいと言われるのだろうかもう一度触れたら、あの日から続く熱や不可解な感情を紐解けるだろうか肉欲じゃあない、それだけは言えるこの感情に名前を付ける事が出来るだろうか「…キス、手伝ってください」「……え?!キス??」「っ、声が大きいよ!『あれ』を手伝ったんだからキスくらい良いですよね?」真っ赤になったチャンミンは俺の唇を両手で塞いでから、今度は慌てた様子で手を引いた「いや、だけど…キスは好きな子に取っておいた方が良くないか?」これは、年上の幼馴染みとして正解の言葉冷静にそう思う俺と、そんな自分の言葉に何故か傷付く俺がいた「キスは口と口が触れるけど…ユノヒョンはもっと凄いところに触れましたよね?だから…『好きな子』とのキスが上手くいくように練習を手伝ってください」何でもない事のように言っているけど、チャンミンの声は少し震えていた最初は俺をじっと見据えていたけど、見つめたら視線を逸らすしその目は少し潤んでいた恋愛対象に性別は関係無い年上でも年下でも良いだけど、誰でも良い訳じゃあない俺を博愛主義者だとか完璧だって褒めてくれる誰か、よりも、当たり前に弱いところを持つ等身大の俺を受け入れて、弱音だって吐ける心許せる相手が良いチャンミンは大切な幼馴染みだし、彼の前では格好良い兄でいたい絶対に恋愛対象になんてならないそれなのに…「…………キス、ってこんな感じなんだ…」俺から、ゆっくりと唇を押し付けるだけのキスそれだけで離れ難くなった俺の気持ちを他所に、ぼんやりした顔で呟くチャンミン指で唇をなぞって俯くチャンミンあの日以来、約二週間考え続けても何をしても分からなかったのに、キスひとつで気付いてしまった俺は、絶対に好きになる筈のない相手に恋をしてしまったのだと━━━━━━━━━━━━━━━読んでくださってありがとうございます足跡代わりのぽちっもお願いします ↓にほんブログ村
あの日から約二週間、あまりに顕著に避けられてきた原因は俺分かっているから強く出られないしどうしたものかと悩んだ悩んでいるし、何とかして元の気さくな関係に早く戻りたいなのに、何度も何度も『あの日』のチャンミンの表情や体温、感触、それにこっそり確かめてしまった味まで無意識のうちに反芻している初めて恋を知った時だって、ここまでじゃあなかった恋愛対象でも恋愛感情でもないのに、あの日から年下の大切な幼馴染みの事ばかり考えているし、思い浮かべて熱を処理している「帰る時、気付かれてたのかな…」何度も何度も確かめてみようかと思っては、結局勇気が出なくて聞けないままでいる『俺も同じようになっていたって気付いた?』『気付いたから気持ち悪いって思った?』『勝手に手伝って、触れたのが嫌だった?』「…嫌だろ、普通に誰にも触られた事がないって言ってたし彼女もまだ居ない分かっていたのに、どうして俺は…ああもう…」兎にも角にも謝罪すべきだ手伝う、だとか俺の所為にすれば良い、だとか勝手な事を言ってチャンミンの大切な場所に触れたお互いに恋愛対象ではないから良い、なんて事も言ったような気がするけど、冷静になってみたら支離滅裂だ少し触れて刺激しただけで、チャンミンは拒絶するどころかその逆で…俺の手の中で達しただから大丈夫、だとか冷静になったら思えないだって、あの日以来どう考えても避けられていて…「堂々巡りだ…はあ…」今までと同じように話がしたいでも、避けられている原因はどう考えても二週間前のあの日謝れば許してくれるだろうかいや、そもそも怒っているのか嫌われているのか、気持ち悪いと思われているのか分からない分からないし、分からないからこそ怖い幼い頃から兄弟のように過ごしてきたチャンミンの事なら何でも分かる、そう自負していたのに、ここに来て全く自信がない「……」授業は終わったけど、今日はこれから部活動がある一年生の教室まで直接会いに行く時間はない…否、直接向かって可愛い幼馴染みに拒絶されたら切ないメッセージを送る勇気もない「部活、行かなきゃ…」悩みがあっても何か辛い事があっても、ダンスをしている時はそれだけに没頭して忘れられるなのに、あの日以来大好きなダンスをしていても頭の隅にあの日の事がちらついて離れない申し訳無さ、そして初めて見たチャンミンの姿に隠し切れない興奮恋愛対象じゃあない、恋愛感情でもないのに、熱を持つ身体不甲斐無さに溜息を吐いて立ち上がった握り締めたスマホをふと見たら、メッセージの通知があった「……これは…チャンスって思って良いのかな」母親からのメッセージには、今夜自分達両親の帰宅が仕事で遅くなる事、シム家で晩御飯を食べるように、とチャンミンの両親が俺に伝言をしていた事が書かれていた最近は以前より少なくなったけど、元々両親同士の仲が良いから良くある事で、チャンミンが俺の家で食事をする事もあった廊下を歩きながら、メッセージアプリからチャンミンのアイコンを探し出してタップした『あの日』以前は常に上部にあったのに、あっという間に探さないと見付からない場所まで下がってしまった毎日のように名前とアイコンを探してはタップして、文字を打っては送信する前に消しているけど「どうせ後で会えるから…」今日もまた、同じ『久しぶりにチャンミナの家でゆっくり出来るな』『手土産にお菓子を買って行こうか?』と打ってから、全て消してスマホをポケットに仕舞った緊張するし、顔を合わせたらどうなるか、怖くもあるでもそれ以上に会いたいし話がしたい謝りたいしこの関係を壊したくないあの日のチャンミンを思い出して何度も…なんて事は言えないけど部活動が終わるまでチャンスはないと思っていたでも、普段は部活の見学になんて来ないチャンミンの姿を多目的室の外に見付けたダンス部は人気があるのか、常に見学者がいるし今日も大勢だったそれでも、奥の方にまるで隠れるようにして佇むチャンミンの丸い頭や癖毛はすぐに分かった最後まで見学してくれるかもしれないもしかしたら、今夜の事があるから一緒に帰ろうとしてくれているのかもしれないなんて、真剣に後輩に指導しながらも考えただけど…「…チャンミナ!」「…っ、チョン先輩、どうしたんですか?」「あ…ごめん、ちょっと抜けるよ」丸い頭が奥の方に見えなくなって、隣で誰かが引き留めている様子に気が付いたチャンミンはこの場から離れようとしていると分かった理由は分からないけど、俺なのかもしれないいや、それならば何故見学に来てくれたのか…分からないけど、考えるよりも先に身体が動いて多目的室を飛び出し走ってチャンミンの腕を掴んだ「チャンミナ…」二週間前のあの日以来、初めて触れた身体泳ぐ視線、間違いなく俺から逃げようとする大切な年下の幼馴染みやはり、完全に避けられていたのだと分かって、自業自得だけどショックだったそれでもこのチャンスを逃したくなくかった必死に説得してふたりきりになれる場所まで移動して、あの日の事を謝り本音で話をした意外にも、チャンミンは俺に怒りを抱いたり不快感を覚えてはいなかった、らしい嘘ではないと分かる、俺とチャンミンの仲だからそれでも勝手な事をしたから謝っていたら、恥ずかしいから忘れて欲しいと必死に言われた蒸し返されたくはないようだし、確かに忘れてしまえば元に戻れる…かもしれないでも、忘れるなんて無理だし、忘れた振りも何だか違う恥ずかしがるチャンミンを見ていると、今まで感じた事のない複雑な感情が湧き上がるそれはまるで、俺の体温をぐっと引き上げるような『何か』もっと見たくなる、知りたくなるような『何か』何でも分かっている、知っていると思っていた家族のような年下の幼馴染みそんなチャンミンのまだ知らない顔をもっと見たくなってしまった「実は…あの後、俺もひとりでした」「………は?」鳩が豆鉄砲をくらったような顔チャンミンのこんな顔も珍しいけど、見たいのはこれじゃあない「言わずにおこうと思ったけど、フェアじゃない気がしてそれに、手伝った後に俺も『そうなった』って分かったら、チャンミナの恥ずかしさも小さくなる……ならない?」嫌われてはなかったから、きっともう大丈夫共犯者になってしまえば『恥ずかしいから忘れて』と言えなくなるに違いないそうすればふたりで秘密を共有出来る今までのように誰よりも近い幼馴染み、で居られる「安心してチャンミナを『そういう目』で見た訳じゃないから」「……うん」こくん、と子供のように頷くチャンミンを見て、思わず抱き締めそうになった俺からハグをした事は何度もあるし、その度に『近い!』『苦しい!』と半分冗談で突っぱねられた事もあるでも、今は触れてはいけない気がした触れたらきっと、熱がぶり返すだろうからあの日、あの後一回限りだったとは言えても、あの日以来何度も…なんて、流石に知られる訳にはいかないから「ええと…チャンミナ、このまま一緒に帰る?」「え…いや、ヒョンはダンス部の練習…」「荷物は取って来なきゃいけないけど、他の皆も居るし大丈夫今日は久しぶりにチャンミナの家で一緒に過ごせるんだし、折角だから」やっと目を見てくれるようになったから嬉しくて、畳み掛けたがしかし、チャンミンは俺の言葉に怪訝そうな表情を浮かべている「チャンミナ?どうした?」「…喧嘩してたとかじゃないですけど、仲直り?をしてすぐに、即家に遊びにくる、とかユノヒョンの行動力…」「え?あれ、聞いてないの?今日、俺がチャンミナの家で食べる事になったって…」「え??」スラックスのポケットからスマホを取り出して、ほら、と母親からのメッセージを見せた多目的室を出る時に咄嗟に持ってきて良かったチャンミンは大きな目を丸くして、『僕には連絡なんて…』と言いながらスマホを取り出した「………あった」「連絡、あった?」「…うん、母さんからさっき…『一緒に帰って来たら?』だっていつまでも小さい子供じゃないのに」はあ、と呆れたような…でもどこか恥ずかしそうな様子を見て何故かぐっときたきっと、その理由は…「チャンミナが小さな子供じゃないって事、俺はちゃんと分かってるから大丈夫」「…っ、ユノヒョン!!」何を意図するのかがすぐに伝わったようで、真っ赤な顔で俺を見つめるチャンミン色々な顔を見せてくれる年下の幼馴染みと過ごしていて、こんなに心躍るのは初めてかもしれない━━━━━━━━━━━━━━━読んでくださってありがとうございますまだもう少し続きますお話のやる気スイッチになるので読んだよ、のぽちっをお願いします ↓にほんブログ村
Side C『あの日』から僕はおかしい何かがおかしいいや、何か…ではなくて、ちゃんと分かっている分かっていたって気付かない振りをしたいだけ「……っ…!」はっと目が覚めたエアコンで快適に保たれているのに背中がじっとりしているいや、だけど夢で良かった良かったけど…「最悪、またかよ…」気持ちは泣きたい焦以外でも濡れて気持ち悪いところがある本当に最悪の気分アラームよりも早く目が覚めて、寝足りない心臓はバクバクとうるさいなのに、夢では気持ち良かったし身体もすっきりしている「ああもう……ユノヒョンの所為で変な身体になっちゃったじゃんか…」僕とは違って博愛主義者で誰が見ても完璧、完全無欠って言葉が似合う年上の幼馴染み自分とはあまりに違い過ぎて、鼻につく事もあるだけど嫌いになんてなれないし、この間はとんでもない慈善活動、善意のボランティアをしてもらっただからこんな事言えない「ひとりじゃ何を想像しても、見ても駄目になっちゃったなんて……」ベッドの上、起き上がり背中を丸めて頭を抱えたそして、すぐさま現実に戻りベッド脇のティッシュケースに手を伸ばした家族にばれないように下着を洗濯しなければならない普通に女の子が好きで、だけどなかなか運命の相手、には出会えないだけの平凡な高校生男子完璧な幼馴染み、ユノヒョンを見ると男として悔しい気持ちもあるけど僕は僕何もかも平凡、それで良いと思っていたのにこんな事で非凡になんてなりたくなかった、そう思いながらぺたりと張り付いて気持ち悪い下着をのそのそと脱いだ気付かない振りをしたいそんな事ない、時間が経てば大丈夫、そう思いたいだけど、あの日から二週間、ユノヒョンに触れられた事を思い出してばかりいるそれどころか、あの感触を思い出さないと僕の身体は男としての反応を見せなくなってしまった更には無意識の内に夢で勝手に再現されてはこうして…「手伝ってくれたのに、ばかとか言ってごめん、ユノヒョン」本人には絶対に言えないから、ユノヒョンの家の方に向かって呟いた毎日夢の中で…流石にそれはない自ら、好き好んであの日の事を思い出して触れる事もないだけど、数えたくはないくらい、何度もあの日の記憶で気持ち良くなってしまった健全な男子高校生は何にだって反応する、なんて話も聞くが、僕はそうではないと断じて言いたい何だって反応するならそれこそ可愛い女の子を想像して…なのだから健全な、普通の男子高校生それなのに恋愛対象には絶対になり得ない年上の幼馴染みでだけ熱を持つ身体これは、高校一年生の僕のトップシークレットになった「トップシークレット?何ぶつぶつ言ってるんだよ」「うわっ!!おどかすなよ…!何でもない、何も言ってない」ひとりでひっそり下校しようとしたのに、クラスメイトの友人に捕まってしまった肩を組まれて「暇だろ?」と決め付けてくるから「暇じゃない」と即答した「はい嘘、チャンミンは分かりやすすぎるそもそも、昼間に聞いた時は『今日は何もない』って言ってた」そう言えばそうだった完全に忘れていた、だけど…「その後に予定が入る事だってあるだろ僕だって暇人じゃないんだから」校門へ向かうのと反対方向に連れていこうとする友人に抗いながら返した校内に居たらいつ何処で顔を合わせてしまうか分からないから、早く帰りたい「チャンミンを暇人だとは思ってないけど、好きな子も彼女も居ないだろ?俺は好きな子が居るから忙しいんだよ」「好きな子……」そうだ、好きな子が出来たらトップシークレットともおさらば出来る筈好きな子が居なければ経験もない、だからユノヒョンに手伝ってもらった事が刺激になっているだけそう思ったら思ったで、またしても今朝の失態やあの日の事、それ以来の悩ましい日々を思い出してしまった「チャンミン、お前…もしかして好きな子が出来たのか?!」「はあ??そんな訳ないだろ」「いや、今の顔は恋、だな…水臭いな、誰の事考えてたんだよ分かった!トップシークレットって好きな子のこと…」「違う!!それは…!!!」つい焦って声が大きくなった驚いたように目を見開く友人を見て、はっと我に返って「本当に何でもないし、好きな子も居ないから」と吐き捨てた肩に置かれた手もそのまま離して、今度こそ帰ろうとしたそれなのに、友人は懲りる様子がない「分かったから!だから今は付き合って、お願い!」「はあ?もう何だよ…」「俺、気になる子が居るんだよ今度大会に出るらしいんだけど、今その練習をしているんだって」「ふうん誰?」「俺は勿体ぶったりしないよ!隣のクラスの…」耳打ちで教えられたのは、美人だと有名な隣のクラスの女子きっとライバルも多いのだろう僕のタイプではないし、ライバル多数の恋に挑む勇気もないから詳しくもない相手「チャンミンは俺のライバルじゃ……うん、無さそうだな!これで完全に安心出来たし、一緒に行こう、な?」「……」多分、僕が首を縦に振るまで折れないならばこれ以上エネルギーを使わずにいたい分かった、と頷いたらまたしても肩を抱かれ、鼻歌交じりの友人にうんざりしながら半ば強制的に連行された大丈夫、見学とやらが終わればすぐに帰れば良い大丈夫、広い校内で約束も無しに会う確率なんて殆どない大丈夫、この二週間の間、出来る限り避けているし必要最低限以上には関わっていないし…「……嘘だろ…」折角この二週間必死に避け続けてきたのに友人に付き合った結果、自ら姿を現してしまう事になるだなんて、なんという運命の悪戯生まれて初めて僕の大切な場所に触ったのがユノヒョン、それだけでなく、彼は制御不能だった僕を楽にする為に手伝ってくれたのに僕はその記憶と感触を無意識でオカズにしてしまっている訳で…世界はあまりに僕に厳しい「見ろよチャンミン!やっぱりダンスを踊る姿が一番輝いてる…チャンミンもそう思うよな?」「大きな声出すなって…!」広い多目的室、開かれた窓中には我が校のダンス部の面々そこには僕が良く知る人物がひとりちらっと見ただけだけど、後輩らしき生徒に笑顔を見せたり何かがアドバイスでもしているのか、相手は目を輝かせて頷いている僕とは正反対の、人望があって博愛主義で誰にでも頼られ求められるひと「大きな声なんて出してないよ、普通」「だとしても…」大勢のギャラリーが居るから『運命の悪戯』に翻弄されても何とか隠れられそうなのに、友人に名前を連呼されたら一瞬で肝が冷えてしまう友人を前に押し出すようにして、彼の背中に隠れながら「静かに見学してよ」と訴えた友人は悪びれる様子無く周りを見渡して、大きな声は出していないのだと言いたげ確かにそうだ、大声ではなかっただけど、リスクは小さな物であっても回避したいと言うか、本当は今すぐ帰りたい「…聞いてないよ、ダンス部だなんて……」「言わなくても分かってると思ってたそれに、ほら…ダンス部にはお前のヒョンが居るだろチョン先輩とチャンミンが居れば、俺もあの子とお近づきになれるよな?」それだけ前向きでやる気があるなら、僕やユノヒョンを頼らずにひとりで何とかして欲しい「僕とユノヒョンって…ユノヒョンはダンス部だから分かるけど、僕はあの子と話した事もないから関係無いよ」「何言ってるんだよ俺はチョン先輩とは親しくないから、チャンミンを連れて来たんだってばチャンミンが居ればチョン先輩……あ!こっち見た!チャンミンほら、チョン先輩が…」もう完全に友人の背中に隠れていたのに、ぐいぐいと腕を引かれた嫌だ、こんな風に不可抗力で顔を合わせたくない今朝も粗相をしてしまったのに、気まず過ぎる「帰る、用事を思い出したから…」「え!チャンミン…?」多少目立っても良いからここから離れたい友人を振り切りギャラリーから離れたのに「チャンミナ!」と友人ではない声で名前が呼ばれたもうこうなったら走って逃げるしかないあの日の事が焼き付いている限り、不意打ちでは自然に挨拶なんて出来ないだけど、走り出すよりも早く、背後から右腕を掴まれてしまった「チャンミナ!見に来てくれてたのか?連絡してくれたら…いや、連絡なんて無くても嬉しいよ」「友達に無理矢理連れて来られただけですもう帰らないといけないので離してください」ギャラリーにも多目的室にも背を向けているけど、周りの視線が集まっている気がするユノヒョンは部長だし、そうで無くても人気があるし目立つから「帰らないと……って、今日は何もないよな?」確かに嘘を吐いているでも、どうしてヒョンが僕の予定を把握しているのか分からないけどとにかくここから逃げたくて腕を引いた、なのにびくともしない「ここじゃ目立つから、向こうで話そう」「…っ…近過ぎるから…!」耳元で囁かれて、そのままユノヒョンに腕を引かれて廊下の突き当たりまで向かい、人気のない階段でようやく止まった「チャンミナあの日から俺を避けてる、よな?」「…何の事ですか忘れてくださいって言いましたよね?」もう、腕は離されただけど掴まれていた腕がじんじんと熱を持っている強い力じゃなかったのに、何故なのだろう視線を逸らして、掴まれていた腕をぎゅっと握った見えないけど、ユノヒョンがふっと笑ったのが分かった「何の事?て言っておいて『忘れて』じゃあちぐはぐだなあ」見えなくても分かったこの声は、揶揄ったり馬鹿にしている声じゃないそもそもひとを馬鹿にするようなヒョンじゃないだけど、僕は馬鹿にされたり気持ち悪がられてもおかしくない醜態を晒してしまった余計に自分が恥ずかしくて、何だか汚い存在のように思えたユノヒョンは覚えているくせに普通に接してくるから「チャンミナ、あのさ…俺の事が嫌になった?」「…どうして僕がヒョンを嫌いになるんですか?むしろ、手伝わせた僕の方が…」「いや、俺が言い出した事だし…」そうだ、ユノヒョンが言い出した手伝うってでも、僕は異性にしか興味がないし、例え性別が違っていてもユノヒョンは家族みたいに近いから有り得ないって思っていたのに触れられて簡単に反応してしまった「だから、嫌がられたり気持ち悪いって思われるのは僕の方です」あの日以来何とか避けていたけど、それだけじゃあ伝わらないようだからはっきり言ってしまおう本当の事は言えないけど、とにかく気まずいのだと顔は上げられないままだけど、唇をぎゅっと噛み締めて反応を待った「だから?どういう事か分からないけど、恥ずかしいのかな」「…っ、そんなの当たり前!」能天気に言われたから、思わず顔を上げたばちん!と目が合ったユノヒョンが「やっと見てくれた」なんて嬉しそうに笑うから、何だか力が抜けてしまう「嫌がられてなくて、恥ずかしいだけなら良かったそれに、最初に言っただろ?『全部俺の所為にすれば良い』って」「あ……だけど!僕だけあんな事になったら恥ずかしいよだから忘れて欲しいって言ったんです」どうやらヒョンはヒョンで僕を気持ち悪いとは思っていないようだ腐れ縁のような関係を手放し関わりを持たなくなる事なんて望んでいないから、安堵した「忘れるのは無理」「え…」次の言葉で今度はまた狼狽してしまった視線を泳がせていたら、ヒョンが顔を近付けてきた驚いて固まる僕の目の前で「実は…」ととんでもない事を口にした「実は……あの後、俺もひとりでした」「………は?」「言わずにおこうと思ったけど、フェアじゃない気がしてそれに、手伝った後に俺も『そうなった』って分かったらチャンミナの恥ずかしさも小さくなる…ならない?」突然の告白に何を言っているのか分からないあの後、僕とは別で…という事なら男だし何も恥ずかしくないだけど、もしもそうじゃなかったら…「どうして、あの後…」「どうしてだろうな分からないけど、俺の手で気持ち良くなってくれたチャンミナを見てたら…だったんだよでも安心して、チャンミナを『そういう目』で見た訳じゃないから」「……うん…」まさかの告白に頷くのが精一杯だった僕が逃げるように帰ったあの後、そんな事になっていたとは想像すらしていなかった「ユノヒョン、それなら…僕達、これからも変わらずにいられますよね?あれはたまたまだし、あの時だけだし、手伝ってもらっただけだし…」「うん、チャンミナは今までもこれからも俺の大事な幼馴染みだよ」笑顔のヒョンをちゃんと見る事が出来たトップシークレット、については言えないでも、思春期だしきっと何も問題ない何故だかとても安心したように柔らかく笑うユノヒョンを見て、いつもよりも心臓の鼓動が速く刻まれるのは、きっと僕も安心したからそうに違いない━━━━━━━━━━━━━━━読んでくださってありがとうございますお話のやる気スイッチになるので読んだよのぽちっをお願いします 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「全部俺の所為にすれば良い」「何の事?ユノヒョンヒョンだって僕のこんな情けない姿見て楽しむ趣味無いだろ流石にもう離してって」チャンミンはまだ分かっていない分かっていない、どころか焦って目が泳いでいる分かっていないどころか、俺がこの状況を楽しむような悪趣味な男だと勘違いしている「いつものヒョンじゃないよいくらユノヒョン相手だからって、プライバシーってものがありますよね?」「警戒するなよ、チャンミナ揶揄ってないし楽しんでもないこのまま帰るのは大変だろうから、ヒョンが手伝おうかって言ってるだけだ」「…は?」何か言おうとしたチャンミンの唇に人差し指をあてて、次の言葉を紡げないようにした自分で自分がどんな顔をしているのか、は分からないだけど、冗談でも揶揄いでもない事は伝わったようだ「俺の方が経験はあるだろうし、同じ男だからその状態だと辛いのも分かるってだけだよチャンミナを狙ってる、とかじゃないんだから…な?」目を大きく見開いたチャンミンが、座ったまま後退りしようとした右手で腕を掴み、制服のスラックスに包まれた中心に左手を伸ばした「……っ…ヒョン……」流石に驚かせたからか、時間が経ったからか、最初に気付いた時よりも随分柔らかいだけど、そうっと手のひらで形を確かめるように触れたらそれだけでもう反応した「違っ、これは……」「分かってるよ俺だからこうなったんじゃなくて、刺激に慣れていないからだよな男として普通だし、これで良いんだよ」俯いて顔を逸らして逃げようとするチャンミン今まで触れた事の無い場所に触れている俺の左手を掴むチャンミンだけど、もう本気で逃げようとはしていない無理矢理顔を見たら嫌がられると思ったから、右手で少し抱き寄せるようにして、肩越しに囁いた「今、こうしていて…俺に触れられて気持ち悪いって思う?」「…気持ち悪くは……大丈夫」「良かった、無理してない?」彼の言葉に安堵した少しずつ手指を動かして、ゆっくりと刺激してみるチャンミンの肩に力が入って、息が荒くなった「無理、はユノヒョンの方じゃ…ヒョンは『手伝う』って言ったけど、こんな風に手伝うのは嫌じゃないんですか?」本当はもっと抵抗されるかも、とも思ったいや、後で思えば笑える程必死に冷静を装って真摯な対応を心掛けたお陰なのか、そもそもチャンミンが俺の事を『博愛主義者の完璧なヒョン』だと思っているからか、彼はもう抵抗を見せなくなった…どころか、俺を止めようともしない「…俺以外には手伝わせたら駄目だからな」「はあ?当たり前……っ…ん…!」スラックスの上からでも完全に分かるようになった形親指と人差し指の腹を使って上下にゆっくりと動かしたら、チャンミンの熱い息が俺の首にかかった余裕が無いのもされるがままなのもチャンミンだけなのに、全身に一気に血が巡ったように熱くなった「このままじゃちゃんと手伝ってあげられないから…」「え…あっ!あの!ユノヒョン…!」肩から右手を下ろした「大丈夫」と出来るだけ優しく囁いて、スラックスのベルトを緩めた「チャンミナが恥ずかしいなら出来るだけ見ないようにする」「でも、流石に…」カチャカチャ、と金属音が響く小さな音なのにとても大きく聞こえるのはきっと気の所為そう感じる程緊張しているのだろうかリードする俺が緊張する必要なんてない筈なのに「チャンミナが気になる子に触れられてるって思ったら良いよ」「…何言って…女子?こんなに大きくないよ!」「…っ……」チャンミンの表情が見えないつまり、チャンミンからも俺の顔が見えていなくて良かっただって、不覚にも彼の言葉に都合の良い主語をあてて想像してしまったから彼を『そういう対象』には決して見ていないのに、初めて見たチャンミンの大人の部分に慣れていないからだろう「まだ言い返す余裕はあるんだなじゃあ、何も考えなくて良いからこのままヒョンに任せて」何故か俺の方が気が逸っている『ヒョンだから』と何度も何度も、これじゃあまるで自分に言い訳して理由を付けているようだスラックスの前を緩めてつるりとした下着の生地に触れたら乱れていた息がひゅっと止まって密かになった息を殺しているのはチャンミンだけじゃない、俺も同じあの、とかその、とか、震える声で何か聞こえたような気もするし、勘違いだったのかもしれない分からなくなるくらい、多分この時の俺は昂っていた息を潜めたまま、向かい合ってチャンミンの顔は見ないまま、薄い生地に覆われたその下に手を忍ばせた熱くて、言葉では形容出来ないような感情が湧き上がった「チャンミナ…」「あ、だめ……っ…!!」チャンミンの切羽詰まった声はそのまま、俺の肩に吸い込まれていったぐっと握ったその瞬間に弾けたのだとその時初めて気が付いて、心臓の鼓動が突然耳の奥でうるさく響き始める力を無くしたチャンミンの一部を確かめたくて身じろいだら、どんっと胸を押された「え…」「ごめん、ユノヒョンごめんなさい…でもこれ以上無理!誰かに触られた事なんてないし、なのにユノヒョンの手に…無理無理無理!」チャンミンは座ったまま背中を向けて、身支度を整え出した濡れそぼったものを覚束無い手つきで仕舞う姿を覗き込みたい気持ち、よりも『無理』と連呼された事にショックを受けてしまった「チャンミナ、ごめん、俺…」一時の言葉に出来ないような衝動で何て事をしてしまったのか一気に血の気が引いて、濡れた手のひらを握り締めて呟いたチャンミンは少し乱れているものの、制服で肌を覆い隠して立ち上がり漸くこちらを見下ろした「ユノヒョン」「うん…」「いくら博愛主義者だからって、こんな事まで手伝うだなんて…人が良過ぎるよ!でも恥ずかし過ぎて無理!お願いだから忘れてください!」「え…」想像もしていなかった言葉に呆気に取られて固まった不覚にも、そのままチャンミンを逃がして…否、彼は俺の部屋を出て帰ってしまった「……不味っ…」なんとはなしに手のひらに残った体液をひと舐めした同性も恋愛対象、同性との経験があったって今までした事がないのにそして…「……気付かれてない、よな?」触れても触れられてもいない自分自身の身体は、大切な家族のような、弟のような存在であるチャンミンを見て、触れただけで変化してしまっていた嗚呼、このまま俺は大切な弟の前で面目を保てるだろうか━━━━━━━━━━━━━━━読んでくださってありがとうございます足跡代わりのぽちっもお願いします ↓にほんブログ村
期末試験が迫っているから勉強を見て欲しい、と年下の幼馴染みチャンミンにお願いされた俺にとっても復習になるし、誰と過ごすよりも気兼ねなくいられるから合間に自分の試験勉強も出来るから二つ返事でOKした「…あれ……いつの間に…」肩が凝って伸びをしたついでに勉強机の前から振り返ってローテーブルを使っているチャンミンの様子を見たら、丸い頭がテーブルに乗っていたチャンミンの勉強を手伝った後、自分の勉強に集中していたから彼がいつから居眠りしているのかは分からない「どうしようかな…」スマホを見たら、もうそろそろ夕飯の時間だ食欲旺盛なチャンミンならば腹時計で起きそうな気もするけど、ゆっくり近付いてみたら気持ち良さそうな寝息が聞こえるだけこのまま寝かせてやりたい気持ちもあるけど、勉強の途中かもしれない「チャンミナ、もう七時過ぎだよおやつは食べたけど夕飯はまだだろ?それに勉強も…」「…んん……」無理矢理起こしたくないから小声で声を掛けたチャンミンは突っ伏したまま小さく頭を動かして唸るだけ、顔は見えない彼の顔の下にはノートと参考書、ヨダレでも垂れていないだろうか…なんて、チャンミン本人が聞いたら『子ども扱いしすぎ!』と言われそうな事を考えてしまう「実際俺からすれば子どもだからなあ…」チャンミンは二歳年下なのに、俺の身長に追い付いてしまいそうだ周りの同級生達と並ぶと頭ひとつ大きいだけど、俺からすれば子どもだし顔立ちも幼いどれだけ中身がしっかりしたって、『彼女が欲しい』『モテたい』と言ったところで変わらない「チャンミナ起きて寝るなら帰ってからにしよう」肩に手を乗せてもう一度声を掛けただけど起きないんん、だとかむう、と言うような返事…いや、無意識の何か、があるだけ親同士も仲が良い家族のような仲、家も近所、いっそこのままチャンミンが泊まっても問題は無いが流石にローテーブルで寝かせる訳にはいかないもう一度声を掛けてから、脇の下に両手を入れて身体を起こしたく「無理矢理ごめんな、でも一度起きないと…」身長は伸びても細い身体とは言え力が抜けているから重たいぐっと力を込めて起こしても尚目を瞑り眉間に皺を寄せるチャンミンの頬には跡がついているヨダレ、ではなく参考書かノートの上に突っ伏した跡だ「ふ…」可愛らしくて笑みが零れた瞬間、そちらに意識が取られた所為でチャンミンを支える事を忘れてしまい…「うわっ!」バランスを崩したように目を瞑ったままのチャンミンがこちらに倒れ込んできた途中で肩を掴み支えたけれども、気が付いた時には視界がぐるりと回り、仰向けの俺の上にチャンミンが向かい合って重なるように倒れ込んでしまったラグがあるし俺はどこも打ち付けていないチャンミンも自分の身体で受け止めたから安堵したけれども…「チャンミナ、幾ら何でも眠りが深過ぎるだろ」「…んっ…」はあ、と溜息を吐いて呟いたら、突然チャンミンがびくっと震えたその反応に一瞬驚いたすぐに、俺の唇がチャンミンの耳にくっ付いてしまいそうなくらい近かったからだと気付いた大きな声は出していないけれど驚かせただろうか顔を少し逸らしても俺の上に俯せになったチャンミンの表情は見えない取り敢えず未だに眠っているようだから、この妙な体勢も何とかしなければそう思い肘で身体を支えながら膝を立てたのだけど…「………あっ…!」突然、裏返ったような声をあげたチャンミンは俺の二の腕をぐっと掴んだついさっきまで規則正しく刻まれていた寝息は今は荒く短い「チャンミナ?!どうした…」「動かないで……え?ユノヒョン?!うわっ!!」頭を持ち上げたチャンミンの顔が至近距離にあった家族のような兄弟のような仲だからそれだけでは驚かないでも、彼の表情が今まで見た事ないようなそれで…薄く開かれた唇や火照ったように赤くなった目元、吐息までもが何故だかあまりに生々しくて、気が付いたらごくり、と唾を飲み込んでいた「やばい!ユノヒョン、離して!」俺の上で慌てたように動くチャンミン急がなくてもゆっくり退けば良いのに、寝起きで状況が飲み込めないのだろうか「起こそうとしたら、バランスを崩しただけだよ俺もチャンミナも怪我も無いし、慌てなくても大丈夫…」「あっ…!」「え…チャンミナ……あ…」俺から起き上がろう、ともう一度身じろいだ時、チャンミンの身体がまたびくっと震えた耳は真っ赤だし、今まで聞いた事の無いような声俺はと言えば、この時漸くチャンミンが焦った理由に気付いた「…ええと…朝とかたまにあるよな男同士だし、俺はバイだけどチャンミナの事は『そう言う目』で見ないから大丈夫」俺の脚の間にあるチャンミンの身体右の太腿に硬い感覚がある、つまり、変化したチャンミンのものが当たっている思春期は色々な事があるものだ人生の先輩として焦る事は無い、と伝えようとした「違う!何も無いとこんな風にならないよ!ユノヒョンが刺激したから…」相変わらず俺の上に乗ったまま、顔には参考書かノートの跡をつけて俺を見下ろすチャンミンの必死な顔こんな表情は何度も見た事があるのに、だけど今までとは違う妙な艶めかしさがある「チャンミナもちゃんと大人なんだな」「こんな事で実感するなよ…離してください」「分かったよでも、チャンミナ『俺が触ったから』ってどういう事?本当は起きていたの?」狼狽するチャンミンが可愛くて、悪戯したい訳ではないのに離せない幼い頃のじゃれ合いの延長のようにしっかり腰に腕を回したまま尋ねたら、むうっと顔を顰めてぶんぶんと首を横に振り、即否定された「寝ぼけてたから相手が誰かなんて分かんないよ何だかあったかくて触られてるような気がして…そんなの女の子しかいないって思う」確かに、ストレートのチャンミンにとって『そう言う相手』は異性しか有り得ないつまり、俺との接触で反応してしまった事が衝撃なのだろう赤くなっていた顔は今はもう青白くも見える「大丈夫、こんなのは事故だよチャンミナが俺を『そう言う目』で見たからこうなった、なんて思わないし勘違いしないから安心して」「…それもそうですけどユノヒョンだって嫌じゃないんですか?僕とだけは有り得ないのに当たってて気持ち悪いですよね?だから、もう意地悪しないで離してよ」「……その言い方じゃあ何だか…」何だか、まるで、俺がチャンミンを嫌っているみたいだそんなつもりで発せられた言葉ではないと分かってはいるけど、少し心に刺さった大切な家族のような、血の繋がらない弟のような存在恋愛対象にならないのは何よりそれが大きいのに「何だか…何?離してってば…!」寝癖で所々跳ねて膨らんだ頭突っ伏していたからか、目元が少し浮腫んで重たく見える最近大人びてきたと思っていたし、実際に下半身はしっかり大人だと判明したところそれなのに、今は彼の容貌が幼く見える「可愛いなあ、チャンミナは」「はあ?!馬鹿にしてるんですか?とにかく、僕は相手が女の子だって思ったから『こう』なっただけだし、男なんだから可愛いとかないですよね?」「性別は関係ないよ」「ユノヒョンはそうだとしても僕は…小さかった頃ならそう言われてもまあ…でも、『これ』は絶対に可愛くないよ」こんな風に言い合いをしていたら落ち着いても良さそうなものだけど、チャンミンの下半身は形を少し変えたまま完全に…ではないけれど、こうして密着していたら隠しようがないくらいには分かる「とにかく、僕は例え相手がユノヒョンだとしても、男同士で密着する趣味はないんですユノヒョンだって僕とは『ない』んだから離して、それから今の事は絶対に忘れてください」これ以上は流石に嫌われてしまいそうだ興味本位で触れ合う場所ではない、とも分かっているだけど、幼い頃から知っている家族のような弟のようなチャンミンが俺の知らない大人になっている事に今更だけど寂しさを覚えてしまった後になって思えばこじつけだとか言い訳だとか、自分で自分が情けなくもなるけど…「離しても良いけど…それ、どうするの?俺とくっついていても治まらないくらいなんだから、処理しないと帰れないんじゃないか?」「そんなのユノヒョンには関係ないです」「ふうん」起き上がろうとするチャンミンの腰をしっかり捕まえて、下半身は脚で挟み込むようにして動きを封じていたそれを一気に緩めたら、俺の胸をぐいぐい押して離れようとしていたチャンミンは目を大きく見開いた「今からうち のトイレでひとりでするの?」「生々しい事言わないでください僕だってしたくないよ、でも、こんなの不可抗力みたいなものだし…」座ったまま背を向けたチャンミンの背中が丸まっているついさっき『意地悪しないで』と言われた時はそんなつもりないのにって思ったでも、不本意そうだったり恥じらう姿を見たら今まで感じた事のない感情が湧き上がってきた「チャンミナ」「……このまま帰るどうせすぐそこだし、そのうち治まるから……っえ?」立ち上がろうとしたから焦って手を伸ばして腕を掴んだ驚いて振り向いた顔、頬はまた少し赤く染まっていた思わずごくん、と唾を飲み込んだ余裕があって完璧で博愛主義者だとか言われる俺らしくないいや、そもそも俺はただの男たまたま同性も恋愛対象になるだけただ、チャンミンは決して『その相手』にはならないだから…「不可抗力、って俺のせいだよな?なら、俺が手伝って楽にしてやる」「…は?」「全部俺の所為にすれば良い」初めて他人と肌を重ねた時にさえ無かった感覚全身の血が沸騰するような感覚を、この時初めて覚えた━━━━━━━━━━━━━━━飛ばされないように進めようと思いますが、万が一飛ばされていたら(読めなくなっていたら)コメント等で教えていただきたいです読んでくださってありがとうございます更新頻度が落ちたり久しぶりだったり…ばかりの最近ですが、それでも更新すると読んでくださる方がいらっしゃる事が本当に本当に有り難いですその上コメントまで入れてくださる方もいらっしゃって、とても嬉しいです(もちろん、読んでくださるだけで大感謝です)そして…足跡代わりのぽちっを最後にお願いします ↓にほんブログ村
博愛主義者周囲から頻繁に言われる理由は主にふたつあるらしいひとつは友人が多い事もうひとつは、俺の恋愛対象に性別は関係無い事当たり前のように異性のみ恋愛対象だと言う、彼ら彼女らからすれば、俺の本心なんて分からなくて当然当然だから否定はしないけれども、それだけで博愛主義者だと言われると違和感はあるひとが好きで誰かと関わる事が好きだ同性でも異性でも恋愛対象になる得るだけど、誰でも良いってワケではない「ユノヒョン!お待たせ...じゃないか、もっとゆっくり来るべきでしたね」「来て早々面白い事を言うなあ、チャンミナお前を待っていたのにという訳で、俺達は行くから」俺の右腕に細い手を絡みつけている小柄な後輩女子に「またね」と笑顔で見下ろした待ち合わせ相手の後輩、チャンミンは俺の言葉だけでは不服なのか、俺と後輩女子を交互にじっと見て唇を尖らせている「ええ…私も行きたい!駄目?良いですよね?チョン先輩」「駄目、これから大事な予定があるから」チャンミンの視線は更に厳しさを増しているこんな時、彼の考えはきっとこうだ『男なら僕もいるのに』『僕なら女の子だけが好きなのに』『どうしてユノヒョンばかり』チャンミンはとても分かりやすい更に言えば、今までも似たような事を彼から実際に言われてきたから分かるだけで、俺は超能力者でも何でもない「ユノヒョン、何笑ってるんですか来ないなら先に行ってますよ」「ふ、笑ってないよ」いや、笑みは出てしまっただけどチャンミンを苛立たせるように馬鹿になんてしていないからしっかり否定したまだ俺の隣にいる後輩女子は、俺とチャンミンを交互にじっと見て、手をするりと離しながら口を開いた「もしかして、ふたりは良い感じなんですか?」「...はあ?!止めろよ!僕が好きなのは女の子だけ...」「そうそうそれに、俺にもタイプがあるからねこの子はタイプとは全く違う」チャンミンは、うんうん、と首がもげそうな程勢い良く頷いていてとても分かりやすいどうしても勘違いされたくないのだろうまあ、それは俺も同じ博愛主義、どころか聖人君子だとまで言われる事もあるけどただの人間、タイプも好みも嗜好もしっかりあるし損得だって考えている誰とでも上手くやっていける方だけど、誰にも言えない事だってある「チャンミナ行こう、時間が勿体無い」「...女子に良い顔して時間を潰していたのはヒョンの方だろ」チャンミンの肩にぽん、と手を置いて「ごめんね」と言ったら「本当に博愛主義者ですね」と返された「そう?」「そうですよ僕みたいな捻くれ者にも、こうして勉強を教えようとしてくれるし...」「親同士も仲が良いし、腐れ縁だろ俺達なら何がどうなっても『別の関係』にはならないし、だからこそ居心地が良いって思うよ」「ふうん…あ!そうだ、特に女子の前で『この子』とか言うなって前も言いましたよね?」思い出したように眉を釣り上げる年下の幼馴染み皺が寄った眉間に手を伸ばして人差し指で解したら、眉間の波はもっと深くなった「チャンミナはどれだけ大きくなっても俺にとっては可愛い子どもなんだよ」「…二歳しか違わないくせにああもう、身近にいるヒョンが完璧過ぎる所為で僕の好みが決まったと言っても過言じゃないんですからね」「何それ、初耳」何でも知っていると思っている相手からの気になる言葉『好み』とは恋愛だろうかだけど、チャンミンは俺と違いストレート、同性相手は絶対に無いと以前から聞いている気になるあまり、じっと見つめていたら「近い」と一蹴されたチャンミンはこほんと乾咳してから、指折り数える仕草と共に教えてくれた「僕が好きなのは年上より年下、何でも出来る完璧な美人よりもどこか抜けているくらいの子ユノヒョンが完璧過ぎて、そういう相手は僕には荷が重過ぎるだろうなあって思ったんですよ」「へえ」「勿論、一瞬でもユノヒョンをそういう対象として見てないですからね?」「分かってるよ」チャンミンは昔から俺に反発しながらも、多分、だけどそれなりに尊敬してくれている兄弟、とまでは言わないけれどもそれに近い関係だからお互いに何でも分かっている、誰よりも近い存在まるで兄弟のようだから、俺がバイでも彼は恋愛対象にはなり得ないし、チャンミンもストレートだから有り得ない「俺は完璧なんかじゃないけどね」「何か言いましたか?」「いや、何も」完璧な異性は苦手なチャンミンバイだけど、誰でも良いワケではないし兄弟のような大切な相手とどうこう、なんて考えられない俺そして、俺のタイプはきっと…本音を出せない俺が弱音を吐けるひと、情けないところだって受け止めてくれるひと博愛主義者という言葉に違和感を覚えても否定出来ないような情けない人間だから、今のところ誰にも弱音なんて吐けないし、燃えるような恋もした事はない「ユノヒョン、今更だけど誰かと予定とか…実はあったりした?」「今日?無いよチャンミナのピンチなら優先するべきだし」「ピンチって…勉強なのに」チャンミンの顔には『いちいちキザだなあ』と書いてある本当は友人に誘われてもいたけど、大切な幼馴染みに協力してやりたいし、彼が抱いている俺の姿を少しでも崩したくない本当は情けないし完璧でなんてない俺の、これはちっぽけなプライドなのだろう「試験前なのは俺も同じだし、俺も教える事で復習になるだろ?」「僕に教えてばかりじゃユノヒョンは勉強にならないのにでも、ヒョンはいつも上位ですもんね」笑顔でかわした当たり前に必死に勉強しているだけそうして、チャンミンや周りの友人達に頼られて自尊心を満たしているちっぽけな人間チャンミンが例え大切な幼馴染みでは無かったとしても、彼が俺の恋愛対象になる事は無いだろう何故なら、彼は俺を何の欠点も無いような人間として認識しているからそして、俺はそんなまがい物の『ユンホ』を崩さないように、弱音を吐かないように必死だから「ユノヒョン、ヒョンの家にお菓子たくさんありますか?」「たくさん、はどうかな」「たくさん無いと足りないよ!途中のマートに寄って行こうよ、ね?」「あはは、分かったよだけど、食べ過ぎないこと、勉強に集中すること」分かってる、と大きく頷くチャンミンは俺に追い付きそうなくらい身長が伸びてもまだまだ子ども表情は幼い頃と変わらない高校生、思春期真っ只中将来の為にも勉強は何より大事だけど、ひとの体温が恋しいし誰かを愛し愛されたいそれが理想とする相手なら良いけれど、博愛主義者でも完璧でもない俺にとっては難しい「そうだ、さっきユノヒョンに会う前にヒョンの友達に会いました」「そうなの?」「うん、今日も何人かに告白されてたって」チャンミンは小さな声で「ユノヒョンばっかり」と呟いた可愛い対抗心には笑みが零れてしまう「返事はしたんですか?」「考えて決めるよ」「それって性別は…て、別に僕は女子しか興味無いので!」「あはは、知ってるよさあどうかなまだ考えていないから分からない」「ふうん…うわっ!!」俺から視線を戻して前を向いたチャンミンが、何かに躓きぐらついた慌てて腕を掴んだから転ばずに済んだ「…焦ったあ…ありがとう、ヒョン」「チャンミナはやっぱり子どもだな俺がちゃんと見ておいてあげないと」「…そう言うの、他では言わないでくださいね僕は『そう言う関係じゃない』ってどれだけ言ったって勝手にライバル視されることになるんだから」「はいはい、分かったよ」お互いに絶対有り得ない、と分かっているならそれで良いのではないかと思うけれどもチャンミンは勘違いされたくないらしいそれはそれで少し寂しいような…これも兄心なのだろう「チャンミナは気になる子はいるの?」「…可愛い子は皆気になるよ誰かひとり、とかはないけど…僕も早く彼女が欲しい」「そうか彼女が出来ても、ヒョンとも遊んでくれる?」子離れのような…いや、この場合は弟離れかそんな寂しさを覚えて尋ねたのに、何とも言えない顔で見られた「ユノヒョンは皆に好かれてるから僕がいなくたって大丈夫なくせに」「そんな事ないよチャンミナは家族みたいだし特別」「……っ…」頬は少しばかり赤くなって、『恥ずかしい事を言うな』とでも言いたげな唇はむにむにと動いている「ありがとうございます僕は、ユノヒョンみたいにはなれないし男として敵わないって思うし悔しいけど…これでも、ちゃんと尊敬してるから」チャンミンは自らを捻くれ者だと言うだけど、こうして大切な事は伝えてくれる彼本人が可愛くないと思うところだって俺からすれば可愛くて仕方無い「ユノヒョンとは血が繋がった家族じゃない、だけど凄く近いですよね僕からすればユノヒョンは同性だから恋愛対象にならないし、ユノヒョンはバイだけど僕の事はタイプじゃないってはっきり言ってくれてるから、このままずっと変わらないでいられたら良いなって思います」「うん…俺もそう思う」全ては変わっていく変わりたくないと思ったって動いていく思春期を迎えると、肉体と心の変化という実態を伴って俺達に覆い被さる良い変化もあればそうではないものもあるだろうそれならばこのまま一番良い関係で居られたら良い、チャンミンとはきっとそうで居られる━━━━━━━━━━━━━━━数話完結の短編です最後までお付き合いいただけたら嬉しいです足跡代わりのぽちっをお願いします ↓にほんブログ村
ご訪問ありがとうございますまたしても久しぶりの更新になってしまいましたが…ツアータイトル、アルバム発売が発表されましたね2024年11月、埼玉から始まるツアーはZONEそれに先立って、11月6日には2019年のXV以来となる日本フルアルバムZONEが発売決定アルバムは韓国の20&2に引き続き初回限定の豪華盤もある、との事で慌てて予約しましたそしてそして、アルバム発売の11月6日と言えば………このブログの開設日ですと、勝手にアピールをしましたが、私以外の方からすれば興味もないし関係もない、どうでも良い事だとは分かっています…分かっていますが、7年前の2017年に「良し、今日にしよう」と最初の記事を更新した私にとっては特別な日ですそんな日に日本デビュー20周年に向けたフルアルバムが発売されると分かってやはりわたしは一生ホミンちゃんを勝手に推し続ける運命なのだな…と212212212度目の再確認をした、そんなどうでも良い報告でした本題です新しいお話も途中まで書いているのですが、先にこちらを更新させていただきます🙇🏻♀️ツアーエントリー、Bigeast先行にオフィシャルHP先行、と終わりましたね現在もローチケ先行があって、きっと次はBigeastの2次があって…と、ぎりぎりまでエントリーチャンスが続くはずだと思います今回は体調の事もあり今までよりは少なくなりますが、複数箇所参加希望しているので、私もまだまだエントリーを続けます既にチケットが揃った方、まだまだ探されている方、それぞれかと思いますが…私も、どうしてもどうしても、ふたりが大好きでふたりに逢いたくて…なので、駄目元で尋ねさせていただきますツアーチケットのお譲りを探しています11月30日(土) さいたまスーパーアリーナ 3枚12月15日(日) 広島グリーンアリーナ 2枚3月5日(水) 横浜アリーナ 3枚こちらのチケットを現在探して(求めて)います🙏🏻きっと、多くの方が探されているであるだろう事も承知しておりますが、少しでも可能性があるなら探したいので、この場で呼びかけさせてくださいねペンライトの有無は問いませんBigeast先行、オフィシャル先行、等枠も問いません複数枚のお取引、やり取りに関しても、私が最後まで責任を持って安心していただけるようにやり取りさせていただきます重複や同行、等でもしも心当たりのある方がいらっしゃれば、コメント、メッセージ、もしくはTwitterのDMからご連絡いただけましたら幸いです🙇🏻♀️Twitter(X)はこちらです⤵@hominismmomix.comx.com私にしか関係のないどうでも良い話、とお願い事になってしまいましたが、次は数日の間にお話でお会い出来ますように今年も災害級の暑さが続いている上にコロナも流行しているので、皆様何より身体に気を付けて過ごされてくださいねそして、秋からのツアーもアルバムも、来月発売の雑誌もそれ以外も全部全部、久しぶりの本格的な日本活動が全部全部上手く行って、たくさんの方がユノとチャンミンに会えたり素敵な姿を見る事が出来るように、と我儘にたくさん願って今日はここまでにしておきます
自分の部屋とトイレがすぐ傍じゃなくて良かった今日ほどそれを強く思った事はない「……はあ…」音を立てて流れていく欲望を見下ろし頭を抱えた賢者タイム、だから溜息が出たのではない今までもチャンミンの事を考え、想像して抜いた事はあるでも、当の本人が直ぐ近くに居るのにこんな事は初めてだった後悔と自責の念、自らへの嫌悪感で頭を掻きむしりたくなる「なら我慢すれば良いんだよな、なのにどうして…」蓋をした洋式便器に腰をかけ項垂れた何が起こったかと言うと、ついさっきの事だ俺の部屋に遊びにきたチャンミンが、俺の太腿にすっと触れた勿論健全な仲だからスラックスの上から触れられたのは際どい箇所でも無かったそれも、恋人として触れたのでは無く、俺が昼間にアイスを垂らしてしまったのを思い出して心配して、だたったそれだけで俺の身体は熱を持ってしまった切っ掛けは『それだけ』でもそこに至るまでの色々があるずっと好きだったチャンミンと恋人になれた恋人として部屋に遊びにきた俺を好きになってくれたチャンミンは今まで以上に無防備で可愛い、距離が一気に近くなったし全く警戒されない、それどころか言葉が無くても俺を好きだと伝わってくる「戻らなきゃ…いや、着替えて…」すっきりしたのに重たい身体に力を込め立ち上がる性欲は制御出来る方だと思っていた理性はある方だと思っていたなのに、焦ってトイレに駆け込むくらい余裕がないこれじゃあまるでただの動物だ熱を持って固くなった自身を強く握った手のひら汚れた気持ちを全部洗い流す為にしっかり洗って部屋着に着替えたスラックスは直ぐにチャンミンが拭いてくれたから、ほとんど跡にはなっていなかった「母さん、これも持っていくよ足りなければ俺が取りに行くから、部屋には来なくて良いよ」「分かったわよこの間みたいに、今度はあなたの部屋でふたりして眠ってしまわないようにね」「あれは旅行帰りだったから…」チャンミンと付き合い出した、奇跡の起こった日あの夜はただただ幸せだけで、その後こんなにも贅沢な悩みに見舞われるだなんて思ってもいなかっただけど、考えてしまうチャンミンが好きになったのは夢の中の俺ならば俺の小さな行動ひとつで嫌われてしまわないだろうかゆっくりと仲を深めて嫌われないようにしたいチャンミンは俺のような欲望は抱いていない様子それなのに、俺はと言えば直ぐに不埒な事ばかり考えるし身体が反応してしまうこんなの知られたらそれこそもう…「幻滅?いやいやもっと酷い無理って思われるだろ…」我慢出来たら良いのに出来ない好きで好きで堪らないチャンミンが俺を慕ってくれるから、欲望すら制御出来ないせめてチャンミンの前では下心は隠し通して、がっついているだとか身体だけだとか思われないようにしなければ気持ちを切り替えて、初々しい恋人の待つ部屋へと戻った良かった事は一つチャンミンは、俺が抜いてきただなんて思ってもいない様子だった事バレてしまったらどうしよう、と内心ひやひやしていたから安堵しただけど…気掛かりな事が一つある部屋から出た時もその前も、更に遡れば今日の日中もその前も、恋人として付き合い出してからのチャンミンはいつも俺に甘えるような顔を見せてくれていたのに、突然冷たくなったような気がするのだ「チャンミン、これも好きだったよな?沢山食べて良いよ」「…うん」「まだ腹減ってるだろ?食べてから宿題にしようか」ベッドの上に座ってもらったチャンミンを見上げて、ひたすら機嫌取りのような事をしているバレてはいないだろうけど、まだ安心は出来ない匂いなんて残っていないと思うけど、男同士だしふとした事でバレる可能性もある絶対に絶対に、チャンミンに知られる訳にはいかないし、近付けばまた身体が理性を裏切りそうだから離れている「…ユノ、隣に座らないの?」「俺はここで良いよ!チャンミンは大事なお客様だから、そこに居て」出来るだけ自然な笑顔を心掛けてそれっぽい事を言ったチャンミンは「ふうん」と小さく呟いて、俺が差し出したスナック菓子の袋を受け取った無言でスナック菓子を口に運ぶチャンミンは少し俯いていて、視線は合わない俺が部屋を出る前まではしょっちゅう視線が合っていたのに、と思うと寂しい寂しいし、何だかチャンミンの様子がおかしいのは気になるけど『もしかしたら、トイレで何をしていたか気付かれたかもしれない』という懸念があって何も言えない一度、ちらっとチャンミンを見上げたら、彼は人差し指を口に運んで舐めていた「…うわっ…」思わず、物凄く小さな声ではあるけど呟いてしまったごくりと唾を飲み込んだその時にはもう顔を逸らして、手のひらで顔半分を覆って全てを隠し無かった事にしたただ、指に付いたスナック菓子のかけらを舐めただけ何もおかしくない頭では分かっているのに、身体は熱を持つ「ユノ?」ベッドに頭を向けていたら、後ろから呼ばれたチャンミンの声音は甘くない下半身の形は変わっていないけど、やはり気付かれただろうか俺が、ほんの少しの事でも反応してしまう猿のようなやつだって「俺、ジュース取ってくる…」「やだ!行くなよ!!」「……っ、チャンミン…」立ち上がりかけた俺の背後から思い切り抱き着いてきたのは、どう考えてもチャンミンしかいない突然冷たくなったようにしか思えなかったのに俺は、付き合いだしたばかりなのに身体が暴走してばかりの最低なやつなのに「チャンミン?どうしたの?」自分の声が震えているのかどうか、すら分からない程混乱しているドッドッ、と心臓の音がうるさい身体中心臓になってしまったようだ「なあ、ユノ、ちゃんと言えよ…」チャンミンの温もりや抱き締められるその感触に、体温は急上昇したけれども、絞り出すような切なげな声で発せられた言葉に今度は一気に下がっていったどうしよう、もう隠す事は無理なのか同じ男だけど言えない、言いたくない格好付けていたいし幻滅されたくないから言えない、隠したい、だけど…「チャンミン、あの…」「やっぱり、猫の僕の方が良いの?」「…え?」何とかオブラートに包みながらでも告白するしかない、と思った瞬間、突拍子も無い言葉が届いて思考停止した反射的に振り返ろうとしたら、強く抱き締められて動けなかった「ユノ!逃げるなよ、もう…!」「逃げてない、逃げようともしてないよ」チャンミンはいやいやをするように、俺の背中で頭を振っているようだ突然冷たくなったように感じていたし、俺の恥ずかしい事実がバレている可能性は高いけれども、少なくとも嫌われてはいないのだろうかこんな時でも、ほんの少し安堵するのと共に、触れられて嬉しいと舞い上がる自分もいて情けない嬉しいし、これ以上は危険だとも思う「友達でいるのと、付き合うのだと違った?ユノが想像していたような僕じゃ無かった?夢だけの方が良かったって後悔してる?」「え…ちょっとチャンミン、急に何言って…」「質問に答えろよ思ってるならハッキリ言って欲しい僕は…舞い上がってるし、毎日毎日ユノをどんどん好きになってるもう引き返せないよ、だから…」今度こそ、無理矢理だけどゆっくり振り返ってみた俯いていたチャンミンが俺に気付いて視線が合った目を赤くして、今にも泣きそうなチャンミンは「悔しい」と小さく呟いて唇を噛み締めた「嫌なところがあるなら直すよ現実の僕を好きになってもらえるように努力する!だから…猫じゃない、夢じゃない、本当の僕も好きになってよ」チャンミンから俺に愛の告白切羽詰まった顔で切なげに…なんて、夢でも見ていない夢見るにしても、あまりに滑稽な程に現実離れしているからだ「…夢?まさか…」「はあ?!この期に及んで何言ってるんだよ!現実だってば…!」この期に及んで、なんて言いながらも更に強く抱き締められた温もりも熱量も、全部夢だなんて思えないだけど、何故突然こんなに熱い愛の告白をされるのか、本当に検討もつかない「チャンミン、落ち着いてちょっと近過ぎるし、これじゃ顔も見えないよ」少し落ち着いてきたら、今度はまた心臓がうるさいやばい、と少しでも思ったら身体が反応してしまいそうで、ぎりぎりの瀬戸際にいる嫌われているかも、というのは思い過ごしだったようだけど、一体何が起こったのだろうチャンミンの肩に手を置いて、ゆっくり距離を取ろうとしたが、しかし、小さなこどものように頭をぶんぶんと横に振って意思表示されたし実際離れようとしない嬉し過ぎる拷問だ「ええと…チャンミンに嫌なところなんて無いずっと好きだったから、夢みたいだ」「夢じゃないってば…」「うん、分かってるそれくらい幸せで…俺の方こそ、嫌われたり呆れられたりしてない?…聞くのも怖いんだけど」思い切って聞いてみたその結果、つい先程の粗相も知られていた、と判明するかもしれないでも、どうせなら気付いたと言ってくれた方が良いかもしれないとほんの少し開き直る気持ちが芽生えたゆっくりと身体を動かして、何とか向かい合うようにして抱き締めた腰は少し引いているから何とかなるだろう「はあ?何をどう見たらそんな風に思えるんだよ、ユノ」「…いや、だって……」心から不思議がっている表情で、嫌われても呆れられてもいない、と自信が持てたでも、それならばさっきの態度は?尋ねてみようか、と思ったその時、チャンミンは視線を逸らすように斜め下を向いた俺の二の腕をシャツの上から掴む手がもぞもぞと動いている「チャンミン?」「…恥ずかしいんだよ、まだ」「え?」「ユノに好きでいてもらえるような僕じゃない、自信が無いそれに恥ずかしいだから、好きなのに言葉が悪くなるし、女の子みたいに可愛くも無い、可愛い事も言えない」女の子みたい、だとか女の子の代わり、で好きになった訳じゃない直ぐに否定してそれを伝えて抱き締めた「チャンミンだから好きなんだ何度でも言うよ」「うん……でも!それならどうして今日は…学校でもさっきも、僕を避けるんだよ」「……避けては…」避けてない、と言おうとしたでも、後ろめたくてはっきり否定出来なかった嫌で避けたのではないけど、汚い欲望を知られたくなくて避けたのは真実だから「ほら!やっぱり避けてた!言えよ、僕たち恋人だよな?」「それはちょっと…」ぐいっと力を込めて、チャンミンの身体を離したこれだけは言えないやっぱり無理だ知られても良い、とも思ったけど、それはチャンミンが気付いている場合の話気付かれていないなら隠し通したい冷や汗が背中を伝うのを感じながら笑顔を作り何でも無い、と言った「…避けた理由を教えてくれないなら、10日間ユノと口をきかない連絡も取らない、学校でも別々に過ごす」「え!!」「嘘でも冗談でもない、僕は本気だからな付き合い出したばかりなのに隠し事なんて…」引き離そうとしても離れてくれなかったチャンミンがいとも簡単に俺から手を離して背を向けてしまった立ち上がって扉の方へと向かうから、慌てて追い掛けた「待って!帰るなよ!」「…っ、ユノ……」後ろから抱き締めたら、勢い余ってチャンミンのうなじに鼻先が当たった熱を持ったうなじ、そこからじわっと汗が滲み出たここまで近付かないと分からなかったチャンミンの匂いがして、彼の熱が一瞬で移った「あ…、ユノ、擽ったい…」熱に浮かされたような声に、スイッチが入った柔らかい髪の毛を掻き分けて、耳の付け根に唇を当てた竦む身体を強く抱き締めて「行かないで」と囁いたら…「ユノ!違う!トイレに行くだけだって!!」「え…」「だから、トイレ!それくらい行かせてよ!」腕の中でもぞもぞと動くチャンミン切羽詰まった様子にはっと我に返り腕を離した振り向いたチャンミンは涙目で上目遣いに見つめてくるそれだけでぐっと来て、口元を手で覆って耐えた「ユノもトイレ行った方が良いんじゃない?もしかして、さっきもそうなってたんじゃ…」「え…」「なんてな…て、冗談だったんだけど…もしかして、本当にさっきも『そう』だった?」抑えるのは口元ではなく下半身だった頬を赤くしたチャンミンの言葉でようやく気付いたそんな俺の恋人は、俺よりも先に下半身を手で隠している「チャンミンこそ…」「これは、今のユノのせいだよ!ユノが変な触り方してくるから…普通にトイレに行きたかっただけなのに」羞恥で顔を赤くするチャンミンが可愛くて、勘づかれてしまった、どころか簡単に熱くなると知られた事さえ些細なことだと気にならなくなってしまった「トイレは僕が先だからな」「…ええと…そうしたら、俺は色々想像しながらトイレを使う事になるけど良いの?」「…ユノ!!」真っ赤になったチャンミンは勢い良く部屋から出て行った恥ずかしい、だけどチャンミンの身体も俺に触れられて変化したと分かったらそれ以上に興奮したし嬉しかった「…治まるかなあ、これ…」ベッドにダイブして、頭の中で難しい方程式を並べた俺が好きな相手は、思っている以上に俺を好きになってくれていたそれが分かっただけで嬉しくて、ちっぽけな男のプライドなんて飛んで行った━━━━━━━━━━━━━━━ご訪問ありがとうございます約1ヶ月空いてしまいました今更の更新ですが、シリーズ最終話です書きたいあれこれは変わらずたくさん、ですが更新が全く追いついていませんそんな中でも日々この場所を訪れてくださる方がいらっしゃって感謝しています今日はユノの嬉しいお知らせがあったり、チャンミンのミュージカルも順調なようだしツアーも発表されたし…で、日本デビュー20周年に向けても更に更に盛り上がっていくと良いなあと思っています自身の体調の事があって、最近はSNSでふたりの事をあまり追えていませんでも、ふたりが何よりも誰よりも大好きな気持ちは何も変わっていませんと、敢えて書く事でもないですが…また近いうちにお話やあれこれでお会い出来ますように幸せホミンちゃんにぽちっ 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納得がいかない現実世界で通常起こり得る筈もない驚きの出来事を切っ掛けに僕はユノと付き合う事になったなのに、恋人同士になってもユノの様子は友人の時からあまり変わらない遊ぶ回数やふたりで過ごす時間は以前よりも増えたし、何となくユノの嫉妬も感じるでも、納得がいかない極端な言い方をすれば、ユノが僕を好き過ぎるがゆえに僕はユノと同じような夢を見たそう、猫になってユノに飼われて溺愛される夢夢の中で猫の姿で散々愛されて、それまで全く意識していなかったユノに恋愛感情を抱いた「なのにどうして…」そう、どうして僕ばかりユノを好きでユノは涼しい顔をしているのか現実主義でロマンティックなドラマやフィクションなんて鼻で笑っていた僕が現実にそんな世界に巻き込まれてユノと両想いになってハッピーエンド…の筈なのにどうして溺愛されるどころか以前とあまり変わらないユノにやきもきしなければならないのか「ああもう…!」放課後、ユノの家、ユノの部屋到着して早々お菓子を持ってくると言って涼しい顔をして部屋を出て行った元友人現彼氏、へのもやもやを彼の部屋のクッションを力任せに抱き潰しぶんぶん頭を振る事で発散している恋に振り回されるなんて馬鹿らしい、と恋愛話で盛り上がるクラスメイト達に内心溜息を吐いていた過去の僕が今の僕を見たら笑うか呆れるか…それとも、嘘だと思うだろうかこれじゃあまるでただの思春期男子だ恋愛初心者で雰囲気を作る方法なんて分からないかと言って、ユノはふたりきりになっても下心たっぷりな顔で触るだとかそれ以上の何か、だとかをしようとはしない僕だってそれ以上の何かを期待している訳じゃないユノを好きになったし、以前ユノの下半身が僕で反応した時に気持ちが昂揚した、けれどもユノの裸を想像して何かしてやろうとは思わないし、何でも分かる優秀なデバイスで男同士のあれこれについて調べた結果怖気付いてしまった「だけど、好きなんだよ…」僕への言えない恋心を募らせて夢まで見たユノは、僕を相当好きだと思う実際そうだと話していた手を繋いだしキスもしたでも、現実に恋人になってからのユノは、夢の中のように蕩けるような目で僕を見てはくれない考えたくは無いけど、もしかしたらユノは現実の僕と付き合って『想像と違った』『チャンミンを好きなのは勘違いだった』などと思っているのではないか気付いてしまったらもう、そうとしか思えなくなってしまったもしかしたら心の中で別れるタイミングを必死で考えているのかもしれないユノは優しいから、なかなか言い出せないのかもしれない考えれば考える程、胸が苦しい春は心躍る季節だとか言うけど、このままでは今年の春は僕にとって苦いものになってしまういや、こっちだって好きになってしまったのだから、上手くいくように努力をするべきだ何とかそう言い聞かせて、クッションに顔を埋めたユノの匂いがした以前は友人の匂いを気にした事なんてなかったのに、今は落ち着くしどきどきするし、好きだと思ってしまうこんなの僕らしくない、自分らしくないでも、それを嫌だとか怖いと思うプライドよりもユノへの『好き』が勝ってしまう「責任取れよ、ユノ」「チャンミン、呼んだ?」「……っ、うわっ!!いつの間に戻って…」突然の声に驚いて顔を上げたついさっきまでこの部屋には僕ひとりだったのに、スナック菓子の袋を抱えたユノはもう部屋の中、扉はしっかり閉まっている「どうした?具合でも悪かったのか?」「はあ?何で?」突拍子もない問い掛けと心配するような顔で僕の前に腰を屈めるユノ、見上げる僕の顔は間抜けだったと思う「え、チャンミンが俯いて丸くなってたから…」「……」今度はユノが不思議そうな顔になったそんな顔でもイケメンはサマになるから狡い以前は狡いなあ、としか思わなかったけど、今は『そんな顔も格好良くて好きだと思ってしまうから狡い』に変わった「ユノが遅いから仮眠してただけだよ」ユノへの気持ちを拗らせていたのがバレていないようだほっとして誤魔化したら「寝ながら俺の名前を呼んでたの?」と優しく微笑まれた「…っく……」「チャンミン?胸が痛むのか?やっぱり体調が…」「違うよ!ユノが格好良いから…」制服のシャツの胸元を思わず掴んだら、本気で心配された本心で答えてから恥ずかしくなったけど、斜め下に目を伏せるようにして「そっか、ありがとう」と低く呟くユノを見たら恥ずかしさよりも『好き』が上回ったやっぱり諦められないユノが現実の僕と付き合って幻滅していたとしても、こっちはこっちで好きになってしまったし、気持ちは膨らむばかり何とかユノの理想の僕にならなければ、と誓った「ユノは元々どんな子がタイプなんだっけ?」理想になるには、まずは理想を知るところからふたりきり、誰にも聞かれる見られる事もないこの場所で小腹を満たしながら聞き取り調査を回数する事にした「タイプ?……特別これ、っていうものはないよ」「本当に?理想とかあるだろ?!」「理想……」ユノのベッドを背にして隣同士で座っている立てた膝の上に置いた腕に時折ユノの腕が当たり、その度に緊張する「そう、理想今までユノとはこういう話ってしてこなかったし、この機会に教えてよ」ユノは答えを渋っているのだろうかちらっと左側を見たら、ばちっと目が合った何となく避けられているような気がする、なのにこういう時はユノの方が僕をじっと見てくるその圧に負けて視線を先に逸らすのは僕の方が多くて、今もそうなってしまった「理想はチャンミンだよ」「僕が理想って…なんか適当じゃない?」かわされてしまったようでむっとしたでも、隣からはふっと笑う時の漏れた息と「本当だよ」という優しい声やっぱりかわされている、もしくは僕を傷付けまいと優しい嘘を吐いたのか…いや、夢の中の『僕』が理想だったのかもしれない「チャンミンは綺麗な子が好き…だっけ?」「…綺麗で可愛いに越した事はないから」「なのに、俺と付き合ってくれてありがとう」「理想と現実は別だよそれに、今はユノしか見えないし…」言ってから、何だか気持ち悪い言葉を口にしてしまったと気付いた引かれたかも、と思いちらっと左に視線を向けたらまた目が合って切れ長の目が弓なりになった『ユノはどう?』と聞きたかった、だけど聞けなかった引き出すなんて情けないし、優しいユノは模範的な笑顔で『チャンミンが好きだよ』と言いそうだから遠慮されたり無理矢理言わせたくない本心で好きだと思われたい、言われたい本当はもっと触れたいし…「…っ、チャンミン?」「え……あっ、ごめん無意識だった」いつの間にか、ユノの肩に寄りかかっていたしかも、左手でユノの手をぎゅっと握っていた「これじゃあ、ユノが食べられないし動けないよな」「大丈夫疲れたなら俺に寄りかかって」疲れてない大丈夫、なんて聞きたくない抱き締めたいし抱き締められたい手を握り返して欲しい恋人ってそういうものではないのだろうか経験が少なくたって分かるまるで倦怠期、もしくは別れる寸前のカップルのようだって「あ…そうだ、ユノスラックス、洗わないと!」顔が見られなくて視線を落としたら、昼休みにユノのスラックスにアイスが垂れた事を思い出した僕がお節介して拭いたから、ほとんど染みにはなっていないだけど気になって、スラックスの太腿に触れたユノは小さく、だけどびくっと揺れて慌てたように立ち上がった「ユノ?」「あ…うん、そうだよな着替えてくるよ適当に食べて待ってて」「うん…」ユノは逃げるように慌てて部屋から出ていったその背中が扉の向こう側に見えなくなってしまう瞬間に「そんなに嫌なのかよ」と呟いてしまった自分で放った言葉に心が傷付いた流石に嫌われているとは思わない、だけど避けられているとは思う理想に近付くどころか、尋ねても誤魔化されて教えてもらえない、これじゃあ何も始まらない「……」僕が一番好きなスナック菓子僕がそればかり好んで食べるからユノも好きになった、と以前聞いた事を思い出した今はそれが幸せな思い出になったのに、咀嚼しても何だか味がしない「ユノの馬鹿こんなに好きになっちゃったら、もう引き返せないのに…」胸が苦しい僕の事をひっそりと想ってくれていた時のユノもこんな気持ちだったのだろうか分からない、だけど、夢の中でユノを好きになって抱えた胸の痛みよりも両想いになったのに近付けない痛みと切なさの方が僕にとっては苦しいやけくそのように、味のしないスナック菓子を次々と頬張った色気よりも食い気、でも大好きなものを食べても心は全く満たされなかった━━━━━━━━━━━━━━━初々しいふたりを書くのが楽しすぎて、毎度の事ですが今回も長くなりました…あと一話で終わります読んだよ、のぽちっをお願いしますにほんブログ村
高校三年生の春クラス替えにあんなにも緊張して手に汗握り、新年度の数日前から文字通り祈るくらいだったのは人生で初めてだったその結果…「ユノ、早く食堂に行こう!」「うん…」「何ぼうっとしてるんだよ春だから?春眠暁を覚えず、って言うもんな」でも急がなきゃ、と俺の腕に触れるチャンミンぼうっとしていると思われたのも恥ずかしいけど、それ以上に頬が緩んでしまうのがバレる方が恥ずかしい表情筋に思い切り力を込めて立ち上がった「今年もユノと同じクラスで良かった新しい友達を作るのは毎回緊張するし、それに…」「俺もチャンミンと同じクラスで良かった最初から席も隣だしツイてる」「うん…なんか照れるな」高校三年生、今年の春は人生の春にもなった毎日毎晩の必死の願い、祈りが通じたのか必然だったのかは分からないけれども、強い想いは時に奇跡を起こすのだとこの身をもって知ったのはついこの間の事昼休み開始直後、廊下は生徒だらけ授業中は静まり返る廊下は今、ふたり並んで歩くには少し狭いくらいだ「…あ…チャンミンごめん、当たった」必然的に距離が縮まって、右側のチャンミンの手に指先が触れてしまった心臓は一気に飛び跳ねたけど、さっきのように顔に出たら恥ずかしいから何とか耐えてみせた「謝らないで良いのにちょっと触れるだけでもユノは嫌なのかよ」「……」悪い、とは思っていないだけど本音を出すと『嬉しい』になる校内で生徒だらけなのに言える筈も無いかと言って、何も言わないでいるのも難しくて出た言葉それをこんなにも突っ込まれるとは思わなかった「嫌だなんて有り得ないほら、親しき仲にも礼儀ありって言うだろ」それっぽい言い訳をしたチャンミンは納得いかない様子で唇を尖らせてしまった「僕は、偶然でもユノの手が当たって嬉しかった…ユノが好きだから」「……っ…」顔には出したくないしまりのない顔だと思われたくない恋に夢中で必死な男だと思われたくない少しでも格好良いと思われたい、ちゃんと、もっと好きになって欲しい願う事すら出来ないくらい不可能に近かった俺の片想いは届いただけでなく叶ってしまったけれども、今チャンミンから向けられる特別な想いは俺自身が努力した結果ではない未だに不思議だけど、チャンミンが俺の夢の世界に入り込んだとしか思えない夢を見た事で俺を意識してくれた、そうして俺達は恋人として付き合い出したのだ「自分に嫉妬する日が来るとは…」食堂に向かい、俺の半歩前を急ぎ足で歩くチャンミンに聞こえないように呟いたチャンミンは夢の中で猫になった、猫のチャンミンを溺愛する夢の中の俺、に惹かれた現実の俺はと言えば、気持ちを伝えたり知られて友人関係が壊れる事を恐れ何も出来なかった男つまり、どんな風に今のチャンミンと接したら良いのか分からないずっと好きだった事は現実でも伝えたが、それ以上の『何か』と言えば手を繋いだりキスをしたくらい不思議なあの夜、身体が素直に反応してしまったしそれを知られてしまったけど、それ以上の疚しい事はしていない何か、をして嫌われるのが怖い「ユノ!こっち!!遅いよ」「今行く!」食堂で席を確保したチャンミンはこちらに向かって大きく手を振っているその手が別の生徒に当たって、慌てて頭を下げてから「早く」と唇を動かしてまた俺を見るこんな光景は友人だった時と変わらない、でも…「ああもう、しっかりしないと」また、緩む頬に力を込めて表情を引き締めた「お待たせ、チャンミン」「遅い早く並ぼう、ユノは何にするか決めた?僕は日替わりの激辛ラーメン!」拗ねたように俺を見るチャンミンこんな表情は、あの不思議な夜以前は見せてくれなかった彼は今、俺に特別な感情を持ってくれているお陰で一緒に居ると毎分毎秒冷静で居られなくなる程に幸せで、そして同じくらい不安になる涼しい顔で激辛ラーメンを食べたチャンミンが暑いと言うから校舎の外のベンチで涼む事にした食後のお供の棒アイスを並んで食べるだけで、まるでデートのようだなんて思ってしまう「なんかさあ、これもデートなのかな?」「……っ…」心を読まれたのかと思って噎せてしまった情けなくて恥ずかしい顔を逸らす俺を覗き込むようにして、何も知らない大きな瞳が近付いてくる「大丈夫?」「……大丈夫」大丈夫、と答えたその声が思い切り掠れているチャンミンが空いた手で背中を擦ってくれた嬉しいけれどもそれ以前に情けない触れられてどんどん速くなる鼓動に気付かれたくないこんなに余裕の無い男だと思われたくない『夢の中のユノ』じゃない現実の俺はチャンミンの前で格好付けてきたのだ今更キャラ変更?無理夢の中のユノなら許されても、現実の俺がチャンミンを溺愛して理性を無くしたら一気に嫌われるかもしれない、やはり無理「チャンミンありがとう、もう大丈夫」「本当に?涙出てる」「え……っ…」何でも無い顔を精一杯作ったのに、子首を傾げたチャンミンが顔を近付けて俺の目元に触れたから裏返ったような声が出てしまった「ほら、大丈夫じゃないじゃん噎せないように気を付けろよ」これが聖母の微笑み…いや、チャンミンは男だからこの場合何と言うのだろうか至近距離で警戒心ゼロ、どころか慈しむように見つめられたら押し倒したくなる衝動に駆られる「ユノ、チャンミン!何イチャついてるんだよ見せ付けるなよ」聞こえてきた声にはっと我に返ったチャンミンもすっと俺から離れただけど…「羨ましい?良いだろ」偶然通りかかったらしいクラスメイトの揶揄いに、チャンミンはとんでもなく可愛い笑顔で答えた「羨ましいから俺も早く彼女作るわ」じゃあな、と手をひらひら振るクラスメイトと手を振り返すチャンミンそれを呆然と眺める俺「うわっ!ユノ!!」「…え?」「アイス!落ちてる!」大きな瞳を更に大きく見開いたチャンミンの言葉で、左手に持っていた棒アイスが棒だけになっていた事に気付いた幸いな事にベンチは汚れていなかったけど、またしても情けない姿を見せてしまった「ちょっと待ってて」そう言うとチャンミンは溶けかけの棒アイスを口にくわえた口元を凝視してしまった、一瞬にして良からぬ事を連想してしまったチャンミンが戻ってくるまでに落ちて溶けてしまったアイスを拭かなければ、と思いスラックスのポケットからティッシュを取り出した屈んで拭き終わったところに、もう何もくわえていないチャンミンが戻ってきた「ユノってたまに抜けてるよなあ」「チャンミン?え…」「動かないで」チャンミンは突然、俺の前に跪くようにして腰を屈めたつまり、今彼は俺の股の間に居る流石に妄想や想像でも『それ』はしていないそれに近い事は想像してしまった事はあるけれど「チャンミン、何を…!」「気付いてないの?アイスで汚れてるから早く拭かなきゃシミになるだろ」どうやら、チャンミンはハンドタオルを濡らしてきたらしい左の太腿に少しだけ垂れていたアイスを拭うチャンミンは「ユノのお世話をするのも良いな」と機嫌が良さそうに見える俺には、お世話というか別の事に見えてしまうこんな不埒な思いを抱いているだなんて知られる訳にはいかない「ありがとう、でも自分でするから…」「駄目、僕はユノの彼氏だよね?これくらいさせてよ」「……はい」股の間にある可愛い顔が俺を見上げてじっと見つめてくる押し倒してしまいたい、いや、その前に思い切り抱き締めて攫ってしまいたい、顔中にキスしたいだけど言えない、現実の俺は、チャンミンの友人として過ごしてきた俺はそんな男じゃないから目の前のチャンミンは俺の恋人になった、だけど目の前のチャンミンは夢の中のユノに恋をしたのだから人生の春が訪れた叶う筈の無い想いが通じたそれなのに怖くて仕方無い無邪気に好きだと言ってくれる、好意を隠そうともしないチャンミンに素を出したら全てが終わってしまいそうで怖い「ユノ、今日放課後ユノの家に寄っても良い?」「うん、もちろん…」「へへ、楽しみ」顔全体で感情を露わにするチャンミンを見下ろしていたら、抱き締める事は我慢出来ても表情管理には失敗してしまった「ユノも楽しみ?」「楽しみだよ」「…聞かなくても分かったけど、嬉しい」表情管理更に失敗、制御不快それなのにチャンミンは嬉しそうに笑って隣に座ってくれたさっきまでよりも距離は近付いていて、ぴたりとくっ付いた肩と肩から体温が伝わってきた表情管理はもはや制御不可だけど、チャンミンには現実の俺をちゃんと好きになって欲しいし幻滅されたくない放課後も冷静に余裕をもって過ごそうと心に誓った━━━━━━━━━━━━━━━先日のお話のその後、です書き出すと止まらないくせがあるので色々浮かんでしまいますが、前後編予定で何とか収めようと思います続きも読んでいただけたら幸いです読んだよ、のぽちっをお願いしますにほんブログ村
これは絶対に現実そうじゃ無きゃ困るこれ以上何かあれば頭が混乱してどうにかなりそう「痛っ、痛いよチャンミン!」「痛くしてるんだってユノもほら、思いっきり叩くか抓ってよ」寝起きのユノの頬をむぎゅっと抓ってから、今度は自分の顔を差し出すようにぐっと近付けた僕の部屋、僕のベッドシングルサイズのベッドは育ち盛りの男ふたりが乗って動くと時々みしっと悲鳴をあげる「チャンミン、ちょっと近い」「はあ?僕を抱き枕にして寝てたやつが言う?」「……ごめん…無意識だったんだ」謝られると調子が狂う男同士、それなりに仲の良い友人であるユノと僕彼は元々今夜この部屋に来る予定だったし、それを忘れて眠ってしまった僕が悪い旅行帰りで疲れていたであろうユノは僕が起きるのを待ちながら眠ってしまっただけで、男同士で抱き枕にされて怒るものでも無い「…夢で嫌って程ユノに抱き締められたり頬擦りされたり、とにかくベタベタされまくったから今更だよ」「まじか…そうか…そうだよな……嘘みたいで信じられないけど、俺が毎晩あの夢を見ていなければこんな事にならなかったと思う」「何だよ、さっきから反省モードだなあもっと堂々とすれば良いだろ『俺のチャンミン』って何度も何度も言ってたんだから」殆どは僕の夢の話現実ではさっき、目が覚めた時に聞いた一度きりだけど、どうやらユノも猫の僕と過ごす夢を見ていたらしいし夢の延長での言葉だったから、夢の中でも繰り返していた筈「で…ユノはその…何で僕が猫になるような夢を見たんだよ」本当は、今夜ユノと会ってお土産を貰って旅行先での話を聞いて、普段通り過ごす予定だったそんな事も忘れて眠ってしまうその前までは、ユノを特別に意識した事は無かったなのに今は、友人のユノが僕に対してどう思っているのか、が気になって仕方無い夢の中のユノとついさっき目を覚ましたユノ同じでは無いと分かっているけど、同じであって欲しいと思ってしまっているだって、僕は夢の中で人間の自分にすら嫉妬したくらい…夢の中でユノに恋をしてしまったから「何でって…」ベッドの上で向かい合って座っているあぐらをかいて堂々と座っていたら少し冷えたから、毛布を引っ張って巻き付けようとしたらユノが手伝ってくれた「僕にばっかり掛けたらユノが冷えるよ」「ありがとう、でも、今は反省モードだから良いんだ」何を反省する必要があるのか分からないと一瞬思ったけど、多分僕を抱き枕にしていた事だろう薄手のブランケットをユノに渡した風邪なんて引かれたら困るし、反省して欲しいなんて思っていないから「チャンミンは…?」「え?」「逆に聞くけど、チャンミンはどうして俺の飼い猫になる夢を見たと思う?心当たりは?」真剣な顔で聞かれたから考えてみたあるとすればひとつだけだ「寝る前に、あの歌を聞いてたからかなそれで、ユノの事を考えていたかも」「え!俺の事?!」「大きい声出すなって…」目を大きく開けて何だか嬉しそうなユノに圧倒されながら、こほんと乾咳をして切り替えたユノが好きだと言う影響であの歌を聴く事が増えた事聴いていたら以前よりも歌が好きになった事『一日だけでも良いから好きな子の飼い猫になりたい』そんな歌詞を理解出来る、と言ったユノの言葉を思い出していた事「僕はあんまり分からなかったけど…ユノには実は好きな子が居るのかな、とか、ユノは僕より進んでる気がするとか、そんな風に考えてたでも、勘違いするなよ!ユノを好きだったとかじゃ無いよ」慌てて付け足してから顔を上げたら、今度は沈んだように眉を下げて小さく「そうだよな…」と呟くユノ常に明るく前向きな友人のそんな表情を見たのは初めてかもしれなくて驚いた「どうしたんだよ、ユノそれじゃまるで僕を好きみたい……あ…」まだ頭は混乱しているようだ途中まで話して思い出したユノは多分、僕に好意を持っている友人以上の…きっと、多分恋愛感情を「…ユノは何で、猫の僕を飼う夢を見たの?」「俺は……ああもう、言うつもりなんて無かったし嫌われたく無かったのに」言いたげにしているのに、口を開くとまた閉じて逡巡する様子こんなユノも初めて見たもう少し見ていたい気もするけど、それよりも僕だって待つのが限界「早く言えよ、気になるんだって」「…もう分かってるんだろ?」「…分からないよ夢の中では聞いたけど、夢だし…」駆け引きなんて出来ないただでさえ恋愛初心者、自覚したばかりの恋に余裕なんて無い喉がからからになって唾を飲み込んだら音がした恥ずかしかったけど、前を向いたらユノが見た事無いくらい緊張した様子だった学校で大勢の前に立つ時よりも緊張して見えたから、僕だけじゃ無いのだと思えて少し落ち着いたユノはちらっと僕を見た、けれども直ぐに視線を逸らされた追い掛けるようにじっと見たらばちっと目が合ったから恥ずかしくなった今までこんな事は無かったのに不思議だ今度は僕の方が視線を逸らせなくなった冷静でいられないのを悟られないように、必死に平静を装った「好きだから俺だけのチャンミンになって欲しかった」目を見ながら、至近距離でこんなにもストレートに気持ちをぶつけられた事も初めて慣れていないから、頭が真っ白だまた喉が渇いて、もう一度唾を飲み込んだ「嫌われたくないし関係を壊したく無かった言える訳無いし…俺、物凄く勝手だろ」「……」ひと言、『言えば良いのに』と言いそうになったでも、夢を見る前の僕がそう言われたらどう感じただろうか変わらずに友人としてやって行けたかなんて分からないし、気持ちに応えられるかなんて分からないそもそも想像すらしていなかったのだからユノが話す通り、彼は僕の事を思って関係を壊さないよう何も言わなかったのだろう、と少しは理解出来た「チャンミンが同じような夢を見たって知って、考えれば考える程情けないし恥ずかしいし申し訳無い気持ちでいっぱいだよなのに、突き放さないでくれてありがとう」「猫にされたとは思わなかったし、もう人間に戻れないのかもって思って不安だし怖かったよ外に出ようと思っても出られない、なのにユノは僕を置いていつも通り学校に行くし…」「…チャンミンに本当に猫になって欲しかったんじゃ無いよ不安にさせたり怖い思いもさせたく無いし…」恥ずかしさと申し訳無さが混じり合ったような、見た事無い顔をしたユノは腿の上でぐっと拳を握っている夢で不安になったり怖くなったりしたのは夢の中での真実でも、それを現実のユノが謝るのには違和感不思議だし良く分からないけど、夢だったのだから「良いよ、今日は遅いしまたゆっくり話そで…何で今度はそんなに距離を置こうとするんだよ」「え…いや、チャンミンこそ…何でそんなに近付いて…」友達だったのに、普通の、普通よりは少し親しい友達だと思っていたのに何事にも動じない完璧なやつだと思っていたのに、僕が近付くだけで慌てふためくだなんて知らなかった「猫の僕にはゼロ距離だったのに」「それは…」「僕だけの夢?でも、元々はユノの夢なんだよね?」僕達が全く同じ夢を見ていたのかは分からない分からないけど、焦って顔を赤くするユノを見たらもっと近付きたくなる悪戯心じゃ無い、夢を見て抱いてしまったユノへの特別な気持ちからくる欲求「チャンミン…!」「…捕まえた僕ばっかりユノに良いようにされるのは狡い僕だってユノを可愛がりたいよ」猫じゃ無い、僕はユノと同じ人間当たり前の事実、現実だけどあの夢の後だから物凄く特別な事に感じるベッドの端、壁際まで追い詰められたユノをぎゅっと抱き締めたら『好き』と強く思った夢が切っ掛けだけど、触れる温もりも今の僕のこの感情も確かに現実だと思うと安堵した「チャンミン、えっと…」「ユノが好き夢だけじゃ無くて、今こうしているだけで幸せ」拒否されないし押し返される事も無い密着していて顔は見えないけど、ユノの声で焦っているのは分かる猫になった世界では小さ過ぎて僕には何も出来なかった、だけど今は違う満足感と高揚感でいっぱいになって、そんな気持ちのままユノの小さな頭にちゅっとキスをしたそう、夢の中で僕がされたように「チャンミン…」「ん?」夢では恋心のようなものを自覚してから辛くて仕方無かった自分に嫉妬して苦しかったそれらから解き放たれて浮き足立っていた僕は、ユノの声が低くなったと気付くのが遅れたあれ?と思った瞬間、身体は引き剥がされてそのまま…「うわっ!…ユノ?」あっという間に体勢は代わり、仰向けの僕をユノが見下ろしていた「…チャンミン、俺を揶揄ってる?勝手に好きになって勝手な夢を見て、悪いのは俺だけど…だからって、これ以上煽られたら止められなくなるよ」「…は?何言って…」僕を夢の中で猫にしておいて、ユノは何を言っているのだろうそれこそ揶揄われているようだけど、僕を見下ろす目は真剣で冗談で返せるような雰囲気では無い手首はしっかり掴まれているし、腰の上に乗られているから動けない「さっきは俺の事を好きじゃないって言ったよな?なのに、今度は好き、だなんて…」「それは…夢を見る前の話だよ!今は…さっき、だけど、ユノを好きだってちゃんと思った嘘じゃない、揶揄ってない」夢では言葉が通じなかったでも、ユノはひたすら僕を溺愛していた人間のチャンミン、に確かに恋愛感情を抱いていた言葉は通じなかったけど分かりやすかった現実は言葉が通じるのに簡単じゃない「猫だと『置いていかないで』『僕だけを見て』って言っても言葉が通じなかった元に戻ったからちゃんと伝えたのに、なのに信じてもらえないのかよ…」「…チャンミン…」言葉が通じても信じてもらえない事が悔しいやっぱり夢の中と現実は違うのか「もう好きになっちゃったのに…どうしたら良いんだよ」悔しさで目頭が熱くなった悟られたくなくて、唇の内側をぎゅっと強く噛み締めて顔を逸らした「…俺は…もうずっと前から、チャンミンが好きだよ」「……」「言えなくてごめん隠してきたし、夢の事も驚いたし動揺したチャンミンが突然こんな風になって、嬉しいけどそれよりもどうしたら良いのか…」「……結局、嬉しくないって事?」「違う!そうじゃ無くて…チャンミンの夢の中の俺がいたからチャンミンが俺を好きになってくれた、て事だよな?夢の俺の方が良いのかな、とか複雑だし…」手首を掴む手はいつの間にか外されていた自由になった身体でユノから逃げるように横を向いていたけど、もう一度振り向いてユノを見上げた膝を立てて座るユノの彷徨う視線を捕らえたら、ばちっと目が合った「僕だって夢の中の『人間のチャンミン』に嫉妬した辛かったし寂しかった」「俺が好きなのはチャンミンだよ」「…僕が好きになったのもユノだよ夢が切っ掛けだけど、さっきユノを抱き締めて確信したそれじゃ駄目?」起き上がって、もう一度ユノに触れたもしかしたら拒絶されるかも、という不安が芽生えたから握り締められた手に重ねるようにそっと「今までは触れても緊張しなかったどれだけ仲が良くても、ユノが相手でも、男同士で必要以上に触れるなんて有り得ないって思ってたでも…」「でも?」「どきどきする」拒絶されたらどうしようこの胸の高鳴りに気付かれたらどうしよう気付いて欲しい、だけど恥ずかしいもっと触れたい、でもどうしたら分からないそんな緊張感は初めて感じるものだった「現実のユノは僕に触りたいって思わないのかよ」汗がじんわり滲んできた恥ずかしい、でも触れていたい緊張で震える手に力を込めて、触れ合う箇所を見下ろしていたら握られた拳がぱっと開いた「…あ…ユノ…」「またそうやって煽る」「え?…っ、擽った……ユノ!」僕が触れるばかりだったのに、突然ユノの手が僕の手や指や腕に触れてくる触れられているだけなのに、何だか妙に恥ずかしくなる擽ったくて痺れるような感覚まるで夢の中で猫として可愛がられていた時のような感覚「ん……っ…」ぎゅっと目を瞑って耐えていたら、強く抱き締められた耳元で大きく深呼吸するユノの吐息触れ合う胸と胸から走る鼓動が伝わってくるユノも僕も何故か息が荒いそして…「うわっ!!ユノ…っ…」「…チャンミン、声が大きい…!」右足の付け根辺りにごりっと固い何か、が当たって気付いてしまった思わず声を上げたら焦り顔のユノが大きな手で僕の口を塞いだ「…だって…」「悪い、でも、チャンミンが可愛い声を出すから…」「はあ?!可愛く無いよ」突然大きくしたユノに驚いたけど、不快、どころか何故かそわそわする嬉しい、と言って良いのかは分からないけどそれに近い気持ち困るユノの方が可愛くて優位に立てたような気分になっただけど…「チャンミンもちょっと大きくなってる」「え……っ!!」指を差されて見下ろして、絶句した恥ずかしくて堪らない、消えてしまいたいだけどユノが嬉しそうに笑って、また僕の手を妙な感じで触ってくるからもっと反応してしまう「ユノ、もう…!」「もう、何?」「今日は遅いから帰った方が…」いつの間にか僕の方が追い詰められている浅い息で必死に伝えたら、ユノの攻撃は止まっただけど、にっこりと笑顔で見せられたスマートフォンのメッセージで目眩がした「だってさ」「………」それは、僕達の母親同士のメッセージのやり取り僕の元にやって来たユノが僕と一緒に眠ってしまった事に気付いた母親達によって、ユノはこのまま僕の部屋で一晩過ごす事が決定されていた「この状況でユノと朝まで…寝られるかな」「それは俺もだけど、今はチャンミンと離れたくない」「……っ…」友達からこんな事を言われてときめく日が来るだなんて「チャンミンが俺を好きだなんて夢みたいだでも、夢じゃ困る」「僕だって夢じゃ困るよ」もうあんな夢は懲りごり、二度とごめんだだけど夢のお陰で二度と出来ないような恋に出会えた「ユノ」「ん?」「僕を好きになってくれてありがとうでも!二度と僕を猫にするなよ?!」「うん」ごめん、と泣き笑いのような顔で謝るユノを見て胸が締め付けられた僕が夢の中で悩み苦しんだ時間の何倍、何十倍もユノは悩んだのかもしれないもう一度、ユノを抱き締められるこの腕で強く抱き締めて「ユノが好き」と伝えた噛み締めるように頷くユノから「ずっと前から好きだった」と返ってきて、それに気付かなかった頃の自分に少し嫉妬した「僕、割と重いタイプなのかな…」「何?チャンミン」「何でも無いこうしてたらまたユノが固くなるかもしれないから終わり!」ばっと腕を離したけど、結局この後抱き締められて、朝までぴったりとくっ付いて眠った男らしく僕から抱き締めるのも良いし、夢では出来なかった事だから良かっただけど、夢の中で抱き締められた心地良さを思い出して幸せだったユノから抱き締めてくれなかったら痺れを切らして『ユノもちゃんと僕に触って抱き締めてよ』なんて恥ずかしい台詞を口にするところだったから良かった途中何度も目を覚まして眠れなくなったし、その度に顔中にキスされたり身体が熱を持て余して大変だったでも、寝ぼけていても朝になってもずっと夢じゃない、現実だったし僕達の日々はまだ始まったばかり━━━━━━━━━━━━━━━毎日更新の筈が結局間が空いてしまいましたしかも、短くさらっと終わる予定が書き始めると案の定長くなってしまい…ですが、個人的に楽しんで書いたので読んでいただけて嬉しいです本編は終わり、で、もう1話だけ今度こそ短いその後を更新したいなあと思っていますその時はまたお付き合いいただけたら嬉しいです最後に、読んだよ、のぽちっをお願いします 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Side Y片想い歴、それなり相手は告白なんて出来ない同性の友人ドラマなんかで『今の関係を壊したく無いから好きだと言えない』と出てくるけどまさにそう…いや、対異性の恋愛模様を描くドラマよりも俺の方がもっと切羽詰まっている切羽詰まってはいるけど、深刻で思い詰めるような恋では無かった友人として特別な位置に居られるように努力した結果、自分なりに満足出来るくらい近くに居られる何かあれば頼ってもらえるし、お互いの家に行き来したり親も公認の仲の良い友人になれた告白して砕け散って今の関係を壊すよりも、このまま仲の良い友人のままで居た方が良い何もせずに端から諦めるのは信条に反するだけど諦めたのでは無く、近くに居られて満足しているチャンミンが彼女を作るよりも俺と居る方が楽しい、と思えるように努力すれば良いのだとずっと言い聞かせてきた「……流石に重症だろ…」目覚めは良い方、そんな俺の起床直ぐの言葉がこれ目覚めは良いし夢から覚めたら直ぐに『あれ』は夢だと分かる、現実と混同する事なんて無いだからと言って良いとは言えない、いや、夢自体は幸せなものだし目が覚めて現実に戻ってきても思い出すと顔の筋肉が緩んで締まりの無い表情になってしまいそうだけど…「ユノ?起きたのか?」「…父さん、おはよう早いね」隣のベッドで眠った父親は既にシャワーを浴びて身支度を整えていた彼が目を覚ました時に、夢の中で幸福に包まれていた俺が変な顔をしていなかっただろうか、とふと思った「俺、寝言とか言って無かった?」「急にどうした?何も気にならなかったよ」「…良かった普段は同じ部屋で寝ないから気になっただけ」両手で顔を覆って父親の視線から逃げた春休みを利用してやって来た家族旅行日常から離れて旅先に来ても、俺はと言えばあの日から毎晩繰り返す夢を見ているひっそりと片想いを続ける友人、チャンミンが俺の可愛い飼い猫になる夢夢の中では日常のまま俺の部屋、俺のベッドに猫のチャンミンが居る朝起きると俺の胸の中に居て、寒そうに小さく丸まっている甘えるように鳴いて見上げてくる大切で可愛くて愛おしくてキスをしたら、たまに反撃に遭う事もあるけど何をしても許してくれる夢の中では春休みなんて無くて、冬の日を繰り返すチャンミンと離れたくないけど学校に行って、学校では人間で友人のチャンミンと一緒に過ごす日中は伝えられない気持ちも帰宅して俺を待つ猫のチャンミンには幾らでも伝えられる『大好きだよ』『チャンミンだけだ』『俺だけのチャンミンになって』夜は必ず同じベッドで眠るし、夜中に起こされても幸せしか感じない伝えられない健気な片想い、だったのは過去の話身勝手なエゴが生み出した願望は毎晩毎晩夢となって現れるせめてもの救いは人間のチャンミンに対して肉欲を具現化したような夢は見ていない事流行りの歌の歌詞にあった好きな相手への願望とは言え毎晩夢にまで見るのは充分おかしいおかしいとは分かっていても幸せ、夢で満足出来ればこのまま現実と夢を区別して生きていけるだから大丈夫なのだと自分に言い聞かせて、家族との旅行を楽しんだ「オッパ、凄く嬉しそうだね」「え?楽しかったよな、旅行」誤魔化したけれども、隣に座る妹はまるで何かを見透かそとするようにじっと見てくる旅行も終わり見慣れた景色の街へ戻ってきた最寄りの駅からバスに乗った道中の事「旅行は終わっちゃって後は現実に戻るだけ、なのにそんなに嬉しそうなのはどうして?」「家族四人の旅行は久々だし楽しかったなあって思ってたお土産も色々買えたし写真も沢山撮っただろ?現実も…まだ春休みも残ってるだろ」「そうじゃ無いってば…この後が楽しみなんでしょ?オッパの顔に書いてあるよ」「……友達に会いに行くのに楽しみなのは普通だ」普段は兄を揶揄わない妹にこれ程言われるくらい、顔に出ていたとは思わなかった少し伸びた前髪をかき上げて整える振りで、これ以上の詮索はかわす事にした現在時刻は夜の八時過ぎ少し遅くはなってしまったけど、春休みでただでさえ毎日会えないからこそ少しでも早く会いたかった「じゃあ…遅くなりそうなら連絡する」「シムさんご両親にも宜しく伝えてね」「分かってるでも、母さんもチャンミンの親に直接連絡してるんだろ」そうよ、と笑う母親と家族家族ぐるみの仲では無いが母親同士は連絡を取り合う仲だから旅行帰りのこんな時間でも堂々とチャンミンの家に立ち寄れる恋人になれなくても、それなりに特別な友人の位置だと思う「じゃあ俺はここで…」重たい荷物は親に預けて、身軽になって自宅よりも少し手前のバス停で降りた降りるまでは平静を装って、家族を乗せたバスが発車してからスマートフォンを見た「一応入れておくか」チャンミンとのトーク画面で『バス停に着いた』と送信した毎日やり取りはしていない、だけど数日の旅行中は普段の休日よりも頻繁にやり取りしていたと言うのも、旅行先にチャンミンが好きな立体パズルの大型施設があったから普段よりも沢山写真を撮ってチャンミンに送ったし、お土産を買ってこうして早速手渡す事にした今日のメッセージを見返すと、我ながら少し必死にも見える『チャンミンが家に居るなら、帰りにそのまま寄って渡すよ』と送信したら『疲れてるだろ、今度で良いよ』と返されてしまった間髪あけずに『大丈夫、折角だし早く渡したい』と送信した「…勘違いしたら駄目だって分かってるけど…はあ…」『本当は早く見たかったから嬉しい』チャンミンの言葉を噛み締めて、緩む頬にぐっと力を入れた早く見たい、のは俺の姿じゃ無くてお土産俺に早く会いたいのでは無い分かっていても、夢の中で俺だけに懐く猫のチャンミンとその言葉が重なってしまう春休みに入り、毎晩見る夢の所為で勘違いしそうになるだけど流石に夢と現実は別だとしっかり理解している今は現実、俺達はただの少しだけ仲の良い友人言い聞かせながらチャンミンの家への道を歩いた「チョン君、お土産ありがとうね後でお母様にもお礼を伝えなきゃ」「気にしないでください両親もシムさんにくれぐれも宜しくと言ってましたあと、ジュースとお菓子も持っているのでお気遣い無く…」シム家に着くまで、送信したメッセージは既読にならなかっただけど気にしない、事前に大体の時間は伝えているから家族宛てのお土産もしっかり渡して『礼儀のある友人』として笑顔で、こんなひとつひとつの行動が大切だ「……」チャンミンの部屋の前で一旦止まって、誰にも見られていない事を確認してから深呼吸した部屋の中からは何も聞こえない、漫画やゲームに夢中になっているのかもしれない「チャンミン、入るよ」声をかけて、それからノックした反応は無いイヤフォンでも着けているのかも、と思ってもう一度だけノックしてからゆっくりと扉を開けた「チャンミン……何だ、寝てたのか」そうっと扉を閉めて、ゆっくりと音を立てないようにしてベッドへと向かったノックしても声をかけても起きなかったから多少の物音では起きないかもしれない、だけどふたりきりの空間で好きな相手の寝顔を見られるだなんて特別過ぎるイベントを逃す訳にはいかない穏やかに寝息を立てて、ベッドの上で猫のように丸まって眠るチャンミンその寝顔を至近距離でじっと眺めていると、夢の中の猫のチャンミンを思い出した「おんなじ表情に見える、不思議だな」不思議だけど、そもそもあの夢は俺の願望の現れそう思うと当たり前なのかきっとその内に目を覚ますこれは現実でチャンミンは猫じゃ無い現実のチャンミンなら、目を覚ました時目の前に俺が居たら甘えるように鳴くなだんて以ての外驚いて叫ぶか…もしくは動じず冷静に『いつの間に来たんだよ?!』なんて言うかもしれない早く話がしたいチャンミンの喜ぶ顔が見たいだけどこのまま寝顔を見ていたい気持ちもある「……ふぁ…」噛み殺す事無く思い切り欠伸したついさっきまでは気分が高揚して忘れていた眠気はチャンミンに会えて彼の寝顔を眺めた事で戻ってきたチャンミンも中々起きないし、少しだけ…そう思って、彼がベッドの片側に寄っているのを良い事に隣にお邪魔しようと決めた「友達だし、何もしないし…ちょっと横になるだけ」言い訳にしかならない事を呟いて、そうっとベッドに身体を横たえるシーツに広がった柔らかなチャンミンの髪の毛が鼻先を擽って何とも言えない気持ちになる抱き締めたくなる気持ちをぐっと堪えて、横向きに眠るチャンミンの背中と丸い頭を眺めながら眠気に抗った結局俺はそのまましっかり寝落ちしてしまった無意識だったから眠ったつもりなんて無かったしかも、現実のチャンミンの後ろで眠りながらも毎晩見る夢を見てしまい…つまりは、夢の中で俺だけの大切で可愛い『猫のチャンミン』と戯れて幸せな時間を過ごした抱き締めるとリアルな感触、体温すら感じられた夢も何度も繰り返す事で精度が上がっていくのだろうか、なんて思った「チャンミン、一日でも良いから俺だけの…」猫のチャンミンが普段よりも温くて抱き心地が良かっただからだろうか、人間のチャンミンを抱き締めているような錯覚に陥って、夢の中で願望をこぼした猫の姿じゃあやっぱり足りない優等生ぶって叶わない恋でも良い、なんて言い聞かせてきたけど本当は想いを伝えたい、叶う事ならば特別な友人では無く恋人になりたい「俺だけの、何?」ぐっと噛み締めた言葉の先を、誰かが聞いてくる猫のチャンミンは喋らないなら誰が?現実のチャンミンの声に似ている、これは夢だから遂に現実のチャンミンまで登場したのかもしれないそうだ、夢ならば言える「……俺だけのチャンミンになって」夢の中でもはっきりとは言わなかった言葉を口にした一気に緊張が高まった猫のチャンミンには『大好き』『愛してる』と言い続けてきたのに、現実のチャンミンへ向けた想いであるだけでこんなにも違うドキドキしていたら、猫のチャンミンが腕の中で身動ぎした逃げられないように慌てて手を伸ばして掴んだ「うわっ!!」「……え…」大きな声に世界がぐるりと回った否、目が覚めて眠っていた事に漸く気が付いたそして、俺はと言えばチャンミンのベッドでチャンミンを後ろから完全に抱き締めていて…「…チャンミン…!あれ、俺いつの間に寝て……え、夢?!」やばい、と思って起き上がり、ベッドの端まで移動した何処までが夢で何処までが現実だったのか、寝起きの頭では分からないいや、これもまだ夢の中かもしれないそうだ、きっとそうに違い無い出来るだけポーカーフェイスで、出来るだけ視線を泳がせる事無くチャンミンをちらりと見たチャンミンは驚いた様子、でも夢なら大丈夫「『俺だけのチャンミンになって』って何?」俺に都合の良い展開にはならないようだつまり、これは現実寝落ちしていつもの夢を見て、夢だと思い現実のチャンミンへの願望を伝えてしまった「チャンミンが猫じゃ無い…」大混乱、頭は真っ白こんな台詞しか出て来ないいや、だけどチャンミンが俺だけの猫になる夢、については俺だけしか知らないから今から誤魔化せるその後はどうしよう、と寝起きの頭で必死に考える俺に、信じられないような言葉が降ってきた「え?やっぱりあれって…夢じゃ無かったの?!」目が飛び出てしまうくらい驚いた友人に『猫じゃ無い』と言っても怒らないし不思議がらない、それどころか何かが腑に落ちたような表情寝ぼけて独占欲丸出しの酷い告白をしてしまってピンチだっただけど、寝癖のついたチャンミンは頬を紅潮させて寝「早く教えろよ!」と俺に詰め寄る何だか今までよりも距離が近い気がしてどうにかなってしまいそうな俺を落ち着けてくれたのは、扉の外から俺達を窘めるチャンミンの母親の声だった「静かにしなきゃ…て言うか、もうこんな時間だったんだユノがいつ来たのかも知らないよ」「…俺も、一時間以上寝ちゃったみたいそれで……まずはこれ、チャンミンに約束したお土産…」「あ!!そうだ、ユノが来る事忘れてた…」俺が物凄く楽しみにしていた事を忘れられていた忘れられていたから眠ってしまったのだろうかそう思うとショックだ「…ありがと、ユノほんの数時間なのに長い夢を見てたんだ……ユノの飼い猫になってユノに溺愛される夢」ショックな気持ちは一瞬で吹き飛んだ押し付けるように渡したチャンミン好みのお土産をじっくり見る事無く、俺をじっと見つめるその視線は今まで感じた事の無かったものだから「…そんな事、本当にあるのか?」「ユノの夢も教えてよ夢と、それから…僕の事をどう思っているのか、も」旅行帰り寝落ちからの寝起き夢だと思って無意識で言葉にした身勝手な独占欲そして、目の前にはまだ少し眠たそうに潤んだ瞳のチャンミン「チャンミン、これって現実だと思う?」「そうじゃ無きゃ困るよ猫だとユノに何を言ってもちゃんと伝わらないんだからはあ…人間に戻れて本当に良かった」「……嘘だろ…」羞恥でどうにかなりそうだそれと同じくらい、まるで俺の夢を共有したかのような友人の可愛さにもどうにかなってしまいそうだった━━━━━━━━━━━━━━━また間が空いてしまいましたが、今度こそあと1話です読んだよ、のぽちっをお願いします 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Side Y高校生になって出会った友人同じクラスになった偶然にも家が近かった初めは特別仲の良い相手では無かった周りには性格が全く違うと言われるし、当の本人である俺もチャンミンも異論は無いだけど、話せば話す程、同じ空間に居れば居る程何故か心地好くて彼との時間を楽しみに思うようになった性格、気質、趣味、食の好み、ありとあらゆる事が笑えるくらいに違うなのに、何かあった時に感じる事や思う事は同じ何もかも違っていても、そんな事は相手を信用するにあたっては関係の無い事むしろ違うからこそ一緒に居て楽しい「チャンミン、ごめん待たせて…」「……ん…ゆの?」「おはよこれ、待たせたお詫び」眠たげな友人に紙パックのジュースを差し出したまるで今戻ってきたように振る舞っているけど、本当は五分以上寝顔を見ていた友人だった…いや、今も変わらず仲の良い友人である彼の寝顔や寝起きのぼんやりした顔を見て恋を自覚したから、俺にとっては特別な姿「はあ?そんなの良いのに…」俺達しか居ない放課後の教室ううん、と大きく伸びをするチャンミンの目の端には涙が溜まっている思わず手を伸ばして指先で拭ったら、一瞬びくっと固まる「涙が零れ落ちそうだったから」「寝起きに欠伸すると何でか涙が出るんだよなユノも?」「うん」手を引いて、ぐっと握った舐めてしまいたい、と思った冗談だと後で言っても、そんな事を口にすれば流石に気持ち悪がられるだろうから言えない「で、生徒会の仕事は終わったの?」「ああ、チャンミンを待たせてるから急いで終わらせた」「へえそれは良い心掛けだな」冗談だよ、と子どものように笑ったチャンミンは立ち上がり伸びをした「ユノを待つ間に勉強かゲームしようと思ってたんだけど、気付いたら寝てたみたい」「それは良いけど、冷えてない?」「今日は暖かいから大丈夫」『友達』だから自然にチャンミンの手を取って確かめた『友達』の俺を良く知るチャンミンからすれば慣れている事だろうに、毎回少し驚いた様子で目を丸くするそんな姿も可愛いし、そんな姿も好きだからついやってしまう「僕は男だから良いけど…ユノ、女子にもこんな風にして触れたりしてないだろうな?」「無いよ相手を意識して無くても、変に勘違いされたら困るし…」「なら良いけどユノはただでさえモテるし、毎回断るのにも気を遣ってるのを知ってるから」本当は、男相手でもこんなに触れる事は無いチャンミンだけが特別チャンミンにも周りの友人達にも気付かれないように自然に振る舞っているだけ「ありがとう、チャンミンは優しいな」「…モテる、は一応否定しろよ」「あはは、そんなのどうでも良くて忘れてたそれにチャンミンだってモテるだろ」教室を出ながら無い無い、と肩を竦めたチャンミン本当にチャンミンはモテる、だけどチャンミンは多分鈍感で相手からのアプローチに気付いていないその内に相手も諦めたり他の男子に目を向ける事が多い…なんて、我ながら観察し過ぎだという自覚はある「寝癖付いてる」「ん?ありがと帰るだけだし良いよあ…でも、ユノの家にお邪魔するからちゃんとしておいた方が良いよな」自然に頭に触れて自然に手を離した直後、同じ箇所にチャンミンの手が触れる間接的に触れ合っているようでドキドキする「今日は猫の日、って話で思ったんだけど…チャンミンって猫っ毛だよな」「癖毛だから?朝は絡まるし風でも絡まるし、直ぐに寝癖が付くし…良い事無いよ猫なら飼い主がブラッシングでもしてくれるだろうけど、そうはいかないし」「なら、俺が一緒に居る時は何時でもブラッシングしようか」「ユノにそんな事させたら、女子達に『酷い!』って怒られそう…て言うか、自分で出来るしそれくらい面倒臭いって事」チャンミンは俺の真っ直ぐな髪の毛が羨ましいのだと言った俺はチャンミンが羨ましいのでは無くて、チャンミン自身が欲しい癖毛が良いのでは無くて、好きな相手だから癖毛も愛おしい好きだから全部欲しいし触れたい、それだけ約一ヶ月後には春休みがやって来る二月まだまだ冬、だけど暦の上では春だし、今日は季節外れに暖かな一日だった「寒っ…!やっぱり外に出たら寒い」「うん、早く俺の家で暖まろう」「そうしたら、今度は自分の家に帰るのが面倒になりそう」ダウンジャケットごと自分を抱き締めて首を竦めるチャンミンに「じゃあ、泊まっていく?」と尋ねたしょっちゅう泊まるような仲では無いけど、何度かお互いの部屋に泊まった事はあるそれもこれも、俺がチャンミンとの仲を自然に、かつしっかりと深めてきたからこそ「んん…どうしようかな泊まるのは流石に悪いし…ユノの家族に緊張するって言うか」「緊張?チャンミンらしいな俺には緊張しないの?」「ユノは友達なんだから緊張なんてしないよ当たり前だろ」嬉しいような、複雑なような…警戒されていないのは嬉しいどちらかと言うと内向的なチャンミンにとって、泊まりも出来る間柄の友人になれた事はとても嬉しいだけど、同じベッドや同じ部屋で寝ても緊張しないのは全く意識されていないという事で複雑それで良いしそうでは無いと友人関係を続けられいからこれで良い、なのに複雑「それって、チャンミンにとって俺が特別って事?」「そうだよこんな面倒臭い僕とずっと友達してくれるやつなんて少ないし、ユノは特別だよユノみたいな友達は大切にしないといけないって思ってるし、親にもそう言われる」「チャンミンを面倒臭いだなんて思わないよ他の誰より信用出来るし信頼してる」「…ふうん…そうそう、だから、うちの親なんて『ユノ君ならいつでも泊まりに来て欲しい』とかいつでも大歓迎だとか言ってて…」照れたように少し早口になるチャンミン『友人』として褒めたから照れているのだと分かっているけど、そんな顔を見るともっと好きになるし勘違いしそうになる勘違いなんてしないし、ちゃんと自分の立ち位置は分かっている、こうして心の中でひっそりと思うだけ結局この日は予定通り俺の家、俺の部屋でふたりで勉強して、その後チャンミンは彼の家に帰った遅くなったから家まで送る、と言ってみたけど『男だし、友達なのに気を遣うなよ』と返されたら何も言えなくなったそれでも心配だし一分一秒でも長く一緒に居たい、なんて本音は『友人』の顔をしていても言えない「…はあ……」『帰ったら連絡して、だなんて、ユノはまるで僕の保護者だよね』無事に帰宅した事を知らせるメッセージを見て安心した「保護者?チャンミンは鈍感だなあ鈍感なままで居てもらわなきゃ俺が困るけど」ベッドに横になって、シーツをぎゅっと握り締めたつい一時間前にはチャンミンがうたた寝していたベッド眠ってしまって遅くなれば、そのまま朝まで一緒に居られるかもしれない、なんて思っていたけどそうはいかなかった俺が保護者、だなんてとんでも無いこのベッドにチャンミンの痕跡が少しでも残っていないだろうか、と必死で顔を擦り寄せたり、寝顔を思い出してはあらぬ事を考えている、ただの下心だらけの思春期の男だけど、下心を加速させたら止まらなくなりそうだから必死でブレーキを掛けている「そうだよ、だから…」チャンミンの全てを知りたいあの流行りの歌の歌詞のように、一日だけでも彼の飼い猫になれたらまだ知らない彼の全てが分かるだろうかそう考えて、この汚い欲望を少しでも綺麗なものにしよう、としてきただけど無理猫になっても我慢出来ないそれよりも、彼が俺のベッドで一日中過ごして俺だけを見てくれるような、俺だけの猫になったら良いのに想像で彼を組み敷いてキスをして、不埒な事をするよりはまともなのだと言い聞かすそうして、この夜から毎晩のように夢を見るようになった好きだけど言えない、伝えられない、知られてはならない相手が俺だけの猫になる幸せな夢を━━━━━━━━━━━━━━━今度こそ後2話(か3話)です読んでくださってありがとうございます読んだよ、のぽちっもお願いします ↓にほんブログ村
Side Y『オッパの感性は私よりも女子みたい』そう言われた事は忘れられない言葉を無くす俺に、妹は続けて言った『あくまでも感性の話オッパの見た目は男らしいから余計にそう思えるのかもオッパはモテるから、オッパを好きな女子からすれば嬉しいと思うよ』最後の一文については触れずに、そんな兄妹のやり取りがあったのだと話のネタにしていたら、クラスの友人達からも「だから余計にモテるんだろうな」「顔も良いし感性も繊細だなんて女子達からすれば理想でしか無い」と言われたモテないよ、と言ったら謙遜はいらないと友人達に即答されただけど、俺にとって唯一好きな相手に特別だと思ってもらわなければ何の意味も無いのだこの恋の相談は誰にも出来ないし、報われそうも無い不毛な恋「お、チャンミン戻ってきたか」「どうだった?やっぱり告白だろ?」向かい合って座る友人が俺の向こう側を見ながら呼んだ名前にドキりとした足音がこちらへと向かってくる、それだけで心臓は飛び跳ねそうになる事を俺以外は誰も知らない「違うよ仮にそうだとしても、皆が居る場で言う事じゃ無いだろ」「本当か?チャンミンはモテない俺達の仲間のままか?!」「はいはい、そうだよ僕達は爆モテのユノとは違うからね」『違う』なんて言われたら、それがどんな内容であれ切ない特に、今俺の隣の席に座った友人チャンミンからであれば尚更だ「じゃあ、わざわざ呼び出してまで何の用だったんだ?」「それは…」別のクラスの女子から外へと呼び出されたチャンミン俺が物凄く気になっていた事を聞いてくれた友人には心の中でガッツポーズをしたし賞賛を送った全てポーカーフェイスのままでひっそりと「言わないよ言うまでの事でも無い」「ええ、勿体ぶるなよチャンミン」「勿体ぶって無いし、告白された訳でも無いこの話は終わり!それより、僕が居ない間に皆で何の話で盛り上がってたのか教えろよ」頬杖をついて笑うチャンミンがちらりと俺を見たドキッとしたのと同時に、無意識でチャンミンをじっと見ていた事に気付いて焦った焦りなんて顔には出さないし、『いつも通り』普通の笑顔で何も無かったようにやり過ごしたもう何年もこうやって隠してきたから今更バレない自信がある「さっき…何の話だっけ?」会話の切り替え方も我ながら自然いや、男同士仲の良い友人同士でたまたまぼうっと見ていたって不審になんて思われないから堂々としていれば良い「ほら、ユノが女子よりも女子って話!」「え?ユノが??はあ?」誤解を生むような言葉、チャンミンは大きな目を更に真ん丸に大きくして俺と友人を交互に見ている誤解は直ぐに、今から解けば良いからそんな事は問題じゃ無い問題は、驚くチャンミンがあまりに可愛らしいって事「ユノはどちらかと言うと男、って感じだよむさ苦しい男、よりは女子達の理想の王子様って感じ」「王子様…はちょっと言い過ぎだし、持ち上げても何も奢らないからな、チャンミン」「奢って欲しいからって無理矢理褒めたりしないよ謙遜の仕方までユノはユノだよなあ」じっ、と俺を見つめて納得いかない様子のチャンミン誤解を解く必要も無さそうだし、こんなにも見つめてもらえたら今日は良い日だ「妹に言われたんだよ俺の感性は女子みたい、だから女子からすれば嬉しいんじゃ無いか、みたいに」「感性…」呟くチャンミン、もう彼の姿しか目に入らないチャンミンが戻ってきたら全部で四人になったからか、残るふたりはふたりでまた別の話で盛り上がり始めたようだし丁度良いここからは俺がチャンミンを独り占め出来る「ああ、そう言えばユノがこの間言ってた事を思い出した」「ん?何?」「あの歌…最近ユノがハマってて、お陰で僕までよく聴くようになった歌だよ歌詞に共感出来るって言ってたよね?僕にはあまり分からないし、ユノはロマンチストだなって思った」「『一日だけで良いから好きな相手の飼い猫になりたい』の事?」そうそう!と頷くチャンミンは、続けて「女子に喜んでもらう為とかモテる為に『僕も分かる!』とは言えないかなあ」と素直に苦笑いしている「あ!ユノの考えを否定した訳じゃ無いからな!」「分かってる」俺が知っている限りでは、チャンミンにはそれなりに長く続いた彼女は居ないさっきは謙遜していたけどチャンミンは女子から人気があるし、告白だって何度も受けているその中の誰か、と付き合っては短期間で別れたのが数回それが俺の知る限りでの、この友人の恋愛経験そこに割り込むだなんてまず不可能チャンミンは同性に対して恋愛感情を抱く人間では無いし、俺のように都合良くひとりだけに対しては性別も関係無い、なんて思う事も無いだろうから戦わずして負けるのは俺らしく無いだけど本気だからこそ慎重になる、全てを失って友人ですら居られなくなる事には耐えられないから、彼の一番の友人という位置を必死に守っている「我ながら、健気だよなあ」「何が?感性の話?」「え、いや…ええと、うん」じっ、と覗き込んでくる大きな茶色い瞳本音を口にしてしまいそうになるけど、この眼差しに簡単に負けるような生半可な覚悟の片想いでは無いこの気持ちはずっと閉じ込めていくと決めたし、夢や想像以外ではどうにかなる事は不可能だとちゃんと分かっている「そうだ、ユノさっき話をしてた隣のクラスの女子なんだけど…」「チャンミン、やっぱり告白されたの?」「違うって」隣の友人ふたりはもう俺達とは別で盛り上がっているから、小声で話せば聞かれる事は無さそうだそれでもチャンミンは言い難そうに様子をうかがってから、スマートフォンを取り出し素早く指を動かしたスマートフォンを見て、とジェスチャーされたから机の上の小さな機械を手に取ったチャンミンとのトーク画面に受信したばかりの新着メッセージがひとつ、それだけで物凄く胸が高鳴るのに内容は残念だった「連絡先の交換はしたくないから、今度会った時に直接話すよ」先程まで数分間チャンミンを呼び出していた女子は、俺との仲を取り持って欲しいとチャンミンにお願いしていたらしい間接的に伝えずに直接伝えたら良いのに…なんて言えない俺はどうやっても伝える勇気が出ないのだから「交換はしないって…ユノは端から断るの?」「うん」「良い子だったよユノを本当に好きなんだろうなあって思った」その言葉が俺をどんな気持ちにさせるのか、チャンミンは知らない友人同士、普通の会話チャンミンは何も悪く無いなのに、こんな時いつも胸がずきずきと酷く痛む叶わない恋の苦しみを知っているからこそ、自分に向けられる想いに対しても誠実に応じて断らないと、と思うようになった「考えてみたら良いじゃん!深く知ればまた気持ちも変わるかもしれない、あの歌詞みたいに相手を想うかもしれないから」「チャンミンは俺とその子に付き合って欲しいの?」「え…そういう訳じゃ…ただ、良い子だったしユノは物凄く良いやつだし!友達として思っただけで、押し付けたい訳じゃ無いよ」冷たく言い放ったつもりは無かったけど、しゅんとさせてしまったそこまで大人にはなれない、そこまで気持ちをコントロール出来ないだけどチャンミンは悪く無いから反省して「ありがとう」と伝えた「そうだ、猫と言えば…今日は『猫の日』らしいよユノは知ってた?」「そうなの?知らなかった」「じゃあ教えてあげるよ今日は何月何日?二月二十二日だろ?だから…」二、を『にゃん』と呼ぶからそれが三つで猫の日なのだと言うチャンミンがあまりにも可愛くて…「え、どういう事?チャンミンもう一回教えて」「だから…にゃんにゃんにゃん、って読めるだろ?それで猫の日…」「うん…」「ユノ、何で笑ってるんだよ」「え?いや、チャンミンが可愛くて…」隠し切れなくて思わず本音を漏らしたら、友人は耳まで赤くして揶揄ったのか、と怒ってしまったそんなところも可愛いし、まるで猫のようだそうだ、もしもチャンミンが、たった一日でも良いから俺の、俺だけの飼い猫なら…俺だけのものにして、閉じ込めて、他の誰も何も彼に近付けないように出来るのに「うん、そうだな…」あの流行りの歌は好きだし共感出来るだけど、もしも俺なら、彼の飼い猫になるよりも飼い主になって大切に大切にしたいそんな風に密かに思った━━━━━━━━━━━━━━━更新が空いてしまいました予定よりも少しだけ伸びそうです、が、後2.3話です最後までお付き合いくださいね読んでくださってありがとうございます読んだよ、のぽちっもお願いします ↓にほんブログ村
「チャンミン!!」勢い余って二階の部屋の窓から落ちてしまった猫の姿の今なら、怪我ひとつせず華麗に着地出来るだろうなのに、ユノはと言えば驚きと焦りが混じったような顔で両手を目一杯広げ伸ばして僕を受け止めた後で思えば、ユノの隣には人間のチャンミンが立っていたのに猫に向けて同じ名前を呼ぶなんておかしい人間のチャンミンには、猫に同じ名前を付けた事を秘密にしていたのに自らそれをばらすような結果になるなんて笑えるでも、この時猫になった僕は『嬉しい』と思ったそれはきっと一種の優越感同じチャンミン、でも僕を選んだという優越感人間のチャンミンがその時どんな表情だったか、なんて…表情どころか顔全体にモザイクがかかったように何も見えなかったのに「良かったチャンミン、本当に…」僕を強く抱き締めて泣きそうな声そんな風になるなら、僕が窓から飛び落ちてしまう前に帰って来いよ人間のチャンミンにばっかり鼻の下を伸ばしてないで、『チャンミン』と名付けたからには僕にだってもっと愛を注げよそう言おうとしたけど言葉にならなくて止めた言葉にならなかったのは、ユノに抱き締められて胸いっぱいになってしまったからその隣に僕の『在るべき姿』が立っていたもしかしたら元に戻れるチャンスかもしれなかったそれなのに、そんな事はどうでも良くなってしまったのは優越感の所為だろうか自分は猫だって受け入れ始めているのか、それとも…「チャンミンは本当に俺の事が大好きなんだな」「っ、何言ってるんだよ!勘違いするなよ!」気が付いたら、ユノのベッドでユノに抱き締められていた人間のチャンミンはもう居ない何か言っていたのか、『猫のチャンミン』に驚かなかったのか何も分からないままなのは、それだけ僕の気が動転していたのか「いや、流石におかしいだろ…」そんなの言い出したら猫になってから全部そうこの世界は全ておかしいだけど物凄くリアルだユノの家、家族、部屋、ユノという友人の存在それらは全て僕が知る現実と同じけれども現実にユノは猫を飼っていなかったユノは、まるで恋をしているような顔で僕を見てはいなかった「…ああ、でもそう言えば…」僕の名前の響きが良い、とは言われた事がある僕らしい名前だとか、自分では良く分からないような事も言っていたそう思えばやはり、ここは現実をベースにした何かしらの世界で過去なのだろう「チャンミン?」「何?毎回答えたって会話にならないじゃんユノ、って呼んだって…」ユノの方が猫よりも余っ程、喉をゴロゴロと鳴らしているように見えるつまりそのくらいでれでれしているし猫のチャンミンを溺愛しているだけどやっぱり違う人間のチャンミンとメッセージのやり取りをしていた時のあの表情とは全く違う「ユノは、僕…チャンミンの事をどう思ってるの?…それがもしも分かっても、これは僕の現実じゃあ無いし、それなら意味なんて無いか」頭から背中までゆっくり撫ぜられている気力で何とか抗っていたけど、どれだけ気を張っても瞼が重たくて重たくて重力に逆らえない「ふふ、チャンミン気持ち良さそうだなあ俺の手が好き?」「僕の今のこの手じゃ届かないだけだって…ふああ…」「にゃあ、だって甘えて可愛いなあ」「にゃあ、なんて言ってないよ!!猫じゃあるまいし…!」はっと目を見開いて立ち上がった立ち上がっても横になるユノをやっと少しだけ見下ろせるくらいの小さな姿猫の姿で可愛がられる事には少し慣れてしまったけど、よく考えたらまだ丸一日も経っていない「それでこれじゃあ…もう一度寝て起きたら心まで猫になったりとか、流石にそんな事…無いよな?」ふと過ぎった考え恐ろしくなって頭をぶんぶんと振ったそんな事何も知らずにユノは楽しそうに笑っている「てかさあ、ユノは何で猫を飼ってるんだよこの家には猫も犬も居なかっただろ、なのにどうして…」必死な僕を片手で撫ぜながら、ユノはスマートフォンしか見ていない『人間のチャンミン』よりも僕…猫のチャンミンを選んだようで優越感に浸ったのはついさっき、だけど今はまたふつふつと怒りに似た感情が僕を支配てしいくゲームをしたり、スポーツ鑑賞の時以外はこんなに熱くなる事無いこの僕が、だ「ユノ、口笛より僕を見ろよ…!」「ん、聞いてるよ、チャンミン」「全然聞いてない、何だよ、僕はこんななのに、ご飯だって食べてないのにユノは…」言いながら気付いた水しか飲んでいないのに、その割にはお腹が空いていない猫の身体だからなのかは分からないだけど思い切り食べたいラーメンや焼肉にハンバーガーに…ユノは『チャンミン』とふたり、男同士なのに奢り合って食べてきたのだろうか「チャンミンは僕だろ…」仰向けだったユノがごろん、と横向きになった不貞腐れてユノから逃げたら、まるでそれを追い掛けるようにして後ろから触れられた背中にユノの吐息がかかって擽ったい「いつまで鼻歌なんて歌ってるんだよ」擽ったいのに気持ち良いユノが鼻歌で奏でるリズムに乗ってゆっくり撫ぜられているせめてもの抵抗で背中を向けたままでごろんと横たわった「あはは、同じポーズだなチャンミンとふたりでこんな風にベッドで…なんて緊張する」「……何言ってるんだよ、今更」夜中、目が覚めた時も同じベッドで眠っていたベッドから降りようとしたら必死で止められたなのに緊張だなんて意味が分からない呑気な鼻歌に、初めはいらいらした『チャンミン』と遊んで帰ってきたから気分が良いのか、とか良く分からない事を考えていらいらしたどうしていらいらするのか、はあまり深く考えてはいけないような気がした全ては僕が今、ユノに飼われた猫だからそう思うしか無い「…ん?この歌……」何度か繰り返されるメロディー初めは何の曲か分からなかったけど、記憶にある歌だと気が付いた流行りの歌学校の女子達が騒いでいる、アイドルグループが歌う恋の歌ユノもこの曲が好きで、歌詞の気持ちも分かるんだと言っていた、僕にはあまりにロマンチック過ぎて理解は出来ない、と思っていた曲理解は出来ない、だけど耳に残るメロディーや優しいボーカルは嫌いじゃ無い、そんな曲「ユノの方が『分かる』って言ってたのに、どうして僕が猫に…」この曲と今の僕の状況を重ねてしまった好きな相手の飼い猫に一日でもなれたら良いのに、そんな切なる恋の想い…らしいけど、僕はユノに恋をしていないからやっぱり違う馬鹿馬鹿しい事を考えてしまい、はあと溜息を吐いた同じタイミングで、いつの間にか鼻歌を止めたユノが僕の背中にぐりぐりと顔を押し付けてきた「ふっ、あはは、擽ったいよ、ユノ…!」「猫になるより、猫になったチャンミンを独り占めしたいなんて言える訳ないよなあ…」やっぱりあの流行りの歌だそして…「…………は?」今までも会話は噛み合っていなかっただけど、僕はユノの会話を理解出来ていた当たり前だ、僕は本来人間なのだからでも意味が分からないユノはこの世界の『人間のチャンミン』からのメッセージに対してまるで恋をするような表情を見せたまるで、であって、そんな筈は無い僕達は友人だから「チャンミン、大好きだよ」「……」猫になって丸一日も経っていないこの、短いけれどもとても長い間に何度も何度もユノから言われてきた言葉慣れたのに、何故か今とても恥ずかしい「やめろってユノ、くっつき過ぎ…」「ちゃんと顔を見て言えたら良いのにけど、そうしたら友達じゃいられなくなるかな幻滅されるかな…」「至近距離で何度も言っただろ!キスだって…」そうだ、ユノは無断で僕の顔にキスしてきた男同士なのに、相手は猫だと思って…そうだ、僕は今ユノの飼い猫ならば、この言葉は『僕』へ向けたものでは無く、人間のチャンミンへ向けたものなのか「ああもう…頭がおかしくなりそうだ」「チャンミンが好きで好きでおかしくなりそう…絶対聞かないで、まだ起きないで、出来たら朝まで…」「はあ?ずっと起きてるってば……」処理不能な沢山の感情がごちゃ混ぜになっている流石に振り返ってユノの顔を見てやろう、と思った瞬間、世界がぐらっと大きく傾いた目を開けていられなくなってぎゅうっと瞑った足元まで崩れてしまいそうで怖くなった、だけど後ろから何かに抱き締められていたから落ちずに済んだ「今の、何……」漸く収まってゆっくりと瞼を持ち上げた自分の声は何だか物凄く掠れていて小さいまるで寝起きのようにベッドの上に横になったまま小さく息を吐いて今度こそ振り返ろうとしたら、何だか違和感がある「……ん?……うゎっ……!!」振り向いたらユノが小さくなっていて叫びそうになった小さく、では無いさっきまでが大きすぎただけで、多分これは僕と同じくらいの大きさそしてここは、僕の部屋で僕のベッドだもう一度顔を元に戻して、横になったまま自分を見下ろした僕は確かに僕で、人間のシムチャンミンだったほっとして涙が出てきただけど、動こうにも動けない何故かと言うと、ついさっきまでのようにユノが僕の背中側にいて僕の腹に腕を回しているから「ちょっと、ユノ…」混乱する頭で、軽く振り向いて呼び掛けてみたユノはううん、と眉を寄せてから「チャンミン」と小さく呟いた「そうだよ、チャンミンだよ女子と間違えてる訳では無さそうだなそれなら良いけど…」「チャンミン、俺の…」「……どうなってるんだよ…」まるで夢から覚めたようきっと夢だったなのに、現実に戻ってきてもユノは夢の続きのまま「おい、ユノ僕は『ユノのチャンミン』じゃ無いよ」「…分かってる、でも………」「でも?なら何だよ」もしかしたら、これもまた新しい夢かもしれないとりあえず人間には戻れたから心に余裕が生まれたまだ頭はぼんやりしているけど、寝惚けたユノとの会話も成り立っている「ユノ?腕も離して欲しいんだけど…」「ん…」こんなに人と密着する事が無いからどうすれば良いのか分からない猫になって慣れたけど、やっぱり恥ずかしいユノの体温や鼓動が背中越しに伝わってきて、知ってはいけないものを知ってしまったような妙な気分になる「なあ、ユノってば…」「一日でも良いから、俺だけの…」「俺だけの、何?」「俺だけのチャンミンになって…」「…っ……」ドキッとして固まったごくん、と唾を飲み込んで、速くなる鼓動に戸惑いを覚えた猫のチャンミンに言っているのか、あの世界の僕では無いチャンミンに言っているのか、それとも…「分かんないよ、もう…」何かに縋りたくなって、腹に回されたユノの手を掴んでぎゅっと握ったびくっ、とその手が震えたから反射的に手を離したら今度は追い掛けてくるように掴まれて…「うわっ…!」「チャンミン?!あれ、俺いつの間に寝て…え?夢?!」掴まれたと思ったら、今度はまた直ぐに離されたそれだけで無く慌てた様子で飛び起きたユノは僕のベッドの端っこで『まずい』という表情「『俺だけのチャンミンになって』って何?」「え?あれ、チャンミンが猫じゃない…」「え!!やっぱり『あれ』って夢じゃ無かったの?!」ふたり共焦って声が大きくなってしまったそのまま固まっていたら、扉の外から「もう深夜だから静かにしなさい」と母さんの声頬をつねってみたら痛かった猫になった時も痛かったけど、ならば全てが現実なのか枕元にあったスマートフォンを手に取ってみたら、覚えている一番最後の時間…のほんの数時間後の深夜だった「やっぱり夢…?なら、どうしてユノが部屋に居て僕を抱き締めてるんだよ」「チャンミンがどんな夢を見たのかは分からないけど、その…」もうすぐ高校三年生、の春休み明日、いや、今日も休みだから夜更かししたって問題無い会話も出来るようになったから、謎解きをしていこうと思うユノを前にすると収まる事の無い胸の高鳴りについて、も含めて━━━━━━━━━━━━━━━読んでくださってありがとうございます忙しさで早速(目標の)毎日ペースでは無くなってしまいましたが…久しぶりのお話、個人的にはとても楽しく書いています最後までお付き合いいただけたら幸いです読んだよ、のぽちっもお願いします ↓にほんブログ村
夢を見た夢の僕は一匹の猫を飼っていた両手で簡単に抱き上げられる可愛い猫に僕は名前を呼び掛けて…「……夢か…」名前を呼んだら猫が僕の顔を舐めたざりっとした猫の舌の感触がとてもリアルで驚いた「嘘だろ、何で『これ』は醒めないんだよ…」目覚めたのはベッドの上僕のものでは無い、これは友人であるユノのベッド、そしてユノの部屋ぐぐっと伸びをして欠伸をしたのは、そんな余裕があるからじゃあ無くて止められない本能のようなもの何の本能って?多分、猫の「はあ……」夢で、僕は人間だったそれが本来の姿で今が何かおかしいだけなのに夢が現実で、この現実が悪夢のよう夢と今が真逆になったようだった、何故なら僕は夢の中で猫に向かって『ユノ』と呼んだから舐められた舌の感触がリアルなのは、今僕が猫だから眠ってしまう前に、これもきっと猫の本能なのだろうけど…手をぺろぺろと舐めたらざりっとした独特の感触があったから伸びをして起き上がりジャンプした窓枠にバランス良く着地して外を見下ろした今、僕が居るこの世界は二月の下旬つまり過去らしい…けど、二月のユノは猫を飼っていなかった視界に入るのは僕が知っている近所の景色、冬の街、そして茶色い毛の猫の手や身体「猫なら前脚、だっけ違う、僕は人間…!」間違い無く僕は人間だ実際、この世界にも人間のシムチャンミンは存在していてユノと友人関係らしい今朝もメッセージアプリでやり取りをしていたのを見たし、猫の僕が『チャンミン』と名付けられたのも人間のシムチャンミンからだと分かったそう、僕は人間シムチャンミンだなのに猫の姿になってユノに飼われている外に出ようと思えば出られたのに、その勇気すら出ずに登校するユノをただ眺めてふて寝してしまった「お腹空いたよお…」いつもとは違う不思議な腹の音よだれを飲み込んでも空腹は満たされない部屋を見渡したら水が入った皿が見えたから、これなら大丈夫だと自分に言い聞かせながら舌で舐めたユノは薄情だ家族が認めるくらい『猫のチャンミン』を溺愛しているくせに、何度も何度も大好きだとか言って目尻を下げていたくせに心は人間の僕からしたら有り得ない事だけど…キスまでしたくせに、置いて行くなよと懇願する『猫のチャンミン』を置いて家を出て行った溺愛しているくせに、『人間のチャンミン』と放課後に予定があるから帰宅が遅くなるとか言う溺愛しているくせに、僕を…『猫のチャンミン』を見つめるよりももっともっと、そう、まるで恋をするような表情で僕とのトーク画面を眺めていたからユノに大切にされたい、そんな願望を抱いてはいないだけど今の僕にはユノしか居ない、多分まるで恋をしているように見えたのはきっと勘違い、それか猫になってしまった事による被害妄想だとか、とにかく僕は今普通じゃ無いのだ「そうだよ、だからこんなにも寂しいし…」寂しい人間に戻れない事もだけど、ユノが居ない事が寂しい寂しいから、飛び出る勇気の出ない窓の外を眺めるよりもベッドに戻って毛布に潜り込んだここはユノの匂いがする、体温が残っているような気がする「くそっ…」涙が滲むのは、悔しさゆえかそれとも寂しさがほんの少しだけ紛れたからなのか分からないこんな事で寂しくなるよりも、人間のチャンミンがどうしているのかとか、人間のチャンミンの意識は一体何なのか、とかどうすれば元の姿に戻れるのか、とか、考えなければならない事は山ほどあるのにふて寝から目が覚めた後、更にまた眠ってしまったこれも猫の身体の所為なのか、眠くて眠くて堪らない目が覚めても僕は猫のままでユノのベッドの上に居るままどちらかと言うとリアリスト、ファンタジーのような事はフィクションとして楽しむのは良くても現実味なんて皆無だと思っているだけどこれはフィクションでは無くて確かに今僕の現実、受け入れるしか無い「もう真っ暗じゃんか…」そう言えば、最初に猫として目覚めた時には部屋の灯りが消えていたのに視界がはっきりしていた今も窓の外は同じで太陽は沈んでしまった今更気付いたけど、部屋の灯りが付いているのは『猫のチャンミン』を残して部屋を出るユノの優しさなのか、それとも単に忘れただけなのかそんな事はどうでも良いから、早くユノに会いたい「寂しいよ、ユノ……」ユノの匂いがする毛布に包まれたまま呟いた瞬間、遠くからふわっと匂いが漂ってきた「ユノ!!」ユノの匂いだと直ぐに分かるこの部屋に残るユノの匂いとは違う、もっと濃い匂い立ち上がり、窓枠に向かってジャンプした二階のユノの部屋、その窓を覗き込み高鳴る鼓動を堪え切れないまま見下ろしていたら、街灯が照らす道を歩く制服の男子高生が見えた同じ制服で歩いていても、もうひとりの方なんて目に入らない僕に気付いていないユノしか見えないガラス窓を爪先でカリカリ引っ掻いた「ユノ!気づけってば………っ!」必死で叩いたり引っ掻いていたら、窓が開いたしかも、突然だったからバランスを崩した猫は反射神経が良いと聞いた事があるけど、僕は本物の猫じゃ無く人間だからドジをしたのかもしれない…なんて、落下しながらスローモーションになった世界で考えた「チャンミン…!!」僕が落っこちてやっと気付いたなんてユノは遅い遅いけど、僕をしっかりキャッチしようとした事は褒めてあげようと思うスローモーションになった世界でユノに抱き留められる直前、隣に立つ制服の『僕』を見た確かに僕なのだろうけど、その顔はまるでモザイクがかかったよで良く見えなかった━━━━━━━━━━━━━━━読んでくださってありがとうございますあと少し、最後までお付き合いくださいね読んだよ、のぽちっもお願いします ↓にほんブログ村