山村 21歳の冬
仕事中に鳴りまくる携帯。
やれやれ、またか。。。
仕方なく電話に出る。
今どこにいるのよ！！もう信じられない！！！ｍｋｍｋ。。。
怒り狂う犬子。
だから、ホントに仕事中なんだってば。。。
付き合いはじめた途端に、犬子の性格は一変した。
周りからは、羨ましがられるほどの美人と付き合うことになったのはいいが、やはり、山村のような下々の者には、少々荷が重かったようだ。
人前で居るときはそうでもないのだが、二人で居る時のわがままっぷり、離れた時の束縛のキツさは尋常ではなかった。
なぜだかわからないが、常に山村の浮気を疑っているのだ。
山村は、そんなにモテる方ではないというのに←
そして、なにより、精神的に病んでいた。
泣きだしたら止まらない。
怒りだしても止まらない。
それから、彼女の持ち物には、一般的な女性だと持っていないような物(大量の種類の睡眠薬や精神安定剤とか)が紛れていたのだが、その中でも特に気になった物。
完全自殺マニュアルⅡ
という本。
しかも、Ⅱってなんだ。
正直、ひいた。
しかし、それでも、彼女を理解してやりたいと山村は思った。
そういえば、何かのアニメで、
錬金術は、物質を理解・分解・再構築する科学
だと言っていた。
犬子ちゃんを解明するためにも、まずは理解することから始めるのだ。
と、いうわけでー、完全自殺マニュアルⅡとやらを借りて読んでみる←
首吊り、飛び降り、焼身、毒ガス、特殊
ありとあらゆる自殺の方法が、正しい手順で、成功率、目的、リスク別に完全網羅されているではないか。
ふむふむ、なるほど、こんな方法が、
なんて、納得するわけがないだろっ←
こんな物が出回っているなんて、世も末だわ。
なんか自分まで病んできた。
一体こんな物を読んでどうしようというのだ。
どうしようったって、この本から学べることは。。。一つしかないじゃないですか。
し、心配すぎる。。。
結局、努力はしてみたものの、彼女の思想を理解することは出来そうになかった。
最終的には、仕事中に怒り狂って電話をかけてきた時に、
もう知らない！！！さよなら！！！
と、なんだかよくわからない間に、あっさりフラれてしまったではないか。
ハートブレイク山村。
どれだけわがままを言われても、気にしないようにした。
浮気を疑われる度に、いちいち決定的なアリバイを突きつけて説明し、誤解を解いた。
少しでも彼女に時間を作ってあげようと、勤務時間の短い仕事に転職を考えたりもした。
こんなにも犬子のことを考えているというのにっ、これ以上、一体何をどうすればいいのだ。
一体どうすれば。。。
ボクもうわからないよパトラッシュ。。。
恐ろしく落ち込んだ、若き日の山村だった。
と、その時、
体中に電撃を受けたような感覚とともに、ひらめいた名案。
人は、追い詰められた状況でこそ、真の力を発揮したりする。
どうすればいいかわからないのなら、わかるようになればいいのだ。
そうだ、
占い師
になろうっと。
つづく
