※お玉ちゃんシリーズ「6」完結編です。
お玉ちゃんが無事に成仏し、ホッとした私は、お玉ヶ池から上の道路にあがって、車に乗り込みました。
元気よく車を発進したのですが……気分がむわむわと悪くなりました。
軽く吐き気がして、両肩から背中が重たくて痛く、激しい頭痛もします。
ここで私は考えました。
お玉ちゃんが処刑されたのは「元禄」です。
お玉ヶ池はその頃からの心霊スポットですから、だいぶ古いです。
長い年月の間、土地が心霊スポットとして低い波動を保ち続けているので、霊がいなくなったところで、土地の波動はすぐには変わりません。
体調の悪さは、土地の低波動の影響だと思いました。
池まで降りたからだな~、降りなきゃよかったな~、と思うものの、池のそばに行かないと声が聞こえなかったので、これは仕方がありません。
とにかく、この悪影響をお不動さんにスパッと祓ってもらおう! と思いました。
どこのお不動さんに行くか……ということは、少し前から考えていました。
頭を撫で撫でしてくれるお不動さんがいる「深川不動堂」か、
大きくて最強のお不動さんがいる「成田山新勝寺」か、
孫娘を救ってくれたお不動さんのいる「喜多院」か……で、悩みました。
深川不動堂は都内にあるため、自宅までのアクセスを考えたら、ここが一番です。
けれど、深川不動堂の周辺は道が狭く、駐車場を探すのに苦労しそう……と思いました。
私はまだ富岡八幡宮に行く勇気はないので、うっかりその地域に車を入れてしまうのは遠慮したいです。
というわけで、深川不動堂はあきらめました。
新勝寺と喜多院では、お玉ヶ池からの距離が、車で1時間違います。
新勝寺のほうが遠いのです。
もちろん、帰宅する時も、新勝寺からのほうが時間がかかります。
一刻も早くお祓いしてほしかったことと、土地の悪影響にも強いということで、喜多院に行くことにしました。
体調の悪さを我慢して、必死で運転をし、喜多院に到着するなり祈祷の申し込みをしました。
祈祷の時間まで少し余裕があったので、天海さんに会いに行きました。
この仏様には山ほど聞きたいことがあるのです。
まずは、孫娘を助けてもらったお礼を言い、それから、お玉ヶ池での体験を話しました。
「池のそばまで降りていって、それでですね、お玉ちゃんに話を聞くとですね……」
「たくさんつけておるなぁ」
「え? つけています?」
「うむ」
「えーっ!」
霊を乗せているとは思いませんでした。
体調不良は土地の悪影響だと思っていたのです。
「17体、乗せておる」
「えええーっ!!!」
「池を離れる時に重たいと感じなかったのか?」
たしかに重たくて、肩や背中が痛かったです。
でも、吐き気や頭痛のほうがつらかったので、そっちに気を取られていました。
お地蔵さんがお玉ヶ池の霊をすべて連れていったので、霊が乗っているとは思わず、きっとこれは心霊スポットの悪影響だろう、と考えていたのです。
ここで「ん?」と疑問がわきました。
17体?
17体も霊が残っていたってこと? 全部連れて行かなかったのかな? と、頭はハテナマークだらけです。
天海さんによると、池にいた霊は全員、お地蔵さんが連れて行ったそうです。
だから池は、スッキリとキレイになっています。
けれど、池の付近にはまだ成仏していない霊がそこそこいるようで……
お地蔵さんが上昇していく姿を見た霊が、あわててお玉ヶ池に来ました。
その霊たちは、お地蔵さんの姿を見ただけで、連れて行ってもらえたらラクになれる! とわかったそうです。
急いで来たものの、お地蔵さんは行ってしまい、霊たちは間に合いませんでした。
それで、その場にまだいた私に乗っかった、というわけです。
そうか、そのようなパターンがあるのか……と思っていたら、天海さんが、
「ここで落としてもよいが、不動明王に力強く祓ってもらったほうがいいだろう」と言いました。
それから慈恵堂へ行き、元三大師さんに孫娘を助けてもらったお礼を言って、お不動さんの前に座りました。
祈祷が始まると、前回のようにお不動さんが出てきました。
お不動さんにも直接、孫娘が元気になったお礼を言いました。
そのあとで、お玉ヶ池でくっつけてきた霊を祓ってください、とお願いしました。
「お前は! どこにでも行ってはいかん!」
と、お不動さんにいきなり注意をされました。
「え! えっと、お玉ちゃんと約束してしまったんです。だから、行かなければいけなくて……」
「霊と約束なぞしてはいかん!」
「ひぇぇ~! はい! すみません!」
お玉ヶ池のことを、私はダークな心霊スポットくらいにしか思っていなかったのですが、
実際は、ものすごーーーーーーーーーーーく波動の低いところであり、強烈に低いため、次元が違う土地になっている、とのことです。
真っ黒な怨念を持った霊や、殺されて無念に思っている霊、殺人を犯し「魔」に染まった霊などもいたらしいです。
「恐ろしく低い波動であることは私にもわかりました。私は幽霊を見ませんが、30体くらいいる感じでした」
そう言うと、お不動さんが、
「は?」
と、眉間にシワを寄せて、ギロリとこちらを見ます。
ただでさえ怖い顔が、さらに怖くなっています。
「100体以上いたが?」
「えっ!」
「167体いた」
「ひ~え~~~!」
ここで、お不動さんがよくない霊について説明をしてくれました。
ダークな怨念、呪詛するような怨念を持った霊や、「魔」に染まった霊などが30体以上集まると、黒い塊(集団)になるそうです。
黒くてどろどろした、ヘドロのような塊です。
塊になることによって、力が大きくなります。
塊として集まることで、磁力も発生します。
その磁力は、お玉ちゃんを頼ろうとしてやってきた幽霊を引きつけます。
引きつけられて、塊に入ってしまったら出ることはできません。
塊に入れられた霊は出ようとして、もがくわけですが、もがくと塊の波動はますます低くなります。
塊の中にいる他の霊が、もがく姿を見てあざけり、笑い、喜ぶからです。
抵抗していた霊はやがて塊に染まっていき、馴染んでしまいます。
そこに新たに霊が引きつけられて入ってきて……というふうに、どんどん悪化、巨大化していくわけです。
お不動さんの説明を聞いて、冷や汗が流れました。
霊はやっぱり怖いです。
「恐山の地蔵菩薩が来たからよかったが、来なかったらどうなっていたと思うのか!」
たしかにそうです。
何か事情があって、来られなかった可能性もないとは言えません。
そう思うと、本当にゾッとしました。
お地蔵さんが来てくれたから、池の霊がいなくなりました。
167体を全部連れて行ってくれたおかげで、私には、付近にいた軽い霊が17体乗るだけで済んだのです。
「来なかったらどうなっていたと思うのか!」の質問に、
「全部、私に乗っていたかもしれません~」と半泣きで答えました。
お不動さんは、いくらお玉ちゃんをかわいそうだと思っても、人間にはできないことがある、できることには限界がある、と言います。
「助けたくても助けられないこともある。お前が病気になったり、回復できぬくらいに痛めつけられることもある。場合によっては死ぬこともある」
そうだ、邪悪な霊ってたしかにそこまでする……とあらためて思いました。
「地蔵菩薩に会ったら礼を言っておけ。地蔵菩薩は、霊を救いに来たのではない。お前のために来たのだ。お前を助けるために」
「はい。いろいろと教えて下さって、ありがとうございました」
最後は感謝の涙、涙、でした。
私は、幼い頃から祖父母を見てきて、霊の怖さを知っています。
しかし、今回お不動さんに注意をされて、まだまだ甘かったのだと気づきました。
お不動さんに気づきをうながされたことを、心からありがたいと思いました。
このように、世の中にはブラックホール化したような、超絶に低い心霊スポットがあります。
ですから、皆様も、軽い気持ちで、または、肝試しなどの遊び心で、心霊スポットには行かないほうがいいです。
近づくことも、できれば避けたほうがいいです。
自分を守るためにとても大事なことですから、どうぞお気をつけ下さい。