※前回の続きです。

 

面倒見がいい神様と言えば、お稲荷さんです。

 

『お稲荷さんのすごいひみつ』という本に、私が会った、いろいろなお稲荷さんのエピソードを書いています。

 

たとえば、「白笹稲荷神社(神奈川県)」です。

 

昔、神社の近所に、そこそこ格式の高い武家があったそうです。

 

その家に天真爛漫なお嬢さんがいました。

 

お嬢さんは、幼い頃から白笹稲荷神社に来ては、歌を歌っていました。

 

美しい歌声であり、大変上手だったそうです。

 

奉納されるその歌に、神様も眷属も、全員が癒やされていました。

 

あの娘は今日も来るだろうか? と、みんながお嬢さんが来るのを心待ちにしていました。

 

眷属たちはお嬢さんを「歌姫」と呼んでいたそうです。

 

お嬢さんは可愛らしい娘から成長して、年頃の女性になりました。

 

家柄がよかったお嬢さんは、家同士が決めた結婚でこの地を離れました。

 

神様も眷属も、大喜びで祝福したそうです。

 

この地を離れる時に、眷属が1体、お嬢さんについていって、生涯しっかりと守っています。

 

お嬢さんは夫となった人と仲良く暮らし、子どもにも恵まれ、幸せな一生を送りました。

 

歌声でたくさん癒やしてもらったからと、1体の眷属が、お嬢さんが亡くなるまでしっかりと守ったのです。

 

このように「守る」となったら、一生守りぬくのが、お稲荷さんの特徴です。

 

違う方面で、面倒見がいいと言えば、「小網神社(東京都)」です。

 

この神社には、お稲荷さんがご祭神であることが示されていません。

 

けれど、大きなお稲荷さんが社殿の空間に座っているのです。

 

そのお姿を見た私は、「え? いいの? びっくり 見えているご祭神はお稲荷さんだけど、いいの?」と思いました。

 

鳥居は赤ではありませんし、神前に置かれているのも狛狐ではなく、狛犬でした。

 

鳥居の前に掲げられていた提灯にも「稲荷」という文字はなく「武蔵國古社 小網神社」でした。

 

短い参道のすぐ横にあった絵馬掛けを見たら、龍のイラストが描かれた絵馬と、七福神が描かれた絵馬の2種類しかありませんでした。

 

しかし、鎮座しているのはお稲荷さんです。

 

大きくてどっしりとした、何事にも動じないという武将タイプです。

 

神社にあった案内板に【小網山万福寺を別当寺として、室町時代中期、当地に祀られた稲荷社に起源するという。稲荷社は、明治時代初めの神仏分離令により、小網神社と称し、(以下省略)】

 

と、お稲荷さんであることが書かれていました。

 

この件についてお稲荷さんにお聞きすると、「福禄寿として拝まれてもいいし、弁財天として信仰されてもいい」と言います。(境内に福禄寿の像と銭洗い弁財天の像があるのです)

 

そのこだわりのなさに驚きました。

 

お稲荷さんとして拝むのも、福禄寿さんや弁財天さんとして拝むのも、〝信仰〟に変わりはないから、だそうです。

 

信仰の対象が〝お稲荷さんという自分〟でなくても、信仰心を持った人間が幸せになる手伝いをする、と宣言していました。

 

「それが神の務めである」

 

徳の高いお稲荷さんであり、信仰されているのは自分じゃなくても願掛けを叶える、という面倒見のいいお稲荷さんでもあります。

 

「箭弓稲荷神社(埼玉県)」のお稲荷さんは、脳の疾患で足が動かなくなった高齢の男性を救っていました。

 

その男性が、私が境内にいる時に参拝に来たのです。

 

倒れた直後は、そのまま寝たきりになるだろうという状態だったそうです。

 

リハビリを頑張っても、車椅子の生活ができるくらいまでしか回復は望めなかったらしいのですが、この男性はとても信仰心のあつい人でした。

 

倒れるまでは、お稲荷さんによく参拝していました。

 

男性から「杖をついてでも、なんとか自分の足で歩けるようになりたい」という願掛けをされたお稲荷さんは、願いを叶えてあげました。

 

お稲荷さんが歩けるようにしたから、男性は歩いて来られたのです。

 

足を引きずっており、杖をついても、ゆっくりゆっくりしか歩けないようでした。

 

でも、ちゃんとひとりで来ていました。

 

自宅から神社までどれくらいの距離なのかわかりませんが、時間がかかるだろうことは明白です。

 

それでも体調のいい日は、お礼を言いに、参拝に来るそうです。

 

お稲荷さんだからといって、五穀豊穣や商売繁盛、金運などにこだわるのではなく、「なんでも願いなさい」と、このお稲荷さんは言っていました。

 

「稲荷は人間のためにいる神だと思っていい。だから金運だけじゃなく、自分にとって大事なこと、本当に叶えてほしいことを願いなさい」

 

その言葉を言っているお稲荷さんは、後光が差しているように見えました。

 

最後は、少し前に行ったお稲荷さんの話です。

 

運気アップの波動を入れてくれると言うので、お守りを買いました。

 

その時に、「息子の分も買えよ」と言われたのです。

 

「え? 息子の分?」

 

「お前には息子がいるだろう? 商売繁盛の波動を入れてやる」

 

ええーっ! びっくり でした。

 

なんと面倒見のよい神様! と感動しました。(この神様のことはいつかどこかに書く予定です)

 

お稲荷さんの信仰の仕方については、やや難しい部分もありますが(『お稲荷さんのすごいひみつ』に詳しく書いているので、そちらを参考にしてもらえればと思います)、

 

守るとなったら、一生守ってくれるありがたい神様です。

 

※続きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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