イタリアでのお話です。
この時のことを思い出すと、今でも心臓がバクバクします。
本当に危機一髪だったからです。
実は……
ローマでスリに遭いました。
結果を先に言いますと、何も取られておりません。
取られる寸前だったのです。
もちろん、同行していた神様のおかげです。
詳しい状況を言いますと、現地旅行会社にチケットを取りに行きました。
バチカン美術館や、フィレンツェのウフィツィ美術館、ピサの斜塔の内部見学は、事前に予約をしておかないと長時間並ばなければいけない、ということは知っていました。
なので、日本から予約をしました。
ローマには「フォロ・ロマーノ」という、古代ローマの遺跡があるのですが、ここは広いし、混むことはないだろうと思い、予約はしませんでした。
けれど、夏休みだったせいか、ものすごい人が並んでいたのです。
それも日がサンサンと当たるところに並ばなければいけなかったので、その日の見学はあきらめました。
で、ネットで予約をしたのです。
翌日、旅行会社に行ってチケットを受け取ると、親切なお姉さんが、そこから一番近い「フォロ・ロマーノ」の入口を教えてくれました。(入口がいくつかあります)
教えられたとおりにてくてく歩いて行くと、やや細くて、人がほぼいない、という道に入りました。
その道は坂道で、下へと向かっている時でした。
「後ろ」
という声がかすかに聞こえたのです。
その瞬間、背負っていたリュックがわずかに動いたように感じました。
「ん?」
と、振り返ってみたら!
驚くことに!
真後ろ、それもくっつく感じの近さの至近距離に!
30代後半くらいの男(スリなので男の人と丁寧に言いたくないため、男、と表現しています)がいました。
その男が、私のリュックのジッパーを全開にしたところだったのです!
男のすぐ後ろには、背の高いもうひとりの男と女がピッタリと寄り添っていました。
盗みをする男が、後方や、斜め後ろから見えないようにガードしていたのです。
「!」
もう本当に、頭の中が真っ白になるほど驚きました。
私が振り向いた瞬間、男はイタリア語で、ゴマかすようなことを何か言いました。
たぶん、ですが、「チャックが開いてたよ。大丈夫? 何も取られていない? 今、開いていることを教えてあげようと思ってたんだ」みたいなことを言ったのではないかと思います。
あわててリュックを体の前に持ち替え、中を確認をしたら、幸いなことに、まだ何も取られていませんでした。
何も取られていないので、男をドロボーとは言えず……思いっきり睨んでいると、男はヘラヘラと笑顔で、そばにあった水飲み場で水を飲んでいました。
その後、「じゃ」みたいな感じで手を上げて、しら~っと去っていきました。
警察に連絡するかどうか悩みましたが、被害はないし、リュックのジッパーを開けたのがその人だと証明もできないため、通報はあきらめました。
背負っていたリュックはこれです。
入れるところが3ヶ所あります。
赤い矢印のところにはカメラを入れていました。
ここを開けられていたら、サクッとカメラを盗まれていたと思います。
となると、何十万円もかけて取材に行ったヨーロッパの記録が、すべてごっそり盗まれていたわけで……
私にとってはものすごい損害です。
サグラダファミリアやピサの斜塔にもう一度行くのは無理なので、立ち直れなかったと思います。
緑の矢印のところには、お財布を入れていました。
長財布ですから、ジッパーを全開にする前に丸見えで、ここを開けられていたら、サクッと盗まれていたと思います。
お財布にはクレジットカード、現金、免許証、保険証が入っており、もしも盗まれていたら……
と思うと、「ひいぃぃぃぃー!」と声が出るほどの恐怖を覚えます。
盗まれたら、すぐに全部のクレジットカード会社に連絡をしなければいけません。
カードを止めると、現地では現金しか使えないわけですが、その現金も財布と一緒に盗まれているわけです。
スマホはポケットに入れて無事だったのですが、スマホのアップルウォレットに登録しているクレジットカードもすべて停止、ですから、どうしようもできません。
お財布を盗まれていたら、その後どうなっていたのだろう、と思います。
で、実際に男が開いたのは、ここです。
ここには、旅行会社でもらったばかりの、フォロ・ロマーノの入場チケットしか入れていませんでした。
万が一、これを盗まれていても、そんなにたいした被害ではありません。
でも、他のところを開けられていたら、一発アウトだったのです。
男たちが去ったあと、「神様、ありがとうございます!」と、大きな声でお礼を言いました。
そして、おかしな話なのですが、スリの男にも、セーフなところを開けてくれてありがとう、と思いました。
以前にお伝えしたことがありますが、私はバッキンガム宮殿で、はるか昔にスリに遭いました。
その経験から、人混みにいる時や、駅などで前方(電車の情報掲示板)を必死で見ているような、意識が前に集中している時は、リュックは背中ではなく、前に掛けています。
これでスリ対策はバッチリだと思っていました。
けれど、今回の経験で、〝歩いている時もスリに狙われる〟と学習しました。
以前の私と同じ認識だったという方は、歩いている時も危険、ということは知っておいたほうがいいと思います。
お財布を盗まれていたら、本格的にヤバかった、どうなっていたのだろう、とあれこれ想像すると……
窮地を救ってくれた神様には感謝の言葉もありません。
これから行かれる方もいらっしゃると思うので、マップも貼っておきます。
このマップで見ると、
スリに遭ったのは、赤いラインでなぞっている道です。
このような突発的な、予想もしていなかった出来事が起こるので、海外に行く時は神様にお願いをして、同行してもらうことをおすすめします。