※前回の続きです。
奄美大島には女性姿の、島の神様がいます。
その神様と会話をしている時に、西郷さんの話題になりました。
江戸からも、京の都からも、薩摩からも、むちゃくちゃ遠いこの場所に流された西郷さんが、江戸城の無血開城を勝海舟と話し合ったという、そこまで登りつめたのがすごいです、と思ったままを言いました。
すると、島の神様が、
「この島に妻がいたことを知っているか?」と聞きます。
「はい」
この案内板にあるように、妻だった「愛加那」さんが使用した井戸があるのを見つけた時、ここには妻がいたのだな、とわかりました。
ここからは、神様に教えてもらったお話です。
西郷さんは島に流された時、第一線にはもう戻れないだろう、とあきらめました。
抜擢してくれた斉彬公は亡くなり、安政の大獄で幕府に追及される身となったのです。
実は、西郷さんは奄美大島に流される直前に入水自殺をはかっています。
精神的に不安定であり、苦しんでいる状態でした。
けれど、奄美大島で暮らすうちに、徐々に島の生活に馴染んでいき、愛加那さんと結婚します。
西郷さんは、このまま島で楽しく暮らす人生もいいな、と思いましたが、
その反面、藩のために、日本のために、人生を捧げたいという思いもありました。
愛加那さんは西郷さんのそばにいて、西郷さんを知れば知るほど……
この人は島で一生を終えていい人ではない、と気づきます。
西郷さんが偉大な人物であることを見抜いたのです。
薩摩や日本にとって、必要な人だと確信しました。
愛加那さんは、たいへん信心深い人でした。
それで、神様にせっせと祈りに行きます。
どうか、西郷さんに大きな仕事をさせてあげて下さい、と。
島でめとった妻を薩摩に連れて帰ることはできません。
そういう藩の決まりがあったのです。
ですから、西郷さんが島を離れたら……愛加那さんはそばにいることができません。
永遠の別れです。
西郷さんは最愛の男性ですから、
一生、添い遂げたい!
離れたくない!
と、強く思います。
本心では、ずっと自分のそばにいてほしい! この島にいてほしい! と思っています。
けれど、大きなことを成すであろう人物を、日本中が必要としている人物を、自分ごときの人間がしばりつけていいわけがない、と考えました。
そして、西郷さん本人が、口では「ここで一生を終えるのも幸せだ」と言っているけれど、心の底では薩摩藩や国に尽くしたい気持ちがあることも知っています。
愛加那さんは島の神様に祈ります。
祈る
祈る
祈る
という感じで、日々、欠かさずお願いをしました。
それで、その願掛けを島の神様が叶えたのです。
西郷さんは薩摩に戻ることができました。
その後の沖永良部島への島流しは、新しい藩主に対する西郷さんの態度がよくなかったからですが、この時(沖永良部島に流される直前)に、愛加那さんは徳之島まで、子どもを連れて会いに行っています。
そこで、沖永良部島では牢屋に入れられることを知るわけです。
そこから愛加那さんはもっと強く祈っています。
祈る
祈る
祈る
祈る
祈る
という感じです。
それで、奄美大島の島の神様がその願掛けを聞き、あちこち調整をしています。
このように、純粋に人のために、その人の幸せだけを願って、祈る(神様にお願いする)ことは、非常に尊いです。
自分のことは、そっちのけだからです。
愛加那さんの場合は、西郷さんが復帰したら、二度と会えなくなります。
自分にとって、これ以上ないという地獄のような悲しみが待っています。
それでも、祈ったのです。
愛する西郷さんのために。
心を打たれますね。
神様をも動かした、というのが納得できます。
「愛加那さんの愛の深さがよくわかりました」
そう言うと、神様は、
「愛とはそういうものだ」と、ニコニコしていました。
感動しました。
私にとって素晴らしい学びだったので、皆様にも知っていただきたいと思い、記事にしてみました。