この時のことを思い出すと、今でも心臓がバクバクします。(笑)
パックリ開いたリュックを見て、一瞬で血の気が引いて、手がブルブルと震えました。
個人旅行でしたから、添乗員さんなどの頼れる人もいません。
しかも、小学生の息子が一緒だったのです。
お金を盗まれた、まあ、なんとかなるやろ、あっはっはー、ではすみません。
どうしようどうしようどうしよう、と混乱しつつ、あわててリュックの中をさぐったら……
電子辞書の下にちゃんと私のお財布があったのです!
え? スリはお財布を取らなかったの? と思われた方、いいえ、取られました。
息子のお財布を、です。
詳しい話をしますと……
当時の電子辞書は、初期の頃ですから、むちゃくちゃ分厚いものでした。
私が持っていたのはソニーの最新型でしたが、小さなディスクを横から入れるタイプで、どっしりと分厚く、サイズも大きかったのです。
重さも半端なかったので、リュックに入れて持ち歩くと、肩が凝りました。
なので、電子辞書は常時ホテルに置いておくつもりでした。
それなのに、この日、「持って行け」と、どこかから聞こえたのです。
この頃は、神様に同行をお願いしておらず、丸腰(意味は違いますが、そういう気分です)で、海外に行っていました。
当時はわかる能力もまだまだ低く、「なんで電子辞書を持って行く必要があるん?」「というか、今の声、誰?」と思いましたが……
持って行ったほうがいいのかもしれない、と何もわからないまま、とりあえずリュックに入れました。
リュックには、まずお財布を入れ、その上にハンカチやティッシュなどを入れ、その上に電子辞書を載せました。
どでかい電子辞書ですから、お財布やハンカチなどの上に、電子辞書がフタのようになって、すっぽりと収まりました。
そこでジッパーを閉めようとしたら、息子が「僕もお財布を持って行く~」と言うのです。
そんなことを言うのは初めてだったので、「珍しいことを言うな~」と思いつつ、電子辞書の上に息子のお財布を載せました。
息子のお財布には、日本円にして、3千円くらい入っていました。
それが盗まれました。
私のお財布が無事だとわかった時は、「奇跡だ!」と思いました。
考えられるパターンは2つあります。
1つめは、息子のお財布を抜き取ったことで、スリは満足し、私たちから離れた。
つまり、電子辞書の下にあった私のお財布には気づかなかった。
2つめは、「この財布は子どものだ」と、その下をさぐろうとしたが、電子辞書は重たく、スッポリと収まっているため、少しでも動かすと気づかれるおそれがある。
戦利品は小粒だけど仕方がない、とあきらめた。
どちらかなのでしょう。
もしも、息子のお財布を入れていなかったら……
もしも、電子辞書を持って行かなかったら……
私のお財布は盗まれていたと思います。
本当に、すがすがしいほど、リュックの口がパックリ! 開いていたからです。
電子辞書を「持って行け」と言ってくれたこと、
息子に「僕もお財布を持って行く~」と言わせてくれたこと、
これは〝イギリスの神様〟が助けて下さったのだ、ということは、バッキンガム宮殿のその場でわかりました。
しかし、肝心の神様のことがサッパリわかりません。
当時はこの神様がわかるほど、神仏霊能力が発達していなかったのです。(スサノオさんクラスですから、修行を積まなければ、わかるのが難しい神様です)
お財布を握りしめて、「イギリスの神様! ありがとうございます!」とバッキンガム宮殿に向かって、お礼を言いました。
イギリスにも神様がいるんだな~、キリストかな? と、当時の私には、状況が理解できるほどの能力はありませんでした。
余談ですが、私と息子がいた10日間、イギリスはずっと快晴でした。
この時期にこんな天候はありえない、初めてかもしれないと、ヒースロー空港にいたツアーの添乗員さんが、「皆さん、ラッキーでしたね」と、語っていたのを覚えています。
そのツアーは5日間という話でしたが、それどころか、私たちがいた10日間、見事に晴れっぱなしだったのです。(ちなみに今回は、雨が2日、どんよりとした曇りが2日で、晴れていたのはたった1日でした。これが普通だと思います)
それくらい、よくしていただいた初のイギリス訪問でした。
※続きます。