少し前に、重度の知的障害がある方を支援している、という読者さんからメッセージをいただきました。
その読者さんが、何年たっても忘れられないという、貴重な体験をしたお話です。
知的障害のあるAさんは、単語で話すことはできますが、言いたいことをうまく表現することは難しく、職員さんの言葉も十分に理解ができません。
そのAさんのお母様がガンになり、闘病を続けていたある日、お父様から「あと数日しかもたないかもしれない」と電話がありました。
読者さんはAさんをつれて、急いで病院に面会に行きました。
けれど、Aさんはお母様の姿を見て、病室を飛び出してしまいました。
その後、お母様は亡くなられ、お通夜も葬儀も、読者さんはAさんに付き添いました。
お父様の希望で、Aさんは葬儀までは参列させても、火葬場には連れて行かない、という予定でした。
しかし驚くことに、葬儀に参列したAさんは、落ち着いていたのです。
その姿を見たお父様は「娘を火葬場まで連れて行って、お母さんはいないんだよとわかってもらいたい」と言いました。
読者さんは火葬場にも付き添いました。
火葬後、お骨(こつ)となったお母様を……つまり、そこにある骨をAさんはじーっと見ていました。
そして、
「これはおかあちゃんね」
と言ったそうです。
いろんなことを理解することが難しい、重度の知的障害があるAさんです。
「重度」ですから、ほとんど何も理解ができないのでは? と思われます。
それなのに、お骨を見て、それがお母様であると理解をし、さらに正しい言葉でそれを語ったのです。
この発言に驚いた読者さんは、「魂はちゃんと理解しているのだな」と思ったそうです。
重度の知的障害を持った方や、重度の認知症の方は、脳に損傷があるため、理解できないことが多いです。
けれど、魂は、すべてのことがわかっています。
魂は、お世話をしてくれる人、介護をしてくれる人に、いつも心から感謝をしています。
高度な修行に挑戦しようと、みずから選んだ人生ですが、この修行は私たちが想像するよりも、はるかに過酷なものです。
本人の魂は、常に、「ありがとう」と「ごめんなさい」を繰り返しています。
たとえば、うまく食事ができなかったら、食事のお世話をしてくれる人に、食事の間じゅう、ずっと「ありがとう」を言っています。
その数は、何十回、何百回となります。
それほどお世話をしてくれる人に、深く、心から感謝をしているのです。
もしかしたら、お世話をする人に向かって、物を投げつけたり、大声で怒鳴ったりすることがあるかもしれません。
でも、その時のその方の魂は、合掌をして「ごめんなさい。ごめんなさい」と謝っているのです。
「こんなひどいことをしてごめんなさい」「許してください」「本当にごめんなさい」と、謝罪しています。
申し訳ない気持ちが強すぎて、涙も流しています。
けれど、肉体は脳の機能のせいで悪いとわからず、謝ったりもしませんから、真実は、周囲に理解されていないように思います。
さきほどのお話ですが、Aさんのお母様は亡くなられて魂になり、Aさんに寄り添っていたと思われます。
葬儀でAさんが落ち着いていたのも、そばにお母様がいたからでしょう。
火葬後も、お母様がAさんの魂に、いろいろと語りかけたのだと思います。
Aさんの魂はお母様との別れに、号泣していたのではないでしょうか。
その時、お母様はAさんを抱きしめていたはずです。
お母様の腕の中で、お母様からのあたたかい愛情を受け取って、Aさんの魂もお母様への愛情でいっぱいになり……
それで、通常だったらその状況を理解できなくても、魂からの強烈な信号を受けて、スッと理解ができたように思います。
人間の〝魂の力〟はすごいですね。
改めて、いろんなことを考えさせられた、大変ありがたいお話でした。
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