2022年のカレンダーのテーマは縁起物でした。
いろいろな縁起物の写真を載せていますが、この中に、実物を見ていないものはありません。
すべて、私が現地に行って、「おぉ~、縁起物だ~♪」と確認して、買ったものです。
カレンダーに載せている神社仏閣には、実際に行っています。
というわけで、今回お伝えするのは「蕪嶋神社」です。
この神社は青森県八戸市の海岸線にある「蕪島」という島にあります。(現在は埋め立てられて陸続きになっていますが、昔は島だったそうです)
東北であることからおわかりのように、ここの神様は東日本大震災の津波を押さえています。
海の神様なので、沖へ行って、沖で迫り来る津波を、他の海の神様と一緒に懸命に押さえました。
津波は地球のパワー、エネルギーが波に姿を変えて、押し寄せてくるようなものです。
目で見えるのは波だけど、見えない世界では巨大化したエネルギーなのです。
「津波の一番激しかった地域で私が見た神様方は、人間を救うことに全力を尽くして、消えてしまう寸前でした。
水で言えば、最後のひとしずくという感じでした。
神様はそこまでして人間を助けるのですね」
私がそう言うと、蕪嶋の神様は静かにうなずいていました。
蕪嶋神社のあたりは津波がそこまで大きくなかったため、神様は7割くらいの力を失う程度ですんだそうです。
3割ほどの力しか残っていなかった神様に、災難が訪れたのは、その4年後です。
社殿が火事になったのです。
全焼だったそうです。
そこを詳しくお聞きすると、火を広がらないようにさせるとか、火の勢いを衰えさせるとか、神様はそこに力を使わなかったそうです。
というのは、3割しか力が残っていなかったからです。
神様は、3割しか残っていないこの大事な力は、人々を救うために使うべきだ、ということで、社殿を守るためには使わなかったのです。
つまり、神様にとっては、自分の社殿よりも、
神様を頼って「助けて下さい」と頭を下げに来る人、神様に手を合わせて一生懸命に願掛けをする人のほうが大切なのです。
結果、社殿は全焼しました。
「全焼しても……大丈夫だったのですか?」
神様は、社殿がなくなったから、社殿が朽ちたから、壊れたからといって、そのせいで力が減ることはありません。
困ることもありません。
社殿という建物と神様の力は関係がないのです。
燃えて社殿がなくなっても、社殿なしで島にいればいい、と、思ったそうです。
もしかしたら、神棚に載せるくらいの小さなお社を島に置いてくれる人がいるかもしれない、どんなに小さなものでも置いてくれればそこに入ろうと思った、と言っていました。
たとえ、誰もお社を置かなくても、島にそのままいればいいだけですから、社殿を守ることに大事な力を使いませんでした。
誰かが神棚くらいのお社を置いてくれるだけでいいと、神様は謙虚に思っていましたが、地域の人々は神様のために美しい社殿を建て直しました。
こんなに大きな社殿を建ててもらえて嬉しいと、神様は素直にニコニコと喜んでいました。
新しい社殿は地域の人々が神様を大事に思う、神様を慕っている信仰心の表れです。
こんなに大きな社殿が建つとは思わなかったと、人々の信仰心に、神様は心から感謝をしていました。
神様は、残った力を惜しんだのではありません。
3割しか残っていない大事な力だからこそ、社殿を守ることには使わず、人々を救うために、人々を助けるために、使おうと思われたのです。