訪問介護でいろんなお年寄りのお宅に行きます。

独居の方も少なくなく、一人暮らしをされている方は自由気ままに暮らされていて、なかなか個性的です。

Bさん (登場人物は順番にアルファベットをふっています。先日の記事でAさんを使用したので今日はBさんからにしています) は、女性で90才近い年齢です。

Bさんはお話をすることが大好きです。

いつも掃除などの仕事を、なるべく早く終わらせておしゃべり時間を長く持てるようにしているのですが、時々、時間をオーバーしてしまいます。

というのは、サービス終了時間間際になって、Bさんがものすごーく楽しそうに長い話を始めるからです。

事務所からは、サービス時間は厳守すべし! と厳しく指導されており、時間オーバーするときつく注意をされます。

先日も帰る直前に、Bさんが自分の人生の話を始め、アルバムまで持ってきて、本当に嬉しそうにウキウキ話をされていました。

そこで 「時間ですから」 と、話を切って、悲しい思いをさせるのはどうかと思い、一段落つくまで聞きました。

すると 「あら? アナタ、時間はいいの?」 とBさんから言ってくれました。

「10分ほどオーバーしてます~」 と言うと 「叱られるんじゃない?」 と心配してくれました。

「ちょっと叱られますけど、楽しいお話が聞けたので平気です」

そう言うと、Bさんは 「んー?」 と何事か考えて・・・「いい考えがあるわ!」 と言いました。

「時間が遅れたのは、Bさんちの近くで警察が張っていた、って言えばいいのよ!」

(^▽^;) ・・・。

たしかにBさんの家の裏道はよくネズミ取りをしている場所です。

それを10分遅れて帰社する理由にするなら、切符を切られないといけないわけですが、

「ね? そう言いなさい? それなら10分遅れても大丈夫でしょ」 と満面笑顔で言うので、Bさんには 「そうですね~」 と言っておきました。

結局、15分近く遅れて帰社すると、案の定、 「また断りきれずに時間オーバーしたなー」 と、上司は苦笑モードになっていました。

「Bさんの話を切れんかったん?」 と言われたので (一応、Bさんの話好きはみんな知っています)

「すみません。遅れた理由は・・・Bさんちの近くで警察が張っていたからです。・・・と、Bさんがそう言えばいいと理由を考えてくれました」 と答えました。

その瞬間に上司も同僚も 「それなら切符切られてないとおかしいやん、理由にならへんやん~」 と爆笑していました。

話は、Bさん面白いなーとか、必死で考えたんちゃうかーとか、そっちへ流れ、私は厳しく注意されることなく、その件は終わりました。

意外と、理由としては最高だったんだなー、と思いました。

Cさんも可愛い80代後半の女性です。(Cさんとはセツコさんのことです)

この方は本当にユニークで、笑える話がたくさんあります。

先日、伺うと 「私、大変なことしてもうたんや」 と言うので詳細を聞きました。

Cさんは娘さんたちにお小遣いをあげよう、と思い、徒歩で10分の郵便局まで、老人用手押し車を押して行きました。

お金をおろし、家に帰ると鍵がありません。

バッグをひっくり返しても鍵が見つからないのです。

えらいこっちゃ! とCさんは不自由な足でまた郵便局まで戻り、職員さんにも探してもらいました。

が、見つかりません。

仕方なく家の裏に住んでいる大家さんに事情を説明し、開けてもらった、ということでした。

スペアキーで開けたのかと思ったら、大家さん (男性) はドライバーみたいなもので、ちょこちょこっとして開けた、と言います。

Cさんちの玄関の鍵は、古いタイプの、ノブの真ん中が鍵穴になっているやつです。

「こういう時は男の人がいいな、男の人がいてドライバーがあったら開くもんな」

「男の人がいれば、たしかに便利な時はありますね~」

「私な、大家さんに ”Cさん、こんなんしたらアカンやん!” って叱られた」 とCさんはしょんぼりしています。

それを聞いた時、ちょっと腹が立ちました。

高齢者なのだから、うっかり鍵を落とすこともあるだろう、わざとしたわけではないし、本人も不自由な足で炎天下の中、郵便局まで探しに行っているのに、なんで文句を言うのだ! とムカつきました。

Cさんは続けます。

「こんなんしたらアカンやん! って言われても、開くかもしれへんやんなぁ?」

「へ? 何の話ですか?」

「自転車の鍵や。自転車の鍵で、もしかしたら玄関が開くかもしれへんやろ? だから差してみたんや。そしたら抜けんようになってもて」

はぁ・・・なるほど・・・しかし、なんでまた、そんなことを・・・? 

Cさんは二度目に行った郵便局から家に戻ってきて、なんとかしなければ、と考えたそうです。

以前にも鍵を失くしたことがあり、その時も大家さんにドライバーで開けてもらったことを思い出したCさんは、

「おお、そうだ、もしかしたら自転車の鍵で開くかもしれない」と考え、思いっきり鍵穴に差してガチャガチャしたそうです。

その結果、自転車の鍵が玄関のノブから抜けなくなり、大家さんに注意された、と・・・。

(^▽^;) そりゃ叱られるわなぁ~。

「ドライバーで開くんやから、自転車の鍵でも開くかもしれへんやろ?」とCさんは言います。

「ん~~~、まあ、一理ありますかね~」

あるのか、その一理は? と思いつつ、フォローしておきました。

Cさんのサービスの後は、Dさんという80代男性のお宅に行きます。

Cさんは時々、このDさんのことを聞きたがります。

もちろん個人が特定されるような話はせず、Dさんはおじいさんで90才近くて独居で、扇風機をかけていないので家は暑い、時々代わりに買い物に行ったり、ご飯を作ったりするのだ、とか、そういう話をしています。

年齢が近いからか、妙な親近感を持っていて、 「戦争中はおじいさんも辛かったやろな」 とかCさんは言っています。

先日も、私が帰ろうとしたら 「次はおじいさんち?」 と聞いてきました。 (次はおばあさんち、というパターンもあります)

「そうです~。今日はおじいさんちはお買い物があるんですよ」

「おじいさん、識子さんが来るのを、待ってるんやろな」

「そうかもしれませんね」

「おじいさん、ドアを開けたり閉めたりして、まだかな? まだかな? って待ってるんやろな」

そんな可愛いおじいさん、いません~、とツッコミを入れそうになりましたが、大笑いしました。

そういう想像をするCさんが可愛いです。

元夫に言わせると、そのCさんがそうやって待ってはるんちゃうか、とのことで、そういえば一度、家の少し先の道路で待ってくれていたことを思い出しました。

「迎えに来たんや~」 と笑顔で言っていましたが、本当に楽しみにしてくれていたのだなと思いました。

さて、そのおじいさん、Dさんですが、この方も面白いです。

いつだったか、私が買い物に出て、Dさん宅に帰宅すると、居室にDさんがいません。

「Dさーん! どこですかー!」 と大声を出しても返事がなく、どこかで倒れているのでは! と真っ青になりました。

「Dさーん! Dさーん!」 と、まずトイレから探していると 「おぅ!」 と返事がありました。

見ると、台所からちょっぴり顔を出して、こちらを見ています。

その顔を見た瞬間に、 「その顔は! 息子が小学生の時に何かをやらかした時の顔!」 と思いました。

急いで台所に行くと・・・あたりは甘い香りでいっぱいです。

床は何やら濡れていました。

「どうされたんですか~?」

「いやな、アイスクリームを食べよう思てな」 (アイスクリームは食欲がないというDさんの為に、先輩が数日前にカップタイプの6個入りパックを買っていました)

「ハイ、それで?」

「レンジでチンしたんや」

( ̄ー ̄;  ・・・・。 

なんでまた、そのようなことを・・・? と思いましたが続きを聞きました、

「そんでな、持とうとしたら熱うてなー、アツツツっ! って、落としてもうたんや」

床はアイスクリームの海になり、Dさんはとりあえず、ふきんで拭いた、とのことでした。

Dさんには居室に行ってもらって、アイスクリームは成分の牛乳が腐ると大変なので、徹底的に掃除をしました。

「どうしてレンジでチンしたんですか?」 と後で改めて聞くと 「だって冷凍庫に入ってるやろ? カチカチに凍ってるやんか」 と言います。

Dさん宅はご飯を小分けにして冷凍庫に入れていて、食べる時はチンしてもらっています。

冷凍庫にある物を食べる時はレンジで温める、とインプットされているのでした。

「Dさん、もしかして・・・アイスクリームを食べたことがないんですか?」

そう聞くと、 「んー、食べたことがないこともないけどな」 とイマイチどっちかわからない返事をしていました。

掃除させてすまんかったな、ごめんな、ありがとう、と何回も言っていました。

後日、伺うとアイスクリームが大層お気に召したようで、 「アイスクリームちゅうのはうまいな。また買っといてくれるか?」 と言っていました。

訪問介護はなかなかハードな仕事ですが、こうしてお年寄りに笑わせてもらって癒され、毎日頑張っています。