※前回の続きです。
Aさん宅に初めて伺った日のことです。
先輩がサービスをして、私は見学しながら手順をメモしていました。
すると突然 ”キレイにしてほしい” ”ちゃんとしてほしい” という強烈な念が背後から飛んできました。
「え?」と振り返ると、そこには仏壇がありました。
Aさんの部屋です。
仏壇の内部は、数年分と思われる量のホコリがたまっており、真っ白になっていました。
造花が左側にひとつ置いてあったのですが、それもホコリで真っ白です。
それにより仏壇内部は、打ち捨てられた廃屋のような、ガラーンとした殺風景な空間になっていました。
驚きました。
仏壇の中も気が滞るようです。
掃除をしなくてホコリまみれでも、お線香やロウソクを灯すと、気の流れが出来てここまで滞ることはないと思いますが、Aさん宅は何もしていないみたいでした。
さすがにこれはちょっとひどい、と思いましたが、どうすることも出来ません。
実はヘルパーは、仏壇の掃除をすることが出来ません。
というか、してはいけないのです。
これでは先祖霊の守ってくれる力が弱まるだろうに・・・と思いました。
さらにその仏壇をよく見ると、何故か位牌が右側の隅っこに2つ、重ねて置かれていました。
宗教・宗派によって違いがあるのかもしれませんが、2つ位牌がある場合、普通は左右に1つずつ置きます。
ちゃんとしてほしい、という頼みはこのことか~、と思いました。
でも、どこかのお坊さんの指示でその位置に置いているのかもしれず、不用意に、位牌の位置が良くないですね、と言うわけにもいきません。
何もしてあげることが出来ないので、申し訳ないと思いつつも、そのまま帰りました。
2回目の訪問も先輩と一緒に行き、私がメモを取っていたら、父親が私に話しかけてきました。
「ワシなぁ、お母ちゃんが倒れてから死ぬまで、ずっと介護したんやで」
「そうだったんですね~、それは大変だったでしょう」
父親は、ひとしきり介護の大変さを話し、そして意外なことを口にしました。
「お母ちゃんな、ワシに会いに来てくれたんや」
父親の話によると、妻が亡くなって、3年後のある日、深夜にふと目が覚めたそうです。
するとベッドの脇に妻が立っていて、妻はそのまま仏壇の方(今のAさんの部屋)へ行き、仏壇の前ですう~っと消えた、ということでした。
「不思議やろー?」
「不思議ですね〜」
日付を聞くとそれはお盆前で、妻は仏壇を何とかしてほしくて、分かってもらいたくて出たのだろうと思いました。
「奥さんが会いに来てくれたのは、その一回だけですか?」
「そうや」
そういうと父親は、「これがお母ちゃんや」と写真を見せてくれました。
写真を見た瞬間に「息子(Aさん)をよろしくお願いします」と、
「仏壇をちゃんとしてほしい」という念がダイレクトに届き、写真の中の妻が私に向かって微笑みました。
ああ、そういうわけか・・・と納得がいきました。
私に上記の2点を伝えたいために、父親がこの話をするよう妻が仕向けていたのでした。
父親は上機嫌でひと通り、話をするとベッドへ行き、横になりました。
先輩を見ると、目を真ん丸にして驚いています。
気難しくて、普段はほとんど喋らない父親が、ペラペラと・・・しかも笑顔で話をしていたからです。
信じられない・・・という、狐につままれたような顔をして、サービスを続けていました。
Aさんにさりげなく聞くと、位牌は母親と祖母(母方)だそうで、そこに人間関係のもつれはなさそうでした。
ということは位牌が重なって置かれていても、一分一秒を争う問題ではないということです。
宗教のことだし、デリケートな問題なので、時間をかけて父親と親しくなって信頼をもらうことが出来てから、仏壇は何とか・・・どうにか助言してあげたいと考えています。
ただでさえ気が滞った家で良くない影響があるのに、頼みの綱の、ご先祖様の守る力が発揮出来なくなっていたのです。
家だけでなく、仏壇内部にも気が滞らないように、仏壇内部のお掃除をしたり、お線香やロウソクを灯すことはとても大事なのだ、とこの時に知りました。