先日、 「先入観」 という記事に登場したJさんですが、前にも書いたように、裕福なお金持ちの奥さんだった人です。

旦那さんはもう亡くなっていますが、不動産会社の社長をしていたそうです。

Jさんの持ち物はどれも高級品で、お洋服などはいいもの過ぎて (変な日本語ですがニュアンスは伝わると思います) 施設では洗濯が出来ません。

なので、週に1回、自宅で長年雇っているお手伝いさんがクリーニングを取りに来ています。

そんなJさんですが、先日、面白いことがありました。

夕食の誘導に行った時です。

Jさんをベッドから車椅子に移乗させて、フットレストを取り付け、後ろにまわり、タッグルブレーキをはずそうとした、その時でした。(タッグルブレーキとは、介助者用のサイドブレーキです)

「うわっ! くさっ!」 とJさんが叫びました。

「 え? 何が? ???」 と思った瞬間、鼻にツーンとくる、強烈にくさいオナラのニオイがしました。

「うっわ! くっさ!」 私も無意識に同じセリフを、しかも強調して叫んでいました。

「すまんな~」

「キョーレツですねぇ」 と答えた後、ケホケホと咳が出ました。

「今のごっつかったなぁ」

「咳が出たし、目にしみるくらいでした~」

「アンタもそない思た?」

「私の人生で一番くさいオナラでした」

「それを・・・人の鼻先で・・・ふふっ、すまんなぁ・・・ひひひ」

「私、ブレーキをはずそうとして、顔が至近距離でしたからねー。特別、濃いやつを嗅ぎました」

「悪かったなぁ、ふふふっ、くっさいオナラを鼻先で、ひゃひゃひゃ」

この出来事の何かがJさんのツボだったらしく、Jさんは笑いをこらえられないようで、ひとしきり1人で笑っていました。

「あ~、久しぶりに腹の底から笑ろたわ~」

「それは良かったですね~。くさい思いをしたかいがありました」

「ここにきて、腹の底から笑ろたことなんか一回もないで。ありがとう」

この時に、 ”へ~、こういうビロウな話を面白いと思うのか~、意外だな” と思いました。

Jさんは排便をした後に、必ず自分の目で確認をします。

新人の頃、それを知らずに流してしまい 「アンタ、勝手に流したらアカンやないのー」 と叱られたことがあります。

先輩によると、量とか色とかを確認してるんじゃないの? ということでした。 (お尻は洗って、布で拭くのでペーパーは使いません。なので便がよく見えます)

それからは気をつけているのですが、Jさんはいつも便を結構長い時間じーっと見ています。

こちらが 「もう流していいですか?」 と聞くと 「え? ああ、ええで」 という感じです。

量や色の確認ならすぐに終わるはずなので、??? でした。

そんなある日のことです。

確認している時に私も見るのですが、その日の便は漫画で描かれているような立派なトグロを巻いていました。

「うわぁー、Jさん! これって絵で見るような典型的なウンコですね」

そう言った途端にJさんの顔がパーッと輝き 「アンタもそない思う?」 と言いました。

「すごいわ~、この形はなかなかないですよ、トグロを巻くためには長さもいりますしね」

「この芸術、わかってくれるか?」 とJさんは嬉しそうです。

「芸術・・・ (^_^;) にしときましょうか、今日はいいことがありそうですね~」

「アンタがわかってくれて嬉しいわー、ホンマ今日はいい日になりそうや」

Jさんはリハパン着用なので、間に合わない時はリハパンの中に用を足してしまいます。

なので、タイミング良く、うまくトイレに座らないと、トイレで排便は出来ません。

それからしばらくして、今度は便器の水が溜まっている所に、ウンコがキレイな○の形で浮いていました。

「Jさん、今日は丸ですよ」

「キレイな丸やなぁ」

「始点と終点がくっついてますもんね」

「ホンマや! ウンの丸やから、運がいいんとちゃうか!」

「あ! それかも! うまいこと言いますね。今日はラッキーな日ですよ」

「そうや、きっとラッキーやで! あー、アンタとおったら楽しいなぁ」

「私もJさんといたら楽しいです」

「毎日、アンタとウンコしたいわ」

「こ・・・光栄です・・・(^▽^;) 」

この便の話も、話題が話題なので自分からは言えず黙っていたため、量と色の確認だけをしていると思われていたのでした。

私が先に話題にしてきっかけを作ったことで、Jさんは考えていることを言えて、楽しい会話になったのですが、上流階級の人なので、まさかそんなことを考えているとは・・・と他のスタッフは思っているのかもしれません。

Jさんはお金持ちのせいか、時々 「アンタら安月給やろ?」 とか 「とろけるようなええ肉、食べたことあれへんやろ?」 とかポロっと言います。

悪気はまったくないのですが、言われていい気がしないスタッフがいます。

その部分だけを取り上げて、 「こんなん言うねんよー」 と人に言えば、Jさんはお金持ちをひけらかしていることになりますが、事実は違います。

私も同じことを言われました。

でも 「アンタら安月給やろ? 安月給なのに、よう働いてるなぁ。アンタらがいてくれへんかったら、私、よう生きてへん」 と後ろに言葉は続いているのです。

前半だけを言われたら ”この安月給でよく働いてるわね” ”信じられないわ” というニュアンスに取れないこともないです。

私の時は、後半の 「アンタらがいてくれへんかったら、私、よう生きてへん」 が付いていたから、正しい意味で受け取れたのかもしれません。

つまり、Jさんは感謝の気持ちを述べていたのです。

もうひとつの方も 「とろけるようなええ肉、食べたことあれへんやろ? 一緒に食べに行こか? アンタ、今から出られるか?」 とよくしてくれるスタッフにおごってあげたい気持ちの表現なのです。

私はこの時 「私、お肉は好きじゃないんで~、お寿司にしようかな~」 と答えてみました。

「寿司か~。寿司なんかいつでも食べれるやろ?」

「んー、じゃあ、ふぐにします」

「何でもええで、好きなもん食べ! 私が払ろうたるから」

Jさんは、優しい気持ちから言っているのですが、受け取る側に、卑屈な思い、もしくはお金持ちに対する偏見があるせいか、一部分だけに反応して嫌な意味で言われた、と思い込んでいるのです。

たしかに、Jさんの言い方にも問題があり、もうちょっと言い方を考えれば、もっと真意が伝わるのに、とは思います。

でも、その人のことを深く知ろうとしなければ、その人の本当の部分は見えてきません。

Jさんは、気持ちは優しいのに言葉の選び方がヘタです。

大変なお金持ちですが、それを自慢するような人ではなく、くさいオナラを面白がったり、排便でツイてるかどうかその日を占ったりしてる人なのです。

人生の最後を一緒に過ごすのが私たち介護スタッフなのですから、深く知って理解してあげることが、上手にオムツを替えることより、大切なことなのかもしれない・・・と私はそう考えています。




※ ちなみに入居者さんと私用で一緒に外出とか出来ません~。なので、おごる話は話だけです。本人は本気で何回も 「いつなら出れる?」 と聞いてくれますけど。



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