私の勤務する施設にDさんという男性がいます。

Dさんの部屋には得体の知れない絵画があり、その絵が良くない異次元につながっています。

そしてその絵からたくさんの悪霊たちが出たり入ったりしており、部屋はいつもそういう霊でひしめき合っています。

Dさんは現在、入院中です。

ですから、部屋には誰もいません。

それなのに、深夜になると、たまに音がしているのです。

ある日の深夜、2時過ぎです。

巡回していたら、Dさんの部屋のドアが、窓を開けてもいないのに、小刻みに、カタカタ、カタカタ鳴っていました。

”うわぁ、鳴ってるなー、中にいっぱいいるんだろうな” と、そちらに注意を向けてドアに近づいた途端、音はピタッとやみました。

ドアの外からでも、中に霊が大量にいる気配が感じられました。

他の日の見巡り中、 (これも深夜です) ドスーン、と鈍い大きな音がしたこともあります。

その時も、ドアの前まで行ってみましたが、そばまで行くとシーンとしていました。

中にどれだけの悪霊がいるのかわかりませんでしたが、ドアの向こうの霊気がすごかったです。

うっかり見るのが嫌だったので、開けて中を見ることまではしませんでした。

そんな状態のDさんの部屋です。

施設では、月に一回、各部屋の洗面台のパイプ洗浄をしています。

洗浄液を排水口に入れ、一定の時間が過ぎると、水を流しに行きます。

その日は、先輩が洗浄液を入れ、流す時間がないというので、私が水を流しに各部屋を回りました。

Dさんの部屋に入る瞬間、悪霊が大量にうようよしているだろうから、もし何かあったらお不動さんに守ってもらわねば、と構えてドアを開けました。

ところが、入ってみてビックリです!

”えっ?” とあ然とするほど、全然、何もいないのです。

空間は透明でサラサラしていて、重苦しくもなく、本当にスカーッと何もいない状態でした。

悪霊たちが全員、一人残らず去っているのです。

その理由は、キンモクセイの芳香だとすぐにわかりました。

先輩が閉め切っていた部屋の窓を開けていたのです。

窓からは優しい風が入り、それとともに、キンモクセイの強い芳香も入ってきていました。

施設の向かいの家に、キンモクセイの巨木があって、満開時の香りがすごいのです。

人間にとっては癒される良い香りで、気持ちいいな~、と胸いっぱいに吸う芳香ですが、悪霊は苦手のようです。

ここまで空間がまっさらになるほど逃げるのか、と心底、驚きました。

そこで、気づきました。

今まで線香について深く考えたことなどなかったのですが、線香には、場を清める、という効果があるんだな、とわかりました。

これは人工の芳香剤ではダメで、天然の樹木の芳香にそういう力があるようです。

パイプ洗浄の水は3分くらい流しっぱなしにするので、しばらくDさんの部屋にいましたが、霊の気配はまったくなく、居心地の良い空間になっていました。

線香でもここまで霊が逃げるのだろうか・・・と考えましたが、どうやら、一度乾燥させて焚くお香よりも、生きた樹木の芳香の方が何十倍も力が強いようです。

なるほど~、そうだったのか~、と、私にはとても勉強になった出来事なので、ちょっと書いてみました。



追記:ちなみにその後、窓を閉めて、再び部屋は閉め切り状態になりました。次に私が出勤した時は、芳香も完全に抜けていたせいか、悪霊たちは戻ってきていました。