Iさんは認知症で、時々、乙女だった頃の年齢に戻る女性です。

乙女で可愛らしいな~、と微笑ましく思っていると、何かのスイッチで、急に関西のおばちゃんに変身します。

そのギャップが、とても面白いです。

Iさんにはトイレ介助が必要で、トイレにはスタッフが付き添います。

Iさんは用を済ませると必ず、スタッフに報告してくれます。

「おしっこ出た」

そこでスタッフがトイレットペーパーを渡し、拭いてもらいます。

先日、私が付き添っていると、 「ウンちゃん出たラブラブ」 と言いました。

ハイハイ、とトイレットペーパーを渡すと、Iさんは自分で拭き、その紙をまじまじと見ています。

汚いので 「Iさん、それ、ほかして下さいね」 とお願いしました。 (捨ててね、ではIさんには通じないのです)

Iさんは、たまにおしっこをして拭いた後も、 「これ、どないすんの?」 と、拭いた紙の処理を質問することがあって、そういう時は 「ほかして下さいね」 とこちらが指示します。

「え? ほかすん?」 「どこに?」 と聞くので、 「その中に」 と言うと、素直に便器の中に捨てて 「ほかした~ラブラブ」 と報告してくれます。

この日もそういう感じで見ていたので、捨てるように言ったところ、関西のおばちゃんスイッチが入りました。

「はぁ? ほかすって、アンタ・・・」 と、急に声も可愛らしい声から、だみ声になります。

「アンタ、これ、ほかしたら、もったいないやないの!」

えっっ! (  ゚ ▽ ゚ ;) そ、そうくる?

使用済みなので、全然もったいなくない、と説明をしても 「いや、もったいない」 と、関西のおばちゃんは譲りません。

「Iさん、ほら、トイレットペーパーはたくさんあるでしょう? だから、ほかしても大丈夫ですよ」「それ、衛生的にも良くないからほかしましょ? ね?」「って言うか、Iさん、お願い~、頼むから、それほかして下さい~」必死に懇願しても、Iさんは渋ります。

「汚れてへんやんか・・・」 と抵抗します。

そこで、説得の方向を変えて言ってみました。

「Iさん、この紙ね、ここの (施設の) ものなんですよ。ここの経費で買うから、いくら使ってもいいんですよ」 と言うと、驚くことにIさんは 「あ? そう?」 と明るく言うと、あっさりポイっと捨てました。

( ̄ー ̄; ・・・・・。 ははは。施設の経費だともったいなくないのね~。

関西のおばちゃん、しっかりしています。

Iさんはこないだまで、徐脈 (脈拍が少ない一種の不整脈) のため、体に負担がかからないよう、食事は部屋でとっていました。

部屋で食事をする時は、スタッフがそばで見守りをします。

その日の見守りは私でした。

Iさんは届いた食事を見るなり 「うわぁ、今日はごちそう~ラブラブ」 と、乙女全開で喜んでいました。

ぱくぱくと元気に食事を平らげ、残りはデザートのみかんだけになりました。

ボ~っと見ていたら、Iさんはみかんのヘタの方からむいていました。

私は反対側のおしりの方からむくので、 ”へ~、ヘタの方からむくのか~。親指が痛くないのかな” などと考えながら見ていました。

Iさんは皮を半分だけむいて、みかんを半分に割り、皮が付いた方の半分を私に 「ハイラブラブ」 と、差し出しました。

私がむいているところをじーっと見ていたので、欲しがってる、と思ったのかもしれません。

「Iさん、ありがとう。でも、私はもらってはいけないから、Iさん、食べて下さいね」 と言うと、Iさんは首を振って、 「ええから」 と差し出したみかんをさらに私に近づけます。

「このみかんも入れて、栄養の計算がされているんですよ、だからIさんが食べて下さいね」

「ええから」 と、Iさんはみかんを私の顔の前に持ってきました。

Iさんの表情がだんだん険しくなっていきます。

「私、仕事中なんですよ~、仕事中に入居者さんの食事をもらって食べたらクビになります~」 と言うと、そこで、Iさんの関西のおばちゃんスイッチが入りました。

「アホ言いな! これくらいのことで、クビになるわけないやんか!」

おっと、そこはちゃんとわかるのか、と思い、 「とにかく、上司に怒られますから」 と断りました。

関西のおばちゃんは、 ”この私がせっかくあげたのに、こいつ断りよった” とムカつくらしく、 「私がええ、言うとんのやから、ええねん! 取っとき!」 「ここで食べれへんのなら、持って帰ったらええやんか!」 「はよ! ポケットにでも入れとき!」 とガンガン押してきます。

”一旦あげると言ったものや、私は何があっても受け取らへんでー!” と、最後に ”ガオー!” と吠えて火を吹きそうな勢いです。

仕方ないかな・・・とおとなしくなった私に満足したのか、そこで、Iさんはむいた方の自分のみかんをひと口、食べました。

そして言いました。

「これ・・・うまないな・・・」

は? 美味しくないんですか?

「んー、うまない・・・」 

えー! まずいのなら、余計いりません~。

「ええから。遠慮せんでえーから、取っとき・・・」

遠慮なんかしてません。本気でまずいみかんはいりません。

「なんや、このみかん・・・」

そう言うと、Iさんは片手でシッシッと追い払う仕草をして、 ”もうそのみかん、マジでいらんわ、私” という意思表示をしました。

( ̄ー ̄; ・・・・・。 Iさん、違う意味で押し付けてるやろ・・・。

それ以上は無駄だと思ったので、皮つき半分のみかんは私がもらいました。

関西のおばちゃんには勝てません。

関西のおばちゃんはなかなか強いです。

ちなみにもらったみかんは、本当に美味しくありませんでした。

マッズー! と言いつつ、食べました。 

休憩時間になってからみかんを取り出したので、仕事中にみかんがポケットの中でつぶれてしまい、ズボンが果汁で濡れていた、というオマケまでついていました。

ンモー (TωT) な出来事ですが、でも何となく、フフフと笑える楽しいIさんです。 




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