友人の息子、拓也君 (仮名です) は、一人っ子でおとなしく、大変聞きわけの良い、心の優しい男の子です。
反抗期もなく、親に言われるままに厳しい塾に通い、せっせと勉強をし、親が望む難関の有名大学に入りました。
母親である友人は、これでひと安心だとホッとしていました。
あとは卒業して、一流企業に入るだけです。
友人はパートの勤め先でも、近所でも、もちろん友人たちの集まりでも、息子の大学自慢をしていました。
その拓也君が、半年もたたないうちに大学に行かなくなりました。
最初は大学に行かない、というだけのことでした。
友だちの家にはしょっちゅう行っており、遊んでいましたので、 「大学が嫌いなんやろか」 と友人もまだそんなに気に病んでいませんでした。
が、徐々に外出をしなくなっていき・・・引きこもりになりました。
一日中、家にいてゲームばかりするようになったのです。
父親は無関心で、数回注意はしたものの、それっきり何も言いません。
母親である友人は何度も大学に行くように説得しましたが、彼は聞く耳を持たず、昼夜逆転の生活を送っていました。
最初は怒ったり心配していた友人でしたが、そのうちその状況に慣れてしまい、 「文句を言うのもしんどいし、いずれ本人がこれではあかん、と気づくやろ」 と放置するようになりました。
拓也君は1年近く引きこもっていましたが、ある時、突然変化が訪れました。
「拓也が、コンビニでバイトを始めた」 と友人が言うのです。
「良かったね!」 と私は素直に感想を言いました。
すると、 「いいわけないやん・・・」 友人は暗い顔で答えます。
わけを聞いてみると・・・。
拓也君はネットで同年齢の女の子と知り合い、恋に落ちたのだそうです。
女の子は山口県に住んでいるので、関西在住の拓也君とは気軽に会えません。
そこで拓也君は一念発起、引きこもりを脱出し、女の子に会いに行く為に、バイトで交通費を稼ぐことにしたのだそうです。
「それって素晴らしいことだと思うよ?」 と言うと、 「コンビニなんかで働いて、将来どうするんー?」 と友人は眉間にシワを寄せて言います。
さらに 「どこの馬の骨かわからない女の子に会いに行くなんて・・・まさか結婚とか言い出したりしないよねぇ・・・」 とも言います。
( ̄ー ̄; ・・・・・。
引きこもりを自力で克服し、さらに労働までしている拓也君を、何故、褒めてあげないのか・・・。
親の見栄や世間体は厄介だと思いました。
そこで、福祉用具専門相談員をしていた時に見た家庭の話をしました。
そこのお宅は、父親が脳梗塞によって寝たきりになり、母親はパート勤め、一人息子が引きこもりでした。
上司が担当する利用者さんでしたが、私が担当を引き継ぐことになり、初回の訪問はベッドの交換でした。
訪問する前に、上司が 「本人はデイに行ってて留守やし、奥さんも仕事でいてはらへんけど、鍵は開いてるねん。そのまま入って作業して」 と言いました。
「あ、でも、二階には一応、声をかけといてな」 と言われ 「???」 となっていると 「二階に息子がおんねん、引きこもりでなぁ」 とのことでした。
ここの息子さんは20代から引きこもりを始め、その時の年齢は40代後半、20年以上も引きこもっていたのです。
その後、何回かこのお宅を訪問しましたが、息子さんは一回も二階から降りてきませんでした。
一応、声はかけるものの、もちろん返事はありません。
ケアマネは、一度だけ、トイレに降りてきた息子さんを見たことがあると言っていましたが、下を向いたまま、挨拶をしても返事をすることもなく、無視されたそうです。
20年間、誰も彼を救うことが出来なかった結果です。
母親によると、時々、二階で一人で暴れたり、大声で怒鳴っていることがあるそうで、病院に連れて行こうにも本人が行かない! と猛烈に抵抗する、と言っていました。
最初はたまに買い物に出かけたりしていたそうですが、ここ10年くらいは、外出もしていないとのことでした。
「私が死んだらどうなるのやろ、あの子・・・」 ととても不安そうにしていました。
その話を友人にしたら、友人は 「えっ! 引きこもりって、そんなに続くこともあるん?」 と驚いていました。
20年も他人と接触していなかったら、社会復帰を目指してリハビリをするとしても、本人には多大な苦痛が伴うと思います。
引きこもりが長引けば長引くほど、本人の心の負担は大きくなる一方です。
そこへいくと、拓也君は何とか短期間で脱出できたわけですから、喜ぶべきことだと私は思います。
でも、友人にすれば、せっかく有名大学に受かってうちの息子は前途洋々なのに、コンビニなんかで働いて・・・という気持ちになるのでしょう。
わからないでもありません。
でも、引きこもりはヘタをすれば、何十年と続く可能性もあるのです。
どこの馬の骨かわからない、などとネットで知り合った女の子を批判するのではなく、女の子には ”ありがとう” と感謝すべきです。
拓也君が ”外に出よう” という気持ちになり、さらに労働意欲まで与えてくれたのは、その女の子だからです。
親がどんなに頑張っても出来なかったことです。
悪口を言う前に、感謝、です。
友人は 「たしかにそうかもしれんけど・・・」 と納得がいっていないみたいでした。
「こう言ったら悪いけど、向こうの女の子の家では、拓也君がどこの馬の骨だかわからない男の子、と言われてると思うよ?」 と言うと、さすがに友人はこれには笑い 「ホンマやなー」 と言っていました。
女の子に会いに行きたいからお金ちょうだい、とは言わず、自分で稼ぐ、というその考えも立派ではないか、と言うと、 「たしかにそうだ」 とも言っていました。
見栄や世間体は、正しく物事を見る目を曇らせてしまうことがあります。
もしも、拓也君に、そんな女の子に関わっていたらダメ、将来を考えて大学に復帰しなさい、等グチグチ言っていたら、彼はまた殻に閉じこもってしまうかもしれません。
引きこもりの原因は人それぞれだと思いますが、他人をオープンに受け入れる性質の人がなりやすいような気がします。
そういう人は、人の悪意や意地悪という真っ黒いトゲトゲしたものまでも素直に全部受け入れてしまい、 (普通は無意識にブロックしています) そのトゲトゲによって、心が傷つけられっ放しになります。
たくさんの傷がついて心がズタズタになってくると、これ以上は無理、修復出来なくなる、と判断した魂が、自己防衛のために引きこもるのだと思います。
登校拒否、出社拒否などもそうだと思います。
心が弱いから、ではないと思います。
拓也君はその後、彼女に会いに行って、さらに好意を持ち、順調に交際を続けているとのことでした。
コンビニのバイトを頑張りながら、就活も始めたそうです。
友人は 「高卒になるやん・・・」 とまだブツブツ言っていますが、自分の人生を自分の足で歩み始めた拓也君を、私は心から素晴らしいと思うし、応援したいです。
(*^_^*)
反抗期もなく、親に言われるままに厳しい塾に通い、せっせと勉強をし、親が望む難関の有名大学に入りました。
母親である友人は、これでひと安心だとホッとしていました。
あとは卒業して、一流企業に入るだけです。
友人はパートの勤め先でも、近所でも、もちろん友人たちの集まりでも、息子の大学自慢をしていました。
その拓也君が、半年もたたないうちに大学に行かなくなりました。
最初は大学に行かない、というだけのことでした。
友だちの家にはしょっちゅう行っており、遊んでいましたので、 「大学が嫌いなんやろか」 と友人もまだそんなに気に病んでいませんでした。
が、徐々に外出をしなくなっていき・・・引きこもりになりました。
一日中、家にいてゲームばかりするようになったのです。
父親は無関心で、数回注意はしたものの、それっきり何も言いません。
母親である友人は何度も大学に行くように説得しましたが、彼は聞く耳を持たず、昼夜逆転の生活を送っていました。
最初は怒ったり心配していた友人でしたが、そのうちその状況に慣れてしまい、 「文句を言うのもしんどいし、いずれ本人がこれではあかん、と気づくやろ」 と放置するようになりました。
拓也君は1年近く引きこもっていましたが、ある時、突然変化が訪れました。
「拓也が、コンビニでバイトを始めた」 と友人が言うのです。
「良かったね!」 と私は素直に感想を言いました。
すると、 「いいわけないやん・・・」 友人は暗い顔で答えます。
わけを聞いてみると・・・。
拓也君はネットで同年齢の女の子と知り合い、恋に落ちたのだそうです。
女の子は山口県に住んでいるので、関西在住の拓也君とは気軽に会えません。
そこで拓也君は一念発起、引きこもりを脱出し、女の子に会いに行く為に、バイトで交通費を稼ぐことにしたのだそうです。
「それって素晴らしいことだと思うよ?」 と言うと、 「コンビニなんかで働いて、将来どうするんー?」 と友人は眉間にシワを寄せて言います。
さらに 「どこの馬の骨かわからない女の子に会いに行くなんて・・・まさか結婚とか言い出したりしないよねぇ・・・」 とも言います。
( ̄ー ̄; ・・・・・。
引きこもりを自力で克服し、さらに労働までしている拓也君を、何故、褒めてあげないのか・・・。
親の見栄や世間体は厄介だと思いました。
そこで、福祉用具専門相談員をしていた時に見た家庭の話をしました。
そこのお宅は、父親が脳梗塞によって寝たきりになり、母親はパート勤め、一人息子が引きこもりでした。
上司が担当する利用者さんでしたが、私が担当を引き継ぐことになり、初回の訪問はベッドの交換でした。
訪問する前に、上司が 「本人はデイに行ってて留守やし、奥さんも仕事でいてはらへんけど、鍵は開いてるねん。そのまま入って作業して」 と言いました。
「あ、でも、二階には一応、声をかけといてな」 と言われ 「???」 となっていると 「二階に息子がおんねん、引きこもりでなぁ」 とのことでした。
ここの息子さんは20代から引きこもりを始め、その時の年齢は40代後半、20年以上も引きこもっていたのです。
その後、何回かこのお宅を訪問しましたが、息子さんは一回も二階から降りてきませんでした。
一応、声はかけるものの、もちろん返事はありません。
ケアマネは、一度だけ、トイレに降りてきた息子さんを見たことがあると言っていましたが、下を向いたまま、挨拶をしても返事をすることもなく、無視されたそうです。
20年間、誰も彼を救うことが出来なかった結果です。
母親によると、時々、二階で一人で暴れたり、大声で怒鳴っていることがあるそうで、病院に連れて行こうにも本人が行かない! と猛烈に抵抗する、と言っていました。
最初はたまに買い物に出かけたりしていたそうですが、ここ10年くらいは、外出もしていないとのことでした。
「私が死んだらどうなるのやろ、あの子・・・」 ととても不安そうにしていました。
その話を友人にしたら、友人は 「えっ! 引きこもりって、そんなに続くこともあるん?」 と驚いていました。
20年も他人と接触していなかったら、社会復帰を目指してリハビリをするとしても、本人には多大な苦痛が伴うと思います。
引きこもりが長引けば長引くほど、本人の心の負担は大きくなる一方です。
そこへいくと、拓也君は何とか短期間で脱出できたわけですから、喜ぶべきことだと私は思います。
でも、友人にすれば、せっかく有名大学に受かってうちの息子は前途洋々なのに、コンビニなんかで働いて・・・という気持ちになるのでしょう。
わからないでもありません。
でも、引きこもりはヘタをすれば、何十年と続く可能性もあるのです。
どこの馬の骨かわからない、などとネットで知り合った女の子を批判するのではなく、女の子には ”ありがとう” と感謝すべきです。
拓也君が ”外に出よう” という気持ちになり、さらに労働意欲まで与えてくれたのは、その女の子だからです。
親がどんなに頑張っても出来なかったことです。
悪口を言う前に、感謝、です。
友人は 「たしかにそうかもしれんけど・・・」 と納得がいっていないみたいでした。
「こう言ったら悪いけど、向こうの女の子の家では、拓也君がどこの馬の骨だかわからない男の子、と言われてると思うよ?」 と言うと、さすがに友人はこれには笑い 「ホンマやなー」 と言っていました。
女の子に会いに行きたいからお金ちょうだい、とは言わず、自分で稼ぐ、というその考えも立派ではないか、と言うと、 「たしかにそうだ」 とも言っていました。
見栄や世間体は、正しく物事を見る目を曇らせてしまうことがあります。
もしも、拓也君に、そんな女の子に関わっていたらダメ、将来を考えて大学に復帰しなさい、等グチグチ言っていたら、彼はまた殻に閉じこもってしまうかもしれません。
引きこもりの原因は人それぞれだと思いますが、他人をオープンに受け入れる性質の人がなりやすいような気がします。
そういう人は、人の悪意や意地悪という真っ黒いトゲトゲしたものまでも素直に全部受け入れてしまい、 (普通は無意識にブロックしています) そのトゲトゲによって、心が傷つけられっ放しになります。
たくさんの傷がついて心がズタズタになってくると、これ以上は無理、修復出来なくなる、と判断した魂が、自己防衛のために引きこもるのだと思います。
登校拒否、出社拒否などもそうだと思います。
心が弱いから、ではないと思います。
拓也君はその後、彼女に会いに行って、さらに好意を持ち、順調に交際を続けているとのことでした。
コンビニのバイトを頑張りながら、就活も始めたそうです。
友人は 「高卒になるやん・・・」 とまだブツブツ言っていますが、自分の人生を自分の足で歩み始めた拓也君を、私は心から素晴らしいと思うし、応援したいです。
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