認知症の方は癒しをくれるという実例を、この先、ちょっとずつ書いていこうと思っています。

まずはBさん、女性です。

Bさんは、他人の鼻の穴がとても気になるらしく、毎回、介助する人の鼻を見ては 「あなたの鼻は大きいわね~」 と言います。

そして 「私の鼻と同じね」 「私の鼻も大きいの」 と付け加えます。

見たところ全然大きくないのですが、小鼻がちょっぴり広がっているので、それがコンプレックスなのかもしれません。

先輩と一緒に介助に行った時も、先輩にまず 「あなたの鼻は大きいわね~」 と言い、次に私の鼻を見て、おや? という感じで、同じことを言います。

10秒前に先輩に言ったことは忘れているのです。

それからも、毎日、何回もこのセリフを言われました。

先日、また先輩とこの方の誘導をしていた時です。

まず私を見て 「あら! あなたの鼻は大きいわね~、私もよ~」 と言いました。

お決まりのセリフなので、 「そうなんですよ~、鼻の穴が大きいとお金が貯まらないそうですよ~」 と返すと、何回かそう答えているにもかかわらず、Bさんは毎回驚いて 「そうなの!?」 と言ってくれます。

次にBさんは先輩の顔を見たのですが、その瞬間に先輩は、思いっきり息を吸って、鼻の穴を閉じてぺしゃんこにしていました。

先輩はそのまま息が続く限り必死で頑張っていました。

背が低いBさんは、その顔を下から、じぃぃぃーっと3秒くらい黙って凝視していましたが、 「あなたの鼻は・・・小さいわね」 と初めて ”小さい” と言ったので、大笑いしました。

”この人の鼻の穴は何だか不自然だけど・・・閉じていて狭いわ” と思ったのでしょう。

息を吸って ”わざとしている” 部分が見えないのですね。

 

小さな子供のようで、癒されるなぁ、と思いました。

Cさんも女性で、この方は体の動かし方が時々わからなくなります。

例えば、 「ここに座って」 と言っても、座り方がわからない時があります。

歩き方を忘れることもあり、そういう時は両手引きで歩いてもらいます。

Cさんは、朝、大体7時くらいに起きて、ベッドの端に座っています。

ですが、その日は部屋に行くと、まだ寝ていました。

「Cさん、おはようございます、朝ですよ~」 と声をかけると、布団の中から 「あ~、よかったぁ~、助かったぁ~」 と蚊の鳴くような、か細い声が聞こえます。

ベッドに行って、布団をのけてみると、Cさんはうつ伏せになって寝ていました。

それも両手をバンザイしています。

うわぁ、派手なポーズで寝てたのね、と思い 「大丈夫ですか?」 と声をかけると 「大丈夫じゃない・・・」 とその格好のままで言います。

いつもと違う姿勢であることはわかっているらしく、何かが違う、と思ったのでしょう。

うつ伏せからの体の起こし方がわからないので、誰かが来るのをじっと待っていたのです。

1時間前にのぞいた時は横を向いて寝ていたので、うつ伏せもそんなに長い時間ではありませんが、本人は目覚めてすぐ不安になったのだと思います。

「Cさん、まずバンザイしている手を下ろしましょう」 と起きるのを手伝おうとすると、 「ありがと~。助けに来てくれて、ありがと~」 とまたまたか細い声で言っていました。

”助けに来てくれてありがとう”

なんて可愛くて素敵な言葉なんだろう、と思いました。

Bさんと言えば、30代前半のスタッフと私とBさんが一緒にエレベーターに乗っていた時です。

Bさんはまたまた、じぃぃぃーっと私たち2人を見つめて 「どっちが年上?」 と聞いてきました。

シワだのたるみだの、そういうものが年齢を示すということが理解出来ないんですね。

そうかと思うと、別の日に、私に 「あなたは私と同い年くらいね」 と言ったこともあります。

「同い年に見えます?」 と聞くと、コックリうなずいて 「見たところ、私と同じくらいよ」 と真剣に言っていました。

そうかー、私は80代後半の人と同い年なのかぁ (#⌒∇⌒#)ゞ と、それも微笑ましくて楽しい会話だと思いました。