仕事で私が担当している利用者さんの中に、お金持ち、と誰もが認める方が2名います。
 

1人目は80代の男性で介護度5でほぼ寝たきりのXさんです。
 

結婚式場や映画館を経営していたそうで、ずーっと向こうまで塀が続く大邸宅に住んでいます。
 

家の中も広くて、私だったら玄関だけで生活出来そうなくらいです。
 

ここのお宅はいつ行っても、Xさんと高齢のお手伝いさんだけです。
 

お手伝いさんはずっとXさんのそばにいるわけではなく、ほとんど家事に追われています。 (高齢なので時間がかかるからです)

Xさんは、いつも一人ぼっちでじっと寝ています。
 

このXさんが、強烈な ”寂しい” オーラを発しているのです。
 

居室は12畳以上あると思うのですが、Xさんの ”孤独がつらくて耐えられない” という気が部屋中に充満していて、うっかり無防備に入ると、気持ちが同調してしまいます。
 

何とも言えない寂しい、悲しい気持ちになり、泣きたいような気分になるのです。

Xさんは孤独に弱いタイプのようです。

もう少し元気だった時は、訪問看護の人やケアマネともよく会話をしていたそうです。

ですが、徐々に状態が悪くなってくると、気分はそれ以上にふさぎ込み、会話をする気力がまったくなくなったとのことでした。

動物は寂しいと病気になると言いますが、人間も一緒だと思います。

何故、ここまで寂しいのかというと、奥さんがXさんの世話を放棄しているからです。

近所に奥さん名義のこれまた大きな洋館の家があり、奥さんはそちらに住んでいます。

夫の家には担当者会議の時に来ますが、 「この家は陰気臭いから嫌いなの、早くしてくれない?」 などと言います。

普段は別々に暮らしていて、担当者会議や、書類に記入してもらわないといけない時だけ、奥さんは来ます。

一度、朝早く奥さんに来てもらって書類を書いてもらったことがありました。

お手伝いさんはまだ出勤していなくて、Xさんと奥さんだけでした。

リビングで書類の記入をしてもらった後、福祉用具の点検をするためにXさんの居室に入ると・・・真っ暗でした。

遮光カーテンが閉まったままなのです。

Xさんが、 「開けてほしい」 と言うので開けていたら、奥さんが入って来て、 「あら。カーテン閉まったままだったのね」 と言いました。

夫の家に来ても、夫の様子は見ていないのです。

その時のXさんの気持ちを思うと、胸がふさがります。

Xさんは、先日、お手伝いさんが出勤する前に1人で寂しく亡くなられました。

私が用具の回収に伺ったのは3日後ですが、奥さんは淡々とされていました。

ご夫婦に何があったのかはわかりませんが、Xさんの晩年は孤独地獄だったと思います。

Xさんの口座には、きっと何億というお金があったのでしょうが、孤独感だけはお金では埋められないのでした。

いつも寂しく天井を見つめて寝ていたXさんのうつろな目が忘れられません。

2人目は70代の男性のYさんです。

この方は遊興施設を経営されていたという話です。

Yさんも本人の家と奥さんの家は別々に建てています。

私は自宅に行ったことはありませんが、先輩の話だと大邸宅だそうです。

Yさんは数年前から、かかりつけの病院が経営するサービス付きワンルーム老人マンションに入居しています。 (自宅はそのままで)

部屋は普通のワンルームマンションと一緒なのですが、食事は三食提供されるので、入居者は食堂に行って食べるようになっています。

エントランスには24時間、受付の人が座っています。

寂しくないシステムになっています。

この方も奥さん・子供とうまくいっておらず、籍は入っているのですが、一切関わりがないです。

Yさんはお手伝いさんではなく、個人秘書を雇っています。

50代後半の男性の秘書です。

9時~6時まで、この秘書が付きっきりでいます。

Yさんは週に3回デイケアに行っていますが、その間は秘書は部屋で待機しています。

その他はずっとYさんのそばにいます。

Yさんが入院すれば、その病院に出勤して、6時まで付き添いをしていますし、Yさんがデイケアに行かない日は部屋の隅で黙って文庫本を読んだりしています。

仕事は ”そばにいる” ことのようです。

Yさんは気難しい性格ですので、ほとんど誰ともしゃべりません。

ケアマネや私とのやり取りは秘書がしているし、ヘルパーさんに指示を出すのも秘書です。 (文句を言う時は本人が言いますが)

そういうYさんですから、秘書ともそんなに話をしません。

別に会話はしなくていい、とにかくそばにいれば、それでOK、みたいな感じです。

Yさんも孤独に弱いのだと思います。

Yさんの場合は秘書を雇っているので、お金で孤独を埋めることに成功している、と言えそうですが、でも感情がないビジネスなお付き合いです。

秘書が定年になったら終わる関係なのです。 (秘書は、今は次の仕事がないからやっているけど、定年になったら絶対に辞めると言っています)

それでも、一人ぼっちよりマシなのかもしれません。

昔の私は、お金があれば老後は安泰と思っていましたが、どうやら違うようだ、と最近思い始めました。

孤独だけは、どんなに大金があってもどうしようもないみたいです。

不思議なことに、これはむしろお金がない人の方が、お金で何とかしようと考えることがない分、達観しているようです。

生活保護で独居で寝たきりの人でも、あっけらかんと明るいのです。

人生、お金じゃないのかもしれない、といろんなお年寄りの方々を見て、そう思っています。

 

 

 

 

励みになりますので、出来ればポチっとお願いします~。

 

 

 

 

 (*^_^*)
ひっそりとスピリチュアルしています-ブログランキングへ