私が仕事で担当している利用者さんは、毎月増減があって一定ではありませんが、大体150人前後です。
これだけのお年寄りがいれば、いろんな方がいらっしゃいます。
その中に、2名ほど、今話題の若返り遺伝子、 ”サーチュイン遺伝子” がオンになっているであろう人がいます。
まず1人目は山田さん (仮名) です。
山田さんは最近、地域包括の方から依頼があった女性の利用者さんです。
要支援1なので、身体状況はそんなに悪くありません。
初めて訪問した日のことです。
まず、食卓に座って、ご本人についていろいろと質問をしていました。
「年齢は、えっと・・・」 と地域包括にもらった情報を見ようとしたら、 「82歳」 と山田さんが照れながら言いました。
一瞬、 「は?」 となりました。
どう見ても、60代前半なのです。
私は毎日お年寄りと接しているので、年齢を見誤ることがめったにありません。
若く見えるなー、と思うことはあっても、本当の年齢はこのくらいだろうという推測は、はずしません。
その私が本当に20歳若く見たのですから、すごいことだと思います。
肌ツヤとかシワとか、絶対に80代ではないのです。
いくら若く見えるといっても、普通はせいぜい10歳です。
20歳も若く見える人は初めてでした。
何故、この人はこんなに若いのか・・・とその秘訣を知りたくなりました。
本人は、 「私、朝洗面をする時だけしか、鏡を見ないの」 と言っていました。
たしかに鏡は一切置いていませんでしたが、そんなことで若返り遺伝子はオンにはならないだろう、と思いました。
ベッド脇にてすりを置く予定でしたので、実際にベッドを見せてもらうために寝室に行きました。
寝室に入った途端、うわぁ~、と声が出てしまいました。
とても可愛いお部屋だったのです。
白地にピンクの花柄の明るいカーテンに、ベッドカバーもヨーロッパ調の華やかな花柄です。
タンスや置物なども上品で可愛く、老人のお部屋には見えません。
これが秘訣かな? と思いました。
ウキウキするようなデザインと雰囲気に毎日囲まれているから、気持ちが若く保てるのかもしれないと思いました。
「素敵なお部屋ですね~、特にベッドカバーがいいですね。どこで購入されたのですか?」 と聞くと、 「ネット通販♪」 とまた照れながら山田さんは言います。
うっそーっ! 82歳のお年寄りがっ! ネット通販出来るの? と思わず声に出してしまいそうになりましたが、かろうじて平静を保ちました。
「でしょうね~。普通のお店にはない品質ですよね。山田さん、パソコンを使えるんですね」
山田さんは独居です。
代わりにパソコンで買い物をしてくれる家族はいません。
「そうなの、でもね、始めたのが遅かったから、なかなか上達しなかったの~」 と山田さんはニコニコしています。
「いつから始められたのですか?」
「70歳♪」
ヽ(゚Д゚)ノ ひ~え~、すご過ぎる~、と思いました。
話によると、最初は入力の練習から始め、そのうち面白くなってきて、ハマったのだそうです。
「ネット通販なら、おうちにいていろんなものが買えるし、世界が広がるでしょ~」 と言います。
出かけた時に撮った写真は、いろいろと加工したり、美しいフォトアルバムを作成してプリントアウトしたりしていました。
会社の同僚でまだ40代なのに、パソコンは難しいから使えない、ネットで買い物をしたことがないと言っている人が何人もいるのに、山田さんの好奇心はすごいです。
この、新しいものにチャレンジする、というワクワクの好奇心と、脳の活性化が若返り遺伝子をオンにしているのだと思いました。
82歳で、 「私ね、パソコンでやりたいことがまだまだあるの~」 と言っているのです、年を取っている暇なんかないのでしょう。
若返り遺伝子をオンにするためには、腹八分目と運動がキーだと言われています。
さりげなく聞いてみたところ、たくさんは食べないけど、運動はしていない、とのことでした。
ワクワクする気持ちと、知りたいと思うその好奇心を持ち続けていれば、20歳若くいられるのね、と思いました。
もう1人は、佐藤さん (仮名です) という88歳の女性です。
この方は利用者さんではなく、利用者さんの妻です。
夫は98歳で、脳梗塞の後遺症で体が少し不自由ですが、2人ともしっかりされています。
驚きなのは、佐藤さんは、肌がツルツルなのです。
嘘でも大げさでもなく、本当に30代~40代の肌なのです。
もちろん、シワはありますが、88歳にしては少ないです。
この方も15歳は若く見えます。
肌が透き通るような美しさのうえに、佐藤さんの顔には毛穴がありません。
「毛穴がないわけないやろ~」 と担当のケアマネが言っていましたが、後日訪問してよく見たら、本当に全然毛穴が目立っていなかった、ツルツルだった、と認めていました。
佐藤さんも若返り遺伝子オンによって、肌が若返っているのだと思います。
この秘訣は何が何でも手に入れたい、と思いました。
ある程度仲良くなってから、化粧水は何を使っているのか聞いたところ、スーパーの特売品、という答えでした。
洗面所にあるから見ておいで、と言われ、遠慮なく確認させてもらったら、本当にスーパーで売っている化粧水でした。
クリームなども塗らないと言いますし、手入れはまったくしていないと言います。
食べ物も普通ですし、運動もしていませんし、ワクワクの好奇心もなさそうです。
でも、ただ一つだけ、一般人と違うところがあります。
佐藤さんは茶道の先生なのです。
今でも週に一回、教室を開いています。
私が訪問した時も、お抹茶をたててくれます。
聞けば、一日に一回は必ず抹茶を飲むと言っていました。
もうそれしか考えられないので、私は早速抹茶を買いました。
買いました、となっていて、飲んでいます、じゃないのは、面倒くさいのでそのままになっているからです。
で、つい先日、2月に録画をしておいたTBSの特別番組 ”最新遺伝子ミステリー 人間とは何だ” を見ました。
安住さんと松たか子さんが司会をした番組です。
そしたら!
サーチュイン遺伝子をスイッチオンするには、緑茶や、赤ワイン、水素水などが良いと言っているではないですか!
「あー、やっぱりーっ!」 とつい大声を出してしまいました。
佐藤さんは、それを実際にやって、成果をあげているのです。
この番組を見て、科学的な根拠に裏付けされていたのだ、とわかってから、私も抹茶を飲むようにしました。
お年寄りの方々は、注意深く接していると、本当に多くのことを教えてくれます。
介護の仕事はある意味、とてもラッキーで、面白い仕事だと思います。