介護業界ではみなさん、それぞれ尊いお仕事をされているのですが、私が特に素晴らしいと思うのは訪問入浴です。

実は、介護職に就くまで、訪問入浴というお仕事があることを知りませんでした。

その存在を知ってからも、どんなふうにしてお風呂に入れるのか謎でした。

私が、まだ入社して間もない頃のことです。

寝たきりの方の (女性) ベッドの移動をしに行きました。

寝たきりですので、ベッドを移動する間、どこかに座っていてもらうということが出来ません。

ですので、訪問入浴が来て、お風呂に入っている間に作業をすることにしました。

当日は、遠方から娘さんも来ていました。

ご本人がベッドを離れるまで私は何も出来ないので、訪問入浴のスタッフが準備をする間、邪魔にならないよう外で待機しようと思った時でした。

娘さんが、 「訪問入浴って見たことあります?」 と聞いてきました。

まだ一回も見たことがないです、と答えると、 「私も今日初めて見るから、一緒に見学してお勉強しません?」 と言ってくれたのです。

私の担当の利用者さんには、こういう親切な方が少なからずいて、新米だった私を育ててくれました。

本当にありがたいです。

訪問入浴は、大きなビニールシートを寝室や居間などに敷き、そこに本物のバスタブを置きます。

利用者さんが寝たままの姿勢で入れるような、長細い形です。

看護師が体の状態をチェックして異常なければ、男性2名が利用者さんを抱えて、お湯に入れてあげます。

洗身、シャンプーをして、上がり湯をし、よく拭いてから、また抱えてベッドに戻します。

その利用者さんは認知症がかなり進んでいて、普段は表情がまったくない方なのですが、お湯につかっている時は、本当に幸せそうな、柔らかい微笑みを浮かべていました。

「あ、お母さん、笑ってるみたい! ねぇ、笑ってるよね?」 と娘さんが私に言うので、 「ホントですね! 微笑んでますね! 気持ち良いんでしょうね」 と言うと、娘さんも 「良かったね~、お母さん」 と、嬉しそうな様子でした。

溜めているお湯の中で、体を洗うと当然、垢がたくさん浮いてきます。

久しぶりのお風呂、という利用者さんの場合、ビックリするくらいお湯が汚れます。

が、訪問入浴の方は手袋などしていません。

素手で、丁寧に優しく洗ってあげています。

慈悲深くないと出来ないお仕事だと思います。

この方のように表情がなく、笑うことを忘れてしまっている人が、自然と柔和に微笑んでしまう・・・そうさせることが出来るお仕事なのです。

大げさかもしれませんが、魂に癒しを与えるお仕事だと思いました。

高齢でガンの末期のターミナルの利用者さんに、ケアマネが訪問入浴を勧めているのをそばで聞いていたことがあります。

子宮ガンですので、悪いものが体の中からおしもの方に出てきます。

夏でしたので、清潔を保つ必要がありました。

お嫁さんはすぐに了承しましたが、本人が 「こんな状態でお風呂に入ったら、私、死んでしまう~、お風呂はやめて~」 と、か細い声で泣くように言っていました。

明らかに入浴する体力がないので、 ”どうやって入れるのか知らなかったら、相当不安だろうなぁ” と心の中で思いながら聞いていました。

お嫁さんとケアマネが何とか説得をして、後日、訪問入浴が入ることになりました。

私は、本人がベッドを空けている間に、エアマットの交換をしなければいけなかったので、現場にいました。

バイタルを測定したり、服を脱がされている時も、本人はずっと不安だったようで 「死んでまう~」 と言っていました。

が、温かいお湯につかって、丁寧に優しく洗ってもらい、汚れをキレイさっぱり落とすと、頑なだった心まで柔らかくなったようでした。

最後はニコニコと素敵な笑顔で、訪問入浴のスタッフに手を合わせて、 「ありがとう、ありがとう」 と何度も言っていました。

本当に心から感謝されていたと思います。

高齢でターミナルのため、普段は常にしんどそうで、いつも暗い顔をされている方です。

その顔を、後光が射すような神々しい笑顔にさせるのです。

訪問入浴はすごいなぁ、と思いました。

私は福祉用具のお世話をする仕事ですので、あのような笑顔を引き出すことは無理かもしれませんが、あの笑顔を目指して、日々頑張っています。









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