介護の仕事をしていると、深く考えさせられることがたくさんあります。

Dさんはとっても頑固な、でも意思のハッキリした女性です。

ほとんど動けないので、ベッド上で一日を過ごしています。

1人暮らしですので、日々のお世話はヘルパーさんがやっていますが、気分屋さんなので大変です。

気に入らないことがあると、横を向いたままで、おむつ交換すらさせてくれません。

おむつは漏れてしまうこともあり、そのせいで体が汚れてしまっているのですが、清拭もさせてくれません。

車椅子に座れば移動出来るので、デイサービスでお風呂に入るようにしましょう、とケアマネが提案しても断固として拒否です。

そこで長男さんに何とか説得をしてもらい、やっと訪問入浴をすることが決まりました。

最初は長男さんの言うことも聞かなかったのですが、 「人に迷惑がかかってるんや!」 と怒ったら、やっと納得してくれたということでした。

ですが、訪問入浴が来た当日、本人の気持ちが変わり、 「絶対入らない!」 と言いだしました。

結局、ムリヤリ入れるわけにはいかず、訪問入浴サービスはそのまま帰りました。

長男さんは平身低頭で、訪問入浴のスタッフにずっと謝っていました。

そこまで意思を貫く人です。

その数日後の朝、ヘルパーさんが行くと、Dさんはちょっと意識が朦朧としてるように見えたそうです。

たまたま次男さんが来ていたので、様子がおかしいです、と言ったところ、 「いつもこんな感じだから」 と言ったため、ヘルパーさんはそのまま帰りました。

昼過ぎに次のヘルパーさんが行くと、かなり意識が朦朧としていて、確実に危ない、ということで救急搬送となりました。

Dさんは、そのまま入院しました。

入院後1週間くらいして、長男さんが書類にハンコを押しに、事務所に来られました。

ケアマネと同席して話を聞くと、Dさんはわかっているのかそうでないのか、呼びかけても全然反応がないそうです。

ぼーっと天井を眺めているということでした。

食事はまったく摂れないし、もう覚悟は出来ている、というようなことを言われていました。

さらにその1週間後、長男さんは前開きのパジャマや下着を購入に来られました。

その時に、 「医者に胃ろうを勧められている」 と言いました。

胃ろうとは、胃に穴を開けて、直接外から胃に栄養を流し込む治療方法です。

Dさんは相変わらず意識が定かではなく、問いかけにも答えない状態です。

食事も口から摂れません。

このままでは長くはもたないと言われたそうです。

長男さんが、胃ろうをするとどれくらいもつのか聞いたら、長ければ10年~15年もつ人もいる、と医者は言ったそうです。

長男さんは 「僕が今、66才なんですよ。10年後15年後って、僕の方が介護が必要になってるかもしれへんし、もしかしたら死んでるかもしれへんじゃないですか。そしたら子供に迷惑がかかるし・・・」 と悩んでおられました。

長男さんの奥さんは病気がちの人なので、そのうえ自分も要介護になったりすると、子供は3人の介護をしなければいけなくなるわけです。

Dさんには話も通じないし、意思はあるのかないのか無表情で、そういう状態で10年も15年も生かされて、それで幸せなのか? とも考えたそうです。

意識がハッキリしていたら、あの頑固な母のことだから 「そんな手術せんといてっ!」 と絶対に拒否をする気がする、と。

長男さんは、自分だったらしてほしくない、と言います。

でも、手術をしなければ長くはもたない・・・ということは、 「手術をしません」 と言うと、見殺しにするようなもので、それは出来ない・・・と苦悩されていました。

長男さんは4人兄弟です。

他の弟さん、妹さんたちは、どうしたらいいかわからないから、長男さんの決定に従う、と言っているのだそうです。

そういう決断を下さなければいけないのは、想像を絶する辛さだろうな、と思いました。

胃ろうをしなかったら、Dさんが亡くなった後で自分を責めるでしょうし、したとしても、この先ずっとこれで良かったのかと悩むのだと思います。

しょんぼりと帰って行く長男さんの背中を見つつ、そう思いました。

それから2週間くらいして、書類の関係でまた長男さんが事務所に来られました。

えーっ !? 別人? と驚くほど長男さんは痩せこけていました。

胃ろうはまだ決められずにいました。

悩み過ぎて食事ものどを通らず、夜も眠れない、とのことでした。

胃が痛い、とこぼされていました。

結局、この数日後、胃ろうをすることに決められたのですが、大変な決断だったと思います。

この出来事は、他人事ではないと思いました。

自分の実家に戻った時に、父と母に、 「そうなったらどうしたら良いのか」 と聞くと、二人とも 「絶対に延命装置類はつけないでほしい」 と言いました。

しかし、人工呼吸器など、とっさに医者に 「どうしますか?」 と聞かれたら、 「つけて下さい!」 って言うだろうし、

胃ろうをしなければ死にます、と言われたら気が動転して 「手術して下さい」 って言うと思う、と正直に言いました。

弟はその場にはいませんでしたが、弟も多分延命を選ぶだろうと思う、と言いました。

すると、母が 「絶対せんといて! 断って!」 と言うので、 「医者に、見殺しにするのですか、みたいなことを言われたら、人間って弱いから断れないと思うよ」 と言うと、母は、それは寿命なのだから、自然に死なせてほしい、と言います。

そこで、 「本人の意思はこれです、と言えるように、エンディングノートを書いておいて」 とお願いしました。

それを医者に見せれば、本人の意思ですから、それが尊重されます。

母はすぐに 「書く!」 と言っていました。

そういう私も、いつ事故に合うか、いつ倒れるかわからないので、エンディングノートに記入をしておこうと思います。

大事な子供、パートナー、親兄弟に辛い決断をさせるのは可哀想だと思います。

Dさんの長男さんを見て、しみじみとそう思いました。

延命治療は本当に難しい問題だと思います。








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