介護の仕事をしていると、人の 「死」 について考える機会が多くあります。

私が担当している利用者さんは常時、約150人前後です。

これだけお年寄りがいると、亡くなる方も結構いらっしゃいます。

体調が悪くなり入院してそのまま亡くなるというパターンが一番多いのですが、ガン末期のターミナルで自宅で亡くなる方もいますし、ある日突然亡くなられた、という方も少なからずいます。

朝、出社して訃報を聞き、 「えっ! 3日前に訪問した時は元気だったのに !?」 ということもたまにあります。

私は福祉用具専門相談員をしています。

自宅でお通夜・お葬式をされる場合、レンタルの大きな電動ベッドが邪魔になります。

それで、すぐに引き上げてほしいと言われます。

朝の6時に携帯に連絡があり、ご遺体が病院から7時に帰るので、その前に引き上げてほしい、と言われたこともあります。

昨晩、自宅で亡くなったので、朝イチで片づけてもらいたいという依頼も少なくないです。

そんなふうにして、すぐに伺うということは、亡くなられてホヤホヤの状態のところに行くわけです。

電動ベッドは組み立て式になっていますので、分解して、それを運び出すのですが、作業時間がかかります。

その間、どうしても目に入ってくるのは、ご遺体です。

顔に布をかけられて安置されています。

3日前に会った時は、冗談を言って一緒に大笑いしていた人が、今は物体になっているのです。

そこのところが、なんとも不思議で仕方ないです。

3日前に笑顔を見せて話をしてくれた人は、この世のどこを探してももういなくて、肉体はただの物体としてそこにある・・・そしてその物体は二度と動かないのです。

寂しい、悲しいと思うと同時に、 「死」 って一体何だろう? といつも思います。

去年の夏に亡くなられたNさんは、60代でまだお若く、とても気さくで優しい方でした。

若いころに祭りの神輿から転落して、車椅子の生活になってしまい、そこで人生が狂って結婚も出来なかったと、自分の人生を語っていました。

私が新米の頃、うっかり書類を一部忘れて (レンタル契約は膨大な書類が必要なのです) 遠方にいる妹さんにハンコをもらうため、二度手間をかけさせたことがありました。

でもNさんは優しく、 「妹のことは気にしなくていい、それで書類は大丈夫か? ゆっくり確認しなさい、慌てなくていいから」 と言ってくれました。

車椅子のメンテで六角レンチが必要になった時も、 「車まで取りに行ってきます」 と言うと (遠い場所に駐車していました) 「いいよいいよ、うちのどこかにあるから一緒に探そう」 と笑っていました。

先輩が発注した入浴台の特注品が、最初うまく設置出来ずにガタガタしていても、 「それくらいええで~」 といつもにこにこと鷹揚でした。

Nさんは独居でしたので、ヘルパーさんが訪問してお世話をしていました。

とある金曜日の夕方、ヘルパーさんが訪問した時、Nさんは風邪気味で熱がありました。

次回は月曜日だったので、心配したヘルパーさんが 「明日も来るようにしましょうか?」 と聞いたところ、 「土日くらいゆっくり休み~、大丈夫だから」 と言ったそうです。

Nさんはその金曜日の夜に、1人で亡くなりました。

ヘルパーさんが月曜日に訪問するまでの間、誰にも発見されませんでした。

それが、悲しいことにNさんは大きい方を粗相してしまっていて、自分でなんとかそれを拭こうとした跡があったそうです。

その状態のままで亡くなられていました。

2日半もの間、そういう状態でしたので、レンタルのマットレスはひどい臭気を放って汚れていました。

回収時、妹さんが申し訳ないと謝っていましたが、私は汚いなんてこれっぽっちも思いませんでした。

それよりも、亡くなって2日半もの間、こんなマットレスの上にいたなんて・・・と泣けました。

神聖な死の瞬間がこんな状態で・・・と思うと涙が止まりませんでした。

Nさんは、孤独な人生だったと言っていました。

それでも一生懸命頑張って生きてきたのに・・・投げやりになったりせず明るくいい人だったのに、最後の最後でこの仕打ち? と思うと、泣けて仕方ありませんでした。

人生って何だろう・・・と思いました。

それから2ヶ月くらいして、Nさんが住んでいた団地の前を通ることがありました。

団地横の土手には桜の木が並んでいます。

そこをゆっくり車で通過しました。

「Nさん、ちゃんと成仏したかなー?」 とぼ~っと考えていたら、Nさんが満開の桜並木の桜を見上げながら、嬉しそうに歩いている姿が見えました。

季節はすでに秋でしたが、Nさんは自分の足で散歩をしつつ、桜を見たかったのでしょうね。

成仏して、その夢が叶っているところが見えました。

その幸せそうな顔を見た時、 
「つらい人生をお疲れ様でした」 と自然に声が出ていました。

次はきっと、一生健康で元気な人に生まれ変わるんだろうな、と思うと何だかホッとして、転生の素晴らしさがわかった気がしたのでした。








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