1から学ぶカーボンニュートラル。脱炭素を目指せば「暗い未来も明るくなる」 | 時事刻々

時事刻々

日々動き、移り変わって行く、日本と世界を、独自の視点で取り上げています。

1から学ぶカーボンニュートラル。脱炭素を目指せば「暗い未来も明るくなる」

MASHING UP編集部

2020年に菅政権が掲げた「2050年カーボンニュートラル宣言」。私たちの暮らしの中でも徐々に聞こえ始めた「カーボンニュートラル」だが、その言葉の意味や背景を聞かれると戸惑う人も少なくないだろう。5月21日に行われたMASHING UPとBOOK LAB TOKYOとのコラボイベントでは「1から学ぶカーボンニュートラル」と題したトークセッションを開催。

サステナビリティ経営・ESG投資アドバイザリー会社ニューラルのCEOであり、『超入門カーボンニュートラル』(講談社+α新書)の著者である夫馬賢治さんが、カーボンニュートラルの基礎や世界の取り組み、日本の現状を教えてくれた。

「カーボンニュートラル」=「温室効果ガスの排出を±0にすること」

ニューラルのCEO 夫馬賢治さん

夫馬さんによると、カーボンニュートラルとは「人間の活動から発生する温室効果ガスの排出を抑えて吸収することで、実質的な排出量をゼロにする」というもの。温室効果ガスは気候変動との関連が示されており、95%の確率で人間の社会活動が原因だという。

夫馬さんは「このまま温室効果ガスの排出が続くと、金融危機を引き起こすリスクがある」と話す。

「近年、日本でも5〜6月に豪雨が降る気象環境になっていますが、2018から19年にかけて気候変動による損害額は2兆円を超えました。世界でも2019年より2020年の方が災害が増えています。

この状況にアラートを出しているのが、金融当局。このままいくと金融危機が起こるリスクがあるためです。(気候変動による金融危機は)リーマンショックよりも鎮静化しづらく慢性的な危機になることが、国際的な金融当局のレポートで指摘されている。この気候変動に慌てているのは、政府ではなく金融業界なのです」(夫馬さん)

今や国際的な金融当局である国際決済銀行が、「気候変動は起こしてはならない」とアラートを出すほど深刻な状況。EUやアメリカでは、気候変動を防ぐための対策を講じ始め、日本でも政府を中心に環境保全の対策に動き出しているという。

明るい未来につながるポジティブな取り組み

モデレーターを務めるMASHING UP編集長 遠藤祐子(左)と、「脱炭素に積極的に取り組むことで、暗い未来が明るくなる」と話す夫馬賢治さん(右)。

昨年「2050年カーボンニュートラル宣言」を出した日本政府だが、その決断は、世界的に見ると遅い動きであると夫馬さんは指摘する。

「2011年くらいにいろんな情報が出てきて、世界の経済界では『気候変動を止めないと事業ができなくなる』という認識に変わっていきました。(中略)でも日本ではこの話題があまり報道されず、いまだに『環境問題は経済にとって悩ましいもの』という認識のままできてしまった。みなで金融危機を止めるという動きに、日本だけが状況を掴めずに遠巻きに傍観しているのが現状。世界と一緒に取り組めるかどうか、その勇気ある一歩が必要です」(夫馬さん)

日本でもこれから積極的に気候変動に取り組むことで、新しいビジネスチャンスが生まれる、と夫馬さん。さらに「むしろ日本は一国分以上の電力を作り出せる可能性がある」とも話す。

「よく聞かれるのが『資源がなく山が多い日本で、再生可能エネルギーを作るには、地理的に不利だ』という話。しかし洋上風力を利用するという視点では、日本は風がものすごく吹いている広い海があります。海外では海に浮くタイプの洋上風力が研究開発されて、実証機も動き出している。これを採用すれば、日本は世界でも有数の再エネ資源国になります」(夫馬さん)

世界では対策が遅いとされる日本だが、適切なアイデアを採用し、再生可能エネルギーの技術を加速させることで脱炭素社会をリードできるという。

イベントの最後に夫馬さんは、「カーボンニュートラルは、明るい未来を作るために取り組むべきポジティブなもの。これから脱炭素を目指していけば、暗い未来が明るくなる。『あとはやるだけ』です」と語った。

夫馬 賢治 『超入門カーボンニュートラル』(講談社+α新書)
世界の投資マネーが殺到するなど、これからのビジネスの重要なキーワードとなる「脱炭素社会」の基礎知識を、第一人者であるニューラルのCEO夫馬賢治さんが徹底解説する。