ExcelでRational Acoustics Smaart v8の計測データをグラフ化する話です。
Rational Acoustics Smaart v8は非常に優秀な音響解析ソフトウェアで、筆者の様な音響映像設備施工業には欠かせません。今回は計測したASCIIデータを使い、エクセルでグラフ描写をする工程を紹介します。
本記事で使用するsmaart_report.zipは下記からダウンロードできます
1.Smaartの画面で、「コヒーレンスを0%で表示」した後、任意のデータを右クリックし「Copy to ASCII」を選択します。これでクリップボードにFrequency (Hz) , Magnitude (dB) , Phase (degrees) , Coherenceの4列のデータがコピーされます。
好みの表示設定はフェーズ 1/3 oct、マグニチュード 1/6 oct。コヒーレンスを0%以外に設定すると、コピーされるASCIIデータに欠損が出るので注意(ASCIIデータはコヒーレンス表示に影響を受ける)
クリップボードを張り付けた例。Frequency (Hz) , Magnitude (dB) , Phase (degrees) , Coherenceの4列のデータがコピーされている
2.コピーされたASCIIデータをエクセルデータsmaart_reportの任意のタブの基準セルA1に貼り付けます。
エクセルデータsmaart_report。参考までに適当なデータを入れてあります
グラフの横表示は20Hz~20kHzを余裕を持って表示させたい為に10Hz~30kHz、目盛りは対数表示で基数は10(10log10)。昔のエクセルでは対数目盛でこの範囲指定が出来ず、この表示をしたいがためにExcel2013を購入した記憶がある
貼り付けると4列置き換わる。EとF列は「I1」で指定されたコヒーレンスを取捨選択するためのもの
3.貼り付けた後、f特性タブに戻ると完了です。任意の表示コヒーレンスを指定する事により有効なデータのみを表示する事が可能です。
描写されたグラフ。レイアウトを工夫する事によりエクセルっぽさを軽減させることが出来ると筆者は考えている
凡例は表示サイズを変更しグラフの邪魔にならない所に移動、または非表示にし別途読みやすい位置に記載すると良い
表示コヒーレンス5%。これでは表示させたくないデータが多い
表示コヒーレンス35%。若干ゴミが残る
表示コヒーレンス60%。これなら報告書に使える
実際の動作の動画。数年かけて改良しているだけあってかなり望んだ動作が出来る
説明は以上で終了です。
工夫したポイントの紹介
グラフの背景色をlogに応じてグラデーションを行っている(100Hz、1kHz、10kHzが濃くなっている)
「[>=1000]#,###,"k";#,##0」で「k」単位で表示をさせ、20Hzと20kHzは別途テキストボックスで表示している。個人的には20Hzと20kHzは欠かせない
グラフ描写は「線」で行うと位相の周期が一周する際に帰線が表示される為、マーカ表示で点の集合体にしそれらしく見せている。※「線」で描写すると上の状態になる
エクセルの上に載ってしまえばあとは好きな様に編集が可能です。テンプレートファイルでは±15dB表示ですがもちろん表示範囲幅もスケールも、スケール表示の位置も、重ねるグラフの数も変更が可能です。これを元に是非。使いやすい、提出しやすい表を作成してみてください。
応用編(おまけ)
エクセルで描写が出来ましたので、そのままPDFにエクスポートを行うと、Adobe Illustratorでベクトルデータとしての編集が可能です。
Adobe IllustratorでPDFに書き出したグラフを開いている状態
点描の集合体となっている
オブジェクトを結合、合体し、乗算描写を行うとより見やすいグラフ描写になる。※乗算し、表示が可能なソフトはなかなか無い