iZotope RX4 Declipperで音源の音割れを修正する | 音響・映像・電気設備が好き

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「ヒゲドライバー」「suguruka」というピコピコ・ミュージシャンが好きです。

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すっかり書くのを忘れていました、iZotope RX4 Declipperで音源の音割れを修正する、という話です。

 

RX4を買ったのは数年前で、fixerさんからDeclipperでクリップによる音割れは直る、との情報を得て購入してみた次第です。場所を取る実機の機材を買わずに、プロと同等の環境がソフトウェアとして手に入る現代は本当に良いですね。

 

 

参考リンク:
Pure2のノイズで学ぶ現代のオーディオ修復技術
http://fixerhpa.blog.fc2.com/blog-entry-143.html

 

 

問題の音が割れている音源ですが、個人的には音圧パンパン(俗にいう海苔波形)で多少デジタルクリップしている程度は全然気にならない、と言うか環境による変化が大きいですし、リスナ側がどうこう言っても直る物でもなさそうですし、普段そこまで気にしませんが、誰がどう聴いても確実にデジタルクリップしていると判断するであろうCDと言うものがありまして、それが、つじあやの「うららか」です。※1998年販売、現在は廃盤
「うららか」は全国流通CDではなく、インディーズレーベルから販売されているものでして、メジャ作品と状況はもちろん違いますが、プレスCDをこんな状態でリリース出来るのか!!!と当時(筆者の購入は2002年頃)ビックリしたのです。

 

 

 

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つじあやの「うららか」の波形表示。6曲あり、2~5はクリップが沢山ある。1と6は無事、とも言える。筆者は6曲目の「春は遠き夢の果てに」が大好きです

 

 

 

 

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「-1dBFS、クリップ連続3サンプリング」でのクリップ検出。ノイズとして顕著に聴こえる

 

 

 

不思議なのですが、0.0dBFSクリップではないのです。「-1dBFS、クリップ連続3サンプル」での検出結果が上記で、0dBFSでは検出されません。制作過程がどのような工程なのかは分かりませんが、聴く限り、ほぼマイク一本の一発録りなのでその時にマージンを取らずクリップしてしまったものと推測します。
本来取るべき形は、マージンを十分に取り録音。その後、コンプレッサやリミッタを使用して、音の大きさを整えCDとして販売する事だったかと思います。予算が無かったのですかね・・・

 

 

 

10年ほど前に筆者はポスプロで働いていたのですが、映像業界はPCM録音時の鉄の掟として、-20dBFS = 0VUがあり、音声が0dBFSに張り付くなんて事はご法度で、そんな事をした日にはド素人の称号を得ることが出来ました。

 

 

参考リンク:※2008年5月の記事です
-20dBFSについて

 

 

デジタルクリップノイズはとにかく耳障りで、ENG収録で発生させると自分の音声としての無能さを思い知る指針であるのですが、これに限らず音楽CDの一部の界隈ではそれを発生させてまでも0dBFS付近まで音を詰め込まなければならない様で、筆者が教えられた「PCM録音時の鉄の掟」とは変わるようです。なぜなんでしょうね・・・・きっと録音技術ではないのでしょう・・・基準レベルとか知らなそうですし。
※ENG用フィールドミキサではその為にハイパーリミッターと言う機能がある。「フィールドミキサー」は株式会社日本ビデオシステム(PROTECH)の登録商標です。

 

 

 

イメージ 3
編集画面

 

 

 

 

今回、この音が割れている音源を修正します。使用ソフトウェアはMAGIX software VEGAS Pro 15.0、プラグインにiZotope RX4 Declipper、Waves L2 Ultramaximizerです。

 

 

 

波形だけで話をしても、実際に音を聴いて頂かないと分かりませんので、クリップ部分のみを再生し、映像化しました。著作権に触れない長さでの使用です。海苔波形のクリップノイズは気にならない筆者でもさすがにこれはNGです。

 

 

 


iZotope RX4 Declipperで音源の音割れを修正する

 

 

 

聴いてみると違いは一目(一聴?)瞭然かと思います。録音技術者としてこれを聴くなら、心臓に良くないのがお分かりですよね・・・

 

 

 

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iZotope RX4 Declipperでの波形クリップ修正前と後の比較
※MAGIX software SOUND FORGE Pro 12.0 Suiteを使用

 

 

 

分かりやすいように、修正前と修正後の波形比較を載せました。
修正前は波形が潰れ、0dBFS付近に張り付いていますが、Declipperを使用する事により潰れが解消されているのが分かると思います。発生するノイズを聴感上知覚できる・できないの個人差はありますが、この様に波形がクリップしている状態は技術的に好ましくありません。
※チップチューンやエレクトロなどの意図的な矩形波は除く。ごくわずかな特例として、デジタルクリップノイズをエフェクトとして使用するエレクトロニカ・ミュージシャン(Denkitribeさん、fu_mouさん)もいますがこれも除外。

 

 

 

 

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iZotope RX4(単体アプリ)でも表示させてみます。矩形に潰れるので、高域にノイズが含まれているのが分かると思います

 

 

 

 

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スペクトラムでの比較

 

 

 

スペクトラムでも比較してみます。
白色が修正前、黄色が修正後です。差分ではみ出している白い部分がノイズ成分です。

 

 

 

17年越しにCD音源が聴けるようになって良かったです!
音源としては大変貴重な作品・大好きな楽曲なのですが、収録の事故・機器の故障を連想する、ピークと連動するデジタルクリップノイズがひどく(特に真ん中らへんがヒドイ※冒頭のつじあやの「うららか」の波形表示の画像参照)聴いていて気になって仕方がありませんでした。今後、再販されるようなことがあればDeclipperで修正されると良いですね。
※余談ですが、MAGIX software SOUND FORGE Pro 12.0 Suiteにもクリップ音源を修正するDeClipperがプリインストールVST(ぱっと試した限りではSoundForge専用っぽいです)として搭載されています。但し、こちらは同等機能というだけで、iZotopeとは関係がありません。