出入力インピーダンスによるレベル差を考える | 音響・映像・電気設備が好き

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「ヒゲドライバー」「suguruka」というピコピコ・ミュージシャンが好きです。

YAMAHA QL1とRio系のリファレンス・レベルの測定をしている時に、誤差がある事に気が付きました。
QL1の内部オシレータでー20dBFSの1kHzサイン波を発振させ、Dante経由でRioのXLR(キャノン)アウトから出力させると、NTi XL2での測定値が+5.3dBuになるのです。
 

 

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内部オシレーター20dBFSの1kHzサイン波を発振、Dante経由でRioのXLR(キャノン)アウトから出力。

 

 

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NTi XL2で測定すると、+5.3dBu。

 

 

リファレンスレベル送出すれば、アウトのレベルもリファレンスレベルで出力されるはずです。もちろん、リファレンスと言うのは機器により様々で、送出スケールでー20dBFS、-18dBFS、-14dBFS、0dBFS、送出レベルで-10dBV、0dBu、+4dBu、+18dBu、+24dBu・・・とあり、QL1はー20dBFSで+4dBuのはずです。

 

 

たまたま、TwitterのタイムラインにPL&S/MusikMesse 2015に行っているフォロワさんが居て、たまたまYAMAHAブースにいらしたので、リアルタイムに聞いていただいたら(凄い時代ですね)、そりゃ、測定器のインピーダンスが違うよ、との事でした。

 

今まで、dBuで育ってきて、ロー出しハイ受けというルールの元、それほどまでに気にすることがなかったオーディオ信号のインピーダンス問題ですが、これを機に少し考えることにしました。

 

まず、ロー出しハイ受けですが、業務用音響機器でXLR(キャノン)アウトのロー出しのインピーダンスを調べると、75~150Ωの範囲があり、ハイ受けのインピーダンスを調べると3k~10kΩくらいの範囲があるようです。
※インピーダンス・マッチングは、出力インピーダンス600Ωの入力インピーダンス600Ω

 

NTi XL2の入力インピーダンスは仕様書から、200kΩというのが分かります。では、QL1、Rioの類はというと、出力インピーダンス75Ωのロードインピーダンス600Ωラインとの記述がリファレンスマニュアルに記載されています。(QL1本体XLRアウトの出力インピーダンス値は取扱説明書には記載がなく、リファレンスマニュアルに記載されている)

 

 

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YAMAHA Rio1608-Dの取扱説明書より

 

 

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YAMAHA QL1のリファレンスマニュアルより

 

 

ロードインピーダンスが600Ω??

 

 

と言うことで、測定の為に600Ω終端と測定用キャノン分岐ケーブルを作成しました。
これで測定インピーダンスを変えてみます。

 

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試しにRioの入力(インピーダンス7.5kΩ)に自身の出力を戻すと、5.2dBu。

 

 

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600Ω終端をすると、結果は+4dBuに近い+4.2dBu。

 

 

最初に、Rioの入力(インピーダンス7.5kΩ)に自身の出力を戻してみましたが、5.2dBuと大差ありませんでした。
次に600Ω終端をすると、結果は+4dBuに近い+4.2dBuになりました。※0.2dBは誤差でしょう。

 

「ロードインピーダンスが600Ω」と言うことは、Rioの入力インピーダンス7.5kΩやXL2の200kΩ(オープン)ではレベルが少し上がるということが分かります。
※つまり、自身の出力を自身に戻すと1.0dBレベルが上がる。

 

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Rioの入力に自身の出力を戻したものとNTi MR-PROで+4dBu(負荷を見て絶対レベル出力)を比べる。
この場合、入力インピーダンスが7.5kΩなのに対し、ソースインピーダンス600Ωとの事なのでRioから見れば、NTi MR-PROの出力はー1.0dBとして扱われるはず。(書いていて理解してもらえるか不安)

 

そもそも、出力インピーダンスと入力インピーダンス、これらの関係はなんでしょうか。電子工作を経験していない筆者にとっては、音響機器間のライン接続でインピーダンスの問題を考えるのは初めてです。
調べるとなんら悩むことではありません(笑)分圧抵抗の式で全ての答えが出ることが分かりました。

 

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音響における分圧抵抗の計算

 

 

V = オペアンプ出力
R1 = 出力インピーダンス
R2 = 入力インピーダンス
V1 = 出力レベル
※R2の入力インピーダンスは仕様書がなくてもNTi MR-PROで計測が可能です。

 

V1R2=VR2-V1R1、という式に戻せば、R2が200kΩの場合のV1測定値、R2が600Ωの場合のV1測定値の連立方程式で解を求める事ができます。

 

以上の計算式をらどこさんがエクセルで作ってくださいました。感謝!!情けないことに高校数学なのに自分ではエクセルに短時間でまとめることができませんでした(笑)そもそも公式間違えていたというていたらく・・・すみません・・・くやしい(笑)

 

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いつものエクセル計算式に追加しました。

 

 

この計算式は下記リンクからダウンロードできます。
■デシベル計算表と換算表■
http://www.holycater.sakura.ne.jp/zip/db_kansan.zip

 

試しに、
R2=200kΩの場合でV1=+5dBu
R2=600Ωの場合でV1=+4dBu
として計算してみます。単位はdBuとdBVとV.r.m.sと選べるようにしてあります。

 

結果は、

 

R1=73.5Ω
V=1.38V.r.m.s

 

と言うことが分かります。
出力インピーダンスは仕様書上で75Ωと言うことが分かっていますが、近似値が算出できています。
オペアンプ出力が1.38V.r.m.sと分かりましたので、ここから検算で、

 

V=1.38V.r.m.s
R1=75Ω
R2=600Ω

 

と入力してみます。
すると、結果は

 

V1=+3.99dBu

 

と算出できます。素晴らしい!!
結果的に分かりましたが、YAMAHAのコンソールのXLR(キャノン)アウトのほとんどはロードインピーダンス600Ωの模様です。
※フォンプラグでのOMNIアウトやMini-YGDAIカードのアナログ出力は除く

 

「ロードインピーダンス600Ω」の意図ですが、これは、機器としてはロー出しハイ受けを想定して、ローインピーダンス出力だけど、入力機器にインピーダンス・マッチングの600Ω受けが来てもリファレンスレベルが送出できるように設計されていると言うことです。繰り返しますが、入力機器がハイ受けの場合はリファレンスレベルは出ません。
※出力インピーダンスがロー出しではなく、600Ω出力かつロードインピーダンス600Ωの場合は、dBuではなくdBmという単位になる

 

どの道、オーディオアナライザか、入力インピーダンスが判明しているテスタがないとこの計算式そのものが意味を成しませんが・・・
ご協力していただいたTwitterフォロワさん、感謝です。なんとか短期間で理解することができました。