ウェーブフォームモニタ上の輝度信号と色信号 | 音響・映像・電気設備が好き

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ウェーブフォームモニタ上の輝度信号と色信号について勉強したことをまとめます。

まず、ベクトルスコープを描いてみるで取り上げた式のおさらいからです。

NTSCの信号は、簡単に言うと、本来RGBで構成されるはずの色を、色差信号に置き換えて伝送します。
※要約するとRGBの3つの値で表わされる色が、R-YとB-Yと2つの数値だけで表わすことができるという仕組み。

1.色差の計算式

NTSCにおける色の輝度Yは次の式で表わされます。
Y=0.3R+0.59G+0.11B

RGBを色差信号で表わすと、以下の式になります。
R-Y=0.7R-0.59G-0.11B
B-Y=-0.3R-0.59G+0.89B

これをベクトルの値にするには以下の式を用います。
イメージ 1

※両値のスケール差をなくして、ピタゴラスの定理に代入している。

上記の式から、各色の値を求めたものを表にしました。
イメージ 2

各色のIREを求める公式が探せなかったので、卑怯にもノンリニアソフトで測定してしまいました…。

ここでIREという単位が出てきましたが、IREとは映像信号の0%黒から100%白までの輝度信号の振幅を100IREとした単位です。
映像信号は、1Vp-pと定められており、この内訳は、水平同期信号40IRE、輝度信号100IREと合計140IREですので、

100IRE=0.714Vp-p
40IRE=0.286Vp-p

と求められます。

2.カラー・バースト信号とEIAカラーバをウェーブフォーム上に表示させる

項目1の式を利用し、EIAカラーバをウェーブフォーム上で表示すると、

イメージ 4

この様に表示されます。


イメージ 3

このウェーブフォーム表示をモニタ上に表示させるとこのような表示になります。
※カラー・バースト信号は、「暗い黄色」です。
業務用のモニタでしたら、クロス・パルス表示(H/V DELAY)でカラー・バースト信号が目視できます。

ここから、色信号を除き、輝度信号のみにすると

イメージ 5

この様に階段状に表示されます。

この2つの表示方法が理解できれば、NTSCにおける映像信号の概要がぼんやり掴めると思います。

3.そもそもウェーブフォームとは?


ウェーブフォームとはNTSCの水平ラインの輝度信号と色信号を波形で表示させ、全486ラインを合成させて表示させることができるオシロ・スコープのことです。

イメージ 6

※もちろん、任意のラインを選択表示させることも可能です。
※ノンリニアソフトなどに搭載しているウェーブフォームは一般的に、輝度信号が100IREを超えていないか、0IRE以下に映像信号がないかなど、放送に適した信号になっているかを確認するためのものです。したがって、ここで取り上げているウェーブフォームとはまったくの別モノと思ってください。

つまり項目2の画像のような表示になるためには、垂直方向に同じ画が連続してなければなりません。

4.カラー・バースト信号の役割

輝度信号のみをウェーブフォーム上で表示させ、その仕組みを理解することは、画面の明るさ=IREなのでたやすいと思います。
しかし、そこに色信号が加わると、とたんに理解し辛くなり、この説明が筆者には最近までできませんでした。

この話をするには、まず、カラー・バースト信号の性質について説明しなければいけません。
カラー・バースト信号とは、約3.58MHzの正弦波を8~9サイクル分、40IRE p-pに発振させた信号のことです。位相は、下図にも表記してありますが、sin180°です。
※先にも述べたようにこれは色差の中間色である黄色です。
※第2フィールドは-sin180°と反転します。
※正確には3.579545MHzです。

イメージ 7


このsin180°は、ベクトルスコープで表示させると、

イメージ 8


この位置になります。

このカラー・バースト信号sin180°を起点とし、3.58MHzの正弦波の位相から、各色のベクトルが求められます。※正確に表記すると、直交振幅変調(アナログQAM)された色差信号の2値を復元している。

5.映像を復調する

以上をまとめ、復調を説明すると以下のようになります。


イメージ 9
カラー・バースト信号は映像信号の位相差を検出するための基準になります。
※色信号は、カラー・バースト信号と同じ3.58MHzの正弦波で構成されています。
カラー・バースト信号とは位相と振幅が違うだけです。


イメージ 10

求められた色相sinθは項目1の計算式から、ベクトルが特定できます。


イメージ 11
すべての条件がそろえば、カラーに復調できます!

実際に、測定器を購入し、測定するまでこのカラー・バースト信号がなぜ起点となるのかが不明でしたが、実際はわかってみると非常に理解がしやすく、ブラック・バースト信号を使用して、各映像機器のカラー同期をとれることや、不安定な同期の場合、色相がクルクルまわるような色の変化が起きることが理解できるようになりました。
参考:ブラックバースト信号と複合同期信号の違い
※同時に、NTSC(コンポジット伝送)はコンポーネント伝送やRGB伝送に比べると非常に脆い信号伝送であることもわかりました。

参考資料:
テクトロニクス社のアプリケーションノート
http://www.tektronix.co.jp/products/app_notes/index.html
上記リンクの、
NTSCテレビジョン・システムの測定 第1章 ビデオ信号の測定
NTSCテレビジョン・システムの測定 第2章 テスト信号の測定

LEADER 5872A 取扱説明書