「鏡山旧錦絵」召使お初 | 木挽町日録 (歌舞伎座の筋書より)

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趣味で集めている第4期歌舞伎座の筋書を中心に紹介

一応、テーマ別に載せてますが
演目や役名の記事、役者のピックアップもありますので
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まずは 平成17年10月 芸術祭の筋書をご覧ください


歌川芳幾の浮世絵です。 尾上部屋の場で
表紙に尾上の肩を揉むお初、そして裏表紙には部屋を窺う岩藤。
二枚綴りをうまく筋書の両面に使ってあります。

筋書の表紙に使われる浮世絵ですが
演目に絡んだ作品もあれば、季節感重視の作品など様々
この月の様に、演目ズバリのものは三大名作以外では珍しい。

私は鏡山(加賀見山)の芝居自体も好きなのですが
その中で、溌剌とした召使お初が特に好きな役です
今回のブログは お初を 新しい年月から遡ってゆきたいと思います。

★平成17年10月 玉三郎の尾上、菊之助のお初、菊五郎の岩藤
試合で岩藤に打擲されたお初を諌める尾上
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見上げる菊之助の表情がいかにも忠義という感があり好きな舞台写真

尾上とお初といえば このシーン と云う場面、肩を撫でながら
忠臣蔵に事寄せて尾上を慰めるお初
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大詰、岩藤に仕返しをする奥庭の場面
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お初と岩藤が親子という配役は珍しいかもしれない。
実際舞台を観ましたが、愛嬌のある岩藤でしたw

★平成9年10月 玉三郎の尾上、勘九郎(勘三郎18)のお初、孝夫(仁左衛門15)の岩藤
試合の場面、この竹刀を構えた姿もお初の決めポーズである。
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尾上部屋の場面 勘九郎のおぼこな感じがよく出てます
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時系列が逆ですが 部屋へ帰ってきた尾上を迎えるお初
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お初にはどうやら見上げる顔が似合うように思います。

★平成6年9月 中村会
雀右衛門の尾上、芝翫のお初、吉右衛門の岩藤

試合の場面で、岩藤の腰元たちを打ちのめしたお初に
尾上が言葉を掛けているところ。変わったタイミングの写真である。
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岩藤との試合
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お馴染み、尾上部屋。雀右衛門の尾上には哀しみが溢れている
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大詰の立ち回り
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これも吉右衛門を主体にしながら破れた傘とその隙間からの
芝翫のアングルが面白い構図で良い写真。

★平成2年6月 雀右衛門の尾上、玉三郎のお初、團十郎の岩藤

大柄なお初であるw
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尾上部屋の場面
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雀右衛門は、尾上とお初には女学生で言うところのシスター的愛情が
あると談話で書いているが、まさにその様な匂いがする一枚。

★平成元年5月 團菊祭。芝翫の尾上、菊五郎のお初、團十郎の岩藤
芝翫は尾上を演ってから、またお初を演じているのだが、
実はこの月、芝翫は休演になり田之助が代役を務めた。
芝翫が尾上を演じたのはこの月、一回きり。

試合の場面 大姫は松江時代の魁春。菊五郎は本当に黄八丈が似合う
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芝翫の堂々とした風情。やはり尾上よりお初の人だろう
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使いから戻ったお初が尾上の遺言を訊くところ
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ここの演出は様々で 尾上の自害現場に岩藤を出し
お初に会って息絶える行き方、その死に間に合わない行き方などが一般的、
また玉三郎は仏間に岩藤を出さず、ただ死骸となってお初を迎える。

また筋書の尾上の写真は全て芝翫で、田之助の代役の写真は無いが
田之助自身は講演会などで指導の歌右衛門との関係を交えて
よくこの時の話をしているのを 聴いております。

★昭和61年10月 雀右衛門の尾上、菊五郎のお初、孝夫の岩藤
ここから舞台写真が白黒になります。カラーグラビアも巻頭にあり。

岩藤にだまし討ちにされたところでしょうか
大姫に芝雀、求女に時蔵。
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雀右衛門さんもまだふっくらしてますね
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★昭和51年4月 第1回猿若祭
歌右衛門の尾上、梅幸のお初、勘三郎17の岩藤

なんとふてぶてしい岩藤だろう(笑)
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再岩藤も演った役者の岩藤ってことで凄みが増しているのだろうか
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17代目勘三郎も随分お初を演っているのだが、歌舞伎座では演じておらず
手元にその写真がないのが残念。お初から岩藤に回ったのは菊五郎と同じ。

★昭和44年5月 初代猿翁7回忌
歌右衛門の尾上、芝翫のお初、延若の岩藤

それぞれ若いのだろうが、そう見えないw
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尾上部屋を上手から撮った珍しいカット
歌右衛門と芝翫という実際に身内の関係性も面白いと思う。
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他の筋書でも必ずと言っていいほど入っている写真
二代目尾上を拝領する場面だが、だいたい横に広い構図なのだが
これも上手からの構図でコンパクトに収まっている。
求女は福助時代の梅玉。
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★昭和32年7月 歌舞伎座では戦後初の上演
歌右衛門の尾上、鴈治郎2のお初、勘三郎17の岩藤

試合の場面
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奥庭の場面 共に岩藤との立ち回り。
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口が思わず曲がってしまっているのも面白いと思います。

二代目鴈治郎は歌舞伎座以外で尾上も演じ、岩藤も演じて三役全て勤めている
改めて芸域の広さに感心する。

★昭和30年10月 東横ホール
源之助の尾上、権三郎(後の権十郎3)のお初、芝鶴の岩藤
東横ホール30年12月の筋書に若手歌舞伎1周年の年間写真が入った中から


演劇界より、

勉強芝居のテイで、劇評もボロクソ(←誇張ではない)である。
グラビア頁ではなく、劇評の頁の印刷なので荒いのが残念。

最近では 平成20年9月に演舞場で時蔵が再演の尾上を出し
当時亀治郎がお初、海老蔵が岩藤を演じたが、本来は團十郎が岩藤を
演じるはずが白血病の再発で代役となった… 團十郎の岩藤を見逃したのが
非常に残念であったし、海老蔵では役のカタルシスが無かった思い出がある。
それ以降「加賀見山」が本興行で出ていないので
そろそろ歌舞伎座で掛かるのではないだろうか。