こんにちは。
いかがお過ごしでしょうか。
医療現場で日々皆のために働いてくださっている方々に
心からの敬意を表します。
新型ウィルスの影響で、世界中で今までの生活様式や
社会システムなどについての見直しが始まっています。
新型ウィルスについても、色々な観方・とらえ方がありますが
その一つとして、生物学から観たウィルスという存在について
興味深い記事がありましたので、紹介させていただきます。
今の騒動と向き合い、さらにアフターコロナをどう生きていくか、
参考になると思います。
太字・赤字・改行は私の加筆、編集です。
-----転載開始----
「ウイルスは撲滅できない」福岡伸一さんが語る動的平衡
2020年4月6日 5時00分
ウイルスとは電子顕微鏡でしか見ることのできない極小の粒子
であり、生物と無生物のあいだに漂う奇妙な存在だ。
生命を「自己複製を唯一無二の目的とするシステムである」と
利己的遺伝子論的に定義すれば、自らのコピーを増やし続ける
ウイルスは、とりもなおさず生命体と呼べるだろう。
しかし生命をもうひとつ別の視点から定義すれば、
そう簡単な話にはならない。
それは生命を、絶えず自らを壊しつつ、常に作り替えて、あやうい
一回性のバランスの上にたつ動的なシステムである、と定義する見方――つまり、動的平衡の生命観に立てば――、代謝も呼吸も自己破壊もないウイルスは生物とは呼べないことになる。
しかしウイルスは単なる無生物でもない。
ウイルスの振る舞いをよく見ると、ウイルスは自己複製だけしている
利己的な存在ではない。
むしろウイルスは利他的な存在である。
今、世界中を混乱に陥れている新型コロナウイルスは、
目に見えないテロリストのように恐れられているが、
一方的に襲撃してくるのではない。
まず、ウイルス表面のたんぱく質が、細胞側にある血圧の調整に関わるたんぱく質と強力に結合する。
これは偶然にも思えるが、ウイルスたんぱく質と宿主たんぱく質とには
もともと友だち関係があったとも解釈できる。
それだけではない。
さらに細胞膜に存在する宿主のたんぱく質分解酵素が、
ウイルスたんぱく質に近づいてきて、これを特別な位置で切断する。
するとその断端が指先のようにするすると伸びて、ウイルスの殻と宿主の細胞膜とを巧みにたぐりよせて融合させ、ウイルスの内部の遺伝物質を細胞内に注入する。
かくしてウイルスは宿主の細胞内に感染するわけだが、それは
宿主側が極めて積極的に、ウイルスを招き入れているとさえいえる
挙動をした結果である。
これはいったいどういうことだろうか。
問いはウイルスの起源について思いをはせると
自(おの)ずと解けてくる。
ウイルスは構造の単純さゆえ、生命発生の初源から存在したかといえばそうではなく、進化の結果、高等生物が登場したあと、はじめてウイルスは現れた。
高等生物の遺伝子の一部が、外部に飛び出したものとして。
つまり、ウイルスはもともと私たちのものだった。
それが家出し、また、どこかから流れてきた家出人を
宿主は優しく迎え入れているのだ。
なぜそんなことをするのか。
それはおそらくウイルスこそが進化を加速してくれるからだ。
親から子に遺伝する情報は垂直方向にしか伝わらない。
しかしウイルスのような存在があれば、情報は水平方向に、
場合によっては種を超えてさえ伝達しうる。
それゆえにウイルスという存在が進化のプロセスで温存されたのだ。
おそらく宿主に全く気づかれることなく、行き来を繰り返し、さまよう
ウイルスは数多く存在していることだろう。
その運動はときに宿主に病気をもたらし、死をもたらすこともありうる。
しかし、それにもまして遺伝情報の水平移動は生命系全体の利他的なツールとして、情報の交換と包摂に役立っていった。
いや、ときにウイルスが病気や死をもたらすことですら利他的な行為といえるかもしれない。
病気は免疫システムの動的平衡を揺らし、新しい平衡状態を求めることに役立つ。
そして個体の死は、その個体が専有していた生態学的な地位、つまりニッチを、新しい生命に手渡すという、生態系全体の動的平衡を促進する行為である。
かくしてウイルスは私たち生命の不可避的な一部であるがゆえに、
それを根絶したり撲滅したりすることはできない。
私たちはこれまでも、これからもウイルスを受け入れ、
共に動的平衡を生きていくしかない。
-----転載終わり-----
★出典
朝日新聞デジタルの通常は有料会員限定記事ですが
一定期間、無料会員にも公開されている記事になります。
https://www.asahi.com/articles/ASN433CSLN3VUCVL033.html
★今後のレッスンについて(2020年4月8日現在)
自由が丘レッスンは、緊急事態宣言の発令にともない
5月の連休明けまで施設が臨時休館のためお休みさせて頂きます。
お休み期間にご自宅でもできるよう、動画での養生気功など、
今後ご紹介予定です。
本日現在、次回の自由が丘レッスンは、
5月10日(日)午後13時半~を予定しています。