『寄生獣』といえば漫画好きの中では名作中の名作と呼ばれている岩明均の作品です。
そのタイトルの響きから連想される通りに激しめのシーンや展開ももちろんあり、それも魅力のひとつなのですが、「パラサイト」という架空の存在を導入することで「人間とは、何か」とさえ読者に感慨にふけらせる力があると思っています。
90年代の作品なのですが、2010年代の中頃に実写映画とTVアニメが作られました。
そうしたある種のリバイバルのような流れのなかゆえか、著名な作家たちによるトリビュート作品が多く描かれる企画がありました。
それらをまとめた本のひとつが『ネオ寄生獣』です。
どなたも著名ですが、萩尾望都や『フェアリーテイル』の真島ヒロは、漫画をあまり読まない方もご存知なのではないでしょうか?
この『ネオ寄生獣』が出たのが2016年。
5年の年月を過ぎてから手を出すのは他のファンの方から見れば「今更?」と言われてしまうかもしれませんが、その通り。
ただ私には他にも重ねて「今更」な理由がありまして、それが『寄生獣リバーシ』です。
『寄生獣』という名作をオセロのように裏返す(Reversi)、そんな立ち位置の作品とでも言えるでしょうか。
2018年に連載開始されており、まさに今更。ただ完結が今年、ということでギリギリ流れに乗らせていただいたという感じでしょうか。
昨日無事最後まで読み終えました。
そして2018年の『寄生獣リバーシ』から、すぐさま2016年の『ネオ寄生獣』を読み始める。
実は『寄生獣リバーシ』を描いた、というかもうひとつの『寄生獣』を創造した作者の太田モアレが『ネオ〜』のほうにきちんと参加されているのです(上↑の表紙参照)。
「『ネオ〜』の作品のテイストから、今回の『〜リバーシ』に抜擢されたのかなあ」
皆思うことですが、やはり考えてしまう。
ただ、これは前評判とかを見てではなく、『寄生獣リバーシ』全話とそして『ネオ寄生獣』収録「今夜もEat it」を読んだ上での感想です。
詳細な感想を書くと長くなるのでそれはまたの機会とさせていただきますが、トリビュート集『ネオ寄生獣』を読んでいると、意図的に原典の岩明さんの『寄生獣』の絵のテイストを自作に取り込もうという姿勢を示している方のものは、皆きちんとそれが上手い。そこはやはり皆さんプロ。
そんななかで太田さんの「今夜もEat it」は自分の画風と岩明さんのテイストとの融合がとりわけ相性良くなされており、岩明『寄生獣』が展開される世界との距離感も(一般受けを加味しても)ちょうど良い。
そして独自のストーリが展開されている。
その点、熊倉さんの「変わりもの」も捨てがたい。
両者比べると「健康」というキーワードが共通しているのは興味深いですね。やはりパラサイトの「人間の胴体を丸々乗っ取る」という仕組み上、(後藤のような"天才"にまで到達しない限り)寄生先のコンディションに色々と左右されてしまう(寄生先を犬になんてした日には、アレですよ。あいつさらっと空飛べて凄いですけども、まあ失敗例ではあります)。
あと『ネオ〜』の他の作品では個人的に出色に思うのは、竹谷さんの「ババ後悔す」。
純粋な漫画とは違うかもしれませんが、展開も短さのわりにパラサイトの皮肉をさくりと切り取ってみせている。
失礼ながら「竹谷隆之」という名はきちんとは知らなかったのだけれども、造形を見た途端に『シン・ゴジラ』の造形作品を思い出し「ああ、あの方か」と膝を打ちました。
そして巻末の平本アキラ「アゴなしゲンとオレは寄生獣」は……これはヒドい(笑)(※褒め言葉です)。
これは完全な原作レイプ(笑)(※本当に褒め言葉なんです)。
雑誌連載時はコレがトリビュート作品の先頭を切っているようですが、アフタヌーン、よくコレを許したな(笑)、と懐の深さを思ってしまう。
(志田佑)
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