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3月4日(火)より、東京国立近代美術館にて、抽象絵画の先駆者でスウェーデン出身の画家、ヒルマ・アフ・クリントのアジア初となる大回顧展「ヒルマ・アフ・クリント展」が開催されています。
皆さま、もう足を運ばれたでしょうか。
1カ月ほど過ぎましたので、内見会での様子や、記者発表会での関係者のお話などを盛り込みつつ、展覧会レポートをお届けしたいと思います。

19世紀後半のスウェーデンに生まれたヒルマ・アフ・クリントは、王立芸術アカデミーで正統的な美術教育を受けた後、肖像画や風景画で評価を得て、画家としてのキャリアをスタートします。
その後、神秘主義思想に傾倒し、交霊術の体験などを通して、アカデミックな絵画とは全く異なる抽象表現を生み出していきます。
そして1906年から1915年にかけて、「神殿のための絵画」と呼ばれる全193点の抽象絵画を描き上げます。
東京国立近代美術館の小松弥生館長は、ずっと世に出なかったヒルマ・アフ・クリントの作品は、まだ解明されていないことも多いそうで、彼女にとても興味を抱いていることを明かしました。

ヒルマ・アフ・クリント展を担当した東京国立近代美術館美術課長の三輪健仁氏は、この展覧会の実現に5年かかったといいます。
なんでも、世界中から声がかかっているそうで、財団に連絡したタイミングでスケジュールが埋まっており、ここまで空いてなかったのだそう。
ヒルマ・アフ・クリントは、当時としては、かなりレアな女性画家ですが、会場に入ってすぐに見える初期の作品を見ていても、王立の正統な美術教育を受けていることがわかるそうです。
そんなアカデミックな正統教育を受けながら、精神世界に傾倒していくヒルマ・アフ・クリント。
彼女の作品の特徴として興味深いのは、作品づくりだけでなく、体系的にして、後世に伝えていくことを意識していたこと。展覧会でもそれが強調されています。
また、ヒルマ・アフ・クリントの作品が世に出てきてからというもの、“モンドリアンやカンディンスキーに先駆けて抽象絵画を手掛けていた先駆者やパイオニア”という表現がヒルマに対して使われてきました。
時期や年代、1位2位を争うというのがポイントではなく、いかに“新しかったか”。
彼女の先駆性とは、死後の絵画の展開を予見していたかのような現代的表現が使われていることだそう。
まだ解明されていないことが多いのは、美術史への位置づけが進まない上に、オカルトや神秘思想といったものは、80年代頃には難しかったからともいわれています。

(左)ウルフ・ワーグナー氏(ヒルマ・アフ・クリント財団理事)
(右)イェシカ・フグルンド氏(ヒルマ・アフ・クリント財団)
スウェーデン美術史におけるヒルマ・アフ・クリントの位置づけを研究するヒルマ・アフ・クリント財団理事のウルフ・ワーグナー氏は、彼女の作品が箱から出されたところから関わっている人の一人。小さな部屋に、彼女の作品が保管された箱がたくさん並んであったそうです。
当時のスウェーデンの人の反応はどうだったかというと、ヒルマの作品に対して賛否があったといいます。「彼女は何かを通して描いているので、芸術といえない」という人もいれば、芸術として、神秘的なものとして、「素晴らしい」と受け取っている人もいるとか。
また、ヒルマ・アフ・クリント財団のイェシカ・フグルンド氏は、日本での展覧会開催に感謝の意を述べ、「たくさんの人に訪問していただけたら」と期待を寄せました。

《10の最大物、グループⅣ》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団
《10の最大物、グループⅣ》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団

《10の最大物、グループⅣ》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団
本展では、ヒルマ・アフ・クリントのキャリアにおける最良の達成といえる、高さ3メートルを超える10点組の絵画《10の最大物》(1907年)をはじめ、すべて初来日となる作品約140点が出品されます。
代表的作品群 「神殿のための絵画」のなかでも、巨大サイズで描かれた《10の最大物》 (1907年)の部屋に入ったとたん、「うわぁぁぁ」と思わず小さな声が漏れてしまいました。
もうなんといっても大迫力。近くで見ると、紙のシワなどが生々しくリアルで。こんな説妙な色合いのものが、よく美しいままで、どうやって時を超えてきたのかと驚きもありました。
人生の四つの段階(幼年期、青年期、成人期、老年期)を描いた10点組の大作、皆さん、お気に入りはありましたでしょうか。
私は、最後の方の老年期のモチーフや色合いが好きでした。神々しく、穏やかで、見ているだけで心の安寧を感じました。
今にも動きだしそうな細胞のようなモチーフたちを見ていると、エネルギーをもらえるような、癒されるような、お守りにしたくなるような。
ミュージアムショップでは、ヒルマ・アフ・クリント作品のモチーフのポストカードやポスター、グッズがありますので、気になる方はぜひチェックを!


《10の最大物、グループⅣ》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団
ヒルマ・アフ・クリント展
会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
会期:2025年3月4日(火)~6月15日(日)
休館日:月曜日(ただし3月31日、5月5日は開館)、5月7日
開館時間:10:00~17:00(金・土は10:00~20:00)
※入館は閉館の30分前まで
https://www.momat.go.jp/exhibitions/561
主催:東京国立近代美術館、日本経済新聞社、NHK
協賛:DNP大日本印刷
特別協力:ヒルマ・アフ・クリント財団
後援:スウェーデン大使館
展覧会公式サイト:https://art.nikkei.com/hilmaafklint/
▼展覧会内容についての紹介はこちら
抽象絵画の先駆者、ヒルマ・アフ・クリント、アジア初の大回顧展(3/4~開催)
<関連イベント>
■展覧会×レストラン 「ラー・エ・ミクニ」タイアップメニュー
本展と、シェフ・三國清三氏がプロデュースする東京国立近代美術館のレストラン 「ラー・エ・ミクニ」とのタイアップメニューが登場!
ランチタイム 11:30~15:00 8,000円(税サ込)
ディナータイム 17:30~21:00 10,000円(税サ込)
提供期間:4/8~6/15
定休日:日曜日のディナー、月曜日(5/5は営業)、5/7
https://art.nikkei.com/hilmaafklint/special/
■映画&展覧会の半券相互割引も!
映画「見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」チケットの割引
展覧会「ヒルマ・アフ・クリント展」観覧料の割引
https://art.nikkei.com/hilmaafklint/movie/
<会場の様子>
(作品手前)《スケッチ、子どもたちのいる農場[『てんとう虫のマリア』]》制作年不詳 ヒルマ・アフ・クリント財団
《原初の混沌、WU/薔薇シリーズ、グループⅠ》1906年-1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団
《原初の混沌、WU/薔薇シリーズ、グループⅡ》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団
《進化、WUS/七芒星シリーズ、グループⅥ》1908年 ヒルマ・アフ・クリント財団
「ヒルマ・アフ・クリント展」展示風景、東京国立近代美術館、2025年
「ヒルマ・アフ・クリント展」展示風景、東京国立近代美術館、2025年
「ヒルマ・アフ・クリント展」ミュージアムショップより










