こんにちは🎥
この冬は、北欧映画の劇場公開が続きそうな予感!
ジャンルはさまざまですが、どの作品もまた興味をそそられそう。公開日は順番ではないですが、ぜひチェックしてみてくださいね。
まず本日は、ノルウェー映画の『アンデッド/愛しき者の不在』をご紹介!
2005年に発表した同名小説の作者で、本作品の脚本を監督と共同で手掛けたのは、大ヒット映画『ぼくのエリ 200歳の少女』(08)、『ボーダー 二つの世界』(18)で知られるスウェーデンの鬼才ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト。
フィクショナルな存在をマイノリティのメタファーとして描いてきた気鋭の作家が、本作ではアンデッド(生ける屍)を登場させ、愛の所在を問いかけます。
本作は、3つそれぞれの家族に焦点を当てて進行していく日本の怪談的要素を感じる展開。愛する者を失った悲しみと喪失、希望についての物語です。

©MortenBrun
『アンデッド/愛しき者の不在』は、2024年、第40回サンダンス映画祭でサウンドデザイナーが特別審査員賞を受賞、監督が審査員特別賞にノミネートされたほか、ノルウェーのアカデミー賞®と呼ばれるノルウェー国際映画祭のアマンダ賞で4冠、6つのノミネートに輝いた話題作。MVや短編映画を手がけてきたテア・ヴィスタンダルによる長編デビュー作になります。
ヴィスタンダル監督は、ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭、ヨーテボリ映画祭、リビエラ国際映画祭などで監督賞を受賞し、『テルマ』(‘17)『わたしは最悪。』(’21)のヨアキム・トリアー、『イノセンツ』(’21)のエスキル・フォクトに続く新星と期待されている監督です。
ヴィスタンダル監督は、本作を製作するにあたり、インスパイアされた作品をいくつか挙げています。その中には、黒沢清監督の『CURE』が含まれているのだとか。
原作となった小説「Handling the Undead」を読んで、監督が特に心を奪われたのは、「生きている者たちが悲しみに満ちている中で、互いに心を通わせることの難しさと、帰らぬ人への思慕の気持ちが、死者の蘇りを通して見事に描かれていたこと」だそう。
愛する人がいなくなるという悲しみと、それを受け入れがたい真実と葛藤。でももし、愛する人が生き返ったらどんな姿なのか、生き返ることは何を意味するのか。
この“生きる屍”、生と死を彷徨っているような「アンデッド」を正しく描写するために、監督は、病理学者や葬儀屋、墓掘り人に話をし、動作コーチとともに、アンデッドの身振りに取り組むなど、多くのリサーチを重ねたそうです。
また、35mmフィルムにこだわったのは、美しさと不気味さをより出すために、アナログ・フィルムの質感と素材感が必要だと感じたからだそう。独特な構図、ゆったりとしたカメラワークなど、それらすべての静けさが、見えない不気味さ、不安や恐怖をそそり、より生々しさを感じる映像に仕上がっています。
アンデッドの登場で、喪失の悲しみにとことん苦しむことも、諦めさせてもらえない。そんな遺族の感情が揺さぶられる描写も見どころです。

© 2024 Einar Film, Film i Väst, Zentropa Sweden, Filmiki Athens, E.R.T. S.A.

主演は『わたしは最悪。』でカンヌ主演女優賞を受賞したレナーテ・レインスヴェ。前作とは全く異なる本作で、彼女が演じたのは、幼い息子を亡くした母親。
実は、レナーテと本作のヴィスタンダル監督は友人同士。以前からレナーテに別作品で出演オファーをかけていたそうです。しかし当時はレナーテが妊娠中だったため、出演が叶わず。その後、本作の話が浮上し、レナーテが出産した後のタイミングで撮影を開始することができたため、無事出演してもらえたというエピソードがあります。
実際に人の親になってからの母親役を演じたレナーテ。『わたしは最悪。』でアップになった時の彼女の肌の質感、泣き顔が絶妙に美しかったことが印象的でした(泣き顔が美しい俳優さんって惹かれませんか?)。今回、その彼女のアップの表情が非常に“母親”で、リアルで、胸が締めつけられます。
また、記憶に新しい俳優たちも出演!登場する3つの家族のうち、父母と娘、息子の4人家族の交通事故に遭う母親役を演じたのはバハール・パルス。『幸せなひとりぼっち』(15)に登場した、主人公の良き隣人のパルヴァネ役を演じたイラン系スウェーデン人女優です。さらには、『わたしは最悪。』でレナーテ・レインスヴェと共演したアンデルシュ・ダニエルセン・リーが、この家族の父親役を演じました。
さらに、本作で特に注目したいのが音楽。
手掛けたのは、作曲家のピーター・レイバーン。本作の音楽で、第40回サンダンス映画祭ワールドシネマドラマティック特別審査員賞を受賞。悲しみと葛藤を静かに深く表現した、不穏で美しい音楽もぜひ劇場で。
北欧の鬼才による原作×新星監督×若手実力派女優による北欧メランコリック・ホラー『アンデッド/愛しき者の不在』は、2025年1月17日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリーほか全国公開!
【あらすじ】
現代のオスロ。息子を亡くしたばかりのアナ(レナーテ・レインスヴェ)とその父マーラー(ビヨーン・スンクェスト)は悲しみに暮れていた。墓地で微かな音を聞いたマーラーは墓を掘り起こし、埋められていた孫の身体を家に連れて帰る。一方、別の場所でも不思議な現象が起きていた。交通事故に遭った女性が奇跡的に蘇生したり、教会で葬儀を終えたはずの死者が家に戻ってきたり…。愛する人の生還に喜ぶ家族だが、どの帰還者も明らかに生前とは違っていた。

© 2024 Einar Film, Film i Väst, Zentropa Sweden, Filmiki Athens, E.R.T. S.A.
アンデッド/愛しき者の不在
原作・共同脚本:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
監督・共同脚本:テア・ヴィスタンダル
出演:レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ビヨーン・スンクェスト、ベンテ・ボシュン、バハール・パルス
2024年/ノルウェー・スウェーデン・ギリシャ/カラー/シネスコ/DCP上映/ノルウェー語・スウェーデン語・フランス語・ペルシャ語/98min 原題:Håndtering av udøde 英題:Handling The Undead
提供:東北新社
配給:東京テアトル
https://www.undead-movie.jp
2025年1月17日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリーほか全国公開
▼参考記事『わたしは最悪。』
【7/1公開】現実は理不尽で矛盾だらけ。ほろ苦くて愛おしい人生に共感!映画『わたしは最悪。』

