こんにちはセキセイインコ黄

本日は、2月29日(木)から3月18日(月)まで、日本橋髙島屋S.C.にて開催されていた展覧会「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」のレポートをお届けします。

日本橋髙島屋S.C.会場はすでに終了してしまったのですが、今週の3月27日(水)より大阪髙島屋7階グランドホール、4月18日(木)からは、ジェイアール名古屋タカシマヤ10階特設会場へ巡回予定。気になる方は、予習がてら気軽にご覧いただけたら嬉しいです。

 

展覧会会場設置された名作椅子体験コーナー

3/11まで開催された北欧展


日本橋髙島屋S.C.のショーウィンドウで「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」を紹介


昨年開催された「ていねいに美しく暮らす  北欧デザイン展」でも、「織田コレクション」(※)から300点以上の北欧デザインが披露されました。今年は、地域も時代も広げ、その時代の社会背景や人々の生活で生まれたデザインを取り上げています。

 

(※)アール・ヌーヴォー、バウハウス、ミッド・センチュリー、イタリアン・モダンまで、20世紀100年におけるデザインの変遷を、椅子研究家の織田憲嗣氏が長年かけて収集、研究してきた20世紀のデザインの家具と日用品のコレクション。

ちなみに、昨年は北欧各国の大使たちも、織田コレクションの品揃えに驚きを隠せない様子でした。美術館や図鑑、資料などで見るような貴重な“本物”に目にすることができる大変貴重な機会になりました。

「デザインの究極の目的は、人を幸せにするため」だと言われており、織田さんもそう考えているといいます。約100年にわたるデザインの数々は、果たして、その時々に生きる人々を幸せにすることができたのでしょうか。

 

 

 


各時代に生み出された名品は、
科学技術の発達と密接に繋がっていた。



 

同展覧会は、「織田コレクション」から厳選された100脚の名作椅子を中心に、食器、インテリア製品、キッチン用品、家電製品、事務用機器といった、生活に密着した「美しい生活デザイン」が紹介された展覧会。

展示は第1~4章の4部構成で、時系列で紹介。「時代を象徴する部屋」として、「バウハウスやフランス」、「ノルディック・モダン」、「アメリカン・ミッド・センチュリー」、「イタリアン・モダン」、「バンビーノ(子ども用家具など)」を再現した部屋が登場。

内覧会にて、「デザインの究極の目的は、人を幸せにするために生まれくる」と話していた織田さん。より良い未来を作っていくために果敢にチャレンジし、実現しようと時代を切り開いてきたデザイナーたちのエピソードとともに、各部屋を解説してくれました。

 



「時代を象徴する部屋」のうち、バウハウスやフランスで活躍したデザイナーたちの作品がディスプレイされた部屋へ。スチールパイプのチェアは、今ではよく見られるものですが、初期の頃は、鉄板を叩いて曲げて溶接し、やすりで磨いて作っていたといいます。その後、科学技術の進歩とともに、押出成形で大量に生産されるようになりました。

スチールパイプを曲げる工程には、また大変が苦労があったとか。そのまま曲げると中が空洞なのでビニールホースのように曲げた部分が潰れてしまいます。なので、中に鉛を流し込み、両サイドを塞いで曲げたり、または、中に砂を詰めて曲げるといった加工を施していました。

織田さんは、バウハウスの中で生まれた家具を無機的機能性と呼んでいるといいます。それに対して、昨年の「ていねいに美しく暮らす  北欧デザイン展」で披露した北欧のハンディクラフト的な木製家具のことを有機的機能性と呼んでいます。


(右)「ロッキング・チェアRAR」チャールズ・イームズ&レイ・イームズ/1950/アメリカ
(左)「チューリップ・アームチェア」エーロ・サーリネン/1957年/アメリカ

 

“アームシェルチェア”として人気の「ロッキング・チェアRAR」(チャールズ・イームズ&レイ・イームズ/1950/アメリカ)は、FRP(繊維強化プラスチック)を採用した軽量かつ低コスト。耐久性もあり、グラスファイバーを使った当時最先端を行くチェアとして評価されました。

 

座面にグラスファイバーが見えるモデルは1950~1953年に製造された初期のもの。現在のものにはなく、見えるのは初期の作品だから。3次元に世界が懸命にチャレンジした時代というのがわかります。

 

 

 

 


 

会場のど真ん中には、「ノルディック・モダンのティー・パーティー」と名付けられたテーブルが登場。「昨年の『ていねいに美しく暮らす  北欧デザイン展』では1点も出していません」と織田さんがいう食器と名作椅子のディスプレイに圧倒されました。

 

グレーテ・マイヤー、カイ・フランク、ヘイッキ・オルヴォラ、スティグ・リンドべり他による食器シリーズ、アルネ・ヤコブセン、コーア・クリント、ボーエ・モーエンセン、ハンス・J・ウェグナー、ヨルゲン&ナナ・ディッツェル他によるチェアがずらり。


(手前の2脚)
(右)「チェアLCW」チャールズ・イームズ&レイ・イームズ/1945/アメリカ
(左)「チェアLCM」チャールズ・イームズ&レイ・イームズ/1946/アメリカ

 

アメリカン・ミッド・センチュリーが集まった部屋。チャールズ・イームズ&レイ・イームズやエーロ・サーリネン、イサム・ノグチのフロアランプなど、1940年代から1960年代に誕生したこれらデザインは、時を経て現在でも人気。織田さんが生まれた(1946年)時代に誕生したチェアLCWは、チラシのメインビジュアルに採用されているチェアです。


チェア「UP5+UP6」ガエターノ・ペッシェ/1969年/イタリア

 

1960年に入り、北欧デザインにやや陰りが出てきた頃に台頭してきたのがイタリアンデザイン。プラスチックが主流になり、不可能だと思っていたユニークなデザイン、構造が可能になりました。

織田さんが触れているビニール製のチェア「UP5+UP6」(ガエターノ・ペッシェ/1969年/イタリア)は、50~60センチ角、厚み十数センチの箱に入り、真空パックされていたチェアを箱から出すと膨らむという仕組みになっていました。

 

しかし、ある時、飛行機でこのチェアを輸送していたところ、気圧の関係で荷物室で膨らんでしまい、危険を伴うということで航空会社が取り扱いを禁止。製造中止になりました。2019年、「UP」シリーズ50周年を機に復刻。折りたたまれた状態ではなく、膨らんだ状態で扱われているそうです。

椅子研究家の織田憲嗣さん
 


チェア「ブロウ」ドナート・ドゥルビーノ、ジョナタン・デ・パス、パオロ・ロマッツィ/ザノッタ/1967/イタリア

イタリアの子ども部屋を想定した部屋では、子ども用の優れた家具が紹介されていました。日本ではどうしても大人目線や都合で作られる傾向にある子ども部屋。イタリアでは、“まだ子どもだから”ではなく、“小さな一人の人間”という認識だそう。

ビニール製のチェア「ブロウ」(ドナート・ドゥルビーノ、ジョナタン・デ・パス、パオロ・ロマッツィ/ザノッタ/1967/イタリア)は、日本にたった2つだけ存在するそうです。一つは武蔵野大学。もう一つは、今回展示されている織田コレクションのもの。

 


北欧の名品も多く、同展覧会でも数多く出品。

図録やポストカード、クリアファイル等も販売されていました。

会場によってディスプレイも異なると思いますので、これから大阪、名古屋に行ける方は、ぜひ足を運んでみてくださいね。


椅子とめぐる20世紀のデザイン展 ※終了しました
会場:日本橋髙島屋S.C.本館8階ホール
会期:2024年2月29日(木)~3月18日(月)
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/20thcenturychair/index.html

<巡回予定>
■2024年3月27日(水)~4月14日(日)大阪髙島屋7階グランドホール
(北欧マーケット:3/27~4/1 7階催会場)
https://www.takashimaya.co.jp/osaka/20thcenturychair/index.html


■2024年4月18日(木)~5月5日(日・祝)ジェイアール名古屋タカシマヤ10階特設会場

https://www.jr-takashimaya.co.jp/cp/20thcentury-chair/

【織田コレクション】 
椅子研究家の織田憲嗣氏が長年かけて収集、研究してきた20世紀のすぐれたデザインの家具と日用品のコレクション。その種類は北欧を中心とした椅子やテーブルから照明、食器やカトラリー、木製のおもちゃまで多岐にわたる。さらに写真や図面、文献などの資料を含め系統立てて集積されており、近代デザイン史の変遷を俯瞰できる学術的にも極めて貴重な資料として世界的にも高い評価を得ている。北海道の東川町複合交流施設「せんとぴゅあ」にて常設展示。https://odacollection.jp/