映画「浅草キッド」 | ほくとの気ままなブログ

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映画「浅草キッド」

 

2021年 企画・制作Netflix 123分

 

<監督・脚本>

劇団ひとり

<原作>

ビートたけし

<主題歌>

桑田佳祐(Soulコブラツイスト〜魂の悶絶)

 

<キャスト>

深見千三郎:大泉洋

ビートタケシ:柳楽優弥

千春:門脇麦

ビートキヨシ:土屋伸之(ナイツ)

東八郎:尾上寛之

田山淳:風間杜夫

麻里:鈴木保奈美

ビートたけし所作/声指導:松村邦洋

 

<内容>

ビートたけしが自身の師匠である芸人・深見千三郎と過ごした青春をつづった自伝「浅草キッド」を映画化。

劇団ひとりが監督・脚本を手がけ、多くの人気芸人を育てながらも自身はテレビにほとんど出演しなかったことから「幻の浅草芸人」と呼ばれた師匠・深見や仲間たちとの日々と、芸人・ビートたけしが誕生するまでを描き出す。

昭和40年代の浅草。大学を中退し、「お笑いの殿堂」と呼ばれるフランス座のエレベーターボーイをしていたタケシ(柳楽優弥)は、深見(大泉洋)のコントにほれ込んで弟子入りを志願。ぶっきらぼうだが独自の世界を持つ深見から、“芸ごと”の真髄を叩き込まれていく。

画像・写真 | 大泉洋×柳楽優弥、『浅草キッド』の“師弟愛”がエモ ...

歌手を目指す踊り子・千春(門脇麦)深見の妻・麻里(鈴木保奈美)に見守られながら成長していくタケシだったが、テレビの普及とともにフランス座の客足は減り、経営は悪化していく。やがてタケシはフランス座の元先輩キヨシ(土屋伸之)に誘われ、漫才コンビ「ツービート」を結成

深見の猛反対を押し切ってフランス座を飛び出し、人気を獲得していく。

(映画.COM、一部修正)、

 

 

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明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

 

さてと、本年度初記事はこの映画紹介でスタートさせていて頂きます。

ネタバレ要注意でいっちゃいますよ!!

 

 

 

 

「芸人だよ、バカヤロー」 

「笑われるんじゃない、笑わせるんだ」

 

時は昭和47年、浅草から人が離れつつまた渥美清、萩本欽一などフランス座にいた芸人も、TVや映画の世界に移りつつあった

 

そんな浅草を舞台に、ビートたけしがその師匠である深見千三郎と過ごした青春時代の自伝を映画化した作品。

 

この自伝小説は読んでもいませんし、過去にドラマ化しているようですがそれも見ていませんのでまったくの初鑑賞。

いやぁ~昨年12月TVでこの作品のCMを観てしまい、本編を観たくて観たくて、今更ですがついにNetflixと契約をしてしまいましたw

昨年末に鑑賞したのですが、記事アップが今年になってしまいました。

昨年アップしていたら、「ほくとのグランプリ作品」にあげていたかも!と思うほど、とっても良かったです。

大好きな昭和の香りがプンプンする人情劇、多少粗削りのところはあるけれど劇団ひとり監督お見事!

 

 

そして伝説の浅草芸人・深見千三郎を演じた大泉洋の演技も見事でした。

 

 

実物はもっと強面だったようですが、ハットを斜めにかぶり、びしっとしたスーツにピカピカに磨かれた靴を履き、左手に鞄、そして右手はポケットに入れて颯爽と歩く姿は深見ダンディズム

見事にその美学をお洒落に演じていました。

そしてこれまた彼の口癖、「バカヤロー」「コノヤロウ」は随所に出てきます。

なんで劇場公開しないんだバカヤロー!とは言っていませんがw

深見の弟子ビートたけしさんは、自分の芸風の中にしっかりと師匠の口調を引き継いでいますね。

 

 

そしてそのビートタケシを演じた柳楽優弥は、最初タケシの完コピ感強く出すぎかとも思いましたが、見ているうちにどんどんしっくりしてきました。

ほとんどビートタケシ状態、これまた素晴らしかった。

どうも松村邦洋が演技指導をしたようですが、マッチャンもその出来栄えに満足だったことでしょう。

その時のエピソードは、後半に書いておきます。!

 

 

 

そしてこの主人公二人と関わってくる、フランス座のストリッパーの一人千春(門脇麦)は、日劇で歌を歌うことを夢見るが最後は夢破れてしまう。

若くはつらつとした劇中での踊りや歌は、なぜか心打つものがありました。

 

 

また同じくストリッパーとして深見を献身的に支える、深見の妻役麻里を演じた鈴木保奈美

彼女は惚れた深見の為に劇場の経営が上手くいかなくなると芸者へ転じて、最後は無理がたたって早死にしてしまう。

彼女が演じた踊りは、門脇麦と対照的で、大人の色気をだし観客をじらすテクニックも艶めかしい事限りなし。

 

この二人も主人公二人に負けず劣らずとっても印象的でした。

 

そしてその他の演者に囲まれながら、

歌あり踊りあり、

タップアリのテンポよく繰り広げられる昭和の人情青春劇。

ネットフリックス契約して損はなかったですよ~w。

 

全ての俳優さんは個性的でよかったのですが、特に大泉洋さんはあっぱれ!を贈りたいです。

良い切れ味していまし

た。

 

 

この映画は、ビートたけしがフランス座のエレベーターボーイから、芸人として有名になる青春群像でもあり、伝説の深見千三郎の生きざまも同時に描かれた作品でもあるでしょう。

 

いや、深見千三郎の物語といっても良いかもしれません。

 

舞台となるフランス座(現在は東洋館萩本欽一や東八郎、渥美清などがかつては在籍していて、修行していた場所。

フランス座の客はストリップを見に来る客ばかり、その間で行うコントを見る客なんていない。

だから自分たちの芸に注目させることは並大抵ではない舞台。

だからこそ、腕を鍛えられるのであります。

 

しかし時代の移り変わりとともに、それぞれは皆TVや映画へ活躍の場所を移してていきました。

また浅草から人も離れていきました。

そんな少ない客の中でも真剣に全力でコントを披露し続ける深見。

 

1972年、そんなフランス座に幻の芸人深見千三郎に憧れて、フランス座のエレベーターボーイとして大学を中退したタケシが働きます。

 

 

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深見千三郎という芸人については、会ったことがある人、知る人も少なくなっています。

TVにはほとんど出なかった人なので、彼が映っている映像はほとんどないような状態だそうです。

作品の内容に触れる前に少し、その深見さんについてウィキペディアや、放送作家でもある巨匠高田文夫大先生がラジオ番組で話していたことなどを参考に少々書いておきましょう。

きっと映画を観るのにプラスになるかと思いますので・・。

 

 

北海道江生まれ、高等小学校を卒業後浅草に状況、タップダンスやギターなどの芸事の習得に励む。(この芸事は、タケシにおまえは芸の一つもないのに、弟子入りを希望するのか?に結びついているでしょう)。その後、姉の知人だった片岡千恵蔵の紹介で、京都太秦で本格的に芸の修行をしたようです。深見千三郎の「千」は片岡千恵蔵の千の字をもらったとのことです。

戦時中に軍需工場で左手を機械に巻き込まれて、親指以外の指を切断してしまいます(ご本人は戦場に行きたくなかったために、わざと大怪我をしたとか)。この芸事を取得したこと、指を切断していることは劇中でも、ポイントになって出てきます。

そして劇団を旗揚げしたのち、浅草フランス座の経営にも参画します。最終的には、経営が行き詰まってフランス座を手放し、芸人も引退。その後、弟子であった東八郎の口利きで、化粧品会社に入りサラリーマンをしていたようです。サラリーマン時代は、誰よりも早くに出勤して真面目に仕事をしていたようです。

そして運命の時。1983年2月2日早朝、自宅アパートの自室でのたばこの不始末が原因で火災がおきます。深見ははしご酒をしていて泥酔していたために、逃げ遅れて焼死。59歳で人生の幕を下ろしています。

 

その訃報をビートたけしは「オレたちひょうきん族」の収録中に楽屋で知りました。彼は深い悲しみの中、壁に向かいながら、タップを踏んでいたそうです。

 

巨匠高田先生によりますと、タケシは葬儀の後に札幌で仕事がある為に、羽田で高田文夫と待ち合わせをしていました。そこで高田文夫にタケシが、

「深見のおとっつぁんもバカだよな。死んだら人が焼いてくれるのに、自分で焼いちめえやんの」、

と話していた様です。

流石芸人ですね。

師匠譲りの毒交じりの一言、このセリフは設定は異なりますがしっかり劇中でも使われています。高田文夫のラジオ番組の中で、劇団ひとり監督に高田先生は、俺がタケちゃんに聞いた情報もしっかりいれていたな、この野郎!俺に情報料よこせ~など冗談混じりに話していました。

また深見の口癖としては、

「芸人は良い服を着ろ。腹は減っていても見えないが、着ている服は見える。特に足元を見られるというように、靴には気を遣え。」

「笑われるんじゃない笑わせろ。舞台から降りたら格好いいと言われるようにしろ。」

「芸人は芸を持て。楽器でもタップダンスでも良い。ただやるだけではダメだ、舞台で客に見せられるレベルの芸を持て。」

 

そして笑い以外のところで、客に拍手されることを良しとしていませんでした。たとえば、ウエスタンスタイルを売り物にしていた内藤陳がガンアクションで拍手をもらうのを見て

「いい気になってるんじゃねえよ。客の拍手を止めて、『よけいな所で拍手するんじゃねえ』くらい言え。」と言ったようです。

ここも違う設定で、映画の中でこのセリフが出てきますよ。

 

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なんやかんやで実話をうまく織り交ぜながらのストーリー進行、観るものをどんどんこのエンターティメントの世界に引き釣り込んでくれます。

さて、映画の内容に戻りましょう。

 

深見ダンズムを貫くには、妻の存在が大です。

ある時、自宅の2Fの窓の外にタケシや弟子が自分のアパートに向かってくる来る姿が見える。

早々にスーツに着替える深見。

財布を見るが金がない。

妻の麻里はその様子を見て、そっとその財布にお札を入れます。

深見がアパートの階段をかけ降りる。

偶然であったかのようにタケシたちとばったり会う深見。

「ちょうどよかったお前たち飯でもいくか?」

と誘う。

タケシが返す。

「師匠、昨日も同じ事言っていましたよ」

「うるせ~な。この野郎!」

と照れる深見。

 

またある時はフランス座の経営が上手くいかず、事業をたたむ事をすすめられる。

その時に深見は

「ここをたたんでしまったら、タケシはどうするんだ。あいつに全部教える為にはここをたたむわけにはいかねぇんだ」

と陰ではタケシに対して惜しみない愛情を注いでいました。

 

いや~しびれますね。

麻里さんには苦労かけてばかりだけれど、誰もがまねはできない男の生きざまでした。

芸のためには女房も泣かす♪桂春団治の世界でしょうか。

 

 

今では伝説となってしまった幻の浅草コメディアン、深見千三郎の生きざま、師匠としての教え。

彼が今の時代に生きていたら、コンンプライアンスなんちゃらで、息苦しくて生きていけなかったかもしれませんね。

しかし、今の時代では避難あびるような彼の無茶な破壊的な魅力が人を引き付けるのです。

 

劇中に哀愁ある曲が流れれます。

ビートたけし作詞・作曲の「浅草キッド」が、なんといえない雰囲気をかもしだしてくれました。

 

 

誰でも下積み時代、新人の時はあるはず、下積み時代の悲哀が凝縮されたこの曲は聴く者の心にきっと響くことでしょう。

 

そしてこの歌の歌詞にも出てくる店くじらや、浅草に行ったことある方で知っている方も多いと思いますが、歌の中に出てくるくじらやのモデルになっている「捕鯨船」も実店舗が出ています。

 

「鯨を食って芸を磨け!」

 

このお店はビートたけしが店に来るたび

「若い芸人に食わしてあげて」

と大金をおいていくという逸話のある店。

タケシからの預かり金が封筒に入っていて、それを利用した芸人の名前がメモされているようだとの事。

ちなみに捕鯨船の大将も元は浅草芸人です。

 

劇中にでてくる名言の数々。

 

閑古鳥がないているフランス座での啖呵!

観客からお前何様だ!?と聞かれ

「芸人だよ、バカヤロー」

と応える深見。

かっこ良かったですね。

 

タケシに説教する深見。

「笑われるんじゃない、笑わせるんだ」

「こっちは芸を見せてやっているんだ」

こんな上から目線は今では通用しません、だから余計にかっこいいのです。

 

 

話の後半では、斜陽になってしまったフランス座。

深見の弟子のひとりだった、キヨシから漫才をしないかと誘われるタケシ。

最初は断るがある出来事をきっかけに、コンビを組むことに賛同します。

そして師匠にその事を話すと、破門同然で追い出されます。

 

 

松鶴やたけしなどでは古臭い、もっと誰もがやったことのない漫才をしたい、外国のコメディアンやジャズが好きだったタケシからビートのある漫才をしたい、ならふたりでツービートだ!

漫才コンビ「ツービート」が誕生する瞬間でした。

 

いっぽう深見はフランス座だけでは食っていくことができずに、フランス座をたたみ芸人を止めて、弟子の一人だった東八郎の口利きで工場へ勤務する。

のちにビートたけしは

「有名になることでは師匠を超えたけれど、しかし最後まで芸人深見千三郎を越えることはできなかった」と述べているようです。

 

そんな中、ある漫才大会でツービートが優勝して賞金を手渡される。

それを持ってタケシは突然破門された深見のアパートを訪問する。

突然の訪問にビックリする深見。

麻里さんが亡くなってからは、気分も落ち込み深酒が多くなってしまった深見。

しかし久しぶりの出会いに話も弾む。

その途中で、優勝賞金の入った封筒を深見に渡すタケシ。

「なんだこれは?」

ちょっと照れくさそうに

「小遣いだよ。」

その言葉に深見は

「なんだだバカやろ~!弟子が師匠に小遣いを渡す奴が何処にいるんだ」

と、なんやかんやと言いながらでも、どこかで嬉しそうにしている深見。

いい場面でした!

 

 

実際、深見はそのお金で飲み屋で飲むたびに

「タケの野郎が小遣いだってくれたんだぜ」

と嬉しそうに語っていたそうです。

 

その後映画では

「ちょっと飲みに行くか」

と二人で、先ほども紹介した捕鯨船に飲みに行きます。

店に来ている他の客の前で、昔話をする深見。

話す深見につっこみをいれタケシ、絶妙なふたりの会話にその場が大いに盛り上がる。

楽しそうな二人のひと時。

そろそろ帰ろうと席を立つ深見に、さっと靴を用意するタケシ。

その靴は他の客さんのしかも女性のハイヒール。

それをみた深見はニヤリとして履く

「ありゃ~なんだか背が高くなってしまった!バカ野郎他人の靴じゃないか」

と爆笑をとる。

思わずナイスタケシ!と声かけたくなるようなシーンでした。

 

それはまだタケシが弟子入り間もないころ、深見と酒を飲みに行った時の出来事。

帰り際、普通に師匠の靴を用意したタケシに注意します。

「バカヤロー普通に靴を用意するんじゃねぇよ。そこにある女性の赤いハイヒールだろ。日頃からこんなことやあんなことやってないと、肝心の舞台の時にアドリブでできないんだよ。もっと勉強しやがれバカやろー」

と言われていたのです。

ここでもってきたか!

劇団ひとり監督!

ナイスデスネェ。

 

このあと深見はタケシと別れ、一人飲みに行き自宅に戻り、・・・あの悲しい事件へと画面が切り替わっていきます。

 

 

そういえば次のシーンも思わず吹き出してしまいました。

深見の左手は親指を除いた4本の指がありません。

戦時中に工場で切断してしまったとのこと。

実際は戦争に行きたくなかったので、指一本のつもりがまちがって4本切断してしまったそうですが、。

タケシが兄弟子たちに指がない理由を聞いた後、そこに深見が現れる。

「おいおいなんだなんだ、俺の悪口を言っていたのか?」

タケシがいきなり

「師匠、その左手の指、腹が減ってしまって自分で食べてしまったって本当ですか?」

と訪ねる。

 

一瞬他の弟子たちは凍り付く。

深見は一拍おいた後に

 

「おまえそれじゃ俺は蛸と同じじゃないか、その指で泳いでいたらどうなる。ぐるぐる回って、左回りでで戻ってきてしまって前にぜんぜん進まないじゃないか」

といって笑いを取りました。

ここは思わず吹き出してしまいましたねw

 

 

最初、ビートタケシ演じる柳楽優弥にビートタケシの演技指導を劇団ひとりがおこなっていたらしいのですが、どうにも上手くいかない。

そこで演技指導を頼んだのが、物真似でも有名な松村邦洋。

どんどん指導していくうちに演技指導というよりも、もう物真似指導になってしまいました。

彼の自論で

普段車で街を走っていると見えない景色があるけれどど、散歩していると見えてくる事はある。だからモノマネもゆっくりやった方がいい」ということで、、ビートたけしの口癖である

「バカヤロウ」を

「バーーーカーーーヤーーーローーーウーーー…」

と超スローでのモノマネで特訓したそうです。

それを2人で延々と繰り返し、たけしという存在を柳楽の体に染み込ませたそうです。

それを見ていた劇団ひとり監督は、いつまで続くのか地獄を見ているようだったとかw

 

この作品、劇団ひとりが企画を色々な配給会社へ持ち込んだようなのですがどこも相手にされなく、最終的にはNetflixだけが手を差し伸べてくれました。

逃した魚は大きかったですよ!

 

 

このまま書いているときりがなくなってきますので、そろそろおしまいにしますが、

とにかく、笑いあり涙ありの、極上のエンターティメント作品です。

もちろんビートタケシという有名人があったこその作品であることは、いうまでもありませんが・・。

 

 

Netflix限定作品ですが、もっと大勢の方に見てもらいたいような作品でした。

劇場で上映してくれないなんて、チッキショ~!

いやいやこれじゃ小梅太夫になってしまいます。

なんで上映してくれないんだ、バカ野郎!ですね。

 

(画像すべてお借りしました)

 

5点満点中4.1